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マスター:柏木雄馬
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
形態:
参加人数:12人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/04/16


みんなの思い出



オープニング

「私と結婚を前提におつきあいをしてください──!」
 榊悠奈の告白がアルディエルの鼓膜を震わせた時── 少年天使の脳は一瞬、その内容を認識することができなかった。
 最初に反応を見せたのは、思考ではなく身体だった。
 意表を突かれた身体が思わず撃退士たちの眼前で硬直する。もし、この時、彼等がアルディエルを攻撃していたら、驚くほどあっけなく少年天使は討ち取られていたことだろう。
 実際にはそうはならなかったので、少年は混乱した自分の思考を解きほぐしていくことが出来た。
 眼下には、顔を真っ赤に紅潮させた愛しき少女の姿── 緊張に全身から汗を噴き、呼吸する事すら忘れ…… その瞳をギュッと閉じ、身じろぎもせずに少年の返事を待ち続けている。
 時が止まったかのような静寂の中──少なくとも、少年にはそう感じられた──、じっと己の手の平を見る。
 ──天界からもたらされていた己の力が、僅かずつではあるが失われ始めていた。
 まいった、と少年は呟いた。どうやら頭が覚悟を固める前に、心と身体が堕天を決意してしまったようだ。
 少年がそう告げた瞬間、他者の歓喜の声が爆轟となって少年の耳に飛び込んできた。
 地に下りた少年を手洗い祝福で迎える学生たち。泣き笑いの表情で正面に立った悠奈が感極まって少年へと飛びつき、万感の想いで抱き締める。
 家族── それは少年が物心ついた時から持っていなかったもの。一度は差し出された『姉』の手によって与えられ、そして、奪われたもの──
 孤独── それは少年が物心ついた時から常に影の様に傍らにあったもの。日の温もりを知った後の彼が最も恐れるもの。
 再びそれと共に生きていくしかないと、一度はそう覚悟した。だが、そんな彼に榊悠奈は再び希望をもたらした。
 今度こそ、手に入れられるのだろうか──少年は手を震わせる。また失うかもしれない──己の唇を噛み締める。
 あんな絶望を再び味わうくらいなら、最初から独りと決めて戦い続けた方が…… いや…… いや……! だからこそ…… 今度こそ……! 改めて得ることができたこの希望こそ、己の力で守り抜くべきではないのか……! だけど……!
「闇が、晴れます」
 学生撃退士の言葉がアルディエルを思索から現実へと引き戻した。
 撃退士の作り出した闇が溶ける。かの天使を地上に縛り付けていた鎖が消える。
「少年、お前は『兄』と向き合わねばならぬ」
 撃退士は言った。アレはお前が乗り越えなければならぬ壁だと。乗り越えなければ前には進めぬ、と。
 覚悟を決めろ、覚悟を決めろ…… 己に言い聞かせる様に心中で呟く少年が、だが、覚悟を定める前に。
 再び少年と撃退士たちの前に現れたファサエルは…… その表情を消していた。表の面からその内心は窺い知れない。元より感情に乏しい天使であったが。
「堕天だと……? 正気か、貴様は…… 戻って来い。今ならまだ最小限の力の喪失で済む。一時の感情で道を過つな。過去の自身が定めた誓いと志まで穢すつもりか」
 何の為に数多の世界、数多の戦場を渡り歩き、何の為に力を得たのか、その目的すら見失ったか── そうファサエルが問い掛ける。
 忘れるわけが無い。見失うわけがない。……あの苦難のヒビは全て敵を討つ為。『姉』たるマリーアデルを殺した悪魔どもを滅ぼす為のもの。堕天をすると言う事は、そうまでして得て来た力を全て失うということ。それは即ち、己の過去、生きてきた意味の捨て去ることにも等しい愚行──!
「だけど…… それでも……!」
 だが、少年は反駁する。復讐にしか生の意味を見出せずにいた自分に、一度は共に生きて行く事を拒否した自分に…… それでも悠奈は、そんな自分に再び手を差し伸べてくれた。必要なんだと言ってくれた。
 落ち込み、不貞腐れていただけの自分を必死に探し、あのファサエルと戦闘状態に陥った後も彼女らは退かなかった。そうまでして自分の為に骨を折ってくれた悠奈に…… 徹汰ももう本心を抑えることはできなかった。
 悠奈と共に生きていく。その為なら何を捨てたって…… いや。全てを背負ったまま進み続ける覚悟はある。
「失われる力は…… 受け入れてもらえるか分からないけど、学園の撃退士として戦うことで取り戻す。この僅かな年月で、人間たちはここまで天魔と戦えるだけの力を手に入れた。彼らと共に戦うことに、ただ一抹の不安もない!」
「……誘惑に堕ちるか、アルディエル。お前はついぞ、己の心の弱さに打ち克つことができなかった」
 淡々とした声音。だが、長く一緒にいたアルディエルには分かった。とても…… とても珍しいことではあったが── ファサエルは、怒っていた。
「もう好きにすればいい。私も好きにさせてもらう。……奇遇だな、アルディエル。私も、お前のことは最初に顔を合わせた時から気に喰わないガキだと思っていた」
 羽ばたき── 地上を高速で飛翔したファサエルは、彼我の距離を一瞬で縮めてきた。
 目にも留まらぬ大剣による一撃を、両手の平に生み出した光珠で受け止めるアルディエル。慣性を無視したでたらめな連撃を後退しつつ全て凌ぎ…… ガンッ! と突き出された重い一撃を利用して思いっきり後方へと弾かれる。
(本気だ……! 全力じゃないか……!)
 己が身より少しずつ零れ落ちていく天界の力は、まだファサエルと切り結べるだけの余力を残していた。だが、それもいつまでも保ちそうにない。となれば、今の自分がやるべきことは……!
「逃げて、悠奈! 皆さんも……! ここは僕が防ぎます!」
「……馬鹿を言うな」
 心底、呆れたような調子で、榊勇斗──確か、悠奈の兄──が少年の横に並び、溜め息を吐いた。生真面目な印象。どこかファサエルに似ているか……? だとしたら苦手なタイプか。初対面……のはずだが、以前、どこかで見た顔のような……
「おい、いいか、アルディエル。家族ってのはな、一方的に庇護したり、犠牲になったりする存在じゃない。人生という長い道を共に往く存在なんだ。……この学園に入った頃の俺は、そんなことも分かっていなかった。学園の多くの友人たちや恩師たちがそのことを俺に教えてくれた」
 天使から目を離さぬまま、傍らのアルディエルに──何とも複雑そうな表情で──告げる勇斗。少年と兄、二人の間、その後方に、悠奈が位置する気配を感じる。
「だからな…… きっとお前もあの学園で学べることが色々ある。だから…… 何としてもここを生き延びろ。悠奈と、みんなと一緒に学園へ帰るんだ」

