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マスター:STANZA
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
形態:
参加人数:9人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/11/15


みんなの思い出



オープニング




 テリオスが戻ると、門木章治(jz0029)はベッドに沈み込んでいた。
「……おい」
 声をかけると、僅かに反応がある。
「生きてるか」
 小さく溜息を吐いて、貰ったばかりのパウンドケーキを投げるように置いた。
「死に損ないがそこでフラフラされていると目障りだ、食べろ」
「……お前、口が悪いな……」
 門木は苦笑いを浮かべながら起き上がろうとするが、身体が動かない。
 皆が帰って気が抜けたら、残っていたなけなしの体力まで蒸発してしまったらしい。
「手、貸せ」
「無理に元気なふりなどするからだ……馬鹿が」
 文句を言いながらも、テリオスは門木の背を起こしてやった。
「いいじゃないか、少しくらい格好付けさせろよ」
「ったく、ほんと馬鹿だな」
「ありがとう」
「褒めてない!」
 ムキになって返され、門木はくすりと笑う。
「お前、ずいぶん丸くなったじゃないか」
 初めて会った頃は取り付く島もない完璧至上主義だったのに。
「近頃聞いてないよな、完璧って」
 言われて、テリオスは今初めて気付いたような顔をした。
「なんだ、気付いてなかったのか」
 こういう所の鈍さには、やはり血の繋がりを感じる、うん。
「でも、悪くないだろ」
「べつに」
 テリオスはそっぽを向いたが、照れ隠しなのはバレていた。

 門木は差し入れの袋から猫のマスコットを取り出し、テリオスの手に握らせる。
「二つ、色違いで入ってた……お揃いだ」
 門木は緑色の眼をした黒猫を選び、テリオスには青い眼の白猫を。
「あいつら、すごいよな」
 彼等と関わる前の自分がもう思い出せないくらい、様々な影響を与えられた。
「俺は今の自分なら、少しは好きになれる……気がする」
 誰かに好きだと言われても、半分くらいは信じられる程度には。
「でも、この程度になるまで……三年かかった」
 自から変化を望んで、一歩を踏み出して。
 それでも三年だ。
「変わりたいと思っていなければ、もっとかかっただろうな」
 それこそ不可能だと思えるくらいに。
「でも、どんな小さな言葉も、行動も、必ず届いてるんだ……たとえ反応はなくても」
 ほんの少しずつでも、本人が自覚しなくても、それは心の奥底に溜まり続けて――そしてある日、なんでもない一言で世界が変わる。
「だから何だ」
 テリオスが問う。
「ハージェンも変えられると?」
「その余地は、あると思う」
 少なくともメイラスよりは扱いやすいだろう――取っかかりさえ掴めれば。
 だがテリオスは呆れたように首を振った。
「……知っているか、そういうのを頭の中がお花畑と言うのだ」
「かもな」
 どこで覚えたのかと不思議に思いながら、門木は苦笑いを浮かべる。
「変わる事が正しいとは限らない。変わらないほうが良い事もある。でも――」
 ハージェンは怖れている。
 敵を近寄らせない戦い方も、本気になった時の苛烈な攻撃も、全ては恐怖の裏返しだとしたら。
「俺も、引き籠もってた頃は周りの全ては勿論、自分自身さえ恐くて……身動きが取れなくなってた。なさけない話だけどな」
 自分の中に閉じ籠もっていると、妄想が悪い方にばかり膨らんで、ますます恐くなっていった。
「でも実際の世界は、想像とはだいぶ違って……やっぱり恐かったけど、耐えられないほどじゃなかった」
 それよりも、楽しい事のほうが多くて――

 門木はふと、パウンドケーキと一緒に置かれた国語辞典に目を落とした。
 その小口に蛍光ピンクの付箋が顔を覗かせている。
 開いてみると【遊び】の項目が目に入った。
「……遊び、か」
 そう言えば、もらったパウンドケーキは南瓜が使ってある。
 遊びに、南瓜、そして今は10月。
「ハロウィンのパーティ、やるか」
「は?」
 わけがわからないという顔をしたテリオスに、門木は辞書の【ハロウィン】の項目を指し示す。
 それを読んでもやはり、テリオスはわけがわからないという顔をしていた。
「駄目か?」
「当たり前だろう! どこの世界に敵陣のど真ん中で浮かれて騒ぐ人質がいる!」
「案外いけそうな気がするんだがな……人間界には引き籠もりの女神を裸踊りで外に誘い出したって話が――ほら、ここ」
 今度は【天の岩戸】を指し示す。
「ふざけるな!」
「いや、わりと真剣だぞ」
 技術協力の成果を出すわけにはいかない。
 しかし、それ以外の方法でハージェンを呼び出す妙案も思い付かなかった。
「まあ、俺も正直こんなもので簡単に釣れるとは思わないが――」
 門木は訪ねて来た仲間達の様子を脳裏に思い浮かべる。
「あいつら、疲れた顔してたし。思い詰めてるんじゃないかな」
 少し息抜きをさせてやりたい。
 何の成果にも繋がらない、ただの遊びでもいいから。
「お前も、ひどい顔してる」
 テリオスの顔を見て、申し訳なさそうに微笑む。
 なお、自分が一番死にそうな顔をしているという自覚はなかった。
 これっぽっちも。

