.


マスター:スタジオI
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
形態:
参加人数:4人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/04/07


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原島ケーブルTVに特設された“ワルベルト斡旋局”
 その局長席から、貫録ある黒ひげ男・ワルベルト局長がカメラに向かって語りかけ始めた。
「諸君、第一回放送は見て貰えたかな? あの放送で我輩は七人の撃退士に七つの依頼を受けた。 第二回となる今週は、その依頼を撃退士たちに解決してもらうパートとなる。
ではまず、その七つの依頼を紹介しよう」

●依頼1:スイーツマップを作ろう!
 局長の後ろにあるモニターに、チョコパフェ、クレープ、かき氷など色とりどりのスイーツが映る。
「まず一つ目は、久遠ヶ原スイーツマップを作る事。 外に出るたびに街の光景が変わるとまで言われる、複雑怪奇な久遠ヶ原島の飲食店を巡り、スイーツガイドを作って欲しいという事だな。 ラーメン屋でも牛丼屋でも一つでもスイーツのある店は載せたいそうだ」
 局長、ここで難しい顔をする。
「だが、実際に全部の店を巡っていては、時間も労力も胃袋のスペースも足りない、何より番組予算がそんなにない! そこでなるべくそれらを使わずにスイーツを置いてある店を探し出す方法を考えて欲しい。 あとこれは我輩からの提案であるが」
 テーブルに置いてある天ぷらを箸で掴み、一齧りする局長。
 天ぷらの中身はアイスクリームである。
「天ぷら屋にアイスクリームの天ぷら……このようにスイーツ専門店以外で、その店ならではのスイーツメニューを置いてある場合がある。 ユニークなものをピックアップして欲しい」
 オリジナリティあふれるメニューの発見に期待する。

●依頼2:もこもこもふもふ着ぐるみ大会を開こう!
 画面が切り替わると局長が、貫録ある体にもふもふな猫の着ぐるみをきている。
「二つ目は“もこもこもふもふ着ぐるみ大会を開きたい“だそうだ。 要は動物の着ぐるみを着て、いかに似合うかを競う大会だ。 評点は“可愛さ”癒し“”和み“の三つ”で競うとの事――だが、しかし!」
 険しい顔をする局長。
「それでは大人の男が圧倒的に不利だ! 我輩のこの姿を見て可愛いと思うか? 癒されるか? 和むか? 否! 断じて否だ! 幼女が圧勝するに決まっている!」
 掌の肉球で、テーブルをぺしぺし叩く。
 五十過ぎているおっさんには、流石に無理がある。
「そこでだ、評点に“ミスマッチ”という項目を加えたいにゃ。 要はいかに似合わず笑えるかだにゃ。 我輩がこうしてネコ語喋りをするだけで、そうとうにミスマッチであるようににゃ。 我輩は猫であるがワンチャン部門賞くらい狙いたいのにゃ!」

●依頼3:手作り楽器で合奏しよう!
 今度は局長、中世音楽家の格好をしている。
「三つ目の依頼は“合奏をしたい“。 ダンスなどのジャンルを超えたコラボをしたいそうだ。 ただこの依頼、TV的には問題がある。 つまりは簡単過ぎるのだよ」
 ピロピロとハーモニカを演奏してみせる局長。
「我輩でも、ちょっと練習すればこの程度は演奏できる。 合奏しましょう、練習します、はい出来ました、ではバラエティ番組としては問題がありすぎる。 かといってプロの領域にはで上達させるのは時間的に無理だ。 そこで局長として提案がある」
 局長はテーブルの上に大小さまざまなコップを並べ、それら水差しから水を注いだ。
 それが終ると、スプーンを手に取り、十二あるコップの縁を順番にリズムに乗せて叩き始める。
 先程のハーモニカと同じメロディが、即席のコップ鍵盤から奏でられた。
「このように、身の回りのものを利用した手作り楽器で合奏してもらいたい。 いかにユニークな楽器を作り出し見事な演奏を完成させるか、ここにバラエティ番組としての面白さを期待したいのだよ」

●依頼4:すごい特訓をしよう!
 今度はボクサースタイルになっている局長。
「四つ目は、女性ボクサーからの依頼。 以前戦って惨敗した強敵に勝てるようにして欲しいそうだ」
 シュシュッとワンツーパンチを繰り出す局長。
「しかし、これは難しいのだよ。 なぜなら彼女は天魔ともボクシングで戦うほどの強者だ。 そんな人間を果たして短期間で伸ばせるのか? そこでだ!」
 局長の背後のモニターに、コミック雑誌の一ページが映る。
 主人公が大滝から落下しながら、流木にパイルドライバーをかけようとしている有名なシーンだ。
「昔の漫画のように、スペシャルな特訓メニューを考えてほしい。 視聴者が見て“こりゃ強くなりそうだ”と思わせるトンデモ特訓メニューをだ! 女の子とはいえ撃退士だから多少の無茶は聞くぞ! 面白い絵面に期待する!」

●依頼5:テニスで適性を見極めよう!
「五つ目の依頼は、己の適性を知りたいと言う依頼だ。 自分の適性に合わない依頼、適正合わないポジションを選ぶと撃退士も依頼人も不幸になるからな。 とはいえ、こういった適性を見極めるのは難しい。 模擬戦をやってもいいが、久遠ヶ原学園の歴史も長い。    
 撃退士たちの戦闘経験はバラバラだ。 素質のある新人が、ベテランの経験に圧倒され自分の長所を見失うようでは適性試験にならん。 そこでだ」
 テニスラケットを取り出す局長。
「テニスのダブルスをするこという方法を我輩は考えた。 あれには前衛後衛がある。
それを入れ替えながらプレイをすれば前に出て活きるタイプか、支援向きなのか見極められるだろう。 ついでにガチ勝負をするか、ネタに走るかで、シリアスな依頼向けか、コメディ依頼向けかを測る効果もある」
 自分が前衛の時、後衛の時、それぞれのプレイングを考えたり、スキルを利用した魔球を撃ったり、テニスの中から自分に相応しいポジションを見付けてほしい。

●依頼6:アラサー女に恋人を作ろう!&依頼7:アラサー女をドッキリにかけよう!
「そして六つ目と七つ目、これが見事に偶然の一致を果たした! この女に関する依頼である!」
 モニターに独身アラサー女子所員・四ノ宮 椿(jz0294)の写真が映る。
 なぜか味海苔持っている、例の写真だ。
「この女に恋人を作ってやってくれという依頼だ。 ちなみにこの女、もう三十になるのだが未だに恋人すらいない。 奥ゆかしくて男性と話せないなどと言う問題ではないぞ?
積極的に婚活しているのに、さっぱり成果があがらんのだ。 これは救いがない! そこで彼女に恋人を作ってやって欲しいというのが第七の依頼人の希望、対して第六の依頼人の方は――」
 掌に乗せた指輪箱を開ける局長。
 中には“ドッキリ”と書かれた紙が入っている。
「デートの末、恋人からプロポーズされたとぬかよろこびさせておいて、ドッキリにかけよという依頼だ。 タチの悪い依頼のように思えるが第六の依頼人は以前、椿に酷い目に遭わされたようでの、まあ椿も自業自得というやつだ」
 豪快に笑う局長。
「この二つの依頼、一件矛盾しているように見えるが、どちらの道をとるか? 依頼を受ける撃退士たちに選んでもらおうと思う。 ちゃんと恋人を作ってやるのか、おちょくって遊ぶのか、 どちらにせよ、椿にはいい刺激になるだろう」

 というわけで発令された七つの依頼。
 それぞれ担当を決め、手分けして解決して欲しい。


前回のシナリオを見る


リプレイ本文


 久遠ヶ原ケーブルTVのバラエティ番組“たまには依頼を出そう!“
 前回放送で出された七つの依頼を解決すべく、集った撃退士たちは、こいつら!

「依頼を七つ解決とかボーナスは出るよね?」
 前回、四ノ宮 椿への復讐依頼を出したファリオ(jc0001)。
 可愛い顔して欲深い!

「ふむ、解決困難な依頼が多いように思えるが、一つずつこなしていこう」
 老成幼女・築田多紀(jb9792)。
 自ら出した久遠ヶ原スイーツマップ作成依頼で、新たな甘味に出会う事が出来るのか?

「全依頼を成功させるため獅子奮迅の働きを見せてやるッ……!」
 百合芸人・歌音 テンペスト(jb5186)。
 芸人の気合は爆破オチフラグ。
 番組終了後に、人体の原型を留めているのか?

「ピーマンに関わる依頼は出ていないんだろうな? 確約がとれるまで俺はここを動かねえぞ!」
 最後は、舞台袖でごねているミハイル・エッカート(jb0544)。
 ピーマンに怯える、三十歳の渋イケメン。


 第一の依頼、久遠ヶ原スイーツマップの作成。
 安価低労力でこなさねばならない上に、スイーツ以外の専門で店独自のメニューを探さねばならないという無茶企画。
「僕が出した依頼だからな、僕がこなさせてもらおう」
 まずは、多紀が挙手。
「これは俺も参加させてもらおう、スイーツと言えばプリン。 未知のプリンとの出会いがあるかもしれねえからな」
 グラサンを黒く輝かせるミハイル。
 プリン党として選挙に出馬した事もあるプリンオヤジ。
「あたしもやりたい。 金のない芸人にとってグルレポ番組は栄養分だもの」
 定員二名のところに三人目、テンペストが挙手したので争奪戦が開始された。
「待て歌音、これはただでメシが喰える依頼じゃないぞ」
 ミハイルがテンペストに翻意を促すと、多紀もそれに頷いた。
「スイーツマップを作るのが主眼だ。 予算がない以上、あまり期待してはいけない」
 テンペストが不敵な笑いを浮かべた。
「あたしは無料で食べられるスイーツを知っているわ」
「なんだと!?」
「しかも、チョコ風味」
 中までチョコたっぷりな多紀、すぐにテンペストの手を握りスタジオを出て行く。
「よし、テンペスト君一緒に行こうではないか」
「おい待て! 俺のプリンは!?」
 ミハイル、オートで除外される。

「そのフリーのチョコとやらは最後のお楽しみにとっていてだ。 まずはマップを完成させねばならん」
「何か策が?」
「島にある無数の店を自分たちで歩いて調べていてはきりがない。 そこでどうすればよいのか僕は考えた、店の方がこちらに来ればいいのだ」

 スタジオで、パティシエスーツに大きな蝶ネクタイというコテコテな衣装のテンペストがタイトルコールする。
「久遠ヶ原ケーブルTV主催! スイーツ大会!」
 会場には、久遠ヶ原から集ったパティシエや店員たちが自慢のお菓子を持って集っている。
 ネットや番宣、口コミ等を使って集めたのだ。
 店が数多いからこそ競争も激しい島内。
 その中で生き残るには、TVでのPRが強力なのは明らかである。
 よって、それを紹介したい店を一堂に集める。
 番組としても低予算で視聴率が稼げる題材だし、WIN-WINな関係になれるのだ。
「今回はチョコ部門とユニーク部門の二つで審査させてもらった。 やはり僕の知らない甘味があったな。 興味深い」
 審査委員長を務める多紀が、重々しく頷く。
「まずチョコ部門の金賞は、洋菓子店アメジストのチョコレートフォンデュ。 甘味を抑えたチョコはしっととりとろとろ。 七種類のフルーツに絡めて食べると、まさに虹色の味が楽しめる」
「味はよくわかりませんが、チョコ鍋で闇鍋とか芸人大歓喜ですね」
 いらんコメントを添える司会者テンペスト。
「ユニーク部門の金賞は、弁当処・有田のスイーツ弁当、御飯の代わりにパンケーキ、それにおかずのフルーツやクリームを載せて食べる、見た目は華やか、味はフルーティ、しかもフルーツの乗せ方で味が変わるので飽きが来ない」 
「食欲がない時にも別腹に入れる事で食事が出来る、人体工学に沿った発想ですね」
「グランプリは煎餅屋・万兵衛のチョコ煎餅! 一見、煎餅に見えるが実はチョコ! チョコレートと煎餅の融合、実にユニークだ」
「あたしも多紀さんと融合したいです」
 こんな感じで名店を集めた上、集まったお店の人に、知り合いのお店の事も教えてもらい、九割方マップは完成した。

 残るはテンペストの言う、無料のスイーツである。
「無料スイーツとは何だ? もしや試食モニターとかデパ地下の試食品巡りとかその類か?
 不思議そうな多紀。
 コンテストでスイーツを、たらふく食べ、大満足だったが、あれは一度きりの機会。
 恒久的に食べられるスイーツも欲しい所だ。
「そんな遠慮しながら食べるようなもんじゃないの、食べ放題よ」
 自信満々に多紀を先導するテンペスト。
 着いた場所は森。
 うっそうと茂った森林地帯だった。
「野生のフルーツか! 野イチゴとかあけびとかは美味らしいな」
 期待に胸膨らませる多紀の前で、テンペストが背伸びをし、木の枝に生えている何かをとった
「これよ!」
 何かを掌に握るテンペスト。
 多紀は、どんな綺麗で美味しい木の実が握られているのかワクワクしている。
 テンペスト多紀の前に掌を差し出し、それを開いた。
「く、蜘蛛!?」
 寅縞の大きな蜘蛛が、テンペストの掌をカサカサ這っていた。
「あたし、金欠の時はこうやって野山で食料を調達しているの」
 テンペストは何の屈託もなくにこにこしている。
「この蜘蛛はチョコ味で、チョコ大好きな多紀さんにおススメ!」
 真っ青になってガタガタ震える多紀。
「いらん! いくらチョコ味でも蜘蛛は食えん!」
 多紀はスタコラ逃げ出した。
「あれ? 他にもセミとか桜毛虫とか美味しいのに……」
 スナック菓子のように蜘蛛を食べつつ、不思議そうに多紀の背中を見送る。
 ゲテモノ喰いは、芸人的には“美味しい”
 その意味を錯覚したあげく、味覚が酷い事になっているテンペストだった。
【依頼一 成功】


 第二の依頼は、もこもこもふもふ着ぐるみ大会を開こう!
 着ぐるみを着て、“可愛さ”癒し“”和み“”ミスマッチ“の四部門を競う大会である。
 審査員たちも着ぐるみを着ている。
 椿がラクダ、ニョロ子が蛇、クレヨー先生が熊、多紀が羊である。
「なんだろう、椿さんには愛しさを、ニョロ子君には恐怖を覚えるぞ」
 多紀がよくわからない事を呟く中、大会の幕が開けた。

 エントリーナンバー1はミハイル。
 熊の着ぐるみに、偽翼をつけた“天使の熊”
「どうだ、エンジェルベアーだ、癒されるだろ」
 グラサンかけた三十男が、マジ顔で言う。
「明らかにミスマッチ部門狙いなのだわ」
 椿のツッコミを、ミハイルは爽やかに笑い飛ばす。
「ふっ、残念ながらそうじゃない。 俺のミハイルって名前はロシアでは熊の代名詞なんだ。 ミスマッチどころかベストマッチさ!」
 これに対し、癒し担当クレヨー先生のコメント。
「実に勉強になるんだな、今後使う事がなさそうな知識が一つ増えたんだな」

 エントリーナンバー2はテンペスト。
 なんとアメフラシの着ぐるみ。
「ピチピチ! ピチピチ!」
 口で叫びながら、舞台を転げまわるテンペスト。
 狂気を感じる。
 誰も声がかけられない中、おそるおそるニョロ子が声をかけた。
「そのピチピチっていうのは何にょろか? アメフラシさんはそんな声で鳴かないと思うにょろ」
「蛇だって、にょろなんて言わないわよ! ピチピチ!」
 痛い所付かれるニョロ子。
「こ、これはキャラ立てというものにょろ……」

 エントリーナンバー3は、ファリオ。
「たらったらたらた♪」
 兎の着ぐるみで、可愛くダンスする。
(フフフッ、これでTVの前のショタコンお姉さんを虜にしてやるのですよ!)
 相変わらず腹黒い。
「まあ、ファリオ君ったら、私に求愛ダンスだなんてイケない子なのだわ」
 しかし、釣れてしまったのはすぐそこにいた椿。
「違いますよ! どんだけ図々しいんですか!」
 前回に引き続き、椿はファリオが自分に憧れていると勘違いしている。
 プンスカしながら舞台袖に戻ったファリオ。
 薄暗い廊下で、ぐいっと手を掴まえられる。
「おい、お前」
「はい?」
 見れば、角刈りのツナギ男が欲情し切った目で、ファリオを見つめていた。
「その着ぐるみ、兎は年中発情期って事だろ?」
「いや、これは――」
 後ずさるファリオ。
「顔も可愛いじゃねえか。 いいぜ、俺の部屋に行こう」
 ツナギ男に、ずるずる引っ張られていく。
「いやーっ!」
 お姉さん狙いのつもりがホモを刺激してしまう。
 ショタっ子あるあるである。

 受賞は、かわいさ部門がファリオ、癒し部門がミハイル、和み部門が該当者なし、ミスマッチ部門がテンペストとなった。
「“かわいさ”と“ミスマッチ”の授賞理由はわかるが、何で“癒し”が俺なんだ?」
 ミハイルが尋ねると椿はほわっとした顔で答えた。
「三十になって馬鹿な格好してくれる人が私以外にもいたのだわ、癒されるのだわー」
「そういう理由かよ!」
【依頼二 成功】


 第三の依頼は“演奏会を開こう!”
 ただし、演奏会に使用するのは身の回りのものを利用した手作り楽器に限る。
「作ってきたか?」
 集合場所に来たミハイルが尋ねると、ファリオは“手ぶらだ”という事を示すかのように手を広げた。
「まあ、見てのお楽しみです」
「ほう、俺と同じじゃねえか」
 ミハイルも同じく手ぶらだ
「私はちゃんとこの通り」
 エアパッキンで梱包された包みを見せるテンペスト。
 おそらくはお手製の楽器が入っているのだろう。
「おお、気合入っているじゃねえか」
「中身はなんですか?」
「ふふふ、あたしのも見てのお楽しみよ」
 三人は、演奏会場として指定された住所に向かった。

「ここって?」
「ただのアパートじゃねえか」
 着いたのは六畳間の何の変哲もないアパート。
 家具などがあり、人が住んでいる形跡がある。
「日用品を使った演奏と言う事で、演奏するのも日常のスペースという事になったみたいだぞ」
 先に来ていた指揮者の多紀が説明する。
 ここは撮影用を兼ね、TV局員らのために宿直室と借りた部屋らしい。
「局のものか、それを聞いて安心したぜ」
 ミハイルは箪笥の元にしゃがみ込み、何やらごそごそ始めた。
 ファリオもニヤニヤしながらアパートの壁をなぞっている。
 何やら嫌な予感である。

「では始めるぞ、曲目は定番の“ねこふんじゃった“だ」
 指揮棒を振り始める多紀。
 するといきなり、テンペストが、服を脱ぎ始めた。
 制服を脱ぎ捨て、上半身はブラ一枚の姿になる。
「お前、何してんだ!?」
「これがあたしの楽器なのよ、ブラだって立派な弦楽器なんだから」
 ブラ紐を弾いて音を出すテンペスト。
 ピチンピチンという単調な音しかしない。
「あんまり立派じゃないぞ」
「サイズは立派ですけどね」
 目のやり場に困っている男性陣二人。
「安心してこっちも使うわ」
 続いてテンペストが取り出したのは、先程持ち込んでいたエアパッキンの包み。
「それ中身は何なんです?」
「中身なんかないわ」
 テンペストがエアパッキンの包みを解くと、中にはエアパッキンがみっちり。
 それを絞り、プチプチを潰して音を出す。
「二つの相乗効果で極上の旋律を奏で出すのが狙いよ」
 片手でブラ紐を弾きながら、片手でエアパッキンを潰すテンペスト。
「旋律とは何かを、テンペストさんは考え直す必要がありそうですね」
 とても音楽には聞こえない。
「そういうファリオは、何の楽器を?」
「僕のはこれです」
 アパートの壁をガツンと殴り出すファリオ。
 撃退士の力で部屋が揺れる。
「壁が楽器です!」
 確かに音はガツガツ鳴っているのだが、
「近所迷惑だ!」
 怒られてもファリオは、壁を殴り続けている。
「僕、今度壁殴り代行業者始めますんで、宜しく」
「結局、音楽になってねえじゃねえか! ちゃんと用意してきたのは俺だけだな」
 ミハイルの手には、金属製のトライアングルがあった。
 これは一応それらしく、チンチン音が鳴る。
「ミハイルさんさっきは手ぶらでしたよね、どこから調達したんです?」
 首を傾げるテンペスト。
「ふっ、ここから頂戴したのさ」
 ミハイルが指差したのは、アパートの箪笥。
「こいつの留め具から、抜いた金具で作ったんだ」
「へ〜……って!?」
 そう言っている間にも、ファリオはガンガン壁を叩いている。
 揺れるアパート。
 三人の後ろには、留め具を抜かれた箪笥。
「ファリオ、やめろ!」
 ミハイルが声をあげたが時すでに遅く、箪笥が倒れてくる。
 四人はヒノキ造りの大箪笥にボディプレスを喰らった。
「ぐはっ……!」
「昭和の土曜八時っぽくて、芸人的には美味しいわ」
「うぅ、壁殴り代行廃業です」
「なぜ僕まで」
 まともに音楽にならないまま、演奏会終了。
【依頼三 失敗】


 依頼四は“すごい特訓をしよう!”
 ボクシングが強くなる、少年漫画チックな特訓を開発しようという内容である。
「任せて下さい! 世界的な知名度を誇る、特訓を用意しました!」
 自信満々なファリオ。
 それに付き合わされる多紀は、不安で一杯である。
「ロクでもない事を考えている香りが」
 ファリオが取り出したのはどことなく亀の甲羅に似ているリュック。
「なんだこれは?」
「とりあえず背負って下さい」
 言われるがまま、甲羅を背負う多紀。
「お、重い」
 多紀の髪の毛が、澄んだ水色に変わる。
 あまりの重さに、とっさに光纏したのだ。
 それを予想していたかのように、ファリオが声をあげる。
「おっとダメです、アウルは使わないで下さい」
「何だと? この甲羅、僕の体重より重いじゃないか」
 多紀の体重は十七キロ。 対してファリオの用意した甲羅には二十キロあった。
「これを背負って生活するんです。 もちろん、装備品とかでごまかすのもナシですよ」
「殺す気か!」
「朝は牛乳配達のバイトを、昼間は畑仕事をするんです、あ、畑仕事は素手でお願いします、鋤や鍬は甘えです」
「鬼畜か!」
 抗議など意に介さずファリオは、スマホを取り出し、電話をかけた。
「もしもし久遠ヶ原牛乳店さんですか? そうですバイト代はファリオの口座に入れて下さい。 働くのは多紀さんですが、バイト代はファリオの口座で」
「金の亡者か!」
 結局多紀は配達中に何度もひっくり返った上、体力が尽きて自分では立てなくなり、最後は文字通り亀のように手足をジタバタさせるだけになってしまった。
「だらしないですねー、これじゃあお金になりませんよ」
「くっ、見てろよ。 今度は僕の番だ」

 多紀の方でも特訓は用意してある。
「僕はトランポリン壁のぼりを提案したい」
 多紀の指示で、トランポリンを設置した学園校舎の前に二人は来た。
「まずは僕がやってみよう」
 多紀は、トランポリンに飛び乗る多紀。
何度か軽く跳んで反動を付け、徐々に高く跳び上がりながら位置エネルギーをつけた。
 最後に背中を使ってトランポリンを押す!
 無重力遊泳を思わせる動きで小さな体が浮き上がる。
 見事校舎の屋上に着地、キメポーズでフィニッシュ。
「どうだ、足腰や体幹を鍛えるにはトランポリンが一番だ。 学園の屋上まで行けなくて撃退士を名乗れるか」
「おお、何だか楽しそう!」
「やってみるがいい」
「はいはい、こんなの楽勝ですよ」
 トランポリンに飛び乗るファリオ。
 華奢な体が宙に思い切り跳び上がる。
 そして――ずばんと顔面から思い切り校舎に激突した。
「うぅ」
 鼻血をダラダラ流すファリオ。
「うむ、人生何事も最初からうまくゆくものではない、僕も散々練習した。 出来るまで繰り返しやりたまえ」
 厳格な指示を出す多紀。
 小さな復讐完了である。
【依頼四 成功】


 六番目はテニスのダブルス。
 前衛、後衛、シリアス、コメディなどの適性を見極めようという趣旨である。
 挑戦するのは、テンペストとファリオ。
「前衛後衛はともかく、依頼種類に関しては適性検査が不要な気がするのだわ」
 二人とも説明不要のネタ要員。
「ふふっ、テニスで適性を見つける? そんなのは重要じゃない! 重要なのは、アラサーが相手だという事だ!」
 ずばんと、ラケットを突き付けるファリオ。
 対戦相手の一人である椿には、変な称号を付けられたり、不良高校に送り込まれて袋叩きにされたりと恨みがつきない。
「あれは元々、ファリオくんが私を産廃扱いしたのが悪いのだわ。 うふっ、でもそれも素直になれない少年の、年上への淡い憧れの裏返しなのだわ! お姉さん許しちゃうのだわ!」
「どんだけ頭ポンコツなんですか! そう言えば、先日三十歳の誕生日を迎えてましたね、真のアラサーですね。二十代さよならー♪」
「うるさいのだわ! ファリオくんだって、気付けばすぐ三十になるのだわ!」
「残念、僕はハーフ天使ですから、そんな事はありません!」
 低レベルな言い争いを繰り広げていると、もう一人の対戦相手、ワルベルト局長が来た。
 巨体を包んだテニスウェアが全く着こなせていない。
「がっははは、三十代も十代も若い! もうすぐ五十になる我輩だって若い! 挑戦する心ある限り、人は永遠に若者なのだよ」
「流石は叔父様、いい事言うのだわ!」
 嬉しそうな顔で、局長を見つめる椿。
「今、叔父様って?」
「ガハハッ、椿は我輩の実の姪なのである」
「TV局長の姪? 椿お姉様、お嬢様属性じゃないですか!」
 パァーと顔を輝かせるテンペスト。
「何で若さもない斡旋所員がやたらTVに出てんだと思っていたら裏にそういうコネがあったんですか、あー、いやだいやだ。 アラサーが出る分、若いタレントの芽が潰されていく」
 とことん、憎まれ口を叩くファリオ。
 椿もあっさり挑発にひっかかる。
「若さもないって――見ているがいいのだわ! その生意気なお顔にスマッシュを叩きこんでやるのだわ!」

 試合開始。
「テンペストさん、テニスやった事あるんですか?」
「ないけど、白黒で線と点だけのテニスゲームはやった事あるからぬかりはないわ!」
「古すぎでしょ、それ」
 ファリオの不安をよそに、ゲーム開始。
 歌音は、椿のテニスウェア姿に目をハートにしている。
 乳のロケットぷりと、スコートから覗く太もものむっちり具合が反則なのだ。
「椿お姉様……あたしの愛のスマッシュをリターンしてぇぇ」
 テンペストは瞳をハート型にし、ハイテンションでサーブする。
「これが必殺の歌音砲よ!」
 スカる。
 ダブルフォルトで早くも失点。
「しゃもじじゃ無理ですよ!」
「だってラケット握り慣れてないし」
 実はテンペスト、ラケットの代わりにしゃもじ。
 当たらない、そしてまともに跳ばない。
「仕方ありません、僕がやりましょう」
 額の宝石をきらりと輝かせるファリオ。
 椿のサーブが来る。
 阿修羅として十数年とった杵柄か鋭い、そして重い。
 ファリオは一球目を打ち返し損ねた。
 リードを広げられるが、ファリオの顔に焦りはない。
「ふ〜ん、これがアラサーブですか」
「勝手な技名つけるなのだわ!」
「でももう慣れました、次からはこうはいきませんよ」
 二球目、予告通りに打ち返すファリオ。
 そしてその瞬間にマジックショットを放つ。
 余裕の笑みの椿。
「あらま、遅いわね! それに軽い! ――え、軽すぎるのだわ!?」
 椿は偽物の球を撃ってしまった。
 その間本物の球はワンバウンドしてコート外へ。
「ひっかかりましたねー、マヌケですねー」
「ぐぬぬ、なのだわ」
 その後もファリオはトワイライトで視界を塞ぐ。
 翼を使って、高い球を拾うなどなどスキルを駆使して試合を展開。
 だが椿もパワーとスピードがあるし、局長はテニス経験者らしく、搦め手に弱い椿をしっかりとフォローしている
 好勝負になりそうだったが、問題はテンペストの方だった。
 完全にネタに走っている。
「椿お姉様、あたしを見て!」
 わざと胸チラしてみせたり、パンチラしてみせたりしてばかりいる。
「何してんですか、テンペストさん!」
「攪乱作戦よ、お姉様の目を引き付けている間に、ファリオ君が点をとればいいの」
「僕だって気になりますよ!」
 テンペストが後衛の時はいいのだが、前衛に廻った時はテンペストのパンチラが見えてしまう。
 ファリオも男の子。
 アラサーはともかく、年の近い少女であるテンペストのそれには、本能的に気を取られてしまうのだ。
 対して肝心の椿は、テンペストの胸にもパンチラにも反応しない。
 パートナーの局長は、おっさんらしく気を取られてくれるので効果がないわけではないのだが、その時にはファリオも気をとられている状態。
 何より、テンペストはしゃもじ。
 結果、唯一フリーな椿に主導権を握られてしまいがちだった。
「テンペストさん、真面目にやって下さい!」
 怒られたテンペスト、眼球が真っ白になるほどショックを受ける。
「同じネタ要員だと思っていたのに――失望しました! ファリにゃんのパートナーやめます!」
 裏切って、椿側のコートに移るテンペスト。
「三対一ですか!?」
 カオスになった試合を局長が、無理やりまとめる。
「うむ〜、どうにも、二人とも個人的な感情や欲望に走り過ぎて、連携やポジションというものを理解していない気がするが――まあ、ファリオはガチもいける、テンペストはネタオンリーなのを確認出来たから成功と言えるであろうな」
【依頼五 成功】


 最後に六つ目と七つ目の依頼。
「前から疑問だったのだが、なぜ椿に恋人がいないんだ?」
 ミハイルが仲間に尋ねた。
「そりゃ残念だからでしょう?」
 呆れたように言うファリオ。
「俺から見れば面白いやつだと思うぜ」
「そりゃミハイルさんも、ちょっと残念なところがありますからね」
「何だと? 俺のどこが残念だ!?」
 いきなり拳銃を取り出し、天井に向かってバキュバキュ撃つミハイル。
「そういうところですよ!」
「ふむ、確かに変わった女性ではあるがそこまで悪いとも思わんぞ、何しろ僕の夢嫁だからな」
 多紀は、初夢で椿と結ばれている。
 ただし、夢の中で多紀は羊、椿はラクダというシュール極まりないものだ。
「そうよ、テニスの時に見たわよね? ポロシャツの下で揺れるロケ乳! アンスコから覗く脂も程よく乗った太もも! あれで恋人がいないのはおかしいわ!」
 極めて守備範囲の広い百合芸人テンペスト。
 テニスの時に見た、椿のボディにメロメロのようだ。
「これまで恋愛が上手くいってなかったのは、きっと本来の性の対象がそっちじゃないからなの! つまりアタックする方向を間違えてたからダメだった! 今こそ己の真の性(さが)に目覚めるときッ……!」
「椿さんも百合属性だと?」
「僕と結婚したのはあくまで夢だし、ないと思うがなあ」
 あーだーこーだ言っていると、ミハイルが口を開いた。
「そんなに言うなら確かめてみようか?」
「どうやって?」
「俺が椿をデートに誘う、どんだけ残念かこの眼で見たいからな」
 ミハイルが宣言すると、負けじとテンペストも貼り合う。
「あたしは途中で乱入するわ、かっさらって椿お姉様をこちらの世界に引きずりこむッ!」
 ファリオはニヤニヤとしている。
「僕はモニターの前で、椿さんをプギャーしてますね」
 多紀は、心配そうだ。
「僕の夢嫁を、あんまり傷つけないでくれよ」
 四者四様の思惑を抱きつつ、椿の偽デート作戦が始まった。

「ミハイルさんが誘ってくれるなんて、珍しいのだわ!」
 デートに誘うと椿は嬉しそうにやって来た。
「俺、前から椿のこと気になってたんだ」
「もう! からかわないで欲しいのだわ」
椿は真っ赤になって俯く。
 単に初心なのか、脈があるのかはわからない。
 なおこの様子は隠しカメラで追跡している。

「見たい映画、これ?」
 ミハイルが椿を連れて行ったのは、『死霊のDDT』というホラープロレス映画だった。
 どう見てもB級はおろかC級に近い。
 キョトンとしている椿をよそに、映画に見入るミハイル。
 恐怖シーンでクスッと笑ったり、コメディシーンで恐がったりとズレたリアクションを繰り返している。
 その横顔を隣の席から、ジッと見ている椿。
「どうした?」
「ミハイルさんを見ている方が面白いのだわ、可愛いのだわ」
 その笑顔には、意外に大人の余裕があった。

 映画が終ると、今度は公園に誘う。
「一緒にカバディしようぜ!」
「カバディって何?」
 不思議そうな椿を、ベンチに座らせる。
「慌てるな二人でカバディは出来ねえ、その前に一曲聞いてくれないか? 椿のために曲を作ってきたんだ」
「私のための曲?」
 頬を赤らめる椿。
 その前でミハイルが取り出したのは、合奏の時に作った即席トライアングル。
 チーンと鳴らしては無言の時間が流れ、またチーンと鳴らす。
 三十歳の見た目は美しい男女の間に、残念な時間が流れる。

「どうだ? 椿をイメージしたぜ」
「う〜ん、自分のイメージがわからなくなったのだわ」
 困惑というか混乱している椿。
 それでも、大人の女としてフォローしようとする。
「他に伴奏とかあるとメロディラインが浮き立つと思うのだわ」
「ならば、伴奏を呼ぼう! 歌音、俺の運命の女だ!」
 呼ばれたテンペストがヅャヅャヅャヅャーンと飛び出してくる。
 その格好は赤褌一丁という狂気を感じるもの。
「お姉様……あたしと二人だけの愛のカバディを築きましょう! カバディ! カバディ!」
 ミハイルと二人してカバディカバディ!と叫びながら椿の周りを回る。
 椿、しばし呆然としていたが、やがて、
「うるさいのだわ! もーわかったのだわ! ドッキリ企画なのだわね!」
「あ、あればれちゃった?」
「そりゃばれるのだわ! いくらなんだってやりすぎなのだわ!」
「お、おう」
「どうもミハイルさんの様子がいつもと違うと思ったのだわ! デートに誘われたのは嬉しかったのに、サイテーなのだわ!」
 頬を膨らませ、ぷりぷりしながら椿は帰ってしまった。
【依頼六 失敗】
【依頼七 失敗】

 収録スタジオに戻ってくる四人。
「完全に失敗したな、俺もネタに走り過ぎた」
「あたしの赤褌姿を見ても欲情しないなんて、お姉様ノンケなのかしら?」
「椿さんをプギャーしたくて参加したのに、どうしてくれるんですか!?」
「僕の夢嫁を怒らせてしまった、後で謝りにいかねば」
 しょんぼりしている四人を前に、ワルベルト局長が豪快に笑う。
「椿には我輩から謝っておく、何も案ずるでない! 成功した依頼は四つあったのだ、番組としては盛り上がったし、成功だ! 感謝に絶えぬぞ!」


 四人は番組エンディング収録後、局からそのまま斡旋所に来た。
 自分たちからも椿に謝ろうというのである。
 しかし、斡旋所にいたのは、後輩職員の堺だけだった。
「あれ? どうしたんです? 今日はミハイルさんとデートだって言ってあがっちゃったんですけど」
「実は……」
 堺に事情を話す四人。
「なるほど、それは椿さん怒りますね」
「俺も椿を本気にさせたら悪いと思って、わざと残念な男を演じていたんだ」
「やりすぎですよ」
 ファリオと堺、年下の男二人にジト目で睨まれるミハイル。
「うぅ……計画ではプロポーズまでして、断られたらこれを見せようと思っていたんだが」
 堺にだけ一枚の紙を見せる。
 それは給与明細だった。
 ミハイルの正体は世界的企業の秘密工作員。
 元から高給な上、危険手当等でかなりの高額となっている。
「これで椿が、態度を変えるんじゃないかと思ったんだが」
 椿が高収入男に拘っているというのは、有名な話である。
 だが、堺は神妙な顔で首を横に振った。
「それはないですね、例えミハイルさんがまともにデートした上で、これを見せていても椿さんは靡かなかったと思います」
「足りないって事か?」
「額は関係ありません、椿さんには、好きな人がいるんです」
 全員、顔を見合わせる。 
「初耳だな」
「ま、ま、まさか僕じゃ」
 ガクブルし、本気で怯えるファリオ。
 堺が慌ててフォローを入れる。
「違うから安心して下さい」
「でもおかしいじゃねえか、何で椿はその好きな奴を追わずに婚活なんかしてんだ?」
「支離滅裂よね?」
「ごめんなさい、これ以上は僕の口からは――椿さんにも、今は聞かないであげて下さい。 いつか話してくれる日も来るんじゃないかと思います」
 堺はどことなく、寂しそうな目をして言った。

 斡旋所から外に出ると、星空の下に椿が待っていた。
 多少、ツンとしてみせてはいるが、本気で怒ってはいないようだ。
「叔父様から話は聞いたのだわ、夕ご飯を四人でおごってくれたら許してやるのだわ」
 月明かりに照らされた夜道、五人はせわしなく騒いで町に向かう。
「椿、あれはわざとなんだ! 俺がネタに走らなければ、お前、今頃メロメロだぞ!」
「いやいや、夢の中での僕に対してほどメロメロにはならんはずだ」
「最後の依頼が無念です、僕が絡んでいたら椿さんをヘロヘロに出来ていたのに」
「お姉さま、お食事が終ったら、エロエロしませんこと?」
 斡旋所で聞いた事など、そしらぬふりをする撃退士たち。
 そして、悩みなど何も抱えていないような椿。
 その胸のうちにあるものは、撃退士たちにいつ、どんな形で明かされるのだろうか?
 そんな事を考えつつも町に出ると、焼肉から漂う香ばしい煙に鼻先をいぶられ、脳みそまで胃袋になってしまう撃退士たちだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: Eternal Wing・ミハイル・エッカート(jb0544)
 学園長FC終身名誉会員・築田多紀(jb9792)
重体: −
面白かった!:3人

Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
学園長FC終身名誉会員・
築田多紀(jb9792)

小等部5年1組 女 ダアト
神経がワイヤーロープ・
ファリオ(jc0001)

中等部3年3組 男 アーティスト