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長野渋温泉巡り  タグ:【長野】  (矢神千倖)

●結願行列
 長野、渋温泉。温泉街だ。何と言ってもここの目玉は九つの外湯。中でも九番湯は結願湯と呼ばれ、ある謂われが存在する。
 それは結願湯の外に設けられた夢ぐり願い処で願掛手桶を振って、出てきた数字に該当する外湯へ願い札を持っていき、設置された印を札に押してついでにお湯にも入る。最後にお社の格子に願い札を結ぶが願い事が叶うというもの。
 悩み多く、恋多く、可能性に溢れ、未来を背負って立つ若者達。将来に希望を抱く学生達が、次々とこれに飛びつくのも当然か。
【青春謳歌、その為の友人と恋人!】
 札にそう書いたのは笹鳴 十一(ja0101)。
 学生の内から青春謳歌への憧れが生まれるのは珍しくもあり、実に若者としての意識が高く非常によろしい。と、筆者は考えるが、どうだろうか。
【良き出会いに恵まれますように】
 その隣でそう願う男がいた。鳳月 威織(ja0339)だ。
「あ。あんたも恋人が?」
 たった今自分で願ったばかり。笹鳴がそう思うのも思考の流れからして当然と言えるだろう。
「違いますよ」
 鳳月は小さく息を吐き、細くした目を持ち上げる。
 鋭く射抜くような視線に、思わず笹鳴がたじろいだ。
「強いて言えば、ライバル。そんな人を、探しているんですよ」
 彼らだけではない。結願湯の夢ぐり願い処には、こうした願掛けのために多くの学生が集まっていた。
 先の笹鳴のような願掛けをする者も、もちろんいた。だが流石久遠ヶ原学園生といったところか、それとは全く異なる願い事を札に書く者も多かった。
 中でも非常に多かった例が、【もっと強くなりたい】【もっと戦いたい】といったもの。今期の入学生には意欲的な者が多いらしいことが、こういったところからも伺えるようだ。
 手桶を振るのは早いもの順、といった雰囲気。せっかちな者は我先にと社へ向かい、手桶を振った者から順次該当の外湯へ向かって行ったのである。

●外湯巡り
 中には、ひとまず全ての外湯を巡ってから夢ぐり願い処へ寄ろうという学生もいた。
 とはいえ、それぞれの外湯は五人も入れば満員。六人目が入ろうものなら、一切身動きが取れなくなるほどに狭い。だからこれだけの学生が押し寄せれば、どこも人で溢れる。また一般の旅行者も多いため、順番待ちをしなくてはならないような事態にもなる。
 向かった先の外湯では既に順番待ちの学生が外で待機している、なんてこともあった。鐘田将太郎(ja0114)が一番湯へ辿りついた時には、既に二人の学生が外で順番待ちをしていた。
「今日は風が強いなー」
 そう言って浴衣を軽くはたくのは柊 太陽(ja0782)。この日は風が強く、殊狭い道路に面するように並べられた外湯の前を吹き抜ける風は強烈だった。
「オンセンオンセンユカータオンセン!」
「いや、テンション上がってんのは分かるけど、あまりはしゃぐと面倒なことになるぞ」
 初めての温泉にNicolas huit(ja2921)のテンションは上がり続ける。これまた初めて着る浴衣をパタパタと翻し、風に乗って踊っているかのようだ。
 柊が溜め息混じりに注意を入れるが、その口元は綻ぶ。せっかくの旅行なのだから、楽しまなくては損だ。
 順番待ち。早く入らなくては全制覇する時間がなくなってしまう。鎌田は焦ったが、この様子ではどこの外湯も人でいっぱいだろう。一つ一つを確実に入っていった方が得策に思える。
「こりゃ、時間かかりそうだな」
 肩を落としてこめかみを掻く鎌田。こうなっては待つ以外に仕方がなかった。
「俺達が来た時にはもう人が入っていたから、そんなに時間はかからないと思うけどなー」
 丁度、柊がそう言った時だった。
 一番湯の扉が開き、中から一人の老人がよぼよぼと出てくる。一人分、空いた。
「僕の番――」
「よしきた!」
 最初に並んでいたのはどうやらNicolasだったようで、ウキウキした表情で扉に手をかける。
 だが鎌田が、それをはたくようにして扉を開けた。そして中へ身を滑り込ませようとする。割り込みだ。
「あーっ、ずるいずるい!」
 Nicolasが指差して悪態を垂れる。
 こういうものは入った者勝ち。鎌田はにたりと笑んで扉を閉めよう……としたが、それを一本の腕が阻止した。
「旅行とはいえしていいことと悪い事がある、わかるな?」
 ゼルク=ブラックオーガ(ja0735)。彼もまた、外湯全制覇を狙う男だ。どうやら、今のやりとりを見ていたらしく、不正を正そうというつもりのようだ。
 じたばたと抵抗する鎌田を引きずり出したゼルクは、Nicolasへ先を勧めようと――
「……む、ここは男湯のはず、だが」
 して、はてと首を捻った。
 整った端正な顔立ちに華奢な体躯。Nicolasのその姿は、ゼルクの目には少女として映ったのである。
「僕、男! ちゃんと男!」
