2013年11月
人類側では、恵・ヴィヴァルディの指示の元、水面下において、
例え天使と悪魔の双方の血を引いていても極めて低い確率でしか起りえなかった天冥の血の同時発現を、
偶然に頼らず確実に引き起こす為に研究が進められていましたが、その研究は非人道的な方法でなされており、
事態を把握した学園長宝井正博は、密かに施設の摘発と技術の確保を風紀委員に命じました。
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【死天】技術と暗闘(望月誠司MS)
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初期イメージノベル
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2013年12月〜2014年1月
2013年末、力天使ザインエルから新たにゲートを開くように指令を受けた静岡県の霊峰富士にゲートを構えていた大天使サリエル・レシュは、同県にゲートを構えていた大天使ガブリエル・ヘルヴォルと連合して同県の富士市へと侵攻した。
死天使と恐れられていたサリエルとそれに伍する力を持つガブリエルの連合軍は富士市の防衛戦線を打ち破り、同市中央部を制圧する事に成功する。
ザインエルから与力としてサリエルの元へと派遣されていた元権天使にして天使と悪魔の混血者イスカリオテ・ヨッドは、富士市中央においてゲートを開かんと術式に入った。
しかし、静岡県の撃退士組織DOGと、久遠ヶ原学園等の人類側連合部隊は力を結集して反撃を開始し、中央を占拠していたサリエル・ガブリエル軍団を打ち破る。
敗北した静岡天界軍は富士市から撤退した。
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グランドシナリオ「【死天】静岡攻守分水界」OP
グランドシナリオ「【死天】静岡攻守分水界」作戦概要
グランドシナリオ「【死天】静岡攻守分水界」リプレイ
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久遠ヶ原学園の執行部の書記長大塔寺源九郎は大兵力が結集している今こそ追撃をかけゲートを破壊すべしと主張し、静岡県の撃退士組織DOGはこれに同意、反攻にでる。
標的は守りの硬い富士山のサリエルよりも伊豆半島の北部にあったガブリエル・ゲートとされた。
富士市より出撃して東進する人類側連合部隊に対し、ガブリエル救援の為に富士山から出撃したサリエル、陽動の為に富士市を突いたウル、友軍に呼応して包囲攻撃を仕掛けんと迎撃にでたガブリエル、各部隊は伊豆半島北部、及び富士市で激突し激しい戦いを繰り広げた。
ウルは陽動の一定の成功を見ると撤退、ガブリエルも誘引からの包囲攻撃に成功し撃退士の南方部隊を壊滅させたが、その使徒北條泉が率いていた西方部隊は撃退士達の奮闘の前に撃破された。西方部隊は他部隊を援護すべく再び踵を返して東進する。
サリエル部隊は優位に戦況を進めるも、これに対する撃退士達は伏兵からの分断攻撃を仕掛け総司令官であったサリエル・レシュを戦死させる事に成功する。
一転して劣勢に陥った残存のサリエル部隊はイスカリオテ・ヨッドの号令により北へと撤退し、勝利した撃退士北方部隊は他部隊を援護すべく進路を転じて南進する。
撃退士北部隊、西部隊と合流し態勢を立て直した撃退士南部隊はガブリエル・ゲートを破壊すべく再び迫り、圧倒的不利を悟ったガブリエルはゲートを放棄、自らのサーバント軍団を伊豆の山中へと散らせ後にゲリラ戦を展開するように命じ、自らは北の富士山へと飛び去っていった。
撃退士達は死天使サリエル・レシュを討ち取り、ガブリエル・ゲートを破壊する事に成功する。一連の戦いは人類側の勝利に終わった。
後にこの戦いは「死天大戦」略して【死天】と呼ばれる事になる。
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大規模作戦【死天】
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4月8日の状況
サリエルの死後、悪魔との混血天使イスカリオテが後を継いで死天使を名乗りました。
撃退士達への復讐を誓う彼は、大天使ガブリエルと共に静岡県へと工作を仕掛けています。イスカリオテとガブリエルは静岡県の富士山火口のゲートを根拠地としています。
使徒リカはガブリエル軍団の残党を率いて伊豆半島北部でゲリラ戦を展開して復興を妨害しています。
イスカリオテの謀略によって、静岡県企業連合の撃退士組織DOGの長、山県明彦が暗殺されました。