「それが駄目なら……そうだな、ひとまず電子レンジでも作るか」
 いや、それよりまずは発電機か。
 湯沸かし器に冷蔵庫、とにかく何かを弄っていれば「作業が捗っている」と見せかける事も出来るだろう。
 それを成果物と偽ってハージェンを呼び出す事も出来そうだ。
 ただし、バレたらどうなるかは――考えたくないが。
「俺は、自分じゃ戦えないからな……」
 悪魔だった父は、強かったのだろうか。
 その血に目覚めれば、自分も少しは戦えるようになるだろうか。
 大切なものを、守れるだろうか――

 門木はもらったチョコを一欠片、口に放り込む。
 幸せの味だというそれは、ふわりと溶けて全身に満ちていった。


 ――――


 後刻、斡旋所。
 報告を聞いて、高松は言った。
「メイラスが言った事は、まあ信じて良いだろうな」
 自分が彼から聞いたものと、ほぼ同じだ。
「あいつはこっちが騙すつもりでもない限り、嘘は言わない……意図的に黙ってる事はあるけどな」
 ただ、代価も要求せずに素直に話す事など、情報としてそれほどの価値があるとは思えない。
 或いは、わざと教えたか。
「あと、ハージェンは秩序を守っているわけじゃない、とも言ってたけど……どういう意味かは知らねぇ」
 それから、と高松は撃退士達を見つめる。
「お前ら甘ちゃんだから、忠告しとく。俺やメイラスを信じるな……俺達は、お前らの味方じゃない」
 ただ、今のところ利害が一致しているから、一時的に手を組んでいるだけだ。
「俺達の目的は、天界をぶっ壊す事だ。でも、お前らは違うだろ。殺した天使どもの生首でジャグリングでもして、その数を自慢したいわけじゃねぇだろ」
 だから、あまり近付くな。
「俺達は壊れてんだよ」
 壊れてもなお動いているものは、もう完全に壊すしかない。
 修理など、出来ないのだから。




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リプレイ本文

「章兄、敵陣で本気パーティできるのはきっとゼロおにーさんくらいなのですよ…?」
 翌日の夕方、再びゲートを訪れたシグリッド=リンドベリ(jb5318)は、腕組みをしながら呆れた様に首を振った。
 外観だけは立派な家の玄関先、開け放したドアの前に立っているのは彼ひとり。
 他の仲間達の姿は見当たらなかった。
「いくらなんでも、その発想は斜め上すぎるのです」
 いきなりのお説教に、門木は見るからに萎れた様子で項垂れる――が。
「…なんて、言うと思うのです?」
「え?」
 顔を上げると、シグリッドが笑っていた。
 そして――

 \ハッピーハロウィン!/

 合図と共にドアの影から飛び出す、思い思いの仮装をした仲間達。
「もちろん、パーティはやるのですよ…!」
 場違いだろうと何だろうと、それにこんな状況だからこそ、思いきり楽しむ。
 それが久遠ヶ原の流儀だった。



 その前日。

「え、えと… はろうぃんのパーティをするの、です?」
 テリオスを通して無事帰還の連絡を入れた華桜りりか(jb6883)は、その突拍子もない提案に戸惑いの色を隠せなかった。
 通話を切った後、助けを求める様に仲間達を見る。
 どうしよう、こんな時にパーティなんて…良いのだろうか。
「俺は、良いと思うけど」
 七ツ狩 ヨル(jb2630)が頷いた。
「こんな時にパーティかぁ、なんだか章治兄様らしいな」
 鏑木愛梨沙(jb3903)も異存はない様だ。
「要は引きこもりとアイデンティティの欲しい中学生か…パーティやな」
 お祭大好きゼロ=シュバイツァー(jb7501)には勿論、異存などあるはずもない。
「私も賛成です」
 門木の気分転換も必要だろうとユウ(jb5639)も頷いた。
「それに、ハージェンに拘らないものが逆に興味を引くこともありえますから」
「一度、落ち着きましょう」
 カノン(jb2648)は小さく息を吐いて呼吸を整える。
「確かに状況は楽観できませんが、切羽詰まりすぎてもいいことはないはず…リュールさんがいった先生の武器も、きっとそこにつながるはずですから」
「あ、そうそう。リュールに会ったらそれも訊かなきゃね」
 雨野 挫斬(ja0919)が言った。
「すんなり答えを教えてくれるとは思えないけど」
 頑張って出した答えなら採点くらいはしてくれるだろう。

