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む? どうやら包囲されたか。リザベルめ。小賢しいことをしてくれおる。

‥‥クハハハハハハ! だがもう遅い! 全軍、このまま中央を突破し、
そのまま返す刀で南方の撃退士を殲滅するのだ! 誇り高き天の軍勢に後退など許されるものか!
いかなる罠であろうと、我の突撃で打ち破ってくれる。
まさかここまで肉薄されるとはね‥‥
既に奴らを包囲しているのだ。包囲が突進を止めるのが先か、本陣が突破されるのが先か‥‥
被害を最小限にするつもりが、なんということだ。

致し方ない、槍には必要最低限の者だけを向かわせ、敵の突撃に備えるのよ!
槍もそうだけど、敗走したとなっては、ルシフェル様にどのような罰を与えられるかわからぬぞ!

‥‥それにしても、原住民がここまで早く槍を奪うとは‥‥
覚悟していたとはいえ、完全に出遅れてしまったわね。

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イメージノベル (執筆 : 望月誠司)


「……聖槍が原住民どもに奪われたですってっ?」
 攻め寄せる天界軍との激戦が続く冥魔の陣、男爵のリザベルは報告を受けて歯噛みした。
 縦深に構えた冥魔の陣のうち既にほとんどがギメル・ツァダイ率いる天界軍に打ち破られ、リザベルの本陣まで肉薄されていたが、リザベルは伏せていた精鋭隊によって、戦列の伸び切った天界軍の側面より猛攻を仕掛けさせ、これを半ばから両断する形で断ち切っていた。
 今は分断した天界軍目がけて包囲攻勢を仕掛けんとする段階である。
(聖槍が作戦目的、一応でも追わねばルシフェル様にどういった罰を受けるかわからない、けどようやくこの態勢まで持ち込んで、攻囲を解く事は今までの全てを無駄にする事になる)
 いや、むしろここで十分な打撃を天界軍へと与えられなければ、リザベルの本陣は前進するギメル・ツァダイに突き破られるだろう。下手をすれば全滅させられる。
 女男爵は忙しく考えを巡らせる。
 決断にかかる時間が一秒か二秒か、それが全軍の生死を分ける。時の砂の一粒が黄金よりも重い。
「生きて帰るのが最優先よ! でも、聖槍を原住民達に奪われる訳にはいかない。隊を分けるわ! 一番隊から七番隊、あと九番隊は天界軍への攻勢を維持! 機動力の高い八番隊と十番隊を原住民どもへと向かわせなさい!」


「案の定、してやられたか……」
 冥魔軍の別働隊による側面攻撃で真っ二つに分断されてしまった戦況をみやりレギュリアが嘆いた。
 おまけに聖槍は原住民達に奪われてしまったという。
「……レギュリア殿、如何いたそう?!」
 味方の男天使が動揺も顕に声をあげる。
「神器の確保が最優先だ! あの脳筋どもが招いた不始末だ。冥魔が包囲された先頭部隊の処理にかかってくれるのならむしろ好都合! 包囲の外に弾かれた我々はその隙に全戦力で神器を奪取する――!」
 女天使はかぶりを振った。
「と言いたい、言いたいが、同胞を見捨てる訳にもいくまい……っ! 神器も奪われる訳にはいかないが……!」
 さらに、神器を奪取できたところでそれからどうする? ギメルの軍が殲滅されてしまえば、撃退士と戦い疲労しきった段階で冥魔と戦うことになり、漁夫の利を奪われるのは確実。
 レギュリアは苦悩しつつ言う。
「足の速い連中だけを南へ! 後は冥魔の包囲網の一点に火力を集中させる! 一画を切り崩して攻囲を受けている仲間達を救出するのだ!」
「了解。そちらは私が引き受けよう! レギュリア殿は南へ向かう隊の指揮を! 貴女の翼と砲撃なら原住民どもを逃がしはしない筈だ!」
 男天使の言葉にレギュリアはしばし迷いを見せたが、
「それが効率が良いか。すまん、頼んだぞ! 神器は必ず奪還してくる!」
 少女天使はそう言い残し、光の粒子を噴出して南の空へと飛び立ったのだった。


 他方、追撃を断ち切って陣地までの撤退を成功させていた撃退士達だったが、人類側が防御を固めている犀川以南まではまだ依然として距離が離れていた。
 さらに天、冥魔、共に再び追撃隊を繰り出して来たという。
「流石に簡単にゃ諦めちゃくれへんか。どうする、敵さんどっちも素早いで。また足止めだすか? この状況やとトカゲのしっぽ切りみたいやけど」
 大鳥の問いかけに、神楽坂は思案している様子だった。
「……こちらに向かって来ている敵は……機動力はあるみたいですが……報告を総合すると、どちらも数はそう多くなさそうですね?」
 黒瞳を鋭く細めて女が言った。
「……茜ちゃん?」
「反転して殲滅しましょう」
「マジか」
 大鳥は口をポカンと開いた。
 会長は言う。
「真っ直ぐに逃げても背中から一方的に殴られるに殴られるだけです。これは論外。囮や足止めをだせば、本命は逃げきれるかもしれません。ですが、犠牲が大きい。幸い追手の数は多くない。天魔の両本隊は今すぐには動けない状態。ならば、この隙に敵の追撃隊を殲滅します。短期間でやります。速攻です。速さが勝負。私も前線に出ます。急ぎ敵の追撃隊を無力化し、天魔の本隊が来る前に、全力で南へ逃げます」
「なるほど、なるほど……なら槍はどうする?」
 大鳥は問いかけた。
「守るべきもんやけど、同時に強力な武器や。短期間で仕留めなアカンのなら出し惜しみせぇ方がええ」
「……そうですね。危険はありますが……今は苦しい時です。ここで使わないで何時使う、という奴なのかもしれません」
 神楽坂茜は頷く。
「問題は」
 大鳥南は言った。
「誰に預けるかや」


 そして。
「――私、か」
 聖槍を託す相手に選ばれたのはクリスティーナ・カーティスだった。
 それに神楽坂茜は頷いた。
「はい。実力は申し分ないですし、頑強でかつ、飛べますから」
 きっと聖槍を有効活用してくれるだろうと判断したとの事。
「……敢えて聞く。私は堕天使だ。言うなら、天界を裏切って地上に降りた。聖槍は天上天下に比類なき神の武器、その貴重さは言うまでもない。それを私に一時とはいえ預けると? 今度はこの神器を手土産に学園を裏切って、天界に戻るか冥魔あたりにつくかもしれないとは考えないのか? 学園は堕天使をそこまで信じるのか?」
 生真面目そうな女天使は無表情でそう問いかけた。
「…………少し前、人を信じて裏切られた事があります。それから色々あって、思った事があります」
 神楽坂は微笑して言った。
「無条件に誰かを信じるという事は、絶対に誰も信じないという事に似ているのではないかと。あの時、私は相手を見ていなかったのかもしれません」
 神楽坂はクリスティーナを見据えて言った。
「今、貴方を見て言います。私は貴方を信じます。貴方が学園に来てから今までやってきた事は、信じるに値する。だからこそ、お願いしたい。それを、その槍で人々に広く知らしめて欲しい。貴方は信用できるのだと」
 学園には人と堕天使とはぐれ悪魔が混在する。公的には友好的に手を取り合っていると喧伝されているが、実際の所は軋轢も多い。
「……小難しい事は良く解からないが」
 クリスティーナは言った。
「要は、人類側についた天魔が、人々から信じて貰う為に、命を張れという事だな? 重要物の聖槍を預かって振るい、故郷の軍勢や、あるいはかつての友人へも刃を向けろと」
「……そうです」
 神楽坂茜は頷いた。
 クリスティーナは答えて言った。
「――解かった。引き受けよう。私は貴方達と共に闘うと、決めたのだからな。この力が続く限り、この槍を振るおう。だが、私が倒れたその時は、貴方達人間を信じても良いだろうか。神器をただ一柱で扱いきるは不可能だと思う。力の限りは尽くすが、私だけで振るい続けるのは不可能だろう。私が限界を迎えたら、皆に槍を引き継いで戦って欲しい」


 駆ける、駆ける、駆ける、悪魔の軍勢が地を揺るがして駆けてゆく。
 大鎌を手にその先頭に飛ぶのは男。魔界騎士ソングレイ。
「――人間ども、逃げるのは止めたようだな」
 空より彼方を見やり、地上を這う者達の動きを知覚してソングレイは呟いた。
「勝負に来るか。面白い」
 魔界騎士は笑った。
 戦う甲斐がある相手ならば、士気もあがるというものだ。
「さて、槍をもった原住民どもと、槍を狙う天界ども! どちらも滅せねば面白くない。前衛、突っ込むぞ! 一気に蹴散らせ!!」
 男は大鎌を振り上げると、配下のディアボロ達と共に撃退士達が構える陣へと翔けた。


 激戦が続く長野の廃街。
 天界軍の追撃隊が北東から、冥魔軍の追撃隊が北西から矢のように迫り来る。
 撃退士達はその進撃を迎え撃つように北へと向き直り、聖槍を持つ隊を前面に展開した。
 聖槍アドヴェンティを巡る争奪戦は、最終局面を迎えようとしていた――







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