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僕らの地球 タグ:【成層圏】 MS:水音 流

後部ハッチが開き、機内温度が一気に下がる。

「沙耶さんと一緒ならこの程度の寒さ何てことないぜぃ!(ガタガタブルブル」

 ダイブスーツ姿の樋渡・沙耶(ja0770)の隣で、普段着姿の麻生 遊夜(ja1838)が言う。

「あ、やっぱだめかも知れん(キリリ」

 沙耶に抱きついて温もりを得ようとする遊夜。

「たとえスーツ越しでも温まる」

 心からな。

 寄り添い合い、外の景色に視線を落とす。
 白い薄絹を纏った星が、漆黒の背景に青く大きく輝きながら浮かんでいた。

「うむ、こいつぁ美しいな」

 飛行機での時差……自転による時の遅れも一種のタイムトラベルだと言うが、成層圏ではどうなるのだろう。

「少しでも、過去とか未来に、行ってるのかな…」



 タートルネックのチュニックセーターと、ジーンズにショートブーツ姿の北條 茉祐子(jb9584)。スカイダイビングなのでスカートはやめておいた。

 神谷春樹(jb7335)ら同寮生達と共に遥か大空の光景を眺め、心穏やかに感動する……予定だったのだが、

「成層圏から地上ヘダイブ! 怪我ひとつないぜ雪子たち」

 それなんてラビッツ。
 テンション↑な玉置 雪子(jb8344)。

「どうしてこんな所まで来てしまったものか、ラルと冬の街をゆっくり満喫したかったのに…」

 一方、唸っていたのは川内 日菜子(jb7813)。

「脳筋びびってる! ヘイヘイヘイ! 怖けりゃ尻尾巻いて函館や新潟でも選べばよかったんジャマイカ? プークスクス」
「少し黙ってろ、バカ天使」

 雪子にイラッとしながらも、日菜子は「これも訓練の一環か」とハッチの縁に立つ。
 そこにあったのは、まさに映像でしか見た事の無い世界。
 渋々シャトルに乗った事も忘れ、眩い青と黒の海に惚ける。

(へぇ、思ったより高いや…飛び降りがいがあるねぇ?)

 内心で呟いたのは、同じ機に乗り合わせていたアスト・ヴェンティス(jc0952)。
 高い所は好きだ。
 それ以外にもとある人を探す目的があったのだが、居合わせた人数を見てそちらは一旦中止。

 敢えてスリルを楽しむため普段着で訪れた彼は、同乗者達をくるりと振り返る。

「悪いけど……お先に失礼するねぇ?」

 余裕な笑みを浮かべ、手を振りながら後ろ向きに飛ぶ。
 1番早く飛び出したがる辺り、実年齢の割りには子供っぽい。

「俺は星と風の名を持つ者だしね」

 だがその寸前、

「変身! 天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!!」

 光纏し、ヒーロースーツになった千葉 真一(ja0070)が叫んだ。
 一番手は譲れない。

「行くぞ! ゴウライダーイブっ!!」

 後ろ向きに身を投げ出したアストと同時に、ハッチからジャンプ。
 そして更にもう1人、バージンスカイを狙っていた者が。

「やってきてやったぜ成層圏。母なる大地よ、俺は帰ってきたぜー、いぇぇぇぇやぁぁぁ」

 ラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 偽装解除からの機械化ボデーで大気圏突入気分を再現。見覚えのあるポーズでズバーンと降下。

 相棒ラルが飛び出したの見て、慌ててパラシュートの準備を始める日菜子。
 直後、雪子が後ろから彼女を突き落としていた。

「鳥になってこい!」

 ちゃんとパラシュート装備を確認してから蹴り落とす(この辺の心配りが人気の秘訣)。
 悲鳴だか怒声だか分からない日菜子の声が、下に消える。

「落ちたな(確認)」

 高みの見物。あとはゆっくりと雪子も続いt…
 と思いきや、なんと日菜子はまだハッチにぶら下がっていた。

 咄嗟に布槍を巻きつけていた春樹が、一旦彼女を引き上げようとして――
 失敗。
 重力の井戸に引き込まれて諸共落ちる。

 だがその春樹の腕を、今度は茉祐子がキャッチ…するも引力の重みに狼狽。

「あっ……ちょ、ちょっと危な……きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 思わず雪子の腕を掴み――

「ちょ、おま」

 一斉落下。

 大音量の悲鳴をあげた茉祐子とは違い、冷静にバランスを取り戻した日菜子。
 垂直降下の姿勢を取り、先行したラファルを追う。

 仰向けで宇宙の星々を見上げていた真一は、転げ落ちた者達の無事を確かめた後、クルリとうつ伏せに。
 景色を楽しみながら、緩急を付けて本格ダイブ。

 対してアストは、暫く落下してから闇の翼で滑空開始。
 その時だった。

「ははははははははははは、万歳。ばんざぁぁい! ばんっざぁぁぁぁぁあい!!」

 鷺谷 明(ja0776)。自由落下で万歳三唱。
 アウルやら欲望やら感動やらが全身から溢れ出し――

「そして私は星になる」

 刹那、爆発。
 黒焦げになって落ちていった。

「……今なんか見えた気がしたけど…まぁ、いいか」



 シャトルのハッチに、貴族が居た。

「私は…流星になる!」

 ラテン・ロロウス(jb5646)

「パラシュート? 自前の物があるのでいらん! 私はサラダバー!のプロだ」

 地球を感じる為に全裸! は流石にまずいので褌一丁! 腰にマイパラシュート!
 持ち込んだテーブルセットと鉄板焼きステーキ。そして水と共に……

\サラダバー!/

 飛。

「スカイダイビング貴族ディナー! どのような場所でも…私は貴族だ!」

 暴風圧の中を真っ逆さまに落ちながら、びちびちと跳ね散る肉と水を味わう。
 目に映るのは、雄大なる空と大地。

「…なんと素晴らしい眺めか、これが流星の見る景色という訳か」

 スキル『星の輝き』!
 さらに私は流星に近づいた!

「後はひたすらに速度を増していくのみだ! 私が一番に地面に激突してみせる!」

 やがて地表が迫り――

「頃合いか! 開け! マイパラシュート!(バサっ」

 ※ビーチパラソル

 ボッと、もげ飛ぶ傘。

「…ふむ、なかなか減速しないな、まあこれから下がるのだr」

 グシャア!!!

「……今なんか見え(ry」



 日菜子と合流したラファル。
 機械化ボデーから元々着ていたペンギンの着ぐるみにチェンジして、2人でばびゅーんと降りていく。

 一方、無意識の内に翅が出ていた茉祐子。落下してからずっと目を閉じている。
 そこへ春樹や真一が飛んできて、ぶつからぬよう気をつけながら空中でそっと肩を叩く。

 共に見る景色。
 ふと目をやると、地上では既にラファルと日菜子が待っていた。

 2人が見上げる空には、思い思いに落ちてくる撃退士の群れ。
 そんな趣向の違う絶景を仰ぎながら、徐にラファルは再度機械化して戦闘形態へ。

 武装で狙った先には、extension.exeで自力飛行する雪子の姿。
 突き落としなどという不埒な輩にはお説教が必要だ。

 照準ロック。
 ファイア。

「お、降りられるのかよぉ!」

 哀・雪子。
 コックピット貫通どっかんばらばら。

 綺麗な花火を背に、アストや茉祐子達も着地。
 決めポーズを忘れない真一。

「いい経験になった。いつか自由に空を舞えるようになれたら、きっと楽しいな」

 とそこへ、空の塵になったと思われていた明が落ちてきた。
 落下速度諸々を計算し、死ぬか死なないかのギリギリのタイミングでパラシュートを開k

 ギュンッ グシャア!

 ぎりぎりあうと。

「……今なんか見(ry」



 沙耶の表情やハッチからの光景を撮った後、遊夜は互いの体をハーネスで固定してタンデムジャンプの準備。
 さて、どちらが前になるかだが、

(胸の揺れ防止の為に、後ろの方が、いいのかな? 背中に、当たるかもしれないけど…)

 黙考しながら、遊夜の背に身を預ける沙耶。

「いざ、地球に帰還!ってな」

 ケラケラ笑う彼と共に、ジャンプ。
 大空の景観や周囲の惨状を撮影しつつ楽しむ…つもりだったのだが、

「HAHAHA…やべぇ、手が動かん(まがお」

 だが、せっかくの機会だ。
 2人は垂直降下で最高速度を目指してみる事に。

「いっちょう限界超えてみようか!」



 シャトルに鳩が乗っていた。
 ロンベルク公爵(jb9453)。

 同行人は亞漓栖(jc1036)。

 2人?は開いたハッチから同時に飛び出し自前の翼で暫しの滑空…のつもりが、降下して早々、全身の体積が小さすぎて-70℃という気温に耐えられず凍結し始める公爵。

 次第に動かなくなり、一気に落下。
 それを見て、亞漓栖は大爆笑しながら腹を抱えて指を差す。

「アハハハハ、鳩がwww凍ってwww落下してるwwwwはとの癖にwwwwwww」

 どんどん加速していく鳩。
 ついには熱の壁に突入し、隕石の如く着火。

 心なしか、ジュワッと香ばしい匂いが……。

 その時、温度上昇により凍結解除。
 鳩復活バサァ!

 亞漓栖がポケットから“豆”を取り出して、真下に向かって全力投球。
 “豆”目掛け、鳩が風を裂いて再び音速で急降下していく。

 正に“隼”の如く!

 いや“鳩”でしょ。
 ああ“鳩”だな。

 それを見て、亞漓栖は更に大爆笑。

「ま゛ ぁ゛ ぁ゛ め゛ ぇ゛ ぇ゛ ぇ゛ ! ! ! ! 」

 ヒンッと風が鳴き、白い閃光が下を飛んでいた遊夜と沙耶の脇を掠めて追い抜く。
 直後――

 豆が地面に着弾。
 鳩も地面に激突。

 地表が抉れ、砂埃が噴き上がる。

「…うわぁ…生きてるかな? 砂煙すご…」

 咳き込みながら亞漓栖も着陸。
 小ぶりなクレーターの中心で、頭から土に刺さった鳩。

「……限界超えるのはやめとくか」

 遊夜の言葉に、沙耶もこくりと頷いた。しかし、

「遊夜さん…パラシュートが、開きません…」
「!?」

 まさかの故障。
 お陀仏。

 が、次の瞬間バサッと開く落下傘。
 沙耶のちょっとしたドッキリだったらしい。



「鳩には負けられないわよねェ…」

 公爵の落ちていく様をシャトルから見ていた黒百合(ja0422)。
 最高速度を叩き出すべく、ハッチに足を掛ける。

 事前に地上スタッフへは根回し済み。着陸予定地点に阻霊符等が展開されないよう要請しておいた。
 透過できぬまま最大速度で激突などしてはシャレにならない。

「…きゃはァ、どこまで速度が出るか楽しみだわァ…♪」

 物質透過能力、陰陽の翼、発動。
 測定スタート――

 初速から全力で下へ向けて“飛ぶ”。
 空気抵抗を無くす為に大気も透過し、呼吸を捨ててひたすら真下へ。

 縮地で更に加速。

 衝撃どころか音すら無く、黒百合はコンマ1秒たりとも速度を落とさず地表を貫いた。

 ――測定終了。

 透過状態で地中に入った後、血管や内臓が破裂しない程度に加減しながら徐々に制動を掛けて減速・停止。
 やがて上昇して地上へ抜け出ると、彼女は大きく息を吸って肺に酸素を取り込んだ。

「はァ…空気がおいしいわァ…♪」

 記録、マッハ4。
 透過で空気抵抗を無視できるので、開始高度を上げればまだまだ伸びそうではあるが……。

「素潜りの訓練も必要かしらねェ…」



「こいつぁ壮大な眺めだな!」

 ディザイア・シーカー(jb5989)はハッチから身を乗り出し、大きな弧を描く青と黒の境界線を遠望する。
 隣では、同じ景色に見惚れるエリスの姿。

「お嬢、一緒に地球に帰ろうな…」

 言うが早いか、彼はエリスにスチャッとパラシュートを結びつける。

「ふぇ!? ちょ、私シャトルでゆっくり帰るつもr」
「さぁ…行くぞお嬢!」

 抱え上げてダイブ。

「ちゃんと掴まってろよー?」

 そう言ったディザイアの声も、砲撃音のような風圧に掻き消されていく。
 眼前の空が凄まじい速度で上へ流れ、されど、遠くの景色は停まっているかのようにゆっくりと。まるで違う時間の中にあるような星の姿を眺めながら、ディザイアはエリスの手をしっかりと握る。

 ふと思いつき、ダイヤモンドダストで舞い散る結晶を演出などしてみたり――



 暫し宇宙を眺めて物思いに耽ったあと飛び降りる、ルナリティス・P・アルコーン(jb2890)。

「やはりソラはいい。実に美しいな…」

 体躯に見合わぬ巨大な幻翼を広げ、大気に溶けるように降りていく。
 かと思えば、時折強く羽撃き、あるいは螺旋を描きながら滑空し、不意に翼を畳んで一気に雲を穿つ。
 翼の種族は伊達では無い。

 まるで優雅に舞うように、青と踊る。

 ほどなくしてソラの宴は終わりを告げ、彼女は緩やかな滑空へと移って地表へと目を向けた。
 そこで、ふと思う。

「着地点が盛大にバラけそうだが問題ないのかね…」

 まあ、気にしても仕方が無いが。



 蒼穹飛ご一行。

「わぁ〜♪ 青いのです! 丸いのですー!」

 シャトルの窓から見える景色に燥ぎまくる、アルフィーナ・エステル(jb3702)。
 いざ飛ぶとなるとやっぱり怖いが、

「が、頑張るのです…!!」

 皆で一斉に飛ぶ時は飛ぶ。大丈夫。たぶん。
 いつものメイド服にメロンパンを持った夜雀 奏歌(ja1635)も頷きつつ、

「胸無いから…空気抵抗は…無い。くっ…」

 色々食い縛りながら、互いの健闘を祈ってハグ。
 一方、ナデシコ・サンフラワー(jb6033)はワンピース1枚のみという異常な薄着のまま狩霧 遥(jb6848)の背中にくっ付き、一緒に飛ぶ為にガッチリホールドしてパラシュート装着。

