●天国の白浜
グレートバリアリーフ。ホワイトヘブンビーチ。
まばゆい程に白く美しい砂浜が、まるで天国のようだと名付けられた。
「海だ、青いな…」
ふ、と眠たげにそう呟くのは久瀬 悠人(jb0684)。砂浜の白さが目に眩しい。
先に見えるのは、エメラルドグリーンに輝く浅瀬。
そこから沖に向かって続く蒼のグラデーションは、まさに自然が織りなす珠玉の絶景で。
「わあ、綺麗…!悠人さん、私イルカに会いたいです!」
目を輝かせる地領院 夢(jb0762)に、悠人は召喚獣を呼び出し。
「イルカか〜。よしエルダー、珊瑚礁見に行こうぜー」
野球行こうぜ的なノリで、ビーチへと繰り出す。
「…この水着、アタシには可愛すぎやしないだろうか」
身につけたロングパレオを見て、地領院 恋(ja8071)は呟いた。
碧色に落ち着いた紫の花が大きくあしらわれており、妹の夢が選んだものだ。
「凄く似合ってるよ、流石お姉ちゃん♪」
夢は気恥ずかしそうな恋を、幸広 瑛理(jb7150)の前へと押し出す。
「幸広、先輩どうですかっ」
「流石恋さんの妹さんだ、魅力を最大限に引き出す衣装を知っていらっしゃる」
ここですかさず悠人のインタビューが入る。
「俺の目で見ても、学園生の女性はレベル高い気がするのだがこれをどう思いますか幸広さん?」
「素晴らしいという言葉以外に何がありましょう、実況の久瀬さん」
「もう先輩はすぐ冗談おっしゃる…」
顔を紅くする恋に、瑛理はにっこりと微笑みかけ。
「本気ですよ、よくお似合いです。悪い虫がつかないようガードの必要がありますね」
「あ、ありがとうございます。…悪い虫はむしろ妹のが心配ですが」
仲よさそうな夢と悠人を見つめる振りをしつつ。
照れ隠しの言葉は、降り注ぐ陽差しへと溶けていく。
「海か…人の多い所は好まないが、海は好きだ…っておおう!?」
突然の背後タックルに、佐々部 万碧(jb8894)は思わず変な声が出た。
「万碧さんお久しぶりですー! なんでこんなところにいらっしゃるんですかー?」
振り向けば知った顔。
無邪気なシャロン・エンフィールド(jb9057)の登場に、驚きを隠せない。
「シャロンこそ何でこんな所に」
「私、悪魔とのハーフなのでそれで学園にきました!」
「ちょっ…待て待て。俺もそうだがな、流石にここで大っぴらに言うな」
きょとんとする彼女に、懇々と説明。昔なじみの顔に出会えてテンションMAXなシャロンが理解したかは怪しい。
「万碧さんせっかくですし、ここからご一緒しませんか?」
「一緒に…?いいけd」
言い終える前に速攻で引っ張られていく。
真っ白なビキニに水色のパレオ姿の風早花音(jb5890)は、恋人の御空 誓(jb6197)に向かって水をぱしゃり。
「見て見て誓ちゃん、海すっごく綺麗だよ〜!」
「おい、あんまりはしゃぎすぎると」
「きゃっ」
言ったそばから転ぶ花音を、誓は慌てて抱き留め…ようとしてそのまま海にダイブ☆
その後方では、青空・アルベール(ja0732)が森浦 萌々佳(ja0835)の新作水着姿に見とれ中。
「あ、いや何でもない!おおお、オーストラリアの海は綺麗だな!」
顔が真っ赤な青空を見て、萌々佳はくすりと微笑み。
「うん、綺麗だね〜。じゃあ泳ごうか〜」
その一言で青空固まる。
そういや。
私。
泳げませんね…?
「ううん、だいじょぶ! (多分)泳げ(ると信じ)る!」
萌々佳の手を取り、颯爽と沖へGO!
\まぁ沈むよね!/
「ふふっ、かわいいなぁ」
「ごめんねぇ…せっかくの海なのに」
しょんぼりする青空を、萌々佳がにこにこ励ます。
「じゃあ一緒に練習しようか〜?」
久我 葵(ja0176)と御幸浜 霧(ja0751)はビーチでオイルを塗りあいっこ。
その様子を眺めているのは、同行者のヴィルト・クリーガー(jb1234)と島津・陸刀(ja0031)。
「おめェ上手くやったなァ なかなかの別嬪じゃねェか」
葵を見た陸刀の言葉に、ヴィルトはやんわりと。
「ぇ?いえ彼女はバイト先の友人で…」
「ぁ?ここまで一緒に来といて付合ってンじゃねェのかよ、馬鹿なの?」
「バカって…でも綺麗な人ですよね、彼女」
一方で女性陣も会話に花を咲かせている。
「ところで、久我様。クリーガー様とはどのくらい進んでいるのですか?」
霧の質問に、葵はオイルを落としそうになる。
「た、ただの友人だ!…強いて言うとすればバイト仲間だ」
「ふふ、照れなくても良いんですよ」
霧は微笑みながらも、見事なスタイルの葵に見とれつつ内心でため息をついていた。
(陸刀様…先程から久我様の方ばかり見てる…)
「蓮センパイ…この水着どう、ですか?」
桃色の花柄ビキニを御崎 緋音(ja2643)は恥ずかしそうに披露。片思い中の藤村 蓮(jb2813)と、去年行けなかった海にやってきていた。
「おおう、似合ってるねぇ。可愛い可愛い」
蓮に褒められただけで、嬉しさで胸一杯になってしまう。
「蓮さんほら、凄く綺麗な海ですよ!…きゃっ!?」
はしゃぎすぎてつい砂に足をとられる。思わず蓮に抱きついてしまい慌てて身体を離し。
「ご、ごめんなさいっ」
「いや、御崎さんも大丈夫?」
得意のポーカーフェイスを保つ蓮だが、いつもより鼓動が速くなっていることには気付いていない。
「海と言ったラ、水着。水着と言ったら、カらカいついでに見せ合わなきゃならネーだろってコトで」
狗月 暁良(ja8545)がチューブトップのスポーツビキニをばばーんと披露。見事なプロポーションが太陽の下眩しい。
「えっと…僕のはちょっと恥ずかしいけど…」
頑張ってみたよ、と永連 紫遠(ja2143)が頬を染める。身につけているのは、シンプルだが可愛らしいデザインの赤ビキニ。双子の兄である永連 璃遠(ja2142)は苦笑しながら。
「僕は普通の黒のトランクスタイプだもの、面白みなんて」
「いやいや二人ともイイ感じじゃん! 俺両手に華だナ♪」
にやにやする暁良を二人はうっとりした表情で眺める。
「暁良はやっぱりスタイル抜群だね。憧れちゃうなぁ…僕も磨きをかけないと」
「紫遠もよく似合ってるよ。二人とも綺麗だから目のやり場に困ると言うか…」
赤面する璃遠の背を叩き、暁良は兄妹をビーチへと誘い出す。
「ウェイクボードやろうゼ!」
弾ける笑顔が白浜に溢れる。
●レッツアクティビティ☆
リゾート地はマリンスポーツのメッカ。
ここぞとばかりにひゃっはーしまくっているのは、少年4人組。
「ひゃっほーい、青い海に白い雲ー!!」
バナナボートに勢いよく乗り込みながら、月島 光輝(jb1014)が嬌声を上げる。
「皆ほら、はよはよ!」
光輝の後ろに乗り込みながら、雅楽 彪白(jb1956)が手招き。
「…僕、こういうの、初めてなんだよ。大丈夫かな…」
やや緊張した面持ちで鷺坂 雪羅(ja0303)が別のボートにまたがると、その後ろで白虎 奏(jb1315)が笑いながら。
「俺たち撃退士なんだから大丈夫っすよ、雪羅先輩!」※フラグ
と言うわけで、いざ出発☆
「さー海です!エンジョイしましょう♪」
同じくはりきってバナナボートへと乗り込むのは、ホットパンツ風のタンキニにを身につけたカナリア=ココア(jb7592)。同行者の夜雀 奏歌(ja1635)と狩霧 遥(jb6848)もそれに続く。
「落ちないようにしないとですね…!」
準備運動も済ませ、やる気を見せる奏歌はメロンパン柄のビキニ着用。これでもかと言うくらいバナナボートにしがみつく。
対する紺色ワンピース水着姿の遥はあまり危機感を感じている様子は無く。
「わー♪面白そうでs」
言い終える前にボートが勢いよく出発!
