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――終焉の刻、その場に居た者たちの姿の記憶


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 神界。
 かつて、"神"と呼ばれた者達が造りし世界。
 意志、想念、その力を具現化してエネルギーへと変換する、システム。

 その神界のシステムそのものと完全に同化せんとした、神王ベリンガムは遂に倒れる。
 これで、終わったのか? と、誰もが疑うその時である。
 どこからか聞き覚えのある声が響き渡った。

『あぁ、偉大なる愚かな王。孤独な王』

「この声……まさか、ラジエルか!?」
 まさかと思う者たちの中、やはり来たかと思う達も居た。
 倒したはずの王の側近。いや、側近にして影の支配者といった方がよいだろうか。
 その男の声が直接頭に響く。

「ラジエル……貴様っ、何を」
『全てを使い尽くした今ならば、侵食できる』
 折れた剣を支えに、己の血に染まり喘ぐベリンガムの側には、何も居ないようにみえる。
 だが。
 確かに感じる、濃厚な気配を。神へ至ろうとした王を、影から操り続けた男の気配を。
 ベリンガムが睨む虚空に、確かに在るように。

『神界と貴方は同化した。
 であれば、神界のシステムに保存した私とも同化したということです。
 貴方は、私だ。
 王は――私だ』

 瞬間、ラジエルの気配が弾け、ベリンガムに重なる。
 その意味は、もはや誰の目にも明らかだ。

「くそっ。やはりラジエルは神界システムの乗っ取りを目論んでいたのか……!」
 恐らくあの男は、追い詰められた王がシステムとの同化を急ぐ事まで、見越していたのだろう。
 ラジエルという異物がある事を認識出来ないほどに、王は追い詰められる――と。

 ラジエルの最期の行動に、意味を見出し警戒していたメンバーは、即座に阻止しようとする。
 だが、既に王自身が神界システムとほぼ同化している事が判明している以上、ベリンガムを分離するという選択肢はない。
 だからこそ、ベリンガム自身を、止めざるをえなかったのだから。

 しかし。


 ベリンガムだったものが、復活する。


『人の子らよ、感謝いたしますよ』

 その口調は、先程まで撃退士と戦っていた王のものではない。
 既に、撃退士達の多くが満身創痍だ。もう一度、神王と戦うとなれば――厳しい。

『遂に私は、私に相応しい立場となった……?』

 朗々と告げる、ベリンガムだったもの。だが、その表情が曇る。

『――何、どういう……、カジツは不完全…ギッググgg』

「なんだ? どうした?」
 様子がおかしいベリンガム――否、ラジエルに、気付いた者たちが声をあげる。
 更にラジエルが叫んだ。

『同化スル。神、神、神…王、……余ハ王、神界ノ深淵ヨ選定ヲ!!』

「!?」
 ラジエルを中心に、もう一度"ハジマリノカジツ"の時と同じ、青白い光が瞬いた。
 再びあれを使われるのか、と身構える撃退士たちだったが、その光は徐々に色を変え、深淵を思わせる紫、そして焼け付くような真紅へと変化していく。
 光の渦が完全に赤へと変化した直後、それらの光は一処に集束していった。
 ――そして、ラジエルの意識が操るベリンガムの身体を包みこむ、赤き光の柱となったのだ。

「なんだ、……暴走?」
「――ラジエルが仕込んだ暴走かっ!!」
 正しい手順を踏まない、力任せの術で世界が崩壊していこうとする。

 警戒は無駄だったのか。もうどうにもならないのか。
 無力感が広がる中、『それ』は唐突に起こった。



 世界の白と黒が反転する。
 それは、ベリンガムが見せた虚空にも似た景色に見えたが、その足元は透明なガラスの上に立っているようでもある。
 よく見れば、はるか地下深いところに青白く煌やく光が見えた。

《――神ノ器ヲ複数確認。
   要求:優先順位ノ設定ヲ請ウ 》

「なんだ? ラジエルとも違う、世界に反響するようなこの声は……」
「電子音というか、これ聞き覚えが……確か」
 この戦いが始まる直前。アテナたちが、神界への扉を開いた時に耳にした声だと誰かが思い出す。
 つまりこれは――神界のシステムの声だ。

《――権限者ノ提案。
   世界ノ選別。及ビ、ライブラリー参照ニ拠ル、復元 》
《――権限者ノ提案。
   永久神王権限ノ設定。対象者:ラジエrrr 》
《――権限者ノ提案。
   ERROR発生。損傷箇所ノ復元ヲ実行 完了迄00% 》

 エラー。
 その単語を、人々は聞き逃さなかった。

「これは……」
「チャンス…なのか? どう活かせばいいのかわからないけど」

 ざわめく人々の言葉を聞きながら、西橋旅人(jz0129)は、レミエル(jz0006)と太珀(jz0028)から事前に聞かされていた"可能性"を思い出す。
 同様の説明を聞いていたはずの神楽坂茜(jz0005)に、"可能性"が現実化しているのではと話すと、茜は強く頷いてみせた。
 そして茜は人々に向け、言葉を紡ぎ始めた。

「――皆さん、諦めるのはまだ早いです」

 神界システムを壊すことが出来ず、神王となったラジエルを倒せないというのなら、

「これから私達は、神界の"ハッキング"を試みることといたします」

 ――神界を掌握出来ればいい。

 分のいい賭けだとは、お世辞にも言えないだろう。
 ろくに戦闘知識の無い集団が素手で喧嘩を仕掛ける位には、分が悪い。
 それが簡単に出来ることならば、わざわざ傷付き、戦う必要がなかったのだから。
 でも。

「ここは想いや意志が形になりやすい世界だっていう話は、みんな聞いたよね。
 今までは、そのシステムの根幹をベリンガムが抑えていたんだけど――」
「彼が暴走してしまったために、制御を掛けていた部分が"解放"されたようです。先程のエラー音声が示したのは、恐らくその事かと」
「神王権限ノ設定、で、エラー。つまりシステムは、王が誰であるのかを、見失っているんだろうね」

 止められなくなるはずだった、『王の器を得た不正アクセス者』を、止めたもの。
 それは不正の末、暴走の末の、予期せぬエラー。
 ――否。もしかしたら、かつて王だったものの……ベリンガムの、最期の――?
 旅人はその可能性も考えたが、口に出すことはしなかった。
 茜は改めて全員を見渡すと、いつもの凜とした表情で告げる。

「私たちの"想い"は成りました。皆さんが伝えてくださった"ラジエルの介入は阻止する"という意志も、きっと――無駄にはなっていません」

 怪我人、意識が漸く戻ったものも多い。
 でも、今は一人でも多くの《意志》が必要だ。

「――ですから。皆さん、もういちどだけ、参りましょう」

 なぜなら『ここ』は。
 想いや意志が、未来を創る楽園だから。



「人界で活動していた皆さんにも連絡をとってください。すべての準備が出来次第、『多奏祭器・御統ノ煌星旗槍』と『神界』をリンクさせます!!」



《――対立スル権限者ノ存在ヲ確認。
   実行:優位設定ノ為、確認プロセス、実行 》


 キミは。
 キミたちは。

 この果てに、どんな世界を、望む?


(執筆:コトノハ凛)


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【楽園】連動依頼の経緯

アテナの能力に関連する依頼

【三界】の流れを汲んだアテナ・レギュリアへの聞き取り調査により、
改めてアテナとの協力関係が確認できた学園は、老将オグンをミカエル・アテナと引き合わせる。
その場において、オグンはアテナにひとつの道標を示した
すなわち、"正統なる王となること"である。

自身の置かれた状況を確認したアテナは、意志を固め、滞留中の学園内にて"儀式"に挑むことを決意するが――。


  【楽園】王の証(さとう綾子MS)

新兵器&京都奪還に関連する依頼

京都での脅威が報告される。
もう一度あの地へ――そして、奪還を――。

修理が完了した新兵器「『多奏祭器』御統ノ煌星旗槍」を携え、奪還作戦を決行する。


  【楽園/暁都】ながき眠りに暁を(佐嶋 ちよみMS)

シリウスとの決着に関する依頼

神界にて、ミカエルを狙うシリウスとの直接対決に挑むこととなった撃退士達。

ミカエルを無事守ることはできたのか。
作戦の結果はいかに?
そして、シリウスから新たに得られた情報は――。


  【楽園】天狼星のアリア(久生夕貴MS)


過去の事件・大規模作戦について

起こった年月事に確認したい場合   生徒会年表はこちら
地域や連動毎に確認したい場合    戦闘連動のあらすじ

用語説明 (クリックで開閉できます)

王権派

 血統や権力に寄らず『真の実力あるものが正しく評価される』世界を掲げ蜂起した天王ベリンガムと、
 それに賛同した天使達の勢力グループ。
 主張ゆえ、賛同者は若いもの、姿や血統が優れないと言われてきた者が多いらしい。
 新しい政治派閥ではなく、『新しい国を作り侵略して塗り替える』というに近いやり方で、反発も大きい筈だが
 その反発ごと制圧する為、恐怖から降伏した者たちも多いという。
 また、有望と思える相手には、位階に関わらず積極的に勧誘を行っているようだ。

エルダー派

 王命を代弁していたエルダー(後述)による統治に従っている者たち。《武闘派》、《穏健派》共にこれに含まれる。
 天王ベリンガムは政変を起こし、それまでの統治を否定し、打ち壊しにかかった。
 地球においては、天界からのラインが切られ、エネルギーと情報の封鎖をうけ実質天界から孤立しているようだ。
 彼らにとってはエルダーからの命は王命そのものであり、王に逆らっていたという意識は無かったのだが、
 天王のやりかたをそのまま受け入れられるかというと、それもまた難しい状況にある。

エルダー《元老院》

 天界において最古とも言われる古くから続く12の名家、エルダー・トラテベス十二支族の代表で作られた組織。
 王の頭脳、王を護り支える翼、などと称される裏で、王に成り代わり天界を治めてきた。
 彼らによって天王ベリンガムは長く幽閉されていたが、2016年の政変以降
 その半分以上が、天王によって制圧され滅ぼされてしまった。

京都ゲート

 ザインエルを筆頭に、王権派のゲートとして王権派のゲートとして、2016年2月の戦いの折に京都に開かれたゲート。
 現在はゲート主であるリーネンが守っている。

神界

 天界や冥界を作ったとされる『神』。その『神』が住む世界を指しているという。
 詳細はわかっていないが、ベリンガム、そして王権派の実力者たちは、
 それに関するいくつかの情報を得ていてもおかしくないと考えられている。


【楽園】の関連人物(クリックで開閉できます)

   王権派の天魔については学園に在する天使や交戦した撃退士からの聞き取りによって得た情報が中心であり
   必ずしも実際の実力とは合致しない。

天界・王権派

ベリンガム ラジエル
天界の王。
穏健的な統治であった前王のゼウスを弑し王となったとされていたが、長い間《元老院》エルダーによって幽閉されていた。
王権を取り戻し、能力を持つものが正しく評価される世界を目指し『二度目』の政変を起こす。
元より露出の少ないまま、幽閉された為、実際の人物を知る物は少ない。
イラスト:玖
《元老院》エルダーと呼ばれる、王に次ぐ地位を持つ12の貴族長達の一人であった。ベリンガムが蜂起した際、最初から側にあり、現在も右腕として彼を助けている。 その姿は優秀な執事そのものであり戦いは得意にはみえないが、その地位に見合うだけの絶大な力を持つと言われている。【楽園】神界第二層での戦いにて撃退士たちの猛攻に敗れるが――
イラスト:伊砂

ザインエル 崇寧真君
 京都を巡り【封都】【奪都】で撃退士達と激闘を繰り広げた天使。確かな実力を持ち、五年にわたって様々な場面で撃退士と刃を交えてきている。ベリンガム王の腹心ラジエルの説得により、また自身も思うところがあり、ベリンガム王側へとついた。
 その信念は何処にあるのか。到った神界にて、撃退士達と相対することになり――
イラスト:mati.
 漢服のような衣装を着た、壮年外見の天使。自らを「おっさん」と自称する飄々とした性格であり、掴みどころのない雰囲気。
広範囲高射程の連撃を得意としており、見た目通りに武術に秀で、見事な体捌きを見せる。
 不死かとも思われていたが、前線指揮官の一人としてベリンガムの下での【楽園】第二層の戦いにて、遂にその命を終えた。
イラスト:箱ノ山かすむ

シリウス アルヤ
 王権派に与する狼獣人の姿をした天使。純粋な武人然としたザインエルと違い、どちらかといえば強襲偵察を含む諜報に長けた人物。
 仕事では、冷徹、完璧を好むが、その一方で無意味に子供を殺さないという一面も持っている。
 四国ゲートの主、ミカエルと古い因縁がありシリウスから一方的に憎んでいた。
イラスト:mati.
シリウスらと行動を共にすることが多い女天使。察知能力に優れるため、諜報活動に参加する事が多い。
ぱっと見は普通の女の子だが、トカゲを思わせる鱗や長い尻尾を持つ。
気ままな性格で、気分やノリで行動する事が多い。そのためうっかりミスをすることもあるが、本人はあまり気にしていないようだ。
イラスト:花詰真香

リーネン・イェラネン
 慈悲深いが価値観がまったく異なる女天使。ザインエルを敬愛する。三味線を武器とし、古代ギリシア風の白い薄衣を纏うブロンドの髪の美女。ザインエルからの評価は”価値観が違う”である。
 2017年4月、京都ゲート攻略戦の結果撃退士に敗北し命を落とすこととなった。
イラスト:mati.


天界・エルダー派

ミカエル 力天使 アテナ 王族
四国・愛媛のゲート《ツインバベル》の主の一人。 天界の前王であるゼウスの側近の一人でもあった元座天使。ベリンガムが王位に就くとともに失脚、半ば左遷された形で地球に。前王の意志を強く継いでおり、地球に置ける穏健派のリーダー的存在でもある。長く表だってで動くことは無かったが、【四国劫天】という大きな時代の変化を受けて、表舞台に舞い戻った。
イラスト:白亜
天王ベリンガムの実妹。長い間修道院に隠されていた為、エルダーにしかその存在は知られていなかった。 穏健的な亡き父の性情を強く継ぎ、育った環境から他者の為に力を使う事を厭わない性格。 己の政治的価値と背負う責務を強く自覚し、同時に無力である事に憤りを感じている。 努力家ではあるが、あらゆる物事で経験不足な面が多い。 神器《絶対防御》イージスの盾の所有者。
イラスト:musubi






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