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マスター:丸山 徹
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:7人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/18


みんなの思い出



オープニング

 その電車は、T駅の5番線に現れる。
 発車時刻はAM5:55。
 車内は真っ暗で何も見えない、行き先も書いていない。そもそもドアが開かないから、回送電車に見える。
 けれども乗車を望む者がいれば、そのうち一つのドアが開く。
 そして乗り込んだ者を、連れて行ってくれる。
 行き先は様々だ、「黄泉の世界」「夢の国」「楽園」……
 とりあえず、「ここではないどこか」へ連れて行くというお決まりの終わり方。
 
「知ってる人もいるだろうけど」
 放課後の教室の片隅で、生徒同士が、ちょっと不思議な噂を聞いたとお喋りしている……ように見える。
 けれど君たちがしているのはただのお喋りではなく、依頼、任務のお話だ。
 話を持ち込んだのは生徒の一人。
 彼は学園を通して、この件を正規の依頼とした。
「怪談や都市伝説の類と思われていたものが、現実だった。タネを明かせば天魔の仕業ってわけ」
 実際に行方不明者が出たので、多方面から調査され、天魔の仕業と判明した。
 天魔が造った奇妙な装置。古びた車両をツギハギして、この世の隙間を駆け巡る、電車を模した鉄の塊。
 説明する彼は、「がっかり」という顔を隠しもしなかった。
 君たちも、何となく彼の気持ちがわかるだろう。
 ミステリアスな幽霊電車も、こうなってしまえばただの敵、ただの任務だ。
「ゲートの一部、いや、特殊なゲートそのものとも言える。ここでエネルギーを吸い取っているんだ」
 乗り込んだ客はいわばエサだ。感情、魂、生命エネルギー……生かさず殺さず吸い取られる。
「環状線みたく、様々なゲートを巡っているのかもしれない。時空の歪みを経由してエネルギーを供給し、一日に一回、AM5:55に姿を現して、『乗客(エサ)』を補充する」
 降りる者はいないが、乗車を望む者がいる限り、電車が止まることはない。
 なかなか効率的かもしれない、天魔も色々考えるものだ。
「いろんな人が乗り込んでいるだろうね、最近の行方不明者全てというわけではなかろうが、それでも老若男女を問わないだろう」
 望む者がいれば、電車はドアを開く。
 つまり、望む者がいるのだ。
 今の居場所に疑問を感じている人など珍しくもないだろう。学生やサラリーマンどころか、中には撃退士や、それこそ久遠ヶ原学園の生徒がいたっておかしくはない。君たちの知り合いにも、急に帰ってこなくなった学友がいるかもしれない。
「ゲートと同じ原理なら、コアを壊せば元の場所へ戻れるはずだ」
 特殊な構造だから通常のゲートより小規模だろう。普通のゲートは、それ自体が動いたりはしない。
 コアは基本的にゲートの奥にあるものだが、列車を摸しているならそれに相応しい場所にあるに違いない。
 そしてゲートなら、侵入者を排除する仕掛けや障害があるものだ。
「どんな敵が現れるかはわからないが、構造からしてあまり巨大な相手はいないと思う。人間くらいの大きさじゃないかな」
 武器によっては狭くて戦いづらいかもしれない。もっとも、それは相手も同じ事。
 じゃあよろしく、と彼は資料を差し出し、ため息をついた。
「ああ、オレも乗ってみたかったな。どんな景色なんだろ、地下鉄みたく真っ暗かな? ぶっ壊しちゃうのもったいないけど中の人は助けなきゃいけないし」
 どうやら鉄道好きらしい。だからこそ資料作成もできたのだろうし、この案件に興味を持ったのだろうが。
「電車の旅は好きだけど、目的地ないんじゃなぁ」
 自分に言い聞かせ、彼は未練を断ち切ったようだ。
 フッと皮肉に笑う。
「遅刻はしないように、この国は時刻表通りに電車が来るよ。前の夜から駅とかに泊まっても良いから」
 朝の5時過ぎは、まあ普通の人が電車に乗る時間ではない。
 無人のホームも良いもんだよと、彼は笑う。
「あとは、ちゃんと帰ってくるようにね」


リプレイ本文

●出発侵攻
 夜と朝の間の時間。
 誰もいないプラットホームを端から端へ、楽しそうに歩いている黒髪の少女が一人。
 三善 千種(jb0872)だ。
「〜♪」
 歌を口ずさみ、時折ステップを踏んだり、ターンを決める。
 見回りだ。学園生以外の利用者がいたら丁重にお引留めするため。
 同じく月夜見 雛姫(ja5241)も、更に早くから駅構内を見回っていた。
 強硬手段に訴えてでも乗車はさせないというやや強張った気持ちで……だから思わぬ出会いに、足を止めてしまった。
「あ……」
「あ、おはようございまーす!」
 明るく挨拶する千種。
「おはようございますっ……」
 雛姫もぴょこんと頭を下げる。心が、中途半端に揺れた。
 任務が始まれば自然と『戦士』へ切り替わる雛姫だが、こういう状況は少し戸惑う。
 けれど。
「こっちは異常なしです!」
「良かったです」
 駅員のように敬礼する千種に、雛姫も笑った。
 そこに、静かな声がかかる。
「おはようございます」
 T駅の受け入れ態勢を確認してきた彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)だった。
 傍目には対照的な三人だが、意識している部分は似ている。案外、気が合うのかもしれなかった。

 待ち合わせ場所のホームへ続く階段で、長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)は声をかけられた。
「Hi lady!」
 犬乃 さんぽ(ja1272)が手を振っている。ウキウキと楽しそうだ。
 自然と、みずほも笑顔になった。
「Good morning」
 任務を忘れたわけではない、内容を把握しているからこそ、楽しいと感じる部分もある。
「鉄道のホームから不思議な世界に行くといえば、そんな作品がありましたわね」
「うん! ボクあれ好き!」
 二人は明るくホームへ向かう。
 そんな良い物ではないかもしれない。それでも重苦しく歩くより、ずっと良い。

 全員集結。
 約一名を除き。
「……」
 皆の見つめる先には、寝袋。
「……おはよう」
 七種 戒(ja1267)が出てきた。
 カタリナ(ja5119)がため息をつく。
「おはようございます、とっても早いですね」
「だろ? 文句なし一番乗り……うん、ごめん、いや、ちょっと起きれる自信がだな……」
 言いながら這い出てくる。
 どうにか全員集合。
 これから何処かへ出かけるような、朝の一幕。
 しかし目的地は。
 ガタン、ゴトン……ホームに入ってくる、異様な電車。
「わぁ、ほんとにツギハギ列車だ!」
 目を輝かせるさんぽ。
 一見すると貨物列車のように、いろんな車両を牽引していると思うかもしれない。
 だが連なっている車両が異様だった。まさしくツギハギだ。
(貨物車と寝台車を確認……)
 雛姫の表情が消えてゆく。情報にあった通り、連結部分がおかしい、他にも色々。
 ……電車が止まる。
 開いた扉は一つだけ。
 前から5両目の、一番後方のドアだ。
 一人、また一人と、中途半端な位置から車内へ踏み込んでゆく。

 そこには、見慣れた吊革と、壁際のロングシート。

 内部は意外なほど普通の通勤車両だった。
「シンプルですね〜」
 額に手をかざし、車内をぐるりと見渡す千種。
「問題は動き出してからかな」
 さっさと優先席に座りながら、戒は通信機器を弄っている。
 各々が装備やスキルを確かめる中、ベルの音もなくドアが閉まった。
 ゆっくりと揺れ動く列車。
 連結扉の向こう側、後部車両はクロスシートが並ぶ旅客車両。
 そこには乗客の姿が……
 次の瞬間、前後の扉が同時に開いた。
「おでましか」
「Go!」
 後部車両から現れたマネキンめいたサーバントを戒のワイヤーが絡めとり、前方の敵にはさんぽの影手裏剣が飛ぶ。
 なし崩しに戦闘が始まったが、撃退士たちに油断はない。
 銃弾、刃、身につけた技が所狭しと閃いた。
 最後の一体が片付くと、ライフルのスコープで前後を確認した雛姫が告げる。
「後方、増援を確認。前方は今のところ大丈夫です」
 一行は行動を開始した。
 後方のドア側で増援を食い止め、残りは前方へ侵攻。
 と、我先にとヨーヨーを構えたさんぽが楽しそうに言った。
「よーし、運転席のボスにナイフ16発当てて、最終面にワープだ!」
「影手裏剣16発でもいけますかね」
 メガネを光らせて呟く彩、本気だろうか。
「挑戦しようよ! We are the CHALLENGER!」
 忍者たちが先陣を切って駆け出す。
 前方組はすぐに続いた。釣られたわけではなく、後方の負担を減らすため、時間との勝負だ。
 いざ、出発侵攻。

 
●異界の車窓から
 連結扉から首を出したマネキンに、戒の操る刃糸が絡みつく。
 そいつは苦し紛れに火の玉を放ったが、あっさりとカタリナが防いだ。
 次弾を放つ暇を与えず、首を落とす。
 今ので五体目だ。
 後方車両の座席にはずらりと乗客がいた。
 全員が眠っているかのように動かない。じっと窓の外を見ている者もいるが、呼吸しているのかも怪しいほど静かだ。
 その中から不意に立ち上がる者がいて……それがマネキンだった。
 乗客の数は減っていない。
 座席のどこからか、マネキンが立ち上がるのだ。
「侮れんな」
 深海の色をした糸を弄び、戒が言う。
 頷くカタリナに、戒は続けた。
「あのゲーム、すげー古いのに……半端ないな、ニンジャの情報網」
「……」
 冷たく睨むカタリナに、戒はわざとらしく扉を示した。
「二体、来る」
「わかってます」
 連結扉を抜けられるのは、無理をしても二体まで。
 手をかざす戒を視線で制して、カタリナは大きく踏み込んだ。
 全身の力で、盾を構えて体当り。
 一体が吹き飛び、後続を巻き込んで転倒した。
 転ぶ直前、片方の首に糸が巻き付き、綺麗に跳ね飛ばす。打ち合わせていたように精密な動作。
「久しぶりだな」
 顔も見ないで戒が言った。
「久しぶりですね」
 振り返らずにカタリナが言った。
 紺碧の糸が舞う。カタリナの耳元をかすめ、立ち上がりかけた奴にとどめを刺す。
 久しぶりに……粋な列車の旅になりそうだった。

 前方へ向かった一行は、コンパートメントの寝台車に到着した。
 狭い廊下の右手側に、延々と闇を映す窓。
 左側には等間隔で個室用のドアが並んでいる。
「調べますか?」
 訊ねつつ、雛姫はライフルを拳銃に持ちかえる。
「ん〜、後回しでいいんじゃないかな?」
 雛姫にというより全体に向けて、さんぽが言った。
 と同時に、左手のドアが一斉に開いた。
「先に片付けて欲しいようですわね」
「ご要望に応えましょう」
 みずほに返した彩の足元で、青い輝きが静かに起動する。
 敵は多勢だが、この地形は人数差を無意味にする。
 みずほを先頭にした『四人』にもそれは同じ事だが、一つ大きな違いがあった。
「行け、ヨーヨー達!」
 さんぽが先手を取った。
 背後から急襲、敵の二体を粉砕する。
「I'll let you do as you want(キミらの好きにはさせないよ)」
 その言葉に動揺したかはともかく、敵の動きは完璧に崩れた。
 気配を殺して先行していたさんぽは、すでに車両の前方部へ到達していたのだ。
 撃退士たちは挟撃に成功した。
「Boot up」
 床を蹴った彩は『側面』に着地すると、螺旋を描いて天井を通り、敵の頭上を走り抜けた。
 途中、闇色の雨を降らして敵陣を崩し、さんぽの隣へ着地する。
 雛姫の両手が無数の弾丸を放ち、千種が炸裂符を発動した。
 敵は前進後退もままならない。手近な二名に襲いかかるが、忍者たちは軽々と攻撃を躱す。二人は特殊抵抗力も高い。
 とどめに、陸上競技のように身を屈めていたみずほが、頭上を通り過ぎた射撃を追ってスタートを切った。
 後はショータイムだった。
 まずは先頭が鉄拳の十字架を刻まれ、続いて右の壁、左のドア、そして天井に、次々と叩きつけられていく。
 無論、逆側からの攻撃や後衛からの援護もある、だとしてもみずほの進撃は破滅的で、美しかった。
(もっと……もっと前へ……)
 瞳を輝かせて、みずほは突き進む。
 窓の外には闇が流れている。
 

●線路は続かない 
 食堂車の障害物は、撃退士に味方した。
 雛姫と千種がテーブル越しに攻撃を浴びせ、さんぽと彩が撹乱した。
 慎重にいけば無傷で突破できたかもしれない。
 だが時間はかけられなかった……いや、はたして、その時みずほにそんな意識があったかどうか。
「Go To Hell!」
 椅子ごと、テーブルごと、敵が吹き飛ぶ。
 次の目標へ、滑るようなフットワーク。
 『蝶のように舞い〜』という高名な拳闘家の言葉があるが、蝶が羽ばたくたび、敵が砕け散った。
 動きは止まらない。
「ま、待って! まだ…!」
 さんぽが声を上げたが、遅かった。
 彩も気づいていたが、距離が遠かった。
 みずほは、次のドアを開けていた。
 ふらりと現れたマネキンが抱擁を望むが、みずほは軽々といなして、無情な一撃を叩き込む。
 だが三体までを殴り倒したところで、捕まった。
 目を閉じて口を開けた、絶望的な表情のマネキンだ。
 みずほの五感を冷たい不快感が覆う。
「ナンデ」
 それは、疑問ではなく、吐き捨てられた愚痴。
「何ガ悪イノ」
 とるに足らぬ嫉み。
「モウイイヤ」
 諦観。
「どうして私だけなんでこんなに頑張ってるのにあんなにしてあげたのにあいつばっかりどうして自分は」
 大きな大きな無力感。
 どこまでも空っぽな心の声。
 だが、今のみずほにはそれに足を止めないだけの勢いがあった。
 ……勢いが。
 それは、強さではなく。
 正しさでもない。
 ゴキ、バキ、メキ、と、音ばかりが響いた。
 言葉なんていらない。
 弱い者など知ったことか。
 私は強い。
 私は努力をしてきた。
 私は……

 ぱん。

「……」
 蝶が、羽ばたきを止めた。
 みずほの頬を張った姿勢のまま、さんぽが言う。
「大丈夫?」
 ……それは、誰に訊ねたのだろう。
 少なくとも彩はそれに応えた。
「どうも」
 落ちた眼鏡をかけ直す彩を見て、みずほは、ようやく何が起きたかを悟った。
「……あ」
 青ざめる。
 ああ。
 両手を見下ろす。
 わたしは。
 私はなにを。
 なにを思って……
「ミズホ」
 声がした。
 はっと顔を上げると、彩の顔がある。思ったより近くて、みずほは身を引きそうになった。
「あ、あの」
「助かりました」
「……?」
 言葉を失うみずほに、彩はかまわず続ける。
「この調子で、よろしくお願いします」
「え?」 
 状況がわからないみずほに、雛姫が近づく。
「後方車両から増援の要請です」
「なので、私と彩さんで行ってきます!」
 端的な雛姫の説明に、千種が笑顔で付け加える。
「……」
 何も言えずにいるみずほに、彩は眼鏡を外しながら、言った。
「Everybody never necessarily strong like you」
 皆に背を向け、脚部のギミックを起動。
「But we need your heart of CHALLENGER now」
 そして、彩はスタートを切った。
「わ、待ってくださいよ〜!」
 千種も慌てたように続くが、充分に余裕のあるスピードだった。
 二人を見送って、さんぽはくるりと振り返る。
「さ、行こう!」
「はい」
 雛姫はコキングレバーを引きながら応える。
 残すは一車両。
「……」
 みずほは、走り去った仲間の背中から、今いる仲間へと視線を移す。
 さんぽは笑顔でその手を引き、雛姫は黙ってその背を押す。
 止まるわけにはいかない。
 ここは、線路の上じゃないけれど。


●壊走電車
 カタリナの防衛はまさに鉄壁だった。
 最初に乗り込んだ車両より先へ、敵を一体も通さなかった。
 一度だけ戒がマネキンと視線を合わせたせいで朦朧としてしまい、何体かの侵入を許してしまったのだが、それも次車両に移すことなく全滅させた。
 かなり無理をした。
 あえて集中攻撃を浴びたカタリナを、戒が応急手当をし……そこに彩が飛び込んできたのだ。
「助っ人いっちょうお待ち」
 表情も変えず影色のアウルを連打して、敵集団を切り崩す。
 戒は思わず「忍者きた、これで勝てる」と呟いた。
「イン=ヤン・アイドルもお待ちどうさまでーす!」
 千種の炸裂符が決め手となり、後部車両もどうにか制圧された。
 機動力のある彩と千種が駆けつけたのは良い判断だった。これだけの戦力があれば、かなり余裕を持って防衛できる。
 戒はふぅっと息をついた。
「終点が見えてきたか」
 散発的に連結扉を抜けてくる敵を袋叩きにしながら、四人は時折、窓の外を見やった。
 昏い。
 闇だけが、流れている。
「オカルトも、蓋を開けてみるとこういう事ですか」
 カタリナが呟く。
「雛姫さんが言ってました、連結部がこれじゃ、カーブで脱線するって」
 容赦なく敵の腕を輪切りにしながら、千種が応える。
 電車ではなかった。
 この装置は、電車を模しているだけで、どこにも向かってはいない。
 そもそも動いていなかったのだ。
 ただホームに現れて、人を閉じ込めるだけ。
「はみ出し者が逃げ込んでくるのを待っている、ホイホイですね」
 淡々と、彩の貫手がマネキンの口元を抉る。
「つらいとこで頑張るのが偉いなんて、私は思わない」
 戒は言葉ほど淡々としていない。
 荒っぽく糸を繰り出して、続ける。
「逃げるのだって怖いさ。後で叱られたり、呆れられたり、無視されたりするかもしれない。だから必死だよ」
 それを聞きながら、カタリナは静かに必殺の突きを繰り出した。
「でも、これは違います。逃げ道を装って、閉じ込めて、利用する。逃げるという選択肢を嘲笑う、最低の仕掛けです」
 狭い空間で見事に太刀を使いこなす……その太刀筋に迷いはないけれど。

 ぶっこわそう。
 
 通信機を通じて、その一言は、前方車両にも届いていた。
 前方……最前車両。
 運転席。
 正面のガラスの向こうには、ただ、闇が。
 その手前、フロントガラスには五芒星が刻まれていた。
 それが、コアだった。
「ブレーキ、入れます」
 雛姫は宣言とともに、予め聞いていたマニュアル通りに停車を試みる。
 模しているだけとはいえ、原理をまるまる流用しているようで、『電車』はゆっくりと揺れを弱めていった。
「それじゃあ、お願い」
 珍しく、さんぽが静かな声で告げる。
 みずほは頷いて、正面ガラスへと向き直った。
「……」
 私は、
 強くなんか無い。
 ……それでも、
 強い相手に挑むことはできる。
 これからも、ずっと。

 五芒星を貫く拳。

 T駅から少し離れた地下線路で、古びた車両が発見された。
 中に囚われていた人々は、誰一人かけることなく無事に救出された。


●アイドルの一日車掌
 えーっと、コホン。本日は、ご乗車、まことにありがとうございました! この電車は、これより回送電車となりますので、ご乗車になれないです!
 こんな感じだよね?
 えー、どなたさまも、お忘れ物のないように、お気をつけください!
 ……聞こえてるよね?
 あ、おーけーね、よしよし。
 じゃあ……あ、そうそう。
 えっと、皆さん!
 これからは、ちゃんとした電車に乗りましょう!
 ドコ行きだっていいです!
 天魔のご飯になっちゃうよりは、もっとイイトコ、行きましょうよ!

 ……以上、千種でした!



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 聖槍を使いし者・カタリナ(ja5119)
 勇気を示す背中・長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)
重体: −
面白かった!:7人

撃退士・
彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)

大学部6年319組 女 鬼道忍軍
あんまんマイスター・
七種 戒(ja1267)

大学部3年1組 女 インフィルトレイター
ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
聖槍を使いし者・
カタリナ(ja5119)

大学部7年95組 女 ディバインナイト
Operation Planner・
月夜見 雛姫(ja5241)

大学部4年246組 女 インフィルトレイター
目指せアイドル始球式☆・
三善 千種(jb0872)

大学部2年63組 女 陰陽師
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