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マスター:牛男爵
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/01/01


みんなの思い出



オープニング


 ここは、とあるスキー場。
 全国的にも知られたゲレンデは、12月の週末ともなれば利用客でいっぱいだ。
 空は青く澄んでいるが、昨日まで振り続けた雪のおかげで雪量は十分。
 リア充のカップルや家族づれのスキー客で、ゲレンデは大賑わいだ。

 そこに現れたのは、一頭のシロクマ。
 コロコロモフモフした、かわゆす小熊である。
「クマちゃんだ〜♪」
 近くにいた子供たちが、いっせいに駆け寄った。
 しかし、次の瞬間!

 ズバシュウウウウッ!

 シロクマの腕が一閃して、雪の上に血しぶきが散った。
 悲鳴を上げ、一目散に逃げだす子供たち。
 そう。このシロクマみたいなのは天魔だったのだ!




「学生諸君! 緊急依頼だ!」
 あつまった学生たちの前で、無精ヒゲのオッサンがしゃべりだした。
「あるスキー場に、シロクマ型のディアボロが現れた。諸君らには、力をあわせてこれを撃退してもらいたい!」
「敵の戦力は? まさかディアボロ1匹ってことはありませんよね?」
 ひとりの生徒が訊ねた。
 オッサンは「はっはっは」と笑って答える。
「そのとおり。まさかのディアボロ1匹だ! ラクでよかったな!」
「え……? たかがディアボロ1匹に、こんな大勢で……? せいぜい、6人いれば十分なのでは……?」
「馬鹿を言え! 6人でも多すぎるぐらいだ! たぶん、おまえ1人でも勝てる!」
「は……?」
「わからないのか? 天魔退治にかこつけてスキー場で遊んでこいという、これは俺の親心だ! おまえらだって、たまには息抜きしたいだろう? いや、したいはずだ! というわけで、天魔を退治するかわりにゲレンデを1日貸し切らせてもらった。今日1日、思う存分エンジョイしてこい!」
 強引に話をまとめて、オッサン型オペレーターは生徒たちを送り出すのだった。




リプレイ本文



 この依頼に参加した学生たちは、それぞれ自由行動をとろうとしていた。
 ある者は白熊退治に。
 ある者はスキーに。
 またある者は、イチャイチャしに。
 若松匁(jb7995)と築田多紀(jb9792)は、ソリ遊びに来ていた。

「……本当に遊んじゃっていいのかな? 天魔退治しなくていいのかな?」
 二人用のソリをひきずりながら、匁は問いかけた。
 多紀がクールに応える。
「なにをいまさら。オペレーターが言ってたじゃないか。1人でも倒せるから自由にしろって」
「そうだけど……って、ちょっと! あれ見て!」
 匁が前方を指差した。
「あれは……」
「多紀せんせー、あれはきっと噂のクマァです! あたしモフりたい!」
「あのフワモコをモフる、だと……?」
「いけませんか?」
「そんなこと……拒否できるか!」

 次の瞬間、ふたりは光纏して白熊へ襲いかかっていた。
 そのまま、無抵抗の白熊ちゃんをモフりまくる匁と多紀。
 ソリ遊びが目的なのに、まさか誰より先に敵を見つけるとは!
 でも、あくまで目的はソリ遊び。満足するまでモフったら、熊をリリースして再出発だ。
 ふたりが目指すのは、上級ゲレンデ。
 かなりの急角度で、怪我人はおろか死人さえ出ている斜面だ。

「た、多紀ちゃん? 本当にココから滑るの?」
 すさまじい急勾配を見下ろして、匁は震え声で訊いた。
「うん。一度この高さから、ソリで滑ってみたかったんだ」
「ちょっと怖いかも……」
「怖い? なにを言うんだ。僕らは撃退士だぞ」
「う、うん」
「とりあえず僕が前に乗る。すこしは安心できるだろ?」
「そう、かな……」
「やればわかる!」

 という強引な会話で、ふたりは無謀な行為に挑むこととなった。
 多紀が前に座り、匁は後ろに座って多紀の背中へしがみつく。
 ちなみに2人で乗るとソリの速度は大幅に上がるのだが、多紀は何も言わない。
「よぉーし、行くぞ!」
 ソリは勢いよく滑りだした。
 上級コースだけあって、あらゆる条件が厳しい。
 いまにも転覆しそうになりながら、多紀はソリを操る。
「ヒャッホー、僕らは風になったんだ!」
「……! ……!!」
 匁は振り落とされないよう、悲鳴を噛み殺しながら多紀にしがみつくだけだった。