悲鳴と嬌声が一斉に沸き上がる。
「わー速いですねー!」
ココアは前に座る遥をハグ。遥もかなりのスピードで海面をすべるボートに大興奮。
「きゃぅー!楽しいですー♪」
最後尾で捕まっていた奏歌も、水しぶきを浴びながら満面の笑顔。
「これは!…凄い!…楽しい!」
そんな彼女達の様子を風見斗真(jb1442)は微笑ましく眺める。
「おー楽しそうにやってるなー」
ココアを見つめる表情は父親そのもの。その隣で満月 美華(jb6831)も微笑みながら。
「ふふっ皆さん楽しそうですね」
豊満なバストを真っ赤なビキニで包んだ姿はまさにセクシー。斗真は内心どきどきしながら。
こ、これは…めくるめくラキスケのよk
「じゃあ私たちも楽しみましょう」
そう言って美華が取り出したのは、特注のアザラシスーツ☆
アザラシどういうことだ。ラキスケどころの話じゃねえ。
斗真の心の声などつゆ知らず、美華は颯爽と海を泳いでいく。
「きゅきゅー♪」
「わわ、美華さん泳ぎ上手いですね…!」
うきわでのんびりと海面に浮かんでいたクロフィ・フェーン(jb5188)が驚きの表情を浮かべる。
クロフィが身につけているのは白色ビキニに腰にはパレオ。パーカーを羽織った姿は、普段の少女姿とはうってかわって見事なスタイルで。
実は彼女、光纏すると身体が大人へと変化するのだ。
「海に来たのはいつ以来だったかな…」
きらきらと輝く水面に、目を細める。
その頃、ダイビングスポットへとやってきていたNoA(jb4570)は、皆が潜る様子を羨ましそうに眺めていた。
「南の島の海はすごく綺麗だと言われてきたのでぃす。本当に綺麗でびっくりなのでぃす」
早速自分も入りたい…と思ったのだが、実は今まで泳いだことが無い。
「誰か泳ぎを教えてほしいのでぃす…」
「私達と一緒に潜りますか?」
海中から顔を出したのは、山科 珠洲(jb6166)と仁美 琥珀(jb7162)。
ダイビング器材を身につけた珠洲は、海底を指さし。
「外から見ても十分綺麗ですが、海底を見ると驚きますよ」
底に広がる珊瑚礁を見ながらの遊泳は、空を飛んでいるかのようで。そこで出会ったのが琥珀だ。
「おお、凄くびゅーてぃーなのでぃす」
「お、驚かせないように離れて泳いでたんですが…」
素直なノアの言葉に琥珀は恥ずかしそうに顔を赤らめる。彼の腰から下は魚の形。まさに人魚型をした男の娘なのだ。
「わ、私泳ぎは得意ですから、皆で一緒に泳ぎましょう…!」
一方、クルージングで沖へ出ている者たちもいる。
「鯨…見たこと無い…見たい…」
甲板でどきどきしながらその時を待っているのは、紅香 忍(jb7811)。
身につけた真っ白なサマードレスが眩しい。だが彼の性別は男だ。
せっかくの旅行なので…と衣装レンタルに行ったらこのドレスを渡された。何かがおかしい気がしたが、「面倒…」の一言で片付けたのである。
そのすぐ隣ではKamil(jb8698)がしょぼんとした表情で海面を見つめていた。
「せっかくの旅行なのに一人旅…」
でも鯨を見るのは楽しみで。真剣に待っているカミルの姿に、忍はつい声をかける。
「鯨…探してる…」
「えっ! あ、はい。見つかればいいなって思って…!」
そう言った直後、ふしゅうと音を立てて海面が盛り上がる。
現れたのは船と同じくらいの巨体。
吹き上げられた潮がきらきらと舞う中、二人は思わず無言で見入っていた。
新婚旅行気分で来ていた天ヶ瀬 焔(ja0449)と天ヶ瀬 紗雪(ja7147)も、鯨との出会いに感動。
「おぉー、鯨大きいですねぇ…!」
ざぶん、と音を立てて海上に現れた姿は想像以上に大きくて。嬉しそうな紗雪が船から落ちないよう、焔はさりげなくそっと抱き寄せる。
「鯨の上に乗ってみたくなるな…飼うか…」
「うーん…お風呂場では飼えないですよねぇ…」
もうすっかり天然夫婦である。
●探検隊
さて、時は少し巻き戻る。
鬱蒼とした熱帯雨林。
島の奥地はまさにジャングル。密林を前に崋山轟(jb7635)は意気揚々と拳を突き上げた。
「伝説のUMA探しと遺跡調査に行くぞ!『崋山轟探検隊』結成だ!!」
ドロシー・ブルー・ジャスティス(jb7892)がカメラを構え、きりりと宣言。
「探検隊で最も勇敢なのはカメラマンですわ」
確かにテレビでも(アングル的に)探検隊より早く洞窟に入ってる気がするよね!
