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マスター:樹 シロカ
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/11/28


みんなの思い出



オープニング



 ――それでいいの?

 ――勿論。いい加減お飾りは飽きたのでね。

 ――あっそ。ま、気持ちは分からないでもないわ。こっちも助かるし。でも……

 ――何だ?

 ――なんでもない。それよりもブランクあるんだから、足引っ張らないでよね。



 依頼斡旋所が用意した教室に、とある依頼を受けたメンバーが集まっている。
 アルバイトの大八木 梨香(jz0061) はしばらく迷っていたようだったが、やがて口を開いた。
「小青 (jz0167)さん には真弓さん……というよりもこの場合はクー・シーと呼んだ方がいいでしょうか。ともかく元・主が生きていることは分かっています。ならば、本人確認ができるのではないでしょうか」
 思い切った提案だった。

 小青はもうずいぶん昔に、人間として死のうとしていたところを、地球を調査に訪れていたクー・シーと出会い、使徒として新たな生を与えられた。
 小青にとって、人間としての時間は決して幸せではなかった。
 主と共に天界に暮らした時期こそが至福の時だった。
 主が堕天し取り残された後も、主が天界に戻れば元の幸せを取り戻せると信じていた。
 だが結局、主の幸せが地球にあるならと、後を追ってきたのである。
 小青は強力な使徒であった。かつて多くの学園生も傷つけた。
 学園に身を寄せるようになって、なにか思うところがあったのだろう。今の小青は、武器を取らない。
 その小青を、現地に連れて行こうというのである。

「勿論、その場合は私もご一緒して小青さんを守ります。どうでしょうか」
 梨香は大真面目だった。
 かつては天界を嫌い、堕天使にもどこか距離を置いていたぐらいだったが、経験は人を変える。
 少なくとも小青に関しては、同情心のようなものを持つようになったのかもしれない。
「……と、すみません。勝手に先走ってしまいました。あくまでも参考に、とお考えください」
 梨香は慌てて打ち消すように、自分の前で手を振る。


 陽動部隊の出動要請は了承された。
 後は作戦を詰めるだけだ。
 生還した学園生との電話連絡で、敵の行動パターンもおよそは把握できた。
 サーバントは、今年の初めにザインエルが京都に再登場した際に確認できたもの。
 巫女装束型の人型サーバント、フゲキメイデン。味方の魔法耐性を上昇させ、攻撃力を増加させる支援型。
 それと鳥人間型のガルダヤテングーがチームを組んで、斥候に当たっているらしい。
 斥候に発見され、足止めを喰らうと、じきに厄介なサブラヒハイナイトが駆け付けるという。
「ネフラウスは……」
 救出された学園生が悔しげに続ける。
「ネフラウスはかなり頑強で、まだ元気でした。敵を引きつけて適当にかき回したら、さっさと逃げる筈だったんです。あいつは飛べますし。だから本人も囮を買って出たんだと思うんですが……まさか逃げそこねるなんて……」
 

 京都市の西北寄りにある、とある建物。
 さほど広くはないが、元々は立派な庭のある別荘らしい。
 今は紅葉が見事なことだろう。
 そこに待ちうけているのは敵か、あるいは味方か――今はまだ分からない。

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リプレイ本文


 集合場所にあらわれた梨香、そして不機嫌そうな小青に、月居 愁也(ja6837)は思わず噴き出す。
「ちょ、どうしたんだよそれ……!」
「せめて魔装だけでもと、私の中等部の制服を……」
 梨香が言うには、小青はスカートが嫌だとむくれたらしい。
「えー? 可愛いじゃん! 似合ってる似合ってる」
「世辞は要らん!」
「本当だって!」
「スカートの女の子は正義です。私がそう決めました。ということでよろしくぽん」
 歌音 テンペスト(jb5186)は軽く挨拶しつつ、梨香の手をそっと握る。
「大八木お姉様、泥船に乗ったと思って安心なさって。泥は燃える愛で焼いたセラミック加工ですわ」
「え、あ、はい」

 それぞれ軽く自己紹介をしていくと、小青は一人一人をじっと見据えた。
 癖なのか、疑っているのか。
 小田切ルビィ(ja0841)は気にしない風で、軽く片手をあげた。
「あんたが小青か、ヨロシクな! 爺さんから話は聞いてるぜ」
 彼の(間に何代か挟んだと思われる)爺さんは、以前の依頼で小青と会っている。
「ああ、あのときの」
 小青が目を見張る。纏う雰囲気に何かを見出したようだ。
「小田切さん、これがネフラウスさんです」
「お、サンキュ。……こりゃわかりやすいな」
 梨香が見せた写真には、少し気難しそうな表情の金髪碧眼の青年が写っていた。
 ファーフナー(jb7826)はルビィの手元を覗き込み、しばし思案にふける。
(もしこの男が倒されたわけではなく、生かされているとしたら……)
 単なるサーバントにそんな知恵はないだろう。
 だが行方不明になった場所は、ザインエルという強力な天使の支配下にある。
 そして、部隊が壊滅するほどの敵の存在。
(何かがひっかかるな)
 慎重な男は、それ故今日までを生き抜いてきたのだ。

 愁也は夜来野 遥久(ja6843)、若杉 英斗(ja4230)と目配せを交わし、意を決して小青を呼ぶ。
「先に話しておくことがあるんだ――真弓さんも助けたい。でも今回はネフラウスの救助と、調査が優先なんだ」
 今日ここに連れてきた以上、梨香から事情は伝わっているだろう。
 だが同行する仲間たちの想いを直接伝えたい。
「約束は忘れてないぜ? お前がどう生きたいか定まったら、絶対力を貸す。だから今は、何があっても堪えてほしい。お前に何かあったら真弓さんも悲しむし、俺らだって悲しいんだ」
 英斗も更に付け加える。
「すみません、今回は協力をお願いします、小青さん。もし何かあっても必ず守りますから」
 ――この人が。そっと愁也の肩を押す英斗。
 遥久が小青の前に屈みこみ、視線を合わせた。
「いずれ時は来るはず。ですが」
 一度だけ、労わるように小青の肩を叩く。
「動くのならば、心が定まった時に。今はまだその時ではありません」
 だが。
「――お前達こそ心を決めろ」
 小青は小さく息を吐いた。
「首実験に連れていく、だが勝手に動くな? 道具として私を使うなら下手な同情は捨てろ」
 金の瞳にわずかな揺らぎ。
「――お前たちなりの気遣いだとはわかる。だが私はこれ以上クー・シー様のお立場を悪くするようなことはせぬと決めている。それ故に剣も捨てたのだ。それでもまた裏切ると思うなら、連れて行かねばよい」
 小青はふいと顔をそむけた。
「どの道、今の私は戦えぬがな」
 その言葉に潜むものを探りかねるうちに、刻限が来る。


 人気のない古の都。
(いつかきっと、人の手に取り戻しますね)
 水無瀬 文歌(jb7507)は荒涼としたその光景に、新たに誓う。
 瓦礫の街を駆け抜け、天界ゲート結界の近辺へ。
 陽動部隊が作戦を開始したとの連絡が入った。
 傲然と顔を上げ、フィオナ・ボールドウィン(ja2611)が告げる。まるで散歩にでも行くように。
「では我々も行こうか」
「みなさん、私の傍からあまり離れないでくださいね」
 文歌は小青と梨香を近くに呼び寄せ、抗天魔陣を使う。
(気休めかもしれませんけれど……)
 それでも、やれることはやる。

 過去の調査による地図に従い、結界内を駆ける。
 全員が光纏の輝きを消し、無言のまま、ひたすら目的地を目指す。
 遮蔽物のない場所では歌音がヒリュウを先行させた。
(がんばって!)
 祈るように送り出す歌音に、ヒリュウは『わかっている』というようにくるりと宙を舞い、音もなく飛んでゆく。
 歌音はヒリュウの目に映る光景に従い、仲間を導いた。
 敵の斥候の影に皆を制止し、通り過ぎれば来いと合図する。
 それを確認し、少し離れた場所で英斗がまた合図を送り、10人の集団は静かに進んだ。
 陽動部隊のおかげもあってか道中をうまくやり過ごし、建物の敷地を囲む雑木林に身をひそめる。

 文歌が双眼鏡で建物を観察しながら、ふとつぶやいた。
「ここは誰のお家なんでしょう?」
「持ち主の方は関東在住で、京都が不安定になってからは全く使っておらず……」
 梨香の囁き声を文歌の声が制した。
「待って。あの二階の窓……カーテンが揺れた?」
 一斉に視線が集まるが、暗い内部はよくわからない。
「とにかく急ごうか。ここから先はこれまでのようにはいかぬからな」
 フィオナの口調はどこか楽しそうだが、実際目の当たりにすると危険は明らかだった。
 雑木林と建物の間は荒れた日本庭園、樹木や奇岩は低く、身を隠すのが難しい。
 距離はおよそ20m。全員が一息に走り抜けるわけにいかない距離だ。
 敵が空から監視しているなら、撃退士の集団を「見つけにくい」はずもない。

「先に行く」
 フィオナが飛び出した。俊足で庭を横切り建物へ。
 物質透過で扉をすり抜け、内側から鍵を開けて扉を開いた。
 だが。
「面倒な……! だがそう上手くいっては面白くもないか」
 空にあった小さな黒点がみるみる接近してくる。カルダヤテングーだった。


 フィオナが雪白に輝く刃を空に向ける。
「我が撃つ間に建物へ逃げ込むがよい」
 いうなり、目も眩むような彗星が黒い影へと。
 真・円卓の武威。その威力に弾かれ、天狗は宙でバランスを崩した。
 愁也が敵を見据えながら、強く小青を押し出す。
「早く!!」
 梨香は銀色の大盾を具現化、小青を隠すように構えた。
「水無瀬さん、お願いします」
「こっちです、離れずについてきてくださいね」
 文歌ひとりならば、すぐに建物に逃げ込める距離だ。だが全員の走るスピードは一定ではなかった。
 それでも味方が攻撃を仕掛けている間なら、敵の意識を多少は逸らせるかもしれない。
「一気に走りぬけて!」
 歌音がストレイシオンを呼び出した。青い燐光の守りが皆を包み込む。防御フィールドによる守りに加え、目立つ存在で小青たちへ敵の意識が向くことを避けようというのだ。
「女の子はあたしが守る……! 男は自分でなんとかするといいぴょん」
 当然、目立つということは、攻撃を受けるということでもある。
 召喚獣が傷つけば、当然召喚者もただでは済まない。それも承知の上で、歌音は身構える。
「すみません、歌音さん! でも無理はしないでくださいね」
 梨香が小青の腕を強く引いた。
 一団となってフィオナのいる建物へと駆けだす。

 フィオナの攻撃で鈍くなった天狗だったが、傷は浅い。魔法攻撃から身を守る強力なフィールドが展開されているのだ。
 天狗が甲高い鳴き声のような音を立てる。
 それを待ち構えていたように、髪を振り乱した巫女姿のサーバントが2体、雑木林を抜けて駆けてきた。
 フゲキメイデンである。お祓い棒をザッとふるうと、不思議な光が天狗に注がれる。
「ひとまず、巫女は後で構わないでしょう」
 遥久が天狗を見据える。巫女の応援の効果も侮れないが、空を飛ぶ敵は厄介だ。
 狙いを定め、星の鎖で絡め取る。天狗は引きずられる様にして地面に落ち、手足と翼をばたつかせた。
 更に向かってくる1体を狙う遥久に、天狗が団扇をふるう。
 そこに英斗が回り込み、踏みとどまる。足が地面にめり込むかのような風圧。
 だが不動の効果で天狗の得意技ノックバックを防ぎ、英斗はさらに接敵。
 ふりそそぐ聖なる剣が敵を貫き、とどめを刺した。
「きれいな女の人だったのに。あんな怖い顔にならなければよかったのにな」
 英斗は巫女のほうを見ないようにして首を振った。

 別の天狗をファーフナーが引きずり落とす。
 天狗は地面で葉団扇を打ち払った。轟音とともに、塊となった空気がファーフナーにぶつかる。
 芝生の上に、ファーフナーの引きずられた跡が黒々とあらわになる。が、踏みとどまったファーフナーは、一息に距離を縮め、クロスカウンターのように腕を突きだした。
 その手のひらから迸る雷光。コレダーの電流に、天狗の身体がビクビクと激しく震えた。
「これで3体。他はどこだ」
 吸魂符で傷を癒しながら、ファーフナーは空を見渡した。
 2体、建物の屋根を越えようとする影が見える。
「――速攻でキメる!」
 屋根に伏せていたルビィが身体を起こし、身構えた。
 真正面から封砲をたたきつけ、すぐに風の翼で舞い上がる。
 2体の天狗はルビィを避けるように展開、1体がルビィめがけて団扇を振る間に、別の1体を切り伏せる。
 飛び散る鮮血は敵味方が入り混じり、ルビィは流れる血にまみれながらも不敵な笑みを浮かべ、体勢を立て直す。
 その目の前で、残る1体が吹き飛んだ。
「余計な世話かも知れんが、今回は急ぐのでな。悪く思うな」
 フィオナが面白そうにルビィを見上げていた。
「ハッ、獲物はまだ余ってるぜ」
 別方向へと飛び去ろうとする1体を、ルビィはさらに追う。

 その間に、建物の陰に飛び込もうとした小青を囲む一団は、2体の巫女の襲撃を受けていた。
 打ちかかる光剣は歌音のストレイシオンが受け止めてくれたが、こちらは固まっていて動きがとりにくい。
 愁也は文歌と頷きあい、とにかく小青を守ることを優先する。
「俺達に構わずとにかく中へ!」
 愁也が突進、薙ぎ払いをかける。文歌が因陀羅の矢で、さらに追い打ちをかけた。

「どうにか全部か?」
 愁也が倒れた敵の数を確認し、息を整える。
 駆け寄った遥久は愁也の腕を引っ張るようにして立たせ、建物へ。
「すぐに建物の中へ、急いで」
 一団は討ち取ったが、別の斥候が回ってくるかもしれない。
 全員が建物の中へ駆け込んだ。


 遥久がすぐに異変に気づく。
「小青殿?」
「……すみません、私が付いていながら」
「大した傷ではない」
 梨香の言葉を小青が鋭く遮る。その足が赤く染まっていた。
「あーあ、歩きにくいんじゃしょうがないだろ」
 愁也がライトヒールで傷を治してやった。遥久の治癒術は、まだとっておきたかったのだ。
「お前も怪我しているではないか」
「あーこれは大したことない、大丈夫大丈夫」
 小青は治った足を確かめるようにして、頭を下げた。
「すまんな。助かった」
「おっ素直じゃん?」
「……これで分かっただろう。力が落ちているのだ」
「え?」
 問い直す言葉は、外から響く鋭い音に遮られた。
「信号弾だ」
 陽動班が引き揚げる合図。英斗の言葉に緊張がこもっていた。
「急がないと。向こうもうまく撤退できるといいんだけど」

 全員が屋敷内をそろそろと進む。
(ネフラウスさんの救出か、最低でも何か情報を手に入れておきたい所ですね)
 あたりを注意深く見まわす文歌。
 少なくとも見た目は、普通の別荘だった。
 遥久が生命探知で内部を探ると、いくつかの反応。
 結界内とはいえ、ネズミなどはまだ元気だ。複数回当てることで、およその動きが分かる。
「二階、一階奥、それぞれに小動物ではなさそうな反応が複数見られますね」
「身を隠すにゃ持ってこいの建物だが……。小青、見覚えはあるか?」
「いいや。来るのは初めてだ」
「どう? 小青さん。クー・シーさんの気配はある?」
 英斗が囁くと、それにも小青は首を振る。
「わからない。……夜来野のような、何処に居るとわかるような類の感覚ではないのだ」
 確かに、そういう使い方ができるなら、これまでにも探しようがあっただろう。

 フィオナが静かに扉を開けた。
「よく使う部屋と使わぬ部屋があるようだな」
 埃の積もり方で一目瞭然だ。そして階段を見据える。
「階段はあまり使っておらん」
「でも、最近の足跡がありますね。これは男ではないでしょうか」
 歌音は階段に顔をくっつけんばかりに観察している。
「面白い。鬼が出るか蛇が出るか……といったところか?」
 何事かを期待するような色が、フィオナの細めた眼に浮かぶ。
「俺も行こう」
 ファーフナーとフィオナは、静かに階段を上がっていった。

「この部屋の中、おそらく一名」
 動かない生命反応。
 動かないということは、重傷者かもしれない。一縷の望みをかけ、遥久は意を決して扉を開いた。
 はたして、そこに居たのは。
「ネフラウス殿!」
 安堵のこもる囁き声に、ソファにもたれかかる人影が身じろぎした。
「どうして、ここが……」
 蒼白な顔で目を見張るのは、確かに学園の堕天使、ネフラウスだった。
 ほっとした空気が流れる。愁也が急いで駆け寄った。
「助けに来たんだ。ここには誰がいる? 何があったんだ?」
「ここに居るのが全員か?」
 ネフラウスが辛そうに身を起こした。
「怪我を?」
 遥久がさっと全身を一瞥する。
「ああ、だが傷は癒えているのだ。体力が回復しない。それよりも――」
「よくこんなところまで……!」
 突然、女性の声が響いた。

 ルビィは身構え、ネフラウスとの間に身体を滑り込ませた。歌音はそっとヒリュウを呼び出す。
「クー・シー様!」
 小青の声はほとんど悲鳴のようだった。
「元気そうですね。こんなところまで来て、大丈夫なのですか?」
 優しく、悲しげな眼差し。確かに池永真弓だった。
 英斗と愁也は、小青の腕を掴もうとする衝動をぐっとこらえる。――小青が耐えているのだ。
「池永氏もご一緒なんですか?」
 遥久が探るように訊くと、真弓が頷いた。
 ルビィは今まで聞いてきた話を、忙しく頭で整理する。
(余命幾許もない老人が生きてるのかよ。それで、弱みを握られている? 若しくは洗脳……?)
 口には出さないが、およそ皆が同じようなことを疑っていた。
 この結界内で生きている人間。それはもう人間ではない何かではないか。
 疑惑が渦を巻く中、真弓は表情を険しくする。
「ここに全員揃っていらっしゃいますか? でしたらすぐに逃げてください。ネフラウスさんも連れて」
 切羽詰まった口調。洗脳や罠とは思えない。
 その理由は、2階にあった。

 フィオナが扉を開く。
 足跡が続いていた部屋、中には何かの気配。
 ファーフナーは堂々と身をさらすフィオナと対照的に、不測の事態に備えて扉の陰に身を潜ませた。
 仄暗い廊下に、室内からの光がさす。
 その光を受けて、フィオナの表情に愉悦混じりの微笑が浮かぶ。
「貴様は鬼か、それとも蛇か?」


 窓際に後ろ手をついて、中年男が微笑んでいた。

「久遠ヶ原の学生さんかな? 遠い処までようこそ」


<続>


依頼結果