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マスター:ガンマ
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
形態:
参加人数:50人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/02/18


みんなの思い出



オープニング

●スクールのルーム
「冬だ! 海だ! 俺だ!」
 教室に入って早々、棄棄がバァムと黒板を掌で叩いて声を張り上げた。黒板には、荒っぽい字で『うみ』と書かれている。
「つまりだな諸君、可愛い可愛い生徒諸君よ」
 教師は「よっこらショルダータックル」という謎の掛け声と共にいつも通り教卓に座る。足を組む。
「海行こうぜ海」
 わくわくにこにこ!
「海好きだろ海」
 にっこりうふうふ!
「夏だと日差しがキツいだろJK」
 日焼けを気にする女子の事も考えるなんて、流石先生っ!
「だって去年も『また行こうね』って言ったの諸君ですしおすし」
 約束を忘れない男、棄棄!
「……言ったろ? 言ったぜ? 海は海で海が海なんだよオーシャンなのだよ。ビバ海水浴。泳ぐも良し、お水でキャッキャするも良し、スイカ割りするも良し、渚のマーメイドをナンパするも良し、サーフィンするも良し、ビーチバレーするも良し、バーベキューしちゃうのも良し。
 諸君、海だよ海! 楽しみだろぉ! 楽しいよなァ! 最高だよなァ!!」
 だが二月だ。
 大事な事なのでもう一回言うが、殺意が沸くぐらいクソ寒い真冬だ。
「でも海だよ」
 ほら、テンション上げて行こうぜ。
「あとおやつは300円までな!」
 そんなこんなの教師は果てしなくニコニコ笑顔でした。


リプレイ本文

●海 ※二月
 青い空! 青い海! そして凍て付く大寒波!
「2月に海。これが寒中水泳というものですか〜っ!? ささささ寒いですよー」
「にゃー寒いよ〜寒いよ〜」
 オルタ・サンシトゥ(jb2790)と当社比2.5倍もこもこ防寒猫着ぐるみのカーディス=キャットフィールド(ja7927)が声と身体を震わせて開口一番。
「寒い……けど一人でやるレポート書きはもっと寒い、心が」
 白い息を吐きながら、瀬戸 入亜(jb8232)。
「海だよ! ……寒い死ぬヤバイ風邪ひくオミー君たすけて」
 北極圏生まれだけど耐寒性能なんてないも同然ですしおすしぃ、とルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)が振り返る先では、加倉 一臣(ja5823)もガタガタ震えていた。両手で顔を覆う絶望ポーズで。
「センセ、だから海は夏にしようって……!」
「先生いまオミーのシャツの中に頭部突っ込んで暖取ってるので忙しいから後にして」
「セン……セ……!」
 ぶわぁ。そんなオミーの傍らではドヤァと月居 愁也(ja6837)が両手を腰にセッティングで仁王立ち。
「きょ、去年よりは暖かいな」
 なんて強がってみせるものの歯と歯がガチガチ鳴っている。小野友真(ja6901)は寒さリミッターがぶっ壊れて大笑いしていた。
「わはは寒すぎて笑えてくるやつな! 上着下さい……」
「ほら、友真これ」
 ニッコリ、棄棄が友真の肩にあるものをかけてやる。
「わぁ……! センセ……これ……ワカメ……!」
「波打ち際に落ちてた」
「セン……セ……!」
 絶望ポーズぶわぁ。
 そんな感じで寒い寒いしている面々とは対照的に、そんなものは何のそのと海にはしゃぐ生徒も居る。
「う み だ ー !」
「海だ! 海なのだ! 俺はまたやってきた! アイルビィィィバァァァァック!」
「うーみー! 海大好き!」
 ワッホーーイと元気一杯に海へ駆け出していくのは雪室 チルル(ja0220)、大狗 のとう(ja3056)、シグリッド=リンドベリ(jb5318)。その内のシグリッドは棄棄の姿を見かけると急ブレーキをかけて彼の前で止まり、キラキラした目で教師を見上げる。
「棄棄せんせー連れて来て下さってありがとうございます……!」
「流石先生、生徒との約束を忘れないとは教師の鑑ですね」
「こんなに多くの人が二月の海に集まる……。やはり、先生様の人徳の成せる所なのでしょうね。流石です先生様」
 彼の言葉の後に、にこにこ笑顔の石田 神楽(ja4485)と静かに頷いた夏野 雪(ja6883)が言葉を続けた。
「生徒諸君の笑顔が見れるならお安い御用よ」
 へらりと笑う教師、そうだ今日は楽しまねば損である。
「口上省略、ボク参上!」
 シャキーンとポーズを決めるのはイリス・レイバルド(jb0442)だ。海。水着になるのに理由は要らない。寒さ。そんなものは熱いハートでイチコロさ。
「そしてボクにハートの熱さを問う必要はあるか! いや無い!」
 見事な反語でキメながら、彼女は冬の潮風に自慢の長い髪を靡かせた。
「この時期に海とは……忍耐力の修行でござるな! さすがでござる」
 元気な彼等の様子に立花 螢(ja0706)は目を丸くしている。
「冬の海も趣がありますね……!」
「……冬の海、というのも悪くないの」
「二月に海というのもオツじゃのぅ」
 山間育ち故に海には憧れを抱いている星杜 藤花(ja0292)は微笑を浮かべ、橋場 アトリアーナ(ja1403)は寒風に包まれながらも少しだけ目を細め、高防水性褌を着こなしている千 庵(jb3993)は海を眺める。
「今年は皆と海で遊べるよわ〜い」
 にっこり、藤花の隣には星杜 焔(ja5378)がいる。去年は任務中でいけなくてションボリしていた思い出が。その服装は「折角なので」と海の家ルック――即ち半袖Tシャツ+膝までのズボン+サンダル+麦わら帽子。
「ナイス海ファッションだなほむほむ」
「北海道に住んでた頃もありますし、服にお金かけられませんでしたし、寒さには強いですよ〜」
 棄棄の言葉に焔は笑顔で応える。そんな星杜夫妻の間にはベビーカー一つ。おっ、と教師がその傍にしゃがみ込んだ。
「前見た時より大きくなったなぁ」
 はい、と見守る藤花が頷く。
「一緒のおでかけはいい経験です」
「あぁ、この海みたいにでっかくなれよ望ちゃ〜ん」
 確かに2月の海は寒い。けれど、海が齎す感動は夏でも冬でも変わらない。
「綺麗な海を見ると心が落ち着きますわ。特に冬晴れのときは……去年も同じことを思いましたわね」
 懐かしいものだ、なんて。長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)は思いを馳せる。
 イリス・リヴィエール(jb8857)もまた、海に来るのは久々だった。透き通る様な碧玉の双眸で、蒼い海をじっと見詰めている。
「2月の海ですか、皆さんお元気ですね……」
 寒がる者。はしゃぐ者。それらを見守り、川中 糸魚(jb8134)は独り言つ。
「風邪には注意、ですね……」
「えぇ。時期が時期だけに、皆さんが風邪を引かないように勤めたいですね」
 柔らかな笑顔を浮かべたユウ(jb5639)が糸魚の言葉に頷いた。その間にも持参した準備物を広げ、『皆が温まれる場所』を造ってゆく。薪を設置して焚き火スポットだ。
「火を扱いますので……この周りではおふざけ禁止、ですからね?」
 にっこり優しいけれど、そこには「NO」と言わせない何かがあった。
「先生! 寒いのです! とても寒いのです!」
 その火に早速あたるカーディス。大切なので二度以下略。
「カーディスあったかそうなのにな」
「如何せん寒さに弱くて……皆さん元気ですね〜。あ、アンパン食べます? よければクリスティーナさんも」
 そう言って差し出すのは、前日からおやつ用にと制作した大量のアンパンに、「パンだけ食べるとパサパサになるのです」と緑茶&牛乳。
「では皆で」
「うむ」
「「「頂きます」」」
 棄棄、クリスティーナ、カーディスでアンパンタイム。
「冬の海を目の前に食べるアンパンは格別ですね〜」
「景色も味の一つだな、キャットフィールド」
「寒いですけどね……!」

●海だ!
「天気は快晴、絶好の海日和ね」
 田村 ケイ(ja0582)は早速服を脱ぎ捨て、さらし&褌姿に。準備体操して、ゴーグルとシュノーケルに銛も装備したら準備万端だ。大き目の籠をゴムボートに乗せて紐で引いて、意気揚々と沖まで泳ぎ出す。
 狙うのは貝類をメイン。そしてエビやヒラメ。岩場の影や海藻の影も隈なく探し、大物は銛でゲット。
 しかし妙に水が冷たい。何でだろう、と水面から顔を出してみれば、雫石 恭弥(jb4929)が海に氷をぶっこんでいた。
「おおっと手が滑ったー」
 しかも棒読みでケイの脱ぎ捨てた服も海に投げ込む。彼は控えめに言ってもセクハラ野郎である。体温確保という名目で自分の趣味の物――ドレス、着ぐるみ、動物耳付タオルキャップ、メイド服等――を皆に着せたいのだ。無理矢理にでも。氷は皆の体力を奪う為だ。
「残念なことにこうゆう服しかないんだ……このまま凍えるのとどっちがマシだ?」
 満面の笑みでケイにヒラッヒラの趣味物を見せ付ける。ケイは無表情のまま、一杯になった籠を引いて陸に上がってくる。そのままスルーされたので、恭弥は実力行使に出る。
「喰らえケイ!」
 つまりドロップキックだったが。
「スカートは撲滅」
 容赦なくケイに銛で突かれた。精密殺撃。海に落ちる恭弥。
「寒っ! ちょっとまじやば……おい、誰だ氷入れた奴!!」
 そんな彼に合掌し、ケイは彼のコレクションの中からホクホク顔で着ぐるみを引っ張り出し、それを装着し、「結構取れたわ。以外と冬は狙い目かもしれない」とBBQをする者の所へ獲物を渡しに行くのだった。もふもふ。

「大丈夫! 去年は泳げたし余裕!」
 快活に海へ飛び込んだのは水着姿のチルルだ。銛の代わりに愛用の直剣を手に海の中。泳ぎも満喫しながら蒼い世界を見渡した。
(あれは……だめね。小さすぎ)
 狙うのは勿論、誰よりも大きな獲物。自分より大きな魚。
(あの位なら……いやいや、妥協はダメ!)
 どんどん潜る。どんどん潜る。海は一層蒼さを増す。妥協はしない。
(見えた! あれが一番大きいやつね!)
 おりゃっと突き出すクリスタルの剣。白雪の軌跡。
 ざく。
「ごぶっ!?」
「ほへっ!?」
 チルルが刺した大きな影は魚ではなく、彼女と同じく海に潜って魚を探していたサラシ姿の螢だった。チルルが海中でゴメンナサイとお辞儀をすれば、お気になさらずでござると螢も苦笑して手を振った。
 折角海に来たのだ。思いっ切り楽しまねば、と海を行く螢は「修行だ」なんて言った割には心行くまで満喫している。山での修行ばかりだったのもある。
 蒼い世界、重力も曖昧で、まるで空を飛んでいるかのよう。
 そうして、ほどなく。ぷはっ、と螢は海から上がった。大漁だ。それを料理をする者に手渡すと、仲間がおこした火の傍でごろんと大の字。ぐっと伸びをすれば欠伸が一つ出て――気が付けば、眠ってしまっていた。

「折角の機会なので参加しましたけど、うぅ〜、これは辛いですよ〜〜」
 肌を刺す容赦の無い寒さに震えながら、けれどオルタは「でもでも、ここまで来たんですから一度ぐらいはっ」と海へ向かった、が。ざばーと寄せる冷たい波が足に当たった瞬間。
「……やっぱり寒かったです」
 回れ右。冬の海も趣きがあり、見る分には楽しいけれど。
「入るのはボクにはダメでしたね〜」
 アトルムと名付けた黒いヒリュウを召喚して抱き締めて温まりながら、ユウが準備した火の前に着席。カーディスのアンパンをお裾分けして貰う。アトルムと半分こ。
 と、最中。BBQをやるという話を聞いたのでオルタは颯爽と立ち上がる。
「ふむふむ、BBQですか。ではでは、ボクもお手伝いに加わりますよっ! アト、一緒に頑張りましょー」
 ぱたぱた、駆けて行く一方で、焔も忙しなく料理中。家から調理用具や材料も持参してきて本格的だ。
「いっぱい愛情こめて美味しいシーフードカレー作るよ! いっぱい作るよ! 凍えちゃった人にお勧めなのは超激辛かな! スパイスで体ほっかほかだよ! 関係ないけどビーチフラッグの方面が大惨事な予感だよ!」
 甘口から超激辛まで、家に常備のスパイスが荒ぶりまくりんぐ。
 その傍らでは藤花がせっせとお手伝い。ナンやうどんやご飯の調理が彼女の役割だ。ちなみにうどんの出汁はメイドイン焔。こだわりの逸品。ホカホカな香りにお腹を空かせた者や寒そうにしている者が集まってくる。
 そうして一段落すれば、藤花は砂浜に腰掛けて顔料筆ペンと紙を取り出し絵を描いてゆく。すると「何してるの〜」と一休憩中の焔が望をだっこして横に座った。離乳食――素材の味のみを活かした柔らか煮の野菜うどんを愛する子に食べさせながら、藤花が描くものを覗き見る。
「母が教えてくれた大和絵の技術が、こんなところで役に立つなんて……」
 早春の海の、未だ荒々しさの残る風景。水墨風に描いていけば、ちょっとした絵手紙の出来上がりだ。
「そうだ……これ、折角だし今日の記念として棄棄先生へこっそり郵送しましょうか」
 いいね、と焔が微笑む視線の先で、藤花はさらりと文字を書く。
『素敵な時間をありがとうございます。これからもどうかよろしくお願いします』

 行列の出来るホカホカいい香りは星杜さん家だけではない。
「2月に海か。まぁ、海産物美味しいしな!」
 うむ、と頷いたのは礼野 智美(ja3600)。その傍らには彼女の悪友でもある音羽 聖歌(jb5486)が、周囲の様子を眺めつつ提案する。
「海鮮鍋でも作るか」
「だな」
「お前野外系大人数料理は得意だしな」
「お前も手伝えよ、そこそこ出来るだろうが」
 なんて言いつつ準備は万端。調理器具から食材、火おこし竈作りエトセトラ。ちょっとした食堂の台所だ。漁をしている生徒から海鮮物を分けてもらったり、智美の義弟である礼野 明日夢(jb5590)が掘ってきた貝を使ったり、本格的である。
 明日夢はそのまま、慌しくされど的確に迅速に準備を進めてゆく姉とその友人の動きを傍でじっと見取り稽古。
「ん、海の水べたつくしな。不慮の事故が起きた人の為に一応な」
 持参した真水を沸かしている聖歌が、明日夢の視線に気付いて説明を。聖歌にとって素直な少年は可愛い後輩だ。
「俺の弟達ってちび以外は可愛げないからなぁ」
「意思は認めてるだろうが」
「まぁな」
 智美の言葉に肩を竦める。この一見して男にしか見えない悪友の事を、聖歌は女と思わず男友達のつもりで扱っている。
(普通の料理はお姉ちゃんに軍配上がりますけど、野外料理や大人数料理は姉さんの方が手際良いし美味しい気がします)
 そう思う明日夢の視線の先で、
「キャンプとか大抵智が班長だったもんな」
「お前もだろうが、聖歌」
 そんな他愛ない、けれど楽しげな会話。
「お魚捌いたり牡蠣の殻割って焼いたり、上手なんですよね」
 明日夢が言う。海入る人は後温まった方が良いだろうから、と温かいおにぎりを握っていた智美がふと、まだ捌けていない魚と義弟を順に見てからにこりと微笑んだ。
「アスもやってみるか?」
「はい」
 料理とは、作る側にも楽しい気持ちが無ければならぬ。楽しくないと思いながら作った料理で他人が楽しめるものか。