「ヨーウィでてこーい♪」
白野 小梅(jb4012)は謎の歌をうたいながら、ちょこちょこと付いていく。
「とどろきぃひろしがぁ、探検にぃいったぁ♪」
まさに藤●弘探検隊的なアレでそれ。
その後ろから見守っているのが、桃香 椿(jb6036)。
(無鉄砲な連中ばっかやし、見とってやらんと)
手にはお手製の三段重弁当。早起きして作った力作だ。
その頃、別方向から密林へと入ったのはMaha Kali Ma(jb6317)と江戸川 騎士(jb5439)。
「遺跡とか動植物とか楽しみですね♪」
浮き浮きするマーに、騎士もくすりと微笑んで。
「俺とは縁遠い場所だが…魔界では森に住んでいた時期もあるからな」
こういう場所は嫌いじゃない。
「虫除け対策は重要だ」
肌の出ない服装でガード。なんだかんだで装備ばっちりである。
そんな二人の遥か前方ではライアー・ハングマン(jb2704)が遺跡目指して猛進していた。
「ククク、遺跡に眠るお宝は俺のもんだ…!」
財宝が眠ると信じ切っている彼は、片思いの相手にお土産を探そうとやる気満々。
そんな八人の向かう先に待ち受けるもの。
この時の彼らは、知るよしも無い。
●空の旅
大きな、大きなバルーン。
カラフルに彩られたそれを見て、七ツ狩 ヨル(jb2630)は蛇蝎神 黒龍(jb3200)の袖を引っ張った。
「ヨル、どしたん?」
「黒、黒、あのね…俺、あれに乗りたい」
珍しくリクエストするヨルに、黒龍は思わず微笑んでしまう。
ヨルの表情にほとんど変化は無い。けれど彼がもの凄く気球に心惹かれているのが、わかるから。
参加メンバーは皆思い思いの気球に乗り込み、空へと旅立っていく。
穏やかで、ちょっぴりスリルもあって。
こんな気分もたまにはいい。
「シスイ! 高いし! 気持ちいいし!…たっかいんだしーっ」
ミシェル・G・癸乃(ja0205)は初めての気球に大興奮中。
「あんまりはしゃぐなよ。危ないからな」
夫の癸乃 紫翠(ja3832)は苦笑しつつも、段々と小さくなる島や海を楽しそうに眺める。
「気球に乗るなんて初めて、とても素敵ね」
心地よい風を受けながら、藍沢 葵(ja5059)は婚約者の伊達 時詠(ja5246)に微笑いかける。
「そうですね。景色も綺麗ですし」
「ええ。それにすごく雄大なのね…」
二人が見下ろす先には、驚く程に広大な珊瑚礁が広がっている。
「グレートバリアリーフは、世界最大のサンゴ礁地帯…か」
事前に調べたメモを見つつ、雨下 鄭理(ja4779)は眼下に広がるコバルトブルーを観察。
「宇宙空間からも確認出来るほど…って凄いな」
あまりに大きすぎて想像もつかない。
「こんなに凄い場所を空から眺めるなんて、贅沢……」
恋人の桜翅 沙夜(jb4232)は、思わずため息をもらす。
空も海も、何もかもがスケール違いで圧倒されっぱなし。
「おやアイリ嬢、随分と薄着じゃないか」
黒のタンクトップ姿で景色を眺める黛 アイリ(jb1291)に、猫柳 睛一郎(jb2040)は声をかけた。
「…駄目だった?」
「駄目ってェこたないが、ここは陽差しが強いからねぇ」
渡された帽子を、アイリは素直に受け取る。しかしその表情はどこか青ざめており。
「ごめん…今気付いたんだけど、わたしすごく高い場所って駄目みたい」
聞いた睛一郎は笑いながら、彼女を捕まりやすい位置に誘導する。
雁鉄 静寂(jb3365)は遙か彼方の水平線に視線を馳せ。
「わー、見晴らしがいいですね! ええとここからだと日本はどっちの方向になるんでしょう」
「ええっと…日本はオーストラリアより北だから…こっちかな」
鈴代 征治(ja1305)の指した方向をアリス・シキ(jz0058)も眺めて。
「ここからでは…見えませんわね」
「それはさすがに無理じゃないかな…!」
アリスの天然発言も微笑ましくフォロー。
空の旅は、まだ始まったばかりだ。
●空中遊泳
「うわーめっちゃ高い!」
高度3000mの上空。
小型航空機から地上を見下ろした小野友真(ja6901)は思わず声をあげた。
眼下には鮮やかな蒼のグラデーションと熱帯雨林が広がっている。
「美しい景色は癒されますね」
途中各所を皆へ解説しながら、夜来野 遥久(ja6843)が瞳を細める。あまりにも広大な珊瑚礁に真城木貴行(jb0978)と西橋旅人(jz0129)も感嘆のため息を漏らし。
「「…オースト、レィリア※」」※何かいい発音で
二人とも初の修学旅行で緊張&興奮中。絶妙なハモりに加倉 一臣(ja5823)が笑いながら。
「よし。真城木くん、タビット。共にオーストレィリアを満喫しようぜ!」
その隣では奥戸 通(jb3571)が恋人の百々 清世(ja3082)のほっぺをつんつん。
「あれ、キヨ君寝てるのー?」
返事がない。どうやら前日の夜更かしがたたっているようだ。
「…前髪ちょんまげに結っておこう」
通がいたずら心を出した所で、デジカメを手にした神林 智(ja0459)がすかさず清世の寝顔をパチリ。
「寝顔激写しておきました」
無言でサムズアップ。素晴らしき連携。
そこで既に器材を身につけた月居 愁也(ja6837)が、決心した様子で宣言。
「よっしゃああ、飛び降りるぜー!」
一方、別の飛行機では緋流 美咲(jb8394)は予想以上の高さに目を白黒。
「だ、大丈夫!こんなの!落ちても死なないわ、藍!」
親友の木嶋 藍(jb8679)に強がってみせるが、完全に足が震えている。藍の方も最初は素敵なオージーインストラクター(50歳)にときめいていたものの、高度が上がるにつれ不安になっていき。
「み、みさき…ひ、人が、ゴマつぶみたいだよ…?」
「う、うん。人がゴマつぶ……す、すりゴマかなぁ???」
二人とも恐怖で大混乱。
しかし迫り来る「その時」を前に、一気に緊張がパッション☆
「ええいままよ!飛び出せ青春!」
空へと勢いよく飛び出していく。
ここは上天。
受ける風を浴びながら、彼らは空を泳ぐ。
スカイダイブの始まりだ。
「やっべ、気持ちいい!」
一臣は思わず叫んだ。
落ちているはずなのに、風圧を受けているせいか全くその感覚がない。
むしろ空を飛んでいるみたいで。
「飛んだら意外に怖くない!」
「キャー美咲!海めっちゃキレー!」
最初の恐怖はどこへやら、美咲と藍は浮遊感と見事な景色に大興奮。急降下したり手を繋いでみたりとテンションMAXではしゃぎまくる。
「キヨ君見てー!あそこに見えるのハート・リーフかな!」
何故か清世をお姫様だっこしてWe can fly☆した通は、珊瑚礁の中にハート型の島を見つけて歓喜。
「ちょ、ま……」
心の準備が出来ていなかった清世は目を白黒。
「これおかし…普通逆だよね!!」
清世の声なき悲鳴が上がる中、愁也と友真は手を伸ばし、皆と輪になっていく。
「写真撮ろうぜー!」
「飛びながら撮れるかと思ったけど無理ですこれ!」
景色見るだけで精一杯!な智の隣では、遥久がもの凄く冷静に旅人を捕獲中。※迷子防止
貴行は皆と手を繋ぎながら眼下を見渡し。
(凄い…こんな楽しい事があるなんて…)
受ける風の心地よさ。
皆と来られた幸せ。
「あはははーーー!!やばーい楽しいー!」
「あ!藍!あの島ハート型だよ!?私たち結ばれるよっ♪」
美咲と藍はハートリーフをバックに、互いの指でハートマークを作って記念撮影。
そして一部の者にはハプニングが(神の采配的に)起こる。
「そろそろパラシュートを…えっ」
愁也の顔が固まる。どういう言う訳か。
「ちょ、開かねえええ」
「わははパラ開かないでやんnって俺もやん!」
友真も顔面蒼白になる中、遥久がとっても冷静に二人へとアウルの鎧を使用。
「後は死活でどうにかなるな※。友真殿は…加倉どうにかしろ」※ならねえよ!(愁也の叫び)
「ちょ、どうにかしろっt」
一臣は反射的に友真の手を掴み、慌てずパラシュートを開く。
「でもこれ二人分の重量ですよね!」
「わっ友真!月居さん…っ!」
貴行が手を伸ばすが届かない。智が諦観の表情でそっと合掌する隣を、通と清世はまがお()で降下。
その時、愁也は見た。真下で何故か渦を巻く海。
その中心に見える……
( ^o^)<呼んだかしらぁ?
