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マスター:とりる
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/08


みんなの思い出



オープニング

 理不尽は突然やって来る。
 久遠ヶ原学園の学生であるカレンは昼休み、お弁当の包みを開けようとしたところ――
 急に、担任教師から職員室へ『速やかに』出頭するよう校内放送で呼び出された。
 名指しでの呼び出しである。必然的に注目を浴びることとなった。
 ……小さい頃から目立つのが苦手だった彼は学園に入学以降も極力人目を引かぬように生きてきた。
 なのに。先ほどの放送で台無しだ。カレンは廊下を歩きながら「僕が何をしたっていうんだ」と、頬を膨らます。
 クラスでの成績は常に上位をキープしている。赤点など取ったことがない。普段の学園生活でも問題を起こしたことはなかった。
『それなりな優等生』を演じ、絶妙な空気感を出していたつもりなのに……。どうしてこんな目に遭わされなければならないのだ。
 腹が立つ。無性に腹が立つ。早く呼び出された理由を聞かねばならない。カレンは早歩きで職員室に向かった。

 ***

「お、来たか」
「来ました」
 職員室。机の前の椅子にだらりと腰掛けた担任教師の顔をカレンは恨めしそうな目で見つめて言った。
 不良っぽい女性教師……カレンはこの先生のことがあまり好きではなかった。
 テキトーに結んだ茶髪のロングヘアに、これまたテキトーなメイク。
 しかし……先生は二十代後半だったはず。基礎メイクでも十分なのはすごいのかもしれない。
 服装は胸元までボタンを開けた白のブラウスに紺のタイトスカート。脚には黒のパンストを穿いており、靴は青のヒール。
 ……そこでカレンは気付いてしまった。目の前の女性教師がブラチラしていることに。
 カレンはそっと視線を逸らした。色は黒だった。
「そ、それで、用事はなんですか? 僕がなにかしましたか?」
「それにはこう答えよう。むしろ何もしてないから呼び出した」
「はぁ?」
 カレンはぽかんと口を開ける。一体どういうことだ。
「お前、帰宅部だろ? どこの部活にも所属してなかったよな?」
「そうですけど……悪いですか……」
 特にやりたいこともないし、真面目に授業を受けて撃退士としての力を身に付ければ十分だと思っていた。
「じゃあ決まりだ。お前は今日から『ご奉仕部』所属な」
「……は? ……ええっ!? どういうことですか!?」
「よし、判子っと。これで正式に入部だ」
 担任はニッと笑みを見せた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 状況がよく解らないんですけど……!」
「なんだぁ? 説明が必要かぁ? 面倒臭いなぁ。まああれだ、帰宅部だから暇だろうし、人手が足りない部活があるってんでお前を『強制入部』させる。拒否権は無い」
 なんという傍若無人さ。ひどい。ひどすぎる。
「……そのご奉仕部というのは……?」
 聞いたことのない部活だ。ボランティア活動でもして回るのだろうか。
「んー、それは行けば解る。さっそく今日の放課後からな。サボったら単位やらないからな」
「…………なんで僕がこんな目に」
 部室と思しき場所が記された紙を押し付けてくる担任の前で、カレンは崩れ落ちた。瞳からぽろぽろと涙を零す。
「暇そうだからって言ったろ。あとは……そうだなぁ……これが一番の理由か」
「なんです……?」
 担任はニヤリと笑みを浮かべる。四つん這いの体勢のままカレンは担任を見上げた。
「お前が可愛いからだよ!!」
 ――カレンくん。実は彼、クラスで密やかな人気を誇る美少年だった。
 華奢な体格に可愛らしい童顔。いつも窓際で物憂げな表情を浮かべているのが堪らないとかなんとか。しかし本人はそれを知らない。

