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新潟『雪国浪漫』ツアー タグ:【雪国】  (やよい雛徒)


 新潟県へ向かって『雪国浪漫』ツアーに参加したのは60名の者達である。

 まず最初に辿り着いた観光地。
 そこは世界最大翡翠産地の一つ、糸魚川。……の近くの翡翠園だ。
 此処には美術品や雪化粧の日本庭園だけでなく、家ほどもある翡翠の巨石を展示し、錦鯉を放った広い池がある。若い学生達は砂利の中に隠された翡翠探しに忙しいが、黒田 圭(ja0935)は一通り探すと、庭の片隅へ歩き出した。
 茅葺き屋根を模した古民家型の喫茶店。
 調和した庭園を愛でる為に、緋色に飾られた長椅子から、巨大な一枚硝子越しに景色を堪能できる。
「見事だ。……喧騒を離れてお茶を啜る。実に贅沢。これで和菓子があれば最高だが」
「御抹茶セットでよろしいですか? お席でお待ち下さい」
 運ばれてきた抹茶に、梅を象った餡菓子は、繊細ながら季節を感じさせる。
 黒田は集合時間になるまで、ここで静かな時間を享受していた。

 女の子はガードがカタイでやんす!
 と一人胸中で苦悩していたのは、トロリンガー(ja0090)だ。何分大所帯のグループや女性同士の班が多く、女の子とお知り合いになって、という諸々の野望が成就できずにいた。
 しかしふと、庭園の砂利を懸命に探している一人の影。
 トロリンガーは瓶底眼鏡を外し、コンタクトレンズにきりかえ、颯爽と髪をとかして大変身した。
 かかった時間、僅か十秒。
 爽やか青年を気取り、真摯に話しかける。
「こんにちは、お一人ですか? よかったらボクと一緒に周りませんか?」
「え? ……あ!」
 その時、神和 雪見(ja3935)の拾い上げた石は、ペンライトに透けて薄緑に輝いた。

 庭園の中をぶらりと歩きながら写真をとっていた崔 北斗(ja0263)は、儚い牡丹雪に魅入った。
「二度目の修学旅行……いや、これはオリエンか。部活の皆と色々話せてたらな」
 今頃別の場所にいる友は、どんな時を過ごしているだろうか。
 少し寂しさを滲ませて、売店を眺めた。
 白に黄緑、新緑に深い緑。翡翠のストラップを探し始める。
「男二人と、まなちーと……あと神林さんと先輩達の分もだな。川で拾いたかったなぁ」
 国の天然記念物に指定されてるヒスイ狭などは採取禁止だという話をきいた。
「おや、天然記念物指定地域以外での採集は禁止されていないんだよ。海のトコとかね。怒られるけど……おや、バスが呼んでるよ。惜しかったね」
「ええ! って、じゃあこれで! 待ってくれ出ないでくれー! おぉぉい!」
 売店のおばちゃんによる衝撃の情報に愕然としつつ。土産を買って走っていく。


 新潟県は土地が縦に長い。
 上越の糸魚川を離れ、高速道路で移動すること約一時間半で新潟市内に辿り着いた。
 これから夕食まで、自由行動の時間だ。
 目指すは美味いものの食い倒れ。巨大鮮魚市場は多くの人で賑わっていた。ここは一つの街にも似ていて、水揚げされた魚や蛸に、地元農家が作った野菜や総菜。土産物に加工品。田舎の豊かな自然を生かした酒造元やワイナリーの出店も数多い。
 そして、なんと言っても飯がうまい。
 片手にデジカメを下げて歩く若杉 英斗(ja4230)は、気になる食べ物があると片っ端から購入して撮影した。一尾丸々つり下げられた塩引き鮭が並んでいる様は圧巻である。
「潮の匂い……海が近いんだな。佐渡行きフェリーってアレだよな? 写真にとっておこう……ラーメンもいいけど、魚介類も食べたいよな。解体ショーってどこだっけ」
 巨大鮮魚市場では、炭火で焙った浜焼きや総菜、きまぐれ弁当まで作る都合上、その場で寡黙な男達が魚介を次々に捌いていく。どれも見事な手際だが、この日は鮪を解体して一貫ずつ周囲の者に振る舞っていた。
「次はラーメンを……そういえば、近くに天然温泉の足湯があるとか書いてあったよな」
 若杉は足湯を発見して、唐揚げの入った紙袋を抱えたまま走っていった。

