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マスター:樹 シロカ
シナリオ形態:シリーズ
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2016/12/27


みんなの思い出



オープニング


 呆れるほどの茶番。
 天使も、冥魔も、人間も、大真面目に命を賭けて、茶番を演じているのだから救えない。

 当然、俺自身もそうだ。
 だが人の皮を被った化け物よりは、堂々と化け物であろうと決めた。
 無力であることを嘆くよりは、力をつけることを選んだのだ。

 何、この地球ができて以来、人類がやってきたことじゃないか。
 進化を知らない弱い存在は消え去るのみ。
 その順番が回ってきただけだろう。
 茶番を信じ、夢に縋ったままで、ゆるゆると滅びてゆくならそれまでだ――。


 ネフラウスは顔を歪めながら、ソファに座りなおす。
「この家にはシュトラッサーが来るのだ。川上昇、と言えば、覚えている者も居るか」
 川上昇、ザインエルの側近であるグラディエルのシュトラッサー。
 かつて京都で幾度か刃を交え、重傷を負って姿を消したのは去年の春頃だった。
「あれが生きていたのだ。それも、より強くなってな」
 仲間を逃がす為に囮となったネフラウスは、サーバントだけなら撒けると考えていた。だが現れたのは、金色の光を纏う男。強力な光弾に貫かれ、ネフラウスは自分はこれで死んだと思ったという。
「そして目を覚ましたのが、この家だったのだ。彼女が助けてくれた」
 視線で池永真弓を示す。

「この近くに倒れていらっしゃったので、お連れしました。傷は癒せましたが、体力が戻るまでは数日かかりますので……」
 大八木 梨香(jz0061)は何かを言いかけ、言葉を呑みこんだ。
 池永真弓こと、堕天使クー・シーの力は尽きかけているはずだ。具合が悪そうなのは、そのせいか。
 だが、どうしても聞かなければならないことがある。
「池永さんもここにいらっしゃるのですね。どうやっておふたりは生きてこられたのですか?」
 掠れた声で尋ねると、真弓は悲しげな微笑みを浮かべた。
「私たちは天使たちによって、生かされているのです」

 昨冬、京都にザインエルの側近、リーネンがゲートを開いた。
 そのザインエルを京都に導いたのが、ほかならぬ真弓の作った――正確には、人質を取って作らされた――小規模ゲートだった。
 撃退士達はそのすぐ傍まで近づいていたが、真弓は助けを求めることなく彼らを帰した。
 すぐ隣には、リーネン、グラディエル、2名の強力な天使がいたからである。
 彼女らはザインエルを迎え入れ、かつての本拠地へ戻った。
 その際グラディエルの進言により、真弓と池永氏も共に連れ去ったのだ。

「彼らは池永に、天界から取り寄せた妙薬を与えました。諦めていた命も、ながらえれば惜しくなるもの。私も死ねと言えるはずもなく、こうしてふたりで生きながらえているのです」
 真弓はそう言って目を伏せた。
 力がどれほど弱くても、何かの使いどころはあるかもしれない。
 グラディエルは真弓という手駒を最期まで使いつくすつもりなのだ。
「使徒川上は、その薬を届けにやってきます」
 真弓は顔を上げた。その目に、自分が使徒にした少女・小青(jz0167)がうつる。
「クー・シー様……」
「よく似合っていますね。学園になじんでいるようで安心しましたよ」
「こ、これは……!」
 真っ赤になりながらスカートを引っ張る小青に、真弓は穏やかに微笑みかけた。
「天界でお前を使徒にしたとき、言いましたね。戦いを望まないなら、いつでもその力を捨てて構わないと。どのような道であれ、お前が選んだのならそれでいいのです」
 小青が何事かを訴えようとするが、真弓はさっと表情を引き締める。
「そろそろ川上が来る頃です。だからどうか、一刻も早く離脱してください。急いで!」
 真弓の囁き声は、泣かんばかりに切迫していた。


 雑木林を、下草をかき分ける音が移動していく。
 女が声を殺して低く囁いた。
「何か見える?」
「ああ。シュトラッサー……かね」
 男はこともなげに答える。
「ハァ!? 何のんきなこと言ってんのよ!! あの建物に貴方の教え子が入ったきり、出てこないのよ!?」
「元・教え子だ」
 ゴッ。
 何かが激しくぶつかる音。
「何をす――」
「カッコつけてんじゃないわよ。まあどの道、私たちフリーランスの仕事は、彼らがトラブルに巻き込まれた時の支援だしね。もう少し中の様子が分かるといいんだけど……」
 男がため息をついた。
「どの道、というなら、長時間こんなところに居るのは我々にとっても好ましい状況ではないな。実力行使と行くか」
「……どうすんのよ」
「こうするのさ」
 男は長射程ライフルを構え、狙いを定める。
 スコープにはこちらに背中を見せている2階の人影。男だ。年寄りではない。
 その少し上をめがけて引鉄を引く。