 ***

 放課後。カレンは肩を落としてトボトボと部室へ続いている廊下を歩く。
 これからは毎日『ご奉仕部』とやらの活動に参加しないといけないらしい。激しく憂鬱だ。

 しばらく歩くと、表示プレートに『ご奉仕部』と書かれた教室を発見。
 どうやらこの部活は空き教室をまるまる一つ使っているらしい。人手不足と聞いたのに……よくわからない。
 元は多くの部員がいたのだが、今は廃部の危機! みたいな感じなのだろうか?
 とか考えつつ「失礼しまーす」と言いながら教室の扉をガラガラと開けると、
「おや、来たわね。待ってたわよ。早く入って」
 にこやかな笑顔の超絶美人がそこにいた。……カレンは目を丸くする。
 目の前の人物は特徴的な服装をしていた。鮮やかな模様の振り袖に袴。そしてその上からふりふりのエプロンを着けている。
 艶やかな長い黒髪は後ろでアップにして袴と同じ色のリボンで結んである。色白の透き通るような肌をしており、容姿は驚くほどに整っている。
 更に体格はすらりとした長身。これほどの超絶美人が存在したとは……。カレンは軽くショックを受けた。
「あ、部長! その子、先生が言ってた新人さんですか? 噂通り可愛いですね!」
「へぇー……確かになかなかね。でも調子に乗らないでもらえるかしら。あんたは新人なんだからね。その辺、弁えてちょうだい」
 教室の中から目の前の部長と呼ばれた超絶美人さんとは別に、二人の女子の声が聞こえる。カレンはそちらへ視線を向けた。
「私はミカ。よろしくね」
 にっこりとした笑み。それを見ると優しさに包まれたような気持ちになる。栗色のロングヘアのメイドさんだった。
「あたしはエリス。仲良くしてあげるかどうかはあんたの態度次第ね」
 眩しいくらいの金髪をツインテールに結わえたメイドさんがこちらをキッと睨んでくる。
「ご奉仕部――『メイド喫茶・フェルマータ』へようこそ。歓迎するわ」
「新しい子が入ってくれてよかったぁ。三人だとけっこう大変だったんだよねぇ」
「ちゃんと働けば少ないけどお給料も出るわよ。せいぜいがんばることね」
 そこでカレンはメイドさん三人の言葉を理解した。
「えぇーーーっ!?」
 カレンの声が廊下に響く。
「それと部長が超絶美人だからって惚れないように。この人、すっごい綺麗だけど、れっきとした『男』だから」
 エリスと名乗ったメイドさんが言い、部長さんは「うふふ」とおしとやかに笑った。
「えぇぇぇーーーーーっ!?」
 またもカレンの驚愕の声。
「それと斡旋所のほうに緊急の募集をかけておいた。最近お客さん多くってねぇ」
「ま、格安でくつろげるし、美人や可愛いメイドさんがいるんだから繁盛して当然よね」
 ミカはふう、と息を吐き、エリスは自慢げに胸を張った。
「…………」
 もう、なにがなんだか。カレンはその場で昏倒した。


リプレイ本文

●フェルマータへようこそ!
 ご奉仕部――通称・メイド喫茶『フェルマータ』へ、本日、アルバイトの依頼を受けた六名の撃退士がやって来る予定なのだが……
「はやぁ、メイドってなんでしょうかー?」
 予定時刻よりもかなり早く、一人の小さな堕天使が部室に迷い込んでいた。
 銀色の狐の耳と尻尾を持った実に可愛らしい少年、影山・狐雀(jb2742) である。
 きょろきょろと辺りを見回す彼。どうやら依頼内容……状況がよく解っていないらしい。
 と、そこで、彼よりも先に部室へ来て開店準備をしていた正規部員、メイドのエリスが狐雀を発見し、話しかける。
「あんた、アルバイトの子よね? 随分早くに来たのね。…………ふぅーん、ならこれを着なさい」
 エリスは狐雀を舐めるように見た後、ハンガーにかけられた衣装を彼に手渡す。
「ええと、これを着ればいいんですー?」
「そう。あたしと同じメイド服。それじゃあ、着替えに行くわよ。あたしが特別に手伝ってあげる」
「えっ? ありがとうございますー」
 にぱーと、まさに天使の笑顔を浮かべる狐雀だったが……。
 逆にニヤリと悪い笑みを浮かべたエリスは、何も解っていない狐雀を『女子更衣室』へ連行した。

 ***

 集合時間の五分前にもなればアルバイトの依頼を受けた撃退士たちは全員部室に集合。皆、やる気十分のようだ。

 パープルグレーに近い銀髪を三つ編みにし、肩に垂らした美女、秋姫・フローズン(jb1390)。
「常に……微笑みを絶やすことなく……」
 彼女の衣装はロングスカートのメイド服であり、脚には黒のストッキングを穿いている。
 ちなみにスカートに隠れて見えないが、ストッキングは同じく黒のガーターベルトで吊られていた。
「ご主人様に……献身的に尚且つ満足して貰えるように……頑張らせて……頂きますね……」

「メイド喫茶という活動のお手伝いだそうですね、全力を尽くしましょう」
 秋姫に続いて長い黒髪にスカイブルーの瞳をした淑やかな雰囲気の美少女、ステラ シアフィールド(jb3278)が言った。
 元々、普段からメイド服を着用していた彼女はそのままの衣装でアルバイトをこなす予定。
 メイド服を常用している理由は、ステラがはぐれ悪魔であり、長年仕える側であったため。今回はその経験を活かすつもりである。
「お客様への御呼びの仕方が二つでは催し物として些か寂しいと思いますので、 他の皆様方と相談してお客様の御呼びの仕方を増やしてみました」
 ステラはそう言って箱に入った大量の薔薇の折紙を取り出す。
「見分けの仕方と致しましては、折り紙で薔薇を折りその色で判別しようかと思います」
 お客への呼び方と、その判別方法を提案したのはステラだ。
 これも、少しでもお客に喜んでもらいたいという彼女の気持ちの表れ……ご奉仕の精神である。

 ほのかに気品を漂わせつつも勝気な金髪の美少女、長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)の衣装はクラシカルなヴィクトリアンメイド服。
「こういった事も興味深い経験ですわね」
 イギリスの名家出身らしい彼女は普段ご奉仕される側であったが、逆の立場を経験することも良いと考えたようだ。

「この度は宜しくお願い致します。素敵な部活動で御座いますねっ」
 そう言って嬉しそうに狐の尻尾を揺らすのは、はぐれ悪魔の美少年、AL(jb4583) 。頭には狐耳ではなく、猫耳を生やしている。
「お客様に楽しんで貰えるよう、また皆様とも楽しんで奉仕できますよう、精一杯頑張らせて頂きます」
 にこりと微笑む彼は執事服姿。少女のような可愛らしい外見のALにはメイド服のほうが似合うのではないか? とも思われるが……妙に執事服を着こなしている。
 それは彼が以前、他国のとある屋敷で使用人をしていたためだろう。
 店内の雰囲気を崩さないように心がけながら接客するつもりではあるが……、
「あまり弾け過ぎると部長様に怒られてしまいま……す?」
 慣れない場所ゆえ、少し不安を覚える。しかし部長は「ALさんなら大丈夫かと」と微笑み返してきた。ALは安堵。

 そんなALを見つめる小さな影が一つ――。
「……何かこれ女の子の服装な気がするのですよー!?」
 ミニスカメイド服姿の狐雀だった。ALと自分を見比べてみて、ようやく違いに気が付いた。
 犯人のエリスはニヤニヤと笑って隅のほうからこちらを見ている。
「あぅー、お尻がスースーして恥ずかしいですよー」
 狐雀はスカートの裾を引っ張りながら顔を真っ赤にする。
「大丈夫ですよ、狐雀様。とってもお似合いです」
 にっこりと笑い、ALがフォローを入れる。
「もし不慣れでもボクが積極的にお手伝い致しますので」

「メイド喫茶とは中々面白そうじゃな」
 そんな中で一際存在感を放っていたのは――狐珀(jb3243) 。
 それというのも彼女は狐獣人タイプのはぐれ悪魔なのだ。ALや狐雀も獣の耳や尻尾を生やしているが、獣成分は段違い。
「メイドは未体験じゃが、このようにケモノっぽいが一定の需要もあると聞くし頑張って働くとしようかのう」
 お狐美人の狐珀はそのように言う。確かに……需要はあるかもしれない。特にボリュームたっぷりの狐尻尾のもふもふ感は素晴らしい。
「備品に尻尾穴を開けるのも申し訳ないからのう」
 ――と、彼女の衣装は自前の『ニスロクの給仕服』。謙虚な所もあるようだ。
 長袖にフリル控えめのサロンエプロン等、大人っぽく清楚に決め、膝上丈のスカートから覗く脚もふもふと尻尾もふもふでもふもふ好きを狙っていく予定である。

 そして間もなく開店時間となり、各自持ち場へ付く。

●ご奉仕 前半
「わたくしはお出迎え兼呼び込み的な物となりましょうか。ご来訪頂いたお客様に、御呼びの仕方をご説明しなければなりませんし」
 というわけでステラは入り口の前に立ち、お客のお出迎え。
「喫茶フェルマータへようこそ、本日試みと致しまして、こちらのパネルにご用意させて頂きました」
 お客が来れば両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げてご挨拶。
 その後に、希望する呼び方の色のバラの折紙をお客の胸に付けていく。

 狐珀は接客の経験がなかったので部長や他のメイドさんから教わりながら接客を行う。
 艶っぽい微笑を絶やさず、尻尾をふりふりしながら頑張って働く狐珀。その姿に……ケモノ属性が無いお客たちも思わず目を奪われる。
 そして、ステラが提案したお客の呼び方を変える試みにも積極的に協力した。
 と、しばらくして接客にも慣れて来たところで――お客から「お狐メイドさん! スマイルください!」という注文が来た。
(……この様な時はどうしたら良いじゃろうか……?)
 こっそりと【意思疎通】で部長へアドバイスを請う狐珀。その返答は「にっこり笑ってウィンク」だった。
 それを狐珀は「なるほど」と、そのまま『素直』に実行。
 ……お狐メイドの『麗しの流し目ウィンク』を喰らったお客たちはハートを見事に撃ち抜かれた。

「ご注文を……承ります……。すぐに……お持ち……しますね……」
 秋姫は自ら用意してきたミニケーキをお客に提供。
 もちろん事前に部長へ確認、及び許可を取り、本日限りのメニューとして加えてもらった。味のほうも部長のお墨付きだ。
「お待たせ……致しました……」

「実家に居た頃はジェシカさんに色々お世話して頂いておりました。あのように行動すればよろしいのですわね……」
 みずほはジェシカさん――実家のメイドさんの働きぶりを思い出しつつ、接客を行う。
「このような場合、日本ではどうお呼びすれば良いか、おじいさまからお聞きしておきましたわ」
 お客によって「旦那様」「奥様」「お嬢様」と呼び方を使い分ける。

「何かよくわからなくて、この格好恥ずかしいですけど、頑張りますー」
 狐雀はミニスカメイド姿に恥じらい、顔を赤らめつつ、その格好のまま接客を行う。
 初めての経験に戸惑い、わたわたしながらもがんばって健気にご奉仕。
「はわっ!? い、いらっしゃいませ、ご主人様! ですー」
 お客に「可愛いねーがんばってね♪」などと言われれば嬉しそうに尻尾をぱたぱた。
 しかしやはり失敗することもあり、そのときは耳と尻尾をぺたんと垂らした。
 狐珀と同じように、正規部員のメイドさんやALなどに教わりつつ、狐雀は慌ただしく仕事をこなす。

 ALは――
「尻尾で御座いますか? ええ、御触れになられて構いませんよ。しかしながら狐珀様の方が立派かと」
 狐珀と共にケモノ属性、及び狐雀と共にショタ属性のお客から大人気。
 尻尾のお触りもOKとのことで狐珀と一緒にもふもふされることもしばしば。
 狐珀は「こんこん♪」と鳴いて見せ、ALは「はぅわぁ〜」と少しこそばゆそうにして見せた。
 更に「ALくんのメイド服姿も見たいなぁ〜」という女性客からの要望があれば、
「メイド服着用というご要望があればお応えいたしますが……」
 赤面しつつも正規部員のミカと同タイプのヴィクトリアンメイド服を借りて着替え、お客に披露した。

 サービス精神旺盛なAL。そして恭しく呼び込みを行うステラ。
 アルバイトの撃退士たちは皆人気だったが、ALとステラは頭一つ抜け出ていた。

●ご奉仕 後半
「え、ええと……お嬢様、ありがとうございました、ですー」
 開店から時間が過ぎ、狐雀も大分慣れて来た様子。
「こんな感じでよいのでしょうかー?」
 とミカに尋ねれば「OKだよぉ」と優しい笑みが返ってきた。
「よしっ」とやる気になる狐雀だったが、やはりまだ動きはたどたどしく、歩き回る度にスカートがチラチラして客の視線を誘ったり、
「あ、ご注文ですねー。今参りますので少々お待ちくだ……わきゅぅ!?」
 慌てて転んだりしてしまう事も……。
「い、痛かったですー……」
「大丈夫? でも、見えちゃってるから……早く立とうねぇ」
 後半、狐雀のフォローはミカが行っていた。
 度々転んでパンモロをしてしまう狐雀をがっちりガード。
「ふぇぇぇ……ごめんなさいですー……」

 お客からもふもふされまくった狐珀。自慢の尻尾を褒められるのは嬉しいが、さすがにちょっと疲れてきた。
「ふう、メイドさんと言うのも大変なのじゃな」
 椅子に座って少し休憩。もふもふされすぎてちょっとごわごわになった尻尾のお手入れをする。

「それではご案内させて頂きます」
 ステラはお客の呼び込みとお見送りを続けていた。
「ご案内できるまでお待ち頂きますよう」
 待ち時間の際もお客を退屈させないように雑談。
「またのご来店心よりお持ちしております」
 お客が帰る際にはスカートを持ち上げて、腰を曲げて頭を深々と下げ、膝もより深く曲げて丁寧にお見送り。

 みずほは――ファンの女生徒たちに囲まれていた。きゃーきゃーと黄色い声が上がる。
 何でも前日にボクシングの試合があったのだとか。「素敵でした!」「格好良かったです!」などと声が上がる。
 みずほは平静を保った上で「お嬢様、それよりもご注文はどうされますか?」と尋ねる。
 すると「みずほお姉さまのオススメで!」という返答が返ってくる。
「かしこまりました」とみずほはテーブルを離れ、すぐに戻ってきた。
「紅茶は、わたくしお勧めの悠々屋のディンブラNo.9をご用意いたしました」
 紅茶好きであるみずほ。彼女オススメの逸品である。
「美味しく淹れた紅茶をお楽しみくださいませ」

「カレン様、慣れれば楽しいもので御座いますよ」
 執事服姿に戻ったALは正規部員になったばかりの、同様に執事服を着たカレンを励ます。
 しかし彼はしょんぼりとしたまま「はぁ……」と溜息ばかり。
「奉仕活動は自分のためにもなりますし、こういった経験はきっと無駄にはなりません」
「そういうものですかね。でもまあ……ALさんを見ているとそういう気もしてきます」

 秋姫は――休憩中にうっかり部長手製のラムレーズンケーキを口にしてしまい、性格が普段の真逆に豹変。『絶対零度の氷の女王』モードに。
「貴様、一体……何処を見ておる!」
「食べるが良い……うまいぞ……どうした? 私のケーキが……食べられないのか?」
 などと、M気質のあるお客に対して猛威を振るった。

「あれ……私……何を?」
 しばらくして我に返った秋姫は何も覚えていなかったそうな。

●GTT(ご奉仕後ティータイム)
「紅茶……入りました……よ……」
 閉店後、仕事を終えた皆は秋姫の淹れた紅茶と、余ったケーキでささやかなお茶会を開く。

「まったく……こんなところまで押しかけて来るなんて……」
 みずほは自分の女性ファンたちの相手でぐったり。
「でも売り上げに貢献してくれたのでうちとしては嬉しいです」
 と、メイドのミカが微笑む。「そうですけれどー……」とみずほはテーブルの上でぐったりしながら言った。
「ちなみに」とステラが補足する。
「調べてみましたところ、みずほ様がこの依頼を受けたことがファンクラブのSNSに書き込まれていたみたいですね」
「そこまでチェックしていませんでしたわ〜」と、みずほは疲れた身体を甘いケーキで癒す。

「メイド喫茶はなかなかに重労働なのじゃのう」
「でもお客様に満足して頂けたようで、ボクはとても嬉しいです。満足です」
 狐珀とALのもふもふコンビは並んでお茶をする。

「今日はお疲れ様でしたー。貴重な体験をした気がするのですー」
 狐雀も紅茶を啜りつつ、ケーキにパクつく。
「うふふ、あたしのメイド服の効果、あったんじゃない?」
 と、後ろからエリスが尻尾を掴んできた。
「ひゃう!? ひどいですよー! すごく恥ずかしかったんですからー!」
 エリスは「てへっ」と舌を出して部長のほうへ向かった。狐雀は「ふう」と一息。
「不思議な感じでしたけど、また依頼があったら参加してみましょうかー……?」

 そのような感じで、六名の個性的な助っ人が参加した本日のメイド喫茶『フェルマータ』の営業は大盛況の内に幕を閉じた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 愛って何?・ステラ シアフィールド(jb3278)
 正義の魔法少女!?・AL(jb4583)
重体: −
面白かった!:5人

微笑みに幸せ咲かせて・
秋姫・フローズン(jb1390)

大学部6年88組 女 インフィルトレイター
アド褌ティの勇士@夢・
影山・狐雀(jb2742)

高等部1年7組 男 陰陽師
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
狐珀(jb3243)

大学部6年270組 女 陰陽師
愛って何?・
ステラ シアフィールド(jb3278)

大学部1年124組 女 陰陽師
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
正義の魔法少女!?・
AL(jb4583)

大学部1年6組 男 ダアト