 ところで立ち食いコーナーでタレカツを注文した者達は差し出された丼を見て、目が点になった。
 丼に盛られた山のご飯。
 山頂を想像させるような、三角錐状に立てかけられた肉厚のカツ。
 しかし何もかかっていない。
「……タレってか、ソースは?」
 不破 玲二(ja0344)が問いかけると、食堂のおばちゃんはニヤッと笑った。
「県外の人はねぇ、最初はみんな同じ事を言うんだよ。ま、そのまま食べてみなって」
 意味不明だ。
 とりあえず「いただきます」と不破及び居合わせた土方 勇(ja3751)がカツを一口囓ってみる。
 すると二人とも、眠そうな目をカッと見開いた。
「ん! このタレカツ……味が濃いぞ! 何もかかってないと思ったのに! 甘しょっぱいのに重すぎない絶妙のタレ、全面に醤油ダレが馴染んでいるのに、衣はいつまでも熱々サクサクで噛みしめると肉汁が……当たりだな!」 
 不破が大興奮しているのに対し、土方がご飯を煽ると醤油タレが沈んでいた。
 タレとご飯だけでもいける。
 しかし決してタレは多すぎず、食べ終わる頃には舐めたように綺麗な丼。食堂のおばちゃんが、差し出してきたセットの汁物はわかめに山菜、朱鷺が描かれたカマボコが一枚彩りを添えている。
 不破が、帰りの土産に欲しいと購入場所をきいていた。
「よー食ぅねぇ、そんなタレカツ道楽におすすめの一枚、新潟市内タレカツマップをやろうかね! 地元チェーン店から行列のできる隠れた名店まで、写真ごと網羅した一枚だよ!」
「コレ全部タレカツの店舗か……次はラーメンにいく予定だったが、悩むな」
「ん? ラーメンマップの方が良かったかい? 市内版と県内版、どっちがいいかね?」
 恐るべきかな、新潟の食道楽。
 特定の食い物に関しては、専用の地図があるらしい。
 呆然としつつも一気に広がる食事の選択肢。土方は限界に挑むことを決めた。
「今日この時、僕の胃袋は宇宙だ。次は背油ラーメンに……そうだ、新潟にあるという菓子の『ぽっぽ焼き』は何処で売ってるかな? 笹団子と煎餅とヨーグルトドリンクの美味しい店も。品名とか」
「にーさん通だね。ぽっぽ焼き屋は白山の神社辺りでよく見るねぇ。あと煎餅の名店は」
 食堂のおばちゃんを質問責めにした二人は、目的が似ていた為、互いの健闘を祈った。
 ついでに。
 自分が行けない店のラーメンや餃子を代理購入して後で交換する話に発展していた。
 偶然にも食事の絆、生まれる。

 一方、新潟市内に到着直後。
 速攻で市内ラーメンマップを入手したのは佐藤 としお(ja2489)と道明寺 詩愛(ja3388)、ミーナ テルミット(ja4760)の三人組だ。
 新潟市内はラーメンの激戦区である。
 例えば、女池地域のとある道の両脇に様々なラーメン屋が延々と列を為している。皆あてつけのように隣や向かいに店を構えていた。そこでは都内の有名店が、鼻を高くして参戦しても、お安い価格設定に対して余りの味レベルの高さに三ヶ月生き残れるか否か、という伝説がある。他にもラーメン村と銘打った場所が市内に点在し、己の好みを探す事が可能だ。
「ラーメン激戦区……新潟市内の全店制覇を目指すしかないですね」
 いや、無理だろ。
 と、通行人が心の中で突っ込む。
「そうさ道明寺さん、三人でラーメン激戦区制覇だー!」
 一日三食二週間ラーメンを食べ歩いても市内すら終わりませんよ、おにーさん。
「ミーナもネ! 限界まで食ベルのネ!」
 まずは背油醤油ラーメンの有名店に行った。豪快な出迎えの声と、人でごった返す店内。
「ラーメンは……チャーシュー、細麺、こってり、あぶら多め」
 何かの呪文か、ソレは。
 地元民に混じってミーナ達が真似をして注文をすると、どどーんと葱やモヤシなどが、ごっちゃり積まれた品物が届いた。
 トッピングではない。仕様です。
 尚、一部のこってり系ラーメンでは、帰りにタダで口直しのアイスが提供されていた。
「まだ戦えます! 次にいきますよ! 学園唯一のラーメン専門部活代表として味の研究は欠かせません!」
「次は味噌だな! 濃厚味噌が売りの店と、からし味噌が売りの店、どちらにする?」
「それって、ドー違うノ? ソレにしてモ、アイスクリーム、おいしーネ!」
 結局、道明寺達は両方とも足を運び、全く違う味噌ラーメンの味を知り、一口に塩と醤油と味噌と言えども、そら恐ろしいほど美味しさに違いがあることを思い知る。
 奥が深い。

