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OP

無題 (マスター:嶋本圭太郎)


「先生、約束しましたよね?」

「えー、ああ‥‥うむ‥‥」

 学園のとある教室。教壇の上の教師が、どういうわけか一人の女生徒に詰め寄られ、しどろもどろになっている。

 いや、直接教師に詰め寄っている女生徒は一人だけだが、実際には彼女の背後、クラスの生徒全員が二人のやりとりを注視していた。



「うちのクラスで追試が一人もでなかったら、今話題の食べ放題レストランで、全員二時間食べ放題をごちそうしてやる! って、先生、言ってましたよね?」

「ん、まあ‥‥確かに言った‥‥かな」

「まさか先生、あたしたちが全員試験をパスするなんて思ってなかった‥‥なんて、言いませんよね」



(思ってなかった)



「言いませんよね?」

「ん!? ああ、もちろんそんなことは!」



 思わず呟きそうになった本音を飲み込む。



「ですよねー。あたし先生のご褒美のために、そりゃもうめっちゃくちゃがんばったんですから! 具体的に言うと試験までの一週間で一時間しか寝てなかったくらいに」

 むしろよくそれで試験が無事受けられたものである。



 そもそもこの生徒、試験前は週に一回クラスに顔出せばいいほう、というくらいで、果たして進級する気があるのかと疑うほどだったのだ。

 試験前のやりとりでご褒美を口に出したときは正直口車に乗せられたという思いもあったものの、彼女以外にも成績の怪しい生徒はいたし、まあ何人かは追試を受けることになるだろう‥‥とそれほど危機感はもっていなかった。



 それが、いざ試験が終わってみれば全員一発で進級を決めていたのだ。



 まぁ、ご褒美作戦大成功、と言ってもいいのだが‥‥。

(出費が‥‥)

 缶ジュース一本、とかにしておけばよかった。などと思っても後の祭りである。



「ああー、楽しみだなー、食べ放題♪」

 女生徒の浮かれ声が、にわかに冷ややかなものとなる。

「まさか撤回なんて、しませんよね‥‥?」

 女生徒だけではない。

 背後のクラスメイト全員が、刺すような視線で教師をみていた。



(やっぱなしよ、なんて言ったら‥‥)

 ‥‥ヤ ら れ る。



 教師は覚悟を決めた。



「よし‥‥俺も男だ。二時間食べ放題コース、おまえらにごちそうしてやろうじゃねぇか!」



 教師の言葉に、クラスがフィーバーした!

「さすが先生!」

「いよっ太っ腹!」

「えへへーごちでーす」



「ふっふっふ、俺は一度口に出した言葉を翻すような男じゃないぜ、って」

 生徒たちの賛辞にまんざらでもない教師であったが。

「おい、おまえ隣のクラスじゃねーか! いつ入り込んだ?」

「へへー確かに聞きましたよー『おまえらに』ごちそうしてやる、って!」

 またしても失言である。

「くっ‥‥」

「一度口に出した言葉は翻しませんよね、先生?」



「わかったよ、特別だからな!」

 ここまできて面目を潰すわけにはいかない。と渋々承諾する教師だったが。

「マジですかーやったー!」

 すぱーん! と教室の扉が開けられて別の生徒が叫んだ!

「なっ、まだいた!?」

 しかもなんだかたくさんいる。

「つまり先生、俺たちもご相伴に預かれるってことだな!」

 窓の外には鬼道忍軍(壁走り発動中)が!

「おまえ学年すら違うだろ!?」

 動揺する教師。さらに追い打ちをかけるように風切り音が鳴り、黒板に矢文が打ち込まれる!

「なんだこりゃ? 『話は鋭敏聴覚ですべて聞かせてもらった‥‥』くっ、インフィルトレイターだな? どこにいるんだめんどくさいことしやがって!」



「なんだ、つまり誰でもOK?」

「じゃああたし彼氏呼ぼっと」

「小等部の弟にも教えてやるか」

「あ、憧れのあの人を誘うチャンス到来‥‥!?」



 ざわめく教室。逃れられないプレッシャーに、教師はついにキレた。



「あーもう好きにしろ! こうなったら百人でも二百人でも、俺が何とかしてやろうじゃねーかーっ!」



 今日一番の歓声が、教室のみならず響きわたった。



(さらば、俺の結婚資金(使用予定なし)よ‥‥)

 教師の目尻に光る涙に、気づいたものはいなかったという。





●解説(642字)



 TVで紹介されたりして話題になっている(らしい)大型食べ放題レストランで、2時間食べ放題です。



 □参加資格

  試験を無事にパスして進級を決めた人。

  (といっても、人数が多くなればそこまで厳密なチェックはされないものと思われます)



 □参加費

  無料。



 □食べ放題レストランについて

  和・洋・中もれなく取りそろえた複合スタイル。メニューは常時100種類以上。

  サラダやデザートの種類が豊富なので女性にも人気。

  高級食材を使った料理は数量限定。



  ・和食

   お寿司や天ぷら、焼き魚や煮物など。ごはん・味噌汁もあります。



   ・目玉料理:本マグロ大トロにぎり(2カン)=限定5皿



  ・洋食

   フレンチの一品料理や、イタリアンのパスタなど。パンやピッツァは店内で焼いてます。



   ・目玉料理:フォアグラのソテートリュフソース掛け=限定5皿



  ・中華

   ラーメンやエビチリなど、日本でなじみの深い料理が中心。飲茶もできます。



   ・目玉料理:フカヒレの姿煮=限定5皿



  ・デザート

   ケーキやアイスクリームに加え、和菓子の品揃えもあります。女性はこれだけを食べに来る人もいるとか。





  ※細かいメニューについて

    皆さんが「ある」と思ったものはたいがいあると思われます。

    ただしあくまでも食べ放題のお店なので、あまり一皿あたりの手間が込んでいるものや、

高級食材をふんだんに使ったものはありません。



  ※飲み物も飲み放題ですが、アルコールは別料金(注文した人の自腹)です。





●マスターより(152字)

 こんにちは嶋本です。試験を無事にパスされたみなさま、お疲れさまでした。

 今回はご褒美ですので、教師のフトコロは気にせず思うさま楽しんでいただければと思います。

 追試予定の人がきても、自分はかまいませんが‥‥。その結果どうなっても当方は関知しませんので、あしからず。

 それでは、ご参加お待ちしております。



MS:嶋本圭太郎
MS:佐嶋 ちよみ
MS:神子月弓
MS:クロカミマヤ
MS:ユウガタノクマ
MS:たかおかとしや






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