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マスター:黒兎そよ
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/07/17


みんなの思い出



オープニング

●デラックスなんです

「ふぅぁ〜、冷たい……」
 バス亭の屋根に駆け込んできた少女は、濡れた髪の毛から水滴を払う。
 急に振り出した雨は、瞬く間に豪雨へと変わり、少女は慌てて避難してきたのだ。
「風も強くなってきたし、室内に入った方がいいかな〜」
 雨粒は横殴りに噴き付けてくる。
 少女は右腕で顔を守りつつ、左手で翻りそうなスカートを抑えた。
 白い太ももを雨水が伝う。
 最近は、ゲリラ豪雨が頻発している。雷や突風も伴うため、傘をさしただけではままならない。
 少女はため息をついた。
 
 また、辺りが暗くなった。
 暗雲でも立ち込めてきたのだろう。そろそろ雷でも鳴るのではと、眉を顰める。

「ゲコ」

 ありがちなカエルの鳴き声が聞こえたのは、そんな時だった……。

「あれ? もしかして……今年も!?」

 顔を上げた少女の目の前には、今までで最大級の奴が居た。
 それは巨大な巨大な……ウシガエル。

 カエルは口を開けると、舌を伸ばしてくる。
 少女は咄嗟に前回り受け身でそれをかわす。
「昨年も、その前も遭遇したのよ! そんな攻撃お見とおっふぁああっ」
 が、立ち上がろうとしてバス亭のポールに頭を打った。

 にゅるんっ……ぱくっ。

 哀れ、その隙にカエルの舌は少女を捕らえて、口の中に放り込む。
 そして、べちゃっと言う音とともに吐き出した。

 ぐちゃぐちゃに濡れた少女のブラウスが透け、スカートやソックスの一部が溶けている。
 デロッデロにされた髪の毛が、テカテカと光る。
 アスファルトに横たわる少女の瞳をキラキラと涙が伝う。

「あぁ……今回も駄目だったよ」
 そう言うと少女は白く燃え尽きた……。
 あ、死んでないよ?
 ただ、精神的にはちょっと立ち直れないかもしれないが……。


●眉間に皺をよせたオペレータ

「という事で、また奴が現れました」
 眉を顰めてスクリーンの前に立ったのは、オペレータの志方 優沙(jz0125)だ。
 彼女の操作で、スクリーンには巨大カエルのディアボロが映し出される。

 体長、実に10メートルを超える巨大なカエル。
 インパクト抜群の奴は、昨年の夏に現れた奴らよりも、さらに巨大……まさにデラックスなカエルディアボロだった。

「以前確認されたものと同様に、舌で捕獲した対象を口に含み、吐き出すという仕様です。さらに、唾液は衣服を透けさせ、溶かすという効果があります……相変らず最低ですね」
 眼鏡に光が反射し、志方の表情は良く見えないが、底冷えするような声色だ。
 これはなんというか相当に怒っているようだ。

 以前現れたカエルディアボロの群れも、人々を舌で捕獲して、デロデロにして吐き出すという無法行為を連発していた。
 その被害は少女だけでなく、時には男子にも及んでいた。昨年は、イケメンを狙う個体も居たのだ。
 とりあえず数が少ない分、今年の方がマシとも言える……かもしれない。

 志方は、手早く資料を映し出す。
 巨大な体。ぬめる体表は、様々な攻撃を滑らせ無効化する。
 伸びる舌は強靭でしなやか。しかも長く、一度に沢山の対象を口に含む事もできそうだ。
 足の筋肉は異常に発達しており、その跳躍力は巨体に似合わず凄まじい。
 鳴き声も雷を思わせる程の大音量。周囲の音を掻き消してしまいそうだ。

 数が少ないからマシと言う考えは甘いかもしれない。何せ、巨大で色々と厄介そうな特徴を持っている。
 昨年までのカエルがザコと亜種としたら、今年はもしかしたらボスなのかもしれない……。
 ちなみに、目撃情報はいずれも、ゲリラ豪雨の直後という事だ。

「では、皆様。奴の排除をよろしくお願いします」
 志方が説明を終えると、撃退士たちへエールを送る。
「ご武運を!」


リプレイ本文



●振りカエルんです

「まったく、どうしてこんな事になったのでしょう……」

 肩を落としたのは桜井・L・瑞穂(ja0027)である。彼女のため息交じりの呟きは、土砂降りの雨の中に消えた。
 元はと言えば、帝神 緋色(ja0640)にディアボロ退治に誘われたのがきっかけだった。
 しかし、まさかこんな相手だったとは……。

 水しぶきの中、戦う仲間と奴の姿。
 アスファルトを濡らす雨が、夏の臭いを感じさせ、桜井は再び長いため息をつくのだった。


●出迎エルんです

「やー、瑞穂。来てくれて嬉しいよ」
 棒読みな台詞で帝神は桜井を笑顔で迎えた。わざとらしいのも計算の内なのだったのだろう……桜井がそれに気がつくにはもう少しの時が必要なのだが。
 それはさておき、桜井は辺りを見回す。

「蛙さんが〜♪」
 と元気良く歌っているのは、焔・楓(ja7214)だ。
 相変らずの薄着だが、最近、暑くなってきたのでそれも当たり前か。と、瑞穂は微笑む。
 焔もそれに気がつき、元気に手を振った。
「あ〜、瑞穂だ〜」
「ごきげんよう。楓も緋色に誘われてこの依頼に?」
「ちがうよ〜。あたしはウサちゃんに頼まれたからだよ〜」
「ウサ? あぁ、オペレータの方にそんな名前の子がいましたわね」
 焔の返答に桜井は記憶を辿り、眼鏡をかけた少女を思い出した。

「部長様、ごきげんよう」
「あら、みずほ……あなたも参加していたのですわね」
 声をかけて来たのは長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)だ。同じ『みずほ』という名前と境遇から、桜井はこの後輩を気にかけていた。
「それにしても、部長がこの依頼を受けているとは思いませんでしたわ」
「そうなの? わたくし、緋色に誘われてあまり詳しい事は知らされていないんですわ」
「えっ……あの、部長さ……ま?」
 長谷川がなにやら口を開きかけた所に、男子が割り込んできた。

「ふふふ、実に良い素材が二人も並んでおるな。これは期待できそうで御座るな〜」
 と源平四郎藤橘(jb5241)は、二人のみずほに舐めるような視線を送る。そして、実に嬉しそうに頷いた。

「あまり、僕の雇い主を変な目でみないでもらえるかい」
 源平の背後に立った橘 優希(jb0497)は、ちょっと怖い笑顔だ。
「おぉ、こちらも可愛らしい!」
「僕……男だからね? あ、あと彼も男だし、緋色さんもだからね?」
 橘は少し離れたところに居た金髪ポニテの 犬乃 さんぽ(ja1272)と、帝神を手で示した。
「……そんな事で御座るか? 美少年も大好物で御座るよ〜。はっはっは〜」
 笑いながら去っていく源平の後姿に、橘は頬を引きつらせる。

「優希、ありがとう……それにしても良い素材って何ですの?」
 と、桜井は首を傾げる。
「えっと……」
 橘にとってそれを言うのはなんとも気恥ずかしく、返答に困ってしまった。
「それは、『みずほ』さまたちがナイスバディだからっすよ〜。マジ、パねぇっす」
 強欲 萌音(jb3493)が橘の代わりに答えたのだが、桜井にはやはり理解できなかった。
 自分の体型が良いというのは褒め言葉だろうが、何の素材となるのだろうか……と。
 一方、長谷川は強欲が言わんとする事を察し、顔をほのかに赤らめている。
「つまり、ディアボロに私たちの服が……透……」
「す?」
 たどたどしい長谷川の言葉をなんとか拾ってみた桜井だったが……。
「はいはい、皆、瑞穂にあんまり情報を与えないでね〜。始まってからのお楽しみなんだから」
 帝神が話を遮ったため、それ以上のことを桜井は知る事は無かった。



●デロルんです

 轟音――。

 ポツリポツリと降り始めた雨は、次第に勢いを増していく。
 瞬く間にアスファルトの上に、川のような雨水の流れが出来た。
「カエル、はっけーん!」
 その流れの中、水しぶきを上げながら巨大なカエルが歩いていた。敵、ディアボロの登場である。
「本当に大きい蛙さんなのだ♪ とりあえず先手必勝で、特攻ー♪ 攻撃の一番手は貰ったのだ!」
 のそのそとしたその姿を見つけた焔が、喜び勇んで駆け出す。
「待ちなさい、楓っ!」
 桜井は呼び止めようとするが、間に合わない。
「優希、みずほ! 続きますわ……よ!?」
 仕方なしに、桜井もその後ろを追って走った……が。



 ペロンッ――。



「か、楓ぇーーっ!?」
 走っていった焔がカエルの舌に捕らえられ、そのまま口の中へと消えた。
 その、あまりのあっけなさに、桜井の口から思わず叫び声が漏れ出る。

 デロ〜ん。

 と、吐き出された焔がアスファルトに座り込んだ。
「あぅぅ、口の中、気持ち悪かったのだ……」
 カエルの粘液に塗れた白いシャツは所々穴空きになり、焔の健康的な肌を覗かせる。
「な……なんですの。これは、緋色!?」
 駆け寄った桜井は、あわてて焔の肌を隠すように上着をかけ、振り返って帝神に抗議の声を上げた。
「ん〜、なんというか……」
 帝神が言葉を濁している間にも「ひぅー! このエロガエル! 丸焼きにして食っちまうっすよ!」
と、角を舐められ、その感触に背筋を振るわせた萌音は、怒りの声を上げる。しかし、カエルも容赦は無い。
「ひぃぃ〜、服だってタダじゃないんっすよ〜」
 カエルの長い舌に巻き取られ、叫び声とともにカエルの口に放り込まれた萌音。
 吐き出された姿は、白く糸を引く粘液に塗れていた。
「ぐすん……服だけを溶かすクスリとかで高く売れないもんすかね」
 涙ながらにも強欲な萌音である。

「ボク、何にも見てない、見てないから」
 と、呪文を唱えるかのようにして、犬乃がカエル目掛けて走る。
 視界に入ってしまった焔と萌音の姿がちらつき、それを振り払うように目をつぶって自分に言い聞かせていた。

 そう……目をつぶっていたのだ。



 ペロンッ――。



「うわぁ〜……」
 カエルに苦手意識を持つ橘は、犬乃が飲み込まれたのを見て足を止める。
 吐き出された犬乃は、ねっとりとした粘液で金色の髪を蹂躙されていた。粘液は人体には無害なのかもしれないが、生臭いアレな臭いとともに、服を溶かす。
 粘液塗れの犬乃は立ち上がろうとして、足を滑らせ焔に抱きつくように倒れてしまう。膨らみかけの青い果実が鼻先に当る。
「はわわわわ…わざとじゃ、わざとじゃない〜」
「ん?」
 慌てて弁解する犬乃だったが、焔は男子を胸元にうずめたという事の重大さに気づいていなかった。

 そんな光景を見て、橘は改めて実感する。カエル……恐ろしい敵だ。
 とは言え、将来の雇い主の前だ。ここは活躍しておかないとなるまい。と、橘は意を決してカエルに挑む。
 
 数度の攻撃を試みるもその滑る体表に阻まれ、決定的な打撃は与えられない。
「もう一撃……っ! って、えっ……?」
 舌に絡まった橘は、ヌルヌルとプニプニした触感に戸惑いを隠し切れない。
「やっ……ちょっ、気持ち悪っ……って、舌動かさないでっ……んんっ」
 舌で巻き取られた橘が、切なそうな声を上げる。その表情は妙に恍惚としていた。
「はふっ……もう……無理……」
 くったりと力が抜けた橘の四肢は、粘液と雨で妙なテカり具合が艶かしい。

「こんな感じの依頼……かな?」
「かな? じゃ、ありませんわ〜!」
 笑って誤魔化す帝神に、桜井は恨めしそうな視線を向けた。
「最初に言っておくで御座る――デロデロっちゃった女の子とか橘少年とか見たいので依頼を受けましたで御座る」
「あなたは、お黙りなさい!」
 源平を怒鳴りつけると桜井はため息をついた。薄々、『何かあるのでは』と勘ぐっていた桜井だったが、予想外の破廉恥な惨状に眩暈を覚えたのだ。

 そうこうしているうちに、カエルは大跳躍。
 宙を舞うカエルを見ながら帝神の口から、「あ……こりゃ、僕も狙われてる?」と、少しだけ焦った声が上がる。
 帝神の余裕だった笑みが少し引きつる。
「緋色!」
 着地したカエルの口が開くと同時に、すかさず桜井は帝神を庇った。しかし、カエルの長い舌は二人まとめて巻き取ってしまった。
 「んっ……」と、強く締め付けられた桜井が苦悶の声をあげる。
 そのまま、口に放り込まれた男女(見た目には少女たちなのだが)がカエルの口へ。
 カエルの唾液は衣服を所々溶かし、粘液に塗れた二人は不快そうな声をあげる。。
 ただ、抱きしめられた帝神は、桜井の豊満な胸にうずまり、ちょっとだけ頬を赤らめていたのだった。



●殴ルんです

「眼福。眼福!」
 通り雨は小降りとなり、少し明るさ取り戻した中、源平は満足げに仲間達の痴態(笑)を眺めていた。
 彼の目に映る光景は、美少女も美少年も全て等しくエロスの対象なのである。うん。悪魔的だ。
 欲を言えば、アスファルトの熱で立ち上った霧を何とかしたい。丁度良い所で、視界を遮ってしまうため、少女達の秘密の花園は守られていてもどかしい。いや、それが良いのか?
 などと源平は自らの脳内メモリにその全てを記録しようと、全力であった。

「ん? 何故に自分の方に近づいてくるでござるか?」
 折角、あられもない姿を目に焼き付けていたのにと、目前までやってきたカエルを睨みつける。
 カエルの舌が今まさに源平を狙って放たれようとした瞬間に、
「まさか、貴様! 自分を狙っているのか! このたわけ者! それでも二次元御用達のエロネタモンスターの一翼で御座るか!」
 源平はカエルを一喝した。
 カエルはなぜかその言葉に動きを止める。

「そうだ! 正々堂々触手(違)らしく、オンナノコを狙うで御座る!」
「こらこら、この裏切り者〜」
 萌音が源平のあまりに正直な……とういか酷い発言に突っ込みを入れる。
「ふふふ、また萌音殿をデロデロにするでござる! 行け〜カエル〜!」

 もはや誰が敵だか分からない発言である。

「えっ、ちょっと待つっす。そんな、嘘……でよね?」
 カエルを背後に従えた源平の姿に、萌音は後ずさる。先ほどの恐怖体験(笑)からか、萌音の目にはカエルの舌の動きがまるでスローモーションのように映った。

 ぬめぬめの粘液で光り、丸みを帯びたピンク色のそれが伸び出る――。

 あぁ、また、ぬめぬめした妙に柔らかい感触のそれで、あんな所(角ですが)やそんな所(尾ですが)をペロペロされてしまうっすね。と、身悶えする萌音の目前でUターン。カメレオンの舌のようにくるくると巻き戻りながら、源平の身体を捕らえた。
「馬鹿な〜っ」
「自業自得っすね……」
 萌音は最大の危機を乗り越えたかのような、清清しい気持ちで源平がカエルの口に飲み込まれるのを見送ったのだった。

 源平を口に含んだカエルの腹に、長谷川の一撃が打ち込まれた。手ごたえは浅い。滑る体表と思った以上の弾力のある肌に、衝撃が吸収されたようだ。
 しかし、その一撃でカエルは口の中の源平を吐き出した。長谷川はその粘液に掛からないように、素早くバックステップをする。
「まったく、何をしているんですの」
 あっと言う間にあられもない姿になった一同の中。無事なのは長谷川ただ一人であった。
 よほど、デロデロになりたくないのだろう。
 いや、女の子なら、というか人なら当たり前の感情なのだが……。

「流石は長谷川のみずほ様〜。さぁ、さぁ、やっちゃって下さい〜」
 萌音が調子良く長谷川をけしかける。

「まぁ、いいですわ。意外にタフそうな相手ですし、腕が鳴りますわ」
 長谷川は拳を構える。
 ちょっとアレな敵ではあるが、倒し甲斐はありそうだ。

「みずほ、加勢するわ」
 桜井は腕で胸元を隠すようにして立ち上がった。しかし、蠱惑的な白と青の過激なレース下着が透けて見える。
「……部長様。その、動くと見えてしまいそうですわ……」
 構えをとったまま、長谷川は視線を横にずらす。
 目のやり場に困った橘と犬乃に気がついた桜井は、咳払いをすると。
「おーほっほっ、この程度で動揺していては撃退士はつとまらなくてよ! さぁ、華麗に仕留めますわよっ!」
 と開き直って高笑い。内心は実に恥ずかしいのだが、それに耐えるのがお嬢様クオリティ。
「いい加減、そろそろやっちまうっす〜」
「あたしももう怒ったよ〜」
 萌音と焔も立ち上がった。萌音は恥ずかしそうに体を抱いているのだが、焔は気がつかずに居るので、不思議な霧さんが焔の胸元と腰の辺りをもやもや〜と隠して仕事する。

「僕らが奴の動きを止める。その隙に重い一撃をくれてやってくれ!」
 流石にここはやるしかないなと帝神と源平も立ち上がる。
 長谷川の前に並んだ七人は、桜井の号令で一同はカエルへと迫る。
「さぁ、行きますわよ!」
「おうっ!」








 ペロンッ――。




 長い舌はまとめて七人を口の中へと放り込んだ。
 いい感じにクライマックスな流れの気がしてたんだけどね……。
 吐き出された一同はもはや服ではなく布切れをまとっている程度の状態だ。

「皆様方!? おのれ、カエル許しませんわよ!」
 長谷川はアウルを爆発させると一直線にカエルの頭上に飛び込む。そして、全身全霊の一撃を拳に乗せて……。








 パクッ――。

 一直線にカエルの口に収まってしまった。


●振り返エルのはもうやめるんです


「それからは、大変だったっすよ〜」
 遠くを見るような視線で、萌音は語る。
 あの後、長谷川は、デロデロのぐしょぐしょの粘液塗れ、衣服も溶かされた状態でカエルの口から出てきた。口の中でこれでもかと言うくらいにマッサージされた長谷川の顔は赤く上気していた。
 それこそ長谷川にとって許しがたい事だったのだ。
 目を覚ますと同時に、涙ながらに叫ぶと、我を忘れたかのように暴れ出したのだった。

「えぇ、あの時のみずほは、その……なんというか……」
 言葉を濁しながら桜井は、長谷川を止めようとした時のことを語る。
 カエルをこれでもかと言うくらいに殴り潰した後も、その暴走は収まらず桜井は長谷川を抱きしめ、なだめ、そして静かにさせたのだった。

「少女のあられもない四肢が絡みついたあの瞬間は最高で御座った〜」
 源平が脳内保存した映像を思い起こしつつ頷く。
「ちょっと、やめなよ……」
 と、いいつつも犬乃と橘もその時の事を思い出して赤面する。
「健康的な美少女達のあられもない姿。そして恥らうその表情、確かに堪能させていただいたで御座る」
 ご馳走様と源平は合掌。

「あたしも……男の子に見られちゃった……」
 焔も思い出して顔を赤らめる。普段、そういう表情をしない子が、恥じらいを見せると、それはなんというか青春のパトスが溢れそうに……。
「うぅ、あたいもお金とればよかったっす〜。お前ら〜思い出すなっす〜」
 萌音が源平の頭をポカポカと殴って、記憶を飛ばそうと試みるも、そう簡単にはいかない。
 また、長谷川が暴走しないように、桜井はその肩を抱く。
「僕は瑞穂の白スク姿が見れたから満足かな、ふふふ」
 そんな中でも、帝神は相変らずだ。

「まったく、どうしてこんな事になったのでしょう……」
 どっと疲れた桜井は、またため息をつくのだった。




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