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マスター:愁水
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2016/08/29


みんなの思い出



オープニング


 西の地平線に赤い空。
 本日も日和良く――放課後。

 高等部の保健室には裸白衣の変態がいる。
 ――というのは七不思議でも何でもなく、残念ながら事実だ。その保険医の名は、ダイナマ 伊藤(jz0126)。勿論、本名ではないし身形も怪しいが、医療の腕はトップクラス。

 今回の話は、彼が飼うペットが原因で引き起こされた“パニック”の綴りとなる。





「――ラムの野郎、また脱走しやがったな!!!」

 重低音な怒号が響いた。
 心臓を鷲掴みするかのようなその声音は、病気や怪我の治療、健康管理を指導する保健室から聞こえてきた。此処の主であるダイナマの憤りは、デスク――の横。ハムスター用のケージへぶつけられている。

 ダイナマのペット。
 名前はラムレーズン。美味しそうだけど食べないでね。

 謎のハム電波を発信し、人と会話が出来るジャンガリアンハムスター。
 最近のハムスターって凄いですね。
 ――そんな馬鹿な。此方が適当に“会話”をしているようチャンネルを合わせているだけである。

 そんなラムレーズンが、今日も今日とて脱走日和。
 最早、日課。

「今日は新しい回し車見に行くっつったじゃねーかよ……。いつ戻ってくんだアイツ」

 ダイナマはカーキ色の長髪をがしがしと乱暴に掻いた。そのまま眉を顰めつつ、デスクに腰を掛けながら思案気に上目。
 其処へ、

 ――がらり。

 段ボール箱を抱えた“あなた達”がやって来た。

「おっ、備品の補充ご苦労さん。とりあえずソコ置いといてくれ」

 促され、段ボールを戸棚の脇へ積む。
 デスクから腰を浮かしながら、ダイナマが人当たりの良い笑顔で傍のテーブルに向かって顎を反らした。辿ると、モダンテイストの面には菓子器に盛られた個包装のダックワーズや、キャンディーポットを色鮮やかに飾るマカロンなどの菓子が。

「保健委員でもねぇのに手伝わせちまって悪かったな。疲れただろ、甘いもんでも食ってけ」

 片目を瞑って寄越した好意に、素直に甘えるあなた達。
 甘い色合いに指先伸ばし――ふと。

 なんだこれは。

 洋菓子溢れる顔ぶれの中、控えめな位置で面を隠す菓子の粒。
 貝殻型の器に“それ”は盛られていた。

 アーモンドよりは小さい。
 色はダークチョコレートに近く、甘いバタークリームのような仄かな香りの中に香ばしさも感じられて――とても美味しそうだ。

 ぱくり。

 気づいた時には一粒摘まんで、口に入れていた。

 ――。
 ――――。
 ――――――。

 Σ???





 ぼわわわん。





 白に混じった紫の煙が視界と身体を覆った直後――明らかにおかしい“感覚”が、あなた達に“変化”を齎していた。そう、ふさふさの毛並みの齧歯類。夜行性であり雑食性。尻尾はあってないようなもの。頬袋に餌を詰めまくる生き物と言えば――、
 はい。
 あなた達はハムスターになっていました。




「あー……マジで悪ぃ。ケージ動かした時にその“ブツ”、こっちのテーブルに移動させてたのすっかり忘れてたわ。食ったのよね、そーよね、食っちまったのよねー……。さっさと処分しておきゃよかったわ。



 はいはい、ちゃんと説明するし白状もすっわよ。
 いや、な。ラムの野郎が前に脱走した時によ、科学室に入ったらしいんだわ。んで、そん時に何かの実験をしてたフラスコん中にひまわりの種を落としちまったんだと。後で回収したのが……まあ、このブツなわけでよ。妙ちきりんな液体ん中で暫くぐつぐつされてたみてぇでな、変な化学反応やらなんやらが……ってなアレで。

 まあ、でーじょうぶよ。元はひまわりの種だからよ。……元は。

 あん?
 いや、それなら安心しろ。効果は一時間くれぇで切れっから。副作用とかもなんもねぇし、――……何でそんなこと分かるかって? そりゃあ、お前さん……アレよ」

 ダイナマが切れ味悪く、ふぃ、と視線を逸らした時。
 ノックもせず、一人の教師が入室してきた。

「――おい、職員室に聴診器忘れ、」

 藤宮 流架(jz0111)の視線が、一瞬で場の空気を察す。
 一人と数匹のハムスター。
 ゆるゆると流架の表情が渋面となり、浅い溜息を零して囁いた。

「またか……」





 ダイナマはバツが悪そうに「さーせん」と、叱られた子供のように詫びを漏らしていた。


リプレイ本文


 Stop.Ham time!

**

 ――。
 本当のハムタイムは此処からデス。





 素行不良。
 反面、成績優秀。
 紅玉の円らな“おめめ”に、真珠の“毛並み”。
 見よ。これが新聞部のイケメン――小田切ルビィ(ja0841)もとい、ジャンガリアンハムルビィだ!

 取り敢えず今は。

「気分は“とっ○こハ○太郎”か“ガ○バの○険”ってトコだなぁ」

 青玉のストライプ模様の身体に流れる、ひと束の結い髪。
 人間時の髪型の名残であろうか。細い束がルビィの動作にそよそよ揺れていた。

 視線は最早、床面に近い。
 鼻すぴすぴ。

「おっ、ヒマワリの種みっけ」

 恐らくラムレーズンが落としたのだろう。棚の隙間で一粒ゲット。ルビィは無意識の内に頬袋へしまいしまい――はっ、これがハムの習性か!
 だが、非常識極まりないこの事態に驚くことも忘れてはいない。しかし――むくむく。それ以上に、生来の好奇心には抗えませんでしたハムルビィ。

「――それにしても、だ。“人間をハムに変化させるヒマワリの種”の原理が解明出来れば、ノーベル賞も夢じゃないってモンよ!」

 未来のジャーナリストの端くれとして、真実を究明する為にも――、

「発端となった科学室を目指すぜ……!」

 あ――、





「もう一粒みっけ」

 ハムルビィ、辿り着くまで時間かかりそうである。










 そんな“友”の後ろ姿を呆然と見つめる、一匹のクロハラハムスター。
 でかっ。
 然もあんまりかわいくない。これは詐欺か!? 夢か!?

「何がどうなっている……!?」

 勿論、かわいくない云々のことではない。
 ジョウキョウハアク、コンナン。落ち着きを払った彼の平素の表情は崩れ去っていた。ハム顔――ファハムナーに。

 ……ファーフナー(jb7826)に。

「そうか、これは夢か」

 そうに違いない。
 そうに違いない。
 そうに違いない。

 三回唱えたのだからだいじょうぶ。納得しよう。

 そして、改めて身を確認。
 手近な姿見には、シルバーの毛並みに冷なブルーアイのハムスターが映る。目付きは悪い。これは仕様がない。

「ふむ、夢ならば自由気儘に行動してみるか」

 一先ず。
 そうだ――この元凶である人物に襲いかかってみよう。

 でゅわッ!!!

 ファーフナーの身体が空を切る。目標――ダイナマ 伊藤(jz0126)
 瞳に宿るは獣の気質。
 放出してくる野性的な感情の所為か、彼に躊躇いはなかった。猛獣の如く、今、ファーフナーは野生に帰還する――!





「ほれよ」





 全てがスローモーションであった。
 投げつけられたヒマワリの種がファーフナーの横を――、
 一粒。
 二粒。
 三粒!

 Uターン。

「衝動が抑えられない……?」

 普段の自制心は何処へ行った?
 己を律してきた鋼な制は、ハムスターの本能に敗北するとでもいうのかハムハムハムハム。

「これが野生よ」

 勝者、保険医ではなくヒマワリの種。





「おや、藍君?」
「人違いです、僕、ハムスター界のヒーロー見習い青ハム一号です」
「何だい、その裏声。ん? ハムスター?」
「え?」
「君、何処か変わったかい?」

 ひどい。

「……うん。流架先生がどんな目で私を見てるのかすごくよく伝わったなー。もー! 先生のいじわるー!」

 ぽかぽか!
 ちみっちゃい手で藤宮 流架(jz0111)の手の甲を叩くのは、深みのある青な毛並みのジャンガリアンハムスター――木嶋 藍(jb8679
 円らで大きい瞳は海の青。トルコブルーのピアスを耳に「わー!?」と、ぽよんぽよん。流架に捕獲され、お手玉トランポリン。

 これがいい運動になってしまった。
 ぽんぽんぐぅぅ。

「お腹が減っては何とかっていうし。お菓子貰おう」

 藍はキャンディーポットに、よじよじ。
 ピスタチオのマカロンを歯に引っ掛けて取り出し、にんまぁ〜。

「お菓子が大きい! しあわせー!」

 でも個包装。開けなきゃ。
 がさがさ。
 がさがさ。
 がさ(ry

「……先生、開けて」

 ぶきっちょ藍ハム。
 マカロン抱えて立ち上がる。愛嬌ありすぎ。





 ――ボゥッ。

 原因のふしぎ種、着火。
 証拠隠滅とばかりに、澄ました顔のダイナマの手によってハムハムドリームはこの世から消滅した。

「あら、元の姿に戻ったらダイナマ先生にも食べて貰おうと思ったのに……残念だわ。私も“ハム化を見る側”やってみたかったのよ? 《変化の術》でビッグハムになって迫りたかったわ。勿論、愛らしくね? ふふ」

 それにしても――と、華宵(jc2265

「ほんと、あらあら……随分とちっちゃくなっちゃったわね。700年前でもこんな小さくなかったわ、私」

 小首傾げて、のほほん。
 ハムの首どこ?

 漆黒の艶毛はふさりと長く、サテン生地のようにしなやかで毛触りは最高のゴールデンハムスター。
 瞳は本来の色彩、透き通るアイスブルーのままだ。ちりりん、と、涼やかな音色は、両の耳を奏でる鈴の耳飾り。

 ハムでも美形。
 奥さん(?)にしたいハムNo.1になること間違いない。

「とりあえず、滅多にない経験だし楽しみましょ」

 可愛らしい指先を口許に添えて、華宵は、ふふ、と微笑んだ。










 さて、こちらは小柄なキャンベルハムスターのアルビノちゃん。
 大きなおめめに小鼻すんすん。お耳ぴくぴく。視力が悪い為、匂いと音で周囲を識別する。

 そして――ご主人様は飼い主。
 この思考はハムになっても絶対なのですわ、の、斉凛(ja6571

「アレクさん、ご主人様に近づいたらがぶりですわよ」

 彼に害をなす者には容赦はしない。
 これ通常営業。

「ご主人様におやつをお届けしましょうですの。おやつおやつ……」

 本来であれば手製の洋菓子を用意するのだが、この姿では到底無理で。
 はて、どうしましょう。

「は! ハムレーダーきゅぴーんですわ!」

 デスクの上にヒマワリの種、発見!
 たんまりと小皿に入っている。

「これをご主人様に差し上げなきゃ」

 洋菓子どこいった。

「つめつめですの」

 もっもっもっもっもっ。
 両頬ぷっくり。
 一生懸命な仕草でヒマワリの種を詰め込んだ凛は、流架の肩へよじ登った。そして、

「おやつをご用意しましたわ」

 ハムのドヤ顔。
 誇り高く、口から取り出した種を流架へ差し出したのであった。

「ありがとう、凛君」

 とてもいらないや――とは、流石に言えなかった。





 ハムスターに堕ちた神。

「なんという事じゃ……。
 神ともあろう者が、力と記憶を失い人になるどころか、更に無力なはむすたぁになってしまうとは……呆然とする他、ないのじゃ」

 ――白蛇(jb0889)ロボロフスキーハムスター。

「本来よりも遥かに劣るが、何とか召喚出来ていた、権能ごとの分霊である司の召喚すら出来なくなってしまった」

 ドワーフ種でも最小サイズのハムおばあちゃん。
 白毛に金眼。
 もしかしたら普段とあんまり変わらないかもしれない。

「……ところで、この状態異常じゃが。封印よりも強力ではないのか? あちらは、業の新たな使用は出来ずとも、発動済みの業まで封じる事は出来ぬのじゃが」

 何やらぶつぶつと考察が始まった。

「いっそ、研究を進めて対天魔のBS兵器として完成を試みても良い気がするな。どう思うかの? 藤宮教師、伊藤保険医」

 そう言いつつ、白蛇は流架の頭上へぴょぃーんと移動。短い腕を組んで、顎を反る。大層な貫禄は残念ながらない。
 二人はそんな彼女へ一言。

「その姿で言われてもねぇ、白蛇君」
「そのなりで言われてもなぁ、白蛇」

 ――。





 どっかーーーん!!!





 白蛇ハム山噴火。
 デスクの方へ跳躍し、二人へ向き直るとじたんじたん。くぅっ、と、地団駄を踏む。

「えぇーい! 最近の若者は、神への信仰心が足りな過ぎる! せめて年配者への敬意は持てぬのか!!」

 対流架用ハリセンも振り回せないぷんすか白蛇。
 その姿から見られるものは、白玉のようなものがぴょんぴょん跳ねていることと。只々の可愛らしさが、敬意など吹き飛ばしていたことであった。




 けぷっ。

 お腹いっぱいになった藍。
 さあ、お次はラムレーズンを探しに行こう。でも、その前に――。

 ぴょんっとダイナマの頭へ乗った。

「ねぇ、先生は前から流架先生の事、好きなの? 仲いいなぁって思って」
「あん? もち、愛してるわよ。ルカの為なら死ねるわ」
「ふふ、色々あるのはわかるよ。でも、ダイ先生も、流架先生も、お互いに繋がってるのは言葉だけじゃない。そういう関係って、いいね」
「オレは諦めなかったからな。お前さんだってそうだろ?」
「あ……、うん!」

 時々ぐるぐるもするけど。
 やっぱり、ぱあぁ。青い花が咲いて、藍はにこーっと笑った。





 一方、ハムルビィはというと。

「放課後のこの時間だと、やっぱり生徒の数が少ないな……っと。確か、この生徒は科学部員だったよな。よし、悪いが服の中へ忍び込ませてもらうぜ……!」

 生徒を乗り継いで、漸く到達点の科学部員を発見。
 乗車シマス。

 保健室から科学室までの道程は、ハム足では流石に遠い。
 だが、そこらへんの画策はぴぴぴとお任せあれ。新聞部員の端くれとして、全生徒の所属している部活は把握済なのだ! ……うん、ちょっと言い過ぎたかな!





 in 科学室。

「とっ○こルビ太郎見参……!
 ――さて、と。ラムレーズンが種を落とした薬品ってのはドレだ?」

 ルビィが薬品棚を探っていると、

『むむ?』

 ――背後に言と気配。

「(慌てるな、俺。こんな時こそアレで切り抜ける……!)」

 アレ。
 ぺしょ――誰かに踏まれたかの如く身体を平たくし、ルビィは大福に擬態した。

『おまえ、種ぽちゃんした薬品さがしてるのか? そんなもん、その日の内に廃棄されてたぞよ』
「なっ!?」
『てゆーか、おまえ誰なんだぞよ?』

 ルビィが振り返ると、そこには――。

「あ、あんたは……!!」





 次回へ続く。





「てめッ、このファハム! ケージぶち込んでやらぁッ!」
「む……!?」

 ハムになったことで凶暴性が増したファーフナー。
 実は引き続いていたダイナマとの戦闘の末、終にケージへ放られてしまう。ふかふかの牧草、木製の巣箱、そして――回し車。

 クルクルクルクルクルクルーーー!!!

「衝動が抑えられない……?」

 Part2。

「ダイナマ先生。私、外に行ってみたいわ。一人(一匹?)で危険なら連れていって?」

 そこへ、ダイナマの傍らに華宵。
 くるくる回り、じゃん! ポーズ! 円らな瞳の上目遣いがとても愛らしいが、括れがないのでポーズの具合がよくわからない。

「おう、いいわよ。……おい、ファハム。良いハムしてろよこの野郎。ほらよ、餌」

 彼がケージの隙間から種を差し出す。
 ファーフナーは徐に金網へ近づくと――、

 \がぶぅっ/

 種ごとダイナマの指へ食らいついた。
 そして、これが答えだ、と言わんばかりに金網をガジガジガジからのジャンピングキック。間違いなく脱走を試みようとしている暴れっぷりであった。普段から己を律している反動だろうか、ストレス発散になっているのやも。

「あらあら、大丈夫?」
「へーきよこんちくしょー」
「ふふ。じゃあ、白衣のポケットに失礼するわね。あと、お腹が空いたからおやつ頂戴?」

 華宵の首傾げ。
 仕草がいちいち可憐で困る。

 頬袋にみっちりとお菓子を詰め込み、いざ日向ぼっこへ。





 茜の空は色彩の渦で溶けていた。
 ダイナマは背凭れのあるベンチに腰をかける。彼のポケットから頭をひょっこり、両手持ちでぽりぽりとクッキーを堪能しながら、華宵は外の世界を眺めていた。

 広大な景色に、息をつく。

「学園も違って見えるわね。あら……なにかしら、歯がむずむずしちゃう……」

 かじり木代わりに白衣をかじかじ。
 そしてハッスルタイム! 裸ネクタイにぶら下がりターザンごっこ。彼の長い毛先と交互にぷらーんしては大はしゃぎの華宵。夜行性のハムスターは夕方から活動を始めるからね。

「いててっ、おめ、こら」
「あら、私は悪くないわ。ハムになっちゃってハムの本能で動いてるんだから仕方ないのよ。あんまり叱るのならキーキー鳴いて騒いじゃうから」
「さーせん」





 しかしその内、はしゃぎ疲れた華宵はポケットの中ですやすや。
 丸くなりながら、頬袋の中身をもぐもぐしていた。





 ぜぇぜぇ……と、白蛇。

「ふ、藤宮教師よ、すまぬが茶を淹れて貰えぬか? この姿では淹れるに淹れられぬ……」
「はいはい、愚痴のぶちまけお疲れ様」
「誰の所為だと思っておるかお主!」

 ずずず、と一息。

「ふぅ。まあ、後は元に戻るまでのんびり過ごすとするかのぅ……」

 そんなお年寄りタイムに――すってんころりんぽっちゃん。

 流架に飲み物を用意しようとしていた凛が、紅茶の入ったティーカップへ頭からダイブ。あぷあぷと救助を求めていた。

「おやおや」

 流架の指先で救出された凛であったが、ハム毛びしょ濡れ。

「さ、さむーいさむーいですわ……!」

 ぶるぶるりん。
 寒さで気が動転したのか、飼い主の袖からもそもそと服の中へ潜り込む凛。きゃあ、大胆!

「わっ!」
「狭い、暗い、あったかい……居心地が良いですの。ここはわたくしの巣ですわ」

 何度、摘まみ出されてもめげません。
 仕舞いには流架の温もりに安堵して、すぴー。ハムベッドに寝かせてもらう凛でありました。










 そこへ、ルビィと次回へ続いた正体のラムレーズン、道中に出会った藍が保健室へただいまー。
 僅かの差で、華宵とダイナマも戻ってくる。

 そう――ハムタイムもそろそろ終わる時間だ。

 藍は流架に、一緒に日向ぼっこしたい、と願い出る。
 頭に乗せてもらい、ゴー。

「おぉお、高い! 先生の目線ってこんななの、すごい!」

 彼の世界に嬉々とし。
 焦がれるような夕焼け空に吐息をつく。

「……ちゃんと戻れるかなぁ。このままじゃ、先生に、笑った顔も見てもらえないよ」
「その時は、俺の傍にいてもいいよ?」
「もー。……じゃあ、いてあげてもいいですよ?」

 すり。
 彼の手許へ寄って。

「先生の匂い……安心するなぁ」

 すやぁ。




 ぼわわわん。





 ――ハムタイム終了!

 腹を満たし、うとうとしていたファハム。ケージぶち壊して牧草まみれの渋メンに元通り。
 だがしかし、

「(夢ではなかった……)」

 顔面蒼白。
 そりゃそうだ。ハムスターであんなことこんなことしちゃったもんね! そんな彼の肩へ、ニヤり。ダイナマが腕を回してくる。その、後ろ――。

「アレクさん、お礼(参り)にティータイムはいかが? 紅茶と生レバーをご用意致しました。他の皆様はプルーンジャム付きのスコーンをどうぞ」

 主人に仕出かしてしまったメイド、ゴゴゴ。

「む、木嶋殿と藤宮教師はどうしたかの?」
「大丈夫じゃないかしら。ふふ……野暮なこと出来ないもの」










「むにゃ……戻ったら、御夕飯を所望……しま、す……むにゃ……」

 流架の膝を枕に、藍は、すやぁ、のまま。
 吐息で笑む彼の掌が、彼女の髪を優しく撫でていた。

























『――次回には続かないんだぞよ?』


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:15人

戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
慈し見守る白き母・
白蛇(jb0889)

大学部7年6組 女 バハムートテイマー
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
青イ鳥は桜ノ隠と倖を視る・
御子神 藍(jb8679)

大学部3年6組 女 インフィルトレイター
来し方抱き、行く末見つめ・
華宵(jc2265)

大学部2年4組 男 鬼道忍軍