 そんな2人と対照的に、雪達磨型のかまくらでのんびりしているのは、桜井明(jb5937)と桜井疾風(jb1213)
 月乃宮恋音(jb1221)と、なぜか由利百合華の姿もある。
 どちらも胸がぱっつんぱっつんなスキーウェアを着ており、恋音は牛の着ぐるみをまとっていた。
「月乃宮さんには、いつもお世話になっております。ささ、どうぞ温まりください」
 雪の上に土下座しながら、疾風はお汁粉を差し出した。
「そ、そんなぁ……顔を上げてくださいよぉ……」
「いえいえ、親しき仲にも礼儀あり。そうだ、月乃宮さんは今アスヴァンでしたよね? 父もこの前までアスヴァンだったので、色々聞いてみると良いですよ」
「おぉ、そうですかぁ……とりあえず、お汁粉をいただきますねぇ……」
 と言って、汁粉をすする恋音。
「こういうのも楽しいねえ……あ、お汁粉ありがとうね。疾風」
 明も汁粉を飲みながら、アスヴァンの経験談を披露したり。
 そんな中、百合華は『キャベツと豆腐の牛乳鍋』を食べていた。
 胸の発育に良い食材を選んで、恋音が作ってきたのだ。
 これ以上育ててどうするのかと思うが、どうやら仲間を作りたいらしい。
 だが、そこへ

 ズドシャアアアッ!

 匁と多紀のソリが突っ込んできた。
 雪煙を上げて崩れる、雪達磨型かまくら。
 中の4人はもちろん、ソリの2人も生き埋めだ。

「はふぅ……スミマセン〜」
 匁が雪の下から這い出てきた。
「いたた……さすがに上級コースは難しかったな……」
 多紀の頭には、雪達磨みたいなタンコブができている。
 その頭をなでなでする匁。
「せんせー、すごくコワカッタデス。あたし、目つぶってました……」

「うぅ……一体なにごとですかぁぁ……!?」
 つぶれたかまくらの下から、恋音が出てきた。
「不幸な事故のようです……」
 百合華も全身雪まみれで、頭には牛乳鍋をかぶっている。
「す、すみません! すぐに作りなおします! 多紀ちゃんも手伝って!」
 匁が言い、かまくら復旧作業が始まった。

 まずは、かまくら本体の雪達磨胴体部分を作成。
 次に、雪玉を丸めて頭を作る。
 だが、そのとき。
 牛乳鍋で身体バランスが崩れていた恋音が、つるっと足を滑らせた。
 押していた雪玉が斜面を転がり、ゲレンデへ転がってゆく。
 これはまずいと判断し、スキルで雪玉を破壊しようとする恋音。
 だが、いつもと違ってダアトの技が使えない。

「恋音ちゃん、コメットだ!」
 明が大声を上げた。
「お、おお……!?」
「待った、月乃宮さん! それは識別不可ですよ!?」
 あわてて止める疾風。
 しかし、時遅し。
 恋音の手から放たれたアウルの彗星が、雪面に降りそそいだ。
 どういうわけか、明も続く。
「フハハハハ! 近接物理はロマン! 識別不能もロマン! つまりコメット阿修羅こそ至高! さあ、アストラルヴァンガードの威光の前にひれ伏せ!」
 悪役顔でコメットを乱射する明。
 その衝撃で、ゲレンデの雪面に巨大なクラックが入った。
 そして、ズズズッという地響きとともに雪面が崩壊する。
 まさか、これがあのような惨劇を招こうとは誰も(明以外)思わなかった。



「雪山……か。雪中行軍を思い出すな……今日ぐらい、戦いを忘れてゆっくりするか」
 ルーカス・クラネルト(jb6689)は、天魔退治をスルーしてロッジへ向かった。
 ひさびさの休暇なので、温かい物でも飲みつつ趣味の読書や料理に時間を使おうというのだ。
 そして彼は、ロッジの扉を開けた。
 すると──

「お疲れ様です。珈琲、紅茶、緑茶、クッキーなどはいかがですか?」
 金髪碧眼のお嬢様が、笑顔でルーカスを出迎えた。
 彼女は、サラ=ブラックバーン(jc0977)
 ロッジを訪れた人をもてなそうと思って、お茶やお菓子を用意してきたのだ。
 断じて、サボっているわけではない。くりかえすが、サボってるわけではない! 後方支援という名のティータイムだ! 戦争において最も重要なのは兵站! すなわち、お茶とお菓子なのだ!

