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マスター:由貴 珪花
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/08/19


みんなの思い出



オープニング

●このOPには本編とはあまり関係ない馬鹿騒ぎが多数収録されています(章題)


 静かな職員室の窓辺に2つの小さな影が並んでいる。
 ずず、と茶を飲み並ぶ様子は一見中のよさそうな光景、なのだが。

「のう太珀よ」
「何だ、小娘」

 ピキ、と亀裂の入る音がする。
 その音は、湯のみに走った物理的なヒビだけではないだろう。
「遂に戦いも終盤戦ぢゃの。誰が小娘じゃこのショタ悪魔☆」
「何か言ったか糞餓鬼。そうだな。この下らない馬鹿騒ぎも僕が勝って終わると思えば清々する」
「此方こそ弱い者いぢめになって申し訳ないのお。しかし悲しいけどこれって戦争なのよね‥‥という奴ぢゃ☆」
 笑顔のアリス。無表情の太珀。
 張り付いた様に変わらない表情だが、こめかみや額に走る血管の数は確実に増えている。
 この際どちらが優勢であるとかは関係ないのだ。
 今此処にあるのは、果てしなく高いプライドと果てしなく幼稚な口喧嘩。
 繰り広げられる静かな、されど苛烈な戦いは、既に周囲の職員が止めるなどというレベルはとうに飛び越えていた。
 介入すればどの様な無茶振りをされるか分かったものではない。触らぬ神に祟りなしという奴だ。

「ふん。『弱い者ほどよく吠える』と言うやつか? 昔の人間はいい言葉を残したものだな、妖 怪 バ バ ア」

「‥‥今からでも降参は受け付けるのぢゃよ? 太 珀 ち ゃ ん ☆」

 沈黙。
 窓から吹き込む潮の香りが、2人の前髪を揺らす。
 ざわっ‥‥と、音が聞こえそうなほどの殺気が辺りを包み、2人の目がぎらりと燃え上がる――!

「貴様こそ今からでも白旗を用意するんだな、このすちゃらか魔女モドキが! 大体僕と貴様が戦えば済む話が何故こんな下らない大会になっているんだ! 実力じゃ敵わんと見て逃げているのが見え見えだ臆病者め! そもそもを言えばお前があんな所に置いておくのが悪い! 自業自得を逆恨みした挙句に逃げ腰とは久遠ヶ原の教師は程度が知れるな、自称魔女のなんちゃってロリババア!」
「さっきの台詞そっくりそのままお返しするのぢゃダアホ! そーゆーお主こそよく吠えるではないか太珀坊や! 自らの罪を悔い改めずに食って掛かるあたりが子供と言っておるのぢゃよ! それに私は自分の所有物に対する正当な権利を主張しておるだけぢゃ! 無駄に長生きした挙句に低俗な難癖つける事しかできぬとは、お主実は悪魔じゃなくてただ厨二病こじらせておるだけのお・子・さ・ま☆なのぢゃないか!?」

 ぜーはーぜーはー。
 一気にまくし立ててては肩で息をする小さな体。もうどっちもお子様でいいと思うの。
 っていうか喧嘩するくらいなら隣で茶飲むなよ。

「よろしい、ならば戦争だ!」
「よろしい、ならば戦争ぢゃ!」

 魔導書と飴玉ステッキが、何故かぢゃきっ☆と音をたてて翳される。
 手に持っていた湯のみは既に、かたや砕け散り、かたや魔法で消し炭となっていた。
 一触即発の危機――。だがそんな殺伐とした職員室に颯爽と救世主が!!
「ふあぁ‥‥魔女殿も太珀殿も、その辺にしてくれ‥‥眠れn いや職員室が廃墟になりかねん」
 ‥‥と思ったらただのサボリスト、もとい紫蝶でした。
 各競技の実況中継で忙しい放送室で寝てたら追い出されたらしい。
 顧問仕事しろ。
「たかが校舎と僕のプライド、比べるべくもない!」
「どうやらこやつは、武力行使でしか反省せんようぢゃからの!」
 はぁ。
 このままでは収まりがつきそうにない。
 また面倒事に関わってしまったな、と思いながら紫蝶は倉庫の備品リストを取り出した。

「わかった、もっと直接的な競技を準備するから、一先ず落ち着いてくれ。‥‥久遠ヶ原が消滅する前に」



●これから皆さんに殺し合いをしてもらいます

「て事で、だ」
 参加者が集められたのは、妙に鬱蒼と茂る森であった。
「どーもスポーツちっくな競技だと2人の溜飲が下がりきらんようだから、ね。もっと直接的に戦ってもらおうと思う」
 ぎちぎちぎち、と変な虫の声が聞こえる。こんな森、久遠ヶ原のどこにあったんだ。
 ていうか森の中でできる球技なんてあっただろうか?
「紫蝶先生、これで全部です」
 と、そこに一抱えほどの大きなダンボールを持って現れたのは桐江 零。
 例に漏れず、大会中あちこちでパシられていた彼だが、どうやら今度は紫蝶に捕まったようだ。
「ん、じゃぁそれは置いて、桐江はこっちに来てくれ。さて。皆には、桐江がつけてるのと同じ首に首輪をつけて貰った。
 あぁ、真ん中にある赤いボタンはまだ押すんじゃないぞ」
 桐江を参加者の前に立たせ、首輪を指さしながら説明を始める紫蝶。
 なんかどっかで見た事のあるような、鈍色の首輪である。
「この競技のルールは簡単だ。この首輪のボタンを最後まで押されなかった者が勝利者となる」

「――先生、それ球技なんですか?」
 先頭に並んでいた女子生徒が手を上げた。ごもっともな質問だ。
 格闘の字を冠するとはいえ、あくまで球技大会であるはず。
「ふふ、じゃあどの辺が球技か説明しよう」
 ごそごそとダンボールの中から取り出したるは、紛れもなく――短銃。
「よいしょっと」

 ぱぁんっ!

 軽い音と同時に、赫が散った。弾けて散った生温い液体が彼女の頬と紫蝶の右手を濡らし、ずるりと垂れる。
 ぐらりと崩れ落ちる桐江の身体。どよめく生徒達。
 こめかみだった。ゼロ距離での、こめかみへの射撃。
 紫蝶の口は、薄く嗤っていた。
「きゃああああっ!!」
「‥‥――いってぇぇえええぇ!!」
 がばっと勢い良く起き上がる桐江だったが、紫蝶は尚も手を緩めない。
「しつこ‥‥しぶといな」
 ぱんっ、ぱんっ!!
 足で踏みつけ更に2発。喜んでる様に見えるのはきっと気のせいだ。
 暫くして――。
 やがて桐江の抵抗はなくなり、静かになった。
 本当に1人の人間から出た量かと思うほど、辺り一面真っ赤で。
 震える生徒達を尻目に、紫蝶は桐江の首輪のボタンを3秒間、押した。ピー、という電子音が微かに聞こえる。
「‥‥と、こんな感じだね。ちなみに銃はモデルガンだし、中身はしびれ薬入りの赤いペイント弾、だ」
 銃の中に入っていた1cm程度の球を、左手に乗せてみせる。
 言われてみれば、足蹴にされたままの桐江は時折ビクンビクンと痙攣しているようだ。
「首輪に内蔵された発信機で、各自の行動は記録される。頑張った生徒にはボーナスが出るから頑張るんだね。
 武器はこちらから配布する。まぁ、つまり‥‥武器が全て球体だから球技って事、だな」

 武器の配布を始めようとした紫蝶は、最後に呟く。
「逃げた者は、もれなくアリス先生と太珀先生の、物 理 的 な憂さ晴らしの相手をしてもらうからね」



 それは、死を意味するのではないだろうか?