「「「うわああああ」」」
\ざっぱーん/
●戻って、ビーチ
その頃、ラクダに乗ってビーチをのんびり散歩していた雨宮 歩(ja3810)と雨宮 祈羅(ja7600)は、水平線の彼方に何かが落下してくるのに気付いた。
「歩ちゃん…今の見た?」
「……見ない方が良かったかもしれないねぇ」
知り合いだったような気もするが、見なかったことにする。
「イャッホー!」
海上では水飛沫が上がり、溢れんばかりの笑顔が弾ける。
ウェイクボード中の暁良は、鮮やかにアクロバット。
「「暁良、凄い……」」
璃遠と紫遠は双子らしく揃ってため息。暁良のかっこよさに思わず目を奪われてしまう。
「「ぼ、僕も負けてられないっ」」
意気込む二人はウェイクボード初体験。おっかなびっくりながらも、だいぶ乗れるように。
「気持ちいいー!」
海上をすべる速さに、つい叫んじゃうのもご愛敬。
「万碧さん次はあれ行きましょう!」
「待て、少しは休憩を…」
「まだまだ遊び尽くしていませんよー!」
シャロンが迷子になってはと思い同行した万碧だが、彼女に引っ張られそれどころでは無い。
多分バナナボート20回は乗った(まがお)。
「わーめっちゃ速いー!」
同じくバナナボートで水上をすべる彪白は潮風をめいっぱい浴びる。その背後でほくそ笑む影。
奏が気付かれないようストレイシオンのタマを呼び出し。彪白と光輝が乗るボート目がけて海中からアタック☆
「呼ばれて飛び出てじゃじゃ〜ん!」
もの凄い勢いでボートを吹っ飛ばした!
\たーまやー/
「ギャーッ、てめっカナやりやがったなー!?」
盛大に海へ放り出された光輝が悲鳴を上げる。隣では彪白が「あーぁ、ぼとぼとやぁ…」とびしょ濡れ。
「くっそ、このままでいられるか!」
「そうやー! みっくんいてまえー!」
光輝もストレイシオン召喚!
「やっちまえマモー!!」
召喚獣が今度は奏達のボートへと迫る!
\かーぎやー/
鮮やかに打ち上がった奏と雪羅を見て、光輝はふっと微笑み。
「セツ…お前には悪ぃけど仕方なかった事なんだ!」
君の犠牲は忘れない! たぶん!
「ミツ、酷いんだよ…」
半分涙目の雪羅に、奏が声をかける。
「うわぁ…先輩、大丈夫っすか?」
「うん、びっくりしたけど…でも、なんだろ」
皆と一緒だと、やたら楽しいんだから仕方ない。
(わー!きれー!)
あまりにも色鮮やかな魚たちに、琥珀は感激しっぱなしだった。手を引かれて潜っていたノアも初めて見る海底の景色に惚けてしまう。
(…びっくりなのでぃす)
こんな、こんな綺麗なものが海の下に隠れていたなんて。
珠洲は海中カメラを使い、魚や珊瑚の群れを撮影。
(後で皆さんとも撮りましょう)
この素敵な思い出を少しでも残しておくために。
珊瑚礁を堪能した恋達は、ビーチで休憩を取っていた。
「悠人さんあの綺麗な飲み物欲しいです!」
夢が指さすのは、グラスに注がれた鮮やかなオレンジと紅のグラデーション。
「ほほう、俺の奢りか。良かろう大学生の財力を舐めるな」
悠人は颯爽とジュースを注文しつつ、財布の中身に絶望☆(ゝω・)v
「さ、恋さんはどれがいいですか」
「! あ、ええ、アタシですか?」
瑛理に問われ恋がどぎまぎと選んだのは、海と同じコバルトブルー。
あまりにも綺麗だった海の中は、しばらく忘れられそうに無いから。
一通り海を満喫したココア達は、砂浜でビーチバレーに興じていた。
「そーぉれ♪」
クロフィが勢いよく撃ち込んだボールを、奏歌がレシーブ。上がったトスを美華が全力アタック。
「いくわよー!」
その瞬間、勢い余って豊満なバストがぽろり☆
\来たよラキスケ/
「うわっ美華、見えてr」
斗真が真っ赤になってあたふたした所を遥が狙う。
「隙ありですー♪」
しかしそこへ潜む魔の手。手をわきわきさせたココアが背後に忍び寄っていた!
「まだまだ、エンジョイ(意味深)するよ!」
「えっ…きゃー!」
「あれっ何故か私まで巻き込まr」
大変意図的な神の采配が働き、遥と奏歌の水着がぽろり☆
唯一難を逃れたと思ったクロフィはもっととんでもない事になっていた。
「あれ…いつの間にか光纏が解けて…」
少女姿に戻った途端、水着が落ちてほぼ全裸状態。全員の悲鳴が上がる中、モザイクが颯爽と荒ぶった。
●謎の遺跡とUMA
その頃、密林内を歩き疲れた轟達は、湖の傍で休憩を取っていた。
「しっかり食べるんやで♪」
椿が準備してきたお弁当は見事なものだった。おにぎりに唐揚げや卵焼き。サラダや南国フルーツがお重いっぱいに詰め込まれている。
「綺麗なお花いっぱいあったねー♪」
おにぎりを頬張る小梅に、ドロシーも満足そうにうなずき。
「珍しい蝶やトカゲも写真におさめましたわ」
「あんな大きなトカゲがいるとか、南国ってやっぱすげーよな!」
卵焼きを口にした轟は、そこでふと湖面に視線を移す。
「……なんだあれ?」
湖の傍にある茂みから顔を出すもの。全身毛むくじゃらに覆われたそれは――
「ヨーウィー出たああああ」
3m近くある謎の獣人(っぽいもの)が、両手を上げ勢いよく迫ってくる。
「みんな落ち着け!俺の後ろにまわr」
「轟ちゃんあぶなーい!」
ごふう……っ☆
小梅のフライングチョップで盛大に吹っ飛ぶ轟を、ドロシーはすかさず激写。
「ハプニングを逃さないのもカメラマンの矜持ですわ!」
輝くどや顔。いい汗かいた。
椿は小梅を抱えるとヨーウィーと対峙!しかし獣人は襲ってくるどころかこちらを見つめている。
「なんや…もしかして…?」
おにぎりを一個取り出して差し出す。受け取ったヨーウィーは美味しそうにそれを頬張り。
見事なハイビスカスを椿に渡すと、そのまま去って行った。
同時刻、ライアーはついに謎の遺跡へと辿り着いていた。
「これは凄いな……」
古代文明の名残なのか。
洞窟内部に広がる宮殿遺跡を、カメラで撮影しながら進む。
「観月さんのためにも、お宝を手に入れなければ!」
一方マーと騎士は珍しい動植物を観察しながら、のんびりと散策。
「お、この湖で釣りができそうだ」
「じゃあ私は遺跡を観てきます♪」
湖畔で釣りを始めた騎士と別れ、マーは洞窟へと入っていく。
「先住民の遺跡もキラキラの宝石箱ですわ♪」
内部は複雑に道が分かれて、気を抜くと迷いそうな程で。
「凄いものですわね…あら、これは?」
壁にあるレバーらしきものを、えいっと下ろした――
ごごごご
「な、なんだこの音は……」
突然始まった地鳴りに、ライアーは慌てて周囲を見渡す。
次の瞬間、大量の水が四方八方から噴き出しくる!
「うおおおおいいいい」
「どこからか悲鳴が聞こえましたが…きっと気のせいですわね♪」
遺跡を堪能したマーが戻ると、騎士がどこに隠し持っていたのかフライパンで料理を始めていた。
「お疲れ、飯作っておいたぜ」
見るとそこには白飯、梅干し、釣った魚で作った味噌汁が並んでいる。
「どうやって作ったのか謎ですが、いただきますわね♪」
二人は遅めのとランチタイムを始めるのだった。
●気球に乗って
ゆっくりと時間が過ぎる、空の旅。
「ほら、お嬢。深呼吸して上を見てごらん」
バスケットの中でずっと目を瞑っているアイリに、睛一郎は声をかけた。
「地上より空が近くて滅法綺麗だ」
アイリはゆっくり息を吐くと、思いきって見上げてみる。
「わあ…本当だ……」
蒼穹がいつもより近く、まるで天国に来たみたいで。
「逆に水平線はあんなに遠いや。ああ、この星は丸いんだねぇ…」
「うん…ここから見るとよくわかる」
いつの間にか恐怖心も和らいでいて。
沙夜が吹いたシャボン玉が、風に乗って流れてゆく。
「そう言えば、黒桜と二人で出掛けるのは初めてだな…」
双眼鏡から顔を上げた鄭理はふと呟く。聞いた沙夜もうなずき。
「……ん、そうかも。お出かけ…というか、デート…は初めて、だね?」
デートという響きが新鮮で二人は照れ笑い。
「そういや上から見るとハートの形の島、とかあるんだったか?」
探す鄭理の目は割とマジ。
そんな彼らの目に飛び込んでくるもの。
真っ青な海の中に浮かぶ、小さな島――ハート・リーフだ。
「遊紗、弥生、ヴィル! 見て、アレがそうなんじゃないかな!?」
ハート・リーフを見つけ、緋野 慎(ja8541)は大はしゃぎ。
「わ〜! 弥生お姉さん見えたよ!」
九十九 遊紗(ja1048)も嬉しそうに弥生・ハスロ(jb3506)に飛びつく。
「あら、本当。写真で見るよりずっと綺麗だわ!」
「これを見たカップルは幸せになれるんだって!」
瞳をきらきらさせる慎と遊紗に、弥生は微笑み。
「今も十分幸せだけれど…こういうジンクスって惹かれるのよね」
そう言って夫のヴィルヘルム・ハスロ(jb4913)に寄り添う。
「ええ…こんなに綺麗な海を見たのは初めてです」
皆のはしゃぐ様や景色を撮影したヴィルヘルムも、穏やかに目を細める。
頬をすり抜ける風が、無性に心地いい。
「皆で来られて本当に良かったです」
葵と時詠も心待ちしていた瞬間に、心を躍らせ。
互いに寄り添いそっと手握り合う。
「幸せになろうね、伊達さん」
「ええ。葵が幸せであるよう、限りなく努力します」
ハート型の島へ向けて時詠は祈ると、彼女に微笑みかける。
「少し早いかもしれませんが、御誕生日おめでとう」
こんな綺麗な場所で伝えられたことに、感謝しつつ。
「あった! あれ! ハートリーフ! ほらー…ぅわっとっっ」
「おい、ミシェル!」
身を乗り出しすぎて落ちかけた妻を、紫翠は慌てて抱き寄せる。
「は〜…だから危ないって言ったろ? 高いんだからな?」
「ゴメンだし…」
しょんぼりする彼女を腕の中にすっぽり包み。
「もうここにいなさい」
「ハイ」
そのまま二人で島を眺める。
「…結婚してもう幸せだけど、幸せのおまじないは、何度かけてもいいよねっ」
満面の笑みを浮かべるミシェルに、紫翠は頷いて。
「よし。戻ったら、海に行ってみるか」
「海?行くー!空の次は海ーーーっ」
「こ、こら暴れるな」
「…っと、いけないいけない」
はたと気づき、そそくさと腕の中。
体温から伝わる幸せを、お互いに感じながら。
ハート・リーフを見つめていたヨルは、ふと頭上を見上げた。
「…そう言えば気球、なんで火をつけるだけで飛べるんだろう?」
「ああ、それはな」
気球について説明する黒龍にヨルは感心。
「凄いね、黒。そんなことも知ってるんだ」
きらきらと尊敬のまなざしを向けられ、黒龍は笑う。
「詳しいことは宿に戻ってからな」
初めて見るものに出会う度、ヨルはその瞳に煌めきを宿す。
その瞬間を、今はただ見ていたいから。
「これ、準備してきたんだ」
征治が取り出してきたのは大量の紙吹雪。ちゃんと土に還る素材を選んでおいた。
「これ、どうしますの?」
アリスの問いに目配せし。一斉に空へと舞い散らす。
「わあ、綺麗…!」
静寂もそれに合わせて砂金を撒く。
ひらひら。
きらきら。
大空を舞い降りていく色とりどりの欠片は、陽光を反射しめいっぱい輝いている。
「わたしもこれで飛空士です」
満足そうな静寂の瞳が、きらん☆と光る。
穏やかな空の旅も、そろそろ終盤だ。
●自然公園
スカイダイブを終えた一臣達は、自然公園へとやってきていた。
「はー楽しかった。ハートリーフ見られて良かったねー!」
「写メ上手く撮れたー?」
通と清世は写真を見ながらきゃっきゃ。
「お、いい感じじゃん」
「うん、カップルであれを見ると幸せになれるん…ですって///」
照れる通の後方では愁也と友真、一臣が顔を覆っている。
「ひ、酷い目にあった…」
海に落ちた後、どういうわけかボロボロになって打ち上げられていた。
思い出す悪夢。いや思い出してはいけない。
青ざめる三人を旅人が励ます。
「き、貴重な体験だったと思うよ…!」※悪気はありません
そんな彼らもコアラを見れば、テンションも回復。
「わあ、かわいい…!」
「ほーら智ちゃん抱っこできるで!」
友真に渡されコアラを抱きしめた瞬間、智の理性が死亡。
「わ…私はこの子を連れて帰ります!」
「ぇ」
「むしろこの子と結婚する!豪州国籍になる!」
「ちょ、神林さん問題点は国籍じゃないよな!?」
頬を紅潮させて言い切る智に、一臣が笑いながらつっこむ。
遥久は半蔵と共にコアラと異文化交流。
「貴殿も大変ですね…ほう、一番人気なのですか」
「プギー」
「クェ」
「ってか何で会話が成立してるの…」
愁也がそれを見て微笑む()隣で、貴行はそっとコアラを撫でる。
(……温かい)
そのぬくもりに、どこか妹を思い出しながら。
一方、空中散歩を終えた弥生達は、ウォンバットとのふれ合いを楽しんでいた。
「ほわー、可愛いー!」
平たい鼻にまんまるの顔。
慎は始めて見る不思議な生き物に、胸がどきどき。抱っこしてみると、凄くあったかい。
「うわぁもふもふだよ〜お持ち帰りしたいよ〜」
遊紗も毛並みに顔をうずめながら、至福の表情。
「やだこの子ふかふかだわ…!」
ころころした一際大きな子を、弥生はぎゅっと抱き締める。
お腹をもふもる表情は、完全にとろけ中。そんな彼女にヴィルヘルムも微笑みながら、皆で記念撮影。
「別れるのが名残惜しいくらいですね」
撫でられたウォンバットは、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
その頃、アイス持って転んだミラ・バレーヌに一臣が二つ目を買ってあげていると、見覚えある姿が目に入る。
ぽつんと佇む道化師姿の子供。
……あれ、もしかして。
「迷子じゃn」
がしゃーん
「遊園地の悪夢再来!ミ´;ω;」
その後何とか脱出した一臣が、迷子中だったミラを回収し道化師姿の子供を肩に乗せて出口に辿り着いた時にはすっかり夕方。
その間皆はお土産物屋でショッピング。
「コアラさんの顔付いた帽子可愛い!よっ」
通に帽子を乗せられた友真はもふもふさ加減にご満悦。貴行はコアラのぬいぐるみの抱き心地や表情を比べ。
「…小野、どの子が可愛いかな(超まがお」
「貴行めっちゃ真剣やな!」
清世と智もぬいぐるみを真剣にもふっている。
「一番もふもふしているのを買いたいよねー」
「触り心地は重要です!」
そんな様子を愁也と遥久は旅人達と談笑しつつ、見守るのだった。
●夕暮れのビーチ
クルージングを終えたカミルと忍は、鯨を見た感動を分かち合っていた。
「鯨大きかったですね…!」
カミルの言葉に、忍は頷く。その頬はほんの少し赤みを差していて。
一瞬だが、鯨と目が合った。その時なぜだか心を覗かれた気がして、不思議な気持ちになったから。
紗雪と焔は、大きな鯨のぬいぐるみを買いにショッピング。
「本物は無理でも、これなら連れて帰れます♪」
たっぷり楽しんだ二人が外に出ると、空はすっかり夕暮れ色に染まっていた。
「……あれ?」
ふいに目を覚ました蓮は、一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
温かな感触。
「いつの間にか寝ちゃったのか…」
しかも緋音に膝枕されていることに気付き、流石に照れてしまう。
うとうと微睡む彼女の顔が、夕陽に染まり。さらりと落ちてきた髪にそっと触れてみる。
なぜだか、鼓動が鳴り止まない。
萌々佳と青空は泳ぎながら、暮れゆく水平線を眺めていた。
「こんな綺麗な海で萌と泳げるのは贅沢なー…」
「うん…ほんとだね〜」
この幸せな時間に感謝をして。
波の音に耳を傾けつつ、花音は誓の手をきゅっと握る。
昼間は海で水のかけあいっこ。散々はしゃいだり誓が虫のトラウマを思い出したりなんてやっていたら、すっかり夕方で。
「誓ちゃん…いつもありがとうね」
「…急にどうした?」
「ちゃんと私を見ててくれるの知ってるよ。私からも何かお返しできたらいいな」
誓は一旦沈黙した後。
「十分、もらってるよ」
いつも守ろうとしてきた相手。でもいつの間にか二人の関係が変わったように、彼女も大人になっていて。
「支えてもらってるのは、俺の方だ」
その時、一番星が瞬いた。
●宵の始まり
めいっぱい遊んだあとは、ディナーパーティーの始まり。
「肉、肉、思いっきり食べちゃうぞー!」
皿一杯の肉に目を輝かせる花音を見て、誓はため息をつく。
「大人になったと思った俺は間違いだった」
「あ、誓ちゃんほうれん草無くてよかったね!」
ほうれん草の一言に青ざめる誓をよそに、花音は次々に肉を頬張りながら。
「あれ、口元にソース付いてるよ?」
「いや、お前も付いてるし…」
互いに口元を拭き合いながら思わず吹き出す。
斗真はまるでおかんのような手つきで肉や野菜を焼いていく。ココアが嬉しそうに次々と頬張り。
「美味しー!」
「肉と野菜をバランスよく食べるんだぞ」
丁寧にとりわけ、友人達に振る舞う。もちろん焼きそばも準備万端だ。
「見て見てー!ロブスターのハサミおっきいね!」
遊紗と慎は始めて見る食べ物の数々に、大はしゃぎ。
楽しそうな二人を見守りながら、ヴィルヘルムと弥生はのんびりとグラスを傾けつつ。
その隣ではナイスミドルな白髪の紳士がワインに舌鼓を打っている。
「ほれ、アーン」
暁良は冗談めかして璃遠と紫遠に料理を食べさせる。
「あ…あーん…」
二人揃って顔を赤くするのが、また可愛いのだから仕方ない。
「結構人がいるねぇ…」
食事をしつつふと周囲を見渡した歩は、一瞬固まっていた。目が合ったのは、見覚えのあるタキシード姿の青年。
「って、なんでお前がここにいるんだぁ!?」
問われた青年は、くすりと笑み。
「ええ。少し見ておきたいものがありまして」
上空を見上げ、瞳を細める。
「今のうちに…ね」
聞いた歩は息を吐くと苦笑しながら。
「…まぁ、いいや。今日はお互い争うつもりはないしねぇ。せっかくだ、どうせなら祭りを愉しもうじゃないかぁ」
そこで歩の様子を伺っていた祈羅が、そっと腕を引っ張る。
「ねぇ、今日くらいは全部うちに頂戴?」
あの子を気にするのも、今夜だけは。悪戯っぽい口調には、半分本気の気持ち。
メロンパンを食べていた奏歌がふと上を見ると、スカイランタンが上がり始めていた。
「わぁ…綺麗…」
その光景はあまりにも幻想的で。
次々に上がる天灯は、満天の星空を橙色の光で覆い尽くしていく。
青年の優美な声が、夜空に淡く響いた。
「よい夜を」
●幻燈ランタン祭
「わ、綺麗だな…!」
まるで映画のような光景に、恋はため息をついた。瑛理も微笑みながら、夜空に魅入っている。
夢は願い事を書いたランタンを悠人と共に飛ばし。
「これからも素敵な日々が皆に訪れますようにっ」
「おおーこの光は眠くなるな〜…」
穏やかな灯りは彼らを優しく包みこんでゆく。
「ね、お姉ちゃんは何をお願いしたの?」
問うた夢の頭を恋はぽふりとやり。
「変わらない平穏な明日をずっと、かな」
そう言いつつも、何かが変わりつつあるのを感じている。隣に立つ瑛理にそっと視線を向け、恋は変化への漠然とした不安と少しの期待を胸に抱くのだった。