副長達が後継者争いを開始し、内部抗争一歩手前でしたが、撃退士達の活躍によって回避されました。
またその時の撃退士達の提案からの流れによって、新撃退長には西園寺顕家という外部から招聘された壮年撃退士が就任しました。
イスカリオテは住民を攫ってサーバント戦力の増強に努めつつ、内通者を使ってさらに内通者を増やすべく分断工作を仕掛けてきています。
新撃退長の西園寺顕家は新防衛体制で人攫いを阻止しつつ、内通者の処分を進めて分断工作に対抗し、確たる成果をあげて戦局を有利に展開し内通者の発生自体を抑制する事を図っています。
よって、現在の静岡県では、滅亡を防ぎ勝利する為に、
「非アウル行使者の人間を歌声で正気を失わせて集めて攫ってゆくサーバント達の行為、通称『狩』の阻止」
と、
「伊豆半島でゲリラ戦を繰り広げて復興を妨害しているガブリエル軍団の残党及び使徒リカの討伐」
が目下の課題となっています。
シナリオ「【死天】狩」終了までの状況
死天使サリエルの死後、天使と悪魔のハーフブラッドであるイスカリオテ・ヨッドは復讐を誓い、残された富士山のゲートを引き継ぎ、また自らを称して死天使を号した。
久遠ヶ原の大部隊が去った後、静岡撃退組織DOGは伊豆北部を復興させるべく残存のサーバントを一掃する戦いを開始する。
死天使サリエルの使徒であったリカは主の死後戦う理由も意志も失った為に山を降りたが、主が戦死した場所を見舞った際に伊豆で苦闘を続けるガブリエル軍団のサーバント達の姿を目撃し、これに助力するべく再び武器を手に取った。
そのような情勢の最中、DOGの総司令であった撃退長山県明彦が、とある女性との密会中に惨殺されるという事件が起こる。
山県の急死によりDOG副長である堕天使エアリアと同じく副長である一刀志郎との間で後継者の座を巡って対立が深刻化、内部抗争寸前にまで緊張が高まる。
DOG本部が混乱する最中、リカの指揮によって伊豆半島のサーバント達の動きが活発化し、半島に大火事が巻き起こる。
この動きを見た久遠ヶ原学園執行部の書記長・大塔寺源九郎は、事件究明と内部抗争回避の為に風紀委員の調査団を送り込み、伊豆半島を応援すべく新親衛隊総長岸崎蔵人等を送り込んだ。
調査団に参加した八人の撃退士達の活躍により、内部抗争は回避され、山県の後継にはエアリアでも一刀でもない第三者を撃退長(総司令)とする案が浮上する。
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【死天】死天使の大鎌
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また伊豆の大火事も撃退士や消防自衛隊員達の奮闘によってサーバント達が退けられ、無事に鎮火された。
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【死天】伊豆の残党 業火の歌声
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しかし、その派手な動きに隠れて、この頃から山間部の、元は村あったような場所等、人口の少ない地帯から住民がまるごと消えるという事件が密かに起こるようになっていた。
新しい撃退長を決めるべく、静岡県の豪華ホテルで会合が開かれ、静岡企業連合はDOGに対して、自らが外部から招聘した人物(西園寺顕家)を撃退長とするように要請する。
企業連合は、DOGに対して出資者として主権はあるが対抗可能な武力がない為(本来ならそのDOGこそが企業連合の武力であった為)、久遠ヶ原学園に約定の際の武力的な後ろ盾になる事を要請していた。
執行部会長・神楽坂茜は幾つかの条件と共にそれを容れて会合に出席し、先に二人の撃退士によってそれぞれ説得を受けていた副長エアリアと一刀志郎はこの提案を容れ、DOGの新撃退長に民間軍事会社を経営している撃退士の西園寺顕家が就任した。
しかし、企業連合、DOG、学園執行部の役員達が一同に介したこの会合は、突如として三十を超える人型サーバント隊によって襲撃される。
戦いは激しかったが、されど守備戦力も厚く、会場を襲撃したサーバント達は、護衛についていた撃退士達によって問題なく撃退された。
されど、ピンポイントに重要会合への襲撃を仕掛けて来たことから、静岡の動きが天魔に筒抜けであり、内通者がいるのではないかという疑惑が巻き起こる。企業連合の役員達が互いを見る瞳には疑念が入り混じり、会合は途中で解散となった。
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【死天】硝子交路 砂上の連合