 一方で、クリスティーナは水無月沙羅(ja0670)と並んで海を眺めていた。白いスクール水着に前掛け代わりのパレオ、そんな料理人スタイルの沙羅はにこにこ友人を見守っている。己が作った彼女の好物、クリームあんみつと唐辛子たっぷりのホットチリドックを美味しそう〜に幸せそう〜にモグモグしているクリスティーナの姿を。
「美味しいですか?」
「うむ」
 頬っぺたをぱんぱんに膨らませて頬張る天使に、「ゆっくり食べていいんですよ」と苦笑一つ。咀嚼を待ちながら、沙羅は言葉を紡いでゆく。
「実はですね、クリス。この時期に海とは、寒中水泳という鍛錬なのですよ……」
「なんと……」
「海は満喫するものです。そう……鍛錬的な意味でも!」
「成程!」
 沙羅からの差し入れを食べ切るやクリスティーナはスックと立ち上がる。
「……天使様も寒中水泳を?」
 そこに現れたのは大盾を担いだ雪だった。「夏野もどうだ?」と天使の言葉に、「そうですね」と頷きながら。
「この水着も使わないといけないので。……これ、元『エクスキューショナー』なんです」
 説明しよう。エクスキューショナーとは、

 全長60cm程の片刃の戦斧。血塗られたような赤色の刃を持った不気味な雰囲気を漂わせる斧で、その名は「死刑執行人」を意味するという。特別な力は備わってはいないが、その刃は数多の血を啜ることで鋭さを増し、眼前に広がる敵を滅する程の威力を誇るという。

 というものである。
 断じて水着ではないのである。
「えぇ……ちょっと突然な変異が錬金術でもっていかれまして……えぇ……門木先生には、ホント世話になりまして……えぇ」
 遠い目をする雪に、クリスティーナは黙って肩ポンする他になかったそうな。
「海水浴だー!」
 そんな雰囲気とは対照的に、不破 怠惰(jb2507)はワァイとクリスティーナの横にやってくる。
「不破か。お前も寒中水泳か?」
「そりゃねぇ。2月の海に来て厚着でガタガタ震える等笑止千万! 折角来たからにはこの寒さを愉しむのが筋ってもんだろう」
 言うなり怠惰はばさぁーとスク水にチェンジする、が。ビュオーっと通り抜けた風に硬直。
「ってやっぱ寒い!! よ!!!」
「動けば温かくなるぞ。さぁ、往くぞ皆!」
 クリスティーナが沙羅と怠惰と雪をつれて海へザッと歩き出した。
「えっ、私もですか?」
「無論だ水無月!」
「私は盾……全てを征し……全てを守る。……いざ!」
 まぁクリスに楽しい思い出を残せるならいいか、と付いていく沙羅、戦闘モードに気持ちを切り替える雪、怠惰は「旬の牡蠣とか採れるかな」と寒い腕を擦りながら、クリスティーナへと。
「あんまり寒いようなら無理しなくていいのよ」
「鍛錬とは、須らく無理を超えるべきものなのである」
「そうか……ふっ、ならば久遠ヶ原の白い悪魔に任せるがいい!」
 カッコつけていの一番に海に飛び込む怠惰。負けてられぬとクリスティーナも続き、水の冷たさに「ひゃぁー」なんて震えながら沙羅が、そして無駄のない動きで雪も続いた。
 クリスティーナと沙羅と雪は遠泳を開始する。それを水の中から見守りながら、怠惰はBBQ用に漁を開始する。
(つい最近までだいぶ寝正月してたから、良い運動にはなるだろう……多分……)
 一方で雪は延々と遠泳し続けている。彼女が地面に上がったのはそれから実に20分が経った頃だった。
「……無心にはなれました。彼岸を見かけた気もしますが」
 我慢していたが寒いものは寒い。唇が紫。鳥肌状態で、「後は暖まっておきます」と火の傍に向かった。

 元気だなぁ。微笑ましくそんな生徒を見守る棄棄。その傍らには日傘を差した冬服姿のシュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)が、呆れた様に肩を竦めて物申す。
「あなたね……今二月よ? 北半球は冬なのよ? この時期に海なんかに来て、どうしろっていうのよ? 何? これがブッティスト特有の苦行とかいうやつなの?」
「海という大いなる存在が、俺達を狂わせるのさ」
「……成程ね」
 良識派なお嬢様がそれ以上何かを言う事はなかった。しかしまぁ、割と真面目なカオスという異色な先生は人として好いている。彼の視線の先で一生懸命冬の海を泳いでいる天然過ぎる天使も、その愛いさは愛玩動物のようで好いている。
 そんな訳でシュルヴィアはカボチャの種を齧りながら生徒を眺める教師を眺めていた。と、棄棄がチラッとシュルヴィアへ振り返る。それから徐に立ち上がる。走って海に飛び込む。そしてまたチラッとシュルヴィアを窺った。
「……ついていかないわよ」
 呆れて溜息。「ちぇー」と貝殻を片手に戻ってきた棄棄に「見てるだけで寒いわ」ともう一度溜息。用意していたタオルと、ホットレモンを手渡しながら。
「……それで? 今回のこれも、あなたの思いつきで特に意味はなかったのかしら?」
「ふふふ。さぁ、どうだろうね?」
 笑う教師が、髪を拭くタオルの隙間から生徒を見ていた。

「通ー! 君も来てたんだなっ」
「あっ、のとちゃん発見!」
 はぐはぐーっと互いをもふりあうのはのとうと奥戸 通(jb3571)である。
「去年も一緒に遊んだよねー! 今年も綺麗な貝殻探そう!」
「うんうん、沢山遊ぼうn……君、なぜ、そんな恰好をしている?」
 ベンチコート的厚着の通。彼女はニコリと、友達に微笑みかけながら親指を立てた。
「戦ってくるね……!」
「え、戦い? うん? まるで戦士のような目をしてどこに行くかっ……!?」
「大丈夫、必ず――生きて帰る」
「お、おう……」
 いってらっしゃーいとその背を見送って。のとうの空きっ腹がきゅるるーと鳴った。
「……うむ、俺ってばお腹が空いたのにゃ」
 あっちこっちからいいにおいがしてくる。何作ってるんだろう? カレー? 豚汁?
「俺もほしい! 一つおくれー」
 においの方向へ全力ダッシュののとうであった。

「これは……買ったはいいけど結局着ないまま終わってしまったあの水着を着るチャンスじゃないの!」
「水着は別に着たからどうでもいいけど、とにかく海に入りたいよね!! 夏に着た水着どこしまったか忘れちゃったから購買で学校指定の買っとけばいいかな!」
 という訳でポラリス(ja8467)と鴉女 絢(jb2708)の友達コンビは海に立つ。
 オレンジ基調のビタミンカラーのキュートなビキニ! トレンディなサングラス! フリルがガーリーな日傘! 夏真っ盛り!
 そんな気分でした。えぇ、ポラリスは海に車ではそんな気分でしたとも。
「ウッ寒い……」
「わー海だー寒い……もう上がろ……」
 寒さの所為で唇は紫。寒さで血色が悪くなった肌は鳥肌まみれ。足首まで浸かった海水は氷の如く。ガタガタ震えが止まらない。それでも海だ、ほら海だよ! とポラリスはえーいと絢に水をバシャー。砂浜でキャッキャするつもりが寒さの所為で台無しだ。だばーんと波が二人を襲う。
「寒い! 冷たい! やめなさいよ! ギャー冷たい!」
「ぽらりすちゃんなんか一人で騒いでる……寒いのに何やってるんだろ……ぽらりすちゃんあほ……」
「も、もうダメ限界……な、何かあったかいものください」
 ぶるぶる震えるポラリス。を、スルーして絢は寒すぎて死んだ目をして海から上がる。そして真顔で振り返る。
「ぽらりすちゃん……真冬に水着とか、大丈夫?」
「だってほらこれ可愛くない?」
 ドヤァと見せ付けるも、また波がだばーんして絶叫するポラリスだった。
 学園の誇る美少女として、水着の女の子のウォッチは欠かせない。という訳で、ヒンメル・ヤディスロウ(ja1041)はそんな彼女達をはじめとした波打ち際ではしゃぐ女の子をチェックして満喫している。
「冬だ! 海だ! 水着の女の子だ!」
「海だから水着と思ったのだけれど……流石に寒いわね」
 かき氷を食べているヒンメルの傍らにはリヴィエールの方のイリスが、学園指定水着の上にジャージ、更に儀礼服を羽織るといった恰好でヒンメル同様かき氷を食べている。
「寒い時期の海は初めて……羽織るものを持ってきて正解かしら」
「いやぁ楽しいねぇ、寒いけど」
 真顔でいちごシロップとメロンシロップをかけるリヴィエールはしゃくしゃくかき氷を食べてゆく。色合いが茶色い。甘いけど茶色い。季節外れなのは分かっているけれど、あえてのこの寒い中でかき氷を食べてみたかったのだ。
 ヒンメルも全く防寒に役立たない黒色ゴスロリドレスだが可愛い女の子を燃料にかき氷しゃくしゃく。極度の寒がり暑がりにして意地っ張りの突っ張りである。
「「……」」
 ここにきて頭キーン。
 ので、リヴィエールは黒翼のヒリュウailesを召喚し――それで暖を取るのではなく、一緒にかき氷を食べ続ける。
「道連れ……もとい一緒に冷たいものを楽しもうかと」
「うわぁエールちゃんも頭キーンなってるよ」
 あまのじゃくが信条のヒンメルだがそれは常識があってこそ。うん、焚火のとこ行こうか。

 少しは気晴らしになると良いのだが。
 そう思って、櫟 諏訪(ja1215)は恋人の藤咲千尋(ja8564)を海に誘ったのである。今、千尋は精神的に酷く参っている。彼はそんな彼女を元気付けたかったのだ。
「……」
 勢いに任せて来てしまったけれど、今の千尋ははしゃぎ方も分からなくて、どうしようとただボンヤリ佇んでいる。遠くの方から皆の楽しげな声が聞こえる。
 そんな千尋の手を、諏訪はそっと、けれど優しく包み握って。
「冬の海に来るのは初めてで、なんだか不思議な感じがしますねー?」
「冬の海は寒いね。あと、みんな元気だね」
 のんびり、二人並んで砂浜を歩く。手を引かれながら、千尋は思った。折角の海なのに、彼は皆と遊ばなくて良かったのだろうか? 一緒に居られて嬉しいのは確かだが、なんだか申し訳ない気持ちも同居している。
 でも、と千尋は諏訪へと顔を上げた。
「誘ってくれてありがとうね」
「どういたしましてー。はい、千尋ちゃんどうぞですよー?」
 ニッコリ微笑む諏訪が、砂浜から拾い上げた貝殻を手渡した。それと、透き通った緑色のガラス片。角が波に削られたそれは宝石のよう。
 そして星杜さん家のカレーを分けてもらうと、寄り添いあって砂浜に座った。千尋ちゃん、と名前を呼ばれたので、彼女が振り返れば「あーん」と差し出されたカレーのスプーン。それにちっちゃく口を開けて、もぐもぐ。
 うん、すわくんは優しい。――けれど、そう思うほどに申し訳なさで胸が苦しい。
「早くいつも通り楽しく遊びたいのだけども、ごめんね」
「自分は千尋ちゃんと一緒にいられて嬉しいですし、無理はしてほしくないですしねー?」
「うん、寮で引き篭もってるより外の方が気持ちがいいな」
「ちょっとでも楽しい気持ちになれたのなら、何よりです。少しづつでいいので元気出してくださいなー?」
 彼女の頭をなでなで、ぽふぽふ。
「ちょっと元気出たような気がするよ。ありがとうね」
「どういたしましてー」
 そのままぎゅっと、諏訪は彼女を抱き締める。
「今度はまた夏にでも遊びに来ましょうねー?」
「そうだね、次はみんなと一緒にワーッと遊べたらいいね」

「鍋も伊予柑も、おかわり有るけんようけ食べてぇね」
 ニコッと笑いかけた藤堂・R・茜(jb4127)の前には、アトリアーナとシルファヴィーネ(jb3747)。本当なら海で遊ぼうかと思ったが、前者は怪我が治ったばかり、後者は絶賛重体中。
「この寒い時期とはいえ、海に行くタイミングで重体なんて……無様ね」
「……今日は無理せず、まったり過ごしますの」
「そうね。私も、今回は無理せず療養する事にするわ」
 そう頷いた二人に茜は、
「うんうん、ゆっくりしよって貰おかいね。まだ寒いやろうけん、温かいもんお食べー」
 振舞うのは芋炊きの鍋、伊予柑。アトリアーナが遠慮がちに手伝おうとしたが、「お客さんは伊予柑でも食べてゆっくりしよしー」と笑顔で言われたので静かに着席。けれどアトリアーナは温かいお鍋は好きなので、どこかそわそわ楽しそうにしている。
 そして二人に差し出される温かいお鍋。三人で頂きます。
「鍋にいよかんって、何か気使って貰ってるみたいで悪いわね……でもそんなに食べないから大丈夫よ」
「……ん、とても美味しいの、茜」
「ほんとぉ? 良かったー」
 二人のの言葉に茜は満足げに頷く。アトリアーナはこれを気に仲良くなれたら、と思いながらもぐもぐ。
「ところで藤堂、この鍋料理何よ? やけに野菜多いけど……」
「これはねー、シルファヴィーネ君。里芋に蒟蒻と人参、鶏肉に油揚げとか色々入れてた、愛媛の郷土料理なんよ〜。ウチ長い事、愛媛におったんよ」
「ふーん、でエヒメ? ってどこよそこ。人間界そこそこ長くいるけど地名に興味なかったもの」
「日本の、四国にある県名ですの」
 シコク? とアトリアーナの説明にシルファヴィーネは首を傾げる。野菜嫌いなので鍋は肉ばかり食べていたら、「お残しはあかんよ〜」と茜にニコッ……と微笑まれたので、重体状態で口にかっ込まれるのは避けたいシルファヴィーネは一生懸命ぐい飲みしたのであった。故に食後はいちごオレで野菜の風味を消し飛ばす。
「動けない、というのも暇で仕方無いわね……誰かの血でも吸いにいこうかしら……。橋場は確か人間よね? ちょっと血貰えないk」
 アトリアーナに、伊予柑の皮をぐっと曲げて汁をプシャッと飛ばすアレを目にやられたシルファヴィーネであった。悶絶。目が重体。茜は楽しげな様子にけらけら笑っていた。

●鬼旗
「ドーモ、皆=サン。審判及び素潜り講師担当の金鞍です。初めに再度ルール確認を」
 公平にして公正なる審判、金鞍 馬頭鬼(ja2735)が集った戦士を見渡した。

 ルール説明。鬼旗とは鬼ごっこ形式ビーチフラッグである。
・子は吸盤旗2本、鬼は旗10本所持
・鬼→1本付けて開始、3本以上ついたら罰で寒中水泳
・子→1本付いたら鬼になる
・旗つけたら点獲得(箇所により高得点。審判判断)
・最低点で素潜り体験
・攻撃スキル不可

「また、気合と戦略にポイントはプラス。参加者以外の方や付近への迷惑行動はスゴク・シツレイ、実際ケジメ案件だ。オーケイ?」
 さぁここで鬼がリングイン。
「……寒いので少し身体動かしますか。よろしくお願い致します、夜来野さん」
「石田殿と共闘。鬼に金棒ですね」
 神楽がにこにこ。夜来野 遥久(ja6843)は右額に吸盤旗を1本つけて準備体操中。
「それにしても石田殿、厚着過ぎませんか」
「寒くて」
 黒マフラーに顎を埋める神楽。に、ビシリと指を突き付けたのはアスハ・ロットハール(ja8432)である。
「いつかの遊園地の鬼ごっこの恨み、ここで晴らす、ぞ……ハルヒサ!」
 ※完全にフラグ
 ※当時特に何もされていない
「はっは、俊足快速を誇るストゥルルソン型撃退士の俺にうってつけじゃないかこの勝負もらっt」
 見渡す面子。すっと真顔になるルドルフ。
「……生き残ればええんや、生き残れば。せやろ?」
 彼の瞳はこの冬晴れの空よりも澄み渡っていた。
「どうしよう鬼が便宜上の名称じゃない気がして身も心も寒いけど多分これ2月の海のせい」
「砂浜で鬼ごっこてマジで足腰の訓練になるよな。更に鬼が……むしろ精神訓練かな」
「怖いマジ怖いっていうかあの2人笑顔なのに目がマジ 」
 オミゆうまがニコッ……と強張る笑みを浮かべ、愁也がマッハで距離を取る。オミーはクリスティーナへ視線をやった。
「良いか、クリスティーナ隊員。これは遊びではない。これは……弱肉強食だ!」
「成程……森羅万象であるな。受けて立とう」
 選手の中にはレイバルドの方のイリスもいる。
「あっ、褌着用ッスか。その前にせんせー【絆】いいですー?」
「オッケェイ」
 シャキーン、と絆。共有する経験。

 そんなこんなで、この先訪れる地獄を今は誰も知らない。

 ポフィ〜〜ン。そういう訳で、通が両鼻に挿したホイッスルを高らかに鳴らして試合開始。ここからもう突っ込みどころが満載だが一個一個に突っ込んでいると字数が死ぬので全て混沌に委ねよう。
「先手必勝! 逃げるが勝ちだ!」
 始まるや否や愁也は脚部のアウルを集中して爆発の如く勢いを付けて走り出したが何故か着地の所に独楽が落ちていた。足の裏ザクゥ。ぎゃああああ。しかもその間に遥久に回り込まれていたなんということでしょう。
 スローモーションで真顔になる愁也。同じくらいゆっくり速度でニッコリ遥久。その時にはもう、吸盤の無い旗が愁也の額に突き刺さる。
「ウ ゥ ワ ア ア ア ア ア おい吸盤どうした」
「ついウッカリ」
 てへぺろである。ウッカリならしかたないね。
「馬鹿なっ月居さんが開始早々やられるなんて だが奴は我等四天王の中では最弱」
「10秒足らずでやられるなど四天王の面汚しよ」
 四天王って言ったけど通とルドルフしかドヤァしてない。その内の通はなんとしても素潜りを回避したいが為に馬頭鬼の後ろに隠れていた。因みにスク水褌スタイルだ。
 が。ガッツリ遥久と目が合った。やばい。
「特殊抵抗なら負けぬ!」
 両手を額に、星の輝き! 目だ、目を狙えってばっちゃがゆってた!
 だが、彼女の肩にポン……と置かれる手。振り返ると神楽がいた。にこにこ。「なんかごめんなさい」っていう気分になった通はいつの間にか正座していた。その頭頂部に容赦なく、旗が突き刺される。
「グワア! ちょっと! レディなんだから優しくしてください」
「これでも手加減したのですが……まぁ、私は素潜り回避出来ればいいです」
 にこにこ。マジキチ(マジ鬼畜)。さて。くるっと振り返る神楽がそのまま旗を投げる。遥久へ縮地でバックアタックを仕掛けんとしていた愁也の額に二本目が刺さる。
「誤射ェエエ」
「誤射です」
 哀れ愁也は海に沈んだ。
「だが! タダでは死なねえ!」
 ざばぁ。何度でも蘇る阿修羅。その目の先にはおみゆうま。
「遮蔽物が無いなら砂浜になればええやん? 俺が『雫衣』で砂浜に擬態して俯せで構える、一臣、YOU鬼おびき寄せる、OK?」
「ちょっと何を言ってるか俺にもわからないけど友真が俺を盾にする気なら俺は友真を武器にするぜ」
 会話のドッジボール。
「道連れですしおすし」
 そこへ愁也がフライングボディアタック。「ウワアー」と叫んだオミーがその辺の流木を投げて回避射撃。愁也の足の小指に命中。悶絶する愁也が海に再び落ちてゆく。南無。
 その時オミーは閃いた。
「これ、さっさと鬼サイドになった方が心安らかに過ごせる気がする」
 よしいっそ旗を着けられてしまおう。無駄に遥久と神楽をチラッチラッしながら周囲をうろついて見るがまるでスルーだ。目が合ってるのに。
「……あ、これ、残されて最後に料理される展開だわ」
「楽しみは最後に取っておくもの……」
(あ、加倉さんまた最後のお楽しみなんだ)
 白目オミー、笑顔の遥久、海の中で見守る愁也は何とも言えない眼差し。
「戦いは非情、だ……」
 攻撃でなければスキル使い放題。故にアスハが発動するは擬術:零の型<ゼロフットワーカー>。超神秘の疾走、逃げの一手。
 だが……囲まれた!? 逃げ場がない!
「これが戦争です」
 にこにこ神楽が微笑んだ。鬼同士の連携。そして無常に投擲される旗――
「おらぁー!」
 その時、緑火眼でタイミング見計らった友真が飛び出してくる。これで少しは驚いてくれれbグサッ。アスハに刺さる筈だった旗が友真の額に。
「……」
 まぁ当たったので良しとするが、『射撃の邪魔』ほどインフィルトレイターがイラッ☆とくるものはない。神楽は微笑んでいる。
「すみません怖いです」
 友真思わず正座。優しくね、と誤魔化して足元を狙おうかと思ったけど命が惜しいので土下座しておいた。そして結局アスハは海から飛び出した通に絡まれ旗をブッ刺されてしまっていた。
「ふぅはははー!! この愛と絆のイリスちゃんッ 見事海に落としてみたければ天使の翼を消し去ってみるがいいー!」
 一方で響く高笑い。レイバルドは小天使の翼でファラウェイ。
「4mの飛行でも! 意地があんだよ美少女にはー!」
 フハハハハ。くるくる旋回。輝くオーラが超綺麗。曰く、華麗な空中殺法。
 だが相手が悪かった。
「ふ、鬼になったからには! 超投げるインフィの真髄見せたるー!」
 友真が投げる旗がレイバルドにすこーんと刺さる。おぶふっと墜落する少女。
「近寄らんでも付けりゃ良かろ……子の時もそうでしたね」
 今気付いた 友真であった。

 出来る限り鬼を引き付けて他の人に旗つけてもらえばイケるんじゃね。ルドルフは閃いた。
 ので、ニンジャヒーローを発動してみた。
「来いよベネ■ト! 旗なんか捨ててかかってこいよ!」
 半泣きで水上全力ダッシュ。足元の悪くなりやすい波打ち際。
「旗(射撃)だけは勘弁! 勘弁!!! あとぼく泳げないんで海産物はとってこれませえん!!」
「逃がしませんよ」
 やろうぶっころしてやる状態。微笑を浮かべた遥久が愁也を文字通り『飛ばし』た。だが外れた。顔面着地の愁也かわいそう。
「当たらなければどうということはない」
 キリッとしてみたルドルフであったが。その足元にドワオッと砂煙。アスハが撃った135mm対戦ライフルである。もう一度言うが、135mm対戦ライフルである。
「ちょっ審判! 今のアウトじゃ!?」
「攻撃スキルではないのでセーフ!」
「えええええ」
 愕然としていたら超移動で間合いを詰めてきたアスハに旗を刺されたルドルフであった。

「つまり、鬼に旗を付けられなければええんじゃろうて」
 取り敢えず楽しもう、と庵は全力疾走で逃げていた。負けない様に頑張るには頑張る。無言で走る。高速機動。
「はっはっは、待ちなさい♪」
 が、夜を蝕む赤月の如く輝く神楽の双眸――黒刻が、彼を逃がさない。シュッと投擲。庵の臀部にクリティカル。アッー。
 一旦ここでCM的な間です。しばらく美しい魚の映像をお楽しみ下さい。

 しみじみとお茶を飲みつつ海辺を散歩していた糸魚は、何やら騒がしいそちらに目を向けて見る。楽しそうだ。泳ぐのは顔に水がつくのが怖いので、拾った流木の小枝にハンカチを付けた簡易な旗でも振って応援してあげよう。
「ふふ、タオルと暖かいお茶でも必要でしょうか? ファイトですよー」

 CM終わり。
 項垂れる庵であったが負けは負けだ。潔く認めよう。次は自分が挿す(not誤字)だ。庵の尻に対する執念マジ逸脱。君は菊座の神の生まれ変わりか何かですか。
「今のは10点! ……10点?」
 馬頭鬼はボディランゲージでの審判に熱が入ってゆくが二桁はどうする。亜光速で動いたら残像的なサムシングでどうにかなるかもって思ってめっちゃマッハで反復横飛びしてみたが砂が飛び散るだけだった。そんな無理が祟ったのか、なんという事でしょう、先程まで人型だった馬の手足があらぬ方向に!
「あ、そうや審判につけたらどうなるん? ちょっと濡れて寒いし服頂戴」
 グサァと友真に旗で刺されてトドメを刺されたかわいそうなお馬さん。身包みも剥がれてマジ不憫。
 その頃、オミーはフルボッコで白目を剥いて海に浮いていた。
 ゲームセット!
「……これ、子が全滅だから、最初の鬼以外、全員でいいんじゃない、か?」
 ってアスハが言ってるし、皆いろいろ考えてたみたいだし、もう皆で素潜りすれば世界平和じゃないかな。

 そんなこんなで。

「では、素潜り教習を始めます…バッと入ってスッと行ってパッと採って水面に戻ります。以上です」
 友真から馬ぐるみを取り戻した馬頭鬼のよく分かる素潜り講座。「で、今朝採れたのがこちらになります」とワカメずるぅ。
「初心者が取るのは難しいので、色のついた重石を予め沈めてあります。それを回収してきてください」
 と言う訳で。
 オミーは馬頭鬼とシンクロしながら素潜りしていた。超絶金槌の通は何処までも沈んでゆく。
「去年、もう体験してるから、な……いまさら、怖くもなんともない」
 アスハは遠い目だ。その一方、ざぶぁと打ち上げられた白目の通の頭の上には立派な蛸がいた。
 愁也は潔くフンドシ一丁になる。その姿を庵が「最重要事項」だとガン見している。愁也曰くノーポロリだそうです。
 そして装着するのはちょんまげヅラ。相方の遥久は坊主ヅラ。
「ジョ■ズ!」
「海坊主です」
 このコンビネーションである。遥久スマイルでなんだか笑うに笑えない。

 そんなこんなで、楽しい時間は過ぎてゆく。

●ティーパーティー
「ふっ……済んだ空気、冷えた海、こんな日にこそ温かい紅茶がふさわs……あっ、やっぱ寒い!!」
 吹き抜けた容赦の無い寒風に腕をさすり、レトラック・ルトゥーチ(jb0553)は身震いした。寒い。寒いけどこれは歳の所為ではない。絶対に歳の所為なんかじゃない!!! とは彼の談。
 そんな彼を、そして元気な仲間達を見、みずほは苦笑を浮かべながらも言葉をかける。
「皆様寒くないのかしら……暖かい紅茶はいかがですか?」
「紅茶! おぉ、おぉアリス、紅茶は好きだ、大好きだ。是非とも開こう、お茶会を」
 戯曲演者の如くレトラックは一礼する。みずほの名前はアリスではないが、それは『初見の女性を一度アリスと呼ぶ』という彼の性癖故である。
 そして二人が砂浜を会場に広げるのはお茶会の準備だった。折りたたみ机に白いクロス、焼菓子、オシャレなティーセット、そして――紅茶。
「まあ飲みたまえ、冷えた体には紅茶が一番だ」
 勿論体など冷えてなくとも、それは変わらぬ真理だけれど。そう微笑んで、レトラックは「なんでもない日おめでとう」と優雅に紅茶を口に運んだ。震えながら。
「ふぅ……寒いと温かい紅茶が染み渡りますわね」
 海から上がって寒そうにしている者にも紅茶を振る舞いつつ、みずほは蒼い海に目を細める。そしていつの間にか横で棄棄が紅茶を飲んでいてビックリする。
「みずほちゃん今日水着は?」
「えっ……」
「折角、鍛えてて綺麗な体してるのに。勿体無い〜」
「えっえっでも」
 ここで棄棄の無言の手拍子。

 と言う訳で。

「さ 寒いですわっ……!」
 結局、乗せられて白いビキニ姿になってしまったみずほであった。棄棄先生、スタンディングで惜しみない拍手です。
 冬に水着とか。まったりぬくぬく紅茶で暖を取りながら、ポラリスと絢はデジャビュな言葉を口にする。が、その最中。ポラリスはこっそり『ある事』を行っていた。即ち絢のバッグを探って、パンツを隠してやろうという心算だ。
 その後、絢が「えっ、下着なくなってる……水着のまま帰るの私……さむ……」と絶望の表情を浮かべていたのはまた別のお話。

●悪魔会とか
「はぁぁー海だなぁぁ……さっみぃなぁぁ……!」
「海に来たからには水着なのです……!」
 鼻を真っ赤にガタブルしている卯左見 栢(jb2408)の傍ではシグリッドがきりりっと水着姿になる、が。
「元道民はこれくらいの寒さに負けたりしn さむぅ!」
 寒さには勝てなかったよ。パーカーを着る。
「泳ぎたかったけど海に入るのにはちょっと……寒そうですね……」
「ねぎとろは泳いでいないのか。道具は要らん素手で絞める!」
 そんな二人を他所にUnknown(jb7615)が躊躇なく海へドボーン。目指せ皆に一匹ずつ。
「あんのん海に還ってったか。さて、しぐりーカナリアちゃんあーそぼ!」
 笑う栢にシグリッドは「はい!」と答えたけれど、ふと気が付く。
(ぼくの周りは背の高い人ばかりなのです……)
 ちょっとションボリ――しかけたところで、「おりゃー」と栢が肩車してくれる。ぐんと上がる視界。同時に上がるシグリッドのテンション。
「潮干狩りじゃー!」
 そのまま栢は、しゃがみ込んで貝を掘っていたカナリア=ココア(jb7592)を跨ぐと足でむぎゅっと挟み込む。ビックリしたカナリアだが、やられっぱなしの彼女ではない。
「う〜み〜は大きいな♪」
 闇の翼をバサッと広げ、シグリッドを肩車している栢を肩車。するも、縦に長くてバランスが悪すぎる。
 そして。
「「「あ」」」

 三人とも海にどぼーん。

「ヘプション! ……寒い寒い。今度は、もう少し暖かくなってから泳ぎたい……」
 羽織とさらしだけの風邪ひいちゃうよ装備から何故かメイド服になったカナリアは、薪を集めながら仲間と共に潮干狩りを再開する。
「貝を砂抜きして焼くのですー」
「泳げないけど、真冬の海だし関係ないよね!」
 うきうきするシグリッドの傍で、熊手片手に柳田 漆(jb5117)。貧乏出身の採取能力。食べられる貝を全力採取。故に泳げないのに海に入って、足の着かないギリギリの所まで採りに行く。
「押さないでよ! 絶対に押さないでよ! 振りじゃないからね!!?」
 その時悲劇(※お約束)は起きる。
「イルカがいたぞ……!」
 ざぱぁんと海中より現れた、立派な大魚(本人曰くイルカ)を咥えたアンノウンにぶつかって、ドボンする漆。ガチ溺れ。
「あばばばばばばオノレ海坊主ばばばば」
「我輩海坊主違ウ」
 アンノウンが引き上げてくれなかったら大変な事になっていた。

「寒いから火柱やな」
 泳ぐ予定が無いのにずぶ濡れになってゆく仲間達に苦笑しながら、ゼロ=シュバイツァー(jb7501)は集めた薪に火をつける。焚き火? いいえ、火柱(7m以上)です。ここ重要。海やから問題なし!
「あとはBBQ!」
 振り返る。
「丈がなければその分跳べばいいのです……!」
 棄棄とクリスティーナとビーチバレーに興じている(そして足場が悪くて転ぶ)シグリッド。
 食べられる魚のためにお墓を作り、波に浚われてもただただ見つめているアンノウン。寒くて眠い。
 同じくじっとしているのは入亜。ただしこちらはとにかく温まりたいと、火の傍にて大きめの鍋で豚汁を作ってもしゃもしゃ食べている。
 栢は「だってさむいんだもん!」と皆にちょっかいを出している。
 ゼロはそんな栢を悪い顔でガン見して。
「あ、兎の丸焼き」
「!?」
「直接火の中入れんなら大丈夫やろ」
「!!?」
「燃えたら海に投げればええし」
「!!!?」
 それはそうと皆で集めた海鮮物でゴハンタイムだ。ふざける奴は焚き火でインフェルノだったけどじょうしきとりょうしきのあるみんなはボケなかったからそんな悲劇は起こらなかったのであった。ハッピーエンド。
「いえっす! あんのーんくんよじよじ登っていいかい?」
 鬼旗を満喫してきたレイバルドがもぐもぐしているアンノウンによじ登る。悲しい事に小食なので、友人で遊ぶとしよう。
「未成年に呑ませないよ。取り分減るから」
 日本酒(曰く、寒い中で温かいものを食べるのに必須な存在)をごっきゅごっきゅしつつ、皆に豚汁を振舞う入亜は一言。
「食べる側に課す義務は一つ……調理済みのものは残さず食べようね?」
 一見して真面目そうだが彼女は酔っていた。しかも酔うと言われるままに何でもするという変な酔い方である。ので、「ちょっとインフェルノされて」と言われたらきっとボケてなくても地獄の業火でインフェルノ。ああインフェルノ、ボケは消毒インフェルノ。

●BBQ
 月乃宮 恋音(jb1221)はバーベキューを行う為にそれはもうたっぷりがっつり準備をしてきた。正にAtoZである。
「……何か、ご用意されたもの、穫ってきたものが有れば、お料理いたしますよぉ……」
 と、彼女がおずおずと言い出した成果あってか、その周囲はお魚まみれだった。これだけあれば人数分足りるだろう。
 が、恋音は今、袋井 雅人(jb1469)とピットリいちゃいちゃくっ付いて、仲良く釣りをしている。
「さあ、月乃宮さん、今回も目一杯楽しみましょう!」
 恋音は釣りは夏場に少し教えて貰った経験はあるものの、まだまだ不慣れだ。だから恋人である雅人が手取り足取り指導中。仲睦まじい光景だ。因みに彼は水着に着ぐるみでふるもっこだ。
「……釣れますかねぇ……」
「釣れますとも〜」
 不安げな恋音に、雅人が笑顔で応えた直後。ぐん、と浮きが沈んで手応えあれば、二人で「せーの」で釣り上げて。
 さぁ食材は揃った。雅人が片っ端から豪快にガンガン焼いていけば、あたりに漂ういいにおい。みんなみんなが集まってくる。
「おっと、BBQをするのか? ならこれが必要だな……」
 紅茶だー! と、レトラックは寒さに震えながら紅茶を皆に振舞ってゆく。
「ふふ……油物の後にはあっさりとさせてくれるこいつが不可欠だろう? なに、礼はいらないさ……俺は君達が美味しく紅茶を味わってくれればそれで良いんだ」
 そしてこのキメ顔である。
「カーティス君、一緒に食べよ!」
 海から上がった怠惰も、もこもこに着込んで星杜さん家のカレーを盛った二つの皿を手にクリスティーナを呼んだ。シーフードカレー。彼女が海で採った貝とか蛸とかエトセトラ。
「うー、おいしいのにゃ!」
 のとうもホクホク顔で色んな食べ物を頬張っていた。一方でケイはもぐもぐ食べており、糸魚は列に並んでおり、お手伝いしていたオルタはやりきった顔で、ユウは皆にひざ掛けと飲み物を配っている。
 その中には棄棄もいた。恋音に「モロコシ」と頼んで焼いてもらったトウモロコシをもぐもぐしている。そんな彼に雅人はしっかりご挨拶だ。
「棄棄先生、どうか今後もよろしくお願いしますねー」
「おう、よろしく〜」
 もぐもぐ。
 東雲 桃華(ja0319)も体育座りでヤキトウモロコシをもぐもぐしていた。遠い目をしながら。
「私……、何でこんな所にいるんだろう……」
 2月の海。冬真っ盛りの海。常識的に考えて絶対にあり得ないと思うのだが。でもまぁこんな時はアレだ、魔法の言葉。
「久遠ヶ原なら仕方ない」
「せやな」
 棄棄が横でモロコシむしゃあしながら完全同意。そのままトウモロコシをムシャムシャしながら。
「まぁ私も久遠ヶ原学園生だけど……自分で言うのもヘンかもしれないけど、私は『珍しく』常識人だし」
 だから水着なんて着ないし当然海にも入らないし、凍て付く砂浜を裸足で駆けるなんて事もしn――あ、れ?
(私本当に、何でここにいるのかしら)
 逡巡。その結果。それもこれも全部全部、彼が悪い。いつもふらふら、糸の切れた凧みたいに飛んで行ってしまって。
 でも、もう――待つ事にも慣れてしまった。けれど。ただ。これだけは、言いたい。否、言わせて貰う。
 桃華はすっくと立ち上がった。そのまま波打ち際まで歩いていくと、空気を深く吸い込んで。

「連絡くらい寄越しなさいよバカーっ!!」

 海に叫んだその声は、風と波より大きく広く響き渡った。
 それを見守っていた棄棄の背中に、どしーんと抱きつくのは満腹になったのとうである。
「先生、せんせい、何してるか? 楽しい? 俺とも遊んで?」
「先生は今、生徒諸君を見守ってたのさ。楽しいぜ。……それじゃのとちゃん、何して遊ぶ?」
「ん〜、任せる! 面白かったらそれでいいのにゃ。うむ」
「じゃあ鬼ごっこな! タッチ!」
「あ! 待てーっ!」
 砂浜を走り始める二人。寒風が耳を掠めても、楽しかった。
「へへへー! 先生、連れて来てくれてありがとうな!」
「おうよ、楽しいな!」
 はしゃぐ声が、海に響く。

●俺達の海はこれからだ。
 夕日の沈む赤い海。生徒達に帰り支度を指示した棄棄へ、友真と一臣が声をかける。「センセ」、と。
「来年もまた寒い言いながら来よな」
「また2月でいいからさ。来年も一緒に海へ来たいな俺」
 二人の言葉に一瞬、棄棄は目を丸く。それから、いつもの人相の悪い笑みを浮かべて。
「あぁ、勿論。来年も、その次も、その次も、その次も次も次だって……お前達が望むなら、いつだって連れてってやるさ」
 本音だ。嘘なんかじゃない。嘘なんかじゃない――今だけは『嘘じゃない』とさせてくれ。夕日と笑顔に全て全てを包み込んで、棄棄は二人の頭をわしゃっと撫でた。
 そんな教師に、沙羅も綺麗な礼を一つ。
「毎日、戦いの日々の中……束の間の平穏。ありがとうございました。また、明日からも頑張りましょう!」
「おうよ! 沙羅ちゃんもファイト一発な」
 はいっ、と少女は笑顔を浮かべる。そしてクリスティーナへ振り返ると、ゴミ袋とトングを手渡して。
「さぁ、後片付けです。来た時よりも美しく、です!」
「心得た。任せるがいい」
 ゴミ拾いと後片付け。良い心がけだと頷く教師も加わった。
 その棄棄の姿を、アンノウンは終始見る事も出来ず、話しかけるなど尚更だった。嫌な夢が脳裏をよぎる。あれは夢だ。所詮フィクションだ。けれど。だがその中で、生徒達と楽しそうに笑っている彼にどこか安堵を覚える己が居る。彼はそっと、しかししっかりと、何かを決めたように頷いた。
 甘えてはいけない。だから『こう』する。しかしそれは何故だか、『さびしい』と感じた。
 帰る前に。ゼロも教師の肩をちょいとつつく。そのまま多めの便箋を差し出しつつ、棄棄にだけ聞こえる声量で曰く。
「こう見えて長い事生きてるんで『そういう時』ってのは気づくんですわ。次の者に『想い』だけやなくて『形』も残したってください。残った人を後悔させたらあきませんよ?」
「……さぁて? 何の事やら」
 にたっと笑い、便箋は受け取らず。棄棄はそのまま海を見遣った。
「来る前にも言ったろ。『来た時よりも美しく』って」
「あれ。言うてはりましたっけ?」
「んじゃ言ってた事にしといて」
 へらへら笑う教師は、ゼロよりも十倍以上年下ながら老獪だった。食えないお人やなぁ、なんて、ゼロは呟いた。
 一方で糸魚は棄棄と紳士的に握手一つ。
「とても楽しかったです。寒い日の海も良いものですね。先生も楽しかったですか?」
「おうよ! やっぱ海はサイコーだな」
「えぇ。また皆さんで来ましょうね」
「でさ……その魚、最近流行の防寒具……?」
「え、魚? どこです?」
 キョロリと周囲を見渡す彼に、『己の頭が魚である』という自覚は無かったのであった。

 日が沈む。
 夜が来る。
 その時、帰らんとしていた撃退士が目にしたのは夜に咲く花火だった。
「ふふ、冬の花火ってのも悪くはないね」
 物陰から漆が打ち上げたのである。ふ、と微笑んだ漆。その傍で『ゴトン』と何かが倒れる音。
 おや、なんだろう。ん? 花火を打ち上げる筒が倒れてこっちを向――

 どかーん。


『了』


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:27人

銀閃・
ルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)

大学部6年145組 男 鬼道忍軍
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
黒の桜火・
東雲 桃華(ja0319)

大学部5年68組 女 阿修羅
cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
料理は心〜学園最強料理人・
水無月沙羅(ja0670)

卒業 女 阿修羅
遥かな高みを目指す者・
立花 螢(ja0706)

大学部5年179組 女 阿修羅
ファイヤーアーティスト・
ヒンメル・ヤディスロウ(ja1041)

大学部1年156組 女 鬼道忍軍
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
無傷のドラゴンスレイヤー・
橋場・R・アトリアーナ(ja1403)

大学部4年163組 女 阿修羅
撃退士・
金鞍 馬頭鬼(ja2735)

大学部6年75組 男 アーティスト
絆を紡ぐ手・
大狗 のとう(ja3056)

卒業 女 ルインズブレイド
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
黒の微笑・
石田 神楽(ja4485)

卒業 男 インフィルトレイター
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
心の盾は砕けない・
翡翠 雪(ja6883)

卒業 女 アストラルヴァンガード
真愛しきすべてをこの手に・
小野友真(ja6901)

卒業 男 インフィルトレイター
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
今年は絶対焼かない・
ポラリス(ja8467)

大学部4年263組 女 インフィルトレイター
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
奇妙な友人‥‥或いは?・
レトラック・ルトゥーチ(jb0553)

大学部9年97組 男 アストラルヴァンガード
さよなら、またいつか・
シュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)

卒業 女 ナイトウォーカー
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
斡旋所職員・
卯左見 栢(jb2408)

卒業 女 ナイトウォーカー
撃退士・
不破 怠惰(jb2507)

大学部3年2組 女 鬼道忍軍
子鴉の悪魔・
鴉女 絢(jb2708)

大学部2年117組 女 ナイトウォーカー
仲良し撃退士・
オルタ・サンシトゥ(jb2790)

大学部3年208組 女 バハムートテイマー
撃退士・
奥戸 通(jb3571)

大学部6年6組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
シルファヴィーネ(jb3747)

大学部1年164組 女 ナイトウォーカー
不動の聖魔褌帝・
千 庵(jb3993)

大学部8年88組 男 ルインズブレイド
撃退士・
藤堂・R・茜(jb4127)

大学部4年44組 女 アストラルヴァンガード
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
災恐パティシエ・
雫石 恭弥(jb4929)

大学部4年129組 男 ディバインナイト
ジャパネットやなぎだ・
柳田 漆(jb5117)

大学部6年173組 男 インフィルトレイター
撃退士・
シグリッド=リンドベリ (jb5318)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー
撃退士・
音羽 聖歌(jb5486)

大学部2年277組 男 ディバインナイト
リコのトモダチ・
礼野 明日夢(jb5590)

小等部6年3組 男 インフィルトレイター
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
もみもみぺろぺろ・
カナリア=ココア(jb7592)

大学部4年107組 女 鬼道忍軍
久遠ヶ原学園初代大食い王・
Unknown(jb7615)

卒業 男 ナイトウォーカー
\鯖頭?誰ですそれ?/・
川中 糸魚(jb8134)

大学部7年58組 男 鬼道忍軍
撃退士・
瀬戸 入亜(jb8232)

大学部7年193組 女 アカシックレコーダー:タイプA
目指せ二月海百周年・
イリス・リヴィエール(jb8857)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー