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マスター:塩田多弾砲
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/08/08


みんなの思い出



オープニング

「どうしても、だめでしょうか?」
 馬場聡子は、穏やかに尋ねた。それに対し、火遊いつみはすげなく答えた。
「ダメ。ダメなものはダーメ! 絶対にダメだかんね!」
 生徒会の一員であるいつみは、ここ久遠ヶ原学園にて。部活関係の雑務、その一部を受け持っている。
「なぜですか? わたくしの申請する新たなクラブは、そんなにも認められないものなのでしょうか? 部活がダメならば、同好会でも構いませんが……」
「……そ、そんな下目使いでお願いしたって、ダメなものはダメだからね! ……だから、あざとく瞳をウルウルさせるんじゃあないわよ! ダメなものはダメ!」
「ちぇっ……それでは、仕方ありませんね」
「ちょっと、今『ちぇっ』とか言ったわね? ねえ、言ったでしょ!? 何目を背けてんのよ! ……っていうか、何よこれ」
「はい。見ての通り牛肉200gです。最高級A5ランクのロース肉、すき焼きに最適ですよ?」
「……学校の、それも生徒会室で何生肉を差し出してるのよ。っていうか、こんな肉を差し出してどういうつもり?」
「はい。お肉と言えば若人の大好物。その肉を以て賄賂とし、わたくしのクラブ設立に役立てようと思ったのですが。受け取ってはいただけないでしょうか?」
「……いただけません。っていうか、なんでアンタは学校に生肉なんか持ち込んでるわけ!? そのクーラーボックスは何!」
「これはお昼に、理科室のアルコールランプですき焼きしようと食材を持ち込んだだけですよ。このクーラーボックスは結構入るんで重宝してます。食材も腐らないですし。 ……ロース肉、お嫌いでしたか? カルビの方が良かったでしょうか」
「それ以前の問題だわよ! っていうか、女子高生が牛肉差し出して生徒会に賄賂って、何考えてんの!」
「賄賂にはなりませんか。以前に乗ったタクシーでは、運転手さんが運賃代わりに『いやはや』と言いつつ受け取ってくれたんですけどねえ」
「……とにかく、ダメなものはダメ。カルビもロースも要らないから、とっとと出ていきなさい」
「わかりました。では後日、ハラミとタンをお持ちします。……それともサーロインがお好みでしょうか、贅沢さんですね」
「どれも要らん! 叩き出されたいか蹴り出されたいか、どっちか選びなさい!」
「タタキですか。それでしたら牛より馬肉の方が」
 どごっという音とともに、聡子は生徒会室から蹴りだされた。

「……霞ヶ関先生、ちょっと相談してもよろしいでしょうか」
「おお、どうした火遊。眉間にしわ寄ってるぞ。レベルでいえば5くらいに」
「……さらにレベル上がりそうです。実は……」

「なるほど、馬場の奴が新クラブを設立したがってると。で、なんでダメなんだ?」
「……先生、先生は馬場さんのクラブ、許容できるんですか? だ、だって……いけませんよ! 高校生が、あんなものを使って……あんな……事を……するクラブ、なんて……」
「確かに、ちょっと問題かもしれん。だが……先生はいいと思うぞ? アレは大人になる前に覚えておいても損はないからな。確かに危険ではあるが……ちゃんとした知識と指導のもと、経験を積んでいく事は、悪い事じゃあない」
「でも! やっぱりダメです! 女子高生が……チェーンソーのクラブ設立するなんて!」

 事の次第は、こういう事。
 結構大きな精肉店及び精肉会社「テキサス」を経営する馬場家。そこの娘、聡子。彼女は新たなクラブを設立せんと、生徒会に申請したのだ。
 そのクラブ、その名も「チェーンソー同好部」。
 某スプラッターなホラー映画にて、登場した殺人鬼の得物がチェーンソー。その雄姿に一目ぼれした聡子は、「チェーンソーを用いて、丸太を彫刻する」という活動内容のクラブ設立を思い付き、実行しようとしたのだ。
 確かに、海外ではチェーンソーを用いて彫刻するアートはあるし、最近では日本でも結構認知度があるし、人気も上がっては来ている。
 とはいえ、チェーンソーなる機械は危険である事には変わりない。加えて、この馬場聡子なる女子高生は、かなりの変わり者。つーか変人と言っても過言ではない。
 火遊いつみは、彼女を中学の頃から知っている。が、その頃から色々と彼女の非常識さに振り回され、辟易する事も一度や二度ではない。
 昼食時に、校舎裏で勝手に焚火してバーベキューするなど序の口。家庭科室で肉の燻製作ったり、理科室の隅を占拠して干し肉や魚の開きを作るスペースにしてたり。自費で冷蔵庫を購入し学校に持ち込んでは、その中に肉を入れて保存し、毎日調理して喰っていた。
 クラスメイトにも、それらの肉を分け与えたりもしている。ちゃんと金を取ったうえで。
「毎度ありがとうございますー。お肉をお求めの際には、馬場精肉店をよろしくお願いしますー」
 しばらくそんな事が続くも、聡子が原因で肉料理の振舞いは終わってしまった。「飽きました」という聡子によって。

「……とまー、こういう事でなあ」
 貧相な茶菓子を出され、君たちは霞ヶ関を前にして彼女の話を聞いていた。
「正直、安全性という点からチェーンソーアートのクラブを認可する事はできん。ぶっちゃけ、学校側としても事故やら怪我やら起こったら、責任取りたくないしな」
 ぶっちゃけすぎな事を口にしつつ、彼女は今回の要件を述べた。
「で、馬場聡子は火遊いつみへと、こう提案してきた。『ならばチェーンソーアートで勝負してください。勝ったらクラブとして認めてもらいます。もしも負けたら……、すっぱり諦めます』とな。で、お前さんたちを呼んだわけだ。ちなみに、馬場が作ったチェーンソーアートは、これだな」
 タブレットに映し出された写真には、丸太から削り出された、みごとな彫刻が写っていた。
「家で作った作品だそうだ。廃棄された丸太へと、片っ端から切ったり削ったりでこれだけ作ったらしい。こっちはキタキツネ、こっちは熊、これはゆるキャラ。ま、美術部や、彫刻部と同じような事をするのは悪くはない。ないんだが……やはりチェーンソーは危ないからなあ」
 使用する丸太、およびチェーンソーは、馬場の方で用意をするとの事である。後必要なのは、火遊の代理としての参加者のみ。
「というわけで、チェーンソーアートでの対決。参加してはもらえんか?」


リプレイ本文

「テキサス〜、テキサス〜。お肉の『テキサス』を一つよろしく」
「……馬場さん、何をしてるのかしら」
「見ての通り、初対面の方もいらっしゃるので、ウチのお店の宣伝しとこうと思いまして。では、今回私に挑戦しやがって下さる皆さんの紹介をお願いします」
「……はぁ、まあいいわ。それじゃあこちらに」
 
「私は、天風 静流(ja0373)という。今日は君と戦う事になった。一つよろしくな」
「まあ、素敵な黒髪ですね。その髪のコンディションを保つためにも、ウチの製品のわかめスープもよろしくお願いします」
「……挨拶しつつ宣伝してんじゃあないわよ」

「ジェイニー・サックストン(ja3784)。チェーンソーでの彫刻はしたことはないですが、日曜大工で扱った事はあります。本日はよろしく」
「……ええと、何か不機嫌そうなお顔ですが、空腹なのでしょうか? そういう時には、手軽に食べられるウチのビーフジャーキーを……」
「だから、挨拶しつつ宣伝するなっつーの!」

「六道 鈴音(ja4192)! チェーンソーアートってよくわからないけど、なんだか血沸き肉躍る感じがするよ! 今日は負けないからね!」
「大丈夫です。既に審査員はウチの肉で買収してますから、こっちも負けません。お互いに正々堂々と、フェアに戦いましょう」
「買収しておきながら正々堂々って何なのよー!」

「カタリナ(ja5119)です。よろしくお願いします」
「おおっ、クールビューティーな美女発見……」
「断っとくけど、また挨拶しながら宣伝したらブン殴るわよ」
「……と、こんな怒りっぽい火遊さんがご迷惑をおかけしてますが、本日はよろしくです」
「誰が迷惑かけてんのよ!」

「俺は、田中 匡弘(ja6801)です。いやあ、お肉屋さんのお嬢さんですか。自分は肉大好きなんで、うっかりつられないように注意しなきゃですね。今日はひとつ、お手柔らかに」
「いえいえ、こちらこそ。ところでここに味付けジンギスカンの冷凍パックがあるのですが、これと引き換えに手心を……(後ろでいつみが無言で圧力)……などと思ってなんかいませんよ? 正々堂々とアフロ勝負しましょうね」
「アフロ勝負じゃあなくてチェーンソーアート勝負でしょうが!」

「私は天原 茜(ja8609)だよっ! きみとはいい勝負ができそう! お互いがんばろうねっ!」
「おおっ、きれいな碧眼の美少女。これは素敵な宣伝ができそう。あなたが勝ったら、ウチの店の宣伝をさせてあげます。逆にわたしが負けたら、ウチの店の宣伝をしてもらいます」
「挨拶すると見せかけて宣伝を頼むなーっ!」

 と、そんなこんなで試合が始まった。
 一つにつき、制限時間は一時間。お題は三つ。
 そして、馬場聡子はそれを全て一人で行うらしい。
「あれ? 馬場さんの仲間はどうしたのかな?」茜がたずねる。
「実は全員、妖精さんに連れていかれて行方不明なんです。かわいそうでしょう? 私が」
 後になって判明したが、今日来るはずだった仲間は、『肉で誘惑したものの、食べさせ過ぎて当日おなかを壊し欠席した』との事だった。
「……えーと、個性的だねー馬場さんって」
 その言葉を出すのに、若干の時間を要した茜であった。

「つーわけで、試合開始。レディー、ファイっ!」
 一番「クマ」の木彫り。それを受け持つのはジェイニーと鈴音。二人は今、作業服を着用していた。顔にはゴーグル、耳にはイヤーマフラー。両手には厚手の手袋。安全ズボンをはき、両足には鉄板が入った安全靴。
 そんな二人の前に用意された、ふた抱えほどの大きさの丸太。
「鈴音さん、がんばってー!」
 友人である茜からの声援をうけ、鈴音は支給されたチェーンソーのエンジンを……起動ワイヤーを引っ張った。ガソリンエンジンが起動し、チェーンソーの刃が回転し始める。凄まじい勢いで、刃が動く。
 鈴音はそれを持ち上げてみた。重い。女性用の軽めのものを用意したとの事だが、それでもガソリンエンジンが回す刃は、力強く動き、その勢いに飲まれそうになる。
「……っと、なんとか……いけるかなっ!?」
 十分に注意し、力を込めつつ……彼女は丸太へと向かった。
 ジェイニーは、既に器用に切り込みを入れ、削り、切り取り、刻みつける。扱いに慣れているだけあって、その動きには卒がない。
 すごいなあ。そう賛辞を送った後、彼女は集中した。
「……みえたっ! 丸太の中に、刻むべきものがっ! うおりゃああああーーーーっ!」
 
「……」
 隣で掘っていたジェイニーは、鈴音の作品制作中の音に対し、少しばかり不安を覚えていた。
「……なんで時折、『バキッ!』とか『ギャリギャリッ!』なんて音が混ざるのかしら」
 ちらっと見てみると、そこには彫刻相手に奮戦している鈴音の姿が。
「ぬおおおおっ!どりゃりゃりゃりゃーっ!ずわわわわーっ!」
 彼女の訳の分からん叫びとともに、チェーンソーの刃が丸太へ食い込み、木材をさらに奇々怪々なそれに。
「……ま、まあ。何事もなく進んでいるのならいいけど」
 それより自分の彫刻に集中集中。農家の作業の手伝いで、この手の電ノコの扱いはそれなりに経験している。脳内の設計図に沿い、丸太の外郭を切り落とし、そぎ落とし、削り、刻み……丸太を徐々に形あるものとして形作る。
 少なくとも、大きなトラブルは起こっていない。他の皆はどうだろうか。二番と三番を受け持った他の者たちの成功を、ジェイニーは祈っていた。

 二番「哺乳類以外の動物」。
 それを受け持つ二人は、静流と田中。特に田中は、アフロをもこもこさせつつ、注意深くチェーンソーで切り込みを入れていた。
 田中が掘るのは、玉乗りをするホワイトポーリッシュニワトリ……頭部に見事なアフロ状の冠羽を持つニワトリの像。そのおおまかな削り出しを見つつ、静流は前日に話し合った内容を思い起こしていた。
 全体のテーマは『サーカス』。終わって皆で並べた時、各自の作品を組み合わせて、サーカス団になるようにと、テーマを統一する。
それに従い、三つのお題に従い、各自で内容を決めて取り掛かる。
「……のはいいが。さすがにちょっと難しいかもなあ」
 静流が掘っているのは、「象」。それも「片手で逆立ちして、バランスを取ろうとしている象」の彫刻。
 あらかじめ、完成図を予想して何枚もデッサンを描いた。それを頭に叩き込み、集中し、彫り込んでいる。
 デザインはデフォルメし、あまり下を補足しすぎず、折れないように細心の注意を払うものの、それでもうまくいくとは限らない。大胆に、かつ慎重に。
 懸命に作品に打ち込み、できるだけの事を行おう。その心意気とともに、静流は唸るチェーンソーの刃を用い、削り出していた。

 三番「萌え萌えキュン」。
 このなかなかに難しいお題に挑むは、カタリナと茜。
「刃、OK。鈍ってないね。油はさしたし、回転具合もチェーンのゆるみもOK。……よっし! 確認完了! カタリナちゃん、そっちも大丈夫?」
 チェーンソーの確認を終え、いざ実演に入る直前。茜がカタリナに問うた。
「ええ。なんとかなりそうです」
 彼女の持つチェーンソーも、ガソリンエンジンで馬力があり、勢いよく刃が回る。その確認を取った後、二人は己が掘るべきものに取り掛かった。
 茜は、前日に決めていた。そしてそれに伴い、カタリナもまた決めていた。
「アカネも、六道さんも、お二人とも動物。こちらは萌え萌えキュンなのだから、もっと別のアプローチから攻めなければ。……よし、ビーナスならば萌える事間違いなし、縄文時代の萌え……」
 それを用いるのも面白い!
 図書館に入り、そこで資料を読み漁ったカタリナは、そこで決めたテーマに沿って作り始めた。

「はい、アウトー」
 しかし途中、いきなりやってきた聡子に、そんな事を言われるカタリナ。
「……な、なんですか」
「敵情視察。それより……細い棒の土台と、土偶の足裏に穴開けてそこに差し込むってのはルール違反ですよ?」
「え? な、何を……」
「何を、じゃあないですよ。最初にお伝えしたはずですが。『チェーンソー以外のあらゆる道具や機械は使用不可』だって。ねえ、火遊さん」
 と、隣のいつみに話をふる聡子。
「なにが『ねえ』よ。……ただ、ごめんなさい。カタリナさん。確かに彼女の言う通り、使えるのはチェーンソーのみです。チェーンソーで細い棒の土台を作るのはともかく、穴を開ける事はできますか? ノミも錐もドリルも使用は不可ですよ」
 そのままその場から退散させられた聡子ではあったが、ならばとカタリナは予定変更。
「しかたありませんね。……あっ、いきすぎ……あれ!?」
 が、チェーンソーが言うことをきかない。思ったように削れない。刻めない。
 とうとう、目前の彫刻は、萌えなどとは似ても似つかない前衛的な物体に。しかも全体的なバランスが、微妙どころじゃないくらいに悪い。
「『銀の楯』! これで手を防御しつつ、刃入れて……」
「あーっ! カタリナさん! だめですよ、ルール違反! チェーンソー以外使っちゃだめですってば!」
 茜の声にたしなめられ、カタリナは再び手を止めた。
「え? これもだめ、ですか?」
「だめですよー、っと再び敵情視察に登場。まあ、センスはおいといて、『チェーンソー以外の使用は不可』ってルールだけでも守ってくれないと、聡子涙が出ちゃう。女の子だモン」
 と、再びしゃしゃり出てきた聡子。
「……何か、勘違いしてたみたいですね。私」
「ま、まあ。カタリナさんにできる事をやりましょうよ」
 などと茜に慰められつつ、カタリナは時間をかけ、なんとか完成にこぎつけた。

「……審査は、私たちで行います。ますが……」
 火遊いつみは、自分の友人や知人数名を集め、審査せんとしていた。
 しかし、顔がひきつって仕方がない。
「……皆さんの、『サーカス』ってテーマに沿って、お題を作り、並べる事で完成させる、というアイデアは素晴らしいと思います。ますが……」
 肝心のそのお題が、できてるかどうか。それを見た限りでは……微妙どころの騒ぎではない。
「なんというか、サーカスというテーマに引っ張られすぎたようにも感じるんだな」
「とはいえ。一番目のお題の、クマは両者ともに良く出来てるでござるな」
「そうなんだな。馬場さんのクマもかわいいけど、六道さんの『一輪車に乗ったクマ』や、サックストンさんの『荒ぶるポーズのクマ』、なかなかいい感じなんだな」
「まあ、あえて言うなら、六道さんのはちと作りが荒いのが残念でござるが、それもまた味でござる。しかし、なんでアフロ?」
「謎なんだなー。着脱自在なのは、ギミック的に面白いんだな。とはいえ、馬場さんの基本中の基本なクマの木彫りも大したもんなんだな」
「これは、引き分けでござるなあ。甲乙つけがたいでござるよ」
 審査されている様子を見つつ、撃退士たちも作品の感想を述べ合っている。
「鈴音ちゃんのクマ、すっごくかわいいよ。……えーと、これ鮭咥えてるんだよね!?」
「え? ううん茜ちゃん。あれは鼻だよ」
「えっ……違うの?鼻?……あー、うん、そっか!見えないこともなくなくない!」
「ジェイニー君のも、なかなかかわいいね」
「ええ、静流さん。荒ぶるポーズっていうんでしょうか。見ててほっこりとしますね」
 カタリナに語り掛けられ、ジェイニーはちょっと照れるように会釈した。
「あ……どうも」

 とかなんとか言いつつ、二番目のお題の審査に。
「ふーむ……これは見事なんだな」
 静流の「片手で逆立ちする象」、田中の「玉乗りする鶏」。こちらもまた、ふたつともアフロ。
「……これら、初めてにしてはなかなか良いと思うでござるね」
「だな。正直……馬場さんの『大ムカデ』は、グロ過ぎて引くんだな」
「アフロ脱着が面白いでござるし、こちらは文句なく撃退士チームの勝利でござるよ」
「しかしアフロのおっさん。なんで変化の術使って紛れてるんだな?」
 なぜか、術を用いて自身も彫刻になって紛れてる田中の姿が。
 片手に玉乗り鶏を乗せて、びしっとポーズを取ってたので、とりあえずスルーしつつ審査なぞしたわけだが。
「アフロいいですよね、木像にしても見事な造形美ですね……!」
 術を解き、自分の作品のアフロ部分を愛でる田中であったが、聡子もなぜかそれに同伴していた。
「むむっ、確かにこれはスゴイス。木彫りでアフロのふわふわのもこもこ感をここまで再現するとは……おっちゃん、タダ者じゃあないですね」
 きらーんと、鋭く瞳を輝かせる聡子。
「ふっ、それよりも君! 作品を作るだけで満足するのは勿体無いですよ。調和こそ芸術の到達点! 一体になりましょう」
 などと、何か変な方向に誘う田中。
「ああん、新しい世界が開けそうな予感。聡子困っちゃう」
 で、それにまんざらでもなさそうな聡子。
「……あの二人は無視しましょう。で、三番目ですが……」
 これが一番の難問だと、いつみは予感し実感した。

「あのー、製作者のカタリナさんに伺いたいんだな。これは一体、何なんだな?」
「はい。題して『縄文のアフロディーテ』です」
「……土偶? いや、アフロしたナントカの塔みたいでござるが……というか、なぜ『萌え萌えキュン』というテーマで、これを作ったのでござるかな?」
「はい。土偶と言えば、縄文時代のビーナス。当時の萌えだったに違いありません。というか、萌えとはこういうものでしょう?」
 カタリナの問いに、その場の空気が色々な意味で停滞した。
「……前衛的な物体を以て、ドヤ顔で『これが萌え』とおっしゃる勘違いお嬢。ナイスな天然ボケキャラではありますね。うんうん」
「あんた、何気にヒドイ事言ってないかしら」
 とはいえ、いつみも聡子の言葉に同意しなくもなくもなくも無かったりした。
「……こちらの、天原さんの『アフロペンギン』はかわいいんだな。作りは荒いけど、初めてでここまで作るのは大したもんだと思うんだな」
「同意でござる。ただ……『かわいい動物』というテーマだったら文句なしに合格でござるが……お二人とも、『萌え萌えキュン』というテーマをイマイチ理解してない感があるでござるなあ」
「この勝負に関しては、馬場さんの『猫耳メイドさん』の勝利なんだな」

 結果。互いに一勝一敗一引き分け。
 後日、改めて再試合……にはならなかった。

「今日は、アフロ部新設の申請に来ました。あの田中さんに、アフロの素晴らしさを聞かされ、わたしの体(注:髪の毛)……開発されちゃいましてね。新たな悦びを、この体で知ってしまったんです」
「へ、変な言い方しないでよ! というか、チェーンソー同好会はどうしたのよ!」
「いろいろ大変なので却下。飽きたとも言いますが。というわけでアフロ部の許可を。なんなら試合しても良いですよ。これは賄賂のサーロインです。というわけでOKを一つ」
「するかばかーっ!」
 再び、聡子に翻弄されるいつみであった。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
闇に潜むもの・
ジェイニー・サックストン(ja3784)

大学部2年290組 女 バハムートテイマー
闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
聖槍を使いし者・
カタリナ(ja5119)

大学部7年95組 女 ディバインナイト
にっくにくにしてやんよ・
田中 匡弘(ja6801)

大学部9年193組 男 鬼道忍軍
撃退士・
天原 茜(ja8609)

大学部5年97組 女 ルインズブレイド