「狩霧さんと一緒に飛ぶの!」

 準備が整い、アルフィーナが合図。

「せーの!」

 一斉ダイブ。
 するとナデシコが、ふと遥の右目の眼帯に興味を示して手を伸ばす。落下しながら左側に付け替え。

 瞬間、“遥”の人格が“彼方”へとチェンジ。

「Σふぁ」

 と思いきや、一瞬で失神する彼方。
 人格間の記憶共有無し。高度数万mという突然の光景に脳が現実逃避したか。

 再度、眼帯を右に戻すナデシコ。
 “遥”復活。

「キャー♪」

 アルティメットスカイを全身で楽しむ遥。
 再びナデシコが眼帯を左へ。

「Σふぁ!」

 失神。
 眼帯を右(ry

 エンドレス。

「なかなか面白いの〜♪」

 その様子を眺めながら、奏歌はメロンパンもぐもぐ。

「空で食べるメロンパンも…中々です…」

 その時、エリスとディザイアを発見。
 笑顔で手を振りつつ蒼穹飛全員で近づいて、ディザイアからエリスを借り受ける。

 女子5人で編隊を組み、貧乳ファイブカード。

「「誰が貧乳か!(ムキー」」
「やりおる(ごくり」

 カメラでパシャるディザイア。

 ほどなくして高度も下がり、着陸準備。
 アルフィーナは翼で滑空しつつ、そこから見る景色にまた感動し、そうこうしている内に他メンバーの様子を見る暇なく着地体制へ。

 一方、ディザイアはエリスの補助。

「舌噛まないように気をつけてな」

 パラシュートを開かせた後、自身は翼で滑空しながら一足先に着地。
 地上から彼女を見上げる。

 お嬢はスカート。
 つまり俺達の絶景はここにあr――うさぬいビームつぴー。

「目がぁぁぁ!」

 悶え転がるディザイア。
 更にそこへ、ルナリティスも降りてくる。

「覗きとは不埒な」

 滑空してきた勢いで踏み蹴り。

「おっと…些か優雅さに欠ける対処だったか」

 踵で優雅に踏みなおす。ぐりぐり。
 ちょっとした遊び心のつもりがえらい目に。

 などとやっている間に、奏歌やナデシコも大変な事になっていた。
 巻いた風でスカートが盛大に捲れ上がり、ナデシコに至っては着用していたのはワンピース“だけ”なので…ああっと謎の逆光現象が!! 

 スカートを押さえながら着地し、そのままペタンと座り込んで涙目になる奏歌。

「ふぇ! 誰も見て無い…ですよね…」
「スカイダイビング楽しかったの♪(>ω<)」

 ナデシコの方は全く意に介していないようだ。
 そして最後の着地はアルフィーナ。

 上手く地に両足を乗せ…

「よ、よし、ちゃんと着地出来ま――きゃぁっ!?」

 …た途端、べしゃっとこけた。
 何だかんだで、

「楽しかったですね♪」

 奏歌達は、生きてる事をハグして分かち合った。



 シャトルの中に奇怪な集団が居た。
 ラーメンの具材を模した着ぐるみ姿の5人。

 麺:佐藤 としお(ja2489)。
 チャーシュー:死屍類チヒロ(jb9462)。
 メンマ:戒 龍雲(jb6175)。
 ネギ:常名 和(jb9441)。
 ナルト:華子=マーヴェリック(jc0898)。

 地上に設置したラーメンどんぶり型のセットに降下し、巨大ラーメンを完成させる。

 黒き闇の世界から美しい青の世界へと移り変わる成層圏からのダイブ。
 その絶景を見ながら大好きなラーメンを作る。

「自らがその一部になる……まさに僕自身がラーメンへと昇華するんだ! ふっふふふ……最っ高の思い出だ!」

 ニヤリと笑う麺を囲み、具材達は予め用意しておいた手書きの完成予想図を再確認。
 必ず皆で成功させる!



 具材会議が行なわれている後ろでは、妙に優雅な空気を纏った集団も居た。
 スカイティーパーティーダイビング、略してSTPD。パラシュートを仕込んだ改造テーブルセットと共に降下しながら、空中お茶会。

 おもてなしメイド:斉凛(ja6571)。
 お客様:ヴェス・ペーラ(jb2743)、秋嵐 緑(jc1162)、四月一日蓮(jb9555)、数多 広星(jb2054)、上野定吉(jc1230)、東雲 朧(jb9523)、タクミ・カラコーゾフ(jc0947)、夜桜 奏音(jc0588)、炎武 瑠美(jb4684)。

 ひなあられや300久遠のおやつ、菓子折り、ドーナツなのかクッキーなのかよく分からない自作菓子のドナッキー等々を持ち寄り、STPDのメンバーはテーブルセットを抱えてハッチへ。

 それとは別に何やら巨大な風呂敷を背負っていた朧。中には和菓子と一緒に、紐でぐるぐる巻きにした鍋に入った好物のきつねうどん。
 まだ熱々だ。

「皆さん。きつねうどん、どうz――」
「さあ! 空のお茶会の始まりですわ」

 凛の合図が被る。
 銀製のティーポットに紅茶を入れ、蓋は透明な強力テープで固定。右手でポットを持ち、左手で注ぎ口を押さえながらダイブしていった。

「ふわぁぁ!?」

 他のメンバーも一斉に後に続き、テーブルごと引っ張られて朧も強制ジャンプ。

「ひゃっほー! わしは風になるのじゃ!」

 お腹にチャックが付いた着ぐるみ熊…もとい定吉が叫ぶ。
 が、次の瞬間、落下の風圧でチャックが粉砕。着ぐるみがすっぽ抜けて、中から腹巻股引姿の白髪爺が現れる。

「母なる大地と熊完璧な組み合わせじゃ」

 空の美しさに恍惚とする余り、着ぐるみが飛んでいった事に全く気が付かない爺撃退士。
 対して、先に飛んだ凛は翼で滑空し、高度や座標を調節しながら仰向けに降下。
 テーブルセットの椅子にベルトで体を固定した一同目掛け、手にしたポットから紅茶を注ぐ。

 音速で上へ流れていく紅茶ビーム。それを下向きにしたカップで受け止める参加者達。
 流石この日の為に用意した強化カップだ。マッハで飛ぶ水滴を受けても何ともないぜ。

「こういう場所で飲む凛の紅茶も美味しいね」

 どぼぼぼぼぼぉぉぉ!(風の音

「こんな所で凛さんの紅茶を飲むとは。折角の機会ですし楽しみますかね」

 どぼぼぼぼぼぉぉぉ!(風の音

 お互い何言ってるか全然聞こえねえ。
 一方、少しおかしな事になっていたのはヴェス。

 椅子には着かず、翼で一同に寄り添うように降下していた彼女は、凛が放った紅茶をシルバートレイで受け止めてゴクゴク。

「手頃な器がなかったものでして」

 また、タクミと定吉は、水圧カッター並の威力で注がれた紅茶をダイレクトに口でキャッチ。

 チュンッ!

 今一瞬、紅茶が頭蓋を貫通したような気もするが、撃退士だから大丈夫だよね。
 定吉は特注品の堅煎餅とぬれせんを取り出してもぐもぐ。

「煎餅も紅茶もうまい!」

 紅茶以外にも、塩漬け桜とお湯を投げて桜湯を提供する凛。
 それらに加え、瑠美は魔法瓶で持参したホットココアなども味わいつつ、天地逆となって茶会に興じる仲間達の姿をデジカメに収める。

 菓子折りの箱を開け、中身をばら撒いて落下中の仲間達へ提供するヴェス。
 他の面子も、超風圧の中で互いに持ち寄ったおやつを配り合っている。

 タクミが自作の苦無型クッキーや手裏剣型クッキーを、手裏剣投げのように各自目掛けシュパパ。
 それを見た奏音も、彼の口を狙ってひなあられを投擲。

「あら、口がお留守ですね。えいっ!」

 見事にIN。

「絶景を見ながらの和菓子もなかなかでござる! 拙者幸せでござるー!」

 その頃、ジャンプ直後に和菓子とうどんが飛散してしまってしょんぼりしていた朧。
 うどんに気を取られている内に仲間達から離れてしまい、1人じたばたともがいていた。

 犬掻きで必死に宙を泳ぎ、テーブルへ近づこうとする。
 どうやらパニックになって、翼で飛べる事を忘れているようだ。

 それを見つけたヴェスが、滑空して朧を抱っこ。
 無事に保護した事を、意思疎通で凛へ報告する。

 その凛はと言えば、どぼぼぼぼぉぉぉと風圧にはためきながら旅のお供ガイドを取り出して、書かれている内容に首傾げ。

「この空のどこかにお土産屋?」

 冥土の土産かな?



 ハッチの縁に立つ祐里・イェーガー(ja0120)。
 普段着姿でスタイリッシュなゴーグルを着用。頭には高性能カメラを付けたメットを被り、人生初の陰陽の翼を用いた飛行を目前にして、胸を高鳴らせる。

 隣には、ネックウォーマーと防寒具を着込んでメットを被ったザジテン・カロナール(jc0759)。
 共に並び立ち、いざ母なる大地へ。
 大気を穿ち、星の息吹を全身で堪能する。

 遥か眼下にあるのは陸だけではない。
 雄大に広がる海の青。

「やっほぅですーっ!」

 風圧などなんのその。
 気持ちを抑える事無く思いっきり叫ぶザジ。

 丸みのある真っ青な海に歓声上げて、人界に来た事を心から喜ぶ。
 やはり、この世界は素晴らしい。

 感情が振り切れているのは、祐里も同じだった。
 いつもとは違うテンションで、悠然とした景色とそれに出会えたこの瞬間に、感謝と護りの誓いを叫ぶ。

「I Can Fly!! なんて・・・、聞いてないか」

 が、その時、隣に居たザジがくるりと振り向いて笑う。

「へっ、聞こえてた」

 ……SNSに流れたりさえしなければ、まあ良いか。



 ラーメンを作る準備は整った。
 いざゆかん!

 としお…もとい麺がハッチからダイブ。
 仲間達の目印となるべく、光纏して黄金の龍を纏いながら地球へと落ちていく。

 成層圏の高みを目の当たりにして、ガクブルするナルト。
 いくらなんでも成層圏からってやりすぎじゃないかしら? まぁいいわ、思い切ってレッツダイブッ!!

「彼が行くって言うんだから、例え火の中水の中宇宙の果てでもストーk……追いかけてくに決まってます!(飛び降り」
「常名和もといネギ、いっきまーす!(ぴょーん」

 わらわらと空へ身投げしていく具材の群れ。なんだこれ。

 まさかメンマが麺より先に器へドボンと言うわけにもいくまい、と闇の翼で落下速度を調整する龍雲ことメンマ。
 一方、すぐ近くの空域ではSTPDの緑や蓮達が逆さテーブルで優雅にしりとりをしていた。

 どぼぼぼぼぼぉぉぉ!(風の音
 各自『ぼ』しか聞き取れず。

 チヒロチャーシューがSTPDの方へ手を…というか肉ヒレを振る。

「おーい、緑元気〜?」

 肉ヒレに気づいた緑が、オーラで返事をする。

「(※けったいな格好ですね的な色)」
「ボクはラーメンの副役者のチャーシューです!」

 ビシッと敬礼。※聞こえてません

 その光景をビデオカメラに収める龍雲メンマ。
 折角の成層圏だ。帰ったら思い出の一つとして皆で鑑賞しよう。

 マッハで落下する空中茶会と具材の群れ。
 更に、近くを通りがかったザジも手を振っていた。風圧に抗いながら必死に実況を試みて口パクしている祐里の姿も。

「これは……まさに絶景、だな!」

 むしろ珍景とか思ったけど黙っておこう。



 中頃を過ぎた辺りで、体を固定していた椅子のベルトを外すタクミ。両手を広げて風を感じながら空中遊泳。

「ダーイブ!! でござるよーー!!!」

 ふと眼前に流れてくる、中身が空っぽの熊ぐるみ。定吉のだ。
 回収。

 対して、パラシュート展開のタイミングが迫っている事を報せて回るヴェス。

「伝達ご苦労様です」

 奏音や蓮は落ち着いてレバーを引っ張り、装着していた個人パラシュートを開いていく。
 それを見て、ホットココアを飲もうとしていた瑠美も慌てて自分のパラシュートレバーを引き――

 ……作動せず。

 パニック。
 それに気づいた広星は、一言。

「お前…消えるのか…?」

 瑠美は仲間達を見渡した後、広星にデジカメを託して涙目で敬礼。

(皆さん、先に逝ってますね)

 自分には関係無いと思っていたオペレーションメテオ、まさかの発動。
 下に居る者への警戒も兼ねて、星の輝きで煌きながら落ちていく。

 その姿を広星は敬礼しながらカメラで撮影。
 ついでに、着ぐるみが脱げたままの爺も撮影。

「流れ星ですね、私」

 そろそろ助けてやるか、と広星は瑠美のパラシュートを狙ってゴーストバレット発射。撃ち抜いて強制展開。
 地上激突寸前の所でパラシュートが開いた瑠美は、緩めきれなかった分の衝撃をシールドで耐えて何とか生還した。