 一方【より良い学食ライフ考える会】は鮮魚市場で海鮮を食い歩き、町中へ移動した。
 背油で白く染まる醤油ラーメンを希望したのは九条 穂積(ja0026)だ。
 何件ものラーメン屋で半身揚げを注文したが、ないと言われた。どうやら半身揚げは専門店や居酒屋などで主に扱っているらしい。三件目で隣の建物が鶏の唐揚げの半身で有名な店だと聞いて、即決で食べに行った。
 底なしの胃袋万歳。
「お刺身にラーメン揚げ物、みんな、まだまだいけるな? ……しかしこないに色々食べると次の日の体重が怖いところやなー。まぁ若いからすぐ痩せられる思うけど」
 九条の悩ましい溜息の隣で。
「最初に食べたカニに南蛮海老、寒ブリも美味しかった……美味しいモンばっかですもの、余すコトなく堪能しませんと! ……しかし、予想しとった以上に寒いです!」
 ガタガタ震えるウルブライエ・メーベルナッハ(ja0145)を気遣い、水上バスではなく、普通のバスを移動手段に選ぶ。
 旅行雑誌を片手に万全の準備で新潟へ来た物見 岳士(ja0823)は、部活のみんなをバスへ誘導する。
 実を言うと。
 新潟は、数多くのアニメや漫画の原作者を生み出した、オタク王国でもある。
 その為、市内の観光地のみに停車するバスには、でかでかとイラストが貼られ、キャラクター名で呼ばれていたりする。市内を走る格安オタバスに乗ってしばらく。
「そういや、各自喰いたいモノの希望を挙げておくんだったかな。次は誰だ?」
 法水 写楽(ja0581)が話題を降る。
 夕食までは時間がある。
「僕はB級グルメの食べ歩きをしようかなって、考えてたよ」
 新潟市内で知られた焼き菓子『ぽっぽ焼き』を「食べる?」と仲間に分けていた酒々井 時人(ja0501)が告げた。物見が無料配布されていたチラシに目を通す。
「新潟といえばB級グルメですが……どうも今『食の陣』のようです、やりましたね」
「食の陣? それ、なんやろか?」
「新潟県と新潟市が直々に後援を務める、食のお祭り、一大イベントですよ。市内五箇所の会場に、新潟県内のうまい物が殆ど揃うって書いてあります。場所はえっと……新潟駅と万代、古町、道の駅ふるさと村の辺りと、ピア……」
 ばさぁ、と物見の視界からガイド本とチラシが消える。
「俺ぁ『深雪汁』に行くぜぃ! いやさ、ウサギ肉なんて滅多に口に入るモンじゃねぇから気になるじゃん!」
 法水が地図を探す。
「私は『わっぱめし』と『のっぺい汁』! あと日本酒! どこの会場にあんの!?」
 猪狩 みなと(ja0595)の目の色が変わった。
「幻の『のどぐろ飯』? 脂の乗りが秀逸でトロに匹敵するって……あかん、想像しただけで涎が! のどぐろはドコおぉぉぉ!」
 メーベルナッハが法水を押しのける。のどぐろがお酒に合うときいて、お湯に浸かりながらの日本酒とおつまみを想像した猪狩が「サイコー!」と妄想して呟いている。
 危険だ。
「ほな、順番に回ろっか。食べきれんかったとしても、そんときはまた皆と一緒にいけたらえぇなー。そっちのほうがおもろいから……さ! 腹ごなしのためにちと歩こか」
 バスを降りた九条が皆を纏めて歩き出した。


 空が茜色に染まる頃。
 日本最大の長さを誇る信濃川沿いの船着き場に学生達は集った。
 市内観光地を巡る為の水上バス『ロマンティックリバーシャトル』……しかも一隻貸し切りである。
 ずっと遊び回っていた者には、楽しい食事の時間だ。
 白塗りの高貴な小型船舶は無骨な外観に対して、内装は大正時代の浪漫溢れる調度品で統一した特別仕様だ。ここで伊勢エビディナーというから驚きである。
「久しぶりに着物着たな〜慣れていない奴は、動きづらいと思うぜ?」
 手慣れた様子で貸し出しの着物を着た神楽坂 紫苑(ja0526)は、上手く着られない者達の所へ近寄ると、意外と甲斐甲斐しく世話していた。
「オレみたいに動くなよ? オレは自分で直せるから兎も角……あ、こら手を離すな」

 船内は薄着でも暖かい。
 選んだ着流しを神楽坂の所で着せてもらった高城 カエデ(ja0438)は、連れの帰りを待っていた。
 女性達は特別な部屋でお着替えだ。
「お着替えかんりょうーなのです! どうです、にーやん。変じゃないですか?」
 可憐な声音に振り向けば、くるりと回る登呂めいあ(ja4165)がいた。
 華やかな着物と帯に漆塗りの下駄が映える。手に持った雪兎模様の巾着は、貸して貰ったものらしい。
「ああ、この景色に負けないくらい綺麗だぜ。登呂ちゃんに、似合ってる」 
「あはは、ありがとうですよ。にーやんも格好いいのです」
 頬を薄紅に染める登呂の手を引いた高城は、自分たちの席へ来て、登呂の椅子をひく。
「お席へどうぞ、なんてな」
 かしこまった悪戯な眼差しのエスコート。窓から見える雪景色の桜並木に感動する間もなく食事が順に運ばれてくる。炭火焼きの伊勢エビを箸でつまんで差し出した。
「殻から剥がすのに手こずってるなぁ。ほれ、偽妹よ。あーん」
「むぅー、仕返しなのですよ! あーん!」
「まんまかよ……せめて殻を剥けって」

