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マスター:塩田多弾砲
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/05/14


みんなの思い出



オープニング

 とある商店街「ひぐまストリート」。その中心の「スーパーひゆう」が中心になって、商店街を盛り上げるアイドルを立ち上げる事になった。
 スポンサーが決まり、青空市場での会場でイベントに出演が決定。
 そのメンバーは。
 肉好き女子中学生の、大田鉢小鳥。
 アメリカからホームステイしている留学生、サリー・フーバー。
 そして、「スーパーひゆう」の一人娘、火遊いつみ。
 三人そろって、「ガール・ミーツ・ガール(仮名。略称GMG)」
 プロデュースその他は、精肉チェーン店「テキサス」の社長令嬢にしていつみの友人、馬場聡子。
 が、歌とダンスの練習を重ねてはいるものの、うまくいってなかった。


「ワンツー、ワンツー……ほら、いつみさん。ずれてますよ。小鳥さん、手の動きが悪い! ……サリーさん、もっと思い切って!」
 ダンスの指導をしているのは、「テキサス」こと「馬場精肉店」の社長秘書・緋勇逸子。
「テキサス」の社長令嬢にして、いつみの友人・馬場聡子のお付き。芸達者な彼女はダンスの心得もあったりするので、今回ダンスの先生として皆を指導する事に。
「はーい、それじゃあ五分休憩! ……うーん、いいわー。汗にまみれた美少女の肢体……思わず見とれちゃうわねーぐへへ」
 と、ゆるんだ顔つきで自分らを見つめる逸子に対し、いつみはなんとなーく自分の身が危ういと感じたり感じなかったりするのであった。
「あのー、聡子先輩は?」
 汗を拭いていた小鳥が声をあげる。今は13時。10時に練習場に来ると言っていたのだが、まだ来ない。連絡もなく、携帯に連絡を入れてもつながらない。
「はいはい。どうせ今日の事忘れてるか、遅刻してるんでしょ。まったく、いつも好き勝手してくれるんだから……」
 しかし、いつみも少し変だとは思っていた。遅刻するのはいつものことだが、来ない……という事は今まで無かったのだ。
 それに、聡子が持っている携帯電話は、彼女自身が色々と改造してたりするので、電波状況が悪くても大抵はつながる。なのに今回は『電源が入っていないか、電波の届かない場所に……』というばかり。

 三日ほど前。
「小鳥さんの作ったアイドル衣装、完成しましたよー。あと、こちら完成した歌の楽譜です」
 聡子は皆を前にして、そのように報告していた。
「いやあ、サリーさんに作曲の才能があるとは、恐れイリヤのクリヤキン、ソロっと出て来たナポレオンです。あとは、作詞ですが……」
「それなら私が……」
「ああ、逸子さんはおよびじゃあありません。痛さと古臭さ満載のポエマーの出番は(ガッ)……アイアンクローはやめてー! スゲー痛いの、割とマジに!」
 衣装は、もとからコスプレ好きな小鳥が。作曲は、アニソン好きなサリーが。そしてその振り付けは、逸子が受け持っていた。
 あとは作詞くらいだが……それは聡子が行ってくるという。
「三日ほどしたら、良いのが出来上がってくると思います。楽しみにしてて下さいね?」