 閃光弾が窓を突き破り、建物を震わせた。

===
建物概略

1F ↑北
■■Ξ■■■Ξ■■ Ξ:窓
■□□□□■□□玄
Ξ□□□□□□□関
■□■■■■■□■
Ξ□□□□■□□■
Ξ□ネ真□■□□Ξ
■□□□□□□階■
■□■■■■□■■
Ξ□□□□■□□Ξ
Ξ□池□□□□□Ξ
■ΞΞΞΞ■ΞΞ■

2F ↑北
■■ΞΞ■■Ξ■■ ★:川上
■□□□□□□□Ξ
Ξ□□□□□□□Ξ
■■■■■■■□■
Ξ□□□□■□□■
Ξ★□□□■□□Ξ
Ξ□□□□□□階■
■■■■■■□■■
Ξ□□□□□□□Ξ
■□□□□□□□Ξ
■■■ΞΞ■ΞΞ■



前回のシナリオを見る


リプレイ本文


 建物の二階から光が溢れ出す。
 雑木林に身を潜めながら女が囁いた。
「ねえ、思ったんだけど。シュトラッサーだったら後ろからズドンでよかったんじゃないの?」
「万が一、違ったら面倒だろう」
「ハァ!? 違ってたら閃光弾だって危ないじゃない!!」
「どちらにせよ、切欠さえあれば彼らはそれを生かして何とかするさ」
 女がわずかに眼を細めた。
「……信頼してるんだ」
「当然だ」


 敵対しているはずの存在を目前にして、男はあまりにもリラックスしているように見えた。
(……おかしな輩だ)
 そう思うフィオナ・ボールドウィン(ja2611)だが、彼女自身も口元に不敵な笑みを湛えているのだからお互い様だろう。
 男が口を開いた、その時だった。
 撃退士の視力が窓外から飛来する何物かを捉える。
 フィオナの視線の揺らぎ、そのわずかな重心の移動に気付いた男の身体にも緊張が走る。

 突然、部屋に光が満ちた。

 扉の陰に身を潜めていたファーフナー(jb7826)は、すぐにその正体を理解した。
(閃光弾か)
 ならば、使ったのは人類側だ。天使がそんなものを使うはずがない。

 間髪置かず、フィオナは突進を選んだ。
 相手の目が眩んでいるうちに、西の窓をめがけて駆けだす。
 本能と直感が『足止めと脱出の好機』と告げていた。だが背中を向ければすぐに追ってくるだろう。
 ファーフナーも同じ考えだ。磁場形成で速度をあげて俊足のフィオナの後を追う。
「退くぞ!」
 フィオナは階下にも届くよう、大声を上げる。
 更に、男とすれ違いざまに仕掛けた。
 すぐ傍に出現した魔法陣から黄金色の鎖が伸びゆき、男をからめ取ろうとする。
 だが相手は片腕で目元を覆いながらも、閃光弾が炸裂した方向から横っ跳びに退いていた。
「他に仲間が潜んでいたか……!」
 男が呟く声は、ふたりの撃退士の耳には届かない。
 窓ガラスが割れる派手な物音を残し、フィオナとファーフナーは宙へと飛び出していた。

 柔らかい土の上に着地し、そこで初めてフィオナは振り返る。
 だがガラスが軋む窓に、人影はなかった。
「かかったか」
 ファーフナーが短く問うと、フィオナがふっと笑う。
「あの程度でどうこう出来るなどと考えてはおらんさ」
 それでも一応確認したかったが、敵は姿を見せなかった。
 ファーフナーはフィオナを促し、身をかがめて走り出した。
「他の連中と合流しよう。向こうは重体の奴を抱えている」
 その間に、記憶をたどる。

 現在、京都市内にあるゲートはザインエルが絡んでいるものだ。
 かつて大規模作戦の折に遭遇した強力なサーバントがここに出没していることから考えても、あの頃と状況は変わっていないのだろう。
 ザインエルに従っていたのはふたりの天使。うち、以前から京都にかかわってきたのはグラディエルのほうだという。
(あれが川上とかいうシュトラッサーか)
 記録では、特例で京都市内に身を置いていた堕天使クー・シーこと池永真弓を利用したとあった。
 もしこの家に居るのがその堕天使なら、主のグラディエルはまだ何か仕込みをしているとも考えられる。
(もう少しあいつの手の内を探ってみるか)
 ファーフナーが考えるうちに、建物南側のサンルームの外にたどり着く。
 リクライニングベッドらしきものが部屋の内部にあるのが確認できた。