 ぷんすかと頬を膨らませ、彼はぷりぷり怒りながら外湯の中へと入っていった。
 そのやりとりを、鎌田は苦々しい顔で、柊はくすくす笑いながら眺めていた。
 とはいえ。流石に鎌田も反省したらしい。ゼルクの手を振り払うと、やや目を逸らしながらであるが、「悪かったよ」と口にした。
 うむ、とゼルクが頷く。と、そこで外湯の扉が空いた。
 また一人分空いたのだろうか。いや、そうではない。そこから顔を覗かせたのは、Nicolasだった。
「その……ありがとう。旅行、皆で楽しもうね!」
 中の熱気のせいなのかちょっと顔を赤らめて、彼はそう言ってにっこりと笑んでみせたのである。
 その隣で、くすくすと笑む女性がいた。神月 熾弦(ja0358)だ。
「仲がよろしいのですね」
 どうやら女湯の方は男湯ほど混雑しているわけではないらしい。順番待ちをしている女性は、彼女一人であった。
 それなりに、と言った様子で、柊が肩で反応してみせると、神月はまたくすりと笑った。
「皆様は、例の夢ぐり願い処へ寄っていらしたのでしょうか? 何かお願い事でも?」
「みんなしあわせ!」
 問いかけに元気良くNicolasが答える。
 その様子が何だかおかしくて、思わずゼルクが笑んだ。
 これほど素直に、ストレートに宣言されては、誰も茶々を入れることなど出来ないだろう、と。
「貴公は何かあるのか? えっと……」
「鎌田だ。俺は……、美味い米が、食いたい」
「まぁ」
 一同、笑い。
 そんな、温泉効果がなくとも暖かくなるような光景。
 しかしそんな空気を一瞬にしてぶち壊す出来事が訪れた。
 温泉街を吹きぬける一迅の風。人をも攫うようなそれが掴んだのは、神月が身に纏う浴衣だったのである。
 翻る浴衣がはらりと宙に泳げば、出でたるはすらりと白く瑞々しき脚。小股の切れ上がったいい女とはまさにこのこと。神月の(だけではないが)身を包む薄布が捲れ上がり、彼女の素足を露わにしたのだ。
 行け、もう少しだ、頑張れ風! もっと強く、もっと激しく! と、筆者が祈祷したことは、筆者と読者諸君だけの秘密だ。
「あ、いやぁっ」
 慌てて浴衣を押さえる神月。
 だがもう遅い。その様子は既に筆者が堪の――もとい、その場に居合わせた男性陣の脳内アルバムにこっそり納められたことだろう。
「よっし、さっさと札を結んで九の外湯に入り直そっ」
 今しがた神月をハプニングが襲った一番湯。
 そこから出てきたのは別天地みずたま(ja0679)。火傷しそうなほどに熱い湯に浸かったその体からは、身を包み隠してしまうほどの湯気が発せられている。
 別天地が見た光景は、まさに風が吹き抜けた直後。外で待機していた者の浴衣が大きく崩れ、めいめいが佇まいを整え直しているところだった。
「何してんの?」
 そりゃそう思ってもしょうがない。
「いや、今強い風が……」
 説明のために柊が口を開く。
 だがしかし、そこで吹き抜ける第二の風。
 巻き起これ、いや、巻き上げろ!
「んーっ。熱い湯の後だと風が気持ちE〜」
 別天地はこれを大腕を広げて迎える。
 先ほどの一回で慣れた学生達はすかさず浴衣を押さえてやりすごすが、そうでない別天地の浴衣は軽やかに風に舞う。
 前部の重なり合った生地が開かれてゆく。秘められし禁断の領域が、徐々に露わとなる。
「ふぅ。あれ、皆どうしたの?」
 風が止み、辺りが静かになれば、誰もが別天地から目を逸らしていた。
「いや、何でも……」
 柊はそう言うが、この場にいた男性陣は一様に、胸中こう呟いた。
(みずたま……)

「あっお婆ちゃんにお土産買って帰ろう」
 温泉ですっかり暖まり、上機嫌な天道 ひまわり(ja0480)は、外湯を出るなり手をポンと叩いて呟いた。
 この温泉街には土産屋もずらりと並んでいる。土産といっても種類が多く、選ぶのに困ってしまうほどだ。
 どれがいいだろうか。そう悩んでうろうろする内に、結願湯の前へ出てきたようだ。
 そのお社には、中津 謳華(ja4212)の姿があった。彼は既に願い札を社の格子に結び、ここで休んでいたらしい。真面目な顔をしながらではあるが、手に収めた饅頭に食らいついている姿は、どことなく不機嫌そうに見える。だが、それが彼の素の姿なのだろう。
 もちろん、不機嫌ないうわけではない。
 天道はその姿を見て、ピンと何か閃いたらしく、「あっ」と言葉を漏らした。
「……食うか?」
 視線を感じた中津は、腕にかけていた袋からもう一つ饅頭を取り出すと、天道の方を向いて軽く振った。
 だが天道は、中津が予想した理由で視線を投げていたわけではなかったようである。
「そうだ、お饅頭。温泉饅頭がえぇな、うん」
 温泉街のお土産としてはぴったり。中津の食べる饅頭を見て、決心がついたようだ。くるりと中津の方に背を向けると、キョロキョロと辺りを見回して近くに土産屋がないか探す。
 その時だ。この温泉街に、またも紳士達の祈念の賜物もとい突風が吹きぬけたのである!
