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もふもふパラダイス タグ:【もふ】 MS:STANZA

● 此処は天国ですか?


 はい、天国です。
 もふもふぱらだいす、です。

 青い空、白い雲、緑の草原。
 そして、もふもふ。

 もふもふ。


「はぁ〜、幸せです…此処に永住したい」
 もふもふに埋もれた雫(ja1894)は、もふもふをもふもふしながらうっとりと呟いた。
 ぽかぽかと暖かな陽射しの下、毛玉の様な猫を膝に、大きな犬を両脇に侍らせ、首には狐の尻尾を巻いて…ああ、勿論ふさふさの尻尾だけじゃなく、本体も一緒に巻いてますが。
 普段は触る機会もない、ふわほわの腹毛が首の後ろにぴったりと密着し、ちょっと重いけど最高に気持ち良い。
 少し離れた場所では、黒夜(jb0668)が同じ様にもふもふをもふりまくっていた。
「…動物が大量だな」
 猫をもふり、犬をもふち、兎をもふり。
「…かわいい」
 その膝に黒猫が乗って来る。
「チアキに似てるな、こいつ。チアキの方がかわいいが」
 留守番させている飼い猫を思い出し、着いたばかりだというのに早くも帰りたい気分になってくる。
 いや、でも大丈夫だ。
 チビ助が面倒を見てくれているし、せっかく来たんだから楽しまないと。
「あいつ、来れなかったしな」
 お礼も兼ねて、お土産にウサギの写真を撮りまくってやろう。
 しかしそこのでっかい着ぐるみ、お前はだめだ。
「わ、わふは着ぐるみじゃないのふー」
 着ぐるみが超苦手な黒夜が速攻で逃げの体勢に入った直後、そのデカいウサギが首を振った。
「ほら、かぶり物じゃないのふ」
 自分の頭を引っ張って見せる。どうやら嘘ではない様だが――しかし。
「こんなデカイのは動物じゃねー…」
 うん、確かに正確に言えば悪魔だけれど。
「小動物以外お断りだ」
 お断りだが写真は撮る。
 自分の為じゃないぞ、チビ助の為だからな。勘違いするなよ?
「それなら、私が独り占めしても良いですよね?」
 答えは聞いてない。
 目をキラキラと輝かせた雫が、そのぽってりとした腹に飛び付いた。
「もっふもふです…!」
 お名前は? ワッフルさん?
「お菓子が好きなのですね。では、お礼に…」
 三千久遠分のおやつを、どーんと!
 だからもう少しもふらせてね、もっふもっふ。
「あの…次のバイト先を教えてくれませんか? 必ず行きますから」
「まだ決まってないのふ、決まったら教えるのふ!」
 スマホを取り出し、メアドの交換。
 初対面の女性からあっさりメアドを聞き出すとは、中々やるじゃないかこのウサギ。


 ところで、何だろう…この界隈やたらとカップルの姿が目立つんだけど。
 襲撃して良いですか? 良いですね?
「ということで、しっと団惨状いや参上っ!」
 虎の着ぐるみに身を包んだ虎綱・ガーフィールド(ja3547)と、修学旅行だからといって特に普段と違った格好をする気もなさそうな天道 花梨(ja4264)が、カップル撲滅に立ち上がった。
 念の為に言っておきますが、これは記録係がお願いした事ではありません。
 二人が自主的に、その役割を買って出て下さったのです。尊いですね。
 さあ、撲滅されても構わないという豪儀なカップルはいませんか!
 構わなくないって言われても撲滅するけどね!
 あ、そうそう、そこのもふもふ悪魔さんもカップルを見付けたら知らせてくれても良いんですよ?
 というわけで、虎綱はワッフルに袖の下…いや、心付け的な意味で市販のクッキーをそっと手渡す。
 効果の程は定かではないけれど。


「ミソギと、いっしょに…もふもふ…」
 Spica=Virgia=Azlight (ja8786)は手製のお菓子を持って、月詠 神削(ja5265)と共にワッフルの元へ。
「あれが、噂のワッフル…ミソギのもふとも…」
 もふもふ好きのスピカは、その姿を見るなり抱き付いて、はぐはぐ&ふるもっふ。
「おっきな、もふもふ…幸せ…」
 もっふもっふもっふ。
「久しぶりだな、ワッフル」
 元気そうで何よりだと声をかけた神削は、スピカの事を自分の恋人だと紹介した。
 彼女とも友達になってくれると嬉しい…いや、もうすっかり馴染んでるね。
「そういえば、ワッフルはそういう相手いないのか?」
「こいびと? それ、おいしいのふ?」
 あ、だめだこいつ。
 結構モテそうなのに…それが恋愛絡みかはともかく。
「うん、まあ、美味しいと言えなくもない、か」
 あ、変な意味じゃなくて、その、ワッフル的にわかりやすく説明するとそうなるかなって事で。
「そうだ、お土産…」
 流石にくっつくだけでは申し訳ないと、スピカは持って来たぼた餅を差し出した。
「これ、どうぞ…」
「今の時期のお菓子だし、季節で名前が変わるお菓子は、魔界じゃ珍しい…って、丸呑みか」
 もう少し何と言うか、和菓子特有の情緒を味わって欲しかった、なんて無理か、ワッフルだし。
「名前、変わる…?」
 代わりに興味を示したスピカに、神削は蘊蓄を語り始めた。
「ぼた餅は『牡丹』餅、おはぎは御『萩』。牡丹の季節にはぼた餅、萩の季節にはおはぎと呼ばれるんだ」
「初めて、知った…根本的には、同じモノ…?」
 目を丸くして聞き入るスピカ。
「ミソギ、すごい…物知り…」
 尊敬の眼差しに、彼氏としても鼻が高い?