 ところで。
 一風変わった一組といえば、有田 アリストテレス(ja0647)と男の娘を地でいく御手洗 紘人(ja2549)である。互いに借りた着物を着ているが、有田は男物で、御手洗は女物だ。
「アリスちゃん格好いいよ」
 ぽうっと夢見る乙女の眼差しを送る、男の娘。
「な、何だか照れちまうな……おかしい、普段ならこうならないのに、何でだろうな?」
 純情少年、真剣に照れる。自分たちの席へ御手洗をエスコートした有田は囁く。
「なぁ、チェリー。俺はあんたを―――愛してるぜ」 
「嬉しい…チェリーも……愛してるよ」
「これからもさ、ずっと……一緒にいような?」
「アリスちゃん、今度は2人だけでこようね」
 誰も会話に突っ込みを入れられない、二人の世界光臨。
 ちなみに影から様子を見ていた給仕のおねーさん達は腐のつく女性らしく「ビーエルよ!」とか「愛の告白キター!」とか、超大注目して見ていたと、後に別の席の生徒が語る。

 怪しい雰囲気と言えば、とある五組が何故か手を繋いで乗船した。
 はしゃぎ続ける栗原 ひなこ(ja3001)と凛々しげに面倒を見る斐川幽夜(ja1965)。興奮して落ち着きがない牧野 穂鳥(ja2029)と優しく気遣う竹林 二太郎(ja2389)。時々躓いて照れる澤口 凪(ja3398)に「転んだら危ないしな」と寄り添う桐生 直哉(ja3043)。といった女性同士や男女の組はまだ良い。
 本日のクルーズ注目株。
 キャラメルの様な茶髪がチャラさを体現する二階堂 光(ja3257)と青い造花を胸に飾り無駄に煌めいている黒葛 琉(ja3453)の男二人。加えて、案外女装が似合うと噂の梅ヶ枝 寿(ja2303)と、典型的なエリート感を漂わせる天上院 理人(ja3053)の男二人組が、威圧感を漂わせて手を繋いでいた。
 殺伐とした空気が痛い。
 梅ヶ枝は、キャーキャー影で盛り上がっている給仕のお姉さん方を眺めてぽつりと一言。
「あっちの目が普通じゃねぇ。……コレ完全に残念組じゃね? どう思うリッフィー」
「不本意だが致し方あるまい。これも伊勢エビと二人羽織の為だ」
 別に手を離してもええやん、という物陰のつっこみはさておき、夕食で二人羽織を決意していた五組は、延々手を繋いで歩いていたので、固い絆が生まれているに違いない。
 レトロな着物を借りてみる。
 着替えた十人は一気に大正浪漫に溢れる船内に馴染んだ。
 ノリで女物を希望した二階堂の出現に、身の丈180cmの『男の娘』誕生を記念して、振り袖とロングヘアのカツラを提供した腐なお姉さん達が「頑張って!」とかいいつつ、バシャバシャ写真を撮っている。
 オタク王国万歳。
 しかしそれでいいのか、二階堂よ!
「化粧までされたのか……せめてカツラとるか?」
 身長185cmの黒葛が動じずに二階堂を見ると、グロスたっぷりの瑞々しい唇が笑う。
「いや、別に。ちょっと重いけど、すげぇ温かいぜコレ。楽しいから良いよね! そもそも俺、似合うし! 信濃川って初めて来たけどすっごく雰囲気良いね、きてよかった」
 本人は超もーまんたい!
 悪ノリして頬染めてみたり、再び黒葛と手を恋人繋ぎをして、疑惑悪化。
 周囲を伺いながら「俺って本当に尽くすタイプだよね〜」とか言ってみる。
「……なんか着替えの部屋から『もっとくっつけ!』とか余計な声が聞こえてくるわね」
「きゃははは!」
 冷静に分析する斐川と大笑いしている栗原たち。
 いい加減に着席し、手を繋いでいた者同士が一組となり、二人羽織な伊勢エビディナーに移行した。
 梅ヶ枝が気合いを入れる。
「大丈夫大丈夫、怯えんなって、リッフィー。ちゃんと優しく慎重にやっからそぉおい!」
 煮立った伊勢エビのグラタン、天上院の顔面に直撃。
 眼鏡が彼の美貌を火傷から救う!
 一方でラブラブな牧野と竹林が実に器用に「あーん」と食べさせあっている。栗原が囃し立てた。
「穂鳥ちゃん達甘々だ〜」
 刹那、奇妙な呻き声と共に黒葛失神。
 口には大量の山葵が! 食べさせたエセ彼女な二階堂は酷く狼狽えて「琉くんしっかりして! 俺が食べさせたばっかりに」とか言ってる。そしてアレコレ疑っているうちに竹林達まで倒れた。
「……食べ物に罠を仕掛けるのは、ひなちゃんが得意でしたね」 
「えっ、もやちゃん!? あたしじゃないよっ! みんな信じてよぅ」
「う……そんな目で僕を見るんじゃない」
 疑われた栗原が天上院にすがりつき、天上院は私怨から梅ヶ枝を執拗に疑う。
「くっ、こんな危険な伊勢エビが食えるか! 俺は茶碗蒸しを食う! うわらば!」
 梅ヶ枝と栗原が倒れる。牧野は青い顔でがくがくぶるぶる震えながら、竹林を膝枕で介抱している。何故か桐生は縮こまっている。それまで黙っていた澤口が声を張り上げた。
「私……見ちゃったんです。直哉先輩がおろし板をもってたの!」
「うぁ、鮫皮おろし板持ってるの、凪ちゃんに見られてたなんて」
「桐生……つまり君が犯人だろう、ハラペコ。動機は……食べる者が減れば自分が伊勢海老を食べる分が増えるからだ! 違うか!」
「おいコラ理人、そんな嬉しそうに犯人はお前だ! って言うな」
「あたし達になすりつけようとしたのね!」
「わかった、言うよ。ごめん、みんな。俺がやりました……俺が山葵好きだから皆にも美味しく食べて貰おうと……でも俺、茶碗蒸しに山葵入れてないぞ?」
「も〜桐生くんしょうがないなぁ……って、じゃあ茶碗蒸しに仕込んだの誰?」
 栗原が斐川と顔を見合わせる。
「茶碗蒸しの山葵は、鮫皮ですりおろした物ではありませんね。つまり、犯人はもう一人いる? は、机の下で変な音が!」
「そこだぁぁぁ!」
 箸が乱れ飛ぶと、山葵を着々と仕込んでいる黒葛が、食卓の上から奪った伊勢エビをもしゃもしゃと食べていた。どうやら失神したふりをして騒ぎを起こし、皆が騒いでいる間に全てを食らいつく作戦だったらしい。
「リーダー、俺、信じてたのに……!」
「あ、オレの伊勢エビがない! これは琉くんに奢ってもらうしかないよね!」
 叫ぶ梅ヶ枝と笑う二階堂。
 黒葛が「こ、これには深い事情が!」と慌て始めた。
「リーダーどんまい! みんなでデザートでも食べて落ち着こっか、リーダーのおごりで」
 最終的に悪ふざけをした黒葛と桐生は追加デザートを人数分奢らされる羽目になった。
 ちゃんちゃん。