 バサリと音を立てて浴衣が踊る。
 薄布の開かれたそこから表れたのは、白い、白い……。
「おっと、前垂れが長すぎたか」
 FUNDOSHI!!
 中津御自慢の真っ白な褌である。輝いてるぜ兄貴ィ!
「にゃぁ〜、お嫁に行かれへんがな」
 だがそうこうしている間に、天道が浴衣を押さえてそそくさと退散してしまった。
 お嫁に行けなくなるような事態になっていたのか! 畜生見逃した!

 丁度その頃。
 社と外湯とをせわしなく往復する者がいた。月詠 神削(ja5265)は、どうにも願い事が多いらしい。もうこれで三往復目だろうか。
「何をそれほど願うことがある?」
 まだ社に留まっていた中津が、幾度となく現れる月詠に声をかけた。ここにいれば、自ずと人の顔を見る機会が増える。その中でも見たような顔が繰り返し現れれば、往復していることくらいはすぐに知れる。
「ん? ああ。購買に鎖鎌を入れてほしいとか、依頼にもっと入りたいとか」
「お。同じこと考えてるのもおるもんやな」
 そこへ湯気を連れながら姿を見せたのは宇田川 千鶴(ja1613)。手に握るのは、願い札だ。もう既に印が押されているところからして、手桶から引いた番号の外湯に入って来たところなのだろう。
 その札に書かれた願い事は、【もっと戦場に行きたい】だ。
 活力ある新入生達がこぞって依頼を受ける関係上、必ずしも戦場へ行けるという保証のない現状。もっと撃退士として活動したい、という願いが、そこに表れていた。
「お前もか。考えることは同じ、だな」
「俺も似たようなものだ。より強く、そして他者を護れるように在りたい、とな」
 中津は既に格子へくくりつけた札を顎で示す。
 誰もが、撃退士としての意識が高かった。
「でも、そんなにたくさん願い事して、全部叶うん? こういうのって、普通一つだけやと思うけどなぁ」
 そうした中、宇田川が疑問を挟む。
 言葉は月詠へ向けられたもので、いくら願いが叶うといっても、欲張ってあれもこれもと願えば、何だかありがたみに欠ける。
 当然、願い事は一つまでという決まりもないのだが。
 なら保険をかけるくらいは、構わないだろう。
「じゃあこれで最後。これが最優先の願いだ」
 夢ぐり願い処へ立った月詠は、また手桶を振って札を手にした。
 そして願い事を大きく書いて、これこそが一番の願いであると社に翳して見せた。
【強くなりたい】
 ふ、と口端に笑みを浮かべた月詠は、そのまま駆け出した。願いを叶えるために。
 せわしないなぁ、と宇田川が呟けば、中津も肩を降ろしながら笑む。
「さて。屋台も出てるみたいやし、行ってくるわ。またどっかで会ったらよろしゅう」
 小さく手を振り、宇田川がその場を後にする。
 それを見送ってから、中津も社の外へ足を向けた。

「友人と仲良く、か。他に願うこともないしな、うむ」
 天沢 紗莉奈(ja0912)は札を格子に括りつけ、自らに言い聞かせるように何度も頷いた。自身の言う通り、他に大した願いがないことが少々引っかかったようである。彼女にしてみれば、小さな願いだ。
 しかしそれは、充実した日々を送っている証拠でもある。
 小さな願い。もしかしたら、そうしたものの方がより叶いやすい願いなのかもしれない。
 願掛けは終わった。ここに長居する理由もなく、天沢は去ろうと踵を返す。
「あ、もう願掛け終わったのですか?」
 丁度入れ違いになりそうなタイミングで社に現れたのは望月 紫苑(ja0652)であった。
「まぁな。どうだ、願いは叶いそうか?」
「さぁ、どうでしょうね」
 天沢の問いかけに、望月は困ったように笑った。
 差し出して見せた札に書かれている願いは、【無病息災】。
 ありがちでしょう、と苦笑する。
「他に、思い付くこともなくて」
「いいんじゃないか。私も似たようなものだ」
 小さな笑みを交わし、望月は札を格子に結ぶ。す、と立ち上がって視線を映すと、群青色の旗が目にとまった。
 そういえば、ここはそういう土地だったか。
「あ、二人も願掛けなのかな?」
 何かを言おうと望月が口を開きかければ、それに被さって声が上がる。
 たった今願掛けの湯から上がってきたばかりらしいクレア(ja0781)は、札を格子に結ぶと手を合わせた。
「小さな願いだけどな」
 天沢は苦笑するが、きっとそんなことはない、とクレアは首を振る。
「幸せなことだと思うよ」
「そう言うあなたのお願いって?」
 にっこりと笑んで見せたクレアに、望月は尋ねた。
 すると途端に顔を真っ赤に染めたクレアは、大したことじゃない、と手を振り首を振る。
 よほど恥ずかしい願い事をしたのだろうか。それとも、ただの照れ屋さんなのか。
「ほっ、ほらっ、おそば食べに行こうよ! 信州そば!」
「あ、そうでした。さっきも、丁度お蕎麦屋さんのの旗を見かけて、行こうかと思っていたところでした」
 何とか話題が逸れた。
 ホッとするクレアだったが、しかし、不意打ちの風は吹く。
 狭い道を通りぬけ、一気に勢いを増したいたずらな風は、社を出ようとした彼女達を襲った。
「わぁっ、もう、風強いなぁ……」
 慌てて浴衣を押さえる三人。
 乱れた髪を整えたクレア。その横では、何故か望月が唖然の表情。
「……何だよ、見るなよ」
 視線の先には、天沢。
 いったい望月は何を見たというのか。教えてくれ、いったい何を見たんだ!
「は……、履いて、ない……」
 畜生見逃した!

●結願湯
 各外湯はそれぞれが非常に狭いものの、九番湯こと結願湯だけは広々としており、一度に二十人程度が入っても尚余裕がありそうだった。
 ほぼ確実に順番待ちなしで入れる温泉ということで、まずはここに入ろう、という学生も多かった。
「おい馬鹿弟子、ここは男湯だぞ? 女の子が入って来るな」
「自分男やっ! 失礼やで」
 男湯の脱衣所では、ちょっとした騒ぎが起きていた。
 中性的、いや、女性的な顔立ちの亀山 淳紅(ja2261)を、古賀直樹(ja4726)がからかっていたのだ。
「衣馬ちゃん、古賀師匠がぁっ」
「分かったからこんなところで騒ぐな、恥ずかしい」
 亀山に泣きつかれた海本 衣馬(ja0433)は、適当にあしらいながら衣服を脱いでゆく。
 するりと浴衣から現れた肉体は、引き締まっていてたくましく、美しい。力強さとしなやかさを併せ持ったナチュラルマッスルが、見る者(がいるかは謎だが)を魅了する。
 極めつけは、筆者もうっかりうっほりしてしまうほどに立派な(検閲削除)。
「恥ずかしいゆーたって、その格好のが恥ずかしいやんか!」
 頬を染めながら、亀山は海本から目を逸らす。
 特に前を隠すということもない海本を直視するのが、躊躇われたのだろう。
「なるほど、ああするのか。作法なら仕方ない、か……」
「そうそう。あれこそが真の、裸の付き合いってやつだね」
 その様子を見ていたユリウス・ヴィッテルスバッハ(ja4941)は、冷や汗を流しながら拳をグッと握った。ああする、というのは、要するに脱いでも前を隠さない、ということ。
 温泉は初めてだというユリウスを面白がった高坂 涼(ja5039)が、ついついからかいにかかってしまう。
 別にこれで誰かに迷惑がかかるというわけでもなかろうが、しかし、ずれた作法であることには間違いない。
「ほれ見ぃ、伝染したやないか」
「衣馬、馬鹿弟子、先入るからな」
「ちょ、置いていかんといてーっ」
 そんなやり取りなどお構いなし。大本の原因を作った古賀はいつの間に浴衣を脱いだのか、さっさと浴場へと足を運んだ。
 慌てて亀山が後を追い、海本もそれにのんびりと続いて行ったのである。

「俺はここまでだな。御幸浜のこと、後はよろしくな」
 一方、こちらは女湯――の入り口。
 知り合い同士でこの地を訪れていた者も多かったが、彼らは特に人数の多いグループの一つだ。
 メンバー全員を数えるには両手の指が必要な人数であるが、それだけの人間がいながら、どういうわけか男子は綾瀬 レン(ja0243)ただ一人。旅館も含めて混浴はないために、温泉へ入るとなれば必然的に彼だけは別行動を取ることになっていた。
 そんな彼が押す車椅子に座るのは、御幸浜 霧(ja0751)。足が不自由で、この旅行では常に綾瀬に車椅子を押してもらっていたのだ。
「ありがとうございました。綾瀬様もゆっくり浸かってきてくださいね」
 座ったままでも礼儀正しく礼ををする御幸浜に、綾瀬はにこりと笑んでみせた。
 交代するように車椅子に手を置いたのはカタリナ(ja5119)である。
「では、私が。それより、どう……ですか?」」
「どうって、何が?」
 右手では車椅子をしっかりと掴みながら、左手を広げて見せるカタリナ。その頬はやや赤く、よほど鈍い人間でない限りは、ははあなるほどな、とニヤリと出来る場面。
 だがここで首を傾げてしまう綾瀬。