「では、コーヒーをいただこう」
 と、ルーカス。
「はい、少々おまちください!」
 サラは、ぱたぱたとキッチンへ走っていった。
 ルーカスはロッジの中を見まわしてみるが、ほかに人影はない。
 まぁそのほうが落ち着けるか……と考えて、彼もキッチンへ向かった。

「あ、ホールで待っててください」
 サラが振り返った。
「いや、俺も料理を……と思ってな」
「あら。なにを作るんですか?」
「アイントプフというんだが……一言で言えばドイツ版ポトフだな」
「おいしそうですね」
「どうかな。うまくできればいいが……」
 という会話が交わされて、キッチンにはコーヒーとスープの香りが漂い始めた。

 じきに、一杯のエスプレッソがルーカスの前に置かれた。
 ラテアートが施されて、かわいい白熊が描かれている。
「どうぞ。時間がかかってしまい申しわけありません」と、サラ。
「ほう、器用だな」
「いえいえ、それほどでも」

 そのとき。扉が開いて、3人目の客がロッジにやってきた。
 御笠結架(jc0825)。彼女は、今日が初めての依頼だ。そのためか、やや緊張気味である。
 じつはカワユス白熊さんと聞いて張り切って参加したは良いが、水が苦手な結架にとって雪原は地雷原のようなもの。戦闘は諦めて、ロッジから皆の戦いを見学しようと思ったのだ。かつて両親の無理心中に巻きこまれ、車ごと海にダイブしたときのトラウマである。

「こんにちは。温かいお飲み物はいかがですか」
 サラがキッチンから出てきた。
「ええと……ココアがあったら、いただけますか?」
「ありますよ。少々おまちください」
 ふたたびキッチンへ戻るサラ。
 こうして、ロッジには段々と人が増えていった。



(なんでスキー場に白熊がいるんだ? ……ま、いっか。こいつは無視だ、無視)
 鐘田将太郎(ja0114)は、さわやかに依頼をスルーした。
 彼がすることは、スノボの練習。なぜならば、『これができる男はモテる!』という情報をゲットしたからだ。
「俺だって女にモテたいんだよ! 悪いか!」
 と、虚空に向かって抗議する将太郎。
 なにも悪くはないが、それ多分ガセ情報。

 ともあれ、将太郎はゲレンデに立った。
 雪国育ちなのでスキーは得意だが、スノボは初体験だ。選んだのは、無難に初心者コース。
「女の子にモテるため……スノボ王に、俺はなる!」
 堂々宣言すると、将太郎は迷いなく滑りだした。
「なぁに、スキーはベテランなんだ。スノボなぞ楽勝楽勝ぅおおッ!?」
 油断したとたん、将太郎はボードごとスッこけた。
 そのまま、ごろごろとゲレンデを転がる将太郎。
 お約束どおり巨大な雪玉に成長した彼の行方は──



 一面の銀世界の中。銀髪少女の姉妹が、仲良く肩を寄せてゴンドラに座っていた。
 体型も髪の色も瞳の色も同じだが、一方は天使の特徴を、もう一方は悪魔の特徴を持っている。
 天使っぽいほうは、姉のティアーアクア(jb4558)
 悪魔っぽいのが、妹のティアーマリン(jb4559)
 どちらも同じフード付きのコートを羽織っているが、姉は白で妹は黒だ。
 しかし、なにより違うのはしゃべりかた。

「今日は、大好きなお姉ちゃんと一緒にスキー♪ やったぁ♪」
「あんまりはしゃぐと落ちちゃうわよ、マリン」
「大丈夫だって。そうだ、せっかくだから競争しようよ! 負けた方が勝った方のお願いをなんでも一つ聞くの!」
「それはいいけど……無理したら駄目よ?」
「しないしない! よーし、負けないぞー!」

 そんな会話をしつつ、姉妹はゲレンデの頂上に着いた。
 ふたりともスキーは得意だが、はたして勝負の行方は?
「さぁいくよ、お姉ちゃん。よーーい、どん!」
 マリンの合図で、ふたりは同時に滑りだした。
 実力は互角のようだが、マリンは姉に勝っておねがいを聞いてもらおうと必死だ。
 一方アクアは、体の弱い妹を心配して後ろから見守っている。
「よし、このまま行けば私の……きゃああっ!」
 気合を入れすぎて急なカーブを切ったとたん、マリンは体勢を崩した。
 おもわず目をつぶり、つんのめって倒れるマリン。

 ──だが、雪面の衝撃が彼女を襲うことはなかった。
 おそるおそる目を開けると、目の前には姉の顔。
 気付けば、姉の『光翼』が広がって、抱きかかえられながら空を飛んでいる。
「もう……心配させて」
 やんわりと微笑むアクア。
「大丈夫、お姉ちゃんが助けてくれるって信じてたから」
「本当にもう……。また転んだら危ないし、勝負はおあずけね」
「ええー!」
「このままロッジに行くわよ。温かいココアでもおごるから」
「わあい♪ お姉ちゃん、だーい好きっ」
 はぐ〜っと姉を抱きしめるマリン。
「ありがとう。私も大好きよ、マリン」
 こうして仲良し姉妹は、ロッジでのんびりすることに。



「シロクマ? どうせ誰かがやってくれるでしょ? 子供? 知らんな」
 というわけで、桜花(jb0392)は東風谷映姫(jb4067)とスキーをたのしむことにした。
 大丈夫、こう見えてもスキーの経験はなくもない。
「スキー? いいよ。たのしみだね、桜花♪」
 と、映姫。
 恋人つなぎしながら、仲良くゲレンデへ移動だ。
 そして、カップルみたいにイチャつきながらスキーを満喫する二人。
「ハハハ、遅いよー桜花♪」
「ああん。待ってよ、えーきぃ♪」
 ものすごい百合っぷる具合だが、これで平常運転だ。
 しかし、桜花もやっぱり女の子。どうしてもやりたいことが出てくる。……そう、もっともっと映姫とイチャイチャしたいのだ! でも、ここはスキー場。人の目がある所で、必要以上にイチャイチャするなんて……。
 そう考えて、桜花は人の目がない場所へ映姫を誘うことにした。
「ねぇ、えーき、来てくれない? かな……?」
「いいよ。桜花となら、どこにでもイっちゃう♪」
 そんな会話を交わすと、ふたりはスキーコースを外れて森の中へ入っていった。
 肩を抱きあって一本のマフラーを二人で使ったり、隙あらばちゅっちゅしたり、やりたい放題だ。
 その後ふたりは、木陰に隠れてアハンウフン♪
 こんな雪山でナニやってるんだろう、この人たち……。

 ともあれ。十分にお互いの体を堪能したところで帰りの時間だ。
「ふぅ……そろそろ戻ろうか……って、帰り道わかんねぇ……!」
 赤く火照っていた桜花の顔が、たちまち青くなった。
 こんな雪山で遭難したら、たとえ撃退士といえど死ぬ可能性もある。
 しかし、ここで映姫のスキル『ガールハント』が発動!
 これは、女の子の居場所を匂いで嗅ぎつけるというルール無用の技……というか、単なる野生の勘だ!
「心配無用だよ、桜花。私に任せて。こっちから、かわいい女の子の匂いが……」
 鼻をくんくんさせながら、迷いなく駆けだす映姫。
 それは確かに、ロッジの方角だった。
「へへへ……狩りの時間です♪ 女の子サイコー!」
「サイコー!」
 欲望をぶちまけながら、ロッジへ突入する二人。
 するとそこには、アクアとマリンの姉妹が!
 サラと結架もいるよ!
「こ、これは……まさに百合ハーレム! ユリーレム! ヒャッハーー!」
 アクセル全開で荒ぶる映姫。
 このあとの展開は、ご想像におまかせします。



「シロクマもふもふさわらせ……退治させろーぅ☆ もふもふ堪能したーい!」
 陽気な口調で言い出したのは、ユリア・スズノミヤ(ja9826)
 それを見た飛鷹蓮(jb3429)は、「クマか。猫じゃないのか……」と、残念そうな顔をしている。
「というわけで、出発ぅー! もしも抵抗されたら、容赦なくハイヒールでぷちってしちゃうよ☆ 女のハイヒール、舐めたらあかんぜよ☆」
 ユリアは本気だった。
 それに恐れをなしたのか、白熊は彼女たちの前に出現することはなかったという。

「じゃあ、メインの雪遊びだよー☆」
「それはいいが、なにをするんだ?」
「雪遊びといったら……まずはコレだよね!」
 言うや否や、ユリアは雪の上にダイブした。
 ボスッという音。
 その行動に、蓮は驚きながらも微笑を浮かべる。
 じきにユリアが起き上がると、雪面には人型の跡──スノーエンジェルが残っていた。
「ちょっと形が歪んじゃったかにゃー? んむぅ、水着でやるとキレイなエンジェルさんが出来るんだけどー」
 えらいことを言い出して、真剣に考えこむユリア。
 どうやら、気温のことは頭にないらしい。
「……待て。脱ぐなよ? 脱ぐなよ、ユリア? ここでは駄目だ。いや……今は、だ」
 内心ハラハラしながらも、蓮は冷静に止めた。