「皆さんよりも早く着いてしまいましたね」

 起き上がり、頭上を仰ぐとそこに――

 熱々ココアの魔法瓶。

 直撃。
 顔面熱湯コマーシャル。

 瑠美は顔を押さえて地面を転げ回った。



 カラスの着ぐるみでハッチに立つゼロ=シュバイツァー(jb7501)。

「押すなよ! 絶対押すなよ! 絶対に押すなよ!」
「はい、です。押さないの…」

 んむ、と頷いて下がる普段着姿の華桜りりか(jb6883)。
 なんというボケ殺し。

「……ちゃうねんりんりん。押すなよを3回言うたら押さなあかんねん」
「そうだったの、です…」

 振り返ったカラスを、思い出したようにハッチから突き落とす。

「ちょ、今押したらあかn」

 落下。

「んぅ……ばらえてぃは、難しいの……」

 そのまま下を覗きこんだりりかは、余りの高度に怖くておろおろ。
 しかしゼロを落としてしまったので、勇気を出してダイブ。
 鳳凰を召喚し、その背に乗る。

「わわ…凄い風なの、です。でもまけないの……鳳凰さんふぁいとなの」

 特別仕様のかつぎをはためかせながら、ゼロに追いつく。

「発煙筒でお絵かきをしてみたいの……」

 飛行機雲的な。

 特注のチョコ色と桜色の煙を焚き、描くのはもちろんチョコと桜。
 ついでに、ポケットに持っていたチョコもぐもぐ。

「鴉の舞を楽しむがいい!」

 対するゼロも特製の発煙筒を持ち、黒煙を焚いて鴉の絵を描く。
 高度数万mの大空に、大量のチョコと桜と鴉が浮かび上がった。



 スープに似せた琥珀色の液体で満ちたどんぶりを、射程内に捉えた拉麺衆。
 ふと、先頭のとしおが気づく。

「あれ? 麺はスープに沈まないといけない、のか?」

 呼吸……ま、なんとかなるか☆
 着水の順番を調整する為、どんぶりに入る順とは逆順にパラシュートを開いて減速。

 瞬間、チャーシューのチヒロに問題発生。

「ナヌ?! パラシュートが開かないだと?!」

 作動せず。

「ギャーギャー! 落ちる!!!」

 パニック。
 どうやら自前の翼がある事を忘れているようだ。

 その時、

「ふわわぁぁ〜……」

 鳳凰がゼロと空中で飛行技術の張り合いを始め、巻き込まれて目を回したりりかの悲鳴が流れてくる。
 すれ違いざま、チヒロの背を掠めるカラスと鳳凰。

 刹那、衝撃で彼のパラシュートが作動。
 何とか減速に成功し、先に着水していた麺に続いてスープにIN。

「神様(悪魔なのに)ありがとうございます(泣きながら」

 次はメンマの番。

「ふむ、よく考えたらとしおの上に全員が乗っかる事になるな……ま、いいか」

 うっかりリアルに逝っちまってもラーメンになるんだ、あいつなら本望だろう。
 一応うっかりがないように気をつけるがな。

 着水(麺踏み

「お、すまん」

 うっかり。

 呼吸の為にスープから顔を出そうとする麺だったが、それを踏み沈めるように続々と降りてくる仲間達。
 できるだけぶつからないように気をつけてるけど、麺は一番下だから仕方ないよね。

「常名和、無事到着であります!」

 ぴしっと敬礼。
 ネギと化しつつ最後の具を待つ。

 ナルトは、方位術で自身と麺との位置関係を把握し、

「あそこね、えいっ!」

 どさくさに紛れて麺の胸へダイブ。

(うっかりほっぺにチュッとか! キャー恥かしいー!)

 ――ドゴシャア!

 かなりの勢いで麺をスープの底に沈めるナルト。

 その頃、上空で滑空姿勢に入っていたゼロとりりか。
 ふと、ゼロの持っていたカラの発煙筒が何やらヤバ気な熱を帯び始める。

 咄嗟にその筒を投げ捨てるゼロ。

 慌ててスープの中に潜るチャーシュー、メンマ、ネギ、ナルト。
 入れ替わりに、酸欠限界に達した麺がブハッと浮上し――

 筒 爆 発 !

 ジュッと香ばしい音がして、麺がスープにぷかー。
 直後、他の具材が再浮上。

 巨大ラーメン完成!
 その様子を眺めていた広星が、上空からカメラでぱしゃり。
 ピース!

「すっごい楽しかったー! 空広いし山でかいしどんぶりちっちゃいし!」
「帰りは皆で本物のラーメン食べて暖まりましょ♪」

 ……あ、お土産どうしよう?

 一方、筒を投げたゼロは翼で悠々着りk――
 ぶぎゅっ、と。目を回したりりかが、鳳凰と共にカラスの上に綺麗に降り立った。

 また、景色に見とれていてヴェスの合図をすっかり忘れていた奏音。
 慌ててパラシュートを開くも、テーブルセットの椅子に体を固定したままだった事を思い出す。

「あら、そういえば固定されていましたねぇ」

 椅子と共に落下。すると緑が、テーブルの裏にあったスイッチぽちり。
 テーブル下から巨大クッションが噴出し、バランスが崩れぬよう椅子に繋がっていたロープを巻き取ってガッチリ固定。大型のパラシュートも飛び出した。

 対して、着地寸前でテーブルから離れたのは広星。

「パラシュート? 邪魔だから捨てた」

 生身で落ち、忍法スキルとケセランでたゆたって地に降りる。

「だ、誰かヒールをっ」

 そこへ顔を押さえた瑠美が転がってきt
 ぷちっとテーブルセット着地。

 朧を抱えていたヴェスも、自前の翼で緩やかに着陸。
 満足げな様子でタクミも続く。その手には定吉の熊ぐるみが。

「あっ! わしの着ぐるみ脱げてたのか」

 気づいた爺がしょんぼり。
 また、着地ダメージをストレイシオンの防御効果で減らせるのかどうかを実験するザジ。
 翼を解き、地表にストレイシオンを召喚――

 からの激突。
 目測を誤った。

「ごめんですレイニール……」

 涙目で土下座。
 その後、ザジは共に飛んだ仲間達にハグをして、改めて星にただいまを告げた。



「ほわぁ…星が近いですのー」

 ハッチから、錣羽 瑠雨(jb9134)が手を伸ばす。流石にスカートでは色々問題があるので、今回はいつもと違うショートパンツ姿だ。
 そんな彼女を、誤って落ちないように見守る錣羽 廸(jb8766)。

「自力ではここまで高く飛べませんものね」
「落ちるという機会も中々ないものだね。面白そうだ」

 尼ケ辻 夏藍(jb4509)が相槌を打つ。

「落ちる? 飛ぶじゃあないのです??」

 その相槌に、興味津々といった様子の裏葉 伽羅(jb9472)。
 一方で、八鳥 羽釦(jb8767)は呆れ顔を浮かべている。

「なんでまた、わざわざこんな所から飛び降りるんだよ…」

 言いつつ、サングラスを外――

「八鳥君、サングラスは…上からゴーグルでもかけておけばいけるかもしれないけれどね」

 ――そうと思ったが、夏藍にじっと見られたのでやっぱり付けたまま。…いけるか?

「旅行ってぇ聞いてたんですけど、なんでこんなとこにいるんです? いや別に怖くはねぇんですけどね、ね」

 そう強がりつつ、そもそも高所があまり得意じゃない系百々目鬼…もとい百目鬼 揺籠(jb8361)。
 ここぞとばかりにその背を押す夏藍。

「おや百目鬼君、何をモタついているんだい? 後がつかえてるじゃないか(ぐいぐい」
「いやマジこんなとこから落ちたら死にますってちょっまって尼サンてめえマジ押すなください」

 鉄下駄で蹴り返そうとする揺籠だったが、夏藍はドーマンセーマンで近接拒否。
 やいのやいの。

 そこへ伽羅も加わり、

「尼様〜一緒にっと、押せば良いのです?」
「裏葉君、手伝ってくれるのかい? じゃぁ一気に行こうね(どーん」
「早く行かないと、詰まってるのですよ〜百目鬼様♪(どどど〜ん」

 2人に押されて、とうとうハッチの縁から足を踏み外す揺籠。
 が、その際、「さっさと行け」と後ろから蹴ろうとしていた羽釦の足をがしり。巻き添えに。

 遥か地上へと真っ逆さまに落ちていった2人を見て、瑠雨があわあわ。
 廸や夏藍、伽羅と一緒に慌てて後を追うも……

 思っていた以上の落下速度。

「Σほにゃぁぁぁ」

 気の抜ける悲鳴。

(落下中は流石に不自由だな…)

 そんな瑠雨とは対照的に、淡々と風を受ける廸。
 また、これまで体験した事のない高さの空に大燥ぎの伽羅。

 嬉々として風を感じ、やがて翼を広げると自由に滑空を始める。
 加速や減速を交互に繰り返したり、錐揉みしたり、その場でくるくると回ってみたり。

 普段では味わえない広さの空を、全身で堪能。

「瑠雨ちゃんも一緒に飛びましょう〜♪」

 その声が聞こえてかどうかは分からないが、落下の速度に慣れてきた瑠雨も翼を広げて滑空。
 前転して遊んだりしつつ、廸も巻き込んでくるくる。
 「怖いー! けど楽しいー!」と、ジェットコースターにでも乗っているかのように燥ぐ。

 時折一緒に回されつつ、迷子になりやすい面子を見守りながら落ちていく廸。
 夏藍や揺籠、羽釦も、その光景を微笑ましく、あるいはぶっきらぼうながらも付き合い良く眺める。

 そろそろ耳も風音に慣れてきた頃、地上が近づき、廸は着地の為に闇の翼を…いや、そういえば今回はパラシュートを背負っていたんだったか。

「開き方は、と…いや、他の妖怪は開けるか…?」
「私は折角だし翼を使用しよう、滑空しながら下界の景色を楽しむのも良いものだよ」

 夏藍がばさりと自前の翼を広げる。
 揺籠も「たまにはこういうのも悪くねぇでさ」と頷きつつ、

「ただし尼サンてめえは降りたらただじゃおかねえ」

 そんな、いつもの調子で。
 妖達は、共に生きる己が住み処へと帰ってきた。



「正直…訓練でもこんな所に来る事は無いんですが、頑張って楽しんできます」

 シャトルからの景色を一望しながら、仁良井 叶伊(ja0618)はこくりと頷く。

「飛べる訳ではないので必要な物は十全に…ですね」

 借り受けたのは滑空用のウイングスーツ、減速用のドラッグシュート、着地用のパラシュート。
 また、外装だけでなく服装も念入りに。4万mという過酷な高度に耐えられる様に気温対策を施した恰好に酸素ボンベ、高度計、GPS等々。
 この日の為に使い方の習熟も重ね、全ての準備は万全だ。

 装備の最終チェックを終え、叶伊はハッチに立つ。
 いざ超空へ。

 下から押し上げてくるような風圧の中を滑空し、他の参加者達へ目を向ける。
 なんていうか、まさに久遠ヶ原クオリティ。

 フリーダムな空を横目に、叶伊も自らの飛行計画を完遂するべく青い星を翔け抜けた。



 外の景色に感動で声を上げる東風谷映姫(jb4067)と桜花(jb0392)。

「うわー綺麗だね桜花♪」
「不思議な光景だよねぇ、いつも上にある雲が下に見えるなんてさ、地球を手に入れたような錯覚抱かない? 地球丸ごと抱きしめれそう…ならない?」

 何故か映姫がスク水姿だがシャトルクルーはノータッチ。
 パラシュートを付けていざジャンプ。

「ひゃっはーーー♪」

 映姫が歓声。
 ふと、桜花が空中で彼女の耳元に口を寄せる。

「今まで色々あったんだ、うれしい事に悲しい事。でも、一番うれしかったのは映姫にあえた事、なんだ。だから言わせて、私と会ってくれて、ありがとう」

 そのまま抱き着いて頬にキス。
 対する映姫も、ずれそうになるカツラを押さえながら桜花の頬を舐める。

「ダイブしながらのprprも格別だねぇ〜♪」

 人目も憚らず彼女の頭を引き寄せ、キス。

「最近ほとんどキスもしてなかったから余計に格別だね〜♪」

 お互い色んなトコロにちゅっちゅ。
 熱々だなー。おでんの餅巾着くらいネッチョリ熱々だよー。

 また、風圧で何かすごい揺れる桜花。抱きしめてる映姫にぺしぺし直撃。

「ん? また大きくなったんじゃない? 羨ましいな〜」

 おっとそろそろパラシュートを開かねば。
 ついでに展開時の衝撃に乗じて桜花を揉もう、などと画策しながら映姫がレバーを引っ張ると――

 抱きついていた桜花の腕に、パラシュートが絡まり。
 しかし知った事かと映姫をちゅっちゅし続ける桜花。

 そのまま地面が迫り――

 ぷるぐしゃあ!!

 映姫の下敷きになって後頭部から地面に激突。
 一方の映姫は、桜花の揺れたアレやソレがクッションになって奇蹟の無傷。

「綺麗だったね〜桜花♪ またやりたいね〜♪」

 返事が無い。ただの乳クッションのようだ。



「成層圏に飛び立って、そこからダイブしつつ、景色をカメラに納めちゃうよ!」

 目をキラキラさせて高揚する、犬乃 さんぽ(ja1272)。

「宇宙だよ、宇宙! そこから飛び降りたらニンジャのシュギョーになるに違いないもん!」

 デジカメをしっかりと手に持ち、長いマフラーを靡かせてシャトルのハッチからニンジャダイブ。

「こう言う時、誰かと一緒だったらこう言うんだよね…キミは何処へ落ちたい?」

 なにそれこわい。



「華麗なダイブ、私が体現してご覧に入れましょう」

 奇怪な、しかしどことなくセクシーな体勢でハッチに立つマシュー・ゴールドマン(jb5294)。
 ジ●ジョ立ち。

「希望の明日へロケットダイブいたしましょう!」

 シャウトしつつ、前転しながら華麗に飛び出す。
 エレガントにレッツゴーな陰陽ダンスを舞いながら降下していると、さんぽの姿が見えてきた。

 下に広がる景色や透き通った空をカメラに収め、恋人へのお土産にするさんぽ(照れ笑い中)。

「わぁ、凄く綺麗…喜んでくれるかな♪」
「ふふっ、まだまだこれからですよぉっ」

 その時、カメラに見切れる空中ジョ●ョ立ちマシュー。
 なんぞこれ。

 おっといけない、そろそろ減速しなくては。
 地表が迫ってきたのに気づいたさんぽは、唐草模様の風呂敷を広げてパラシュート替わりに。

「ニンポームササビの術☆」

 瞬間、時速数百kmの風圧を受けて風呂敷が手足ごとボンッと上に引っ張られ、背中側へ二つ折りになるニンジャ。
 腰骨ばきょめきー。

 ふわふわぼてりと地面に落ちたさんぽは、ピクピクと気を失っていた。
 一方マシューは、

「さあ、フィニッシュです! とくとご覧あれっ!!」

 パラシュート中もジ●ジョ立ちでスタイリッシュに着地。
 そのままカメラ目線でドヤ顔を向け、

「撃退士の皆さんは特別な訓練を受けています。良い子の皆さんは真似してはいけませんよ?」

 ウインク&投げキッス。

\はい、オッケーでーす/(地上スタッフの声



 普段着(和服)の樒 和紗(jb6970)。和服ですから捲れませんよ?
 はことの砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)も普段着(ロングコート)。ばさぁってなる。

 そしてもう1人。
 在学生では無いのに何故か呼び出されたリーゼ(バーテン服)。

「え? Vt決戦という学園行事で上位奪ったんだから、部外者な訳ないでしょ。だからキリキリ参加するんだよ――リーゼちゃんの自腹でね!(ばばーん」

 後で砂原宅に請求書送っときますね。

 ジェンティアンは、ハッチの縁に立つリーゼの後ろにそっと近づき、

「ここから突き落とせば…(火サス臭」
「さっさと逝きなさい(げしっ」

 瞬間、和紗がジェンティアンを蹴り落とした。
 彼女は残ったリーゼに手を差し出し、

「行きましょうか」

 共に降下。
 和紗さんまじ男前。

 正座姿勢でジェンティアンに追いついた和紗は、せっかくだからと普段消している光纏を発現。
 雪量当社比15倍。

「吹雪いてる吹雪いてる! 視覚的に寒さ増すからっ!」

 結晶に埋もれて見えなくなるジェンティアン。

「滅多にない機会ですし…篠笛を吹いてみましょうか」

 すちゃっと取出し演奏する和紗。

「風圧になぞ負けません(ぴろろ〜」
「和紗の楽しそうな姿は…うん、まぁ悪くはないんだけどね……」

 どぼぼぼぼぼぉぉぉ!(風の音

 全然聞こえないっていうね。
 それでも、演奏後に拍手。例え聞こえてなくてもな!

「お粗末様でした(礼」

 ふと、和紗がリーゼを見る。
 空中フレアバーテンディングとか出来ないのだろうか(期待に満ちた目

「ふむ」

 視線を察した彼はどこからともなく複数のボトルを取り出して、ポイッと放り――

 風圧で流されてジェンティアンの顎直撃。

「すまない」
「うん、知ってた……」

 ジェンティアンは飛んできたボトルを抱え、己の役割と共に落ちていった。



 リョウ(ja0563)の横で雁鉄 静寂(jb3365)がデジカメのボタンを連打。

「地球ですよ地球! 宇宙ですよ宇宙! ……綺麗ですね」

 機内からの景観を堪能した2人は、やがて後部ハッチへ。

「さて、とここから飛び降りるのですね」

 普段着の上から互いの体をハーネスで固定し、タンデムジャンプ。

「ひゃー、リョウさん落ちていきます! 心地よいですね」

 初体験に吃驚する静寂。
 リョウも遠ざかっていく宇宙の色や周囲のダイバー達、そしてどんどん迫る地上の景色をデジカメに収めながら空中遊泳を楽しむ。

 リョウが小天使の翼を広げ、姿勢を整えながら滑空。
 落下が緩やかになり、2人は地上を広く見渡す。

「これがわたしたちの守るべき地球なんですね」
「…この星で生きて、この星で死んでいく。魂も生きる感情も、それら総てが当たり前にある世界にしないとな」
「少し……感動しました、自分達のいる場所をこんなふうに眺められるなんて」
「――雁鉄静寂。これからも頼りにさせてもらう。頼りない俺だが、これからもよろしく頼む」

 この世界を守る事を、これからも共に戦っていく事を、改めて決意するリョウ。

「ありがとうです」

 静寂も、心からの礼と頷きを返した。



 プロテクター付きの飛行ボディスーツで身を包み、恋人である雨倉 華耶(jb5107)と共に翼で空へ降りる秋姫・フローズン(jb1390)。

「少し…風が冷たい…ですね……」

 極めて高く、極めて澄んだ大気の海を泳ぎながら、秋姫は徐に華耶へと手を差し出す。

「一曲……お相手…願えませんか…?」
「愛い娘だ。よかろう」

 不遜な言葉の中にも確かな気品を感じさせながら、華耶は紳士のそれを以て舞踏の申し出を受ける。

「曲…と言いましても……本当に流れはしません…けどね…」

 微笑む秋姫の手を取り、「構わん」と頷く。
 姫の願い。この私が拒むはずも無い。

 阻むものもなく、穢すものもなく。どこまでも広く、然として踊る青。

「これだ。私はこの空を待っておったのだ」

 己の翼で思い人の手を引く、一瞬の中の悠久。
 2人の天人が、時の音の中で踊っていた。



「普通、修学旅行で成層圏まではいかないと思うんだけど…」

 まぁいいか、行ってみたかったのは事実だから
 シャトルの中でぽつりと呟く、七ツ狩 ヨル(jb2630)。

 隣には蛇蝎神 黒龍(jb3200)も居る。

 空を飛べぬ人達が作り上げた<翼>に乗り、宇宙からの空の眺めをヨルに見せたい。
 ヨルの中に芽吹く探究心の翼を、もっと広げてあげたい。
 人々の<翼>…可能性に、2人でもっと近づきたいと想う。

 やがて開いたハッチからの景色に、ヨルは静かにごちる。

「…雲の先、自分の目で見れるとは思わなかった」

 自力では、雲にすら辿りつけぬ空。宇宙は、本当に初めて見る光景。

「空は青いのにその上の宇宙は真っ暗で、広がる大地は緑なのに地球は青い…不思議」

 この位置からならオーロラも見えるだろうか?
 ヨルは目を凝らして、黒と青が混じる星の境目を遠望する。

 残念ながらそれと思しきモノは見つけられなかったが、それでも、滅多に見る事の無い光景をその目に強く焼き付ける。

 そんな彼の傍に立ち、黒龍は自身のオモイを星の海へと浮かべる。

 ボクらが守ってきたモノの、地球の美しさを、見て誇りに感じてくれれば、と願う。
 それはきっとヨルの強さに、希望に繋がるから。

 ヨルの心に咲く誇りの華。
 それはきっとボクにとっての絶景。
 大事にしたい、一緒に生きていきたい。

 願いを宙<ソラ>に祈る。

 やがて2人は、遠く広がる地上の景色へとその身を預けた。
 自身の翼を広げ、緩やかに降りていく。

 ソラヲトブ。

 ヨルと――
 黒龍と――

 共にダンスを踊るように。

 この大好きな『人界の空』の中を、少しでも長く泳いでいたいから。

『俺、やっぱりここに来て良かった』

 黒龍の頭の中に、相棒の声が響く。
 顔を向けると、そこには心から嬉しそうな笑みが一つ。

 オーロラは見られなかったが、それはまた、別の機会にしよう。
 一緒に居れば、生きてさえいれば、きっとまた来れるから。



 シャトルスタッフが差し出した“ぱらしゅーと”なるものを着けぬまま、説明もそこそこに“ふらいあうぇい”したUnknown(jb7615)。

「(欠伸をして目をこすり)…腹減ったな」

 欠伸した口に風圧空気ガボボボボボ――ごっくん。
 ふと、目の前にきつねうどんと和菓子が流れてくる――ごっくん。

「誰か落としたのだなー」

 風の中で眠るように落下していたアンノウンだったが、時折目を開けて周囲の光景を見やる。
 空、海、陸、そして大勢のゲキタイシ達。

「こういうものをウツクシイ、と言うのだな人間は」

 各々の行動やその表情。
 共に居る時間の共有自体を嬉しそうに笑い、再びスヤァと寝息を立てる。

 人の夢、
 黒の夢、
 星の夢、

 そのカタチは、やがて真っ直ぐに地上へと降り注ぎ――



「外でお茶するのも気持ちいいよね…! 今日はオレンジティーだよ!」

 着陸地点でテーブルセットを広げるマリス・レイ(jb8465)。
 オペ子や局長だけでなく、エリスとディザイア、リーゼと和紗とジェンティアンらも居る。

 お菓子と紅茶を並べ、空を見上げて皆が降りてくるのを眺める。
 服や翼やパラシュート。それぞれの色が浮かんでいて、とても綺麗だ。

 しかしそこへ、一筋の流星が。
 未知なるメテオ、アンノウン。

 嫌な予感がして、オペ子と局長を両脇に抱えるマリス。和紗達もガタッと立ち上がり脱兎。

 直後――



 ズアッと大地が震え、地表に巨大なクレーターが刻まれた。



 樹月 夜(jb4609)を背に乗せ、地上から翼で飛び立つ支倉 英蓮(jb7524)。ギリギリまで近づいて、ヒトの形をした流星群を見物する。
 想像以上にキラキラぺかぁ☆で、まーべらす!

「おー、すごい光景ですねぇ。神秘的と言うか人がゴミの…ry」

 徐に狙撃銃を構える夜。
 2人一緒なら、どんな流星でも狙撃できる気がする。

「さて、撃ちますよ!」

 許可する。

 だがその時、地表に出来たクレーターどかめきゃぁ!な光景を見て、英蓮の中に居た獅子神様が覚醒。
 顕現、獅子蓮牙(ガオレンガー)!

「懐かしき天地開闢の光景のようじゃ…これは良い酒の肴になるのぅ♪」

 初めて獅子神様の人格を見た夜は、喉元をくすぐったり頭を撫でたりしながら敬う。

「初めまして、樹月 夜といいます」

 その頭にリボン結び。
 満足げに頷く獅子神様。

「夜よ、英蓮を生涯の伴として頼むぞや?」

 夜はくすりと微笑しながら、

「……いつも支倉さんがお世話になられてます(おかしい言い方」

 その後、獅子蓮牙は隠密狙撃夜(ステルスヨルー)を背中に乗せて合体。星煌獅子蓮牙(スターガオレンガー)にパワーアップして、落ちてくる撃退士達の中を飛び回っていた。



 他の機よりも大きなシャトル。
 ゴウンゴウンとハッチが開く。

「ついに、ここまで来たか…見てるかいとっつぁん…伊藤運輸は、成層圏まで来たぜ! ここまで来たらやることは一つ! ダイビング運送しかあるまい…!」

 積まれていたのは、伊藤 辺木(ja9371)が運転する輸送トラック。

「いざ! トラックダイブ! 壊れ物は積んでない! 完璧だ!」

 成層圏ダイビング運輸…これぞ、新・運送屋…!

「トラックに荷物を積み込んで参りまぁぁぁす!!」

 投下。

「ぐおぉぉぉ空気抵抗! 負けるな死ぬな伊藤運輸! お客様が待ってるんだから!」



 その頃、別のシャトル。
 ドゥルルンとエンジン音が轟く。

 背にクリス・クリス(ja2083)を乗せ、ライダースーツ姿でハードボイルドにバイクに跨るミハイル・エッカート(jb0544)。
 吹き飛ばされぬよう、シートと体をしっかり固定。アクセルを吹かし、高度4万mの空へ発進。

「魔女っ娘クリス、落ちますー♪」

 空気抵抗と寒さはミハイルさんが受け止めるのでボクは楽ちん♪
 心配ない俺たちは超人だ。

 あうるがあればだいじょうぶ。

「ひゃっはー、空中ツーリングだぜ。どうだ、クリス、気分いいだろう!」

 地球は丸かった!

「おー、地球の輪郭が見える景色ってすごいー」

 ミハイルの背で、きょろきょろ周囲の空を見渡す。
 撃退士がいっぱい。

「でも撃退士のダイビングってカオスなんだ」

 笑。
 まあ人のこと言えないけどぉー。

 その時、視界に映った鉄の塊――『伊藤運輸』。

「え? なになに?? なんでトラックが飛んでるのー」
「さすがトラック野郎だ」

 どうやってトラックがシャトルに乗り込んだのか知らんが、運送屋魂に敬意を表して挨拶に行くとするか。

「よーう! 辺木ーー!! ……って、あああ!?」

 傾けたバイクの車体が音速の風圧に煽られ、伊藤運輸へ急接近。

「…!? ミハさんバイクが!? 空中交通事故ぬわーー!!」

 このままではぶつかるんだぜ。

「クリスー! なんとかしてくれーー!」
「きゃーミハイルさんボクになんとかしろって言わないでー(悲鳴」

 はっ、そうだ。
 こんな時こそ、この前授業で習った『作用・反作用』の応用だ。

 トラックに向けて魔法を撃てば、反作用で離れられるに違いない。

「えいっ、クリスタルダストぉー」

 氷錐が伊藤運輸のエンジンを直撃。

 刹那、反作用どころか作用点に巻き込まれて 大 爆 発 。

 母なる地球に抱かれて、ミハイル達は自らもまた星となった。



 爆散したトラックの荷台から、無数の黒い粒が飛び出す。
 それは公爵やアンノウンによって出来たクレーターの上へと降り注ぎ……

 瞬間、抉れた大地に色取り取りの花が咲いた。

 アウルの輝きにも似た、夢幻の花。
 心を映す、生命の光。


 ――私たちが住む星は、こんなにも美しい。











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