 何だか可哀そうではあるが、気づかれないのだからしょうがない。弱気になって、つい「何でもない」と言ってしまいそうになる。
 そこで助け舟を出したのは、伊那 璃音(ja0686)だった。
「浴衣よ。似合ってるかどうかって」
「あっ。あぁ、似合ってるよ。綺麗じゃないか」
 言われて、ようやく気がついたらしい。
 綾瀬の返事は何だか取り繕うようなものであったが、言われた本人はそれで満足したようだ。言葉に頬を染めたカタリナは、小さく頷いてみせる。
「それじゃ御幸浜、また後でな」
 綾瀬は軽く御幸浜の手を握って言葉をかけると、そのまま男湯の方へと消えてゆく。
 それを最後まで見届けてから、一向も女湯へと入ってゆくのだった。
 このグループには、初めて温泉に入るという者も何人かいた。そこで作法の手ほどきを買って出たのが、御幸浜である。
「髪の長い方は束ねてくださいね。それから、湯船ではあまり騒がないように」
 こういった指導を受けたのは良いものの、実際の場面で活かせるかどうかは当人次第。
 特に、今は旅行中。テンションだって上がりやすければ、はしゃぎたい気持ちに駆られやすくもなる。
 彼女らの中で最も気分が高ぶっていたのが、ヴィーヴィル・V・シュタイン(ja1097)だ。
「ああ、お姉さまと一緒にお風呂に入れるなんて夢のようです……」
 浴衣を脱いで透明な肌を晒しながら、義理の姉であるファティナ・V・アイゼンブルク(ja0454)の腰に腕を回して浴場へと足を運ぶ彼女。
 敬愛する義姉と一緒の湯船に入れる。これ以上の至福は、彼女にはなかった。
 そしてうら若き乙女達の裸が見れる。これ以上の至福は、筆者にはおっと誰かが来たようだ。
「お姉さまの浴衣姿も見れたし、もう明日死んでも悔いは――」
「そんなこと言わないの。そうだ、背中流してもらえる? 私もやってあげるから」
 この言葉に、ヴィーヴィルが一層瞳を輝かせたことは言うまでもあるまい。
 既に脱衣所でも大はしゃぎの一向であるが、浴場には彼女ら以上のはしゃぎようを見せるグループがあった。
「美佳ちゃん可愛い♪抱きしめちゃいたいくらいに♪」
「もう、抱きしめてるじゃないですかぁ」
 こちらもグループでこの渋温泉に訪れた者達。
 猫野・宮子(ja0024)は、まだ幼い三神 美佳(ja1395)の体を洗ってあげながら大興奮の様子。
「ほら、困ってるじゃない。ちゃんと洗ってあげなきゃ」
 それを制止したのが、最年長の大上 ことり(ja0871)。グループの中ではお姉さんというだけあって、それなりの責任感を持って行動しているということがよく分かる。
 渋々、猫野は三神を解放してやる。ほんの軽くでも謝っておくべきか。そう思って、顔を上げる。
 しかしそこに立っていた大上は、猫野が想像していた以上に大きな存在感を醸していた。
 上が大きいと書く苗字は伊達ではない。首の下で主張する一対の大きな丘は、猫野のコンプレックスを刺激するには十分なものだった。
「むぅ、ことりさん大きいよねー。どうしたらそんなに大きくなるのかっ」
「ほんとだ。すごいなぁ……」
 これには三神も一緒になって羨ましがる。
 大きなおっぱ――バストの持ち主には、男性のみならず女性でも憧れを抱くもの。
 しかし誤解してはならない。全ての男性が、女性が、そのような憧れを抱くとは限らないのだ。
 殊男性に関しては、大上のような豊満な体型の女性よりも、三神のような(二重線が引かれて読めない)。
「そんな、私なんて――」
「そろそろブラも代えないとかなぁ。急に大きくなっちゃうし……」
 両手を振って話を別の方向へ持っていこうとする大上。
 丁度その脇を、峰谷恵(ja0699)が通り過ぎた。
 年の頃は猫野とさして変わらない。
 だが体型は一目瞭然。大上のそれと比較しても遜色ない浪漫の塊。まだまだ膨らみそうなそれが、一歩、また一歩と歩む度にたぷんと揺れる。
 初々しく、はちきれんばかりのそれは、喩え見る者が男性でなくとも生唾を飲ませるような存在感を誇っている。
 これには猫野も絶句した。嗚呼、歳はそう変わらないのに、何故こんなにも差が出てしまうのか。
 へこたれる猫野だが、何、心配することはない。そんな体型の方が好きだという者も、世には存在するのだ。恐らく。
「何だか、面白いことになっていますね」
「魅璃もこれから成長しそうですぅ」
 浴場でのやり取りを見て、権現堂 桜弥(ja4461)が一言。