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リプレイ本文

「あちらは見事に告白が成功したみたいで、一安心……かな?」
「ああ。悠奈ちゃんの想い…… アルディエルに届いて本当に良かった」
 曇天の切れ目から夕陽の差し込む丘の麓の戦場で── 想い人に対する説得が成功して涙を浮かべて喜ぶ悠奈と、まだ複雑そうな表情でそれを見守る勇斗を見やって、永連 璃遠(ja2142)と日下部 司(jb5638)はその表情を綻ばせた。
「……とは言え、戦況的にはあまり良い方向へ動いたわけではないようだけど」
 視線を正面へ戻しながら璃遠と司が息を吐く。その視線の先には、赤光を背景にゆっくりとこちらへ歩み始めたファサエルの姿── そこから放たれるプレッシャーはさっきまでとは段違い。林の奥には負傷者たちも多くおり、状況は全く変わっていない。
 なぜこのタイミングで堕天なぞするのか── 腰と拳を落として戦闘態勢を整えながら、獅童 絃也 (ja0694)は傍らのアルディエルにそう嘆息した。
 彼等なりに考えた結果ではあるのだろうが。『大人』である絃也から見れば、それは他者への依存──『逃げ』としか映らなかった。言うなれば、思考の停止── 或いは、堕天せずに人と共に歩む方法もあったかもしれないのに──
「僕は『徹汰』が堕天してくれて、むしろ良かったと思っています」
 答えたのは勇斗だった。庇われると思ってなかった少年が驚き、顔を上げる。
「……対悪魔という一点において、人類と天界は共闘できるかもしれない。けど、天空の高みから僕らを見下ろす連中が、人類を対等の存在と認めるとも思えない」
 勇斗はそう言いながら、倒れた巨人へ視線をやった。──天界の力を借りて、悪魔を追い出したとしてその後は? 属領、犬、手駒、家畜…… その時、人間がどの様な呼ばれ方をされるのかは分からぬけれど。あそこにいる巨人の様に、自由や誇り、声さえも奪われて。対悪魔の尖兵として利用されるのであれば、ご勘弁願いたい。
「まぁ、少なくとも『徹汰』は悠奈と共に生きていくべく、僕らと同じ立ち位置まで下りて来た。ともかく『悠奈の兄としては』、ですね。その点『だけ』は評価するのにやぶさかではないのです」
「お義兄さん……」
「義兄さん言うな」
 なにやら感動した面持ちの少年に向かって、ていっ、とチョップを振り下ろす勇斗。絃也はバリバリと頭を掻くと、溜め息と共に頭を振った。色々と言いたいこともあったりはするが、今は目の前の天使をなんとかすることが先だ。
「一つだけ忠告だ。今更もう堕天するなとは言わんが、時と場所は選べ、間抜けめ。己の行動が後々どういった影響をもたらすのか、考えてから行動せんと手痛いしっぺ返しを喰うぞ」
「それは……早々に結婚を決めてしまったことに対する……?」
「違う」
「結婚言うな」
 絃也と勇斗、双方からツッコミを入れられる徹汰。そんなやり取りに微苦笑を浮かべながら、璃遠は改めて巨人を見やった。
(アルディエルの知り合いでもあるようだし…… 止めを刺すわけにはいかなくなったね)
 少年がこの場で──つまり、撃退士たちの只中で堕天した。それは僕たちを信じてくれたという事。なら、僕たちもまたその信頼に応えなければ。
「となると、後は私たちがここから逃げるだけ、なんだけど…… あっさりとは逃がしてくれないよね、やっぱり」
「怪我をした姫(=沙希)と麗華ちゃんも下がらせないといけませんから、その間、自分たちでファサエルを抑える必要がありますね。アルディエルは悠奈ちゃんと一緒に下がってもらった方が良いですか?」
「それは、アルディエルがファサエルを力でねじ伏せたいのか、話で説き伏せたいのかで変わってくるな」
「ならアルディエル…… って、いい加減、長いな。これからなんて呼べばいいかな? アルくん? それとも、徹汰くん?」
 やいのやいのと相談を始める彩咲・陽花(jb1871)と神棟星嵐(jb1397)。お前はどうしたいのか、とファーフナー(jb7826)が視線で少年に問いかけ。璃遠が屈託の無く愛称を訊ねてくる。
 そんな学生撃退士たちの姿を見て、少年天使は目を丸くした。
「信用…… してくれるのか? ついさっきまで敵だった僕を……?」
「当たり前でしょ!」
 うんうんと頷く白野 小梅(jb4012)の横で、雪室 チルル(ja0220)が声を上げた。
「あんたの決断をあたいは信頼する! だから、全員でここから帰る! 勿論、あんたも含めてね!」
 刺突大剣を握りなおして一歩前に出るチルル。ファサエルは宙空に新たな大剣を生み出すともう一方の手でそれを掴み、小走りでこちらへ懸け始める。
 少年天使もまた前に出ようとして一瞬、足を止め…… 璃遠に「アルでいい」と告げてから天使へ向け走り出す。
「僕が正面で奴を抑える! 堕天して力は失われつつあるけれど、それくらいは何としても!」
 学生たちが寄せてくれた信頼に、自分も応えなければならない。悠奈の為に。信じてくれた皆の為に。その為ならばこの命、懸ける価値がある──!
「間違いです」
 ぽこん、と後ろから頭を叩かれて。気合も漲らせていた少年はきょとんと背後を振り返った。
「アル……でよいのでしたね? では、アルさん。あなたには護るべき人がいるのですから、命を懸けるなんて馬鹿な真似はやめなさい」
「え……? だからこそ命を懸けるんじゃ……」
「違います。みっともなくてもいいから、生き延びて、共にあり続ける…… そっちの方がずっとずっと大事です」
 淡々とした表情で、淡々と告げる雫(ja1894)。その後ろで悠奈が心配そうにアルを見つめている。
「ファサエルの一番の標的は、おそらくは貴方です。……一人で何とかしようと無理はせず、私たちに頼りなさい。それがこれから学園で貴方が得る『力』なのですから」
「そう。また失うかも、なんて恐れなくてもいい。今のあなたは一人じゃない。みんなで守っていけばいいの」
 雫に続き、月影 夕姫(jb1569)もそう言ってアルを諭した。──勇斗くんの言ったことを、もう忘れたの? と背後の勇斗を親指で差す。
「『共に助け合うのが家族』かぁ…… 『未来の義弟』に良いこと言うね、でも、勇斗君。その言葉は君自身にも当てはまることなんだからね」
「『みんなと一緒に学園へ帰る』── 『未来の義弟』の前で説教垂れたいのは分かるけどな。その『みんな』の中に自分を含めることは忘れるなよ」
 そう勇斗をからかうように言う葛城 縁(jb1826)と司。勿論、と真顔で答え、感謝の言葉を返す勇斗。縁と司の真情はちゃんと勇斗に伝わっていた。2人はその顔を見合わせ、平手で勇斗の背を叩く。
「悠奈さんの想い…… そして、その想いを受け取ったアルディエルさん。……二人の為にも、この場をなんとしても切り抜けなければいけませんね」
 狙撃銃を両手に抱えながら、ユウ(jb5639)が静かに決意を固める。
 縁もまた頷いた。
「……そうだね、帰ろう。皆で帰ろう。久遠ヶ原学園が…… 今の私達の帰るべき『家』だから」