 食後の珈琲を片手に、景観を愛でていたのは久瀬 千景(ja4715)に他ならない。
 天魔に蹂躙されている様子もない広大な町並みに心癒される。振り返れば同じ学生達がはしゃいでいたり、神楽坂が乱れた着物を直していたり、笑っている恋人達がいた。戦う理由は、充分ある。
「美しいね。幸せな夕暮れだ」
 城下町の景観と白銀の田園風景、雪化粧の桜並木。
 日本海に沈む茜色の夕日を隣に、久瀬が微笑む。


 冬は早くに日が沈む。
 夕食を終えてバスに再び乗った学生達は、築200年の木造旅館に宿泊すると聞いて騒ぎ始めた。
 しかしトンネルを一つ過ぎ、二つ過ぎ。
 一時間もする頃には、市内とは全く異なる雪景色が姿を現した。
 どこもかしこも雪。
 軽く見積もって積雪量は2メートル。
 駐車場にバスが入れないので、不運の除雪が始まった。

 バスを降りて早々に【相互扶助部】の者達は、部長の御伽 炯々(ja1693)のもとに集まっていた。
「さ、寒いにゃ」
 ぶるぶる震える猫矢 御井子(ja2522)は頭から足のつま先まで完全防備だ。
 しかし寒い。
「こんな雪を見るのは久々だな……ちょっとテンション上がるんだぜ。おーい、みんなカイロもってけー」
「さて、部長からカイロはもらったか? 喉が乾いたらすぐに水筒の温かいお茶を飲むのだぞ? 脱水症状に気づかぬ者は多いからの。走ると怪我をするから慎重にな。そうだ、埋もれたときの為に、この小包装チョコレートを二粒ずつ懐に忍ばせておくとよいぞ。緊急時に栄養がとれるからの」
 鍔崎 美薙(ja0028)は甲斐甲斐しい。
 除雪における大雪との戦い方を心得ている。
 幸月 ひかる(ja3492)がさっと取り出したのは塩を練り込んだ飴である。
「ぬかりありません」
「そうだ。せっかくですから、かまくらでも作りましょうよ。こんなこともあろうかと、実家からマイ七輪も持って来ましたし、中でお餅とかきりたんぽとか、美味しいです」
 鈴代 征治(ja1305)の提案に「いいですね」と綾時 月(ja2149)も賛同を示し、全員が飛びつく。
 鍔崎が手を挙げた。
「かまくらは初めてじゃが、あたしは雪を積み上げるとしよう。細かい事は任せるぞ」
 最初は黙々と作業に徹した。
 これだけの雪だ。きっと大きなかまくらが作れるに違いない。
 しかし単調な作業は飽きるものだ。
 それまで淡々と役目に徹していた鍔崎は、御伽の背中に雪玉を投げつけた。
「チッチッチ、油断大敵じゃぞ、炯々。これが天魔なら……ごっ!」
 お前は既に死んでいる、的な決め台詞を試みようとしたが、不発!
 ずべしゃ、と鍔崎に奇襲作戦を行ったのは鈴代である。
 鍔崎の背中に火がついた。
「ふ、相手に不足無し! いざ参る! 食らうのじゃ、我が奥儀消える魔球ッ!」
「俺に打てない球はない!」
 御伽の雄叫び。部活の引率はどうした。
 三人の暴れる姿に「ダメだって言ったのに」と鈴代が肩を降ろし、猫矢が加わった。
「楽しそうにゃ! インフィルトレイターの実力、とくと見るにゃあぁぁぁ!」
「一般のお客さんもいるんですから、騒がないように。節度をもって遊んでください」
 綾時が冷静に突っ込む。誰も止めない。
 結局、除雪より雪合戦で疲れた一行だった。