 話の内容を自分に照らし合わせたのは藍川 魅璃(ja3893)だ。彼女ら二人も、あの御幸浜らと同じグループであり、藍川はその中でも最年少だった。小等部の所属であるが、その成長は案外早く、胸も大分膨らんでいた。
「せっかくだから、背中を流しあいませんか?」
 そんな藍川も周囲の雰囲気に飲まれてか、傍らの権現堂の背中を流すと申し出た。
 彼女らのグループでは最年長である権現堂。一番年下の子が誘ってくれているのに、断る理由など全くなかった。
「えぇ、じゃあ、お願いね」
 だから受け入れる。それが罠とも知らずに。
 権現堂は背中を向けている。相手には見えていないところで、藍川はにたりといたずらな笑みを浮かべた。
 手拭いにボディソープを垂らし、泡立てる。これで、権現堂の背中を洗う……と見せかけて。
「隙アリですぅ」
 そして藍川は権現堂に襲いかかる。
 伸ばした腕は背中に触れず、権現堂の脇を抜け、そして前面の膨らみに収まる。
「わっ!? もう、いけない子ね」
「ふふっ、あぁ、大きいですぅ」
 いたずら娘、藍川。その手の中で権現堂のアレが形を変えてゆく。
 権現堂が、自身の体温が上昇するのを感じたのは、きっと浴場に身を置いたせいだろう。

 結願湯の外にある社では、ユリウスと高坂がもう一人のツレが出てくるのを待っていた。彼らは三人で行動をしていたのだが、その中に一人だけ女性がいたためにこうした温泉に入る時には一時的に別れざるを得なかったのである。
 そのもう一人のツレというのは八角 日和(ja4931)だ。彼女は女性であるから当然女湯に入るわけだが、流石に男二人が女湯の出入り口で人待ちをするわけにもいかない。だから予め待ち合わせ場所を決め、そこで落ち合うことになっていた。
 つまり、待ち合わせ場所が社というわけである。
「ごめんごめん、ちょっとのんびりしすぎちゃった」
「お、来た来た……って、何それ」
 二人が待つこと十五分。八角がようやく姿を見せた。その胸には、三本の牛乳瓶が抱えられている。
 高坂が指差して尋ねるが、何となく想像はついていた。
「風呂上りの牛乳は正義! 腰に手を当ててグイっとね!」
 どうやら、温泉と聞いてはこれをやらずにはいられなかったらしい。銭湯なんかに行くとよく牛乳が売られており、これを一気に飲み干すのも一つの醍醐味と言える。これを温泉でもやろうというのだ。
 八角が待ち合わせ場所に現れるまでに少々時間がかかったのは、この牛乳を調達していたからなのだろう。
 二人に牛乳を配った八角は、気合一発、自らが真っ先に口をつけた。
「これもこの国の文化なのか?」
「うーん、まぁ、一応な」
 何だか妙な文化だ、と思いつつも、ユリウスも続いて牛乳を一気に煽る。
 あっという間に瓶は空になり、温泉で暖まった体に冷たい牛乳がよく沁み渡っていった。
 その時だ。
 お忘れではないことと思うが、この日はやたらと風が強い。ここでもやはり、いたずら風は吹いたのである。
「やっぱりこれだよ、これ! 牛乳飲まないと始まら――わわっ!?」
 社の石段を駆けた風が、八角を突き上げるようにして襲う。
 浴衣は下から捲れ上がり、火照った足を外気に晒させた。
「ビックリした……こう風強いと、皆が湯冷めしないか心配だね」
 風が吹いたのは一瞬。絶対守らなければならない一線は、浴衣を押さえることで死守出来たようである。
 ホッと一息ついてみれば……。
「何、どうしたの?」
 ユリウスが鼻頭を押さえて屈みこんでいた。
「……いや待て、これはそういうつもりでは無くて、だ……。ぐっ……」
「ユリウスさん、しっかり!」
 女性に免疫のないユリウスには、浴衣から覗いた素足は少々強烈だったらしい。
 鼻血をどろどろと流してそのままユリウスは昏倒。
 高坂は慌ててユリウスを抱え、旅館へと急いだ。急なことではあるが、体を冷やして寝かしてやれば、きっと大丈夫だろう。

●屋台広場
「幼い頃を思い出すな」
 様々な屋台の出る広場では、皐月 葵(ja3865)が林檎飴を手に感慨に耽っていた。あの頃は、もっと自然に笑えていた。そんな気がする。
 そんな彼女も、あの夢ぐり願い処での願掛けをしていた。いや、実際には最後までやらず、印を押した札だけを手提げに入れて持ち歩いている。そこに記した願いは、自らの手で叶えたいという思いを込めて。
「どうだい、調子は」
 その隣に現れたのは石田 神楽(ja4485)だ。
「まぁ、それなりだ」
「いつもとあまり変わらない?」