 まるで騎兵の如き圧力で迫るファサエルの『歩様』は、今や『速歩』から『襲歩』へと移行していた。
 迎撃の先陣はチルル。キラキラと煌く細氷を曳き行く彼女の後方をフォローする様に他の前衛が広がり、その後方へ射手たちが展開する。
「勇斗くんが前衛、アルくんは遊撃。悠奈ちゃんは後方から回復でみんなをフォロー!」
 大型ライフルを抱え上げつつ、アルたちに指示を飛ばす夕姫。その傍らを、前方の天使に正対する撃退士たちとは逆方向に向け、負傷した沙希や麗華に肩を貸しつつ星嵐や小梅、縁が後退していく。
「フェンリル! 沙希ちゃんたちのことをお願いだよ。林まで送り届けたら直ぐに戻って来るんだよ」
 巫女服姿に薙刀を構えた陽花が前線の方を気にしながら狼竜を召喚。すかさず星嵐と小梅が後方へ搬送する為、沙希と麗華をその背に乗せる。
「姫のこと、よろしくお願いします」
 沙希を預け、両手に双銃を活性化させつつ戦場へと戻っていく星嵐。小梅は親友である麗華の護衛に随伴することにした。ファサエルがまだ学園生の拉致を狙っているとしたら、動けない麗華と沙希は格好の的だ。
「うん、お願い。縁も。私は足止めに加わるから……」
「陽花さん!」
 その場から離れようとする陽花を呼び止め、縁は己が持つプランを告げた。陽花はハッと頷くと踵を返して戦場に向かう。
「それじゃあ、悠奈ちゃん。行って来るねぇ〜♪ 麗華ちゃんのことはまっかせて〜♪」
「みんな、学園に帰ったらお祝いだからね! 絶対に学園に帰るんだよ! 帰れなかったら陽花さんの手料理(殺人級)一気食いの刑なんだからねっ!」
「ひどっ!」
 さて、本当に酷いのは縁の言い様か、それとも刑の内容か。ともあれ、走り出した狼竜と護衛の2人をツッコミがてら見送って、陽花もまた天使の足止めに加わった。
 戦場ではファサエルとチルルが今まさに接触せんとしていた。陽花はぶるりと身震いすると、勇斗たちに声を掛けた。己の気力を奮わせる意味もあった。何気に召喚獣なしで戦場に立つのは初めてのことだった。
「勇斗くん、悠奈ちゃん。二人とも、無理しない範囲で気合入れていこうね! アルくんも! 昨日の敵は今日の友。共同戦線、よろしくだよ!」
 その声に、最前列──天使に向かって吶喊していくチルルの気合の雄叫びが重なる。人が決めた道を邪魔するな、と少女は叫んでいた。
「ここから先は通さないわ! 通りたかったらあたいを倒していくことね!」
 その突進、矢の如く。細氷舞う刺突大剣をその身ごと速度をつけて、眼前の天使へ突き出すチルル。対する天使は走りながら軽く地を蹴ると、その翼を翻してチルルの剣と頭上をパスした。
「あ、こらっ、卑怯モン! 殴れるとこまで降りてこーいっ!」
 通り過ぎ行く天使を見上げて、靴底を地に滑らせ方向転換するチルル。それを見た星嵐が弾ける様に双銃を空へと跳ね上げる。
「空襲、来ます。牽制射!」
 急ぎ仰角を取る夕姫とユウの狙撃銃身。両手に鳴り響く星嵐の双銃速射。ファーフナーは己の体内のアウルの力を活性化させると、天使の進路上、前面に対して無数の影の刃を発生せしめる。
「行け」
 呟きに応じて蝙蝠の如く空中の天使に襲い掛かる影の刃片たち。それが天使の視界を覆うタイミングで、ユウと夕姫は対空砲火を撃ち上げた。緩い弧を描き飛翔するアウルの弾丸。闇の力を込めた弾丸が天使の重力盾を貫通し、光の力をごっそり削る。
 だが、天使は止まらない。重力盾を掲げて闇刃の蝗を突破したファサエルは対空砲火を縫うように潜り抜けると、そのまま地上のアルディエルに向けて矢の如く突っ込んだ。その鋭鋒を避け、左右へ散る絃也と璃遠。対するアルディエルはファサエルを地上に誘引するべく敢えて地上に留まった。攻撃を受け止めるべく両の手に生み出す光珠。だが、その輝きは以前と比べて確実に弱くなっている。
「……愚か者が!」
 呟きと共に繰り出される天使の大剣。直前、間に割り込んだ司がその身で刃を受け止めた。仕込み鎧に刃を滑らせ、逸らし切れきれずに飛ぶ血飛沫。それでも司は膝を屈せず、その身で天使の吶喊を受け凌ぐ。
「グッ…… さすがに重い、が……!」
 『肉を切らせて……』骨を断つ── 斬撃の衝撃をものともせず、司は白銀の大剣を振り被った。白く霞を棚引かせながら振り下ろされるその刃。だが、天使は慣性などないかのようなありえない速度でその刃を引き戻し、通常なら止められないはずの司の剣をその得物で受け弾いた。その刃は未だ止まらず、司の首を狙って宙を走る。その反撃は、だが、斜め後方から天使の顔目掛けて放たれた、衝撃波の刃による牽制によって阻まれた。先ほど左右へ分かれた璃遠が天使の攻撃範囲外から抜刀攻撃を放ったのだ。
「ここからなら『盾』では受けれないでしょ!」
 天使の側方にザザッと砲撃態勢を取り、必殺の砲撃を放つ夕姫。狙い過たず顔面に放たれたその銃撃を天使が大剣の腹を盾代わりにして受ける。その反対側から、ダンッ、と震脚で踏み込む絃也。特定の誰かを狙うことは予め想像がついていた。それを逆手に取れれば追い討つことなど造作も無い。
 踏み込むと同時に突き出される拳── 肺をも潰さんと放たれたそれは強かに天使の背を打った。手応えはあった。だが、天使はそれをものともしなかった。クルリと天使の身体が回り、送れて繰り出されてきた刃が絃也をガードごと吹き飛ばし。同時に、その軌跡の上に生み出された魔法剣が、飛翔し、天使を取り囲んでいた撃退士たちを1人ずつ、五月雨に貫いた。
「グッ!?」
「星嵐さん!?」
 自らも魔法的なダメージを喰らいつつ、飛びそうになる意識をどうにか保って飛び起きて。視線を振った璃遠の傍らで、同様に被弾した星嵐が仰向けに倒れ込んだ。慌てて駆けつけ、その身を引き摺るようにしながら敵の攻撃範囲から引っ張り出す璃遠。己も被弾しながら夕姫が天使に牽制射を放ち…… 前衛の壁の陰から必殺の銃弾を放ったユウは、だが、その一撃を待ち受けていたかの様に重力の盾で受け凌がれ、やはりマイナスレートの力を持つ自分は敵にマークされていると知る……
(一撃でも貰うと厳しい…… ってのが体力の無い僕らにはかなり……!)
 血の味のする口中に奥歯を噛み締める璃遠の、その傷の痛みがふと楽になった。隣りで気絶していた星嵐も、枯れ草を髪から落としつつ半身を起き上がらせる。
 星嵐と璃遠の身を包んだ緑色のアウルの光── それは癒しの光であった。
 傍らに立つは雫と悠奈。戦場に立つ回復の使い手──
「悠奈さん。私たち二人の回復で、撤退まで戦線を維持します。……大丈夫。強敵ですが所詮は一人。負けないことに徹するのであれば、やり様はいくらでもあります」