見よう見まねでスカイランタンを飛ばしたカミルと忍は、飛んで行く様を眺めていた。
「たくさんの祈りが空に…」
幻燈をじっと見つめる忍の隣で、カミルは風景を写真におさめておく。
(楽しかった…)
素敵な昼間の思い出と共に。
「わあ、万碧さん地球には素敵なものがあるんですね…」
瞳をきらきらさせてランタンを見上げるシャロンを見て、万碧も微笑む。
「ああ、そうだな…」
その表情は、とても穏やかで。
悲しい事もたくさんある。
目を覆いたくなる現実もある。
けれどこの星は――いつだって美しいから。
「綺麗だね〜…でもちょっと寂しい気もするかな…」
どうしてと問いかける青空の瞳。萌々佳はそっと手を握り。
「こうやって幸せが続けばいいけど、撃退士である以上それは絶対じゃなくて〜」
だから今だけでも。
この幸せな瞬間、君の手を握っていたい。
「うん…明日も明後日も同じように続くわけではないのだろうけど」
例えば来年の今も。
20年後の今も。
「萌と2人で歩いていけるって…私は信じてるよ」
不安そうな瞳に笑いかけ、二人は幻夜に見入る。
珠洲達は美味しい料理を食べながら、のんびりと祭を楽しむ。
「貴重な体験ができてよかったですね」
「泳げるようになって嬉しいのでぃす。二人ともありがとなのでぃす」
ノアの言葉に琥珀も笑顔で。
「あんな綺麗な海がいつまでも残ってくれるといいですね」
すっかり仲良くなった三人は、また来られるといいと願いを込めて。
緋音と蓮もビュッフェに参加しながら思い出話に花を咲かせていた。
「楽しかった…また来たいなぁ」
「そだねぇ、また行けたらいいねぇ」
今度来るときは二人の関係も、変わっているといい。
小梅はほのぼのと空を眺めて。
「ヨーウィーは友達になりたかったのかなあ」
「ふふ、そうやねぇ…」
ハイビスカスを髪に飾った椿は微笑みながら、不思議な出会いへと思いを馳せる。
写真を確認していたドロシーが首を傾げ。
「おかしいですわね…確かに撮ったはずなのですが…」
何故かヨーウィーだけがうまく映っていないのだ。吹っ飛ぶ轟はしっかり映ってるけど。
「それむしろ削除してほs…まあ、ヨーウィーは神様が隠しちゃったのかもだな」
轟は笑いながら、ランタンに手を合わせる。
「気になるあの子と仲良くなれますように!」
「冒険の後の美酒は格別ですわ♪」
「ああ、また来たいものだ」
マーと騎士がお酒を飲みながら天灯を眺める横では、ライアーが片思いの相手へ想いを込める。
「届くといいなぁ…」
手には水に流された時、いつの間にか握りしめていた小さな石。
蒼く光るそれを夜空にかざす。
「ハート・リーフ見られてよかったね、黒兎くん」
昼間の光景を思い出し、紗夜はうっとりした表情を浮かべる。
「ああ、また来られるといいn」
「きゃっ」
鄭理はうっかり躓いて転んでしまう。
「ご、ごめん…大丈夫か?」
柔らかな感触。
顔を上げて固まる。自分が沙夜を押し倒している事に気が付いたから。
赤面する二人の頭上を、ランタンがふわりと通過する。
「…凄いね、黒」
幻想的な光景にヨルは惚ける。
なぜだか自分の身体も、飛んで行ってしまいそうで。
知らずうちに黒龍の袖を掴んでいた。
「凄く綺麗やね、儚く強く飛んでいく」
黒龍はヨルを優しく抱き締め。
「けどボクはヨルと一緒にいる、見続ける」
ここにいる。
だから。
「これからもっと、もっと綺麗なものを見つけていこな」
この世界で、愛しい君と共に。
「…うん。ありがと、黒」
暁の光が舞い上がる中、二人はそっとキスをする。
「見てシスイ! めっちゃくちゃ綺麗だし!」
ぴょんぴょん飛びはねる妻に、紫葵は微笑みながら。
「ああ、本当に……」
今日一日で、どれだけの感動をもらったことだろう。
世界にはまだこんなにも美しいものがあるのだと、気付かされた。
「また、来ような」
「うんっ!」
二人でまた、美しいものを見よう。
世界はまだまだ、知らないことだらけなのだから。
●たくさんの願い、たくさんの祈り
次々と上がっていくランタンは、あまねく祈りを空へと届ける。
「幸せな時間、世界がずっと続きますように…」
ココアは飛ばしたランタンに、平和を願う。
「ここにある笑顔を一つでも多く守り切れますように」
クロフィもそっと祈りを空へと届け。
「いつまでも、皆と仲良しでいられますように」
美華は斗真と共に仲間との絆を祈る。
「こんな楽しい時間を、皆さんでまた過ごせますように」
遥と奏歌は今日と言う日に感謝。
彼女達の手には、奏歌が皆のために買った光るコアラのボールペンが握られている。
紫遠と璃遠は揃って夜空に見入る。
「幻想的だね…」
「僕、こういう光景好きだよ。暁良は…?」
「ああ。俺も嫌いじゃないゼ」
そして三人で、互いに祈り合う。
いつまでも一緒に居られるよう。
心の底から愛する二人を、命に代えてでも護れるようにと。
「あー、いっぱい遊んだ!」
トロピカルジュースを飲む奏と光輝の隣で、彪白は雪羅へ声をかける。
「雪羅さん…あんな、白もせっちゃんって呼んでえぇ?」
実は光輝がそう呼ぶのを聞き、ちょっと羨ましかったのである。雪羅は嬉しそうに。
「…せっちゃん? えへへ、うん、好きに呼んで?」
ほんの少し、照れくさい。
お願い事も四人揃って。
「頭が良くなりますように!※思い出される悪夢の補習」
「皆が幸せになりますように!世界平和!」
冗談みたいな、本気の願い。
勢いよく光輝と奏がぱんっと手を合わせる横で、彪白と雪羅はそっとランタンへ手を伸ばし。
「もうちょいでえぇ、白に…学生、させて下さい…」
「…僕のお姫さまが、ずっとずっと、笑顔でいますように」
二度と失わないよう、護れるように。
それぞれが祈る願い事は、星空へゆるゆると溶け込んでいく。
自然公園で撮ったコアラ達の写真を見ながら、アイリはご満悦。
「最初は怖かったけど、楽しかった」
「そりゃあ何より」
彼女の頭をぽんぽん、とやり睛一郎は天灯に目を細める。アイリは空に向けてこっそり祈り。
(こんな時間なら何度でも過ごしたい)
――この人となら、尚更。
「ね、そっちは何か祈る事、あった?」
彼女の問いに、睛一郎は「お嬢と同じでさぁ」と笑うのだった。
葵と時詠は二人でランタンを飛ばすと、揃って祈りをささげていた。
「伊達さんがいつまでも幸せでありますように」
「葵がいつまでも幸せでありますように」
二拍手一礼を入れ時詠は長く、長く祈る。
彼女の笑顔をずっと護れますように。
優しく穏やかな時間が続きますように。
頬に触れる感触に気付き、顔を上げる。背伸びした葵の唇が触れたのだ。
「伊達さん、大好きよ」
彼女の微笑みに、穏やかに返す。
「葵…最愛です」
寄り添う二人を淡い光が包み込む。
征治はバルーン部分に学ラン模様を塗り、自作のランタンを作成。
「これが僕の、世界で一つだけのスカイランタンだね」
「私も出来ました!」
静寂のは地球儀を模している。
「お二人ともお上手ですわ」
皆で揃って空へと飛ばしながら、静寂は祈りをささげる。
(戦火から皆が無事に帰ってこれますように……)
ふと隣を見ると、征治とアリスも何かを祈っている。
「何をお願いしたんですか?」
「この平凡で幸せな日々がずっと続きますように、かな」
いつか世界に平和が戻ることを、願って。
(どんな自分を思い出しても……)
美咲は藍の顔をちらりと見て微笑んだ。
過去を知るのは怖いけれど。
大切な人とずっと一緒にいられるように。
藍もにっこりと微笑み返しながら。
大好きな人達が傍にいてくれますように。そして。
「美咲とずっと親友でいられますように」
互いの祈りを空へと届ける。
遊紗と一緒にランタンを飛ばした慎は、夢のような光景に今日と言う日に感謝しながら。
「すっげー綺麗だ。皆で来れて、良かったよ。俺、すっげー幸せだ!」
「うん、私もだよ!一緒に来られて良かった」
こんな素敵な瞬間に、慎が傍にいてくれることが嬉しい。
いつの間にか、二人の手は繋がれていて。
そんな慎達の様子を弥生とヴィルヘルムは腕を組みながら微笑ましく見守る。
「とっても素敵な一日だったわね」
「ああ、また来年もこんな日が来ることを願うよ」
そして、その先もずっと。
共に見上げる夜空は、多くの祈りを抱きゆっくりとふけていく。
(失ったものと、得たものか…)
幻想的な光を見つめ、一臣は呟く。その片手は恋人の友真と繋がれている。
友真も無言で見上げ、今まで関わった人達へ来世の平穏と幸せを祈り。
愁也は遥久と酒を飲みながら、静かにランタンを眺める。
思いを馳せるのは、四国で失った人達と。そしてその手で命を奪ったシツジに向けて。
そんな親友を見て遥久は改めて誓う。
一人で背負わせず、これから先も共に――と。
貴行はランタンの灯に、亡き母や守りたい人の姿を重ねる。
(どうか、幸せに……)
胸に抱くのは、哀悼と守るための新たな決意。
実際家である智は、ランタンに祈りを託す事はない。
(けど、この場の祈りが全て届けばいい)
そう思う気持ちに、偽りはないから。
通も清世とゆっくり呑みながら、そっと心の中で祈る。
(これからもこの幸せな時間が続きますように…)
そんな彼女を眺めながら。
清世はほんのりと幸せを感じるのだった。
●思い思いの場所で
会場から少し離れた静かな砂浜。
散策しつつ祭を眺めていた葵は、手に触れる温かな感触にはっとなった。
手を繋がれたのだと認識すると同時、ヴィルトの穏やかな声が届く。
「この方がはぐれないかなと…駄目ですか?」
「い、いや…ちょっと驚いただけだ」
握り返しながらも、頬が熱くなるのを感じる。
しばらく無言で歩いていると、頭上をふわりとランタンが通り過ぎ。
こんな所にもと思った瞬間、砂に足を取られ身体が宙に浮く。
一瞬の間。
「大丈夫ですか?」
言い終えた途端、ヴィルトの表情が硬直する。真っ赤になった葵を見て、自分が彼女を抱き締めていることに気付いたから。
無言で見つめ合う二人を、橙の明かりが淡く照らす。
時が、止まったかのようだった。
夜景を見に来ていた陸刀と霧は、少しばかり気まずい雰囲気だった。
昼間、陸刀が葵に見とれていた(と思いこんだ)霧が拗ねていたからだ。
「ンだよ、妬いてンのか?」
無言。
機嫌の直らない霧に、陸刀はやれやれと言った様子で。
「あのな、俺が見てたなァおめェだぞ?」
「…え?」
「もっと見たかったくれェだ」
「でも、久我様は素敵な方で――」
その先は、唇をふさがれて言えない。
いつもよりも長く、深い口づけ。
顔を離した陸刀は、霧の瞳をじっと見つめ囁く。
「こいつじゃ証明にならねェか」
「……いいえ」
ゆっくりとかぶりを振ると、にっこりと微笑む。
「あなたの正銘の証明、受け取らせていただきました」
嫉妬してごめんなさいと言わんばかりに、陸刀の胸に頬を寄せる。
焔と紗雪は島の外れにある教会へとやってきていた。
「うん、紗雪は綺麗で凄く可愛いぞ」
ウェディングドレスを着た彼女を見て、焔は歓喜の表情で写真撮影。
対する紗雪もタキシード姿の焔に、頬を染めつつ。
そう、彼らはここで二人きりの結婚式を挙げに来ていた。
穏やかな静けさに包まれる中、二人は互いの愛を誓い合う。
教会から見える灯火は切ないほどに美しく。
目を覚ませば視界の中に焔が居て。
手を伸ばせば触れられ、鼓動を聞くことが出来る。
「……あんなに遠くに想いを届ける必要がない私は幸せです」
皆がそうであって欲しいと、願うから。
「だから今夜は沢山祈りますね…」
その綺麗なまなざしに、焔は誓う。
「何時もありがとう、紗雪」
必ず、幸せにするから。
そっとを交わした口づけは、甘い花の香りがした。
「思い出がまたひとつ増えたね、姉さん」
小高い丘の上。夜空を見上げながら、歩は静かに祈羅の手を取り優しく握る。
「…うん。お爺ちゃんお婆ちゃんになったら、忘れちゃったりするかもしれないけど」
祈羅は手を握り返し、そのままぐいっと引っ張る。
「――!」
不意打ちのキス。
顔を離した祈羅は、にっこりと微笑んで。
「花火大会の時の反撃、だよ」
心に「一生一緒」の祈りを込めて。
幻燈に覆い尽くされた空の下。
見上げる人々の心に、小さな灯りが穏やかにともされる。
それは決して消えることの無い、祈りと誓いの燈。
「……花音。俺、心から願うよ」
また一つ、祈りが空へと届けられる。
「お前とこの世界が――ずっと輝きつづけることを」