 二階の窓が割れる激しい音に、緊張が走った。
 若杉 英斗(ja4230)が見えない天井の上を見透かすように顔を上げる。
「なんの音だ!? ……二階からか?」
(フィオナさんとファーフナーさんが行っているハズ……何があったんだろう)
「敵の襲撃か?」
 小田切ルビィ(ja0841)はそう言いながらも、即座に自らの考えを否定する。
「……いや、違うな」
「ですね。サーバントならあんな物音はしないはず。人間の武器だと思う」
 英斗は『誰か』が『何か』を攻撃したのだろうと考えたのだ。
「まずいな。川上昇ももうすぐココへやってくる。いや……もう来ている、ということかも」
 ネフラウスの言葉通りなら、川上はかなり手強くなっているようだ。
 かつてここで戦った使徒、米倉や前田クラスかもしれない。
 重体のネフラウスを抱えて脱出するには――。
「戦うのは得策ではないでしょうね」
 夜来野 遥久(ja6843)が眉を寄せたまま、静かに呟く。
 そして怪我をした仲間を集め、治癒術を使った。逃げるにしてもただでは逃げられるはずもないだろう。

 英斗は意を決し、真弓にむかって律儀に頭を下げる。
「真弓さん、ネフラウスの事ありがとうございました。貴女も大仙氏も、必ずまた助けに来ます」
 そう、例え無理をして連れ帰ったとしても、天界の薬がなければ大仙氏は死んでしまうのだ。
 守ることが信条の英斗が、この決断を下した。
 静かな表情の下に、熱い想いを押し込めて。
 月居 愁也(ja6837)にも、それはよくわかっていた。
 戦わずに、極力急いで。
 真弓の言う通り『自分達だけ』脱出するのが得策だと。
「……クソッ!!」
 愁也は思考を断ち切るように頭を振り、歌音 テンペスト(jb5186)の傍に膝をつき傷を完全に癒す。
「小青」
 治療を終え、愁也が呼びかけた。
 小青は表情を変えず、だが明らかに身じろぎする。
 本当は真弓と最期まで共に在りたいのだろうが、絶対連れて帰ると決めている。
 それでも愁也は小さな肩を押さえつけそうになる手を堪えた。
 小青はちゃんと今の状況をわかっているのだ。自分はそれを絶対に信じてやらなければならない。
 だから、せめて。
「真弓さんに言いたいことあるなら今のうちに言っとけ」
 愁也の言葉に促され、使徒は上ずったように口を開いた。
「……クー・シー様。ひとつお伺いしたいことがあります」
「なんですか」
 真弓の青白い顔に優しい微笑みが浮かぶ。
「私は今、仮の主を得ました。それでもまだ、最初の約束は生きていますか」
 小青の真の主は、迷いなく答える。
「ええ、もちろんですよ。お前が覚えている限り」
 小青が泣き出しそうに顔を歪める。
 だが今、その意味を確認する暇はなかった。

 歌音が早口で真弓に尋ねる。
「川上って人、どのぐらいの間隔で来るの?」
「数日から2週間おき程です。私が気付いている限りではですが」
「どういうこと?」
 真弓が首を振る。
「私が知らない間に池永の傍に居ることがあるのです。ここでは透過を防げませんから」
 歌音は物音に耳を澄ます。
「窓が割れる音は西から聞こえた。太陽は西から昇るって何かの歌で学んだよ」
 ――それ、ちょっと違うかもしれない。
 梨香は思ったが、歌音はあくまでも真顔だ。
「西からの希望の光は味方。それに賭けて西へ逃げるの」
 少なくとも窓をたたき割る物音は、人類側のものだろう。
 だから西に居るのがサーバントである可能性は低い。
 その点については全員が頷く。

 水無瀬 文歌(jb7507)はすぐにネフラウスに肩を貸して立ち上がらせた。
 歌音がスレイプニルを召喚し、背中に乗るよう促した。
「ネフたん、しっかりつかまるぴょん」
「折角であるが……貴殿らはすぐに離脱すれば、無事に情報を持ち帰ることができる。私を置いていくのが得策であろう」
「それでは何をしに来たのか分からないですから。大人しく従ってください」
 梨香が苦笑いでネフラウスに手を貸す。
 こんな風に堕天使を助けることなど、数年前までは思いもしなかったと自身の変化を感じたのだ。
 文歌が真弓に顔を向けた。
 どうしても確かめたいことがある。
(薬にはサーバント化に類似した効果を与えるとか、副作用はないの?)
 もしそうなら、本当の意味で生きているとは言えないではないか。
 だがそれをやめろと言うことは、真弓にとって酷かもしれない。
 それでも。
「ひとまずは速やかな離脱を目指しましょう。ただ、その前に――」
 一瞬言葉を切る。
「池永さんの様子を確認させてください。それとお薬の残りがあればいただけませんか。だめなら空瓶だけでもいただきたいのです」
 それがあれば、何か学園で対処ができるかもしれないと考えたのだ。
 真弓が一瞬だけ表情をこわばらせた。
 遥久が穏やかな声で補足した。
「学園で効果について調査したいのです。このまま終われないのならば、生きて下さい。いずれ必ず方法を見つけ出しますので」
「ありがとう。でも私は――」
 真弓は何か言いかけたが、すぐに表情を改めた。
「サンルームの窓からなら外の様子もよくわかるでしょう。こちらへ」
 示しながら歩き出し、付け加えた。
「池永もそちらですから」

