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みんなの思い出
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オープニング
ストーブの中で赤い火が燃えている。
朝の生徒会室、上に置かれた黄金色のレトロなヤカンから、白い湯気があがっていた。蓋は開けられているので、ぴーぴーと音がなる事はない。室内の保湿の為に置かれているそうだが、大鳥南はその効果をあまり実感した事はなかった。
南はそれが本能のように毎朝ヤカンを置いているが、明日は置かないでおこうかと、ふとそんな事を考える。比較すればきっと違いが解かるだろう。
問題はこの部屋を使う他のメンバーが、その実験に同意してくれるかどうかだが、親友は頼めば大体ＹＥＳと言ってくれるので、多分大丈夫だろう――いや、あの会長は結構、拘る所は拘るから、もしかしたらＮＯと答えるかもしれぬ。さて、どちらだろうか。
赤毛の娘がそんな事をつらつらと考えていると、がらがらと音が鳴り響いた。扉が開かれる音。
見やればマフラーを首にまいた黒髪の少女が、生徒会室へと入って来る所だった。
「おはようございます」
久遠ヶ原学園生徒会長こと神楽坂茜は扉を閉めるとにこりと笑って南へと挨拶してきた。自慢の濡烏色の長髪は今日は頭の後ろで結い上げているようだ。
「おはよ、茜ちゃん。なぁ明日、そこのストーブの上のヤカン無しにしてみんか」
「……ヤカンを無しに、ですか？」
黒髪ポニテの少女はかくりと小首を捻った。
「親の仇にヤカンをぶつけられでもしました？」
「なんでそーなるんや」
赤毛の少女は半目で口をへの字にした。思う。表向きは優等生で通ってるらしいが、この娘が言う事は偶におかしい。
「では何故、ヤカンさんを無くしてしまおうなどとお考えに？」
「保湿効果いうの？ あれがホンマもんなのかどうか、比較実験したろうかと思うてなー」
「……湯気がでれば室内の湿度はあがりますから、確実に効果があるのではないかと思いますけど。南ちゃんて偶に変な事言いだしますよね」
茜は狐につままれたような表情で机の上にカバンを置いて椅子に座った。室内でもマフラーを解かないのは、寒がりだからだろう。
「あんたにだけは言われとーないわ。程度や程度。もしかしたら、効果なんて雀の涙で、さっぱり変わらんかもしれへんやん。思い込みちゅーのは、そないなのを確かめへん所から生まれるんやで」
「わざわざ喉を痛めるはめになるかもしれない実証をするよりも、科学の先生に聞けば良いんじゃないでしょうか。きっと御存知かと思うんですが」
「いや、頭で解かるのと身体で解かるんわちゃうで。何事も己の身を以って体験してみるべきや。百聞は一見に如かず言うやん。旅行でも写真で見るのと実際に行くのとや随分ちごうてたりするもんやろ？ それと同じや」
南は主張した。実際にやってみるのが一番良い。そうでなければ感じ取れない事は沢山ある。
「……だから超先行してエジプトに調査隊送ったりしたんですか？」
「ありゃーあたしの管轄とちゃうで」
南は手を振った。誤解である。何処で誰が何をやっているのか、久遠ヶ原は巨大過ぎるので執行部役員でも把握してない事が偶に良くある。
「そいやエジプトといえばやけど、修学旅行の行き先決まったみたいやな」
天魔と戦う事を使命とする久遠ヶ原学園だが、学園という形態である以上、日々の勉学があり、課外活動があり、そして修学旅行というのもあるのだった。
ただし、久遠ヶ原はとても規模が大きい学園なので、行き先は複数設けられており、旅行の参加希望者はその中から一つを選ぶ事となる。
「おぉ、そうなのですか。どちらになりました？」
「ほい」
言って南は書類を渡した。
「ほむ。小笠原諸島、イギリス、埼玉、知床、大分、富山、岡山、台湾ですか。何処も素敵そうですね」
今年は国内だけでなく、海外もまた行き先として設けられているようだ。
南は茜の笑顔を見ながら苦笑すると、
「ま、行きたい所が含まれてなかった人にゃ勘忍してーなって所やけど、何処も皆楽しいからな。行ってきっと損はないで。ここんところドンパチ多かったし、遊べるうちにぱーっと遊ばんと。人生楽しまなアウルの力も伸びんで、あれあんまり厳しく鍛錬一辺倒だと例外を除いて減るっちゅーし」
「旧養成校がそうだったって聞きますねぇ……あ」
茜が何かに気づいたかのように声を洩らし、南は問いかけた。
「どないした？」
「ふと思ったんですけど……先行してまで調査隊送っておいたエジプトがなんで入ってないんでしょう？」
「謎や」
世の中には色々あるらしい。
朝の生徒会室、上に置かれた黄金色のレトロなヤカンから、白い湯気があがっていた。蓋は開けられているので、ぴーぴーと音がなる事はない。室内の保湿の為に置かれているそうだが、大鳥南はその効果をあまり実感した事はなかった。
南はそれが本能のように毎朝ヤカンを置いているが、明日は置かないでおこうかと、ふとそんな事を考える。比較すればきっと違いが解かるだろう。
問題はこの部屋を使う他のメンバーが、その実験に同意してくれるかどうかだが、親友は頼めば大体ＹＥＳと言ってくれるので、多分大丈夫だろう――いや、あの会長は結構、拘る所は拘るから、もしかしたらＮＯと答えるかもしれぬ。さて、どちらだろうか。
赤毛の娘がそんな事をつらつらと考えていると、がらがらと音が鳴り響いた。扉が開かれる音。
見やればマフラーを首にまいた黒髪の少女が、生徒会室へと入って来る所だった。
「おはようございます」
久遠ヶ原学園生徒会長こと神楽坂茜は扉を閉めるとにこりと笑って南へと挨拶してきた。自慢の濡烏色の長髪は今日は頭の後ろで結い上げているようだ。
「おはよ、茜ちゃん。なぁ明日、そこのストーブの上のヤカン無しにしてみんか」
「……ヤカンを無しに、ですか？」
黒髪ポニテの少女はかくりと小首を捻った。
「親の仇にヤカンをぶつけられでもしました？」
「なんでそーなるんや」
赤毛の少女は半目で口をへの字にした。思う。表向きは優等生で通ってるらしいが、この娘が言う事は偶におかしい。
「では何故、ヤカンさんを無くしてしまおうなどとお考えに？」
「保湿効果いうの？ あれがホンマもんなのかどうか、比較実験したろうかと思うてなー」
「……湯気がでれば室内の湿度はあがりますから、確実に効果があるのではないかと思いますけど。南ちゃんて偶に変な事言いだしますよね」
茜は狐につままれたような表情で机の上にカバンを置いて椅子に座った。室内でもマフラーを解かないのは、寒がりだからだろう。
「あんたにだけは言われとーないわ。程度や程度。もしかしたら、効果なんて雀の涙で、さっぱり変わらんかもしれへんやん。思い込みちゅーのは、そないなのを確かめへん所から生まれるんやで」
「わざわざ喉を痛めるはめになるかもしれない実証をするよりも、科学の先生に聞けば良いんじゃないでしょうか。きっと御存知かと思うんですが」
「いや、頭で解かるのと身体で解かるんわちゃうで。何事も己の身を以って体験してみるべきや。百聞は一見に如かず言うやん。旅行でも写真で見るのと実際に行くのとや随分ちごうてたりするもんやろ？ それと同じや」
南は主張した。実際にやってみるのが一番良い。そうでなければ感じ取れない事は沢山ある。
「……だから超先行してエジプトに調査隊送ったりしたんですか？」
「ありゃーあたしの管轄とちゃうで」
南は手を振った。誤解である。何処で誰が何をやっているのか、久遠ヶ原は巨大過ぎるので執行部役員でも把握してない事が偶に良くある。
「そいやエジプトといえばやけど、修学旅行の行き先決まったみたいやな」
天魔と戦う事を使命とする久遠ヶ原学園だが、学園という形態である以上、日々の勉学があり、課外活動があり、そして修学旅行というのもあるのだった。
ただし、久遠ヶ原はとても規模が大きい学園なので、行き先は複数設けられており、旅行の参加希望者はその中から一つを選ぶ事となる。
「おぉ、そうなのですか。どちらになりました？」
「ほい」
言って南は書類を渡した。
「ほむ。小笠原諸島、イギリス、埼玉、知床、大分、富山、岡山、台湾ですか。何処も素敵そうですね」
今年は国内だけでなく、海外もまた行き先として設けられているようだ。
南は茜の笑顔を見ながら苦笑すると、
「ま、行きたい所が含まれてなかった人にゃ勘忍してーなって所やけど、何処も皆楽しいからな。行ってきっと損はないで。ここんところドンパチ多かったし、遊べるうちにぱーっと遊ばんと。人生楽しまなアウルの力も伸びんで、あれあんまり厳しく鍛錬一辺倒だと例外を除いて減るっちゅーし」
「旧養成校がそうだったって聞きますねぇ……あ」
茜が何かに気づいたかのように声を洩らし、南は問いかけた。
「どないした？」
「ふと思ったんですけど……先行してまで調査隊送っておいたエジプトがなんで入ってないんでしょう？」
「謎や」
世の中には色々あるらしい。
リプレイ本文
550名を超えるたくさんのご参加、まことにありがとうございました。
リプレイは特設ページにてご閲覧ください。
http://www.wtrpg9.com/event/event_travel/index.html
尚、当リプレイへの人気投票投票はお控えください。
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依頼結果
| 依頼成功度：普通 |
| MVP： − |
| 重体： − |
| 面白かった！：18人 |