 遠くから聞こえる剣戟と銃声── それがいつ、自分の身に降りかかるかと怯えながらも、縁は負傷者を乗せたフェンリルの傍らで、背後を振り返らず全力で林へ移動していた。
(大丈夫。仲間を信じてる。ファサエルは皆が抑えてくれている。大丈夫。こっちには来ない。大丈夫……)
 チラと狼竜の向こう側を見ると、小梅も焦っているようだった。魔法の箒をギュッと抱え、時折、麗華を心配そうに見て。……時折、ニコッと笑うのは親友と目が合ったからだろうか。
 そんなこんなでようやく林の端まで到達し── 前方、行く手の林がガサリと音を立て、縁が慌てて散弾銃をそちらへ向ける。
 現れたのは桜井・L・瑞穂(ja0027)とマリー・ゴールド(jc1045)だった。目に見えて脱力し、ホッと息を吐く縁。一方、瑞穂の方は驚いた様子も見せず、向けられた銃口に不快気に眉をしかめた。
「どういうつもりですの、それは?」
「ああっ、ごめんなさい! これこれこういうわけで……」
 縁から説明を聞いて状況を把握した瑞穂は、狼竜に乗せられた沙希と麗華を下ろしてテキパキと回復し始めた。
「あの人が小梅ちゃんの親友かぁ……」
 治療を終えた敬一を膝枕したまま、戦場を見やって呟くマリー。意識を取り戻して頭を上げようとした敬一をにっこりと元へと戻し。お腹がすいているだろうと持って来たお菓子をあーんと口へと持っていく……

「落ちろぉォ!」
 包囲され、上空へと逃れようとファサエルの頭上を占位して。アルが両手の光珠で『兄』を地上へ叩き落した。
 ダンッ、と一歩踏み込む震脚。その闘気を解放した絃也が敵の背後から肉薄し。背後へとぶん回された大剣を持つ天使の手を絃也は両腕を大きく回して押さえ込む。
 そのまま足元から掬い上げるように拳を打ち上げ、更に爆発的な踏み込みで体を当てて体勢を崩し。踏み込みつつの拳の一撃から肉薄しての肘の突き上げ。更に半歩踏み込みながら半身ごと拳を突き入れる。
 天使も退かない。肉薄したまま大剣の柄を絃也の額に打ち込みつつ、斬撃が可能になる空間を無理やりに抉じ開ける。
 絃也も執着しなかった。一旦、距離を取って敵の攻撃範囲の外へ出で。入れ替わるように正面に進み出たチルルの突き、突き、突きに、天使が辟易したかのようにチルルごと弾き飛ばす。
 そこへ後方から飛ばされる雫と悠奈の回復の光── ファサエルもその攻撃能力を活かして大分、林側へと押し込んだものの、撃退士たちは未だその戦闘能力を維持していた。
 その撃退士たちの継戦能力を支えているのが、彼女たち、雫と悠奈の回復だった。その事はファサエルも分かっていたが、彼の攻撃の手は届かない。
 地を蹴り、翼で地表を飛翔し、矢の如く悠奈へ迫るファサエル。その一撃は、だが、またも『防壁陣』で盾を活性化させた夕姫によって阻まれた。
「勇斗くん! 二枚盾で防ぐわよ! それと後のフォローをお願い!」
「はいっ!」
 振り上げた大剣が振り下ろされるより早く、盾ごと身体を叩きつける夕姫。消える盾の陰から突き出される大型ライフルの銃口──『神輝掌』の光を湛えたその引き金を引くより早く、三半規管を狂わされた。グラリと膝をつきつつも、その上に銃本体を乗せたまま銃撃を継続する夕姫。その銃身の内側に身体を滑り込ませたファサエルの一撃を代わりに勇斗が受け防ぎ。横から司が肩口からの体当たりでファサエルを外へと押し出し、斬りかかり。勇斗の盾に半身を隠した陽花が間髪入れず、死角から天使の脛を薙ぐ。
 再び包囲の中心に戻され、周囲から攻撃を浴びせられる天使。その視線がこちらに向いた瞬間、璃遠と星嵐は一歩下がって距離を取った。と、忘れかけたタイミングで放たれるユウの銃弾。天使がそれを受け弾き。直後、ポップに鳴り響いた星嵐の双銃が天使の足の甲を打つ……

 優勢な敵を相手に、撃退士たちは思惑通り消耗戦に引きずり込むことに成功していた。
 空を飛ばれぬようアルディエルが頭上を抑え、回復支援の下、前衛の壁役が四方を囲み、後衛からの射撃支援と共に天使の体力を削り取る。
 疲労もダメージも蓄積しているはずだが、にも拘らず天使は退がらない。
 陽花が背後を振り返る。……林まで、もう50mもなかった。さすがにこれ以上は押し込まれるわけにはいかない……
「しつこい男は嫌われるわよ! 諦めて帰ったら?!」
 まだまだ元気な声音で、だけど、ちょっぴり疲れた調子で。剣戟を打ち合わせるチルルがその日、何度目かのふっとばし攻撃でコロコロと後ろへ転がされる。
 代わりに前に出て大剣を打ち合わせ…… その日、何度もそんな事を繰り返してきた司がふと唐突に気がついた。
 この男── もしかして既に当初の目的を見失い、何かに対して意固地になって戦っているだけではないか……?
「ファサエルっ! 貴方は何に対してそんなに怒っているんだ?! どうしてそんなにも感情を昂らせている?!」
 打ち合わされた大剣を弾き返して、追撃の手を止め、司が尋ねた。
「怒っている? 私が……?」
「自覚がないのですか……? 貴方が顕にしたその感情は紛れもなく『怒り』です。その感情が憤りや悲しみから来るものであるのなら…… その源泉はどこですか? 何処に向けられているものですか?」
 反撃の魔法剣を受け止める勇斗の陰から、再反撃を放ちつつユウが問う。
「アル! 君も彼に対して想いがあれば、悠奈ちゃんがしたように言葉を紡ぐんだ!」
「そうよ。あなたの想いを本気でぶつけるの。……『家族』であるなら、尚更ね」
 司と夕姫が上空の少年天使に呼びかける。瞬間、視線が交差する天使二人── この間、交戦状態が途切れたわけでもない。
「……ファサエル! 俺はずっとあんたの事が嫌いだった! 初めて会った時からずっとだ!」
「奇遇だな。私も貴様の事は徹頭徹尾嫌いだった」
 言い合いながら光珠と大剣を打ち合わせる『兄』と『弟』。それを見たファーフナーが盛大に溜め息を吐き。璃遠がその表情を苦笑に引きつらせる。
「あの二人……(汗) 会話を聞いていると、それぞれ相手の嫌な部分の印象が強い、のかな……?」
「……ファサエルは他人の感情を読めない以前に、自身の感情すら理解できていないようだしな。まったく、面倒な兄弟だ」
 もっとも、自分も家族ってものとは縁遠かったりするのだが…… ファーフナーのその呟きは、天使たちの剣戟に掻き消されて誰の耳にも届かない。
「だったら、なぜ、リーア姉が死んだ後、俺のことを引き取った!?」
「リーアに頼まれていたからだ! だというのに貴様は……!」
 アルディエルに反撃の一撃を叩き込もうと構えるファサエル。光珠を手に突撃をかけようとした少年天使が、突然、空中でガクリとその身をつんのめらせた。堕天した影響か。本来であれば受け止められたであろうはずの一撃が、容赦なくアルへと迫る……
「む、いかん」
 気づいたファーフナーが前へと飛び出す。手を振り、見えざる弾丸を投射するもファサエルの動きは止まらない。
 その時、森の中で二箇所、キラリと閃光が走り── 思わぬ場所から飛翔してきたアウルの銃弾が青年天使の動きを止めた。倒れかけたアルを支えて、司が『全力跳躍』で距離を取る。
「ふっふっふっ。ボクがただのぉ魔女っ子だと思ってたぁ? ずっと練習してたんだからぁ♪」
 その銃撃は、負傷者の搬送後、森の中で機会を窺っていた小梅と縁の狙撃銃による一撃だった。
 これ以上ない絶好のタイミングで銃撃を放った小梅が狙撃銃を放り投げ、それが落ちてくる前に箒へと魔具を変更。親友である悠奈の元へと猛ダッシュで走り寄る。
 命中した『アシッドショット』が天使の防具を溶かす様をスコープ越しに確認して── それまで『クリアマインド』によって平静を保っていた縁は、伏射姿勢を取ったままでブワッと汗を噴き出させた。
(あ、危なかったんだよ……!)
 銃把を握る手をカタカタと奮わせる縁。タイミングは偶然だった。もし、少しでも自分たちの銃撃が遅れていれば…… いや、まぁ、でも、悠奈ちゃんも雫ちゃんもいるし、どうにかなった……? 致命傷でなかったら、の話だけど。
「今だよ、みんな! 行くよ、フェンリル!」
 ともあれ、森からの不意打ちにより、ファサエルの動きは止まった。事前に縁からタイミングを知らされていた陽花が戻って来た狼竜に飛び乗って、横から動きの止まったファサエルへと突っかける。
 咆哮と共に狼竜の口中より放たれる雷撃。そのまま騎兵突撃した陽花はすれ違い様に薙刀を斬り払い…… そのまま一撃離脱で駆け抜けた所を、天使の重力によって「むぎゅう」と押し潰された。
 倒れる竜(と陽花)の陰からスッと姿を現すユウ。そちらに視線が向くのを見逃さず、すかさず反対側から距離を詰めた星嵐が常世の闇を身に纏い、光すら飲み込む漆黒の弾丸と化して伸ばした指の先より投射する。重力の盾を振り向ける余裕もなく、背を直撃されるファサエル。そこへ正面側のユウが己の内に秘めた悪魔の力を解放し──その漆黒に光る剣状のエネルギー体でもって、宙空に墨を撒くが如く、1回、2回とその軌跡を塗りつぶす。
「重力操作なんて小細工、あたいには効かない!」
 真正面から突撃を掛けるチルルに繰り出される『重圧』──ワンパターン。これで何回目だと思っている? たとえ抵抗できずとも、なんとなく来ると分かっていればいつもより移動力に余裕を持たせて突っ込めばいいだけのこと──!
「気合、集中、努力と根性ーっ!」
 叫ぶチルルが突き出す両腕に煌く氷状結晶と白い光── ようやく、届いた。それこそチルルが奥義、氷剣『ルーラ・オブ・アイスストーム』。生み出された氷の突剣は何の抵抗も感じさせずに重力の盾を貫いた。
 思わず下がろうとした天使の身体を背後から支える巨体── それは、いつの間にか肉薄していたファーフナーの身体だった。これまで一度も肉薄してこなかったファーフナーが、このタイミングで突っ込んできていたのだ。
 後退を阻まれ、剣の交差でチルルを弾き飛ばすファサエル。その両手を大きく振り上げたファーフナーが、帯電させたその両腕で天使の肩に掴み掛かった。


「ボクの友達はボクが護る!」
 後方、林の方から駆け戻って来た小梅が箒を構えながら悠奈の前に立ち、いつでも『乾坤網』を出せるようにしながら『四神結界』を周囲へ張った。
 ここから出ちゃダメだからね、と悠奈にバチンとウインクし。箒から魔法のにゃんこを降り落としつつ、前方に立つ天使を見やる。
 天使の前進は止まっていた。
 だが、戦いまで放棄したわけではなかった。
 上段と下段に構えた大剣。周囲に浮かぶ魔法剣── 近づく者は打ち払う姿勢を撃退士たちに示しつつ、その瞳には未だ旺盛な戦意に満ち満ちている。
「退く気はない、か…… やはりここで打ち倒すしか」
 鈍色の光珠を手に前に出ようとするアルを、小梅は「ダメェ!」と押し留めた。
「ダメだよ……! おじさんは徹汰ちゃんのお兄ちゃんなんだよぉ……!」
「けど、ここで倒しておかないと……!」
 前に出ようとする少年に、ファーフナーは「無理はするな」と前から肩をポンと叩いた。その『無理』が精神的なものなのか、あるいは肉体的なものだったのか──ともあれ、力を使い果たしたアルディエルはその場に膝から崩れ落ちる。
「……力を使い果たしたか。一時の感情で馬鹿なことを」
 荒い息を吐く『弟』を見やって、ファサエルがポツリと呟く。
 それを耳にした絃也は戦う構えを維持したまま、『兄』と『弟』、二人の天使にチラと交互に視線をやった。
(……天使にとって堕天とは、人の自殺に等しいのかもしれんな。となれば、アレの取った行動は、ある意味、残酷なのかもしれない……)
「馬鹿なこと? アルくんの行動は、馬鹿なことでも弱さでもないわ。葛藤を越え、決断したのよ。それはとてもとても強いことよ!」
 叫んだのは、夕姫だった。
 璃遠もまたそれに続く。……彼等の『話し合い』はののしりあいに終始していた。結局、それは…… 『家族』として大事な何かが欠落していた──育めなかったということなのだろう。
「僕にも妹がいる。頼れる兄になろうって、常々そう思ってる。ファサエル、貴方はどうだった?」
「愛した彼女の弟なのだから、もっと腹を割って話をしていれば…… 互いに歩み寄ることができてさえいれば、もっと違った結果になっていたのではないですか?」
 星嵐の言葉に、ファサエルは答えない。その表情からはその真情を窺い知ることもできない。
「貴方がアルディエルさんに怒りを向けるのは…… 彼がマリーアデルさんに対する想いを失ったと思ったからですか? 貴方の恋人への想いを侮辱されたと感じたからですか?」
 それまでのファサエルの言動から、ユウはその内心を推察した。誓いと志、失われる力──それらは全て、姉の仇を討つという、その一点に集約している。
「復讐に身も心も囚われすぎているのでしょうね」
 雫もまた同じ結論に達した。
「だからこそ、違う道を行こうとする弟分が許せない…… ……感情で道を誤っているのは、どうやら貴方の方の様ですね。貴方たちの会話から察するに、マリーアデルという方、自分の考えと違うから、と他人を害するような人物ではないのでは?」
 そもそも、マリーアデルは彼等に復讐することを望んでいるのか── ファーフナーはそんなことを考え付いたが、口に出しては言わなかった。
 彼は幼い頃から──それこそ、物心ついた時から他人の顔色を窺って生きてきた。常に相手の考えていることを読もうとし…… 事態を好転させる為なら、柄でもない事、心にもない事も平気で口にできるようになった。
 ……だからこそ、彼らの会話に口を出すのも仕事の内の事。まぁ、自分でもおせっかいに過ぎると思わないでもないけれど。
「恐らくは飼い犬に手をかまれた心境なのだろうがな。今回の坊主の行動は、裏切りでもなければ、姉のことを忘れたわけでもない。さっき、そっちの嬢ちゃんも言ってたろ? これは坊主なりの決断なんだ。……できの悪い『弟』だって成長はしてるんだぜ? あまりの急展開に戸惑うのも仕方ないが、せっかく坊やがお前と向き合う気になったんだ。『兄』らしく受け止めてやれないもんかね?」
「……あなたも愛した人がいたんでしょう? その時のあなたと同じものを、今のアルくんも持っている…… それすらも想像できなくなってしまったの? 彼女を失った時、その想いまで凍らせてしまったの?」
 さらに夕姫が言葉を重ねて…… 撃退士たちはファサエルの言葉を待った。
 大剣の鞘を握る雫。これ以上、戦いたくはないが、やるというのであればまだ回復も攻撃手段も彼女には残っている。
 ファサエルは自らの怪我の具合を確認すると…… 林の端にチラホラ見え隠れする瑞穂とマリーに視線をやった。以前、璃遠が言っていた援軍という言葉が脳裏によぎる……
「……行くがいい。力を失った天使なぞ手駒にもならん」


 奇妙な形ではあるが、彼我の間で停戦はなされた。今回の戦いに限ればこれにて幕となる。
 撃退士たちは林へと帰還した。暫し林の端から天使の様子を観測したが、ファサエルは巨人の側から動く気配は見られない。
「まったく…… 無事だったからよかったものの、あまり無理はしないでください」
 星嵐は治療を終えた沙希を見かけると、少し怒った調子で声を掛けた。だが、すぐに、だけど、まぁ、無事で良かったです…… と、ホッとした様子で頭を撫でる。
「さて、帰って歓迎会の準備をしないとね。腕によりをかけて」
「わふ…… 賛成。すっごくお腹が空いたんだよ。なんだか4ヶ月も何も食べてなかったみたいに」
 夕姫と縁、そして陽花が、負傷者たちの搬送を始めながら皆に呼びかける。
 林を後にするに当たって── 小梅は最後に一度、天使の方を振り返った。
「今度はぁ、またちゃんとお話がしたいなぁ」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
厳山のごとく・
獅童 絃也 (ja0694)

大学部9年152組 男 阿修羅
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
戦ぐ風、穿破の旋・
永連 璃遠(ja2142)

卒業 男 阿修羅
戦いの中で戦いを……・
神棟星嵐(jb1397)

大学部6年70組 男 ナイトウォーカー
Heavy armored Gunship・
月影 夕姫(jb1569)

卒業 女 ディバインナイト
Green eye's Red dog G・
葛城 縁(jb1826)

卒業 女 インフィルトレイター
迷える青年に導きの手を・
彩咲・陽花(jb1871)

卒業 女 バハムートテイマー
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
この命、仲間達のために・
日下部 司(jb5638)

大学部3年259組 男 ルインズブレイド
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA