●選手紹介
晴れた日の午前中。
プロレス会場である広大な田んぼには水が張られており、参加者達を呑み込むべく今か今かと待っていた。
そして観客席にはカメラやビデオカメラを持ったお色気ポロリ目当ての男達がぎっしりとベンチに座っていた。
そんな中、参加者である撃退士達はローブで顔を隠しながら姿を現した。
きっとローブの中では揺れる乳、ムチムチなお尻が水着1枚で覆われているに違いない!
「さー、挑戦者の皆さん。顔を見せてください!」
司会者であろう女性と猫耳を生やした女性が解説席に座っていた。
彼女達の言葉に参加者達は一斉にローブを空へと投げた。
瞬間、カメラのフラッシュが光り輝いた! いざ行かん、桃源郷!! 乳・尻・太股!!!
しかし、現実は違った……何故ならこれは嘘の話である。
その男達の幻想をぶち殺すように司会者は言う。
「それでは、にゃんにゃんどろんこプロレスマッチョを開催させていただきます。なお、男性には女性参加者がマッチョでダンディーな男性に見えるようになっていますのでご了承下さい」
観客側からの壮大な悲鳴の中、どろんこマッチョプロレスは開催されるのだった。
25名の参加者達はまず初めに5つの田んぼに分かれて勝ち残りを決める。
そして勝ち残った5人はゲストを交えての6人で準決勝を始め、そこから3人で決勝戦を始めるのだ!
まずはAブロックを見てみよう。
どの田んぼも女性水着を着ているガチムチな男性が数多く見えるのはフィルターの影響だろう。
実際は可愛い女の子達が多いのだがこの光景は地獄だった。
「ゆるーく楽しませてもらおうかな」
白のホルターネックビキニを着たソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)が言う。あ、声は普通なんだ。
近くではスク水に膝パッドを付けた六道 鈴音(
ja4192)が柔軟体操を行う。
「やるからには、思いっきりぱぁーっとやるわよ!」
「……な、なぜこのようなことにぃ……?」
開催準備の手伝いに来ていた筈だった月乃宮 恋音(
jb1221)だったが、ある人物に温もりの残ったアレを差し出した後……気づけば参加者として立っていた。
ちなみに水着の準備をしていなかった恋音は運営から指定のワンピース水着を借りたのだが、胸のサイズは既製品の為か物凄くはち切れんばかりであった。
「よし、負けませんよ!」
意気込みを入れる奥戸 通(
jb3571)の服装は水着だけが恥かしかったのか半袖のパーカーと短パンと言うチョバムアーマー装備であった。
だがやはり男達の視点ではマッチョの男達だ。
そんな彼女達の隣では黒猫の着ぐるみを着たカーディス=キャットフィールド(
ja7927)が異様な佇まいで立っていた。
「頑張るのです! この中では私が一番まともなはずです!!」
女性陣には普通に水着姿で見えるのだが、男なカーディス君には女性がマッチョマンに見えてしまう悲しい悲劇。
次にBブロックを覗いてみよう。
「ん、瑞穂さん頑張ろうね。はい、これもお揃いで用意したよ♪」
「ど、どろんこプロレスって聞いていませんわぁー!?」
猫野・宮子(
ja0024)が白と黄色の紐のツーピース水着を着用し、猫耳尻尾を笑顔で桜井・L・瑞穂(
ja0027)へと差し出す。
一方水色と白の紐ビキニを纏う瑞穂は水着コンテストと思い込んでいたらしく、軽く頭を抱えている。
「楽しく身体を動かせる事が出来れば幸いよね」
指定ワンピース水着を着用した氷野宮 終夜(
jb4748)が身体を伸ばして柔軟体操を行う。
その隣ではセシル=ラシェイド(
jb1865)が何時もと違う終夜に戸惑いを見せている。
「もにゃ〜……終夜さんがムキムキなんです!?」
「眼じゃなくて、心で見るんた〜い! そうすれば見えるはずば〜い!!」
阿岳 恭司(
ja6451)が専用コスチュームに身を包み、円らな瞳を閉じてムキムキマッチョな女性達を心の目で何時もの姿に書き換えようと頑張るが見えているかは謎であった。
少し男性参加者が気の毒に思えてきたが、Cブロックを見てみよう。
「水着はヤだもんね」
露出が嫌なのかチャックで厳重に前を隠した古着のパーカーとホットパンツ姿の草薙 胡桃(
ja2617)が言う。
フィルターがかかっていなかったらきっとご飯何杯もいけそうな感じだったであろう。
その近くでは早くも田んぼに飛び込んだ九十九 遊紗(
ja1048)が泥だらけになりながら元気に動き回っていた。
やっぱりフィルターがかかっているからアレだが、掛かっていなかったらやっぱり小学生は最高だぜと言いたくなる愛らしさだ。
事実、それを見ながら緋野 慎(
ja8541)は混ざりたそうにうずうずしている。
「プロレスのルール知らないけど、どろんこプロレス楽しそうだ!」
……ってあれ? あの、緋野君にはフィルターが掛かっていないように見えるのですが……?
「あ、小学生は純粋なのでフィルターはかかっていませーん。無修正でーす♪」
チクショウ! 子供は純粋で残酷だ!!
そんな観客達の嘆きを聞きながら、ジェラルド&ブラックパレード(
ja9284)は泥んこを見ながらウキウキとする。
「童心に帰って……楽しそうだねぇ♪」
「世のため人のため! 今日も田植えをする忍者源一! お天道様の輝きを恐れぬならば、かかってこい! なので御座るよ!」
プロレスらしい大声を上げながら静馬 源一(
jb2368)が指を天に翳してポーズを取った。
純粋な心はエロスを感じないだろうと言うのか、エロスの目覚めを期待しているのか分からない司会者の思惑は今は無視してDブロックに視点を移してみよう。
「うんうん、2人とも似合ってる似合ってる」
クリフ・ロジャーズ(
jb2560)が満足そうに首を振りながら、猫の着ぐるみを着せられたアダム(
jb2614)とラウンドガールの格好をしたシエロ=ヴェルガ(
jb2679)を見る。
「クリフ……何この衣装……。私にぴったりな役って……、それに若干、胸回り苦しいんだけど……」
初めて着る服装だからか、ピチピチな胸周りを窮屈そうにしながらシエロはクリフに言う。(ただし男性は地獄)
隣ではアダムが勇ましそうにポーズを決める。
「ニンゲンはねこが好きなんだな……仕方あるまい、おれの勇姿を見せてやる!」
フィルター前はグラビアアイドル体型のぼいんぼいんのばいんばいん、身を包むワンピース水着は谷間が出来上がって取っても素敵なトライアングルが形成中!(ただしフィルター前)
そんな下妻ユーカリ(
ja0593)は元気良く歯を見せると目の前のエルレーン・バルハザード(
ja0889)へと手を差し出す。
「泥レスはアイドルの登竜門! ってことで、優勝目指して一気に駆け抜けさせてもらうよ!」
「ふんっ……むだなボインとか、私がみんなひきちぎってやるのッ!」
貧乳コンプレックスをこじらせた結果の憎悪に至り、貧乳神となったスク水姿のエルレーンはボインを引き千切りたい衝動を堪えながら、ユーカリと握手を交わす。
巨乳貧乳大戦争が行われそうな中、最後のEブロックへと視点を移す。
「こんなことで豊作になるなんて、人界はまだまだ興味深い事が多いな……けど参加したからには勝利を目指すよ」
蒸姫 ギア(
jb4049)がそう言うと用意していた何だか角が異様に硬く大きな牛の仮面を装着する。
あと微妙にアフロな髪が付いてるんですがその仮面……。
会場設営をしていたはず。なのに、気が付けば鴉乃宮 歌音(
ja0427)は選手として参加させられていた。
「何でこんな事になったんだ……」
スリットザックリのチャイナドレスを纏って彼は膝をつく。
その容姿は女性のようであり、女性限定のフィルターなので観客の男達からシャッターの嵐が切られていた。
「恥かしいですわ……これが本当にプロレスなのかしら」
白ビキニ姿の長谷川アレクサンドラみずほ(
jb4139)が恥かしそうにもじもじとする(フィルター適用中)
しかし恥かしがってはいられない。
「あまり見ると……こうですわ!」
自分を見ているであろう男達にシャドーボクシングでみずほは威嚇する。
その近くではシスティーナ・デュクレイア(
jb4976)が飾り気の無い白いワンピース水着を着用しているのだが、買ったのが2年前だったからか少しきつく感じられた。
「太ったわけでは無いと思うのですけど……?」
そう思っていたが、みずほの拳を見た瞬間、その戸惑いは一瞬にして隅に追い遣られた。
イキイキとした表情でシスティーナは親指と人差し指を立てて空に翳した。所謂シュートサインというものだ。
それに気づいたみずほは獰猛且つ優雅に微笑んだ。
そして、ステージの隅に隠れ人気の無い場所で袋井 雅人(
jb1469)はある物を握り締めていた。
「借りたとしても、いざ着けるとなると躊躇するな……」
手の温もりからなのか、元々の温もりが宿っているのか三角のアレはオーラを放っていた。
「もうそろそろ始まりますので、参加者の皆さんは試合会場に集まってくださーい」
「いけない、早く被らないと!」
司会者のアナウンスが鳴り響き、雅人は慌てながら恋音から借りたパンティを顔に被った。
直後、彼の精神に変化が起こった。
(な、何だ……この妙に張り付くようなフィット感は……!)
雅人は記憶喪失の為、両親は誰かは分からない。もしかしたら刑事とSM嬢との間に生まれたのかも知れない。
そんな妙な何かが雅人の心の中から沸々と湧き上がり始め、それが頂点に達した瞬間。
「フォォォォォォォ……! 気分はエクスタシィー!! クロスナウッ!」
叫びと共に彼は身に纏っていたジャージを脱ぐと、下着1枚でポーズを決めた。
「愛と笑いの変態戦士ラブコメ仮面ここに見参! ムッ! 戦いの匂いだ……!」
雅人が駆け出した直後、戦いのゴングを告げる鐘は鳴り響いた。
●一回戦 ※一部描写にフィルターがかかっております
試合が始まると共にAブロックではソフィアが通をラリアットで押し倒すと、即座に掴み場外へと押し飛ばした。
しかし、泥で力が込められなかったらしく状態へと押し飛ばされる事は無かった。
また一方で鈴音が恋音へとタックルを決め、押し倒すとそのまま関節技を行おうとする。
「うまく決まらないよぅ……う、泥が口に入った。ぺっぺっ!」
「ひゃ、……ひゃぁぁ……だ、ダメ……はみだしますですよぉ……!」
泥が水着と肌の間に入り、滑り易くなってしまっているのか恋音の胸が今にも弾けそうになってしまっている。
そして鈴音の方は泥で滑って上手く技が繰り出せない。
相手は胸が危険なので迂闊に立ち上がれないので一度立ち上がり、体勢を立て直そうと鈴音は立ち上がる。
「猫忍法、土遁の術!」
そこに乱入する様にカーディスが泥を巻き上げて鈴音へと組み付き、泥へと押し倒した。
衝撃が聞いているのか鈴音がクラクラと頭を揺らす。
とどめを刺そうとした所、ソフィアにより今度こそ場外へと吹き飛ばされた通の姿を確認し、カーディスは素早く立ち上がり場外になる事を構わずに飛び出した。
「カーディスさん、助かりましたー」
「いえいえ、どう致しまして。とりあえず、負けたことですし……泥団子でも作りますか?」
そうして2人は田んぼの淵に座ると、泥団子を作り始めた。
恋音を狙うべく、ソフィアは近づいて行く。
近づいてくる姿が悪魔の様に見えたのかガクガク震える。
軽く楽しむだけ楽しもうと思っていると、不意に足を掴まれる感触があった。
「えいっ! あなたも泥だらけになれっ」
泥に押し倒されたまま鈴音は匍匐前進を続け、ソフィアへと近づいていたらしい。
転ばせると、そのままソフィアに跨り……と思ったら、クルリと回転して逆の立場に変わり……と思ったら。
それを繰り返しながら、2人は転がっていく。そして気づくと……。
『あーっと、Aブロックの勝者が決まりましたー。月乃宮選手準決勝進出です!』
何時の間にやら田んぼから出て転がり続けている事に鈴音とソフィアは気づき、何時の間にか勝っていた恋音は眼を点にするのだった。
『序盤から大番狂わせなAブロックでしたが、Bブロックも白熱しております!』
「にゅふふ、魔法少女マジカルチカ出陣にゃ♪」
宮子が爽快に言いながら、他の選手達を撹乱する様にして水上をスムーズに歩いていく。
その近くでは瑞穂が高笑いをしている。
しかし、そんな2人を無視する様にして恭司、終夜、セシルは3人で睨み合っていた。
「さぁー! どっからでもかかってきんしゃーい!」
両手を広げてチャンコマンは腕を広げて2人を呼ぶ。
それに応える様にして、セシルが身体全体でタックルを放ち、終夜が倒れたチャンコマンの頭(?)に腕を回すと締め上げた!