 ところで鬼気迫る勢いで除雪に励んでいるのは冴城 アスカ(ja0089)と姫川 翔(ja0277)、遊佐 篤(ja0628)の三人だ。ことの始まりは、除雪の後は腹が減りそうだという話の中で冴城が『そうだ。夜食を掛けて一つ、勝負するか?』という提案だ。
 よって。
「ん。アスカと……篤には……負けない」
「おらぁっ! 早さならまけねえぞ!」
 豪快に雪を掘っていた遊佐は、何を思いついたのか屈み込んで手を動かす。
 数分後。
「なあ、姫川。ほら、これなんか可愛くね? やるよ!」
「……うさぎ? ん……ありがとう。これが右がアスカで……左が、篤……ね」  
「へぇ……雪うさぎか。器用なンだな、手先。で、勝負はこっちの勝ちでいいンだな?」
 除雪量は倍ほどの違いが出ていた。慌てて遊佐が除雪に戻っていく。

「だりぃ……なんで旅行に来て除雪なんだよ」
 全くだ。心の底から同情したい。
 諸葛 翔(ja0352)は昼間も共に観光をしていたソフィア 白百合(ja0379)と八東儀ほのか(ja0415)を探して……その姿が見えないことに気づく。
「翔くん! ユリちゃんがそっちに! よけてぇぇぇ!」
 八東儀の警告虚しく、滑って転んで諸葛に激得したソフィアは「うぇ〜ん、助けて二人ともぉ」という哀しい叫び声を上げながら、雪だるまになっていく。
 一方、姉に誘われて新潟旅行についてきた弟の陽波 透次(ja0280)は、凍結道路に足を滑らせて倒れた白百合の様な女の子を見かければ「大丈夫?」と手を貸した。凛々しい紳士ぶりだが、様子を見ていた姉の陽波 飛鳥(ja3599)は不機嫌になり、弟を困らせ始める。
 話戻って。
 生還したソフィアを待っていたのは、笑いながら雪を払う八東儀と、他の奴に先を越された事が面白くなくて背中を向けた諸葛だった。延々続く除雪に感動が失せた八東儀が「お腹へったぁ」と呟いたのを聞き、諸葛が何かを閃く。
「ただどけるだけじゃーつまらん、かまくら作るぞ!」
 こうして三人はかまくらのなかで飲食、を目指して、凄い勢いで除雪を再開した。