「んみゅ……それなら、蓮にスノボを教えてもらおうかにゃー☆」
「スノボか。たしか、ユリアは初体験だな。よし、まかせろ」
 とりあえず雪山水着ショーを回避できたことにホッとして、蓮は付き合うことにした。
 彼女は踊り子だからバランス感覚は良いはず……と考えていた蓮だが、ユリアはボードの上でフルフルしている。
 意外と鈍そうだな……と思いながらも、怪我しないよう見守る蓮。
「ん、上手だぞ。そのまま重心を……って、ユ、ユリア、ちょっと待て。そっちは森だ」
「みゅ、う、う、う、みゅわー、バランスとるのがムズカシイー! 蓮ー、だっこー!」
 わたわたしながら、必死で蓮にしがみつくユリア。
「だっこはいいんだが……足場が悪いな。……まあ、いいか。ただし、俺がユリアの上に倒れても文句は言わせないからな?」
 にやりと微笑む蓮。
 こんな露骨なラキスケフラグが他にあろうか! いやない!
 そんなこんなで、存分にイチャつきながら雪山を堪能する二人なのであった。



「あ〜やちゃん、あ〜そぼ!」
 白野小梅(jb4012)は、矢吹亜矢に声をかけた。
 最近退院したばかりの亜矢だが、こんなイベントに参加しないわけには! と強引についてきたのだ。
「遊ぶって、なにするのよ」
「せっかくのスキー場だしぃ、ソリを借りてぇ、ずぎゅーんって滑ろう! このまえ、ボブスレーの映像を見たの。それでぇ、ソリで最高速度を出してみたいと思ったんだぁ♪」
「最高速度? おもしろそうね!」
「じゃあ、しゅっぱーつ! せっかくだし、一番高い所に行こう!」
「当然よ!」
 みずから死亡フラグを立てる亜矢。

 一時間後、彼女たちは超上級者向けコースの頂上に到着した。
 ソリの前に亜矢が乗り、後ろに小梅が乗る。
「よーし、行くよー! めざせ世界記録ぅ!」
 小梅は勢いよくソリを滑らせた。
 と同時に『北風の吐息』を後方に発射し、反動で加速する。
 つづけて「アフターバーナー!」と叫びながら『ファイヤーブレイク』を撃ち、再加速!
 ソリは殺人的な速度で斜面を下っていった。

「にゃはははは!」
「あははははは!」

 テンションがおかしくなって大笑いする二人。ただの馬鹿かも。
 しかし、コントロールを失ったソリは一直線に崖のほうへ。
「だっしゅーーつ!」
 小梅は光の翼を広げると、亜矢をかかえて空を飛んだ。
 ソリはそのまま崖下へ落ちてゆき──
 手をすべらせた小梅は、亜矢を落っことした。
 ソリのあとを追って落下する亜矢。
「あいええええ! こうめえェぇぇぇ……!」
「ボ、ボクしらなーい♪」
 これはひどい。



 そんなお遊びチームとは反対に、まじめな戦闘をしようとする者たちもいた。
 一番手は、江沢怕遊(jb6968)
 へそ出しミニスカサンタコスで、クソ寒い雪山に登場だ!
「おー、もふもふクマさんなのですよ♪」
 怕遊はスカートの裾をなびかせながら、白熊ディアボロへ突撃した。
 その異様な迫力に、まわれ右して逃げようとする白熊。
 しかし逃がさんとばかりに、背中から襲いかかる怕遊。
 そして、なにを思ったか白熊を押し倒して馬乗りになると、おもむろに熊をデコりはじめた。
 まずは鼻に真っ赤な玉を取りつけて、次にツノの付いたカチューシャを装備させ、茶色のペンキで全身を塗り上げれば──あら不思議。白熊がトナカイへ早変わり!
「さー、これであなたはトナカイなのです。トナカイはトナカイらしく、ソリを引くのです♪ トナカイがソリを引いているという絵面にするために、ボクは手段を選ばないのです♪」
 前回の撃退酒がまだ残ってるんじゃないかというレベルで意味不明なことを言いだす怕遊。
「クママーッ!」
 全力拒否のエターナルフォースクマーが発動。
 怕遊は死んだ。(死んでません)