リプレイ本文


「いいかい? これは戦争だ。躊躇えば、殺られる」

 紫蝶は言う。
 これは殺し合いなのだと。

「迷うな。戦うも逃げるも自由だが――どの選択も、迷ったら負ける」

 教師――殊更、久遠ヶ原における教師という物は業が深い。
 望む望まないに関わらず、ただ能力を得た者を一流の戦士に鍛え上げ、死地へ送り出す。
 例え何が起ころうと、一切の後悔はしてはならない。
 何故なら、彼らは必要とされ――そして、自分で選びとった末の結末なのだから。
 故に、彼女は云う。
 選択を迷うな。
 己を律し、能力を識れ。
 自らの武器を手足が如く操り、制せよ。


「では、いくよ――」


 それが例え


「2時間後、またここで会おう」


 食品や

 日用雑貨や


 ハードゲイであったとしても――――。




   異 種 混 合 格 闘 球 技   ―― 開 幕 ――



● 0:00

 パァ――‥ン

 天を衝く破裂音と共に、散り散りに駆け出す参加者達。
 スタート地点もタイミングも一緒という事は、熾烈な陣取り合戦が展開されるのは必至。
 とにかく、落ち着ける場所を探さないと――。


 木の陰に隠れながらも、彼は足早に森を走り抜けていた。
 その顔には白と黒に塗られた仮面。それは彼の性格か。
 イアン・J・アルビス(ja0084)は、乱れに乱れる久遠ヶ原の風紀を正すため日夜健闘する真面目な少年である。多分。
 其れを白とするならば、仮面をつけた彼は『黒』の面と言えよう。
 怪盗。
 それがイアンのもう一つの顔。
 ダークフーキーン。つまり法の目を掻い潜る悪を討伐する為の必要悪‥‥かどうかは謎だが。
 ともかく。何故彼の中に裏の性格が芽生えてしまったのか。今となっては誰も識る由はない。
「――では、『らしく』行かせてもらおうか!」
 バッ! と勢い良く小川を飛び越え、イアンは天鵞絨の森へと消えていった。



 丁嵐 桜(ja6549)は北東方向のC−4へと歩を進めた。
 地図を見るに、中央は川が流れてるから‥‥迂回して奥へ回ろう。
 そうだ。相撲の巡業の様に、ぐるっと周りながら戦って行こうかな。
「それにしたって――」
 桜は握りしめたそれを見た。【けん玉】。何の変哲もないけん玉だ。
 全力で振り回して叩きつけたら痛いかな? と思いながら、赤く塗られた玉を剣から外した。
「うーん。ちょっと弱そうだけど‥‥」
 しかし、目指すは横綱。逃げも隠れもせず堂々と立ち向かう姿こそ、彼女の理想。
 柄を握って、ぶうんと玉を振り回す。
「‥‥でもやるしかありませんよね!」
「あらァ? 随分やる気満々ねェ‥‥?」
「ひゃあっ!?」
 独り言を聞きつけ、音もなく背後に現れたのは黒い少女。
 ぞっとする程の殺気。黒百合(ja0422)の名の通り、黒く静謐な狂気を彼女は纏う。
 桜の額に脂汗が滲んだ。この特徴的な喋り方の少女は、紅組だった筈だ――。
「ま、まだ攻撃時間じゃ」
「うふふゥ‥‥解ってるわよォ。『まだ』攻撃不可ですものねェ♪」
 手にした【野球グローブ】で、背中越しに桜の頬をするりと撫でる黒百合。
 見た目的には脅している様には見えないというか、非常に微妙な絵面だが。
「そうねェ‥‥今すぐ開始の合図が鳴らないかしらァ‥‥」
 ぞわりと背筋を何かが這った気がした。なにこれ怖い。
 本気と書いてマジだ。ガチだ。すぐに離れたいのに、バットから放たれる謎の殺気がやばい。
「ままままだ始まったばっかりですよおぉぉ!」
「残念だわァ。また後で会えたら、その時は楽しく遊びましょうねェ♪」
 けらけらけら、と笑い声を響かせその場を去っていく黒百合。
 静まる森に反して早鐘を打つ胸を押さえ地面に座り込んだまま、桜は笑い声が消えていった方向を呆然と見つめた。
(ふえぇん怖かったよー!)
 遭遇したのが開始前でよかったね☆



 逃げるのじゃ、逃げるのじゃ――。
 争いなど、誰が得をするのか。しかも、代理戦争なんて馬鹿げてる。
 走りながら、じわりと滲む涙。フル・ニート(ja7080)は、数分前の場面を思い出した。
 ――なんと、非道い仕打ちであろう。
 飛び散った赤。銃を打ち込まれる度、びくんと跳ねる腕。逃げられない様に足で踏みつけ、更に銃口が火を吹いた。
 嗚呼。痛かっただろう。そうに違いない。
「『もっとぉ〜』という声を聞いた気がしたがの‥‥あんな事をされて喜ぶ輩はおらぬ故、気のせいじゃな」
 残念ながら、桐江《歪みなきどえむ》零なので、聞き間違いじゃないですけどね。ね。
 そんなアレな世界を知らないフルは、恐怖の衝動に任せてひたすら東へ走る。
「はやく、はやく、早く逃げ――あっ」
 木の根に足を取られ、前のめりに倒れこむ。
 慌てて身を起こし周りに人がいない事を確認して、ほっと一息。
 鞄から飛び出た【たまごボーロ】が視界に入ると、恐怖と焦りの気持ちが怒りに変換された。
「こんな物で戦えなどと、我を馬鹿にしておるのかや!? ええい、こんな役にたたぬ物は食うてやるのじゃ!」
 フルは乱暴に袋を開き、ボーロを2粒掴んで口に放り込む。
 かりっという心地良い音と、ふんわり広がる甘く香ばしい香り――。
「‥‥意外と美味じゃの」
 癇癪を起こした子供に甘いお菓子は、最強の薬。



● 0:10

「よっ‥‥、も‥ちょっ‥‥どぁああっ――っぶねぇ」

 ――奥のほうから、変な声がするわね。
 非戦闘時間と判っていながらも、暮居 凪(ja0503)は【マシンガン】を油断なく構えて慎重に歩を進めた。
 声の主が敵であれば、少なくとも1人は位置が特定できる。1勝を拾える様な物だ。
「っくそ、やっぱ手が塞がっちまうな‥‥もういっちょ」
 しかし独り言の多い。参加者の半分は敵なんだしもう少し警戒してもいいのに。
(さて、誰かしら‥‥)
 凪は樹の幹に体を隠し、そっとそちらを見た。‥‥そして、珍妙な光景を見た。
 男が木のぼりをしている。
 片手に寝袋らしき袋をぶらさげ、もう片手には【スイカ】が一玉まるっとはみ出た鞄。考えるまでもなく、異様だ。
 と、観察してる間に再び落下の危機を迎える男。どうもスイカが相当邪魔の様だ。
 何を企みかは知らないが、同じ太珀軍生徒だと認識すると凪は銃を下げ近づいた。
「手伝いしましょうか、千堂君?」
「おわぁっ!?」
 背後から突然名前を呼ばれ驚く木登り男こと千堂 騏(ja8900)。
 そんなに派手な反応したら、スイカが、落ち――そんなスイカに釣られクマアァァッ!!
 ずさああぁっ!
「間一髪ね」
 ――ありのまま今起こった事を話すぜ‥‥。
 スイカが落ちたと思ったらいつの間にか美人の姉ちゃんがドヤ顔でスイカを差し出していた。
 何を言っているかわからねーと思うが、俺も何が起きたのかよく解らなかった。
 一瞬そいつがクマに見えたとかスイカが釣り針に見えたとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。
 ――と、由貴コメディの片鱗を味わって頂いた所で時間は動き出す。
「お、おう。サンキューだぜ。‥‥あんた、同じ白組だよな? ちっと手伝ってくれや」



 小さな体で草木を掻き分けながら進む唐沢 完子(ja8347)は困り果てていた――。
(一体これをどうしたらいいの‥‥!?)
 その手に持つ物、【頭蓋骨】。勿論偽物だ。プラスティックの作り物だ。しかし不気味この上ない。
(大体丸いから――ってあやふやなもん用意するなんて‥‥!)
 こまけーこたーいいんだよ精神大事だよ?
 頭蓋骨優秀じゃないか、水も汲めるし。顎とれば地面掘るのにも使えそうだし。
 まぁ最大の魅力はペンライトとの合わせ技でかなりのホラー感が出る事だよね、夏だし。
 ビビって腰抜かす結構人いるんじゃないかなっ!
「仕方ない‥‥これで殴るしかないわね!!」
 そうそう殴r――えっ。
 ‥‥‥‥えっ。
 ふん、っと勇みながら完子は茂みの奥へと消えて行った。
 その発想はなかった――。



● 0:20

 C−2区域。
 森の中央付近に位置する此処にあるのは木製の小屋と、小屋の前に湧き出る透明な池。
 戦闘域の中では、目立つ所であるのは間違いない。しかし、だからこそ誰もが足を向けない場所でもある。
「うーむ、広いけど意外と物が少ないな‥‥」
 中を検めたイアンは、がらんどうな小屋に拍子抜けした模様。
 あるのは壁一面の棚と、作業台らしき机と椅子のみ。
 唯一姿を隠せそうな作業机の影に座り込み、イアンは時を待つのだった。



 一方、D−3にひっそりと佇む古錆びたトタン小屋にも客が訪れていた。
「随分古いだなぁ。‥‥まぁ、とりあえずこいつの動作確認する位なら大丈夫かな?」
 青柳 翼(ja4246)が配布されたのは、赤と白に塗り分けられた謎の球体――。
 曰く、『久遠ヶ原のぐれーとでぶりりあんとな技術の粋を結集した特殊武器』だとか。怪しさしか感じないのは仕様です。
 はぁ。
 曰く、この球の中にはとある生物が入ってるとの事なのだが。掛け声からしてアレである。
「嫌な予感しかしないけど‥‥いけっ、ハードゲイッ!」
 翼がその球を放り投げながら叫ぶと、ボールの中からボワッとインチキハードゲイ登場ってなもんである。
『んッはあぁぁァ!! 問おう、貴様が俺のマスターか!』
(‥‥‥‥‥うわ、ガチだった)
 黒のレザー短パンに包まれたガチムチの筋肉。黒く艶光りする肌とサングラス。
 ていうか『んッはあぁぁァ!!』てなんだよ! 返事なのか? それ、返事なのか!?
 そして後半なんか聞き覚えあるな!? つまり成敗戦争(子供の喧嘩的な意味で)とかそういうアレか!?
 脱力感と貞操の危機とツッコミの追いつかなさを感じつつも、他に武器がない以上、翼は高を括った。
「ああ。僕がマスターだよ。よろしく‥‥ハードゲイ」
『可愛い坊やだな‥‥いいぜ、俺が目覚めさせてやるよ‥‥』
 超爽やかな笑み。白い歯がきらりと光った。
「違う、なんかそれ色々違う! ちょ、背後に立つなっ! 触るなっ!」
『いいから、任せとけって‥‥な?』
「な? じゃn‥‥アッ――――!!」
 (以下不適切なシーンが含まれたり含まれなかったりしますので、皆様の逞しき妄想力にお任せいたします☆)

 こうして、ハードゲイを手懐けた翼はトタン小屋の周辺で張り込みを始めた。【ポケメンボール】を手に。
 ‥‥色んな意味で、合掌。



● 0:28 ――森の外の仮設テント――

「大体散らばりましたね、先生。 ‥‥あ、マヨ取って下さい」
「予想より協力関係が少なかったな。陣取り合戦よろしく森を二分した全面対決も想定していたが」
 OPで赤く染まった服もそのままに、食事をしながらノートPCをチェックする桐江 零。
 ここでは首輪を通じて、参加者全員の『位置』、『首輪の状態』、『装着者の生命力』が表示される。
 ついでに『生徒の見ている視界』をモニタリングも可能。車載カメラの様な物だ。
「そうならない為の金一封じゃないですか」
 人とは醜い――。
 チーム全員で団結すれば、球技大会的に大勝を収める可能性は十分にある。
 しかし『3人倒せば金一封』という制度により心理的に協力関係を阻害している‥‥気がする。
 相談日数がどうとかって声は聞こえません。
「‥‥さて、そろそろ時間だ」
 戦いが始まる。紫蝶はにやりと笑って、放送の準備を始めた。

「――どうでもいいが、演出とはいえあの血みどろの後でよくそんなの食えるな」
「あ、先生も食べます? 採れたてですよ」
「謹んで遠慮する」
「トマトうめぇ」



● 0:30

 \ジャッジャッジャーーン♪ ジャッジャッジャ〜〜〜ン♪/

『ずこーーっ☆』
 森に響き渡るサスペンスっぽい音楽に、御手洗 紘人(ja2549)こと『チェリー』は盛大にコケた。
 でも、これで漸く『ハンティング』が出来るね☆
『この曲ってつまり、チェリー達がサスペンスのヒロインって事かな〜☆』
 うふふと笑う姿は、友人らが揶揄する『魔王』さながらのどす黒オーラを放っていた。
 ここはD−1。
 草を踏み鳴らし、身を隠す事ともなく堂々と、彼女は餌を待っている。
 準備は万端。綺麗なバラには棘があるって教えてあげる。
 ヒロインは無敵なんだから。

 かさかさと草木が擦れる音がする。
(誰かいるのかなー?)
 二階堂 かざね(ja0536)は茂みに座り込んだまま、音のする方向へと耳を澄ませた。
 様子が確認できるまでは絶対に動かない。生き残るために、だ。
(でも、向こうから来られると困るんですよねー)
 さく、さく、さく、と一定のリズムを刻む音は、明らかに近づいている。
 見つかりません様に――と願えど祈りは儚い物。
 髪を引かれる感覚に顔をあげると、自慢のツインテがチェリーの手の中に収まっているではないか。
『銀色のしっぽが隠れてないよ☆』
「し、しまったー!? かくなる上は‥‥悩殺☆萌えこぷたーっ!!」
 きゅるーん☆
 ウィンクしてくるんと可愛く一回り。
『チェリーだって‥‥可愛さならチェリーだってまけないんだからー!』
 が、駄目‥‥! 無効‥‥ッ!! 手数の無駄ッ‥‥!
 危機‥‥圧倒的危機‥‥ッ!! 迫り来る恐怖がかざねを支配‥‥!
 選択肢は‥‥ひとつッ!
「か‥‥かざねだーーーっしゅ!!!」
『あ、あれっ!?』
 これ以上は危険、と判断したかざねは、銀色の軌跡を残して一瞬で視界から消え失せた。
 呆然と見送った後、携帯を取り出してコールするチェリー。
『ごめーん☆ 失敗しちゃった!』
 更に恐ろしい敵が控えていた事を知る事もなく、銀のツインテは鬱蒼の森へと消えていった。



 スタート地点に程近いA−5。
(生き残っても、脱出できなければ意味がない)
 龍崎海(ja0565)は、そう考えた。
 競技中の敵の位置は解らないが、終了時だけは全員がスタート地点に戻る。
 罠や待ち伏せはし放題。それなら、すぐに脱出できる位置がいい。
 故に、海は30分かけてA−5を歩き周って調べあげ、そこを根城と決めた。
(‥‥アリス先生が居ればなぁ)
 彼は是非ともアリスにチアをさせたかった。年齢不明のロリBBAだが、それがいい。
 しかしアリスは最終種目の準備の為この会場にはおらず、彼の目論見は夢と散ったのだ。
(俺、生きて帰ったら先生にチアの格好させるんだ)
 と、妄想未来設計という名の死亡フラグを立てつつ、A−5の把握が終わった海は敵を誘い出しに動き出す。
 すぐ北の小川は視界が拓けていて、恰好の餌場となりそうだった。
 背中を木に預けて死角を減らし、小川の両岸をつぶさに見張る海。
 それは、ほんの僅かな時間。
「やっと殺れるぜぇ‥‥!」
 背後でぶぉん、と風が鳴く音がした。一瞬きの後にマキナ(ja7016)の【モーニングスター】が海の胴体を後ろから襲う。
 チェーンがしなり、棘のついた鉄球が海の腹に沈んだ。
「ぐっ‥‥」
「っは! 斃れちまえよ!」
 不味い相手を引いた――そう思いながら、海は体を反転させて南へと駆けた。
 フラグ、立てちゃったからね。


● 0:35 ――森の外の仮設テント――

 ピ・ピ・ピ、と無機質な音が耳に入った。
 この断続的な音は、生徒が被弾した時の音だったか。
「戦闘ですね。えーと、A−5の龍崎君かな」
 ふむ、と呟き紫蝶がノートを操作すると、海の首輪カメラが捉えた映像が流れだした。

 海の【スリングショット】が放つパチンコ玉を、木々を盾にしながら接近するマキナ。
『甘ぇんだよ』
 振り下ろされた鉄球と、マキナの恍惚とした顔。鈍い音。
 やがてマキナの腕が、首輪に近づいた。
 ピー‥‥。
『これで1人目、っと。次行くぜぇ!』

 ぷつん、とカメラの映像が途切れた。
「‥‥」
「‥‥」
「これ、コメディだった、よな‥‥?」
「コメディだったと思います」
 どうしてこうなった。



● 0:40

「どうしろっつーんだよなぁ‥‥」
 一抱え程もある巨大な玉の影に座り、紺屋 雪花(ja9315)は大きな溜息をついた。
 雪花としては忍軍らしく隠密して戦いたいのだが――彼に配布された武器は非常に残念な物。
 その武器とは【大玉】。雀の涙程の配慮か、辛うじて枯茶色をしている。
「何をどうやっても、轢くしかないよなー」
 ごろんごろん。待ちぶせ出来るような場所を探さないと、と雪花は歩き出す。
 ごろんごろん。つーか隠匿性皆無すぎるだろこれ。せめて鞄に入る武器にしてくれよ。
 ごろんごr びたんっ。
「ひゃあっ」
 かららん。
 枯れ枝に括りつけた【鈴】の音が森に響く。錫杖を持って歩いていた亀山 淳紅(ja2261)と正面衝突したらしい。
「あたた、ごめんなぁ。自分考え事しとってん――」
 バカな。いくら茶色でも、こんなでかい物体が動いてりゃ気づくだろ?
 いや、ってか確かこいつは紅組。つまり敵‥‥!
「構わねぇよ――こっちは代わりに轢いてやるからさっ!」
 ごろごろごろっ!
「ちょ、あかんて、来んといてやーー」
 全力で逃げる淳紅だが、大玉を転がしながらというハンデ込みでも、圧倒的に雪花の方が足が速い。
 嗚呼悲しいかなダアトの移動力。
「た、助け――ふぎゅっ」
 ごろごろごろっ!
 ‥‥見事に潰れた。大玉3kgしかないけどそこはコメディ補正っ!
 投げ出された錫杖が地面に転がり、鈴ががらんっと大きな音を立てた。
「さて、首輪首輪‥‥っと。この糞暑い時期にマフラー? 信じられないぜ」
 と、雪花が淳紅のマフラーを引っ張った、瞬間。
 拘束される体。絡み付いたのは、先端に玉のついた多条鞭、【ボーラ】だ。
 両手の自由を失ったまま、背後から倒され馬乗りにされる雪花。首輪に掛かる、白い小さな手。
「くっそ‥‥伏兵か!?」
「そのマフラーをバカにするのは許さないのです‥‥っ」
 死亡音を確認してから、背後から襲ってきた少女――Rehni Nam(ja5283)は雪花の拘束を解き、淳紅を起こした。
「あたた‥‥大丈夫やで、これダミーやし!」
 マフラーを馬鹿にしてるんじゃなくて、夏にマフラーしてる事にツッコミたいんだと思うんだ。
 至極普通の感想だよ!常識的に考えてっ!

(な、なんという事でしょう‥‥)
 雪花が淳紅を襲い、Rehniが制するまでの一連を偶然見かけた舞草 鉞子(ja3804)は、急ぎその場を離れた。
 2人は同じマフラーをしていたという事は、最初から2人は仲間。
 淳紅が敵を誘い油断させ、Rehniが不意打ちで制する所までが作戦だろう。
(兎に角離れて‥‥鈴の音には警戒しましょう)
 良い訓練だなんて、言ってられない――。



 腹が減った。
 芳醇な香りがこれほど恨めしく思った事はない。
 桐生 直哉(ja3043)は鞄から漏れる甘い香りに唾を飲み下した。
(最高級の【メロン】なんて縁ないしなー‥‥)
 直哉はE−1の樹の上で、鞄の中にある2つのメロンを思い浮かべた。
 これは武器なんだと言い聞かせても、腹の訴えは正直だ。ハラペコの名に偽りはない。
(もう俺頑張ったし1個くらい食べてもいいんじゃないか。どうせまともに戦えないし――)
 抗い難い空腹か、武器としての絶望感か、諦めかけたその時。ガサガサと音を立てて誰かが近づいてくるではないか。
 ――よし、寝袋で陽動しよう。
 ぼすんっ!
「ひょわあぁっ!?」
 樹の上から落下した寝袋は、大きな音を立てて地面に落下した。女の子の裏返った声が辺りに響く。
「だ、誰か居るのかや‥‥?」
 駆け足だったその足は一気に速度が落ち、恐る恐るといった様子で寝袋へ近づいていく。
 今だ――! 黒い無尽光の靄を纏ったメロンinスクールバッグと共に、直哉は少女に向かって飛び降りた。
「くらえ‥‥!」
「な、なにごt ふぎゅ」
 ゴシャアッ
 直哉の無慈悲なバッグは鈍い音を立てて、少女――フル・ニートの脳天に直撃した。
 ぐらりと倒れる小さな体。頭からの夥しい出血が地面を濡らす。――まぁカオスレート 2と-4だしなぁ。
「わ、我に手を出すとは‥‥神罰を食らうがよい‥‥」
 フルは震える手で血文字で書き綴った。犯人はヤス。
 一方、軽快な体捌きで着地した直哉は真っ先に鞄の中を確認。割れてむき出しになった果肉に再び生唾を飲んだ。
「メロンは食らうけど、神罰は御免だなー」
「メロンじゃとっ!?」
 瞳を輝かせ、がばっと起き上がるフル。流石アスヴァン堅い! メインアスヴァンきたこれでかつる!
 ――まだ動けるのか! 追撃を‥‥。
 と、2人の瞳があった瞬間。

 ぐーきゅるるるる (※ステレオサウンドでお楽しみ下さい)

「‥‥」
「‥‥」
 2人のハラペコ。通じ合う2人。
「‥‥メロン、食うか?」
「‥‥我のたまごボーロ食べるかや?」
 空腹の前ではチームの対立など些細な問題でしかなかった。
 ――が、話はここで終わらない。
「はいはいはいっ! 私も食べますよー!!」
 驚異的嗅覚(菓子限定)により嗅ぎつけたかざねが茂みから現れ、瞳を輝かせるのだった。
 仲間がふえたよ! やったねたえちゃん!!
 \食は世界を救う/



 その一方――。
 騏は樹の枝にぶら下がったまま、割れて地面に散らばったスイカと、火傷跡のついた右手を眺めた。
 作戦としては直哉と同じ――樹の上に潜み、頭上からスイカによる奇襲。だったのだが。
(2人同時は考えてなかったぜ)

 彼の下を通りがかったのは鳳月 威織(ja0339)。
 左右を入念に見渡しながらゆっくりと歩を進める彼は、騏の格好の的であった。
(くらえ‥‥ッ!)
 スイカを持った右腕を下ろそうとしたその刹那。
「鳳月さん、上!!」
 声は、騏と同じ高さからした。
 そして同時に放たれた【かんしゃく玉】が2つ、派手な音を立てて騏の右手の甲で爆ぜる。
「いッてぇ!」
 手から滑ったスイカには勢いもなく、威織に避けられ地面で弾けた。
 続いて、先程かんしゃく玉を放った滅炎 雷(ja4615)が地上へと降りる。
「奇襲が無理なら、此方が不利ですね」
「いい武器だったら頑張って奪うんだけどね〜。おにーさん、ばいばいー」

 ――と、騏の首輪を狙う事なく立ち去ったのだった。
 さて、どうしようか、と考える。
(スイカが散乱してっけど‥‥だからこそ『同じ所にゃいねぇだろ』って油断するかもな)
 動かないでいりゃ、そのうち位置を宣伝してくれるそうだし、昼寝でもしながら次の機を待ちゃあいいか――。



● 0:50

 どう戦ったものかと、鉞子は口の中で【飴玉】を転がした。
 武器が飴では、先程の様な連携プレーには勝ちの目がない。
(隙を突いて―‥‥あとは飴玉の粘着力次第ですね)
 言うは容易し、成るは難し。
 お誂え向きなのがいる。木の根に座り込み髪の毛を弄っている銀髪の娘。
 鉞子は舐めていた飴玉をそっと手に持ち、首輪を狙って――投げる。
 こつんっ
『あたっ。‥‥なにこれっ!?』
(――まずい)
 飴は銀色の髪にぺったりとくっつき、あまつさえ絡んでいる。こいつぁ取るのに一苦労するぜ。
 既に逃げる理由には十分だが、鉞子は更に戦慄する事になる。
『髪は乙女の命なのに、こんな悪戯するのは誰かな〜〜?』
 こんな怖い乙女があってたまるかっ。
 超笑顔なのにどす黒く吹き荒れる怒りのオーラに、鉞子は踵を返して全力疾走した。この殺意は本物だ。
『悪い子には魔法少女プリティ☆チェリーがOSHI☆OKI☆してあげないとね‥‥☆』
 ヒュッという風切り音と、2つ3つと鉞子の背中を殴打する小さなガラス玉。
(【ビー玉】‥‥? これなら、勝てそうですね)
 あの恐ろしい怒りのオーラを除けば。そこは精神鍛錬と思って何とか。
『あれ? 逃げるのやめたのかな☆』
「防戦一方ではありません!」
 言うなり、鉞子は飴玉を指に挟んだ状態で腕を大きく薙ぎ払った。
 ルール的には限りなくグレーに近い気がするが、飴玉部分がヒットすれば問題ないだろう。
 そして、彼女は魔法少女と言った。ダアトの可能性が高い。
 であれば、接近戦は鉞子に利がある。
「大人しくボタンを押させなさいっ」
『きゃん☆ チェリーこわ〜い☆』
 今日のお前が言うな会場はここですか?
 ともかく。鉞子の腕をなんとか避け、不利を悟ったチェリーはこう叫ぶのだ――。
『きゃ〜〜〜☆ 助けてもm』
 ゴスッ

 最後まで聞く事なく、鉞子の意識はここで暗転した――。



 【おじさんの きんのたま】。
 ――この競技に於いて、ポケメンボールと並んで異彩を放つ武器である。

「これで勝てる訳ないよ‥‥!」
 きんのたまをがっちりと、それはもうがっちりと握りしめ(強調)、エルレーン・バルハザード(ja0889)は涙を流した。
 エルレーンの鞄に入っていたメモが、絶望の根源だ。曰く。
 ――『うれしいかい? よろこんだかい? それは学園の誰より凄くて立派なきんのたま だからね!』
「じゃかぁしいわッ!」
 ぐしゃっ
 妙に達筆な文字で綴られる、至極下らないメモ。恐らくこのきんのたまを用意したという学園長の字であろう。
「うわぁん、こんなの嬉しいわけないよぉぉ」
 思い切りメモを投げ捨て、エルレーンは顔を覆った。
 紫蝶に変化してやり過ごそうと思ったが考えてみれば服がない。武器に至っては卵サイズの金ピカボールが1つのみ。
 それでも、とにかく生き延びねば。この競技はそれが目的なのだ。生き残った者こそが真の勝者なのだ。
(この先生きのこる――!)
 何よりも強い『生きる意思』に思考が支配された時、彼女の感情が奔流となり爆発した――。
「生存、せんりゃくううううううう!!」
「はい、そこまでなの」
 かちん、と耳元で軽い音。次いで、衝撃。視界が真っ白になって、すぐに真っ赤になった。
 揺らぐ体、弾ける赤。樹の枝から真っ逆さまに地面に落下するエルレーン。
 壁走りと無音歩行を組み合わせ樹の幹を登った神埼 律(ja8118)は、躊躇うこと無く引き金を弾いた。
 ――ペイント弾でも意外と強いの。
「目がぁぁ、私の目がああぁ――――」
 敵が誰なのか、一体何をされたのか。液体が顔を伝うその感触を感じながら、エルレーンは叫ぶ。
「お、お願いなの!見逃してなの!!」
 律はそんな彼女を、冷たい目で見下ろしていた。

 そこから十数m。
 七種 戒(ja1267)は危ない笑みを浮かべて『それ』に魅入っていた。
「学園の誰より凄くて立派なきんのたま、だとぅ‥‥!?」
 エルレーンの捨てたメモを凝視しながら、ニヤニヤしている。一体何を想像してるのかこの清純派乙女()は。
 そしてそんな折である。戒の興味を一掃引く悲鳴が聞こえたのは。
「きんのたまあげるからぁ! きんのたま! おじさんのきんのたまあげるからぁ〜〜ッ!!」
 ギラッ☆
 まさに瞬速。まさに電光石火。
「よくわからないけどその話乗ったあぁぁっっ!! ――あれ、律」
「あれ、戒ちゃん?」
「え、え、え? 見えないんだけど、紅組の仲間なの!?」
 地面に座り込んできんのたまを振り回す紅組エルレーン。
 エルレーンに【マグナム】を向ける白組の律。
 とりあえず飛び込んでみた、紅組の戒。
 律は思考を巡らせた。戒の武器は、手にした1番ウッドから見て【ゴルフセット】といった所だろう。
 そして『その話乗った』という発言――つまり。
「戒ちゃん、あの『きんのたま』あげるから、私に協力してなの」
「うむ、乗った」
 てへぺろ☆しつつ親指を立てる戒を確認し、律は心置きなくエルレーンの首輪に手をかけた。
「はぅっ!? ねぇちょっと判断早いよ!? い〜〜やぁ〜〜っっ!」
「すまん、きんのたまの魅力には勝てなかったんだぜ‥‥!」

 斯くして、B−3区域における『おじさんのきんのたま争奪戦』は、首輪の音と共に終わりを告げたのだった。
 ちーん☆



● 0:59 ――紫蝶の放送――

『さて1時間だ。戦果はどうだい? まずは敗退者の名前を通達しようか。
 まず紅組‥‥は龍崎だけだね。続いて白組は紺屋、バルハザード、舞草の3人だ。
 ふむ、今のところ紅組が優勢のようだね。
 それから、動いてない生徒の情報だが――こら桐江、トマト食べてないで働け』

 スパーン、という何かを叩く音が聞こえる。

『――っと、30分間動いてないのは‥‥D−5エリアの北、白組仙堂君だけですね』
『だそうだ。それじゃ、健闘を祈るよ』



● 1:00

 あからさまで目立ち、あまりにも目立つから誰も行かないと思いがちな所。
 次はそんな2つの小屋が悲劇の舞台だ。

 C−2の小屋を出たイアンは、今度はD−3のトタン小屋の中に足を踏み入れる。
 25分毎に小屋を往復する作戦。出入りを誰にも見られなければ、非常に快適だ。
「向こうは実験部屋って感じだったけど、こっちは物置かな」
 小さな部屋にアンブレラを広げて床に置き、その影で体育座りをするイアン。
「ま、25分の我慢だね」
「――そんなに待つ必要はないよ」
 ぎし、と古い木目の床を軋ませて、翼が入り口から現れた。
 このトタン小屋を見張り、ここに入る敵を狩る。それが翼の作戦。
「いくぞハードゲイ! 抑えこみだ!!」
「くそっ」
 小屋の外で召喚しておいたハードゲイをイアンへとけしかける翼。
 イアンはアンブレラの脇から胡椒爆弾を投げつけ、そして手錠を取り出し素早くハードゲイの腕にがちゃりとはめる。
 しかし。笑顔のまま強引に鎖を引きちぎるハードゲイ。森の妖精さんつええマジつええ。
『んっフゥ〜。この程度で俺を止められると思ったのかい? 甘いねェ‥‥』
 そして、ハードゲイは翼の命令どおり『抑えこみ』――つまり押し倒す。
 うん、そろそろ蔵倫の影が見え始めたかな。
『若くてすべすべのいい肌だな‥‥美味しそうなボーイだ、よだれが出ちまうぜ』
「やめろおおっっ!!」
 ぞわぞわとイアンの全身を走る寒気と鳥肌。翼はそっと近寄り、首元のボタンを確りと押した。
「よし‥‥1人目ゲットだな!」
 目指せハードゲイマスター!



 戦域北西部、A−1の東端は深い藪に覆われた地帯だ。
 平山 尚幸(ja8488)は手近な木の根に腰をおろし、【水晶】玉を取り出した。
 彼の持つ水晶は、謎の神秘ぱぅわーにより半径50mの人が見えるという物。
「‥‥マキナさん?」
 尚幸は映しだされたマキナの顔を見て呟き、その後水晶はすぐに光を失った。
 どうやら近くに彼がいるらしい。白組同士だし、協力してもらおう――そう思った。
(携帯で連絡とろう‥‥)
 ぷるるる、と4度コール音。そして。
『あァん? なんか用か』
 水晶の存在。今、近くにいる事。それらを簡潔にマキナに伝えた。
『いいぜ、その水晶があれば沢山狩れそうだしなァ。俺はB−2か3にいるから、そっち行くぜ』
 通話を終了した尚幸は、ほっと息をついた。
 早く、合流しよう。

 それから2分程して――。
 がさがさ、と草木を分ける音がする。周辺に人が居ない事を知っている尚幸は、それをマキナと確信した。
「マキナさんこっちだよ」
 無事2人は合流した‥‥が、マキナはやけに驚いた表情をしていた。
「よかった合流できて。 一緒に頑張ろう、ね‥‥?」
 と、軽く胸に何かが当たる感触と共に、尚幸は異変に気づく。
 足が動かない。
 何かが絡んだ様に、足が鉛になった様に。そして、足元に【野球ボール】が転がりおちた。
「つまんないィ。まるで歯応えがないんだものォ‥‥」
 女の声だ。マキナの姿から聞こえるその声が、尚幸の耳を支配する。
「残念ねェ‥‥いつから私をマキナ君だと錯覚していた? ってやつだわァ♪」
 その姿は黒百合による変化の術、野球ボールに宿っていたのは影縛りの術――。
 胸元まである藪を掻き分け、その姿を見た尚幸はただ立ち竦んだ。それは影縛りのせいではない。
 マキナの顔で、マキナそのままの体で‥‥黒百合はいつもの白いドレスを着ていたのだから―――!
 (※男子制服を持ち込もうとしたら魔装だからボッシュートされたの図)
「偽りの姿はおしまいィ‥‥それじゃ、さよならァ♪」
 黒百合は元の姿に戻ると、しなだれ、抱きつく様に尚幸の首輪に手をかけた。

 ――話はまだ続く。
 変化の術でマキナに化けていた事、そして本物のマキナも近くにいた事。2つの偶然がトラブルを呼んだ。

 黒百合の到着から更に2分。先程尚幸から電話を受けた『本物のマキナ』がその場所を探し当てた。
 しかし、マキナが見た光景とは、尚幸と恋人の様に抱きつく敵軍の黒百合――。
「オィイ‥‥どういう事だコラァ!?」
「ちょ、まって自分は影縛りで動けないだけ――」
 問答無用と尚幸の顔を掠めて黒百合へ振り下ろされるモーニングスター。
 しかし血気に逸った鉄球は黒百合の腕を打ったのみ。
 彼女は高らかに笑いながら、そのまま深い藪の中へ逃走していった。

 その後尚幸はマキナに事情を説明し、再び怒鳴られる事になる。
 生存失敗の上に味方にどやされるという、踏んだり蹴ったりであった。



● 1:15

「ごちそうさまですー!」
「美味だったのじゃー♪」
「ボーロも懐かしい味だよなー」
 ハラペコーズの集まるE−1は、まるで屋上の一角か中庭のベンチかと思う程の楽園だった。
 勝ちも負けもなく、ただ空腹であるだけで心が通じる楽園。
 だが今、楽園は終焉を迎える――。
「動かないで!」
「動かないでなの!」
 楽園へ同時に踏み入ったのは、白組の凪、そして紅組の律。
 最初凪と律は銃をハラペコーズに向けていたが――すぐに凪は律に、律は凪に銃を向ける。
 先に仕掛けたのは凪。マシンガンが軽快な音をあげ3点バーストでBB弾を吐き出していく。
 しかして律も用意周到。ビニール傘を広げて盾とした。
「‥‥防壁陣、なの!」
 なんちゃってディバインナイト体験☆
 傘はすぐに穴が開いて駄目になるが、弾消費とのトレードオフなら悪くはない。
 睨み合う両者。無駄弾と悟った凪は銃を止め、戦いは膠着状態となった。

(仕方ないですねー。今こそ一メロン一ボーロの恩を返す時っ!)
 かざねは2人からお菓子を分けてもらった。だが、自分は何も差し出してはいなかった。
 それでもフルと直哉も何も言わず、笑顔で歓迎してくれた。
 それはきっと、ハラペコーズの絆――。適当に言ってるけどきっとそうなんだ。
 ――私はその絆を護りますよー!
「とりゃーっ! かざねこぷたーwith【トマト】だーーー!!!」
 ぐるぐるぐるべちべちべち
 トマトを持って超高速で回るかざね。既にそれは攻撃というかただ髪が当たるだけだ!
 だがここからがwithトマト。かざねこぷたーの遠心力で以て――2人にトマトをぶんなげる!!
 いつからここはスペインになった! そういえば本場の祭りも8月だ!
「わぷっ」
「ぶっ」
「2人共、今の内に逃げるんですよー!」
 かざねはきっと助かるまい。――だが、自分達が生存するのが彼女の望みなら。
 一瞬逡巡し、フルと直哉は別々に駆け出した。

 ‥‥と、格好はつけてみたが。
 敵前でフラグを立てたかざねはもとより、武器のない直哉とフルも戦う術はなく。
 結局逃走先でそれぞれ律と凪に捕まり、しっかり狩られたのでした。

 さらば友よ、君達の事は忘れない! ハラペコーズフォーエバー!



「意外と使えるなー、色々とアレだけど」
 翼はポケメンボールを眺めながら、次の監視場所へと向かっていた。
 その移動の最中に事件は起こった。
「あれ、レフニーちゃん」
「あ、アオヤギさん」
 ばったり出くわす翼とRehni。いつもは仲の良い2人も今日は非情な敵同士。
 一瞬の沈黙の後Rehniはボーラを構え、翼はポケメンボールを放り投げた。
『ンッハァ〜! また俺の出番かいご主人ン。指名が多くて嬉しいねェ‥‥♪』
「ごめんレフニーちゃん‥‥いけ、ハードゲイ!!」
 ずびしっ!と既に堂に入ったポーズで指示を出す翼だったが、ハードゲイの動きは鈍い。
 まぁ、女の子は食指動かないよね。仕方ないね。
「‥‥ねぇねぇ、貴方のマスター格好いいのですよ!」
 ギラッ☆
『あぁ‥‥やっぱり襲うなら女より、オ・ト・コだよなァ!』
「えっ」
 笑顔満面でハードゲイの反逆を見守る確信犯のRehni――恐ろしい子。



● 1:30

 勝ってみせる。
 ユリウス・ヴィッテルスバッハ(ja4941)は背筋を伸ばして正面を見据えた。
「覚悟するがいい。例え我が力は幽きとも、我が意思は貫いてみせよう」
 11ポンドの【ボウリングボール】を手に、スタンスの状態で静かに佇むユリウス。
 対するは暮居凪。フル・ニート殺害の場に遭遇し、寸での所で救えなかったユリウスによる、弔い合戦。
 ユリウスはスタンスの状態のまま、全速で凪に向かって詰め寄る。
 詰め寄る、詰め寄る。振りかぶらない。
「くらえっ」
 そのまま前に押し出す様に、攻撃するユリウス。ぐ、と凪の腹部にボールが沈む。
 しかし近距離戦は凪にも都合のいい事だった。彼女の狙いは回避を許さぬゼロ距離射撃。
「そっちこそ、喰らいなさいっ」
 ユリウスの額に銃口をぴたりと突きつけ、凪がトリガーを引いた、その瞬間だ――。
 銃口と額を遮る様にボウリングボールが、そこにあった。
 物理的に何がどうなってるとかは考えてはいけない。だって対抗スキルだし! コメディだし!
「ディバインナイトにとって取っ手がある物は盾のようなものだ。覚えておくといい」
 覚えておきます! これはテストに出るね‥‥!(でません)

「‥‥これは玉の浪費になるわね。大人しく下がらせて貰うわ!」
 そう言って凪は背を向け去っていった。仇とまで行かずとも、これで一矢は報いる事ができただろうか。
 ――と、彼がボウリングボールを構えドヤ顔した刹那。
 後頭部にスマッシュヒットする【ゴルフボール】。1発KOし崩れ落ちるユリウスの体――。
 数秒、様子を伺ってから現れた戒はそっとユリウスの首輪を停止させた。
「ふ、密林の毒蛇と呼んでくれたまえ」
 ‥‥やっぱり乙女からかけ離れてません?



 守り切れないかもしれない。そんな言葉が、雷の脳裏をかすめた。
 この戦いだけならともかく、時間はまだ30分以上ある。かんしゃく玉は、残り3つ。
 何かできないのか。歯がゆさが威織の心を締め付ける。
 雷のかんしゃく玉とは酷く相性の悪い【水風船】を握りしめ、今か今かとその時を待つ。

「まだまだー! のこったのこったぁ!」
 風切り音と共に桜のけん玉が雷に襲いかかった。
 その射程は1m程度だが、コツを掴んだ桜は変幻自在の動きで翻弄し攻め立てて見せる。
「意外といい武器ですね、けん玉! それ、くださいよっ」
 かんしゃく玉が桜の手を狙うが、投擲武器の悲しさか。投げるタイミングが見えていれば回避は容易だ。
 ――それじゃぁ、これでどうかな?
 2つ目のかんしゃく玉を投げ、今度はフレイムシュートで派手に弾け燃え盛る。
「わわわ、あぶないっ!」
 その炎に紛れ、雷は最後の一投を再びけん玉をもつ桜の手に。
 二重の攻法。これで落としてくれなかったら、打つ手はない。
 落として、くれなかったら――。
「残念、でしたっ! あげませんよー!」
 しっかりと握りしめたそれを見、威織は負けを悟った。武器らしい武器は、もう何もないのだから。
 握りしめていた色水入り水風船を雷へ投げつけ、叫ぶ威織。
「滅炎さん、早く逃げて!」



 それからやや後。森浦 萌々佳(ja0835)は、桜の攻撃を躱しながら首をひねった。
 桜は枝を伝って威織と雷を追っていたが見失い、その代わりに萌々佳を見つけたらしい。
(木の上で『通りすがり』に会うってレアな体験だよね〜)
 萌々佳は、正直戸惑っていた。空中戦でリーチ負けしている現状、積極的には攻撃しにくいのだ。
「もー、避けてないでちゃんと戦ってくださいよー!」
 どうにかして下に落とせば、『翼』がある分此方に利がある。
 叩き落すか、枝ごと落とすか。そこが問題――。
(面倒だし、枝ごとでいいよね〜?)
 即答だった。
 萌々佳は背に美しい翼を広げ、可愛らしい微笑みを浮かべ――大きく振りかぶった。【地球儀】を。
 そして桜の足元の枝めがけ、思いきり叩きつけるッ!
 それそういう道具じゃないよ!?
「ふぇぇ、おちる〜〜っ!?」
 枝は音を立てて折れ、桜は数m下の地面へ投げ出され意識を失った。
 撲殺系ヒロインマジ鬼畜。エスカリボルグの実装はよ‥‥。

 そして、桜との戦いで離脱を余儀なくされた雷はというと――。
「へっ。久々の獲物だぜ」
 もう一人の撲殺鬼畜系マキナに発見され、美味しく頂かれてしまいました、とさ。
 撲殺属性こわい。



● 1:45 ――紫蝶の放送――

『残り15分だね。大分脱落者が増えたようだ。
 まず紅組から‥‥アルビス、ニート、ヴィッテルスバッハ、滅炎の4人が消えて、残り7人。
 白組は平山、二階堂、桐生、丁嵐、それから青柳は自滅というか、まぁ‥‥。取り敢えず残り5人だね。
 移動してないのは相変わらず千堂のみだ。

 次の放送は終了時になる。グッドラック、だ』



● 修羅の刻 ――コメディが行方不明――

 ここで集団は2つに割れる。
 即ち、生き残る為に動く者と、狩り続ける者だ。


 まずは狩る者の話をしよう――。
 頑として動かない騏の元に、最後の成果を求めて狩人達が集い、その狩人を狩る目的の者が集まる。
 D−5北部は今修羅の世界と化しつつあった。

 彼方此方を彷徨っていた黒百合は偶然隣の区画に居た為、誰よりも早く現地入りした。
 が、つまりそれは騏の罠にかかりに行くという事と同義。
「喰らえ‥‥ッ!!」
 反応一歩及ばずスイカ頭となった黒百合は、騏の長い待ちガイルの犠牲になったのだ。サマソッ。
 しかしそんな騏にも暴力と言う名の厄災が振りかかる。
 囮役として今まで動いていた淳紅は、最後は攻撃の起点としてその役割を変えた。
 カラン、と鈴の音ひとつ。漏れ出る黒。淀み、溢れ、騏を包む。
「Canta! ‘Requiem’.」
「ナイスなのですよ!」
 異形の手が騏の拘束に成功し、すかさずRehniが騏の首輪のボタンを押した。その瞬間。
 凪が奔る。チャンスは今しかない。数に劣る以上、機が全て。
 Rehniが騏の3秒間動けない間を狙い、凪は淳紅を狙い背後から仕掛けた。
 ゼロ距離射撃の3点バーストを淳紅のこめかみに叩きこみ、彼の首輪のボタンを素早く押す。
 3‥‥
「ジュンちゃん!!」
「来させないわ!」
 2‥‥
 淳紅のボタンを押しながら、その3秒の時間を稼ぐべく銃口をRehniへと向けた凪。
 フルバーストじゃ1秒も持たない。3点じゃ弾幕効果は薄いけど、1秒でも長く、稼げる様に。
 1‥‥
「いややぁぁっ!!」

 ――勝った。



● 外の世界へ ――ただいま久遠ヶ原――


 そして生き残りに賭ける者――。


『会場内にいる生存者に告ぐ――只今を以って、競技時間は終了となる。10分以内に戻れば、生還者となるからね」


 威織はその生を託されている。
(滅炎さんの為にも、何があっても生還しなきゃ‥‥)
 それなのに。ああ、なんて運が悪いんだろう。最後の最後に、捕まるなんて。
「コレも勝負なんだぜ‥‥スーパーティーショット!」
 ――威織、しってるか。ぷろのてぃーしょっとはじそく300km。
「ゴフぁッ」
 くの字に折れ曲がり、宙を舞う威織の体。これは一撃必殺ってレベルじゃない。
 撃退士でよかったね‥‥!



 このゲームは、終わり際の待ちぶせが容易だ――。
 ルールにはないけど誰もが知っている暗黙の了解。だからこそ、出会ってしまうのか。

「よォ‥‥やっぱり同じ事考えてたなァ」
『マキナ君こそ☆ だったら――話す事はないよね☆』
 チェリーの頬に、冷たいものが流れる。
 強がってはみせるが、武器は所詮ビー玉。優秀とは言い難い。
 指弾の要領でビー玉を打ち出し、走る。相棒の――無事萌々佳のいる所まで誘導できれば。
 しかしマキナは木々の間を縫うように‥‥海の時と全く同じ要領でチェリーに詰め寄っていく。
『くっ――!』
 防がれるビー玉。枝葉を払いながら確実に近寄ってくるモーニングスター。
 嗚呼。
 あとは、外に出る、だけ、だった、の、に――‥‥。




● ころしあいのあとで

 結局、生還できたのは7人だった。
 私達白組が4人。紅組が3人。
 まぁ、私――唐沢完子は瀕死で脱出したら人数に入ってただけなんだけどね。

 終了の放送の後、私はゆっくり潜行で出口を目指したわ。
 だって、誰かの待ちぶせなんて火を見るより明らかじゃない?
 もう出口が見えて、外の光が目に入ってきて――ああ、眩しいなって、そう思った時よ。
 いきなり頭上から何かが降ってきた。そして、あたしの顔は血で濡れたわ。
 一瞬何が起きたかわからなかったけど、首にひやりと冷たい指が触れるのを感じた。
 恐怖なんて認めたくないけど、それを感じるって事は私はまだまだ未熟ね。
 それから急いで出口に走って、ギリギリ生還ってわけ。
 ちなみに襲ってきたのは萌々佳だったわ。血に濡れた地球儀片手に戻って来たもの‥‥。

 それにしても。殺伐とした2時間だった筈なのに、脱落者を含めて皆笑い合ってるのよね。
 つくづく――馬鹿ばっかりかしら、この学校は。‥‥勿論褒め言葉よ?

 そうねもしまた同じ競技があったら――自分の力も試したいし、またやってもいい、かもね。





 日が傾き、気温のピークもすぎる頃――本部に提出された書類には、次の様に記されていた。

 種目/格闘球技
  白組:17ポイント 紅組:8ポイント


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 前を向いて、未来へ・Rehni Nam(ja5283)
 BlueFire・マキナ(ja7016)
重体: −
面白かった!:19人

守護司る魂の解放者・
イアン・J・アルビス(ja0084)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
死神と踊る剣士・
鳳月 威織(ja0339)

大学部4年273組 男 ルインズブレイド
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
Wizard・
暮居 凪(ja0503)

大学部7年72組 女 ルインズブレイド
お菓子は命の源ですし!・
二階堂 かざね(ja0536)

大学部5年233組 女 阿修羅
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
仁義なき天使の微笑み・
森浦 萌々佳(ja0835)

卒業 女 ディバインナイト
┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
あんまんマイスター・
七種 戒(ja1267)

大学部3年1組 女 インフィルトレイター
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
雄っぱいマイスター・
御手洗 紘人(ja2549)

大学部3年109組 男 ダアト
未来へ願う・
桐生 直哉(ja3043)

卒業 男 阿修羅
撃退士・
舞草 鉞子(ja3804)

大学部9年158組 女 阿修羅
『力』を持つ者・
青柳 翼(ja4246)

大学部5年3組 男 鬼道忍軍
泥んこ☆ばれりぃな・
滅炎 雷(ja4615)

大学部4年7組 男 ダアト
『封都』参加撃退士・
ユリウス・ヴィッテルスバッハ(ja4941)

大学部5年4組 男 ディバインナイト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
序二段・
丁嵐 桜(ja6549)

大学部1年7組 女 阿修羅
BlueFire・
マキナ(ja7016)

卒業 男 阿修羅
使命を帯びし神の子・
フル・ニート(ja7080)

高等部3年4組 女 アストラルヴァンガード
京想う、紅葉舞う・
神埼 律(ja8118)

大学部4年284組 女 鬼道忍軍
二律背反の叫び声・
唐沢 完子(ja8347)

大学部2年129組 女 阿修羅
猛る魔弾・
平山 尚幸(ja8488)

大学部8年17組 男 インフィルトレイター
撃退士・
千堂 騏(ja8900)

大学部6年309組 男 阿修羅
美貌の奇術師・
紺屋 雪花(ja9315)

卒業 男 鬼道忍軍