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また会場が襲撃されている最中、同時にイスカリオテ・ヨッドが単身DOG本部へと襲撃を仕掛けていた。
DOG本部は諸事情(会合に出席する役員達の護衛、伊豆でゲリラ戦を繰り広げているサーバント達への対処、住民の消失事件に対する予防等)により主力が出払っていて手薄になっていた。
イスカリオテはその隙をついたのである。
また、会場や本部が襲撃を受けている最中に、手薄になった市内の警備網を掻い潜って大天使ガブリエル・ヘルヴォルが市街へと潜入し、密かに【目】と呼ばれる監視用のサーバントを設置して回っていた。
だが、六人の撃退士達の活躍によりDOG本部は三十名以上の死者を出し壊滅状態に陥ったもののイスカリオテを撃退する事に成功し、またガブリエルの暗躍を察知し各所に設置されていた【目】を見つけだして破壊する事に成功する。
しかしこれら一連の事件により、富士市の市民達はDOGの実力に強い疑問を持ち始めた。
前撃退長の山県明彦は女と密会中に暗殺され、その後継候補達は互いに激しく争い(和解は既に成立し新撃退長も選出されていたのだが、それらについて語る市民の声は小さかった)、とどめに白昼堂々本拠地に殴り込みをかけられ一方的に虐殺される(実際の所は、主力があちこちに出払っていて空き巣同然ではあったのだが)。
また市中にばらまかれた『目』は全て駆除されたという発表はされたが、まだ残っているのではないか、監視されているのではないか、という恐怖を市民達は拭いきれなかった。
DOGの評価が低下してゆく反面、久遠ヶ原の撃退士達の評価は高まりつつあったが、しかし彼等の本拠地は久遠ヶ原島であって富士市ではない。
DOG本部にいた撃退士達ですら殺されるのだから「撃退士ですらない自分達はいつ何時でも死天使達からの襲撃を受けて殺されてもおかしくない」と、そういった恐怖が急速に街へと広がってゆく事となる。
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【死天】救い求める声と天使の目
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会合より幾日かの後、とある山間部の町の警備についていたDOGと学園の撃退士達は、深夜の見回りの最中に町に響き渡る歌声を聞く。
町の住民達は歌声によって正気を失い、操られるように町の高台にある神社へと集められていた。
神社の境内へと踏み込んだ撃退士達、そこには歌声を響かせる少女と、鳥篭の如き形状を持つ大男、及びその護衛と思わし双頭の鷲人の姿を目撃する。いずれもサーバントであった。
歌声によって町の住民を鳥篭の内部へと集め、収容して飛び去る。そうやって住民を『狩り』連れ去っていた様子だった。
撃退士達の活躍により、これも首尾良く殲滅され、操られていた住民達は救出された。
その際に一人の撃退士より防衛体制の改良が提案され、DOG撃退長はこの提案を容れ、以降静岡の防衛体制に変化がもたらされる事となる。
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【死天】狩
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イスカリオテは内通者、元養成学校時代の撃退士・鈴木葵に指示し「イスカリオテに味方すれば安全に生き延びられるだけでなく、豊かに幸せに暮らせる」というメッセージを広く発信させ、内通者を増加させるべく、撃退士、市民問わず揺さぶりをかける。
新撃退長西園寺顕家は、内通者のいぶりだしとその断固たる処分を開始しこれに対抗する。また、新しい防衛体制で『狩』に対抗して住民を守りつつ、伊豆半島北部のサーバントの掃討を完了させて、半島南部の住民の安全及び財源の確保、北部の復興を進めて、低下しているDOGの市民からの評価を回復させ、撃退士側の有利を示し、内部分裂の阻止と戦局の有利展開を図っていた。
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6月26日分イメージノベル
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現在の静岡県では、
「住民を攫ってゆくサーバント達の『狩』の阻止」
「伊豆半島でゲリラ戦を繰り広げて復興を妨害しているガブリエル軍団の残党及び使徒リカの討伐」
が目下の課題となっています。
6月30日の状況
静岡県にて、紆余曲折の末、諸問題を制圧したDOG(静岡企業連合出資の撃退士組織)の長・西園寺顕家は大部隊を編成すると出撃し伊豆半島北部に入りました。
これは伊豆ゲリラサーバント達の殲滅を狙っての事です。
伊豆ゲリラ達の一大危機を知った大天使ガブリエルは冨士火口ゲートの司令官イスカリオテに援軍の兵を出す事を主張します。
イスカリオテは渋りましたが結局の所、ガブリエルと共に伊豆ゲリラ救援の為に部隊を率いて出撃しました。
これに呼応してリカ、カラス、ギメルは伊豆ゲリラを率いて北上を開始しました。敵を撃破して冨士火口ゲートまで撤退しよう、という作戦です。
他方。
撃退士の側、四方からの敵の接近を察知した西園寺顕家等は、南に対しては川沿いに築かれた陣地を利用して比較的人数を抑えた少数で迎え撃ち、一方の北には南からの余剰も回した大人数で迎撃する事に決めました。
久遠ヶ原学園からの援軍を含む撃退士達は三島市からそれぞの部隊を迎撃する為に出撃します。
今回の大戦の結果によって、静岡の状況はまた大きく変わる事となるでしょう。一つのターニングポイントとなります。
天界軍を撃破し、静岡県の未来を守りましょう。武運を祈ります。
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グランドシナリオ「【死天】願い達の血路」OP
グランドシナリオ「【死天】願い達の血路」作戦概要
グランドシナリオ「【死天】願い達の血路」リプレイ
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天界。
雪のように白い水晶の座の上に、赤髪の偉丈夫が剣を抱いて腰を降ろしていた。
天使としても、まだ若い男だ。上半身には何も身につけず逞しい裸体を晒している。その背から伸びる純白の翼は、ただし一枚だけだった。片翼の戦神、失われた翼の根元は赤黒く、醜い傷跡を晒している。
神の剣ザインエル。
「やぁ大将、これはまたこっぴどくやられたものだネッ☆」
彼の感性とは、恐らく凄まじく相成れないであろう、きゃぴきゃぴとした黄色い声が近づいてきた。
薄く赤瞳を開いて視線を向ければ、人間ならば年の頃十三、四程度に見える少女が、コツコツと足音を立てて水晶の間を歩いてきていた。
背中まで伸びるストレートのシルバーブロンド、すっと引かれた鼻と、桜の色の唇、サファイアブルーに爛々と輝く大きな瞳、そしてその下にドス黒い深い隈。
肩に担ぐのは全長3mを超える巨大な漆黒の大鎌だ。
「サリエル・レシュか」
ザインエルは大天使の名を呟いた。
「お呼び出しに預かり参上だヨッ♪ この殺戮の大天使様を言葉一つで呼び出すとは君も偉くなったものだなぁ力天使? キャハハハハハ!」
少女はドス黒い隈にふちどられた蒼眼をギラギラと輝かせて姦しく笑う。
「俺は変わらん。昔も今も。他人の評価が変わっただけだ」
戦神はかつての同輩へと淡々と答えた。
その返答に少女大天使は興を削がれたようにつまらなそうな顔をすると、
「そーいや、むかしっから偉そうだったね。下っ端天使だった頃はよくよく不興を買ってたけれど、それで左遷されてきたと思ったらいつの間にか力天使に出世して異界で大勝利した矢先に地球で大敗北して大怪我してる、浮沈の激しい男だぁアンタも」
「生きるというのは、そういう事だろう」
「うへぇ」
サリエルは苦い顔をした。ザインエルが無言で目線を向けると、少女は半眼で答えた。
「その悟ったような言い回しが寒い」
「そうか」
男は無表情で頷く。
「でったよー♪ なんでもかんでもそうかそうか、十八番だよねッ☆」
「……俺にどうしろというのだ?」
微かに柳眉を顰めてザインエル。
「べっつにー、パフォーマンスでも無しにあんたが饒舌になっても不気味なだけだシナ、勝手にすれば? アタシが何言っても結局、アンタは自分の勝手にするんだろーし」
「そうか。だが、それは誤解だな。納得できる言葉なら従う。納得がいかん事が多いだけだ」
「然様で」
隈の濃い少女はげんなりとした表情で盛大に溜息をついた。
「で、わざわざアタシを呼び出した理由は? このサリエル様はそうそう暇じゃないんだけどネ?」
「御前のゲートの支配領域内から精神を持った生物が姿を消滅させてから久しい。領域外への都市への襲撃も最近はろくに行っていない。この報告に間違いはないか」
「……どっから聞いたのサ?」
「事実、で良いのだな」
「あーもー、ムカツク! その通りだヨ!」
「だったら、暇だろう」
「然様デスネ」
「あちらの戦線はケリがついたが、一つ片付けばまた次だ。天界と冥魔の抗争は相変わらず激しい。天界が勝利する為には、潤沢な力の補給が必要だ。つまり、精神の収穫高をあげねばならない」
「どーでもいーじゃんそんなの、お上の事情がなんだってのさ、アタシが戦うのはアタシの為だけだよ」
「先の戦線の司令殿から天使を一柱渡された。問題のある奴だが、見込みはある。彼の者を御前に与力として与えるから、街を一つ陥とせ。的は富士市だ。首尾よく上手くいった場合は、現在のゲートは放棄してまた新たにゲートを作れ」
「えー! 折角、この国で一番見晴らしが良い所に創ったのに……」
富士山なんて周囲にあまり人がいない場所を中心にゲートを開いたのはそんな理由だったらしい。
「俺は神の剣だ。天の騎士だ。天界の資源状況について、どうでも良いという訳にはいかん。御前にも従って貰うぞ」
「嫌だって言ったら?」
「斬る」
「これだからこいつら嫌なんだ!」
少女大天使はうんざり、といった態を隠そうともせず叫んだ。
ザインエルが視線を向けると、
「天界の為にーとか粉骨砕身してたダレス・エルサメクはどーなったよ! どーなったんだよ! アタシは嫌だっ! もう嫌だッ! アンタだってそんなボロボロになってんのに、ゆっくり休めもせずに指揮採らされてるんだろ! 予言してやるね、アンタもきっといつか使い潰される!」
「俺は神の剣だ」
「だ・か・ら?!」
「他の生き方など知らん。天が俺の故郷だ」
「ふーん、ご立派だね……! アタシの故郷も天だとも、義務を果たせって?!」
「いや、義務とは言わぬ」
ザインエルは首を振った。天界を愛していない者に義務を説くのも違うだろう、と男は思う。故に。
「死にたくなければ従え」
「……戦死したら呪ってやる! デビルめ! 情けとかないのか! アンタやっぱり変わったよ!」
「そうしろ。俺は神の剣だ。それは京に埋めてきた、ダレス等は天の為に死んだのでは無い、俺の為に死んだのだ。俺は必ず彼の地に帰る。その為に力を回復させねばならんのだ。頼む」
●
「勝手な事ばっか言いやがって!」
少女天使がキンキンとした怒声を撒き散らしている。
「……でも、結局やるの? 赤い天使様」
背に薙刀と小銃を背負った水兵服姿の少女が問いかけた。彼女の名は葉斯波理花、殺戮の天使の使徒だ。
「フン! そうさ、アタシは所詮、赤い天使さ、アタシがサリエル、神意の執行者にして四海に死を撒き散らし神の威光を守る者! 殺すのが仕事なんだよぉ!! 最近さぼってたけど、化け物は化け物らしくやってやるさ! ひひひひひひひッ!!」
銀色の大剣をふりまわしながらリカの主が叫んでる。
「そう……」
水兵服姿の少女はそっと瞳を伏せた。
「リカ!」
「なに……?」
「これ、あげる」
放り投げられた大剣をリカは受け取った。
「これは……?」
光の塗りつぶされた漆黒の瞳に微かに驚愕が広がった。凄まじいまでの霊力が、その剣に籠められているのが感じられたからだ。
「あの戦バカがよこしたんだけど、デザインが気に入らないから君にあげる」
なるほど、とリカは納得した。戦神の剣だ。神の剣の剣。壮絶な力が宿っているというのも道理だった。
同時に思う、神器クラスを除けば天下に無双の剣だろう、そんな物を自分だったら軽々しく他人に譲るだろうか……?
「でも赤い天使様、これは、戦神様が、貴女様にあげた物……」
「アタシは大鎌がポリシーなのっ☆」
「この前、槍使ってた……」
「さー、皆集めて作戦会議ダッ! 急ぐよ、キャハハハハ!」
言って飛行してゆく主の背を少女は少しの間、ぼんやりと眺めてから、その背を追って駆け出した。
●
イスカリオテ・ヨッドは思う、ついてない一生だ。
ケチのつき始めは己の身に流れる血のせいだった。彼の祖先には悪魔と交わった者が居たのだ、居たらしい。過去に悪魔の血が混じっていると隔世してその特徴が顕現する事がある。彼は天使でありながら、悪魔の力をもまた発現させていた。
(せめて生まれた時からそうであればよかったものを)
そうすれば世に出る前に厳格な両親は彼の事を始末してくれただろうに。だが、彼の血に流れる悪魔の力が目覚めたのは、気鋭の権天使として世に出てからの事だった。
一族や周囲からの期待は、彼の身に変調が起こると一気に手の平を返したように怨嗟と蔑みに変わった。
(まぁそれは良い)
世の中そんなものだからだ。悪魔の血を宿していた己が悪い、とまでは思わないが、因果というのはそういうものだ。そういう天使達とそういう関係しか築いていなかっただけの話だ。
背約者の忌まわしい血を宿す者として、天界より権天使の地位は剥奪され平の天使階級にまで堕とされた。
(まぁそれは良い)
イスカリオテにとって我慢がしきれない事ではない。諦めというのは、つけられるものだ。
しかし、
「『混じり者(ハーフ)』のイスカリオテ・ヨッド、君さぁ、アタシのハナシ聞いてるー?」
ドス黒い隈を目下に持つ少女が口の両端を吊り上げながら笑う。
(なんだって、こんな頭の足りなさそうな小娘の下で働かねばならぬのだ)
これが、降格という物が真に意味するところか、とイスカリオテは思う。左遷に左遷を重ねて流れ着いた場所がこの辺境の次元の惑星の日本という国だった。
「聞いているとも死天使サリエル、俺の新しい上司殿、俺の耳はいつだって音を拾っている」
「その愉快な脳味噌が拾った音を認識してるって言うなら、本戦略の概要について説明してみて?」
蒼い瞳をギラギラと焔のように輝かせながら女天使が言う。その隣に立つ使徒のまったくの光が失せた瞳とは対照的だった。こいつは俺に似ている、と思い、次にやはり似ていない、と思った。
「要するに――」
死んだ魚のような目をして、黒の外套に身を包んだくたびれた壮年の天使は、軋む脳細胞を働かせながら言った。
「囲む、という事だろう。一つの街を。神の剣は直前まで隠密して一息に京都という街を呑み込もうとして、しかして失敗した。失敗の原因は、ゲートを発動させる直前に人間達に気付かれたからだ、逃げられたからだ。故に、気付かれぬうちに退路から潰す。逃げ場を総て潰して囲った後に、ゲートを開く、そうすれば直前に気付かれようが、人間どもは決して逃げる事は出来ない、という寸法だ」
イスカリオテが説明するとサリエルは不快そうに眉間に皺を刻んだ。
「――間違っていたか?」
「あってるよ!」
なら、何故、そんなに不機嫌なのだ、とイスカリオテは思ったが、すぐにどうでも良い事だ、と思った。どうでも良くないのは、
「疑問が二つある。一つ目は富士市という街は守りの強固な都市だ。上司殿の襲撃に度々耐えてきただけはある。果たして首尾良く囲めるかな。こっちの戦力はそこまで圧倒的か?」
「へぇ、弱気になったの? 元権天使さん? 敗北主義は格好良いね、きゃはははははは!!」
「本格的に手をだせば市の防衛陣のみならず、久遠ヶ原学園とかいうとこの撃退士達がでばってくるのだろう。上層部は原住民如き、と言っていたが、神の剣が万全でなかったとはいえ、それを撃退せしめた連中を相手に、元権天使と大天使とその使徒だけで勝てるのかね。上司殿のサーバント軍団はそこまで精強なのか? 俺はザインエルと真正面から殴り合って勝てる自信は到底ないが、あんたはどうだ? 俺に死に場所をくれるって言うのなら俺はそれでも構わないが、それじゃあんたは困るんじゃないのかね」
サリエルは眉を顰めて口を噤んだ。
沈黙する少女へと死んだ魚のような目をした男は言う。
「たかが原住民、上層部の言葉は、ある意味正しい。十分な戦力を整えて、しっかりと隙なく進めれば、こちらが負ける要素は少ない。無茶をやるから負けるのだ」
「……つまり?」
「ガブリエル殿のゲートが目標都市から近い。負けたくなければ、彼女にも出陣を要請すれば良かろう。東からガブリエル軍に攻めて貰い、南もあちらの水軍に頼めば良い、駿河湾という奴を抑えれば海上には出られん。そして北から大軍で攻め寄せ、西は東海道とかいう狭隘を精鋭で抑えれば良い。封鎖はそれで完了できる。それでもう敵は車両も船舶も使えなくなるから、逃げ道は無くなる。のろのろと徒歩で山を越えようとするなら、それこそサーバントの餌食だ」
「ガブリエルがアタシの頼みなんか聞くわけないじゃん」
「神の剣に頼ませれば良い」
「え、えぇっ?! ふ、不遜じゃないのそれ……」
「貴女がそれを言うかね」
イスカリオテは呆れた顔をした。
「使える物は上司でも使え」
「そーやって左遷される訳だね、キャハ!」
イスカリオテは沈黙した。
「冗談だよ」
「二つ目の疑問は、だ。そうして封鎖してしまえば、その市の中心でゲートを開こうとこちらが画策しているのだと確実に気付かれる。どうやって開くつもりだ? ゲートを開こうとしている間は術者は無防備になる。総力をあげて潰しに来るぞ」
「四方を封鎖した後は、突貫部隊を編成して市の中央を制圧する」
「…………力技過ぎるだろう上司殿」
「何も永遠に保持し続けなくても良いんだ、ゲートが開くまで保てばそれで良い。半径十キロメートルの支配領域を展開できるゲートを開くとして、元権天使のアンタならどれくらいかかる?」
「地脈の力について上司殿が言う通りなら、そうだな、最低でも半月はかかるぞ」
「なっが! ザインエルは三日で京都沈めたんだよ? もっと頑張れヨ」
「それじゃ、使徒なり天使なりを俺の他に六柱用意して、六星の陣を敷いて、半径も七キロにしろ、それなら三日で開いてやる」
「ツカエナイナー」
「じゃ、あんたがやれよ」
「半月かー、こそこそ隠れながらやるか、囲んでドンか、いっその事、囲むとかセコイこと言わないで全面的に制圧しちゃうか」
「最後だけは現戦力ではありえない。敵戦力を撃退しつつ市民も制御するなど不可能ごとだ」
「うーん、隣接してる富士宮市もあわよくばと思ったけれど、ほとんど半壊してて人少ないし、そっちは捨てるか。七門陣無しで半径五キロだったら?」
「およそ七日」
「現実的なのはその辺りカナ。それならきっと敵は大規模な戦力召集が間に合わない」
「希望的観測は捨てた方が良いが……それに賭けるしかないか。兵は何時までに整えれば良い……?」
「そだね、年明けの挨拶っていうのは前にやったからー、今回は年末のご挨拶って所かなー、キャハ!」
かくて、大天使達の軍勢が動き出す。
密やかに破壊の影が、駿河湾を臨む都市に忍び寄らんとしていた。
他方、時を同じくして人類側の暗部においても天と冥の血に関する動きが水面下より浮上してきており、二〇一三年末、混じった血の力達は表舞台へと本格的にその姿を見せ始めようとしていた。
(執筆 : 望月誠司)
6月26日分イメージノベル
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煌く、煌く、光を放って、漆黒の天空に無数の星々が燃えている。
宿星という言葉がある。
水兵服に身を包んだ長い黒髪の少女は夜空を見上げて思った。
――己の運命を司る星も、この漆黒の天空の中に、存在するのだろうか。
思う。
ある訳が無い。
己の運命を司るのは己自身だ。
シュトラッサー・リカは空より視線を外すと、黄金の光を纏う竜の首に頭部を預けた。
初夏の夜風が頬を撫でてゆく。遠くから潮騒が聞こえていた。
人に人生というものがあるならば、使徒やサーバントの人外の生とは何なのだろうか。
「それはきっと」
リカは呟いた。
生きて死ねば、それだろう、何であれ。
だから、信じるように生きて、信じるように死ぬ、それで良い。
竜が訝しげに短く鳴いた。
リカはそれに答えるように竜の首を撫でる。
「……何でもない……大丈夫、必ず貴方達は主の元へ帰れるから」
●
「動いたか」
伊豆の山中。闇風の天使ヴェズルフェルニルことカラスはDOGの撃退長が大部隊を率いて伊豆半島に入ったという報せを受けて呟きを洩らした。
ある種の均衡が保たれていた伊豆半島は状況が大きく変わろうとしていた。
風雲急を告げる、という言葉があるが、今がまさにそれだろう。伊豆ゲリラ側から見れば一大危機にあった。
「さて、富士ゲートはなんと返事を寄越すのだろうね……」
男は呟き、北西の空を見やった。
●
淡光が下方より登る空間、蒼白く透き通った水晶で作られた間。
蒼晶で作られた大きな円卓に、漆黒外套の男と黄金白翼の女が腰を降ろしていた。
「DOGの総大将が動きました……状況は限界に達した、と見えますわ」
ガブリエル・ヘルヴォルが言った。顔から表情が消えている。発せられる言葉以上に物言いたげな青い瞳がイスカリオテを見据えていた。
対する黒衣の男、イスカリオテは常通り淡々と答え、問う。
「それで?」
「伊豆のゲリラサーバント達をこの富士火口ゲートまで撤退させて欲しいんですの」
ガブリエルは言った。
「サーバントの生産も富士を拠点に守るなら、既に十分な数が揃ったでしょう。これ以上無理をさせて時間を稼ぐ必要はないですわ」
「守るには十分だが、攻めるには十分ではない。戦力の損耗は避けられるだけ避け、増強できるだけ増強するべきだろう。力を溜めきってから、一気に粉砕する。逐次投入で泥沼に陥るのは下策だからな」
「だからまだ時間を稼がせると?」
「それが望ましい」
黒衣の男は頷いた。必勝の戦略だ。
「けれども、このまま粘らせれば、伊豆の一団が殲滅されるのは目に見えてますわ」
「場合によってはそうなるのも当初からの予定だったろう。伊豆のサーバント達は手の内が既に敵に知られている。戦力としての価値は相対的に低い」
能力が知られていないからこそ強い、本気の戦というのはそういうものだ。だから弱札の為に強札を殺すというのはありえない。
「だから、使い潰しても構わないと?」
「そうだ」
イスカリオテは東の軍団長の碧眼を睨み据えて頷いた。
「全体が負ければすべてに意味がない。敵は温い相手ではない。お前とてそう思ったから山野に軍団を放ったのではないのか」
「わたくし、気紛れですの」
ガブリエルは艶然と微笑した。
「それに、あの時は富士山に撤退は出来ない状況でしたけど、今は違います」
イスカリオテは眉間に皺を寄せて目を細める。
情でも移ったか、と思う。
だが何に対してか迄は解らない。
未だ奮闘を続けるかつての自分の軍団に?
それとも喧嘩仲間だったサリエル・レシュが残した使徒に?
あるいは別の何かか。
そこまでは解らないが、どうやら今のガブリエルは伊豆半島のゲリラ達を見捨てたくはないようだ。
「そもそもあれらは元々わたくしの軍団ですわ?」
「――解った。盟友の意見は尊重しよう。撤退は許可する」
「救援の兵を出すつもりは?」
「無い。一つ問うが、リカは助けを寄越せと言ったのか?」
ガブリエルは笑みを消すと答えた。
「いいえ」
「だろうな」
死天使は頷いた。
「求めたのは撤退許可だけだろう」
「ですわね」
「俺はサーバントに情などないが、あると仮定して話すならば、十のサーバントを救う為に、三十のサーバントに無駄死にを強いるのは、それは三十こそが哀れではないのか。だからあの女は俺に助けを寄越せとは言わぬ。自分達だけでなんとかしようとする筈だ」
「あの子達だけでなんとか出来る訳ないでしょう」
「出来なかったら滅びるだけだ。その覚悟はある筈だ。そして俺達はそれでも困らん」
「わたくし達が総てを上手くやればよろしい」
「それが出来るなら苦労はない」
淡々とイスカリオテは答え、ガブリエルは半眼でぼそりと呟いた。
「甲斐性無し、無能、美しくない」
「ああ、まったく事実だな。だから勝つ為には俺には他に採るべき方法が無い」
「やりもせずに諦めますの」
「やって失敗したら取り返しがつかない。ここを我慢すれば後に磐石で勝負出来る。勝ちへの道が見えているのに、何故、博打になる局面で出て行ってそれをふいにする?」
「そんなもの、貴方の見切りでしょうに、貴方が勝手に限界を定めているだけでしょうに」
イスカリオテは答えなかった。それを言うならお前もリカ達の限界を見切っているだろう、なんて言うのは道理ではないし、実際の所、ガブリエルの言うことも事実だ。
「美しくありませんわ、美しくありませんわ、美しくありませんわ」
イスカリオテに言わせれば、そんな美学の為に将兵の犠牲を増しても厭わないという姿勢の方が美しくない、が、ガブリエルに言わせればそれが美しくイスカリオテのそれは美しくないのだろうから――感性の是非を論じた所で益が無い――別の言葉を言う。
「美学で勝てれば苦労は無い。兵は出せん」
「美学も持てない生き様なんて生きる意味がございませんわ。貴方がそうおっしゃるなら、わたくしだけで向かいます。それなら文句はないでしょう?」
「止めておけ――犬死にするだけだ。そんなもの、お前だけの美学だろうが」
ガブリエルは答えて言った。
「そうかしら? そうおっしゃるのなら貴方にとってはそうで、違うのでしょうけど、本当に?」
黄金白翼の大天使は席を立ち、蒼の間の出口へと向かって歩いてゆき、足を止めた。女は黄金に輝く髪を揺らし肩越しに振り返る。
「生き様があるなら死に様もあります。それで滅ぶというなら滅べば良い」
女は言い放ち、そして白翼を翻して姿を消した。
イスカリオテは動かず、じっと蒼い光の彼方を見つめていた。
恐らく、ガブリエルの言葉は本気だろう。意見は合わずとも少なくとも気高い女だ。論争の為に思ってもいない事を述べる、という女ではない。
「……厄介な事だ」
黒衣の男は呟いた。このまま動かなかった未来を考える。
ガブリエルが死ぬのが最悪だろう。
ガブリエルだけでも撤退できたとしても、あの様子では、静岡から去る事になるかもしれない。元々義理と情けだけで協力してくれていたような女だ。
リカが死に、ガブリエルも死に、ヴェズルフェルニルもギメルも去り、イスカリオテ一柱だけとなれば、どの道、勝機は無い。
「……ままならんな。ああ、ままならん。世の中というのはままならん。博打というのは、嫌いなのだがな」
男はゆらりと立ち上がると、ガブリエルへと思念を飛ばした。
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かくて後。
「なんとも七面倒くさい奴等よ」
ギメル・ツァダイは一部隊を率いて伊豆の山野を進軍しながら思った。京都の頃の面子の方がまだすっきりしていた。ザインエル、レギュリア、六星枝将達、あの連中ではなんだかんだで決定された大戦略に逆らって右往左往なんて事はなかった。
「まぁ良い、味方が混沌としていてもこのギメル・ツァダイが敵の全てを薙ぎ払えば済む事よ! そして今度こそ昇進だ! ヌハハハハハハハッ!!」
ギメルは振り返ると己の後からついてくるサーバント達――青銅兵、銀騎士、サハギン、金焔竜の混成部隊――へと言った。
「聞けぃ者ども! 貴様等の興亡はこの一戦にある! 我もまた然り! 未来が欲しくば死力を尽くして戦え! 力及ばず敗れ、万骨時の波に掻き消えようとも、隣で肩を並べた者どもは覚えていよう! 刃を交えた者達は覚えていよう! 無様だけは晒すなよ、夢を掴みたくば戦え! 勝利は全てを約束する! 隣に立つ戦友を信じよ! 神を信じよ! このギメル・ツァダイを信じよ!! 天界軍、黄金白翼の軍団、神の軍団はここにありと四海に轟かせよ!!!!」
百戦錬磨の爆炎天使の激に応えて数百のサーバント達が咆吼をあげる。
「その意気だッ!! 行くぞ者どもおッ!!!!」
天空の神官は錫杖を振り上げると北へと向かって駆け出した。サーバント達は、まるで十年も前からギメルの配下であったかのように従順に、意気軒昂とそれに従い波の如くに砂塵を巻き上げて続いてゆく。
伊豆半島での大きな戦いが、今まさに巻き起こらんとしていた。
(執筆:望月誠司)