 報告を聞いて、リュールはただ一言「そうか」とだけ呟いた。
 他にはコメントも質問もなく、至って落ち着いた様子でティータイムを楽しんでいる。
 だが、いくら表面上は平静に見えても、息子の身を案じない母などいないだろう。
「大丈夫ですよ、リュールさん」
 ユウはその手を取って両手で包み込み、少しでも安心させる様に真剣な表情で優しく微笑んだ。
「ん? ああ、すまない。ありがとうな」
 リュールはその手を反対に包み返し、片手で軽くぽんぽん叩く。
「だが本当に、心配はしていないのだ。いや、心配ではあるが、不安はない…と言った方がいいか」
 彼自身が信頼して任せているという事実と、これまでの実績。
 それを考えれば不安に思う要素など微塵もなかった。
「その信頼を裏切るつもりはないけど」
 頃合いと見て挫斬が切り出す。
「あの宿題は難しかったわね。自信ないから答え合わせしてくれない?」
 もっとも自分では自信がないどころかさっぱり思い付かなかった為、皆に投げてみたのだが。
 一人で考えろとは言われていないし、そこは問題ない筈――寧ろこれは全員で共有すべき問題だろう。
「それで、お前達は何だと思った?」
 リュールに促され、まず最初にゼロが応じる。
「んなもんアレやろ、人たらしと頑固で決まりや」
 以上、ざっくり纏めてみました。
 しかし、ざっくりすぎてよくわからない。
「んと、人たらしというのは…誰でも懐に入れていくところ、優しさのことだと思うの、です」
「共感能力と言い換えることも出来そうですね」
 りりかとカノンが解説を試みる。
「もうひとつは、頑固とは少し違う気もしますが…最後まで割り切らずに考え続ける事、でしょうか」
「うん、それな。諦めないこと」
 青空・アルベール(ja0732)が、こくこくと頷いた。
「それは優柔不断さでもあるけど、最良を諦めないことでもあると思う。にーちゃんのそういうとこのおかげで乗り越えてきた部分もいろいろあるよな」
「いずれも、敵に情けをかけることにもなりますから戦いに向かないものですが、『強敵』に戦わずして越えることもある、かな、と」
 つい歯切れの悪い言い方になり、カノンはリュールからそっと目を逸らす。
「これだけ長く先生と関わってきて、自信をもって断言できないのは情けない話ですが」
 だがリュールはその顔に意地の悪そうな笑みを浮かべつつ首を振った。
「いや、面白い。私の想定とは違うが――なるほど、そういう見方もあるか」
 他にはないかと尋ねられ、青空が答える。
「守るべきものがいることだと、私は思うのだ」
 メイラスから見れば、それは『弱点が多くて助かる』ということになるのだろう。
「でも守るものがいるから踏み切れる強さとか、信じられるものがいるってのはやっぱり強い、よね」
「なるほど、お前達の目にはそう見えているのか」
 リュールは小さく笑い、満足げに目を閉じた。
「それで、正解は?」
 挫斬に促され、片目だけ開いて一同を見る。
「お前達がそうだと思ったものが正解で良かろう」
 もう自分よりも彼等の方が、息子のことをよく見て、よく知っている。
 それなら自分が口を出すまでもない。
 今回の事件、彼の立場なら撃退庁に出動を要請するのが筋だ。
 高火力と物量で押せば、本気のハージェンを倒す事も出来たかもしれない。
 だが、彼はそうせずに仲間達を頼った。
 その意味は恐らく全員が理解しているだろう。
「それを活かせなければ望む結末は得られない、となれば…」
 カノンが決意の表情で顔を上げる。
「ハロウィンパーティ、楽しみましょう」
 楽しむという言葉とは裏腹に、その眉間には一本の深い皺が刻まれていた。


 さて、翌日の午前中。
「私だって何度も催しに呼ばれているうちに少しはお菓子も安定して作れるようになりましたし…たぶん」
 眉間に皺を刻んだまま、カノンは風雲荘のキッチンに立つ。
 クッキーの類は多分大丈夫、南瓜のパイは去年の経験を活かせばちゃんと作れる、筈だ。
 他にはホットケーキミックスで作るドーナツくらいなら何とかなるだろうか。

「とりあえず盛り上げないといけないの…ですね」
 りりかは未だに戸惑いつつも、パーティの準備だけはしっかり進めていた。
 手作りチョコケーキはスポンジを重ねて幽霊屋敷の形に作り、上からチョコでコーティング。明かりの見える窓はホワイトチョコを貼り付けて、周囲にはマジパンて作ったオバケやランタンを乗せて賑やかに。
 形やフレーバーが様々なクッキーは小袋に分けて人数分を。
 それに、ちょっとした工作も――
「んと、プラネタリウムを作ってみようと思うの…」
 作り方は簡単。黒い厚紙で円錐形を作り、そこに穴を開けて内側から懐中電灯で照らすだけだ。
 色々な模様を切り抜いてカラーセロファンを貼っても、壁に投影する万華鏡の様になる。
 使わない時は紐を付けて、三角帽子みたいに被ってみるのも良いかも?

「なんだかすごいことになったけど、楽しく過ごせるといいと思うな」
 青空はカボチャのプリンを人数分、よりも少し多めに作っておく。
 そうそう、ハロウィンなんだから仮装もしなきゃ。
「えっとねー私ねー吸血鬼! みんなは何にするのだ?」
 纏めて借りてくるから、リクエストがあったら言ってね。
 それとも適当に借りてアミダで決めたほうが楽しそう?

「あ、俺は自前で用意するから」
 ヨルの仮装はぽんぽこタヌキ――ではなく、怪獣。
「まだそんなに寒くないし」
 それに確か、ゲートの中は過ごしやすい気温だった気がする。
 後はハロウィン仕様のショートケーキ色々と、それっぽいお菓子と、それっぽい料理と。
 勿論カフェオレは外せない外さない。

「青空さんもプリン作るのですね…」
 シグリッドは急遽メニューを変更、カボチャプリンのタルトを作ることに。
 タルト生地にアーモンドクリームを詰めてオーブンで焼き、その上にカボチャプリンをドーム型に盛り、更にホイップクリームでコーティング。
 後はココアパウダーをかけてオレンジピールを散らせば出来上がり。
「みんなに配るお菓子はオレンジキャンディにするのです」
 キャンディを入れた小袋にイメージカラーのリボンを結んで。
「オレンジの香りはリラックス効果があるそうなので」
 門木やテリオスの分は勿論、メイラスにも。
 ハージェンの分は…どうしようか。
「ゼロおにーさんは何か作らないのです?」
 たこ焼きとかたこ焼きとかたこy(
「今回、俺はこれだけで充分や」
 ニヤリと笑ったゼロが取り出したのは、高級そうなラベルが貼られた一升瓶。
 どうやら持てるだけの酒を持ち込んで酒盛りを楽しむつもりらしい。

 ユウはまず甘みたっぷりの一口サイズのチョコと、小さなカップケーキを作ってそれぞれに個包装し、大きな編み籠に山盛り詰め込んだ。
 それに、万が一ハージェンが興味を持った時に備えて、特別にラッピングした献上品も作っておく。
 準備が出来たらその他の細々とした差し入れを買い行く。
「何か精神疲労を癒せるような物を二人分…」
 冷え冷えシールや電池式のマッサージ器などが良いだろうか。
 後はついでに、学園に寄って調べ物を。
「もし仮に能天使クラスの階級が堕天した場合、安全や生活の保護において学園や政府はどのような対応を取りますか?」
 勿論その天使の経歴にもよるだろうが、通常通りの受け入れは可能なのだろうか。
 その答えは、特に通常の場合と変わることはない、というものだった。
 天界との縁が切れればその力の殆どが失われるのは誰でも同じ、それに元の階級など人間界では殆ど何の意味も持たない。
 そもそも堕天を決意した時点で、階級のしがらみから解放されている様なものだ。
「後は本人のそれまでの行い次第、ですか」
 今の所、ハージェンは人間界に直接危害を加えてはいない。
 本人さえその気になれば、堕天も可能ということか。

 そして挫斬は相も変わらず、勝手に上がり込んだ高松の部屋――正確にはベッドの上でゴロゴロしていた。
「先生の武器が私達の想定通りとしてもそれをどう生かせばいいのかしら?」
「だから、なんでお前はここでクダ巻いてんだよ」
「ハージェンが秩序を守ってないなら何を守ってる? 自身の地位? 今の生活?」
「そもそも俺は、お前に合い鍵とか渡した覚えねぇんだけど?」
「ならそれさえ保障すれば味方に引き込める? う〜、考える事が一杯で頭痛くなってきた」
「聞いてんのかコラ!」
 声のボリュームを上げた高松に、挫斬はたった今その存在に気が付いたかの様に顔を上げ、眉を寄せた。
「なによ、うるさいわね」
 考え事してるんだから、ちょっと黙っててくれる?
「あ、そうだ」
 挫斬はベッドから起き上がり、床に胡座をかいている部屋の主を見下ろした。
「私はジャグリングはともかく天使、ううん、人間でも味方でも強いなら解体したい程度には壊れてるわよ。でもちゃんと皆と暮らせてる」
 そう言いながらベッドを下り、高松の前に膝を付く。
 身を乗り出して顔を近付けた。
「天界はともかく、世界は壊れた存在も受け入れるくらい寛容よ。だから私も先生も紘輝もここにいる」
「近ぇよ、こっち来んな」
 高松は目を逸らして逃げようとするが、挫斬はその肩を掴んで離さない。
「ま、壊れてるなりに世界に合わせる努力をしないと駄目だけどね。私も学園で強い人を見つけても襲うの我慢してるし」
「我慢できてんなら壊れてるとは言わ…っ!?」
 挫斬はそのまま体重をかけて高松を押し倒し、その首を両手で押さえ付けた。
「特に紘輝は強いし大好きだから凄い解体したいんだよ? 愛してるから我慢するけどね」
「べつに強くねぇし」
 後半の台詞は敢えて黙殺し、高松はこのまま絞め殺されても構わないと言うかの様に全身の力を抜く。
「強かったら、今頃は天界に乗り込んで好き放題やってるさ」
 それが出来ないから、腹いせに学園で堕天使狩りの真似事なんかして――それさえも中途半端に情けをかけて、失敗して。
「何してんだろうな、俺」
 自嘲気味に笑う高松の首から、挫斬は手を離した。
「ねぇ、一番欲しい物の為に他の全てを捨てる必要なんてないのよ。やり方次第で全部手に入る。だから諦めないでね」
 そっと唇を重ね、そのまま良い感じで暗転――かと思いきや。
「よし! 考えるの飽きたから一緒にパーティの買物に行こう!」
「は?」
「ハージェンが顔を出すよう好物を買うわよ」
「おい、そこは違うだろ!」
「違うって何が? あ、もしかして何か期待した?」
「してねーよバカ」
「ふーん?」
 じゃあ、そういう事にしておいてあげよう。
 そして二人は買い物へ。
「必要なのはお酒と食べ物と…」
 お土産はゲームが良いだろうか。
「ハージェンってオタクっぽいからこういうの好きそう」
 本体とソフトと、それにテレビも買って。
「携帯機って選択肢はねーのかよ」
「どうせなら大画面で楽しんでもらいたいじゃない――あ、先生用にちょっとエッチなゲームも混ぜておこうかしら、フフフ」
 勿論、支払いは門木のツケで。



 かくして、時は現在に戻る。

「…カドキの発想にはいつも驚かされる。でもいつでも大真面目なんだよね」
 怪獣の着ぐるみに入ったヨルが、大きく開けた口の中から笑顔を見せる。
「だから『仲間』を信じて、やるだけやってみるのもいいかなって、そう思ったんだ」
 フェイク機械なんか作らせない。
 代わりに何をどうするか、それはまだ思い付かないけれど。
「詰まった時は全然別のことしてみると、思いもしないアイデアが出て来ることがあるんだって」
 それを聞いて背筋を伸ばした門木は「どうだ」と言わんばかりの顔でテリオスを見た。
 反対に背中を丸めて肩を落としたテリオスは、溜息と共に覇気の無い声を吐き出す。
「知っているぞ、お前達のような集団のことを『類友』と呼ぶのだろう」
「テリオスおにーさん、変な知識だけは豊富なのです…」
 永遠の少年ピーターパンのコスに着替えたシグリッドが溜息を吐いた。
「ところで、辞書はちゃんと使ってくれてるのです?」
 それに差し入れのパウンドケーキは食べてくれたのだろうか。
「テリオスおにーさんも顔色悪いのですよ…どうしたら元気になりますか…?」
 もしかして、お腹すいてる?
「ごはん、ご飯食べたら良いんでしょうか…!」
 どーんと大きなカボチャプリンのタルトを差し出してみる。
「これ全部食べてもいいのですよ…!」
「無理だ」
 と言うかまずは準備を終わらせたほうが良いのでは。
「あっ、そうでした…!」
 ハロウィンの飾り付けをしないと。

 その間、二人には少し休んでいてほしい。
 でも知ってる、二人とも――特に門木は言うこと聞いてくれないって。
 今日は「あの声」は聞こえなかった。
 しかしだからといってすぐに回復する筈もなく、門木の顔色は相変わらず酷い。
 それでも、大丈夫かと訊けば大丈夫だと答えるに決まっているし、この人の大丈夫は絶対に大丈夫ではないことも知っていた。
 どうしよう、どうすれば素直に休んでくれるのだろう。
 そう思っていた所に――救世主が現れた。

「今こそ出番ですよ」
 ミニスカナース姿のユウに背中を押され、白雪姫の様な格好をしたカノンは一歩前へ。
 なお衣装はアミダで決められたものであって、各自の趣味で選んだものではないことを付け加えておく。
「先生、準備の間だけでも休んでください」
 その一言は、効果絶大だった。

「テリオスさんも、お休みしたほうがいいの、ですよ…?」
 リスの着ぐるみに身を包んだりりかに言われるが、テリオスは頑なに首を振った。
「それなら、回復や手当は…」
「私の消耗はそれで治るようなものではない」
 それでも、最後に小さく「ありがとう」と付け加えたのは大きな進歩だろう。

「ごめん、少しだけ…このままで」
 ベッドに転がった門木はあっという間に寝息を立て始めた――その端に座ったカノンの指先を、ほんの僅か遠慮がちに握って。
 負担をかけたくない、重荷になりたくない、寄りかかってはいけない。
 そう思いながらも、今はその誘惑に抗うことが出来なかった。
 こうして触れていることが、一番の安定剤だから――


