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マスター:スタジオI
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/09/08


みんなの思い出



オープニング


 三十年程前、鉱山の閉山により廃墟となった無人島、白角島。
 その二日目の探索に携わった六人の撃退士、雪室 チルル(ja0220)、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)、メレク(jb2528)、僅(jb8838)、ハル(jb9524)、神酒坂ねずみ(jb4993)は、探していた冥界出身の三姉妹と合流する事が出来た。
 だが、その長女であり、はぐれ天魔であるリズは、多額の借金を抱えており、白角島に秘められた『銀翼鷲の秘宝』を入手しない限り、久遠ヶ原には帰れない
 そんな折、『銀翼鷲の秘宝』の正体がアニメの戦闘ロボに酷似したディアボロ、“ディアロボ”である事が判明する。
 “ディアロボ“は『ダンテスの執念』と名付けられた宝石をコアに動いており、手に入ればリズは借金返済どころか、冥界傭兵として傭兵商会に変われている妹二人を連れて久遠ヶ原で心穏やかに亡命生活出来るだろうとの事だった。
 だが、冥界の一勢力も『ダンテスの執念』を狙い白角島に来ていた。


 三日目の朝。
 撃退士たちの乗るクルーザーの船室。
「昨夜手に入れた、一つ目の箱から検証していくのだわ」
 独身アラサー女子船長・四ノ宮 椿 (jz0294)のいる船室には銀翼鷲の紋章が刻まれた三つの箱が置かれている。
 銀翼鷹は、秘宝の元の持ち主であり、十一年前に亡くなった、はぐれ天魔・ギリの家紋である。
 一つ目の箱にあったのは椿の写真――しかも、変顔の写真だった。
「これ、十一年前の写真なのだわね、顔が“多少”若いのだわ――あれ?」
 椿の写真の裏がはがれた。
 二枚の写真が重なっていたらしい。
 もう一枚は、リズの変顔写真だ。
「ギリさん、こんな写真でも大事にしてくれていたのザマスね」
 刺客に襲われ、深手を負ったギリを最期まで看病したのは椿とリズなのである。
 それを手に取り、再び眺める椿とリズは、写真の裏に文章が書かれている事に気付いた。
「椿、これ!」
「ギリさんからの手紙なのだわ!」

【親愛なる椿、親愛なるリズへ
 毎日、看病してくれてありがとう。
 お蔭で、私は人生の最期を安らぎと幸せの中で迎えられそうだ。 本当に感謝している。
 二人には礼をしたい。
 手間をかけて心苦しいのだが、白角島という無人島に行き、私の遺産を受け取って欲しい。
 ただ、部下のダンテスの報告によると、現在、私を襲った刺客の一味が白角島でそれを探しているそうだ。
 ダンテスに頼んで、キミ達以外には見つからないよう、厳重に隠させた。
 時が経ち危険が去ってから、探しに行って欲しい。
 秘宝は魔神が守っている、キミ達の顔を見れば渡してくれるはずだ。
 我が遺産がキミ達の未来を、より良い方向に導く事を祈っている】

「ギリさん……」
 手紙を読んだ椿とリズが、涙ぐんだその時だった。
 船室に、連絡班の撃退士が飛び込んできた。
「大変です! ロボットの一隊が北西より白角島に向かってきているそうです!」
「ロボット?」
「映像があります!」
 動画データをパソコンにかけ再生すると、ロボットらしき巨大物体が白角島めがけ、編隊を組んで青空を飛んできていた。
 確認出来るだけでも十はいる。
「これ、まさか!」
「フェルナン型ですね、完成していたとは」
 リズの二人の妹、メルとレイが反応した。
「なんザマス、それ?」
「ロダの開発していた量産型ディアロボだよ」
「これだけ数がいるとなると脅威です」
 妹二人の現在の主人である傭兵商・カリマに飼われている。
 ロダは、そのカリマのヴァニタスである。
 天魔の技術で巨大ロボを作りたいという願いから、ヴァニタスに志願した、いわゆる、マッド科学者だそうだ。
「脅威ってどの程度? 貴方たちでも勝てないのだわ?」
 現役冥界傭兵であるメルとレイは、この船に集う撃退士と比しても、跳び抜けた戦力の持ち主のはずだった。
「今のボクたちなら、どうにか――ただ、多分、一体倒した時点でボクたちは反逆者認定されて、冥界からの力の供給を断たたれてしまうかもしれない」
「そうなるともう、対抗出来ないかと」
 つまり、姉と同じはぐれ悪魔になってしまうということだ。
 久遠ヶ原に亡命予定だから、いずれそうなるとして、今はまずい、
「何か方法は?」
「クリスト型が動けば、フェルナン型の十くらいは倒せると思います。 開発者が魔神と呼び、己が魂を注ぎ込んで作った傑作だそうですから」
「魔神を蘇らせる、か――時間は、あとどのくらいあるのだわ?」
「敵がこの島に到着するまで、一時間と推定されています」
 椿やリズの顔に、焦りが浮かんだ。
「一時間ザマスか!?」
「急ぐしかないのだわ」
 船室に置かれた、二つ目の箱を開ける。 
 そこには、金の鍵が入っていた。
 この鍵には、ギリのヴァニタスであるダンテスの残留思念が宿っており、手にした者の意志を乗っ取って、イタコのようにベラベラと喋らせる。
 昨夜、その喋りの途中までを聞いたのだが、秘宝の在り処を示す肝心なところで鍵が掌から落ちて中断してしまった。
 その後、鍵を直接、触ったものはいない。
 一時的とはいえ意志を乗っ取られるのは、気持ちのよいものと思えなかったのだ。
「不気味だとか言っている場合じゃないのだわね」
 椿が金の鍵を手に取った。
 その目が、赤く輝き、唇から男の声が響き始める。
『我はダンテス――我が居所は、魔神の心なり』
「心? コアってこと?」
「それで、魔神はどこにいるザマス!?」
 リズが恐る恐る尋ねる。
『魔神の在り処は、魔神が知っている』
 その声を最後に黒い何かが抜け、椿は元に戻った
「魔神の在り処は、魔神が知っている?」
「どういう事ザマス!?」
 目を瞬かせる三姉妹。
「わかりません、謎かけでしょうか」
「とりあえず、三つ目の箱を開けてみては?」


【ディアロボ・クリスト型取扱説明書】

 三つ目の箱に入った冊子の表紙にそう書かれていた。
 手に取り、それを広げる椿。
 中に書かれている文章に、目を疑う。

【俺が開発者の一人ダンテスだ!
 ついにあの熱き巨大ロボ・ガンクツオーをモデルにしたディアロボ・クリストが完成したぜ!
 残念ながら操縦は出来ないんだが、俺が注いだ魂が、バーニングアップしてダイナミックな戦闘を展開するぜ!
 この本で、クリストの合体方法を教えるから、熱いバトルをさせてやってくれよな!】

「ダンテスさんって、こんな性格だったの?」
「ロダもそうだけど、巨大ロボが造りたくて、ヴァニアタスに志願しちゃう人だからね」
「相当なアレでも無理はないのだわ」
「金の鍵に宿っていた残留思念の喋り方は、一体……」
「重度の厨二病なのだわ。 かっこいいと思った事なら恥ずかしさを省みずにやるタイプなのだわ」
 時間がないこともあり、全てを受け入れて、ページをめくる。


「ふむふむ、三体のパーツを合体させないと、コアパーツであるお宝“ダンテスの執念”は手に入らないとあるザマス」
「合体しただけだと内蔵武装しか使えないんだね、パワーアップ用外装武装まで用意しないと、ロダの戦力には勝てないかも」
「内蔵、外装の各武装には必殺技があるのだわね、クリストを操る事は出来ないけど、ダンテスさんの魂が宿っていて、性格がアレであるからには、撃退士が必殺技名を叫べば、熱い魂で応えてくれるかもしればいのだわ」
 撃退士たちは、迫りくる強大な敵を、より強大な力で迎え撃つべく、白角島における最後の冒険へと飛び出すのだった。


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リプレイ本文


 白角島北端の廃灯台。
 その地下には、巨大な開発室が広がっていた。
「灯台、に……地下なんて有ったんだ……。 吃驚」
 ハル(jb9524)が、辺りに転がっていた鎖のようなものを金の鍵で突いている。
「いろいろ、ある、な。 射撃型が良い、か? 敵は今の所距離が開いているし、先手必勝、だ」
 僅(jb8838)は魔法少女の持つ弓が、巨大化しような兵器に興味を示していた。
「ダンテス殿は天才だったかもしれんでござる。 これだけの兵器を一人で」
 神酒坂ねずみ(jb4993)は、巨大ロボマニアだけあり、居並ぶ武器の数々を感心して眺めている
「むむむ、何か簡単に持ち帰れてお金になりそうなものはござらぬか」
 同時にお金も大好きだった。
「これ……なにかな?」
 ハルが見つけて来た物を見て、ねずみは含んでもいないお茶を、口から吹きそうになった。
「こ、これは――なぜハル殿はいつも、絶妙な写真を見付けてくるのでござる!?」
 その写真には、椿とリズが映っていた。
 お風呂で全裸。
 おそらくは、盗撮だろう。
「この椿殿の若々しい体つきは、十一年前のものでござろう――これなら売れる! いや、だが、最悪、生命と引き換えと言う事に、むむう!」
 ねずみが下らない事で悩んでいる間、他の撃退士たちは必死でクリストの本体パーツ探しを繰り広げていた。


 廃校の屋上には、粉々になった人体模型が転がっている。
 先程、貯水タンクに放りこんだ時、ディアボロになって襲ってきたのだ。
 強さはかなりのもので、メレク(jb2528)が対決し、どうにか封砲で撃破した。
「必ず守ります。 私にしがみついて離れないで下さい」
「は、はい」
 冥魔傭兵のメルは力があるはずなのに、まるで役に立たない。
 完全にメレクの足を引っ張っている。
「入れますよ」
 メレクは、次なる候補――校長像を放り込んだ。
 ヒビの入ったタンクの中で、雨水がドボンと音を立てる。
「いやーー」
 水音に怯え、メルが逃げた。
 何か事ある事にこうして怯えて逃げる、それを探すためにすっかり時間を浪費してしまった。
「メルさん!」
 しかし、今は追うわけにはいかない。
 校長像がディアボロ化した場合、敵に背を見せることになってしまう。
 周囲に地鳴りの音が響き、足元が不自然な振動を始める。
「これは!」
 背後。
 禍々しい気配は、背後からした。
 この気配は冥魔!
 無言で振り向きざま、ライフルを放たんとするメレク。
 だが、引き金はひかなかった。
 静かに、瞼を閉じる。
「校長像が、正解だったようですね」
 屋上の床の一部が反転し、そこに秘められていたダンテスのパーツ。
 二号鬼が姿を現していた。


「最終決戦ね! 急いで装備を集めないと!」
 やる気満々で坑道の中を歩んでいたのは、雪室 チルル(ja0220)。 
 同行するレイが、ここの構造を熟知していると豪語していたので、安心してどんどん進んだ。
 ところが――。
「さっきから同じところをグルグル回っているだけじゃない!」
 チルルがそれを認識出来たのは、蛍光スプレーで壁にマーキングをしておいたからだ。
「あ、あれぇ? おかしいなあ?」
「もう! 地図を見た方が早いのよ」
 初日に仲間が作成した坑道地図を持ってきておいたので、それを開く。
「すぐそこだったのよ」
 レイが自信満々に進んでいた、最初の分岐路を逆に進めばすぐだった。
 扉は、見つかった。
 だが困難はここからだった。

【犬を神に変える秘法を、汝が身に用いよ
方法を知らずんば、西の大陸の住人に尋ねよ】

 坑道の壁にはめ込まれた金属扉。
 そこに刻まれていた文字が、これだった。
「暗号?……何だこれ?思いっきり叩いて壊すんじゃだめなの?」
 チルルは扉に顔を近づけて、文字と睨めっこした。
「でも、こういうのは、あたいみたいな天才の分野だわ!」
 チルルは脳を全力で回転させ始めた。
 二秒後、バタリと仰向けに倒れる。
 知恵熱が出たのだ。
「だめ、わかんない」
「チルルちゃんしっかり!」
 その時、坑道全体が大きく振動した。
 天井から土くれが落ちてくる。
「この振動――敵がもう来ちゃったんだ!」
 チルルの脳は、オーバーヒートしたままだ。
「短い命だったわ――天才薄命とはあたいの事なのよ」
「天才なら、この謎解こうよ!」
「逆なのよ、あたいの場合、逆に天才だから解けないのよ」
「何が逆なの?」
「難しい事聞かないで! わかんないわよ!」
 だだっこのように、寝返りを打つチルル。
 すると、金属が軋む音が坑道内に響いた。
 目の前で扉が、突如、開いた!
「開いた! けど、なんで!?」
 チルルは不敵な笑みを浮かべて立ちあがった。
 「理由はわからなくても謎は解ける! 時々あたいの才能が怖くなってくるわね……!」
 実はチルルの言う通り、“逆”だった。
 “西の大陸”は、アメリカ大陸の事。
 そこで使われている言語で、犬は“DOG” 神は“GOD”である。
 “犬”と“神”は逆さま言葉なのだ。
 逆さまを“汝が身に用いる”――即ち、チルルが寝返りを打った事により、偶然謎が解けてしまったのだ。
「すごーい! 本当に天才かも!」
 (><)bな感じになるチルル。
 二人ともアホの子キャラなので、何の疑問も生じない!
 扉の奥には、装甲車型の一号鬼が鎮座していた。


 旧居住区にあるオモチャ屋。
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は、椿とリズを連れ、そこを再訪していた。
「“魔神の在り処は、魔神が知っている”ってどういう意味なのザマス?」
「今までの情報から考えるに、魔神とは、このガンクツオーでしょうか?」
 店内にそびえる、ガンクツオーの巨大フィギュア。 
 それを押してみると、足元に地下へと続く階段が現れた。

 階段の下にあったのは、自動車の整備工場のような空間だった。
 人間めいた上半身と、戦車のような下半身を持つ兵器が置いてある。
「これが、三号鬼ザマスね!」
「さて、ここで顔面認証ですね」
 エイルズレトラが、二枚の写真を差し出す。
「お二方、この写真と同じ表情をお願いします」
 宝箱から出てきた写真だ。
 十一年前の椿とリズが、変顔をしている。
「この顔じゃなきゃ、ダメなのだわ!?」
 ひとまず普通の表情で試すと、エラーが返ってきた。
 ギリが己の秘宝を譲るものの写真としてダンテスに渡したのが、この写真なので、同じ表情でないと認証が降りないのだ。
「何を恥かしがってるんです?」
 戸惑っている椿とリズの姿に、エイルズレトラのSっ気が蠢き出す。
「二人とも、澄ました表情より変顔の方が魅力的ですよ?」
「そんなわけないのだわ!」
 その時、地上から爆音が響き、格納庫全体が地揺れを起した。
「ああ、もう敵が来たザマス! 恥も外聞も捨てるザマス!」
 リズは思い切って変顔をする。
 だが、椿はゴネ続けた。
「嫌なのだわ! 嫌なのだわ! 二十代の女がする顔じゃないのだわ!」
「来年は三十代なんだから、開き直るザマス!」
 その会話に、エイルズレトラが思い出したかのように携帯を取り出した。
「椿さん。 初めてお会いした依頼――ムシバルスでしたっけ? あの時の動画、携帯で撮影しておいたんですよ――見ます?」
 動画再生しようとするエイルズレトラ。
 椿の顔がこわばる。
 余程のトラウマらしい。
「やるのだわ! 変顔くらい、やってやるのだわ!」
 リズと並んで変顔をする椿。
  格納庫の天井が開き、床が地上に向かってエレベータのように上昇を始めた!
「成功みたいですね!」


 地上に出た三人が見たのは、七mほどの黒い鉄巨人・フェルナン型だった。
 先行隊と思しき二体到着し、ナパーム弾で破壊活動を開始している!
 廃校、廃鉱山、そして廃灯台。
仲間たちのいるはずのそれらが、炎に包まれていた。
「遅かったのだわ!」
「三号鬼だけじゃ、どうにもならないザマス!」
 絶望しかける椿と、リズ。
 その時、聞き覚えのある声が響いた。
『無尽の闘志持つ者たちよ、我が元へ集え!』
 声の源は、三号鬼だった。
「この声! ダンテスさんの!?」
 胸に秘められた宝石『ダンテスの執念』が光を放つ。
 炎の向うから一号鬼、二号鬼が姿を現した。
 一号機にはチルルとレイが、二号機にはメレクとメルがしがみついている。 

 三体の鬼は大地に集い、形を変え、瞬く間に一つになる!
 闘士型の巨躯を持つ、赤き鉄巨人の姿へと!
『三鬼合体! 無尽闘士・クリスト!』
 まさに決めポーズとしか言いようのない姿勢で、大地に立つクリスト。
「痛いほどの王道なのだわ」
「ダンテスさんの残留思念には、熱い魂が残っているんです」
 エイルズレトラが頷く。
 一体の敵が、クリストに向かってきた。
 クリストに宿っているのは、いわばダンテスの残留思念である。
 本来、柔軟な対応は出来ない。
 だが、椿とリズを護ろうとする意志。
 そして、思念に残る熱い魂が、クリストを突き動かすのだ。
 クリストの目が赤く光、右腕に宿る金属杭――パイルバンカーが、稼働し始めた。
 『厳岩撃砕! ロック・クラッシュ!』
 パイルバンカーが激しくピストン運動した。
 杭の連撃は、フェルナン型の胴に大穴を穿ち、大爆発を起こす。
「やった!」
 だが歓声がすぐに悲鳴に変わる。
 残る一体のフェルナン型が、遠距離からナパーム弾を撃ってきたのだ。
 身を炎に焼かれつつも、距離を詰めようと走ると、敵は逃げて、逃げた先からナパームを撃ってくる。
 クリストはそれに反撃出来ない様子だった。
「どうしたのよ?」
 チルルの疑問に、メレクが答える。
「使える内蔵武器に遠距離型がないようです――取扱説明書に書かれていた外部兵装・無尽弓チャンドラダヌスがあれば」


 わずかに時間を遡る。
 灯台地下の開発室。
 僅は、巨大な弓矢に、金の鍵を当てていた。
 こうすると、イタコ状態になり、ダンテスの残留思念に憑依されて、武器の解説を始めるのだ。
『無尽弓チャンドラダヌス……魂の熱きエネルギー、を、矢として放つ弓、だ。 相手のハートをぶちぬく、ぜ』
「声はダンテス殿なのに、喋り方が僅殿チックなままでござるな。 血が濃すぎるというべきか」
 解説が終ると、元の僅に戻る。
「残留思念に憑依される、というのも、面白、い。 もっと、やろ、う」
 他の武器に鍵を当てようとする僅。
 その時、地上からの爆音!
 開発室全体に赤いランプが灯り、危険を示す点滅を始めた。
「敵襲にござる! 各々、選んだ武器の搬出ボタンを押してくだされ! 武器コンテナに入って脱出するのでござる!」

 地上。
 ナパーム弾の砲撃に晒されていたクリスト型の前に、地中から三つのコンテナがせり上がってきた。
 一つ目のコンテナが開き、中から僅と巨弓が姿を現す
「お前、が、クリストか、面白い顔、だ」
 弓を手に取り、引き絞るクリスト。
 矢のなき弓に、魂のエネルギーが炎の矢をつがえる。
『無尽弓・チャンドラダヌス発射!』
 炎の矢が蒼天を貫き、フェルナン型の胸部を文字通りにぶち抜いた。


 その時、空に男の声が響いた。
「光栄に思え、秘宝はこのロダ様がもらってやる」
 フェルナン型の開発者・ロダ。
 ダンテスの技術をパクリまくり、さらにメルやレイに執拗な嫌がらせをしてきたヴァニタス。
 八体のフェルナン型を引き連れ、己は指揮官機の腹に乗っている。
「おお! 本当にガンクツオーそっくりでござる! 」
 二つ目、ねずみのコンテナから出てきたのは、コンクリミキサーに似た物体だった。
 それを背部に装着するクリスト。
「あれは、何、かな?」
「ふふふ、見てのお楽しみでござる」
 その時、ロダの命令でフェルナン型たちが空からの一斉砲撃を開始した。
「撃て!」
 対応して、クリストが叫んだ。
『セメントアーマー、ゲットオン!』
 コンクリミキサーが起きあがる。
 クリストは頭からセメントを、バジャアとぶっかぶった。
 すぐに固形化し、動けなくなるクリスト。
 全員が( ・_・)…な顔になったが、クリストはコンクリを自ら砕き、再び動き出した。
 敵の砲撃がクリストを穿ったが、砕けたのはセメントアーマーのみ。
 クリスト本体は無事だ!
「さすがクリスト、なんともないぜ!」
 とはいえ、増加装甲では攻めに転じられない。
「敵に空を飛ばれていては!」
「むう、ガンクツオーの欠点まで再現するとは、ダンテス殿、流石でござる」
 メレクが光の翼で、敵集団の背後に回り込んだ。
「なら、私が」
 敵の砲撃をかいくぐりつつ、雷鳴の書で攻撃をする。
 一体のフェルナン型が、雷に撃たれ、地上へと落ちてくる。
 落下個所には不運にも、椿とリズが立っていた。
「きゃあ!」
 瞬間、フェルナン型を、巨大なフックが吊り上げた。 
「……インドラアーム、だっけ……これ、役に立つ、ね……」
 ハルが解放したコンテナから出てきたのはクレーン車。
 それがクリストと合体し、第三の腕となって、椿たちを救出したのだ。

「目障りな蚊トンボめが! 着陸するぞ!」
 フェルナン型は、人間大の敵と空中戦をするのは苦手らしい。
 残る七体で廃港へと着陸した。
 ねずみの眼鏡が光る。
「地上戦とあらば、ガンクツオーの独壇場でござる!」 
 向かってくるロダの指揮官機。 
 迎え撃つクリストは、左手甲を構えた。
 先端が斜めに切られた、二本の鉄パイプ。
 それが回転してロダ機の装甲を穿ってゆく。
 「ふん、この程度で我がフェルナンが」
 刺さったパイプ内から、敵内部へと何かが送り込まれた!
 何が起きたのか察したねずみが、興奮して叫ぶ。
 クリストと共に、最大の技の名を!
「パイルトルネード・デヴァステーション!」
 内部から大爆発を起こすロダ機。
「爆弾だとぉ!? おのれぃー!」
 頭を最初に潰すのは、対集団戦の基本である。
 指揮官を失った残るフェルナン型は、右往左往するだけのデカ物化した。
「ハルたち、も戦う、よ」
 審判の鎖を出現させ、フェルナン型を縛り付けるハル。
「この冒険、最後の一暴れだわ!」
 それを氷剣でぶった切るチルル。
 撃退士たちは、統率を失ったフェルナン型をほどなく全滅させた。


 夕日の差す廃港。
「本当にもらってしまって、いいザマスか?」
 クリストは、自らの胸からコアである宝石『ダンテスの執念』を取り出した。
 無言で、それを椿とリズに渡す。
「リズ、もらっておくのだわ。 ダンテスさんは、私たちにこれを渡すためだけに十一年間、その宝石の中で眠り続けたのだわ」
「そうザマスね」
 リズが哀しげな顔で宝石を受け取ると、クリストは石像となった。
 再び動く事はないだろう。
「さあ、帰るわよ」
 撃退士たちがクルーザーに乗りこみ始める。
 僅が、メルに話しかける。
「暗くなる前、に、帰る、ぞ」
 エイルズレトラも、レイに微笑んだ。
「あの漫画の続き、読みに来ませんか?」
 メルとレイは笑顔を浮かべ、久遠ヶ原の仲間となった。
 無人島での冒険は終わり、人満ちる島での新たな生活が始まる。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 奇術士・エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
 猫殺(●)(●)・神酒坂ねずみ(jb4993)
重体: −
面白かった!:3人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
無尽闘志・
メレク(jb2528)

卒業 女 ルインズブレイド
猫殺(●)(●)・
神酒坂ねずみ(jb4993)

大学部3年58組 女 インフィルトレイター
撃退士・
僅(jb8838)

大学部5年303組 男 アストラルヴァンガード
恐ろしい子ッ!・
ハル(jb9524)

大学部3年88組 男 アストラルヴァンガード