 ところで【ブレイバーズ】を引率する相楽 空斗(ja0104)は除雪のために部員達を呼び集める。
 しかし騒ぐ者が多すぎて集合が上手くいかない。
「わーい雪だ雪だ! きれーだねー! ……ん? ジョセツって何するの?」
 そもそもの意味を理解していない青空・アルベール(ja0732)が雪玉を作り始める。
 相楽は「ふ、愚問だな」と呟き、スコップを2本、手に取った。
「除雪は――戦争である!」
 正しい。
「戦争、か。じゃあ気合いを入れて除雪するとしよう」
 耳あて、マフラー、コートに手袋と、完全防備で雪に挑む柊木要(ja1354)が後ろに続く。
 実家の除雪を思い出した中島 晶(ja0386)は、淡々と必要な荷物を仲間に配る。
「みんな、除雪を力任せに腕だけでやろうとするな。腰を低くして膝のバネを使うんだ」
 イアン・J・アルビス(ja0084)と神林 智(ja0459)は初めて直に見る大雪に、瞳を輝かせた。
 うっかり2メートルの雪の中へ飛び込みたいが、そこは抑えて冷静を装う。
「……すごい量の雪ですね」
「一度でいいからかまくら作ってみたかったんです!」 
 既に神林の目的が、除雪からかまくら作りに移行。
 本音を言えば温泉より雪遊びらしい。
「この雪は確かにすげぇな。おっしゃ、いっちょ行くぜー!」
 きっちり防寒装備で身を固めた千葉 真一(ja0070)は、ヒーロー達の後に続く。
 豪雪には慣れているルドルフ・フレンディア(ja3555)も、今回の難敵に闘志を燃やす。
「なるほど、こいつは骨が折れそうだな。皆の衆、労働の後は食事だぞ! そして温泉だ!」
 おお! という威勢のいい声が響き渡る。
「きりきり働きなさい野郎共ー! フハハハハ!」
 声高らかに叫ぶフレイヤ(ja0715)は、調子にのってコートを投げ捨てた……段階で我に返り、周囲に助けを求めた。気温は只今マイナスを記録中。薄着の魔女姿は自滅行為だ。
 仕方がないので、それまで恋人を応援していた森浦 萌々佳(ja0835)が救助に向かう。
 かまくらや雪だるまに専念する傍らで、悪ふざけをする仲間を監督していた加久間セツ子(ja1394)は、雪の滑り台をつくることに専念していた。
「吹雪を心配していたけど、風がきつくなくてよかった」
 かまくら作りで内部の成形に気を使ったのは若菜 白兎(ja2109)だ。
「部活の皆と力をあわせて雪かき頑張るの! 埋もれちゃわないように注……意……」
 あ、声が消えた。
 慌てて近くの男性陣が掘り起こす。
 白い衣類と小柄な体は埋もれやすいので注意だ。
 一方、兜みさお(ja2835)は除雪とかまくらづくりを手伝ってはいたものの。
「雪月花時最憶君……四季を楽しみたいものです」
 かまくらがある程度の形になると、除雪をやめて何故か膨大な雪兎作りに専念した。
 飾って兎小屋にするらしい。


 そして学生60人総出のアルバイトの除雪は三時間にも及んだ。
 くたくたになった者は部屋に引き上げ、余力のある者は温泉に向かい、元気のある者はかまくらでお楽しみタイム開始である。
 例えば大所帯の【ブレイバーズ】では充実した時間が過ぎていた。
 かまくらの手前では、フレンディアとアルビスが神林のカセットコンロを使って、豚汁の炊き出しを開始する。千葉の持ち込んだ七輪と炭の上では、網の上で餅や野菜や果物が踊る。餅には柊木が持参した海苔を巻き、加久間は胡麻だれの器を配り、青空は「……萌、だいじょぶ? 寒くない?」と恋人を気遣いつつ、皆に膝掛けと一緒にみたらし餡と箸を配った。
 ぷくぷく膨れる餅に期待を膨らませる若菜。兜はココアに甘酒、玄米茶と好みに合わせて配り始める。やがて相楽が焼き林檎を皆に配り、一仕事終えると、等身大の自分の雪像を作っていた。仲間の声がかまくらから響いてくる。
「いやまて、そんな青臭い不気味な濁汁はいらない! ヤメロォォォォぉぶ!」
 声が消える。愉快な時間はこうして過ぎていく。

 他にも無数のかまくらを訪ねてみれば。
「出張雪見草のお持ちですよ、お召し上がりください」
 七輪を持ち込んで、網の上でチョコ餅やチーズ餅を焼くソフィアと。
「焼くのも餅だけじゃな……あんパン焼いたらオヤキみたいにならねーかな?」
 悩む諸葛に食べることに専念する八東儀の姿があった。


 除雪を終え、かまくらで小腹を押さえた後続の学生達は、部屋に入るなり、男女に分かれて次々と温泉に向かった。
 新潟は温泉に恵まれている上、風呂好きが多く、あれこれと喧しい。
 自前のシャンプーやリンスを用意した者もいたが、体を洗う場所では鏡の横に、旅館一押しの新作洗顔にスクラブ、シャンプーにリンス、コンディショナー、固形石鹸等々『さぁ存分につかえ』と言わんばかりに置いてある。どうやら浴室で試して気に入ったら売店で買って帰る、という構図が出来上がっているようだ。

「このシュガースクラブ、お肌つるつる! フレイヤさんはパックですか?」
「こ、こっちみないでよ! 私はこれ全部試すんだから!」
「大きなお風呂、好き……」
 体の汗を流した若菜が選び放題の浴槽へ向かっていく。
 ぼこぼこ泡の出る泡風呂、薫り高い檜風呂、治療に使われる微弱電流を流した電気風呂、懐かしい香りがする泥水に似た薬草風呂、薔薇の花を投げ込んだ真っ赤なワイン風呂に、温水の霧雨が降る硝子張りのミストサウナ。美白効果を持つ露天温泉や洞窟風呂は、触れるととろみを帯びていた。
 男湯と女湯は高い壁で仕切られ、隣の声が聞こえてくる。

 至れり尽くせりの環境は男湯も変わらない。
 相楽は除雪の疲れか、硝子張りのミストサウナに置かれた長椅子に横たわり、タオルを枕にして寝ていた。しかしゴーグルは外さない。アルビスは穴蔵サウナで我慢大会を実施中だ。中島は泥のような色をした薬草風呂に浸かり、昔懐かしい香りを感じながら、探り当てた薬草の袋をもにゅもにゅと揉んでいた。お風呂あがりは温泉の元を買うらしい。檜風呂に首までつかっているのは千葉と青空、柊木たち。
 フレンディアを含めた大人達は、露天風呂で飲食ができるというサービスの張り紙を見て、露天風呂の内線電話で頼んだ日本酒を傾けながら雪降る月夜を愛でていた。

 そして【相互扶助部】の猫矢たち女性陣のように、どうしたら胸が大きくなるのかという年頃の乙女達特有……とは少々言い難いが悩ましい話に聞き耳をたてていた男がいた。

 男湯の天津風 刻哉(ja0123)は壁を睨んでいた。見上げる先は高嶺の花。
「ふっ、高い壁だからって俺の熱い思いを止められると思うなよ」
 発言は格好いい。
 が、やろうとしている行動が残念すぎる。
 壁向こうの猫矢たち女性陣と同じ部活の御伽と鈴代は、男同士で背中を流しつつ不審者の様子を見守っていた。顔を見合わせて、遠巻きに声を投げる。
「あーもしもし、女湯を本気で覗く気か?」
 すると天津風は『カッ!』と眼を見開いた!
「男には無謀と知りつつやらなきゃいけない時がある! 燃え滾る情熱と浪漫に向かって走る、それこそが男の生き様! 今がその時だろ! お前らも本当はやりたいはずだ!」
 ビシィィィ! と格好良く指を差す。だが、その内容は煩悩に正直すぎる。

「ヒーローたるもの、何事も目的達成の為には、人の一歩先を進まねばならん!」
 ミストサウナから出現した相楽の言葉に「ぶちょぉぉぉ!?」という誰かの突っ込みが入る。
「して、諸君。一体何に挑もうというのかね? 40秒で説明せよ!」
 全く状況を理解していなかった発言の後、経緯を聞かされると。
「なに!? なんとも羨ましいがヒーローたる者、越えてはならない境界だ!」
「や、のぞきは犯罪ですからね?」
 サウナから出てきたアルビスが、茹だった頭をフル回転して注意する。
「ひかぬこびぬ省みぬ! 俺はいく! 俺はいくぞぉぉぉ!」

 ここで皆さんよく考えてみよう。
 散々騒いだ男湯の騒動だが……天井は繋がっているので話が筒抜けだ。
 女湯を覗こうとした瞬間。
 恐ろしい微笑みを讃えた森浦が、木桶を相手の顔面に叩きつけた。

 静かになった男風呂。
 から聞こえる姫川と遊佐の鼻声を聞いた、女湯の冴城が声を投げる。
「全く……風呂ぐらい静かにできねェのか。ま、さっきのに比べりゃ静かな方だけどよ」
 もっともである。
 檜風呂で眠りかけている若菜と兜を、露天風呂から微笑ましい顔で眺めていた加久間も、首までじっくりと温泉に浸かりながら星空を見上げた。
 頬をかすめる雪が心地よい。
「ふう……また皆で来たいわね」
 加久間の隣に腰掛けた森浦と神林は、相づちを打ちながら翌日の筋肉痛に備えてマッサージをしていた。

 女湯から出てきた冴城が、姫川の頭についた水滴を拭う遊佐を見つける。
「ほら、姫川。ちゃんと乾かさないと。風邪ひくからな?」 
「ん、ありがと」
「よ。で、なにやってんだアレ。さっきの覗き野郎と湯あたり組か。ま、こンな時間も悪くねェな。さぁて、奢ってもらうぜ?」
「……野菜も食えよ?」
 冴城達のように温泉から出てくると、覗き魔が正座させられていた。
 他にも恋人を気遣う青空達や、男湯でも女湯でもサウナや温泉に居すぎて担ぎ出され、長椅子に倒れている者達が沢山いた。その例に漏れない陽波姉弟も、神林やルドルフに心配されつつ、しばらく此処で休むと告げる。
 のぼせた飛鳥が正気を取り戻す。
「……ごめん、本当は落ち込んでた透次に楽しんで貰いたかったのに、私ダメね」
「ん……今日は色々あったけど、僕は姉さんと一緒だったから、楽しかった」

 楽しかった。
 また来ようね。
 こんな風に思えたら、それで充分。

 白銀の雪は今夜も降り続く。
 ひらひらと天を舞う、それはまるで花のように。
 雪化粧の町並みの中で、学生達は記憶に残る旅行を過ごしたようである。



新潟『雪国浪漫』ツアー
美観地区で労働の汗を流そう
奈良県、歴史堪能(?)旅行
粉雪のスイーツ王国
モデル体験ツアー〜らららガーデン♪〜
大阪日本橋 〜電気街ツアー
東京もふランドバスツアー
島根一畑電車ゆらり旅
長野渋温泉巡り
のんびりのどかに、花巻温泉郷
冬の南国でのびのびと
最古泉おばけ道中
闇に潜む罠‥‥?






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