「そういうわけでは……」
 皐月はそう言って目を逸らす。
 ふん、と石田は鼻を鳴らした。そして皐月の視界に回り込む。
「ちょっと失礼」
「何を、む……っ」
 石田は手を伸ばすと皐月の口端を指でつまむようにして押し上げる。
 無理矢理笑顔の形を取らせようとしているようだが、何だかちょっと歪な感じだ。だが、そんなことなど石田自身もよく分かっている。
「笑顔の練習だ。じゃ、頑張れよ、葵」
 冗談で、名前で呼ぶ。
 不意を突かれた皐月は、空気だけの音を出して一瞬呆け、次の言葉を発そうとした時には、石田は目の前にはいなかった。
 手にする林檎飴に目を落とす。赤々とした輝きは、何だか火のついたように揺らめいて、情熱の色を醸していた。
「焼き鳥にたこ焼き。酒のつまみには困りませんねぇ」
 屋台でアルコールと肴を購入したリス・アーキ(ja4570)は、丸太を切り出して作られたテーブルに着いて手を擦り合わせていた。
「戻りました」
「あ、石田さん。もういいんですか?」
「まぁ、焦っても仕方ないですし」
 そこに顔を見せたのは、石田。元々一緒に飲んでいたのだが、彼は皐月のためにほんのちょっとだけ席を外していたのだ。
 仕切り直し。
 そう言って互いに缶を手に取り、乾杯の合図で乾いた音を鳴らした。
「色々あるなぁ。どれにしようか」
「あまり食べすぎないようにな」
 一方で、森林(ja2378)と南雲 輝瑠(ja1738)は片っ端から屋台を見て回っていた。焼きそばやたこ焼きなど、売られているものは縁日を彷彿とさせて心を弾ませる。
 ついあれもこれも、と手を出してしまいたくなる。森林は「屋台五つは制覇する!」と宣言し、南雲がそれに額を押さえる。
 やめろ、と言っているわけではない。
「しょうがない、俺も付き合うか」
 結構、乗り気なのだ。
(ん? あれは……)
 夢ぐり願い処での願掛けを終えた東間 誠司(ja3877)は、この広場へとやってきていた。どうせだから何か食べていこうという考えで訪れたわけであるが、彼はここで知り合いを発見していた。
 滅炎 雷(ja4615)。部活仲間だ。
 願掛けのこともあるし、きっと話題に事欠かないであろう。一緒に食べ歩きでもしようと思って、一歩踏み出してみる。
「ライ君、次は何食べる?」
「そうだなぁ。あ、これ食べる?」
「たこ焼きかぁ。いいねいいね」
 しかしよく見れば、その滅炎の傍らにはしのぶ(ja4367)の姿。仲睦まじいその様子に、思わず東間は身を隠した。
 邪魔をしては悪い、と思ったわけではない。
「しのぶ姉、願い札に何をお願いした?」
「えっ!? いや、あの……。大したことじゃ、ないよ? あはは」
 嗚呼、何とも羨ましいやり取り。まるで青春を謳歌している。
 東間を、敗北感が襲う。世は無情だ。そんな彼の脳裏には、先ほど社の格子に結んだ願い札がよぎる。
 血涙を流す思いで【彼女が出来ますように】と記した、あの願い札が。
「Oh、やはりダメですか」
 そうした中、屋台の前でしょぼくれた顔のRehni Nam(ja52836)。
「この国では、酒を買えるのは二十歳からだから……な」
「残念です」
 肩を叩いて励ましてやるのは夜刀神 雅(ja4909)だ。
 Rehniは地酒を購入しようとしていたのだ。日本では飲酒は二十歳から。当然、未成年者は酒を買うことも出来ない。
 だから販売員に酒の販売を断られて、落ち込んでいたというわけだ。
「こうなったら、とことん食べ歩きます!」
「自棄食いにはならないようにな」
 気持ちを切り替え、Rehniは別の屋台へと駆けてゆく。
 その背中を見送って、夜刀神は小さく息を吐いた。
「食べたいものがいっぱいっス、林檎飴食べたいっスね!」
 丁度その時、夜刀神の腕に飛びついて声を弾ませる者がいた。
 声の主は天宮 ぴこ(ja4977)。夜刀神とは、ちょっと特別な関係だ。
「じゃあ、買いに行くか」
「雅もいるっスか?」
「いや。一つでいい」
 パッと明るくなった天宮の表情。だが、次の返答に、すぐ曇る。
 不満そうに唇を尖らす天宮。どうせなら一緒に同じものを食べたい。そんな気持ちでいたのに、何だか裏切られた気分だ。
 だが、気持ちは同じだったとすぐ知ることになる。
「一つを二人で食えばいい」
「……!」
 傍から見れば、ちょっと恥ずかしくなってしまうような提案だ。
 しかしこれを、先に実践している者達がいた!
「幸穂、それ美味いのか?」
「うん、美味しいよ」
 夜風 隼(ja3961)、木ノ宮 幸穂(ja4004)の二人である。
 木ノ宮の手には林檎飴。
 どうやら、夜風はこれを食べたことがないらしい。巨大な赤い塊は、何だか奇妙な物体に見えたことだろう。
 返答しつつ、木ノ宮は林檎飴を一口。
 それとほぼ同時だった。夜風は反対側から林檎飴をかじったのである。
「あ……っ」
 驚いて、その手から林檎飴がずり落ちそうになる。
 咄嗟に夜風は木ノ宮の手を握り、落下を阻止した。
 こうなると、いよいよ木ノ宮は煙を吹きだしそうなほどに赤く染まる。
「ふーん? ……結構イケるな。俺も買ってみようかな」
 心臓の跳ねる木ノ宮にとって、その言葉は随分と遠く聞こえたようだ。

●夜
 学生の中には、土産物の買い出しなどで帰りが遅くなっていた者もいた。
 七種 戒(ja1267)を始めとした男女二人ずつの四人組である。
 男子組に荷物持ちを任せ、女性二人はキャッキャとはしゃぎながら街を歩く。
 日はすっかり沈み、辺りは大分暗くなっていた。
 しかし、こんな時間になってもいたずら風は絶賛勤務中であったのである。
「わっ、もう、嫌な風ーっ」
 吹き抜ける突風に、浴衣を押さえる大崎優希(ja3762)。だが今度の風はなかなかしつこい。なかなか止む気配がなく、大崎の浴衣もだんだんと根負けし始めている。
 これを見た七種。自らの浴衣はしっかりと押さえつつ、何を考えたか大崎の脇にしゃがみこんだ。
 そして……。
「頑張れ強風! いけ、そこだ!?」
 彼女もまた女性でありながら風を応援。ナイスチアリング!
「わわっ、見てない、見てないのだ」
「……うむ、見てない、から、な」
 荷物持ちをしていた錆河 飛天(ja5427)、鳳 静矢(ja3856)は、体ごと別の方を向いて目を逸らす。流石に、男性が女性の浴衣がピンチなところをこんな間近で直視するわけにもいかない。
 しかし次に上がった声で、思わず二人は一斉に振り向くことになる。
「見えた!」
「「何!?」」
 突風さんお仕事ご苦労様です!
 ちなみにこのグループ、旅館に戻ると卓球をすることになる。その中で、思わず振り向いてしまった男性陣が、七種の制裁を食らったことは言うまでもあるまい。

 この四人組と入れ替わるようにして、こっそりと旅館を抜け出した男女がいた。
 青柳 翼(ja4246)と、福島 千紗(ja4110)だ。
 日中はどこにいても人の目がある。だからこうして人気のなくなった頃に外へ出て、二人だけの時間を作ろうと考えたのだ。
 温泉街とはいえ、外は寒かった。浴衣に羽織を着ただけでは、歯が鳴るのを止められそうにない。冬場の旅行であるから、当然のように防寒着は用意してあるのだが……二人は敢えて、それを部屋に置いてきた。
「えへへ、暖かい……です」
「そう……だね」
 こうして、繋いだ掌から伝わり合う温もりが、カイロ代わりだった。これ以上のものはいらない。これさえあれば良い。
 胸の中がかゆくなるような感覚。
 ほんのしばらくの無言。静寂。カラン、と下駄の音だけが闇の中に吸われてゆく。
 二人が辿りついたのは、結願湯の社だった。
 願いの結ばれた、格子の前。誰もいない、二人だけが存在する暗がり。ただ、多くの人々の夢が、彼らを見守っている。
 ここで結ばれるのは、願いだけではない。
 二人の手が結ばれている。
 二人の視線が結ばれている。
 寄せ合った頬が、漏れ出た言葉が。
 やがて結ばれた吐息は、徐々に距離を詰めてゆく。
 熱を帯びた互いの距離は、闇の中でなくなった。ただ、瞬間を永遠に感じられれば良い。
 それが願いだ。二人の、精いっぱいの願いだ。
 他には何もいらない。ここにいられる、それで十分だ。

 あちこちの旅館や街灯から光が漏れる。社の闇には白のベールが降りてゆく。
 今この時だけは、あれほどいたずらを働いた風も、静かに二人を包みこんでいた。



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