 その間、小青は無言だった。
 今にも泣き出しそうな金の瞳に、ルビィは小青の迷いを見る。
「――命なら『二番目』だぜ、小青。大事なのは『何の為に』生きるのかってことだろ」
 ほとんどの人は“命より大切なものは無い”と云う。
 だが。
「たった一つの自分の命、何に懸けるかはアンタ次第だ……」
 ルビィは覚悟を決めろとばかり、自分の銃剣を突きだす。
「何かを守るために戦う意思がまだあるなら、コイツを受け取れ」
 小青が目を見開いてルビィを見上げる。
 ルビィは辛抱強く待った。紅の瞳が、小青に決断を迫る。
(……嫌な予感しかしねえ)
 天界の妙薬。そんな都合のいい物が本当に存在するのか?
 その薬で生きながらえている池永氏はまだ『人』なのか?
 そもそもこの支配領域内で、『人』が生き続けられるのか……?
(爺さんがもし、既に『人』でないなら、いっそ――)
 ルビィは浮かんだ考えを頭から追い出す。
 決めるのは自分ではないのだ。
「命は二番目……」
 小青が言葉を噛みしめるように呟き、顔を伏せた。
「そうかもしれんな。ありがとう、借りておく」
 細い指が銃剣をぐっと握りしめた。その表情を伺い知ることはできない。


 真弓が扉を開き、一同が足早に続く。
 二階からの物音は途絶えており、様子が知れない。
 ルビィは今にも天井を突き破って敵が降りてくるのではないかと、物音に耳を澄ます。
「それにしても敵の動きが速すぎるぜ。……追跡? いや、待伏せか!?」
「どうでしょう。この建物に入る前に一戦交えておりますから、察知されても不思議はないかと」
 遥久が南側の部屋に背を向け、周囲を警戒する。
 隣室も、二階も、まだ確認できていない。どこに敵が潜んでいてもおかしくはないのだ。

 その遥久の目に、ゆっくりと開く扉が目に入る。
 自分達が入ってきた、廊下に面した扉だ。廊下には二階への階段がある。
 ――サーバントは扉を開かない。
 身構える遥久は、そこに立つ人影を知っていた。
「やはり貴方でしたか……川上殿」
 一度見ただけでは顔を忘れてしまいそうなほど、どこにでもいる普通の中年男。
 シュトラッサー・川上昇が薄く笑っている。
「おや奇遇だね、学生さん。お互い元気でまた会えるとは」
「あんた、ほんとしつっこいな! どこまでつき纏うんだよ!」
 いつの間にか愁也も遥久の隣に並び立っている。
「褒め言葉だね。そして君達もしつこいよ」
 川上は軽く肩をすくめる。
「そのしつこさがどういう結果を招くか、分かっているのかな」
 ――おかしい。
 愁也も、遥久も共に感じていた。
 川上がどこか楽しそうな、それでいてどこか憐れむような、憎たらしい眼差しをしているのだ。
(……何かを待っている? サーバントを集めているのか?)
 遥久はまずそれを疑った。
 だがサーバントよりも川上の方が脅威だ。ここでお喋りしている間に、他の仲間は撤退できるかもしれない。
 そう思いつつも、奇妙な感覚はぬぐえない。
 愁也は川上を睨みつけ、意図を探るために会話につきあう。
「決まってんだろ。俺達が最後に勝つんだ」
「分かっていないね。その撃退士の傲慢さが、人類の存続を危うくしているんだよ」
「どういうことですか」
 遥久が油断なく身構えながら尋ねた。

「小耳に挟んだのだけどね、天界の裏切り者や冥魔と手を結ぶのだって? 正気かい? 天使や悪魔が生存に必要なエネルギーの摂取を、永遠に辞められるとでも?」
 川上は既に笑っていなかった。目には攻撃的な気配が宿っている。
「何故、魂を奪う冥魔と共闘してまで我らの主に刃向う? その結果、君臨する存在が変わるだけだろうに。天使は命までは取らない。絶対的な強者に出会ってしまったのだから、天界につくのがまだしもベターな選択だと思わないのか」
 遥久は何か言おうとする愁也の腕を強く押さえる。
「それが人類を裏切った動機ですか」
「裏切ったわけではないね。人類の存続を選んだんだよ」
 川上が鼻を鳴らした。
「いわば君達は、嬉々として天界と冥魔との代理戦争に命を賭けているわけだ。おめでたい話だよ。しかもその結果、我らの主達が勝利すれば、人類を危険だと看做して滅ぼすかもしれんのにな」
 川上は何かにとり憑かれたように言葉を紡ぐ。
「――抵抗できる撃退士がいなければ、人類は緩やかな管理のもとで存続できる。天界が力で勝れば、魂を奪う冥魔は排除できる。だから俺は、シュトラッサーとして、主のために力を尽くす」
「っせえな!! 俺達を家畜扱いする連中に従えるかよ!!」
 愁也が激昂した瞬間だった。

 絹を裂くような悲鳴がサンルームから響く。

 川上に対峙し振り向けない遥久と愁也は、ただ息を呑む。
 その視界の端に、扉を破って乱入してくる天狗の姿があった。


 サンルームに足を踏み入れた一同は、そこに大きなリクライニングベッドが置かれているのを見た。
「あなた。久遠ヶ原の皆さんですよ。……また眠っていらっしゃる?」
 文歌が真弓の後ろから顔を出し、そこに横たわる人物を覗き込んだ。
「……ッ!!」
 声が漏れ出ないよう、文歌は咄嗟に自分の口元を押さえる。
 梨香は顔面蒼白になりながら数歩後じさりした。

 ベッドに横たわるのは、木乃伊としか言いようのないモノだったのだ。

「……爺さん、意識はあんのか?」
 まだ見えていないルビィが顔を出そうとすると、その手に硬い物が押しつけられる。
「ん?」
 先刻小青に預けた、自分の銃剣だった。
「心は受け取った。だがお前の獲物を穢したくない」
 低く呟く小青の目に迷いはなく、手には輝く青竜刀が顕現していた。
「お前……」
 力が戻ったのか。ルビィがそういうより先に、小青は進みでる。
「クー・シー様、本当のことをご覧ください! それが池永ですか!?」
 鋭い声に、真弓がびくりと肩を震わせた。
「本当のこと……? 何を言って……」
 改めてベッドを見た真弓が、悲鳴を響き渡らせる。


「やれやれ。折角の幸せな夢を、破ってしまったか」
 川上が嗤っていた。
「何を……」
 天狗を魔糸で絡め取りながら、愁也が唸る。
「我が主がクー・シー様にかけた暗示が解けたんだよ。……君達にだってわかるだろう? 我々のようなシュトラッサーにでもならない限り、普通の人間がこんなところで生きていけるわけがない」
「池永氏はご存命ではないと? ……いつからですか」
 遥久も別の天狗を引きずり落とした。
「君達が遊びに来たときは、本当に薬で生き延びさせていたんだがね。ご本人が使徒にはなりたくないと言ったんで仕方がない」
 川上はこの時を待っていたのだ。
 思い通りにならない世界を何とかしようと足掻いた結果を否定され、池永氏を憎んだのかもしれない。
 そして池永氏は、自分のせいで堕天させた女天使を解放しようとしたのかもしれない。
 今となっては確認するすべもないことだったが。


 堕天使はベッドの傍に崩れ落ちていた。
 次にどうすべきか、誰も瞬時に判断がつかない。
「小青」
 真弓がゆるゆると顔を上げる。
「先ほどの約束です。お願い」
 その言葉が終わらぬうちに、一陣の風が空を切る。
 おびただしい血飛沫がベッドに飛び散る。
「小青さんッ!!」
 文歌が悲痛な声を上げた。
 小青の剣に貫かれた真弓が仰向けに倒れていく。
「……貴女に拾われた私の、最後の務め。お約束通りに果たしました」
 凍りついたような小青の表情と対照的に、真弓の表情は優しく微笑んでいた。
「どうして……!」
「私を使徒にしたクー・シー様はひとつだけ誓約するように仰ったのだ。自分が自分でなくなった時は、私の手で葬るようにと。それが天使をも傷つける力を与える条件だと……」
 小青の手にしていた剣がすっと消える。
「だからこの力がなくなればいいと思った。でもクー・シー様は……命を長らえることよりも、全てを終わりにすることを望まれたのだ。この方の望みは私の望みだ……」