 二番手に登場したのは、黒百合(ja0422)
 本気で戦えば一方的なイジメだが、はたして彼女の行動やいかに。
「きゃはァ、手ぬるい相手だわねェ……まァ普通に戦っても惨殺だろうからァ……少し戯れましょうかァ♪」
 そう言って微笑むと、黒百合はケセランを召喚した。
 ただふわふわ浮いてるだけの、一見なんの役にも立たない召喚獣だが、実際あんまり役に立たない召喚獣だ(
「いらっしゃいィ、使い道が物凄く微妙な感じの召喚獣ゥ……ケセランゥ♪ そしてすかさず、全力チャージラッシュよォ……?」
 攻撃力ゼロのケセランが、全力体当たりをぶちかます!
 でも大丈夫! チャージラッシュに攻撃力が5あるから! あるから!
 でもやっぱり、ぽふん♪とかいって撥ね返されちゃうケセラン。
 そして、雪の上をころんころん♪。
「まァ、そんなところよねェ……。他の人の邪魔をするのも何だしィ……あとは高みの見物といこうかしらァ……?」
 黒百合はケセランを拾って雪を払うと、すこし離れた所で見学モードに。



「今度の舞台はここか」
 どこかから「キュゥ!」という音を出しながら、鳳静矢(ja3856)は木彫りの熊……ではなく白熊の前に立った。
 今回のようなシリアス戦闘では、つねに正装(ラッコの着ぐるみ)で挑む静矢。
 相方である鳳蒼姫(ja3762)も、同じく正装(ペンギン着ぐるみ)だ。
 これぞ、もふもふ3すくみ合戦!
「さぁ、おまえのもふを見せてみろ!」
「もふもふっと、もふもふもふなのですよぅ☆」
「くまー♪」
 なにがなんだかサッパリだ!

「どうした、かかってこい! おまえのもふは、その程度か!」
『挑発』で熊の気を引く静矢。
「くまー♪」
 白熊は華麗にゲレンデを滑ると、ベアクローで静矢をブン殴った。
 だが、間一髪『全力跳躍』で回避……失敗して、どうにか『根性』で耐える静矢。
「やるな……クマ五郎!」
 勝手に命名してはいけません。
 しかし、怪人ラッコ男(別名静矢)のもふもふ感を前に、クマ五郎もうろたえ気味だ。

 そこへ、蒼姫が乱入!
 なぜか白熊をふくめた3人で円陣を組み、部活っぽい掛け声が始まる。
「久遠ヶ学園ふぁいおー、ふぁいおー! シロクマ、ペンギン、らっこがふぁいおー! 明日ー!」
 円陣の中央には、久遠ヶ原学園校長のブロマイドが置かれ、3人の士気を高めている。
「さぁクマ五郎、準備は良いな?」
 と、静矢。
 って、なんの準備かわからないよ!


「待て! 待つんだ! そのもふもふは私がモフ倒す!」
 よくわからない状況をさらにカオスにするべく、凪澤小紅(ja0266)が走ってきた。
 以前、3匹の赤ちゃん動物型天魔が出現したとき、彼女はアザラシしかモフれなかったうえ病院送りにされてしまった経験がある。今回こそは白熊をモフってやろうと、全力投球なのだ。
 そのため、のっけから『縮地』を使用。『死活』まで発動して、なにがあろうとモフる構えだ。
「もふもふ生物を甘く見るな! そいつは私が取り押さえる!」
 雪煙を巻き上げて全力突撃する小紅。
 その気迫に圧倒されて、逃げだす白熊。
 重体も覚悟の上で突撃を敢行した小紅だが、これはラッキーだ。
「逃がさん!」
 逃げる白熊に後ろからモフッと抱きつくと、小紅は容赦なく関節を極めた。
「むう、このヌイグルミのような抱き心地、手ざわり……なんとけしからん!」
 動けなくなった白熊を、思う存分もふりまくる小紅。

「もう見てられん! 私もモフるぞ!」
 耐えかねたように、静矢が近付いてきた。
「アキもモフりますよぅ☆」
 蒼姫もモフ欲に釣られたようだ。
 そして始まる、もふもふ天国。


 そんなモフり隊の様子を、ユウ(jb5639)は遠くから眺めていた。
「嗚呼……あれだけ愛らしい姿をしていても、人にとっては脅威そのもの……。愛らしい姿の天魔を見るたびにいつも思うことですが、悲しいですね……」
 そう。ときどき忘れそうになるが、この白熊ちゃんはディアボロなのだ。撃退士たちは「もっふもふ〜♪」とか言ってるが、一般人が同じことをしたら即死確実。その事実を考えると、ユウは少し悲しくなる。
 とはいえ、相手は天魔。民間人の被害者も出ている。逃がすわけにはいかない。
 まさかこの状況から撃退士側が負けることはないだろうが、油断は禁物だ。
 万が一にそなえて、ユウはスナイパーライフルをかまえている。
 出番がないことを祈りながら──



 そのころ、ロッジでは優雅なティータイムが流れていた。
 窓辺からの雪景色を眺めつつティーカップを傾けるのは、シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)
 じつに貴族らしい高貴なたたずまいだが、「はぁ……もふもふ……もっふもふ……」などと呟いているので、すべて台無しだ。
 彼女の見つめる先には、白熊討伐部隊すなわち白熊モフり隊の面々が狂態をさらしている。というか、小紅と鳳夫妻が狂態をさらしている。あと、怕遊は死んでる。
 無論シェリアにも人並みにモフ欲はあるのだが、白熊に対してはそこまで欲望を刺激されない。
「はぁ……モフモフ……しっぽ……リス……」
 という独り言を聞けばわかるとおり、彼女がモフりたいのはリス!
 あなたがモフりたいのはフランスパンじゃないんですかと言いたくなるが、どうやらリスがご所望らしい。
「はぁ……そのうちリス型のディアボロとか出てこないかしら……」
 考えておきます。

「リスもかわいいですよね」
 となりに座って外を眺めていた結架が、シェリアに話しかけた。
 彼女も温かいココアを手にしており、シェリアに負けず優雅な空気を漂わせている。
「ええ、白熊もかわいいですけれど……やはり一番はリスですわ」
「ラッコとペンギンなら、いるんですけどね……」
「まるで動物園ですわ。あなたはモフりに行かないんですの?」
「私、水が苦手で……雪も駄目なんです」
「あら、奇遇ですわね。わたくしもカナヅチなんですの」
「えっ、じゃあ仲間ですね!」
「そのようですわ。カナヅチ部でも作ります?」

 そんな会話をしているところへ、ルーカスが料理を持ってきた。
「口に合うかわからんが、よかったらどうだ? 少々作りすぎてしまったのでな」
「これは……ポトフに似てますわね」と、シェリア。
「ああ。フランスのポトフがドイツに来て、こうなった。軍にいたころ、よく食べたものさ」
「なにか、いかにもドイツという感じの料理ですわね」
「俺もそう思う」

 という具合に、ロッジ組は穏やかなティータイムを過ごすのだった。
 ちなみに言うのを忘れてたが、女の子狩りに来た映姫と桜花はシェリアの後ろで寝てるんで。フランスパンを口に突っ込まれて、鼻血流しながら寝てるんで。エロいこととか一切なかったんで。フランスパン最強なんで。(注:フライパンとカレーパンを除く)



 一方、白熊討伐モフ部隊は、まだ熊と戯れていた。
 小紅は前回の無念を晴らさんとして一心不乱にモフってるし、静矢と蒼姫は何だか知らんが熊と一緒にかき氷食べてる。あと、怕遊は死んでる。
 その状況を、長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)はリングサイドで見守っていた。
 ボクサーの誇りにかけて、あくまでもタイマンを張りたいのだ。
 張りたいのだが、モフり隊の連中が邪魔なのである。
 もうこうなれば、邪魔な連中から先に片付けてしまいましょうかしら……などと、物騒なことを考えだすみずほ。

 するとそこへ。じつにタイミングよく、将太郎が転がってきた。
 ていうか直径10mぐらいの巨大雪玉になってるから、中に将太郎が入ってることはわからんけど。一応入ってるんで。ちゃんと当たり入ってるんで。
 そんなわけで、ゴロゴロと猛スピードで斜面を転がってくる将太郎玉。
 だれもが想像したとおり、モフり隊は押しつぶされて雪の下に消えたのであった。以上!
 ……え? 白熊も生き埋めになったんじゃないのかって? 甘いな! こいつは天魔! ときどき忘れそうになるけど、ただの雪玉なんか透過できるんだよ! モフり隊の中に天魔はいないし! 将太郎GJ!


「では、邪魔者が消えたところでゴングと行きましょう」
 みずほは、シャイニングバンドを拳に巻きつけた。
 彼女が先日読んだボクシング漫画によると、超一流のボクサーは熊に襲われても返り討ちにしたという。ならばわたくしも……と、いつも以上に戦意が昂揚している。
 相手は北極熊。一撃が重そうな……わけはない! だって小熊だし! 『かわゆす小熊』って書いたし!
 まぁそれはさておき、みずほはカウンター狙いだ。
 まずはサイドステップを踏みつつ、ジャブで距離をはかりながらの、Left Cross Combination!
 みずほの左腕が十文字の軌跡を描き、かわゆす白熊たんを切り刻む!
 血まみれになって体勢を崩す熊たん。
 みずほはすかさず、Damnation Blowで畳みかける。
 なすすべもなくスタンする熊たん。
 そして、とどめのButterfly Kaleidoscope!
 小熊ちゃんは砕け散った!

「そ、そんな……! 殺すつもりはなかったんですの……」
 がくりと崩れ落ちるみずほ。
 だからレベル1の撃退士ぐらいだって言ったのに……。レベル30の阿修羅がタコ殴りにしたら、そりゃ死ぬよ……。死ぬどころか、木っ端微塵ですよ……。
 まぁなにはともあれ、鷹村アレクサンドラみずほの活躍によって邪悪な天魔は消滅した。
 くりかえす! 邪悪な小熊ちゃんは消滅した! 依頼は成功だ! やったね!



「よし、終わったな」
 戦いを最後まで見届けた礼野智美(ja3600)は、早々にその場を立ち去ることにした。
 いままでの経験上、こういう所に長居するとロクな目に遭わない。意味不明な爆発に巻きこまれたり、酔っ払いに絡まれたり、野良ディアボロに襲われたり……。さいわい智美自身はあまりそういう場面に遭遇したことはないが、報告書を見ればわかる。とにかく依頼は達成したのだし、妙なことに巻きこまれないうちに退散だ。
 一応、ほかにも天魔がいないかという名目をかかげて、別のゲレンデへ向かう智美。
 でも、やってることはただのスキーだ。
「……よし、やっぱりスポーツ系は体が覚えているもんだな」
 とか言いながら、ほぼ貸し切り状態のゲレンデを一人で満喫する智美であった。



「敵将白熊、討ち取ったりぃぃ!」
 やたら威勢の良い場内放送が流れて、任務が終了したことを知った撃退士たちはロッジに集まってきた。
 中には雪の下に埋もれてたり、崖下に転落してたりする人もいるけど、そういう人たちは集まりようがない。
 あと、カップルでイチャついてる人たちはずっとイチャついててください。

 ロッジに集まってきた撃退士たちを、サラと結架が出迎える。
 温かい紅茶やココアは、なによりのごちそうだ。
 しかし思い出してほしい。最初のほうで、コメット阿修羅・桜井明が暴れていたことを。

 ゴゴゴゴゴゴ……

 という地鳴りのような音を、撃退士たちは聞いた。
 まさか新手の天魔かと、何人かが窓に近付く。
 だが、襲ってきたのは天魔ではなかった。津波のような雪崩だ。

 悲鳴が飛び交い、撃退士たちは逃げまどった。
 轟音を上げて襲いかかる雪崩。
 あっけなく崩壊するロッジ。
 だが、飛行できる者は飛行を、透過できる者は透過を使って悠々セーフだ。
 どちらもできない者だけが、雪崩に呑まれて雪の下へ。
 無論、みずほも雪の下。
 きっと小熊ちゃんの怨念であろう。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 Standingにゃんこますたー・白野 小梅(jb4012)
 地上に降りた星・桜井明(jb5937)
重体: −
面白かった!:9人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
繋いだ手にぬくもりを・
凪澤 小紅(ja0266)

大学部4年6組 女 阿修羅
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
楽しんだもん勝ち☆・
ユリア・スズノミヤ(ja9826)

卒業 女 ダアト
肉欲の虜・
桜花(jb0392)

大学部2年129組 女 インフィルトレイター
オペ子FC名誉会員・
桜井疾風(jb1213)

大学部3年5組 男 鬼道忍軍
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
繋ぎ留める者・
飛鷹 蓮(jb3429)

卒業 男 ナイトウォーカー
絆は距離を超えて・
シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)

大学部2年6組 女 ダアト
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
東風谷映姫(jb4067)

大学部1年5組 女 陰陽師
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
撃退士・
ティアーアクア(jb4558)

大学部8年304組 女 ルインズブレイド
撃退士・
ティアーマリン(jb4559)

大学部8年271組 女 ダアト
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
地上に降りた星・
桜井明(jb5937)

大学部6年167組 男 アストラルヴァンガード
暁光の富士・
ルーカス・クラネルト(jb6689)

大学部6年200組 男 インフィルトレイター
女の子じゃないよ!・
江沢 怕遊(jb6968)

大学部4年282組 男 アカシックレコーダー:タイプB
一期一会・
若松 匁(jb7995)

大学部6年7組 女 ダアト
学園長FC終身名誉会員・
築田多紀(jb9792)

小等部5年1組 女 ダアト
撃退士・
御笠 結架(jc0825)

大学部1年62組 女 アストラルヴァンガード
異世界見聞録・
サラ=ブラックバーン(jc0977)

大学部1年258組 女 阿修羅