 今日がその三日後。結構楽しみにしてきたのに……いったいどうしたのか。
「……遅いですよね、聡子先輩。どうしたんでしょう?」
「サトコ、何かあった?」
「あるわけないでしょ。どうせそのあたりの窓から入ってきて、『普通じゃない登場するわたし、参上!』とか言って出てくるんだから。ほんと、いつも迷惑ばかりかけてくれるわよ」
「……とか言いつつ、ちょっと気になるいつみ先輩でした」
「気になりません! ……だいたい小鳥さん、あなた達こそあんないい加減で行き当たりばったりの馬場さんと、よくつるんでいられるわね。神経疑うわ」
 それを聞いて、小鳥はちょっとむっとした顔に。
「……そりゃ、いつも聡子先輩の事を頭っから否定しっぱなしのいつみ先輩だったら、疑うしかないでしょうよ」
「……なんですって?」
「べっつに〜。あーあ、私とサリーさんだけなら、振り付けは結構うまくいくのになあ」
「小鳥さん、それは私の事を言ってるのかしら」
「他に誰がいるのよ。何かにつれ『あれは駄目』『これは駄目』としか言わないくせに、自分が関係するとなると、何もできないし、しやしないじゃない……本当に、なんで聡子先輩はこんなやる気のない役立たずをメンバーにしたんだか」
「やる気が無い役立たずですって? やる気無かったら、此処にはいません! そっちこそ、その偉そうな言い方は何よ!」
「そっちが偉そうじゃない! なによ、いつもいつも上から目線で見下してさ。私たちの事、心の中ではバカにしてんじゃないの!?」
「バカにしてるのはそっちじゃないの! いつも馬場さんと変な事ばかり言って、私の事をバカにしてるじゃない! ふざけないでよ!」
「い、イツミ、コトリ。ケンカ、ダメだよ……」
 サリーが仲裁に入るが、二人は睨み合う。
 ここ数日、練習がうまくいかないと、この二人はいつもこうやってケンカをしてしまう。聡子がいるとその度に仲裁に入ってくれるので、あまり深刻にはならなかった。
 しかし、今は聡子はいない。
「……だいたいいつみ先輩。聡子先輩の事、いっつも決めつけてるじゃない! 聡子先輩の事、ろくに知らない癖に!」
「彼女が変な事ばかりするからでしょ! 馬場さんのことくらいわかってるわよ!」
「わかってないわよ! だって聡子先輩は……」
 そこまで言った小鳥だが……すぐに口を閉ざしてしまった。
 閉ざしたまま、睨み付ける。そんな小鳥を、いつみも睨み返した。
 しかし、その睨み合いはすぐに終わった。

「なんですって!?」
 逸子が叫んでいた。彼女の叫びに、三人とも逸子へと注意が向く。
「「「?」」」
「それで……はい……今どこに……はい……はい……」
 逸子は、携帯でなにやら話し込んでいた。何かが起こったらしい。
「……みんな、落ち着いて聞いてね。……聡子さんが、車に……」

 病院に皆、駆け込んだ。が、聡子は集中治療室から出てこない。
 なんでも、犯人は昼間から酒酔い運転していたらしい。ハンドルを切りそこね、その先に歩道を歩いていた聡子へとぶつかり……彼女をはね飛ばしたというのだ。
 現場には、車がひいてズタズタになったノートが。ノートの断片には……歌詞が書かれていた。が、どういう歌詞が書かれていたかは、定かではない。というか、わからない。
 そして、肝心の聡子は。未だに目を覚まさない。が、少なくとも腕を折られた事は、間違いないという。

「……で、皆さんには。イベントを成功させる手伝いをしていただきたいのです」
 会場周辺の整理と雑用、このアイドルグループ『GMG(仮)』のイベント進行の手伝い。そして、欠損した歌詞の補填や補完。それらを行わねばならない。
 依頼人としてやってきた緋勇逸子は、事情と状況とを述べていた。
「商店街アイドル『ガール・ミーツ・ガール』……これはまだ仮名なのですが、彼女たちの活動を成功させたいのです。うちの聡子さんはスカポンな性格ですが……やるべきことは行う人なので」
 聡子の母親は故人。父親は今海外出張中。なので様々な事を聡子は代行していた。
「スポンサーの皆さんや、商店街の皆さんのため。なにより、サリーさん、小鳥さん、そして、いつみさんの頑張りを無駄にはしたくないです」
 君たちへと、逸子は懇願した。どうか今回のアイドル活動を、成功させてほしいと。

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リプレイ本文

 見舞。
 今回の依頼参加者とともに、渦中の人たちである「ガール・ミーツ・ガール(GMG)」の三人、火遊いつみ、大田鉢小鳥、サリー・フーバーもまた、馬場聡子の見舞いに赴いていたが。
「……あまり良い状況とは、言えないようですね」
 見舞いを提案した一人、城前 陸(jb8739)が見る限り、状況は芳しいものではなかった。
 医師が言うには、再び意識を失った、というのだ。念のため、現在は集中治療室に移されている。
 ただ、聡子はかなり体に「負担」と「疲労」とを蓄積していた。今回の事で、彼女は半ば無茶なスケジュールを強行していたのが、こうやって体に出てしまったらしい。
「……だ、大丈夫ですよ。ほら、あの聡子さんですよ? どうせすぐ『実は起きてました』とか言って……起き出して……きますよ……」秘書の緋勇逸子が場を和ませようとしたが、その試みは失敗した。
「……聡子さんには、色々とお世話になりました」鶯美 まろ(jb3838)が、静かに、しかし力強さを感じさせる声で言う。まるで、陰鬱とした空気を吹き飛ばさんとするかのように。
「だから、僕は……今度の皆さんと、このイベントを絶対に成功させたい……いや、成功させます! それが聡子さんに対して、僕らがすべき事! でしょう!?」
「ええ……そうですよね。私らがこんなに落ち込んでたら、成功するものもしません」指宿 瑠璃(jb5401)が、その言葉にうなずいた。
「まったくだ。落ち込んでる暇があったら、イベント成功させるために実行した方が、はるかにましってものだしな」稲葉 奈津(jb5860)もまた、深呼吸しつつ……気を引き締めるかのように、表情を変えた。
「僕は、彼女や君たちのことは良く知らない。けど……」エイルズレトラ マステリオ(ja2224)、今回初参加の少年が、落ち込んだ様子のいつみたちへと視線を向けつつ、言い放った。
「彼女が退院した時、笑顔になるような舞台を作らなきゃあならない。そのためには……アイドルの皆には、笑顔でいてくれなきゃあね」

 見舞後。
 逸子は、近くの食事処に予約を取っていた。
「…………」
 個室にて松花堂弁当を頼み……言葉少なに、皆は食事を口に運んでいた。
「……あ、小鳥さん。肉、あげますよ。お好きでしょ?」
「ありがとうございます。瑠璃さん優しいなあ、ほんと……どっかの誰かとは大違い」
「それって、誰の事よ」
「さあ? ヒスばっかの誰かかも〜」
「………!」
 バンッ!
「!?」
 いつみが、箸を卓上に叩き付ける。その音に、その場が騒然となった。
「……なによ。私だって、一生懸命……色々とやってるのに! いつもあなたたちは、莫迦にして!」
「……そっちこそ、偉そうに! 何様のつもりよ!」
「コトリ、ダメ!」
 そこで逸子が、何かを言おうとするが、奈津がそっと彼女の肩に手をやり……ともに席から立った。
「……悪い、いつみちゃん。ちょっと逸子さんと打ち合わせあったの思い出したから」そう言うと、奈津は逸子とともに隣の部屋に。二人を追い、睦もまた席を立った。
「……ごちそうさま。ちょっと腹ごなしに、そのあたりを走ってくるよ」
 エイルズレトラもまた、自分の分の食事を食べ終え、その場から消えた。
「家にメール……」
「僕も、電話しなきゃ」
 自身の携帯を手にしつつ、瑠璃と鶯美も部屋を出ていくと……。
 その場には、いつみ、小鳥、サリーの三人が残された。

「「……!」」「「………!」」
「……やっぱり、ケンカしてるわね」
 少女たち、ないしはその二人の声が聞こえてくる。
 その様子をふすま一枚ごしに、奈津は、他の皆は、その場で聞いていた。
「でも……こうやって互いに言いたい事を全部ぶちまけて、わだかまりのないようにしなくちゃ……」と、瑠璃。
 わざわざこうやって食堂の個室を予約したのも、それが目的。そして……こうやって当人同士で話し合いさせる事も、当初からの目的。
「……おや?」
 しかし、聞き耳を立てていた睦が、疑問の声をあげるとともに……。
 パンっと、頬をはたく音が、「二度」した。

 ふすまをそっと、わずかに開いたところ。そこに見えたのは……おそらく頬をはたかれた、いつみと小鳥の姿。そして、頬をはたいた人物は……サリー。
「Cut it out!(いい加減にして!) サトコは……今、死にそう! なのに、ケンカする時、違う!」
 サリーに言われ、二人はさすがに言葉を失っていた。
「サトコ、大事! なら、彼女の期待、応える! それより、ケンカの方、大事? Answer my question!(私の質問に答えなさいよ!)」
「……まあ、確かに不真面目なとこはあったわ。それは、認める」小鳥が、先に折れた。
「……私も、ちょっと考えが固すぎるとこがあったかもしれないわね。それはこっちも、認めるわ」それに続き、いつみも。
「なら、仲直り。できるわよね? 日本のコトワザの、雨降って……雨降って……えっと?」
「「地、固まる」」
 二人が同時に答えた。それを見ていた撃退士たちも、それに同意していた。
「……どうやら、こちらの問題は解決しそうですね」同意しつつ、鶯美は確信がこもった口調でつぶやいた。

 食事の後。
 その足で、逸子とともにレッスン場に向かった一同は、今日の分のダンスレッスンを開始。
 そんな事があり、そして、数日後。

「はーい、押さないでくださいねー。はいっ、風船どうぞ」
 イベント当日。商店街内の青空市場・広場にて。
 タキシードにカボチャマスク姿のエイルズレトラが、訪れた親子連れに風船を手渡す姿があった。
「はい、こちら商品です。ありがとうございましたー……はい、少々お待ちください」
 そして舞台裏では。
「……白菜、終わりましたー」
 鶯美が、直前に終わった『野菜の大きさ比べ大会』の、巨大野菜の片付けを行っていた。
「じゃ、次はジャガイモとカボチャをお願いします。それが終わったら、舞台の方をお願いしますね」
「はい! 任せて下さい!」
 裏方仕事は大変だが、表に出ている三人はもっと大変。鶯美はそう考えつつ、重いジャガイモの袋に取り掛かった。

 同じ頃、イベント会場の舞台上では。
「……はいっ、……えーと、というわけで第一位、カレー屋『にこまき』のスープカレーでした」
「いやー、『ご当地B級グルメベストテン』。どれもおいしそうでしたねー。サリーちゃんはどれが好き?」
「ナンバー2の『海鮮・花陽屋』の、海鮮オヤコドン! あんなにサーモンとイクラがいっぱいなの、見たことナイ!」 
 GMG……「ガール・ミーツ・ガール」のアイドル三人が、イベントの進行を手伝っていた。
「……うーん、思ったよりかはスムーズにやれてるわね。いつみさんはちょっと……いや、かなり危なっかしいけど」
 三人の様子を見て、瑠璃はちょっと不安を。
 ビジュアルは良い。大人っぽいいつみ、元気少女な小鳥、そして小さく金髪のサリー。髪形も、セミロング・ショート、ツインテールと、図ったように異なっている。
 後は、彼女たち次第。そしてその出番が、刻一刻と近づいてきていた。

「そろそろ出番よ。大丈夫?」
 奈津がいつみに声をかけるが、なかなか返答は来ない。
「だ、だひ……だい、じょうぶ……よ……たぶん……一人で舞台にたつなんて、大丈夫……よね?」
 ようやく帰ってきた返答は、まさに「ガクブル」を声で再現したかのよう。
 全ての準備が整い、皆の前に、主役として初めてその姿を現す。その数分前。
 舞台に続く楽屋裏にて、三人は緊張に固くなっていた。
「小鳥さんとサリーさんは、いかがですか?」
 睦に声をかけられた小鳥だが、
「だ、大丈夫ですよー。お、おつちいて……じゃあなくて、おちついてます……」
「………アイアムガイジン! ナットウモ、タベラレマスーノヨー」
 同じく緊張してるサリーは、緊張のあまりに高揚し、意味不明な言葉を発している。
 そんな彼女たちを見て、鶯美とエイルズレトラが舞台そでから外を見つつつぶやいた。
「それにしても……思ったより入ってますね」
「ま、三人とも美少女。そしてきれいでかわいいものは、誰もが好むからね。……そろそろ、時間じゃないかな?」
 エイルズレトラの言葉が終わり、アナウンスが。
『……それでは、次はアイドルコンサートです。商店街のために立ち上がった、三人の少女たち! 皆さん、拍手でお願いします。『ガール・ミーツ・ガール』!』
 パチパチパチと、拍手が鳴り響く。それにつれ、三人の緊張もピークに……。
 が、
 ぽんっと、三人の肩を叩く者が。
「一人だけじゃ……ううん、三人だけじゃ、ないですよ?」瑠璃が声をかけたのだ。
「え?」
「私たちも、バックダンサーとして一緒に立ってます。それに……商店街の皆さん、いつみさんのお母さん、何より……きっかけを作ってくれた、聡子さん。みんなで一緒に、この舞台に立つんです。だから……」
 みなさんは、みんなと一緒に立つんです。一人じゃ、ありません!
 瑠璃のその言葉。それが……いつみの、小鳥の、サリーの胸に。
 大きく、響いた。

「……皆さん、改めましてこんにちは。『ガール・ミーツ・ガール』。火遊いつみです」
「同じく、大田鉢小鳥です」
「ハァイ、ワタシは、サリー・フーバーです」
 拍手とともに、舞台に立った三人。いつみはマイクを通して、……最初はためらいがちに、そして徐々に強く、はっきりと言葉を放っていった。
「……今日のこの日、私たちの事を見てくれる女の子が、来てくれるはずでした。わけあって来られないんですが、その子に私たちは……伝えたい言葉があります」
「それは……『ありがとう』」
 いつみに続き、小鳥が、
「それから……『ワタシたちを、見てて』、です」
 そしてサリーが、締めくくった。
「……私たちを導いてくれた、大切なあの友達に、この歌を捧げます。聞いて下さい……『ガールズ・ブラストオフ』!」

 いつみさん、頑張って!
 瑠璃は数名のバックダンサーとともに、三人の後ろに広がった。
 彼女たちは、逸子が用意してくれたダンサー。そのうち一人は、逸子その人。
 音楽が鳴り響き、ダンサーが踊り出す。そして……歌が始まった。

いつみ「ただ空を見上げるだけ、虚ろだった昨日
    ただ夢を思うだけ、今日のこの時までは」

 いつみの歌声が響き、くるりと回って……小鳥とサリーとが前に出る。

小鳥 「勝ってみせるよ、諦めるココロに。夢という名の装備、その身にまとい」
サリー「キボウ燃料、注入・満タン! 皆が一緒なら、信じられるよ……」
三人 「……未来!」
 
 小鳥とサリーのソロパートとともに、三人が声を合わせる。

三人 「さぁ私たちの、乙女の戦争(たたかい)、はじめよう!」
いつみ「夢への発射台(ステージ)、ともに降り立って」

 自身のソロパートにて、いつみは大きく手を広げる。それに合わせ、瑠璃と逸子、バックダンサーたちは激しく踊り、広がった。

三人 「さぁ私たちの、夢のロケット、打ち上げよう!」
いつみ「明日への情熱、ともに爆発させて」

 いつみの動きとともにバックダンサーたちは、爆発し広がっていく煙のように周囲を踊り、舞う。

サリー「Countdownはもう完了」
小鳥 「全力発進、Girls go!」

 歌に合わせ、発射したロケットが、宇宙めがけて飛んでいくように……手を振り上げ……。

三人 「同じ夢目指せるのなら Can blast off together!」


 歌が終わり、そして……。
 会場には歓声と……拍手がわきあがった。

 いつみさん、できたじゃない!
 歌い終わって、歓声を受けた三人を見つつ……瑠璃は強い満足感を覚えていた。

 そしてそれは、舞台の周りで動いている皆も同じ。
 睦は彼女たち、「ガール・ミーツ・ガール」の様子をビデオで撮り、カメラでベストショットを写しつつ……そのパフォーマンスを見終えて、うなずいていた。
「素敵よ、いつみさん、皆さん!」
 思わず、いっぱい拍手を。MCをするように提案した自分の考えが予想以上にうまくいき、嬉しさもひとしお。そしてひとしきり拍手し終わった後……再び、動画と写真とを取り始めた。
 彼女たちの魅力、彼女たちの微笑みを……余すことなく保存しなきゃ!

「……うん、いい感じ! さ、次は……手拍子とコールで盛り上げるわよ!」
 奈津もまた、次の曲へと心を馳せた。今回、あくまでもイベントの一環という事なので、この歌を入れて三〜四曲だけ……と、決めていたが。
 彼女は見てみたくなった。彼女たちがちゃんと、コンサート会場でもっと多くの歌を歌い踊るところを。

「かっこいいね、皆さん」
 カボチャのマスク越しに、歓声に囲まれたGMGを見たエイルズレトラは、静かにうなずきつぶやいた。
「はい、すごく……すごく……」
 鶯美もまた、それに同意したかった。何か言葉を発したいが、それが出てこない。
「すごく……スゴイです!」
 二曲目を聞きながら、彼はようやくその言葉を絞り出した。


「はい、『ガール・ミーツ・ガール』のみなさんでした〜! それでは次に……」
 全てを歌い終え、舞台裏に戻ってきたGMGの三人。そしてバックダンサーたち。
「みなさん、お疲れ様〜。いつみさん、上手くやれてたわよ!」逸子が声をかける。
「そ、そう……?」
「ええ! 後ろで一緒に踊ってて、感動したわ!」
 本気で感動したとばかりに、瑠璃はいつみの手を取り、ぶんぶんと上下に振っていた。彼女は、GMGが振り付けや歌詞を忘れた時のために、フォローする事も考えていたのだが……結果としてそんな必要は、全く無かったのだ。
「……わたしも、感動しましたよ」
「……え?」
 いつみの耳に、声が聞こえた。
 声の主が、鶯美に手を取られ、いつみと、小鳥とサリーの前に歩み寄る。彼女は、右腕を三角巾で吊っていた。
「あ……あの……」
「サトコ……なの……?」
「はい、感動的な場面でわたし、参上! ……病院で寝てるのに飽きたもんだから、すっ飛んできました」
 実際のところは、目覚めたらすぐ、そのまま無理やり病院を抜け出してきたらしいが。
「逸子さん、瑠璃さん、奈津さん。鶯美さん、睦さん、それに……エイルズレトラさん。それから……」
 左手で、流れ落ちた涙を拭きつつ……GMGに向き直る。
「サリーさん、小鳥さん。なにより……いつみさん……」
 微笑みながら、聡子は言った。
「……ありがとう、ございます。みんな、最高です!」


「というわけで、今度はスクールアイドルしましょうよ!」
 数日後。学校の部室で聡子は新たな提案を。
「しません! ……商店街のアイドルで、いいじゃない……」
「……とか言いつつ、興味あるいつみ先輩でした」
「だからそういうナレーション入れないの小鳥さん! ……サリーさんも、ポーズ決めない!」
「うーん、スクールアイドルもイイと思うよ? 日本の制服、キュートだし」
 なぜか皆のやる気がアップしてるのを見て、それにどこか心躍るいつみであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・鶯美 まろ(jb3838)
 夢見る歌姫・指宿 瑠璃(jb5401)
重体: −
面白かった!:1人

奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
鶯美 まろ(jb3838)

大学部1年61組 男 ルインズブレイド
撃退士・
藤巻 雄三(jb4772)

大学部3年59組 男 鬼道忍軍
夢見る歌姫・
指宿 瑠璃(jb5401)

大学部3年195組 女 鬼道忍軍
力の在処、心の在処・
稲葉 奈津(jb5860)

卒業 女 ルインズブレイド
ガクエンジャー イエロー・
城前 陸(jb8739)

大学部2年315組 女 アストラルヴァンガード