 部屋を驚きと戸惑いが支配する。

 そのとき、外から窓を叩き割る存在があった。
 英斗が我にかえって声を上げる。
「よかった、無事だったんですね!」
「ぐずぐずするな。外にも敵がいる。すぐに囲まれるぞ」
 二階から飛び降り、建物を回り込んできたフィオナだった。
 ファーフナーも外を一通り見まわしてから、部屋に入ってくる。
「お前達は救護対象とともに離脱しろ。すぐに追いつく」
 そういうと、すぐにフィオナと共に元の応接室へと駆けだした。

 英斗はルビィと視線を合わせた。
 ルビィは苦い物を噛み潰したような表情だったが、すぐに頷く。
「下手すりゃ退路を断たれる。――たぶん真弓は小青を生き延びさせたかったんだ。ここでくたばらせるわけにはいかねえ」
 命は二番目。
 時に、それよりも大事なものがある。
 図らずも自分が小青の背中を押してしまったと、ルビィは苦々しく思う。
 だがそれすらも、真弓の望みだったのだ。
「――最期の望みぐらいはかなえてやろうぜ」
 歌音が小青の腕を引っ張る。
「青ちん、行こう」
 硬い表情の小青の肩を正面からしっかり掴み、こつんとおでこをぶつける。
「帰ろう。あたし達といっしょに」
 今はそれしか言えない。だがそれがすべてだ。
「とはいえ、簡単ではないですが」
 英斗が歌音の召喚獣の傍で、光り輝く守護者を呼び出す。
 美しい戦乙女達は英斗を中心とした周囲のものに力を与えた。
 直後、加護を得た一同は窓の外へと飛び出していく。

 そこには新たなサーバントが集まりつつあった。
「今は遊んでやる暇がねぇ。これで我慢してろ!」
 ルビィが発煙手榴弾を建物の南へ向かって投げる。ほんの一瞬でも、自分達の存在を隠してくれるはずだ。
「来ます、火矢ですっ!!」
 梨香が盾を構え、身構える。騎侍の放った蒼炎の矢はわずかに外れた場所に落ちる。
 だがもうすぐ有効射程範囲に迫るだろう。
「ごめん、ネフたん! ちょっと降りて!!」
 歌音がスレイプニルをひっこめ、新たにストレイシオンを呼び出し攻撃に備える。
 文歌はネフラウスと小青に、存在を分かりにくくさせるアウルの絵筆を使う。
「絶対に無事で連れて帰ります。そして生きましょう。力いっぱい!」
 走り出した一行に、増援のサーバントが襲いかかってくる。
 すぐ傍でそのうちの一体が吹き飛んだ。
「大丈夫!? これで全員なの!?」
 三〇前後とおぼしき女が鋭く見渡す。彼女が敵を蹴り飛ばしたらしい。
 英斗はその顔に覚えがあった。残念な記憶とともに、思いだす。
「確か……村田さんですね。フリーランスの」
「やだあ、モモコちゃんって呼んでちょうだい! じゃなかった、離脱するわよ」
「まだ中に四人います、使徒が……」
 梨香がそう言いかけて目を見張った。
 英斗は梨香の視線の先に、またも見知った人物を認める。
「白川先生、やっぱり……」
「君達はこのままあの茂みに居る仲間と離脱するんだ。あとは任せたまえ」
 黒い戦闘服姿の白川は無表情のまま、数人とともに駆けだしていった。
 

 サンルームから応接室に飛び込んだフィオナは赤竜の翼を開き、忍刀・風凪を構えたまま疾風の如く川上に斬りかかる。
「貴様、律儀に階段を下りてきたのか」
「君達は窓からさっさと逃げたのではなかったのか」
 川上は巨大な戦槌を顕現、振り払う。
 その重い一撃をかわし、フィオナは身軽に飛びすさる。
 まるで重さがないように戦槌を構え直し、川上は開いた左手を振った。
 それが合図であったか、川上の背後から新たなサーバントが現れる。
 ファーフナーはフィオナを挟撃しようとする天狗を、ナイトアンセムの霧で包み込んだ。
 そのついでに川上に探りを入れる。
「なぜ俺たちが此処を突き止め、踏み込んだか理由が分かるか? まさか俺たちだけだとは思っていないだろうな」
 実際、閃光弾が撃ち込まれたのだからこれは嘘とは思われないはずだ。
「さてね。俺にはどうでもいいことだ」
 川上がサーバントを盾に、一歩下がる。
「主が俺に命じたのは、人間達の行動を調べることと、クー・シー様の監視。前者は終えたが、後者に失敗した。主は甘い方ではない」
「来ます!」
 遥久が鋭く叫び、盾を構える。腕の動きに覚えがあった。
「最後にお会いできないのは残念だが、今から天界に暇乞いに行くこともできんさ」
 言うが早いか、銀の手甲が輝きを帯びる。
 避けようにも阻止しようにも、川上の指示を受けたサーバント達に阻まれる。
「責任ぐらいは取らねばな」
 雷が真横に走るような猛攻だった。
 撃退士を抑えるサーバントもろとも、川上の放った光に飲み込まれる。
 しかも連続で三度。持てる力を全て使い、川上はここで果てるつもりだった。

 霊気万象で遮断したファーフナーと、守りに秀でた遥久はどうにか凌ぐ。
 だがフィオナと愁也の傷は深い。
 傷こそ深かったが、フィオナの闘志は折れるどころか一層鋭さを増す。
 猛攻の途切れた一瞬に、川上が無防備になった隙を見逃さなかった。
 黄金の鎖が川上をからめ捕る。
「どうした。もう終わりか?」
 血濡れた顔で不敵に笑う。きっといつか倒れる日が来たとしても、笑っているのだろう。
「本当にしつこいな。だから君達は――」
 怒気をはらんだ川上の声。だが振り上げた戦槌が降りる前に、愁也が叫ぶ。
「しつこいさ! 今更何言ってんだよ!!」
 自らの血を振り飛ばしながら、愁也が烈風突を叩きこんだ。愁也の怒りと冥魔の気を帯びた魔盾の刃が、動きを封じられた使徒を貫いた。
 そのまま川上は家具ごと後方に吹き飛んでいく。
 派手な物音が収まったのち、男が起き上がってくることはなかった。

 膝をつき、荒い息を吐く愁也を、遥久が起き上がらせる。
「よくやったな。もう少しだけ頑張れ。離脱する」
 ファーフナーがより傷の深いフィオナに肩を貸した。
「川上は主は天界、と言ったな」
 独り言のように呟く。
 権天使グラディエルは既に、この地に居ない。
 天界にも色々と思惑の違いがあるのかもしれない。
 そう思いながら見上げた先に、新たな影がいくつも現れた。
 膝に力を入れて身構えたファーフナーだったが、すぐに警戒を解く。
「来るのが遅かったな」
「それは申し訳なかった」
 新たな影のひとり、白川がにこりともせず答えた。


 結界の外まで離脱し、振り向く。
 さっきまでいた辺りに、黒い煙が見えていた。
 ――これ以上、誰にも触れさせたくない。
 小青の望みで真弓と池永氏は屋敷ごと荼毘に付されたのだ。
 フィオナはわずかの間、瞑目する。
「終わってみればあっけないものだ。川上とやらは存外、死に場所を探していたのかもしれぬな」
 使徒となって尚、どこまでも人間だった男かもしれない。
 いや、今まで刃を交えた使徒たちは皆、むしろ人間臭すぎるほどに人間だったようにも思う。

 煙を見つめる小青を、歌音は黙ってぎゅっと抱きしめる。
 同じく黙ったままの梨香が、大粒の涙をこぼしていた。
 小青はそれに気づき、不思議そうに尋ねる。
「なぜ大八木が泣くのだ」
「……小青さんのかわりです」
 使徒は涙を流さない。だが心の傷は人間と同じはずだ。
「そうか」
 小青の手を、文歌がそっと握りしめる。澄んだ声が、物悲しくも美しい旋律を歌い始めた。
「綺麗な歌だ。意味はわからないが」
 小青が目を閉じた。
 文歌はせめてもの手向けにと鎮魂歌を歌い続ける。
 泣けない使徒の代わりに、御霊が安らかであるようにと祈りをこめて。

 座り込んだまま耳を傾けていた愁也が、歌が終わるとぼそりとつぶやく。
「小青、今度こそお前は幸せにならなくちゃ」
「幸せ……」
 複雑な表情の小青を見据え、愁也は強い口調で語りかけた。
「お前の幸せは真弓さんの幸せだったんだろ。でもきっと逆もそうだ。だから、おまえが幸せならきっと真弓さんも幸せなんだ」
 きっと真弓にとって、小青は『希望』だったのだ。
 それはいにしえの女神が地上にもたらした、残酷で綺麗な贈り物。
「お前は俺らの仲間だから。……俺はしつこいぜ」
「ああ。それは知ってる」
 小青はぶっきらぼうに言った。
 小さく笑い、愁也はもう一人のしつこい人物を見て肩をすくめた。
「ま、諦めたほうがいいよ。遥久のしつこさは俺以上かも」