「もふもふがもふもふもふもふ…している…だと…」
 これはもう行くしかない。
 という事で、やって来ました謎の島。
「もふもふのそのなんて素敵です…!」
 ロップイヤーの付け耳を付けた星杜 藤花(ja0292)がワッフルを発見、早速駆け寄って思いきり抱き付いた。
 ぽよんぽよんのお腹が気持ち良い。
「わあ、おっきなうさちゃんだね〜もふもふだね〜」
 息子の望を肩車した星杜 焔(ja5378)が、その後ろからのんびり歩いて来る。
 望に着せたもふもふマルチーズの着ぐるみは、藤花のお手製だ。
「もふもふ達には、おやつをあげても良いのかな〜?」
「大歓迎なのふー、でも、わふがいちばん最初なのふ!」
 うん、わかった。
 じゃあワッフルにはお手製シフォンケーキを丸ごとホールでどーんと!
「美味しいのふ〜」
 あ、人間用のおやつがなくなっちゃったけど、また作れば良いかな。
「ここは自炊も出来るみたいだしね〜?」
 ところで、一体ここはどこなのだろう。
「場所は秘密って事で道中目隠しだったけど」
 目隠しされてたのか。
 そこまで警備が厳重だったとは知らなかった。
「何が美味しいのかな? 鯖じゃないと良いのだが…え、恐竜肉?」
 未知の食材だが、問題ない。
「美味しく焼くのは得意だよ! 普段は鉄板焼きのお店でバイトしてるからね!」
 狩りに行った仲間が戻ってくるまで、もふもふ達におやつでもあげながら、もふもふしていよう。


「肉食と草食の動物が共生してるのってある意味絶景だな〜」
 青柳 翼(ja4246)の目の前では、頭の上にウサギを乗せたライオンがお昼寝していた。
 その腹の上には猫が山盛りに乗っかっている。
「それで良いのか、百獣の王」
 問いかけてみると、ライオンは面倒くさそうに尻尾をぱたりと振った。
 まるで「勝手な思い込みで枠に嵌めるんじゃねェ」とでも言いたげに見える。
「あっはい、ごめんなさい」
 一方、福島 千紗(ja4110)は全てを素直に受け入れて楽しんでいた。
「うわぁっ、うわぁっ」
 くいくい、翼の袖を引く。
「おにいちゃん、おにいちゃんっ」
 そう呼んではいるが兄妹ではない。れっきとしたリア充である。
「あ、あっち羊さんっカピバラさんもいますっ! おにいちゃんどうしよう、私楽しすぎてどうしようです!」
「うん、わかった。順番にモフろうな」
「はいっ」
 満面の笑顔で言いお返事を返すと、千紗は翼の手を引いてアルパカの群れに飛び込んだ。
 もっふー!
「おにいちゃんおにいちゃん、ふっかふかですっ!」
 天日に干した布団の匂いがする。
「おにいちゃ…むぅ」
 夢中でモフりまくる翼に、千紗はちょっぴりじぇらしー。
 ぺたんと座って首を伸ばし、動物の真似をして上目遣いに見上げてみる。
「何だ、千紗も欲しいのか?」
 翼が手にしているのは動物煎餅、モフりながら餌付けの最中だった。
「でもこれは動物用だからな、千紗には後でちゃんと…」
 え、違う?
「千紗ももふって欲しいな」
 ああ、そうか。
 もふもふもふ、そのうちにだんだん眠くなる、眠くなーる…
「おにいちゃんの方が寝ちゃったのです」
 羊をクッションに、千紗は寝入った翼を膝枕。
 寝顔を見てたらキスしたくなるのは常ですよ、ね?


「ふふ、楽しみだなぁ」
 紀浦 梓遠(ja8860)の言葉に、五十嵐 杏風(jb7136)はこくこくと頷いた。
 これが初めてのお出かけ、杏風が楽しみにしていない筈もない。
 服装はいつものワンピースだから、気合いが足りないと思われるかもしれない。けれど、これにはちゃんと理由があるのだ。
 二人はまず、小動物が集まる野原の真ん中に腰を下ろした。
 早速、二人の周りには兎や猫、フェレットやハリネズミが寄って来る。
 タンポポの花に見えたのは、黄色いヒヨコ達だった。
「ぴよぴよ可愛いのですぅ…」
 杏風は手や肩に乗せたり、大軍に埋もれてみたり。
 梓遠は耳の付け根をもふったり、喉を撫でたり、やりすぎて猫パンチを喰らったり、写真を撮ったり。
「ほら見てアンナ、可愛いよ…!?」
 気が付けば、そこに杏風の姿はなかった。
「アンナ!?」
 急に胸が締め付けられる様な痛みを感じ、梓遠は必死でその姿を探す。
 と、そこに…
 もふっ。
 真っ白でもこもこな腕…いや、前足が後ろから控えめに抱き付いてきた。
 慌てて振り向くと、そこにはいつの間にか兎の着ぐるみに着替えた杏風の姿が。
「へ、変な意味じゃないんすよぉ…? 着替えてもふもふだから…そのぉ…はぅぅ…」
「うん、可愛い可愛い」
 ほっこり、もっふー。
 うん、着ぐるみなら遠慮なくハグ出来るね。
「ミーなんて、可愛くないですぅ…!」
「うん、可愛い可愛い」
 大事な事だから、もう一度。
 そして梓遠は、もふもふと一緒に写真を撮りまくる。
 なお内心では可愛さに悶えまくっている模様。
「あの、そのぉ…っ、し、梓遠さん…!」
 照れまくり、あわあわしまくった挙げ句に、杏風は何故か給餌を始めた。
 持って来たゴハンをもふもふ達に食べさせて、次に。
「あーん、してくださぃ…」
 梓遠にも、はい。
「おいしいですかぁ…?」
 あの、それって犬用ジャーキーでは…?


 野原の真ん中に、大きな黒猫が座っていた。
 いや、猫ではない。
 黒い猫耳と猫尻尾を持つハーフ悪魔、桐原 雅(ja1822)の姿だった。
 雅は自前の尻尾を猫じゃらしの様にふりふりしながら猫達を誘う。
「もふもふするなら、やっぱり猫が良いよね」
 寄って来た猫達を撫でながら、雅は後ろを振り向いた。
「ね、仁刀先輩?」
 声をかけられ、遠巻きに眺めていた久遠 仁刀(ja2464)は小さく笑みを返す。
「先輩はもふらないの? 可愛くてもふもふで、気持ち良いよ? 癒されるよ?」
 仁刀としては、猫をもふる雅の楽しそうな姿を見ているだけでも充分に癒されていた。
 と言うより、出来れば猫より雅をもふりたい。
 もう少し欲張ってみても良いのではないかと、我ながら思う。
(…何となく、こうして一緒にどこかにっていうのも久しぶりだし…)
 けれど、こう、誰かに背中を押されたり、何かに躓いたりといった風に、何かきっかけがないと弾みが付かないと言うか、何と言うか。
 情けないけれど、ここはお猫様の助力を仰ぐしかなさそうだ。
 仁刀は雅の隣に座ると、その膝に乗った仲の良さそうな二匹のうち、片方の猫を抱き上げてみる。
 さあ、上手いこと隣の猫とじゃれ合ってくれ。
 そうしてバランスを崩した弾みを装って――はぎゅっ。
「あ…」
 最初は驚いた雅も、嬉しそうに表情を崩してハグを返した。
 ふにゃっととろけるような表情で、ゴロゴロ喉を鳴らしそうな勢いで甘えてくる。
(でも、まあ…雅も嬉しそうだから、良いか)
 軽く抱き締めたまま、髪や背中を撫でてみる。
 その様子を、空気を読んだ猫達が少し離れて眺めていた。


 カップル撲滅、リア充殲滅。
 イチャつくカップルの背後に近付く二つの影。
 片方は「微妙にかわいくない地方自治体のゆるキャラ風着ぐるみ」を引きずっている。
 こっそりと忍び寄り、標的を捕獲、着ぐるみの中に問答無用で突っ込んだ。
「かわいいモフの中で貴方達だけやっつけなデザインの着ぐるみを着た気分はどうかしらっ」
 いや、着ぐるみならまだ良い。もう片方は――
「そおぃ!」
 某地方自治体に棲息すると言われる梨の妖精らしきものがプリントされた布袋を被せただけという、やっつけにも程がある仕様だ。
「これじゃ着ぐるみではなくオバ○だのう…」
 ほら、あの毛が三本で犬が怖いやつ…ってもしかして若い子は知らないのか。
 ともあれ、その状態で記念撮影ぱしゃー。
 極悪極まりないテロ行為だが、幸い中の人は誰だかわからない。
 名誉の為にも名前は伏せてきますね。
「お疲れさま、次の人に使うから着ぐるみはそこに置いて行ってね」
 確保したリア充は撮影後に着ぐるみ脱がして帰すのだ。
 キャッチ&リリースは自然を楽しむ為の基本だぞ!(カメラ目線
 でも猫好き花梨は途中から活動をそっちのけで猫をなで回していたり…
 虎綱も釣られて餌付けに精を出してみる。
「流石に動物にお菓子はあげられんのだよなーごめんなー」
 もふもふ。
 あ、でも動物用のおやつも持って来てた筈。
「ジャーキーとかなかったっけなー」
 おお、あったあった。
「これはワンコになー。ニャンコはササミなー」
 のんびり平和にケモノと戯れる。
 あのしっと団さえ骨抜きにするとは、流石もふもふ様だ。
「いけない、こんなことをしている場合じゃないのだわー!」
 でもごめん、もふもふの誘惑には勝てそうもありません…!


 広場の片隅に、小さなベンチがある。
 玖神 周太郎(ja0374)は、そこに座って同行者達の様子をのんびりと眺めていた。
 すぐ目の前では、紅葉 虎葵(ja0059)が黒猫と追いかけっこをしている。
 どうやらそのツーンとした態度が気に入った様だが、猫はすばしこく逃げ回り、なかなか捕まらなかった。
 某アメリカンな猫と鼠の様に、追いかける方が馬鹿にされている気がしないでもないが…
「捕まえたっ!」
 ダイレクトキャッチ&ふるもっふ。
 ひっくり返してお腹を撫でたり、喉をくすぐってみたり、抱き寄せてわしゃわしゃしてみたり。
 一方のフント・C・千代子(ja0021)は、どうやら犬派らしい。
 自分と同じぐらいの大きさで、毛がふさふさした犬とじゃれあっている。
「はは、こいつめ!」
 犬と戯れている時だけは、いつもより若干…いや、キャラ崩壊するレベルでテンション高めだ。
 体中を撫で回し、お返しに顔じゅうをべろんべろんに舐められたり、背負い上げて「ものの○姫ー」とかやってみたり。
「おー、チビも来たかー」
 よしよし、おいでー。でっかいわんこも良いけど子犬も好きだよー。
 二人の様子を眺めている周太郎は、動かない。
 石にでもなった様に、じっと動かない。
 動かないから置き物だと思われたのだろうか。
 その脚や肩や頭やらに鳥がいっぱいとまって何だか凄い事になってきた。
 脚を組み替えたり腕を組んだりして、置き物ではない事をアピールしても、いったん逃げてまたすぐに戻って来る。
 もうすっかり止まり木になった気分だ。
「…。…まあ、いいか…」
 こうなったら開き直って、取り敢えず買ったパンを撒いたりしながら過ごそうか。
 と、そこに。
「シュー兄シュー兄、肉球にくきゅーだよ」
 黒猫とすっかり仲良くなった虎葵が、猫を抱いて駆け寄って来る。
「ほらほらー、さわってみ?」
 周太郎は言われた通り肉球に触ろうとするが、猫の手の方が早かった。
 タッチ☆
 ぷにっと触られると、ほっぺに梅の花が咲いた。
「ぷーっ!」
 思わず吹き出した虎葵は、千代子にもにくきぅスタンプを付けてやろうと駆け寄った。
 しかし千代子は既に遊び疲れて、大きな犬の腹を枕にごろんと横になって昼寝を始めていた。
 勿論、スタンプを押されても目を覚まさない。
 ピクリとも動かない。
「…っははは! シュー兄、千代ちゃん、何それぇ…!」
 虎葵ひとり、やたらテンション高いが…そんな自分の顔にもたくさんのスタンプが付いていることには気づいてなかった。
「…おい、いくらバカだからって腹を出して寝るな」
 身体中に鳥を止まらせた周太郎が、そのままわっさわっさと歩いて起こしに行くが。
 顔に鳥を乗せられても、猫を乗せられても、起きる気配は微塵もなかった。


 夏木 夕乃(ja9092)は虎猫、シグリッド=リンドベリ(jb5318)は白猫の着ぐるみに身を包んでいた。
 同行した門木だけが普通の格好をしていたが。
「ノリが悪いですよ、カドキング先生!」
 夕乃がびしっと指差した。
 って、何ですかそのカドキングって。そりゃ確かにくず鉄王ですけど。
「あ、それともカドキチ先生の方が良いですか?」
 いや、どっちもどっちと言うか…まあ、好きにして下さい。
「ノリはともかくとして、折角ですからせんせーも着ぐるみ着ませんか」
 シグリッドがキジトラの着ぐるみを差し出した。
 差し出されたからには、着ねばなるまい。
 というわけで、トラ、シロ、キジの三匹の猫ぐるみは…何して遊ぶ?
「シグさん、カドキング先生! かくれんぼしましょう!」
「あ、良いですね…! じゃんけんで鬼を決めるのd」
「先生が鬼のかくれんぼです(きぱ!」
 あ、そこはもう決まってるんだ。
「自分たちはモフ動物に扮して隠れますので見つけてくださーい」
 でもただ遊ぶだけじゃつまらないって言うか、燃えないので、おやつを賭けましょう。
「じゃあ良いですか、そこに座って目隠しして、百まで数えてくださいねー!」
 よーい、スタート!
「扮するのは猫なれど、紛れ込むのは虎の中!」
 虎猫ゆうにゃはトラ縞の絨毯の様にくっついて、のんびり寝そべっているトラの集団にダイブ。
 虎・虎・虎柄・虎・虎・虎・虎・虎。
「ふっ。ぱっと見で通りすぎてしまう罠です」
 完璧なカモフラージュ、これなら見付かる事もあるまい。
 しかし完璧に隠れすぎて誰にも見付けてもらえず、しまいには忘れ去られて、他の子がみんな帰ってしまう…というのは、かくれんぼあるある。
 ましてやトラの毛皮はもふもふのふかふか、お日様は良い感じでぽかぽか。
 YOU、寝ちまおうぜーと誘って来る誘惑に誰が勝てると言うのか。
 もっふもっふ、すやぁ…
 一方のシグリッドは隠れ場所を探してうろうろきょろきょろ。
「ワッフルさんのような方も居ますし、きっと紛れ込める、はず…!」
 はず…だけど。
「ねこさん…!」
 そろり、近寄ってみる。
 もふ。
「うわぁ、柔らかいのです…!」
 その瞬間、シグリッドの頭から何か大事な事が転がり落ちた。
「あっ、せんせー!」
 探しに来た鬼に向かって、ぶんぶん手を振る。
「ねこさん可愛いのですよー、一緒にもふもふしませんか?」
 門木の中で、かくれんぼの定義がおかしな事になりそうな気がするのですが、それは。


「もふもふ〜絶対! もふもふ〜っ!!」
 頑固かつ強固に主張した神谷 愛莉(jb5345)は、念願叶ってもふパラへ。
 しかし、この地を踏む事が出来たのは、彼女とお目付役の礼野 智美(ja3600)の二人だけ。
 旅行用に積み立てでもしておかなければ、大勢いる家族や部員の全員で参加するのは到底無理な話だった。
「仕事の都合もあるし、仕方ないな」
 しかし、皆の代表として送り出された愛莉は、島に着いた早々に行方不明…と言うか、勝手にどっか行っちゃいました。
 智美は慌てて探しに出るが、本人はそんな事などつゆ知らず。
「もふもふの貸出お願いします」
 島の一角にある着ぐるみ貸出所。
 はお客様のどんな無理難題にも完璧にお応えするべく、様々な着ぐるみが並ぶその場所で、彼女が借りたのはカラフルな雉の着ぐるみだった。
「これじゃないといけない気がするの」
 お菓子を詰め込んだバスケットを片手に、雉ぐるみは海岸線の人気のない所をあっちへ行きこっちへ行き…
「わっふるしゃんがいる…という事は…ひょっとして」
 いや、ひょっとしなくても。
 そして発見、金色のふわふわ耳の足の短いだっくすふんと!!
「やっぱりいたですの!」
 この子には、きび団子をあげなきゃいけない気がする。
 きび団子の三色団子を始めとした甘いお菓子の数々をハンカチの上に置いて、そーっと後ずさり…茂みの中から観察開始。
 警戒心の薄い金色わんこは、早速それを食べようとするが。
 てしっ!
 背後から現れた目つきの悪い山猫に頭を押さえられた。
「きゃぅん」
 そうそう、まずは山猫さんが毒味をしないとね。
 愛莉を発見した智美が、その様子を見て一言。
「…もふもふのけんけんもやまねこさんにろっくおんされたようです」
 デジャヴ?


 満月 美華(jb6831)が選んだのは、直立二足歩行の鯨ぐるみ。
 これを着るからには、身も心も鯨になりきらねば――ということで。
「鯨ほえほえよ〜♪」
 英語でホエールだから、語尾はほえなのでほえ。
 相方のカナリア=ココア(jb7592)は、白いレースの日傘を差した有閑マダム風に優雅な動作で広場を歩く。
 ただし牛だ。白黒のホルスタインだ。しかしデフォルメしすぎた為か、乳はない。
「修学旅行だし…楽しんでも良い…よね」
 犬、猫、兎、狐に狸に白熊、パンダ、ケセラン、パサラン…
「可愛い…もふもふ♪」
「カナリア〜♪もふもふほえな〜♪」
 ところで。
「カナリアは『うし〜』とか『も〜』とか付けないほえか?」
「付けた方が…良い?」
「折角だし、その方が気分が盛り上がるほえな〜♪」
「わかった…ぎゅぅ」
 斜め上だった。
「喉乾いた…ぎゅぅ」
 傍らの美華を見る。じっと見る。
「どうぞほえー」
 首筋を差し出す美華、それは多分いつもの味、安心の味。
 でも折角の修学旅行なんだから、ちょっと冒険しても良いよね?
「カナリア、どこ行くほえ?」
「新規開拓…ぎゅぅ」
 ちょっと温泉の方に行ってみるぎゅぅ。


「恋音、今年の修学旅行も目一杯楽しみましょうねー」
 もふもふ。
「…は、はいぃ…」
 もふもふもふ。
「さあ存分にもふもふをもふもふしちゃいますよ!」
 もふもふもふもふ。
 袋井 雅人(jb1469)と月乃宮 恋音(jb1221)は、もふもふと一緒に温泉でまったり。
 あの、でも、ちょっと待って。
 それは「もふもふ」じゃなくて「もみもみ」なのではありませんか。
「え、そんな筈は…あっ」
 ごめんなさい、いつもの癖で恋音さんのおっぱい揉んじゃいましたー、てへっ。
 今日の恋音さんは桜色のビキニを着用…していた筈ですが、元々かなり厳しかった胸の辺りが揉まれてぱっつん、ぽろり。
「大丈夫ですよ恋音、これを胸の前で抱っこしていれば見えませんから!」
 雅人はもっふもふのケセランを召喚して恋音の腕に抱かせ…ってそれパサランだ。
 二人は視界いっぱいにどーんと現れた白いもふもふを、もふもふもふ。
「…でもぉ…私は小さい子の方が良いのですぅ…」
 恋音は垂れ耳の子犬を膝の上へ。
 ミニチュアよりもまだ小さいそれは、カニンヘンダックスフントと言うらしい。
 そして集まって来た猫達が、お湯に浮かんだ二つの小島を前足でふみふみふみふみ…うん、猫って温かくて柔らかいものが大好きですからね。
 その中にさりげなく雅人が混じっている事には、触れない方が良いのでしょうか。
 と、その時。
 かぷぅ。
「ごちそうさま…ぎゅぅ」
 飲み物にありついたカナリアは、恋音の血で喉を潤す。
 大丈夫、ほんのちょっとだけだから、貧血とかそんな心配は…あれ、おかしいな。
 普通は吸われた方に変化が現れる筈なのに、吸った方が何だかおかしな事になってきた。
 と、見る間に…
 ばいんっ!
 つるぺったんのホルスタインに、爆乳が生えました。
 中身に生えたのか、それとも着ぐるみにそんな仕掛けがあって、それが絶妙のタイミングで作動したのか…それは定かではないが。
「お、重くて、動けない…ぎゅぅ」
 しまった、このままではじりじりと太陽に焼かれてしまう。
 そこに颯爽と現れた美華鯨、カナリアを抱き上げて日陰に避難させようとする、が。
「温泉が私を呼んでいるほえよ〜」
 だっぱーん!
 大きな水溜まりを見ると、鯨は本能的に泳ぎたくなるらしい…そこが温泉だろうと何だろうと。 ※よいこはまねしない
 全く頼りにならなかった美華鯨に代わって、恋音におっぱいとの上手な付き合い方をレクチャーされたカナリアは、自力で木陰へ移動して蛇と一緒に一休み。
「ちょっと体休ませないと…後が辛い、ぎゅぅ」
 大きな乳も楽じゃない。
「ん、なかなかの触り心地…ぎゅぅ」
 すりすり。


「もふもふな子が一杯だよー♪ 温泉にはいれてもふもふも出来て最高だね、ALくん♪」
「はい、僕もご一緒できて光栄です、宮子様」
 可愛いフリフリ水着姿で温泉に足だけ浸けた猫野・宮子(ja0024)の姿に、AL(jb4583)は眩しそうに目を細める。
 周りにはもふもふな猫達がたくさん集まっていた。
 お湯の中で頭に小さな手ぬぐいを乗せ、気持ち良さそうにしている猫もいるが、大抵は程よく温まった湯船の縁で寝転んだり、香箱を作ってうとうとしていたり。
 そんな中に寝転ぶと、猫達がぴったりと身を寄せて来る。
「もふもふの猫温泉ー♪」
 それを堪能した後は、ちゃぷんと首まで温泉に浸かった。
「ああ、幸せなんだよー。温泉ぽかもか、にゃんこむぎゅぅ、最高なんだよー」
 天国天国。
「しかしながら宮子様は本当に温泉がお好きですね」
「あ、ごめんね、ALくんはあんまり楽しくないかな?」
「いえ、僕もすっかり好きになりました…この心地よさを教えて下さったのは貴女です」
 頭に猫を乗せて入る温泉、最高。
「もふもふをすると心が安らぐ…何となく、わかります」
 ぴこぴこ、自前の耳を動かしてみる。
 自慢のふさふさ尻尾が濡れてぺしょんとなってしまうのは少し残念だけけれど…
「えっと…僕のも触ってみますか、宮子様?」
「ええ!?」
 きらーん!
「耳触ってもいいの? いいの?」
 わきわき。
「…それじゃあ早速…」
 もふっ。
「うわぁ、想像以上にもふもふっ」
 もふもふすりすりくんかくんか、手で触ったり顔を擦り付けたり匂いを嗅いでみたり。
「…なんでしょう、気持ち良くて…眠たくなって参りました…」
 ああ、しあわせ。
 このまま寝てしまったら、ぶくぶく沈んで二度と目覚めない眠りに落ちそうだけど、でも良いや。
 多分その前に、宮子さんが引っ張り上げてくれるだろう。
 のぼせて一緒に沈む危険性は…考えないでおこう。


「いっぱい遊んだね、仁刀先輩。次は温泉だよ!」
 大丈夫、混浴だけど水着着用だし、変なことしないから…いや、普通は女子が「される側」か。
「恥ずかしがって無いで、もっと傍に…ほら」
 雅は仁刀の手を取って、ずんずんお湯を掻き分けていく。
 まったりお湯に浸かっていたカピバラの群れが、左右に割れて道を作った。
 その様は、まるで海を割るモーセの如く。
 カピバラに導かれた二人は湯船の奥で並んでまったり。
「別に、何もしなくて良いんだ。隣にいてくれるだけで、幸せなんだから」
「ああ、そうだな…」
 と言いつつ、これくらいは良いだろうかと仁刀は雅の髪を梳くように触れる。

 しっと団の皆様、お仕事ですよー?
 …いないか。



● 癒されると思っただろ?


「なあ俺もふもふ肉球に癒やされたいっつったよな! 言ったよな!?」
 紅峨 忍(jb9762)は、もふもふに埋もれてもふもふしまくる事を夢見て、この島に来た。
 なのに、何だここは。
「もふもふどこだよ! もふもふ!」
「残念だったな一狩り行こうぜ!w」
 こっそりルート変更を申請した張本人、蒼葉 真明(jc0918)が楽しそうに笑う。
 もふもふは隣の島だ。
 そしてここは、恐竜王国。
 戦わなければ生き残れない、かどうかはともかく、わりと過酷なエリアである事は間違いない。
「あーなんで旅行に来てまで戦わなきゃなんねーんだよ!」
「なぜ戦うか…面白そうだからさ!」
 それ以外に理由が要るかい?
 というわけで。
「狩猟対象は選ばせてあげよう、忍どれがいい? 美味しそうなの選んでくれたまい」
「俺は牛タン食いたいから牛たんみたいな肉探せよ!」
 牛タンみたいな、恐竜?
 見た目? それとも部位的に?
「あーもうアレでいんじゃね?」
 めんどくせーし、牛タンって結局は牛のベロだし、ベロ持ってそうなヤツならどれでも一緒だ。
「技術も経験も浅いんで全力で行くぜ! 俺達の力で!」
「目指せ肉をこの手に! 俺達の力で!」
 あ、いけね、つい乗っちゃった。
 でもなんか楽しそーだし真明が張り切ってるから、ちょっとサポートでもしてやろうかな。
 因みに二人ともアラサーである。しかし少年の心は忘れていない、寧ろ何か拗らせてるっぽい。
「よし、援護は任せたぜ!」
 名前も知らない強さもわからない恐竜に、真明は岩陰に隠れながら忍び寄っていく。
 気付かれる前に攻撃を仕掛ければこっちの勝ちだ、多分。
 ほら、ゲームでも先に1ターンとかボコ殴りに出来るだろ?
「この為に取得したぜ、食らえサンダーブレード!」
 特撮かCGでしかお目にかかった事がない様な、雷の剣が恐竜を切り裂く! ように見える!
「やだ見て俺超かっこ良くねマジで出てる雷剣!」
「あーはいh…うお、かっこいいなそれ!」
「忍もかっこいいやつ出してみろよーやれよーw」
「え? 俺? って遊んでる余裕ねーよ!」
 真明、後ろ、後ろー!
「あっやべ真面目に戦わねぇと恐竜っょぃ」
 ばっくん、もしゃぁ。
 恐竜の名は、カルノタウルス。肉食の雄牛という意味である。
 確かに牛だが、体長は9m、体重4t。
 …まあ、頑張れ。


「カマキリは恐竜と戦う使命を持っていたなの!」
 え?
「カマキリ力の前には恐竜も無力!」
 そ、そうなんだ?
 ここは種子島、ではない。しかしカマふぃときさカマの居る所、そこは全てが種子島なのだ!
 ということで、香奈沢 風禰(jb2286)と私市 琥珀(jb5268)は今日もカマキリである。
 サバンナを颯爽と、まずはケツを振りながら匍匐後退で出てくるカマキリ2匹。
 気合を入れつつ広いサバンナを何処かに突撃!
 何処に? 何処かに! 獲物のいる所に!
「とえええええええええええええええなのーーーーーーーーーー!!!」
「かまぁぁぁぁ!」
 シンバルとカスタネットをがっしゃんがっしゃん鳴らし、ホイッスルをけたたましく鳴らしながら恐竜を探す。
 追い払ってるんじゃないよ、探してるんだよ!
「恐竜発見なの! 美味しそうなの狙うなの!」
 突っ込んでって、どーんと自縛陣! ※誤字に非ず
「カマふぃしっかり! おのれ恐竜ー!」
 きさカマは聖なる刻印でカマふぃの抵抗を上げつつ、コメットで無差別爆撃!
「えーい、氷河期きちゃえ!」
 隕石こわい。超こわい。恐竜達も何故かビビっている。
 そこをすかさず鎌でばすばす攻撃しながら盾を構えてレイジングあたーっく!
「カマ力は伊達じゃないんだよぉ!」
 自縛を解いたカマふぃは八卦石縛風で恐竜を石化!
 あれ、でも石になったら食べられないんじゃ…?


「あれを、狩るのか?」
 妻である浪風 威鈴(ja8371)の要望で、狩りをする事になった浪風 悠人(ja3452)だったが。
 あれは獲物にするには少しばかり、いやかなり大きすぎるのではないだろうか。
「大きな…トカゲ…?」
 首を傾げる威鈴は、どうやらその大きさに驚いている訳ではなく、トカゲは食えるか否かという事に悩んでいる様子だが。
「いや、威鈴…あれは駄目だ、やめた方が良い」
「何故だ…ただの、デカいトカゲ、だろ…」
 確かにそうだが、あれはTレックス。最強最凶の肉食恐竜だ。
「サイキョウ…面白い」
 あ、逆効果だった。流石は破壊王、こうなったら気が済むまで、とことん付き合おうじゃないか。
 悠人はまず周辺の雑魚(と言っても見上げるデカさだ)をコメットで追い払い、Tレックスの頭を狙う。
 高台に陣取った威鈴は、その隙に目を狙って矢を連射。
 だが――
「効いて…ない…?」
 それどころか、尾の一振りで威鈴が足場にした岩が粉々に砕け散る。
 そしてこの恐竜、足も速かった。
 二人は後退しながら攻撃…している余裕はない。全力で逃げないと踏み潰される!
「威鈴、残念だがここはもっと肉の美味そうな奴を狙おう」
 それに奴はどうやら腐肉が主食だったらしく、その肉は恐らく食べられたものではない。
 他に美味そうで、たっぷり食べられそうで、しかも角とか鱗とか戦利品を土産に出来そうな奴――トリケラトプスとか!
 ただし奴は群れで行動する上、体長9m体重7t…まあ、倒し甲斐がある事は確かだが。
 狩りの醍醐味には欠けそうだが、オルニトミムスなどは美味そうだ。
 味と量の両立ならブラキオサウルスは…大きすぎる?


 ツオナ・ザザーブ(jc0622)が遭遇したのは、一匹のデイノニクスだった。
 だが、彼女はすぐにその異様さに気づく。
 高い知能を持ち群れで行動する筈のこの種の単独行動、何より、黒いオーラのような物を発している。
 これは危険だ。
 しかし、そっと後ずさる気配に気付いたそれは、その瞬間に狂ったように向かって来る。
 迎え撃つしかない。
「ハドウケン。ハドウケン。ショウリュ…あ、それは出来ないのだったわ」
 腰を落とし、向い合わせた両手の間に青いアウルの気弾を発生させる。
 前に踏み込むと同時に両手を突き出すと、それはデイノニクスの足元で小さく弾けた。
 しかし、その程度で怯む相手ではない…と言うか、正気ではない。
「病気か何かかしら。こんな危なそうなお肉は食べられないわね」
 近付かれたところでサンダーブレードを叩き付け、動けなくなったところに油の詰まった樽を設置して離れる――どこに持ってたとか、どうやって作ったとか、細かい事は気にしてはいけない。
 きっとハンター用の専用アイテムか何かとして、島の至る所に置かれているのだろう。
「付いてないわ。くそったれ。イピカイエ」
 そう呟きながら、樽に火種を投げ込む。
「他を探さなくちゃ」
 今はBBQの為に食材を確保しなくては――ただ、それだけのことだった。



● 本日の粛清完了っ!


 さあ、お待ちかねのBBQだ!
「恐竜の肉でも部位の呼び方は同じなんだろうか」
 そんな事を考えながら、悠人はステーキ肉やカルビ・ロース・ハラミなどの定番肉や、デカいブロック肉に切り分けて、豪快に焼く。
 勿論、骨付きの所謂マンガ肉も用意した。
「はい、バーベキューならばどうか私達にお任せ下さい!」
 それを雅人が丸ごと火に掛けて炙り、恋音が調味料を塗っていく。
 鳥類の祖先という事だし、鶏肉と同じ様に香草焼きにしてみるのも良いかもしれない。
 ローズマリーやタイムと一緒にアルミホイルで包んで焼くと、食欲をそそる匂いが辺りに広がっていく。
 途端に、もふもふ達がさーっと距離を取った。
「あの…お腹は空いて来ましたけど、貴方達を食べようなんて考えていませんよ」
 雫が涙目で訴えかける。
「本当ですから! 逃げないで〜」
 ほら、火から離れていれば危なくないし!

「きさカマは恐竜の骨でも丸かじり、丸かじり」
「よく解らない食感だけど骨ごと齧るなの!」
 うん、満足なの!

 真明は焼き奉行、むしろ武将、ガンガン焼いて配るぜ、最高の焼き加減を提供します。
「って真明野菜ばっか乗せんじゃねー! 肉よこせよ!」
 肉! 苦労して狩った恐竜肉!
 いや、まあ、獲物は小さな鳥っぽい奴だけだったけど。

 藤花は膝の上に猫を乗せて食事を楽しんでいた。
「普段なら衛生上あれだけど、今日は修学旅行だし、ちょっと羽目を外しても良いですよね」
「うん、今日だけ特別だね〜」
 焔の膝には望が乗って、両脇の椅子にはマルチーズがてんこ盛り。
 犬用のおやつをあげながら、一緒に楽しいお食事タイム。
「家でもこんな風に出来ると良いですね」
「うん、マルチーズ飼いたいねえ…」
「わんわんー!」
 もしかして、帰りにペットショップに寄っちゃうかも?

「…ケセランさんは、ごはん食べられるんでしょうか…」
 シグリッドは夕乃のケセラン、ぽわぽわにそっと焼いた野菜を差し出してみる。
 食べない? もしかして肉食?
「じゃあ、せんせー…あーん?」
 平常運転です。
 その隣では夕乃が頬袋いっぱいにごはんを詰め込んでいる。
 猫じゃなくて、ハムスターだったのだろうか。

 スピカと神削も、互いに「あーん」で食べさせ合う。
 そしてついでに…と言っては何だけど、バレンタインに渡しそびれたから。
「これ、ミソギにも…。ちゃんと、渡せて…なかったから…」
 手作りチョコ、です。

 そして、あっちでもこっちでも「あーん」の嵐。
 しっと団は何してるんですかー。
「フハハハ! 某は今! 炎と一体となった!」
 燃えていました。物理的に。
 薄切りにした恐竜肉に味付けし、ドネルケバブ風に焼こうとしていた様ですが…




 BBQも修学旅行も、まだまだ続く。
 しかし残念ながら記憶媒体の容量が限界に!

「修学旅行は…楽しい…来れて良かった♪」
 カナリアの一言を最後に――

 ぶつっ。









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