 空き部屋をひとつ丸ごと占拠して、パーティ会場が作られていく。
 床にはラグを敷き、壁にはペンキをぶちまけて、窓にはシールを貼ってカーテンを取り付け、更に部屋全体にオーナメントを張り巡らせて。
 全てを黒とオレンジ、そして所々をムラサキに。
 テーブルや椅子はないから車座にクッションを並べ、小分けにされたお菓子をその前に置いておく。
 真ん中に大きなケーキやお菓子の山を作ればセッティングは終了だ。
「席は人数分と、あとはハージェンの分も用意しておくな」
 青空がクッションを三段重ねた特別席を用意する。
「多分ないと思うけど、もしハージェンが覗きに来て席が無かったらがっかりするかもなのだ」
 一応、招待状も書いて来たけれど。
「届けたいけど流石に無理かなー…メイラス通すのやだし…」
 どうすれば良いか、門木かテリオスに訊いてみようか。
「そろそろ起こしに行く時間だしなー」
 と、そこに仮装を済ませた二人が現れ――

「ぷーっ!」
 噴いた。
「あ、ご、ごめんなのだ…っ」
 でも、あの、とてもよくお似合いで…某配管工兄弟のコスが。
 なお兄が赤で弟が緑なのは言うまでもない。
 えーと、それで、なんだっけ。
 そうそう、招待状!
「たまに見にきてるなら置き手紙できるか、も?」
「そうだな、届く保証はないが…」
 門木が頷く。
「向こうも気に入らなければ無視すれば良いんだし――なあ、テリオス」
 話を振ってみるが――あれ、なんか怒ってる?
 笑われたことに腹を立てたのか、それとも。
「赤のほうが良かったか?」
 だがテリオスは「どちらも違う」と盛大に溜息を吐いた。
 いや、確かに腹を立ててはいるが、それは自分に対してだ。
「私はずっと、こんな憎み甲斐のない馬鹿兄を憎んで精神を磨り減らし、父に言われるまま理想の息子を演じてきたのかと…そう思うとな」
 なんだか色々とアホらしくなった。
「私も、もう少し気楽に生きてみてもいいのだろうか」
「いいと思うの、ですよ?」
 こくり、りりかが頷く。
「階級がもんだいなら階級のない所に来れば良いのでは…です。それで楽しめたなら、それで良いと思うの…」
 人間界はいつでも堕天をお待ちしています。
 お気軽にどうぞ?

「それにしても流石の人たらしやな、きっつぁん! その調子でハージェンのやつも頼むで!」
 桃太郎の格好をしたゼロが門木の肩を叩く。
「え、俺?」
「せや、引きこもりにも臆せず絡んで仲良うなってまうその手並み、大したもんや。とりあえず胴上げしとくか!」
 いえ、遠慮します。
 って言うより誰にでも臆せず絡んで手懐け、いや、仲良くなるのはゼロさんの方でしょ…!
「俺は引きこもりとの上手な付き合い方がようわからん。ついでに教えてくれんか?」
「そう言われても、な」
 自覚がないものは教えようがない。
「ところで、リュールから話があったんやけどな」
 メイラスを呼ぶ前にと、ゼロが話し始める。

「…っちゅーわけや。きっつぁん、自分で心当たりあるか?」
 問われて、門木は即座に首を振った。
「俺なんか何の役にも――」
「そんなことない」
 否定の言葉を遮ったのはヨルだ。
「カドキにはカドキの戦い方があると思うし、カドキは今も立派に戦ってくれてる」
「いや、それは買いかぶりで…」
「俺はお世辞とか、そういうの好きじゃない」
 言う必要もない。
 だって、本当にそう思ってるから。
「だから焦らないで。悩み過ぎないで。俺達も頑張るから」
「章治兄さまはどうしたいの、です?」
 りりかの問いに、門木は皆の顔を見た。
「俺は、前に聞いた皆の望みを叶えたい」
 みんなと仲良くなりたい、笑顔の輪を広げたい、新しい秩序を創りたい――その思いが今も変わらないなら。
 遺恨を残さず、出来ることなら誰も傷付けずに…なんて、甘すぎるかもしれないけれど。
「その為に必要なら、それが侵略に使われない保証があるなら、俺の技術を提供してもいい。例えこのまま戻れなくなっても――」
「それは、よくないのですよ?」
 りりかが「めっ」という顔で見返す。
「皆さんで笑顔になれるのが一番なの…」
 だから、誰かが悲しむ様なことは手伝えない。
 でも、それ以外なら。
「先生がやりたいことに、私達はいつでも全力で協力します」
 カノンが真っ直ぐに見つめる。
「一緒に、いますから」
 もう独りで戦わせたりしないから。
「きっつぁんも、いっつも守られてるばっかりちゃうしな」
 ゼロが今度は背中を叩いた。
「そろそろ俺らも男になったきっつぁんに守ってもらうか。ぼんやりとは考えあるんやろ?」
「ない」
「ないんかい!」
「いや、ハージェンを落とした後、その先は何となく見えるんだが」
 狙いは天界の凪いだ水面に小石を投げ込み、波紋を起こすこと。
 それがどこまで広がるかは未知数だが、場合によっては岩をも砕く大波になる可能性もある。
 だが、肝心の小石が持ち上がらない、持ち上げ方がわからない。
「随分とバカでかくてクソ重たい小石やな」
 しかし、要はそれを持ち上げて、ブン投げれば良いわけだ。
 それだけわかれば充分だ。
「確かに、まだ明確に道は見えていません」
 カノンが頷く。
「けれど、先生も追い詰められないで。私も先生と…貴方と、一緒に考えますから」
 言い直されて、思わず心臓が跳ね上がった。
「うん…ありがとう。頼りに、してる」
 出来れば自分も頼ってほしい所だけれど、それにはもっと頑張らないと、うん。

「ハージェンも、もっと楽に生きてみればいいのにね」
 先程のテリオスの言葉を思い出しながら、ヨルが呟いた。
「あいつ、下手に上にいるから苦しいんだと思うんだよね。地面に下りちゃえば皆一緒で、落ちる心配もしなくていい」
「根源的な恐怖をなんとかしてやれば、もう少し話出来るのかなー」
 青空も首を捻る。
 でもそれをどう伝えればいいのか――わからないから、とりあえず遊ぼう。
「せやな、難しい話はしまいや! 派手に騒ぐで!」


 まずはハージェンの席に携帯ゲーム機やソフト、ユウの献上品やプリン、ケーキ、酒にジュースにその他諸々を山積みにして。
 因みに赤頭巾コスの挫斬が門木への土産として持って来た「ちょっとエッチなゲーム」も、その山に積まれていた。
「えー、なんでよ? 女の子の扱い方とか、そういうので勉強したほうが良いと思わない?」
 はい、その気持ちだけ頂いておきます。
 なお据え置き型はテレビと電源が必要なため、門木が発電機を作るまでは保留ということで。
「なんだか神様へのお供え物みたいなのだ」
 供物の山を前に、青空は思わず柏手を打ってみる。
「こうしたら声が届かないかなって」
「そもそも、俺らの声ちゃんと届いとったんかな」
 この前はメイラスが通訳していたが、あれが本当にハージェンの言葉だったという保証はない。
「意思疎通やら何やら、直接声を届ける手段があればええんやけど」
「動画を撮影してみるのはどうなの、です?」
 ゼロの言葉に、りりかがデジカメを取り出してみる。
「良いんじゃないかな」
 ヨルがお供え物のゲーム機を回収し、設定を弄り始めた。
「これに動画でメッセージ送るのもアリかも」
 そう言えば、献上しても大丈夫かどうか訊いていなかったけれど。
「カドキが手慣らしの為に作ったこっちの世界の無害な機械って事にして貰うの、駄目かな?」
 上手くハージェンの退屈凌ぎになれば門木の安全性も少しは上がるだろうし。
「献上は構わないが、そこは正直に伝えたほうがいいな」
 新作マダーとか言われても困るし、ね。

 カメラの前で、青空は改めて柏手を打った。
 何も信じることが出来なくて、自分を守ることしか頭にないのに、それすらもいくらやっても完璧にはならない。
 そういう感じなのだったら、それは、すごくつらいことだ、と思う。
「私、君とお話したいのだ」
 だってまだ一度もまともに話してない。
 ちゃんと言葉を交わして、にいちゃんを返してって説得するのはそれからでもいい。
「いつか、届くといいな」

「で、メーやんはどこにおるんや?」
 勝手に変な渾名を付けて、ゼロがメイラスの姿を探す。
「メーやーん、隠れとらんで出て来いやー!」
 が、返事はない。
「そう言えば、テリオスおにーさんはゲートに出入りがあればわかるのです?」
 シグリッドの問いに、テリオスは頷いた。
「誰が来たのかまではわからないが――ただ、メイラス様は近くにいる筈だ」
「なんや、おるのに出て来んのかいな」
 流石お子ちゃま、ヒネクレていらっしゃる。
「ノリの悪いやっちゃなー、そんなんやとモテへんやろ」
 まあいいや、出て来るまでテリオスと呑むから。
「な、テリー?」
「人に変な渾名を付けるな」
「ええやん、親愛の印やで?」
「要らん」

 そんな仲良しさん達を生温かく見守りながら、シグリッドは門木にアタックをかけた。
「章兄、トリックオアトリートなのです!」
「ああ、ちょっと待て」
 ポケットを探った門木が取り出したのは、青空に貰った猫のマスコット。
「ねこさん…!」
 シグリッドはキラキラと目を輝かせるが――あげないよ?
「じゃあ悪戯するのです!」
 ぎゅー!
「大好きな章兄にぼくの元気をおすそ分けなのです」
 ハグで少しでも元気になってくれるといいなって。
「ん、ありがとう」
 でも、それは悪戯になってないよね?
「いいのですよ…!」
 門木のほっぺにちゅーして、シグリッドはテリオスの所へ。
 やっぱり何もくれないから、ハグしますね!
「ぼくに出来る事あれば言ってほしいのですよ…!」
「ない」
「そんな…っ」
 ぶわわっ!
「おーいシグ坊、こっちの菓子は甘いぞー」
 ゼロさんが呼んでるけど、ろくな事にならないって知ってる。
 だから行かない。
「ぼくは蛍じゃないのですよ…」
「来ないならこっちから行くでぇ、逆トリックや!」
 そーれ打ち上げろー!

 晴れて成人の仲間入りを果たしたりりかは、お酌をしつつ自分でも少し呑んでみる。
 軽く良い気分になった所で、オルゴールの音楽に乗せてお手製のプラネタリウムを披露した。
「きれいなものや、楽しいもの、ふしぎなもの…人間界にはたくさんあるの、ですよ?」
 これも動画を撮っておこうか。

 そしてユウは、門木にリュールの肉声をプレゼント。
「聞きますか?」
 念の為に確認してみるが、拷問の様に偽リュールの声を聴かされ続けている現状では、寧ろそうした普通の声が聞きたかった。
「では、覚悟してくださいね」
「え?」
 レコーダーのスイッチを入れた瞬間、聞こえたのは――

『この馬鹿息子!!』

 それから小一時間、延々と続くお説教。
 しかし門木は嬉しそうに聞き入っていた。



 そしてパーティも終わりかけた頃。
 漸くメイラスが姿を現した――が、共に宴を楽しむつもりはないらしい。
「ほんまツマランやっちゃなー。まあええわ、なら単刀直入に、事務的にいこか」
 訊きたい事があると、ゼロが切り出した。
「自分の言う全部て何や? 全部って漠然としすぎやろ。お前何を壊したいねん。ひょっとしてその全部って自分も入ってるんか?」
「当然だ」
 自分の息の根が止まるまでに、どれだけのモノを壊せるか。
「秩序が崩壊するほどに壊す事が出来れば、私の勝ちだ」
「それは楽しみ方が違うんとちゃうか?」
「私の個人的な趣味に口出しをされる謂われはない」

「それなら人間界へ来れば良いの、です。そうすれば何でも出来るの…」
 りりかがメイラスの目を真っ直ぐに見つめる。
「こわしたいなら見た目が少しちがうだけで出世できなくなるような階級制度をこわせばいいの。あたしたちと一緒に来れば良いの、です」
 りりかは持っていた「誓いの組紐」を手渡そうとする。
「そうするなら全力でお手伝いするの」
 だが言葉も想いも、メイラスには届かなかった。

「なら、これはどう?」
 ヨルがゲーム機を差し出す。
「いつもゲームって言ってるから、こっちの世界のゲーム持ってきた」
 人界のゲームは誰も死んだりしないし、階級とか種族とか関係なく遊べる。
 それに沢山の人と遊んだ方がより楽しい。
「遊んでみないと、わからないけどね」
 ゲームだって、自分で一歩を踏み出さなければ楽しめないのだ。

「見当違いであれば申し訳ないのですが」
 そう前置きをして、最後にユウが訊ねた。
「門木先生…エルナハシュ・カドゥケウスは貴方にとって目障りで憎たらしく苦痛を与えたい存在なのですか?」
「そうだ…と答えてほしいのか?」
 別に誰でもいいのだ、都合良く目の前にいて、良い餌になりそうなカモならば。


 メイラスが足止めされている間、ほろ酔い挫斬は再びゲート内の探索を始める。
 が、そこで見付けたのは――
「愛梨沙ちゃん?」
 途中で姿が見えなくなったと思ったら、こんな所で何をしているのだろう。
 声は聞こえないが、何となく様子がおかしい。

「リュール母様に言われた事、もしも章治兄様を失う事になったら…あたしは耐えられる?」
 勿論失う様な事になんてそう簡単にはさせないけど、でももしもそうなったら?
「…わからない、あたしどうなっちゃうんだろう?」
 重そうな十二単に身を包んだ愛梨沙は、その衣装の様に重い溜息を吐く。
「考えたくない、でも考えなきゃいけない。一人で立てる様になるには、あたしは…そろそろ失った記憶、自分の過去とも向き合うべきなの?」

 これは、門木を呼んで来るべきだろうか――?


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

dear HERO・
青空・アルベール(ja0732)

大学部4年3組 男 インフィルトレイター
高松紘輝の監視者(終身)・
雨野 挫斬(ja0919)

卒業 女 阿修羅
夜明けのその先へ・
七ツ狩 ヨル(jb2630)

大学部1年4組 男 ナイトウォーカー
天蛇の片翼・
カノン・エルナシア(jb2648)

大学部6年5組 女 ディバインナイト
208号室の渡り鳥・
鏑木愛梨沙(jb3903)

大学部7年162組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
シグリッド=リンドベリ (jb5318)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
Cherry Blossom・
華桜りりか(jb6883)

卒業 女 陰陽師
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