 遥久は白川を真正面から見据えていた。
「学園を離れて、川上氏を追っておられたのですか」
「いや。ここで会うまで思い出しもしなかった」
 白川の目は今まで見たこともない程に冷ややかだった。
 感情の宿らない目。もしかしたらこれが『教師』ではない、本来の白川なのかもしれない。
 遥久はその目をやはり静かな瞳で見返す。
「そうでしたか。……では、理由を伺っても?」
 学園を離れた理由を。
 そこで初めて、白川の口元にいつもの少し皮肉な笑みが浮かんだ。
「いいだろう。休講にした分の代わりだ」
 白川は語り始める。

 ――私は旧体制の久遠ヶ原学園の出身だ。
 その頃はわからなかったことだが、自由意思に任せるほうが撃退士の能力は伸びる。
 そこで、生徒会が主体となって方針決定する現在の久遠ヶ原学園の体制になったのは知っているね。
 だから教師の指揮命令などでなく君達の代表である生徒会が全てを決めなければ意味がないし、私は決定事項に意義を唱えるつもりもない。

 ――だが私は、撃退士と一般人との間に深い溝ができることを懸念している。
 撃退士は人類であり続けなければならない。母体から切り離されてはいけないんだ。
 今、人々は、天魔と手を結んだ撃退士をどう見ていると思う?
 実際、全てのディアボロやサーバント達が大人しくなるわけもない。
 それが命令なしで動いているかどうか、一般の人にはわからないだろうね。
 我々教師は、君達の帰る場所を守る予備役のような役割になっている。
 盟約によって学園の安全が当面確保されたなら、我々が待機する必要性も薄らぐだろう――。

「だからひとりの撃退士として行動することにしたんだ。撃退士は人を裏切ったわけではないと、行動で示したいと思ったのだよ」
 遥久だけではなく、おそらくはその場にいた全員に向けて、白川は自分の覚悟を告げたのだろう。
 少なくともファーフナーには、白川の懸念が理解できた。
 人の集団は、簡単に他者を排斥する。そのことを嫌というほど知りつくしてきたのだ。
 だが今のファーフナーは、諦めずに手を差し伸べることの大切さも知っている。
 ふと、ルビィが目に入る。
 じっと考え込んでいる秀麗な横顔には苦悩があった。
 小青のことは辛い記憶になるかもしれない。だがそれすらも乗り越えていく力が、彼にはあるはずだ。
 ファーフナーが、他人をそんなふうに信じられるようになったのだ。
 立場の違いはいつか理解しあえるはずだ。

 遥久が一つ息をついた。
 白川が頑固なのはよく知っている。それならば。
「……白川准教授」
 これまで呼んだことのない呼称で呼びかけ、遥久はやおら撃退士専用の靴底で思い切り白川の足を踏みつけた。
「……何だね?」
「星教授からの依頼です。お受け取りください」
 ぐりぐりぐり。力の入った踏みっぷりだ。
「……成程。あの人らしいな」
 澄ました顔のまま足を踏まれている白川に、遥久は静かに憤っていた。
 無意味に行動する人間ではないと信じている。
 だがそれならそれで、学園の中で本音を何故語らないのか。学園の中で戦おうとしないのか。
 本気で戦うなら、共に闘うこともできるだろうに。
 この男はそれを全部捨ててしまおうというのだ。
「――目的のために何かを捨てるのならそれも宜しいでしょう」
 遥久は静かな笑みを浮かべた。
「ならば私は私で貴方が捨てようとするものを拾います。そして貴方を追いかけますよ。たとえ地の果てまでも、ね」
 ……どうぞ御覚悟を。
 その言葉に白川は小さく笑う。
「そうだな。よく覚えておくよ」
 この聡明な青年はわかっているのだろうか。
 自分がこうして離れていけるのは、彼らに未来を委ねたからだと。
 白川自身の思い出が詰まった久遠ヶ原という場所を、彼らに託したのだと。

 軽く手を挙げ、白川は踵を返した。
 英斗はその背中に声をかける。
「それでも信じてますから! 白川先生とはまたどこかで一緒に戦えると!!」
 というか、いつかまた助けに現れてくれると。
「だって今回も俺の予想通りだった!」
「……そうですね。若杉先輩の言う通りかもしれません」
 梨香が目をこすり、くすくすと笑う。

 戻ってきた親友の顔を見上げ、愁也は言葉を探す。
「……『生きる』って、何だろうね」
「その答えは誰かに与えられるものでなく、誰もが自分で探しだすものだろうな」
 白川も、川上も、池永も、真弓もずっと探し続けていた。
 そして自分達も探し続けるのだ。
 生きている限り、これからもずっと。


<了>


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: 『天』盟約の王・フィオナ・ボールドウィン(ja2611)
   <使徒に対峙し引き下がらず>という理由により『重体』となる
 輝く未来を月夜は渡る・月居 愁也(ja6837)
   <使徒に対峙し引き下がらず>という理由により『重体』となる
面白かった!:7人

戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA