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冬の南国でのびのびと タグ:【南国】  (菊ノ小唄)

 pipi pipi…べし

 pipipi pi…べしっ

 pipipipipipipi…べしっ!

「んぁ…なんじだ…。……あ」
 桐原信道(ja0527)が見た目覚まし時計の針は、寝坊だよ!と教えている。しかし焦らず騒がず
「まあいいか…」
 と二度寝に入ってしまった信道であった。

●南国の砂の熱
 九州は鹿児島、指宿市。天気良好、若干肌寒い程度の気温だが日なたはポカポカと暖かい。
 オリエンテーリングの始まりだ。

「ふぁーぁ…」
 まだ寝ぼけ眼をこすっているのは餐場 海斗(ja5782)。支度に移動にと朝早く起きねばならないので、朝が弱い彼にとって旅行は大変。だが、初めて入る砂風呂に海斗は興味津々、嬉しそうに浴衣を着る。横では、淡々と真顔で着慣れぬ浴衣に苦戦している梶夜 零紀(ja0728)の姿が。
「手伝おうか」
「いや大丈夫だ…あと少し…。できた」
 海斗の申し出を辞退しつつ、なんとか着られたらしい零紀。なら良かったと返し、海斗はいそいそと砂蒸し場へ。
 車椅子の平坂 九十九(ja3919)は、入浴はせず、砂蒸し温泉とはどんなものかと眺めて回る。
 大きな簡易テントで日陰になっている砂蒸し場では、アロハシャツ姿のカメラマン、藪木広彦(ja0169)が温泉場職員に小声で話しかけていた。
「これがあの、上級者は即身仏になるという荒行ですね」
 返答に窮する職員に対し、解っていますよと頷く広彦。
「私の母国インドでさえ、伝わる教えは正確ではありませんが、それもまた文化」
 そう言ってカメラマンは、『荒行』に取り組む学生たちの激写を開始。こんなエクストリームな荒行を、エクストリーム新聞部として撮らぬ道理は無いのだ。

 そんな勘違い全開カメラマンが写すのは、カッと目を見開き無表情で熱に耐える零紀の姿。これぞ荒行…ではないのだが。思わずそっと声をかける職員。
「無理しないでいいんですよ?」
「ん? こうやって入るものじゃないのか…?」
 我慢大会はもう少し後です。

「おー、コレが砂風呂か…よし、俺が埋めてやるよアッシュ」
 そう言ってカルム・カーセス(ja0429)が、寝転んだ恋人の天河アシュリ(ja0397)に砂をかける。砂遊びの要領で両手で掬ってはのせ、掬ってはのせ…
「ありがとー…って、どこ触ってんのカルムっ?!」
「えっ? あ、いやいやこれは砂が落ちないように押さえてただけでだな…」
 事故だ事故、という釈明は通じず、アシュリは赤くなって膨れている。
「もーう…許さんっ」
 chu!
「っ!? 何する…あ、こら、砂落ちたじゃないかっ」
「事故だよ事故♪」
 そんな仲の良いカップルが居たり。

「ありがとっすよ!」
 地元の客から砂をかけて貰い礼を言う羽生 沙希(ja3918)。後で飲み物でも奢ろうか?という客に
「じゃあ牛乳1瓶お願いっす!」
 と、遠慮や色気の欠片も無い沙希の横では、藍 星露(ja5127)がほかほかと体を温める砂の熱を堪能している。
「押さえつけられてるような、不思議な感じね」
「うんうん」
 暫くして星露が何やら落ち着かない様子に。浴衣がしっとりで体にぺったり、なんて事態になりはしないかと内心おろおろしているのだ。
「じゃー、そろそろ出るっすよ。お先にっす」
「え、えっと、羽生さんっ」
「星露はまだ入ってるっすか?」
「大丈夫、そ、そう、その、出るわけには…」
「あ、我慢大会のウォーミングアップっすね!」
 がんばっす〜などと良いながら、先程の地元客に案内されて行ってしまった沙希。
「ああぁぁ、そういうわけでもなくって…行っちゃったぁぁ」

●耐えろ!!
 そして迎える我慢大会。
 選手は10名。賞品は特産黒豚500g。
 選手たちが集まってきた。三枚肉だったらラフテーにしたいな、などと取らぬ狸の皮算用をする與那城 麻耶(ja0250)や、水分補給をして座って目を閉じ、精神集中する者。2人参加・2人応援の華やかな4人グループがいたり、
「おーっほっほっほ! 勝つのは此のわたくしですわー!」
 と、従者リネット・マリオン(ja0184)を引き連れた桜井・L・瑞穂(ja0027)が、高らかに宿命のライバル(?)へ宣戦布告していたり。
 またある所では苦学生が賞品に目を眩ませている。
「買うと幾らになるんだ…」
 それに答えたのは、今回、司会を引き受けたクラリス・エリオット(ja3471)だ。
「ステーキ2枚分の量じゃが、4枚分くらいのお値段なのじゃ。特級品じゃのぅ!」
「なん…だと…!?」
 クラリスの話を聞いてエンジンがかかった学生たちは数知れず。
 さあ、高級品を手に入れるのは誰だ? 遂に戦いの火蓋が切られた。

 砂をかけられる選手たち。
 そのうちの1人、七海 マナ(ja3521)が気炎を上げる。
「絶対ッ! 何が…何でも! 黒豚は僕がもらうッ!」
「あは、がんばるのですよ☆」
 冷やかし混じりなアイリス・ルナクルス(ja1078)の声援が飛んだ。マナの隣でゆるーく参戦している鳥海 月花(ja1538)にも、
「…月花、頑張るの」
 と、アイリスの隣のアトリアーナ(ja1403)から静かに声援が届く。しかし月花は眠そうだ。熱さに耐えるのはあまり得意ではないらしい。

 肌が弱いものの果敢に挑む学生もいた。月水鏡 那雨夜(ja0356)だ。浴衣の下には水着を着込んでの参加だ。クラリスが、今回の旅行で知り合った那雨夜をマイク越しに気遣う。
「月水鏡さんは無理せずなのじゃよ! でも頑張れなのじゃーっ」
「ありがとう…頑張るよ…」

 大会前からずっと砂に入ったままの星露は、開始5分を超えた辺りでそろそろ限界に。(羽生さんが応援してくれてる…まだ出ちゃだめ、でも熱い、しかし浴衣が、ああでも…)と悩んでいるうちに頭がぼんやりしてきて…。職員に助け出され、同じ頃熱に耐えかねて体を動かした那雨夜と共に脱落者となった星露であった。

「2人のリタイアが出たのぅ。だがまだまだ、みんな頑張って欲しいのじゃ!」
 というクラリスからの声援に、選手の雅喜(ja0963)が
「優勝するぞ!!」
 と一声叫び、周りの選手から
「「「「おーッ!!」」」」
 と、それぞれの思いがこもった応答が。沸き返る観衆。

「そうそう。この我慢大会は、体が丈夫な撃退士ならでは、じゃ。一般人の皆様は真似しないようにのぅ!」
 という司会の注意には、職員や一般客から「「はーい」」と良い子のお返事があって笑いが起き、和やかに、しかし熱く大会は進んでいく。

 開始直前に、お嬢様・瑞穂から宣戦布告を受けていたのは市川 聡美(ja0304)、人生前向きパワフル娘。今は瑞穂と並んで砂に入っていた。時々横目で視線をかわしては、
「む、瑞穂さんも頑張るねー?」
「当たり前ですわぁ!!」
 などと言い合っている。
 が、ふと外に目をやった聡美は、売店で好物の牛乳が売り切れそうになっているのを発見。その時点で勝負云々のことが頭から吹っ飛んだ。最後の1本、手に入れなくては!!
「その牛乳、貰ったーっ!!」
「ちょ、聡美何をしていますのぉ!?」
 ビーチフラッグのような勢いでバッ、と砂を撥ね飛ばし飛び出していった聡美。それを見て瑞穂は困惑。
「うぅっ…リネット、貴女の主は此の程度では挫けませんわぁ!」
 従者リネットは瑞穂の髪をタオルで纏めなおし、決然たる面持ちの主をパチリと撮影。
「その意気ですお嬢様。嗚呼なんと心打たれるお姿!」
 と声援(?)を送っている。外では、ラスト1本の牛乳を手に入れた聡美が腰に手を当て、瑞穂に見せ付けるが如くそれを飲み干した。
「いやー、温泉入った後の牛乳は最高だねー! 宇宙を感じる!」
 新鮮な牛乳が心に染み込み溢れ出た言葉は、意図せず聡美への精神攻撃に。目の前で実に美味そうに飲み干されるとやはり何だか悔しいのだ。
「わたくしは脱落などしませんことよ…っ」
 搾り出した言葉が彼女自身の心を戦線に引き戻すのだった。

 その近くで、
「くぅーっ…熱い! 暑い? とにかくあつい!!」
 と、與那城 麻耶(ja0250)が声を上げた。そう、砂中の温度は普通の風呂よりはるかに熱くなる。砂を動かせば熱が逃げてちょうど良くなるのだが、不用意に動かせば砂から肩が出てリタイアだ。
「でも耐える! 練習や実戦の厳しさに比べたらこんなモノ!!」
 体育会系熱血娘はひたすら耐える。

 さて、男たちも負けてはいない。入念な準備のもと参加した御暁 零斗(ja0548)は、頭側のちょうど対称の位置にいる選手と張り合うように熱に耐えていた。開始直前まで精神集中していたため顔も見ておらず、どこの誰かはわからない相手だが、さっきの「優勝するぞ!」に対する「おー!」という気迫ある声が零斗への挑戦のように感じたのだ。

(誰だか知らねェが、コイツにだけは負けたくねェな…ッ!)

 奇しくもその思いは、相手の小田切ルビィ(ja0841)と全く同じだった。始めは賞品の黒豚のことで頭がいっぱいだったルビィだが、頭の向こう側で真剣な空気を醸し出している相手に対し、負けてなるものかと気合を入れなおす。

 司会が、ある選手の名を呼んでみた。
「…鳥海 月花さーん?」
 返ってくるのは寝息。応援のアイリスやアトリアーナが声をかけたりして起こそうとするがなかなか起きない。眠ったままの入浴は危ないので残念ながらリタイア、砂から引っ張り出されることと相成った。
 アイリスが、残った七海に渋々本気の応援を始め、アトリアーナも同調。
「仕方ないです、応援しますよ七海さん、晩御飯の肉のために頑張るのですー!」
「…みんなの晩御飯はマナにかかってるの。…頑張るの」
「でもそろそろきつい、よ…だ、誰か…上に乗って動けなくしちゃ…って…?」
 だんだん危うい感じになってきているマナだった。

 選手10名中、4人脱落。この後、遂に瑞穂がリタイアして脱落5人目。
 残る選手は半数となった。

「これ以上は…無理、むりむり…ギブ!!」
 そう言って砂を蹴って潔く起き上がったのは雅喜だった。
「………右に、同じッ」
 と続いてリタイアしたのは麻耶で、
「くはー! 外の空気が気持ち良いーっ!」
 生き返ったような心地というのを味わうのだった。
 そして続くリタイア選手は、
「…もう…ゴールしても…いいよね?」
 マナ。意識も朦朧で何やら口走っていた。さあ、優勝賞品の行方は?

「負けて、たまるかよ…ッ」
「そりゃ、こっちの台詞だ…!」
 顔の見えないすぐ近くの相手が最後の敵。そして。
「む、」
「り…」

「「だ!!!」」
 両者そう叫んで、ガバッ。その動きは殆ど同時。結果…
「優勝はー…今日だけ特別、小田切ルビィと御暁 零斗の2人! おめでとうなのじゃ!」
「え、るび…て…」
「みあ、き…?」
 それぞれの名前に非常に聞き覚えがあり、遂に互いの顔を確認した2人。
 一瞬固まり…そして大笑い。そこに居たのは互いに見ず知らずの誰かなどではなく、正真正銘自分の幼馴染だったのだ。腹を抱えて「おまえだったのかよ!」と笑いながら、健闘を称えあう2人に、周囲から拍手が送られた。ちなみに賞品の黒豚肉は2人で仲良く分けることに。
 我慢大会、これにて閉幕。

●はしゃげ!
 昼頃には温泉場を後にした学生一行。
 移動した先はキャンプ場だ。ここからは自由行動。思い思いに散らばっていった。
 原っぱでは、散歩する者や、叶 心理(ja0625)のように良い天気の空のもと昼寝を楽しむ者も居る。また、ちょうど満開の時期を迎えている菜の花畑に飛び込んだのは並木坂・マオ(ja0317)。
「わぁぁー、きっれーい!」
 ちょっとした夢気分。普段から元気で天真爛漫な彼女だが、街中で日々を過ごすマオにとっては自然に溢れている場所というだけでもテンションの上がる場所なのだ。
 平坂 九十九は売店でご当地弁当を購入。つけ揚げや刺身、山菜と肉の炒め物などが入った結構豪勢な弁当を、原っぱで広げてマイペースに食べる。その後、食べ終えて出たゴミはきちんと袋に詰め、ついでに落ちているポイ捨てゴミも車椅子から器用に拾ってゴミ袋へ。来る前よりも綺麗に。きっと彼は当然のこととしてやっているのだろう。

 キャンプ場と原っぱの外周、南国の鮮やかな自然を眺めつつランニングしているのは玄武院 拳士狼(ja0053)だ。このあたりは起伏に富むので鍛錬には好都合な場所でもある。
「良い空気だな…」
 2周してから原っぱに入り、日なたに座ってストレッチや筋トレ。屋内で器具を使って行うトレーニングも大事だが、こういった場所で羽を伸ばし、美味い空気を吸うのも大切なことと言えよう。

 修行に励む拳士狼のそんな姿や、原っぱの隅で涎をたらした心理の寝顔。そんなものをパシャパシャと撮るのはカメラマンの広彦だ。(相変わらずアロハシャツが目立つ。)また、彼は売店へ出向き、そこで買い物をしている学生たちに『あれをこう料理すると美味いよ』と教えている地元の店員のやり取りも、許可を得てパチリ。
「我々を支えて下さる皆さんの暖かい笑顔を、忘れずにいたいものですね」

 夕方になって、夕食の準備に取り掛かる者が増えてきた。
 とあるコテージのそばでは、大きな鍋と調理用具などが用意されている。【探偵倶楽部】の面々が集まり、材料を持ち寄ってカレーを作るらしい。 …そう、材料を、各々、思い思いに持ち寄って…。
 そして、【探偵倶楽部】部長・九神こより(ja0478)主催の、総勢10名による『闇カレー』が出来上がった。内容はそこそこまともな物から奇想天外な物まで多種多様なカレー。事前に出されているヒントから、奇天烈な材料を放り込んだ犯人を捜せ!というこの部活らしいイベントが行われる。
 皿に盛られたライスが、どこか奇妙に思える色合いのカレールウに染まる。一皿ずつ行き渡り、いただきます。
 相伴に預かろうとやって来ていた拳士狼が、渡された皿を見て思わず
「…こ、これは…カレー、なのか?」
 と呟いた。得体の知れないうねうねしたものが入っていたり、なんだか様々な甘い匂いや香ばしい匂いが…。
 ジネット・ブランシャール(ja0119)が自分の皿に取り掛かる。
「確か、『中からじゅわっとするもの』を入れるって久遠が言ってたわね…巾着かn」
 言いかけて、悶絶。久遠 栄(ja2400)お手製、激辛ソースの入ったハンバーグに大きく齧り付いてしまったのだ。言葉も出せないが、水!みず!!と一旦輪から離れるジネットであった…。御剣トツカ(ja0938)が見送る。
「何があったんだろう…えーと、僕も推理だ推理。九神部長が入れるツルツルしたもの…その正体は、おそらく卵だー!」
 が、しかし卵は入っていない。他の部員の皿にもそれらしいものは無し。
「残念だったね探偵くん。私が送り込んだのは…こっちだよ」
 ニッ、と笑う可愛らしい怪盗…もとい部長のスプーンがすくったのは、つるつるくにゃくにゃの糸こんにゃく。
「うわぁー外したぁぁっ。む、じゃあ部長も僕の送り込んだ刺客を当ててみろーっ」
「よーし。……ところでこのカレー、どら焼きの仄かな甘みが…って、なっつんだろコレ!」
 こよりは後輩部員に頷きつつ、一口かきこんだカレーの風味に気付いて親友の真田菜摘(ja0431)に思いっきりつっこんだ。
「そんなまさか、なぜ私がどら焼きなんて」
 しらばっくれる菜摘。
「とぼけても無駄。辛さを何とかしようと甘いお菓子つっこむなんていう発想、なっつんしかしないって」
「……だ、だって…! カレーって聞いたから、絶対辛くなると思って!」
 観念した菜摘はチョイスの理由を説明するのだった。(因みに、こよりの追及中、揚げ菓子を放り込んだ覚えのある喜屋武 響(ja1076)が目をそらしているのには誰も気付かなかった。)
 他にも、煮込まれてすっかりふやふやになったキャベツ、何やらごつい味の熊肉、カレー風味になった唐揚げやでっかいピロシキ、そして甘いもの第2弾の洋梨や、サーターアンダギーと思しき物…。一条 空兎(ja4669)や激辛ソースから復活したジネットも、犯人捜しに奮戦する。空兎は
「ふふ、このオレに当てられないものはないのだ!」
 きゅぴーん☆と目を光らせてから、
「…これ、カレーパン?」
 とピロシキを見つめて首を傾げる。カレーパンで空兎に思い当たる節は無く、それを投入した犯人は遂に捕まらなかった。カレーパン…ではなく、ピロシキを投入したのはロマーシカ・ツヴィトーク(ja5416)で、
(…ん、パンにカレーが染み込んで結構美味しくなったかも)
 などと満足げ。ちなみに彼が出していたヒントは『ロシア的なもの』。カレーパンで空兎の脳内検索にヒットしなかったのも道理である。
 わいわいがやがや、時に犠牲者を出しながら、【探偵倶楽部】謹製・闇カレーは消えていく。

 その近くではバーベキューをする面々が集まっていた。
 マオ、ユウ(ja0591)、那雨夜、クラリス、海斗。零斗とルビィの我慢大会優勝コンビや、アイリス、アトリアーナ、月花、マナの4人組も居る。
 コンロ3台に分かれ、売店で買ってきた肉や野菜、魚といった海の幸山の幸がジュージューと良い音をたてて焼かれる。
「お、焼けてるなぁ」
「美味しそうじゃのぅ〜」
「お肉、お肉っ! 食べるぞ〜」
 海斗、クラリス、マオが嬉しそうに肉を見つめる。その向かいで
「焼けたっかな〜♪ まっだかな〜♪」
 とルンルンしているマナが居たので声をかけるマオ。
「お肉好き?」
「好きー」
「でも、野菜も食べなきゃだよ?」
「おーけい、そっちもねっ」
 肉の取り合い、牽制のし合い。そんな彼らの皿に、
「はい、野菜どうぞ」
 月花がトングで熱い野菜をポイポイポイ。横に居たユウの皿にも
「はいどうぞー」
 と配られた。また、月花と共に調理を担当していたアトリアーナがマナに寄越したのは
「はい、マナ、これあげる」
 空豆10個の串焼き。
「…でかっ。しかも豆だけって」
「ルナと、月花にも」
「ねえ、あの、リアさん、私にもお肉下さい…」

 零斗とルビィが使うコンロでは、優勝賞品の黒豚肉がスライスされて良い匂いで焼けていた。
「しっかし、お前とここで鉢合わせるなんてなァ」
「偶然ってすげえな」
「そーいや、昔も似たようなこと無かったか?」
「あー…今回ほどじゃぁなかったが」
 昔話に花が咲きつつ、美味な肉に舌鼓を打ちつつ。バーベキューの食材は学生たちの腹に収まっていくのだった。


 暗くなり、テントやコテージに入る一行。テント、あるいは寝袋を選ぶ者もいれば、虫が嫌だったり、テント設営が不得手でコテージを選んだ者も多かった。
 あるコテージでは、試合時間は消灯時刻までという条件で交渉成立し実現した男女混合枕投げ大会を開催。【探偵倶楽部】のメンバーだ。
「食らえっ入魂の一撃!」
「生死を賭けぬ戦いといのも面白いもんじゃの〜!」
 童心に返って全力投擲するオールド・マンティス(ja0472)も含め、大騒ぎの大はしゃぎ。
 レディファーストを重んじロマーシカは女子を守りつつ男子を狙う。そこまではっきり態度に出すのは恥ずかしい栄はさりげなく女子をかばう位置に…立ったが、容赦なく飛んでくる枕枕枕。
「ちょっ、集中攻撃とはっ!」
 作戦を立てて守りあったり、しかしその中で裏切りがあったり、物陰からの狙撃をしたり。あるいは正々堂々と最前線に立って全力で枕をぶん投げる者も。
 和やかに、白熱した時間が過ぎていく。

 夜、人目に付かぬ場所で鍛錬を行う者がいた。心理である。夜気を肌に感じながら、静けさの中を縫うように走る。こっそりと。颯爽と。

 また、和やかにしっとりとした時間を過ごす者たちもいた。上着を着込み、原っぱに出て散歩するのはアシュリとカルム。芝生に座り、カルムはアシュリに膝枕をしてもらう。2人で眺めるのは、満天の星空。
「きれい…」
「…だな。…アッシュと来れて良かった」
「うん…この国の星空も綺麗。一緒にみられて、良かった」
 のんびりと夜空を眺め、カルムが起きて今度はアシュリを腕枕してやる。並んで寝転がる2人。
「…アッシュ。俺を好きになってくれて、ありがとう。大好きだぜ」
 そっと、軽くキスをする。その、ほんの少しの間だけ、影が1つになった。

 原っぱの別の場所では、寝袋持参で寝転がるユウの姿が。
「…『みんなで旅行いきたい』って願いは、だれのだったかな」
 思い出すのは、先に逝った仲間たち。誰にともなく、呟く。
「…楽しいね」

「…これでまたひとつ、叶えられた。みんなの願いも残りあとすこし。…おやすみ、みんな」


 大自然の恵みを一身に浴びて、よく食べ、よく遊び、よく眠れ。
 星の綺麗な夜が、学生たちの眠りを包む。砂の熱が、太陽の熱が、料理の熱が、そして寝具の温もりが、皆の健やかなる心身に宿り、新しい力になることだろう。



新潟『雪国浪漫』ツアー
美観地区で労働の汗を流そう
奈良県、歴史堪能(?)旅行
粉雪のスイーツ王国
モデル体験ツアー〜らららガーデン♪〜
大阪日本橋 〜電気街ツアー
東京もふランドバスツアー
島根一畑電車ゆらり旅
長野渋温泉巡り
のんびりのどかに、花巻温泉郷
冬の南国でのびのびと
最古泉おばけ道中
闇に潜む罠‥‥?






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