「おぁー! いい攻撃たーい!」
頭の寸胴鍋が凹み始める中で2人の攻撃をチャンコマンは褒める。
頭の拘束を緩めると素早く腕へと移動し、腕ひしぎ十字固めを決める。
さらに反対側の腕をセシルが同じ技で決め、両腕が使えなくなる。
「ぬぉー! お、溺れるた〜い! こうなったら、ダブルチャンコラリアットた〜い!」
魅せる技として、力で2人を持ち上げるとそのままチャンコマンは両腕を広げてグルリと回り始めた。
軽く振り落とす動作のつもりだった。しかし、宮子が自分達の周囲を走り回っている事に気付いていなかったのだった。
「……うに? にゃっ!?」
結果……背後からのセシルと終夜込みのダブルラリアットが宮子に命中し、頭から田んぼへと突き刺さってしまった。
「す、すまんたーい! 猫野ちゃんしっかりするばーい!」
慌てながらチャンコマンが宮子を引っこ抜くと、急いで救護テントへと連れて行く為に走り出した。
「おーっほっほっほ♪ 目立つのは、わたくし――って、え?」
高笑いしている間に瑞穂の勝利は決まり、本人も目を点にしたのだった。
『えー……っと、またも棚ぼたラッキー的勝利方法となってしまいましたが、Cブロックは白熱している事でしょ――ってこれは何だーー!?』
視線がCブロックに移った瞬間、遊紗の小柄な体が源一を踏み台にし、宙を舞う慎に抱き付き、ジェラルドのレッグラリアットが空を切り泥に沈んだ。
一体何が起きたのか解らなかったが、撮影が行われていたビデオカメラがあったらしく映像が解説席上のテレビで流され始めた。
まず始めにカメラの前方から源一・慎・ジェラルドの3人が一直線に走ってくるのが見えた。
「ジェラ兄ちゃん、慎殿! フォーメーションJSAを仕掛けるで御座るよ!」
「……なにやってんの……?」
標的の胡桃は呆れながら彼らに告げる。しかし泥は男を子供に変える!
「先ずはこれを喰らうで御座るよ!」
源一がラリアットを仕掛ける。しかし、安直な攻撃に胡桃は簡単に横に動いて回避した。
しかし、次に来るのは慎の情け無用のタックルだ!
「くらえ! ローリングサンダーダイレクトアタック!」
不意打ちのタックルが命中し、胡桃の体は横から泥の中に突っ込んだ。
起き上がろうとしたら、ジェラルドに背中を踏みつけられ……胡桃は泥へと沈んだ。
「我らに死角なし!」
格好良くポーズを決めるが、後が怖そうだ。
そのままもう一度JSAを遊紗目掛けて放つ為に、一直線で駆け出した。
「あ、緋野君だ!」
「これを喰らうで御座――じ、自分を踏み台にしたで御座るぅ!? あふん!?」
源一の後ろに慎を見つけ、遊紗は弾丸の様に飛び出すと源一の顔を踏み台にし、高く飛ぶと一気に慎目掛けて落下した。
落下地点を狙おうとジェラルドがレッグラリアットを行った。しかし、予想以上に素早く空を切った。
結果、遊紗が慎を泥に押し倒すと共に宙を舞うジェラルドは泥に落ちて行く……あれ、一瞬何か泥中から蹴りが見えた様な気が。
「うわあ、そこはダメだって! ちょ、やめっ、あはは!」
「こしょこしょこしょー♪」
「あはは、ギブ、ギブッ!」
泥をバシャバシャさせながら、慎は笑い……最終的にギブアップした。
『小学生は正義! と言う事で、Cブロックの勝者も決定し一回戦も残り2ブロック。さあどんな戦いが繰り広げられているのでしょうか!』
司会者の歓声にDブロックへと視線が移る。
そこでは……シエロがラウンドガールの格好でフリップを掲げ、クリフが自ら場外に出たのかおやっさん風にアダムに声をかけていた。
(クリフ……! 後で覚えておきなさい……っ!)
そんなクリフにシエロが怨みの視線を突き刺す。後でハリセンの刑確定である。
「行け! 行くんだアダム!」
「よしっ、くらえひざかっく――ひぃっ!?」
景気良く、エルレーンにひざかっくんをアダムがかまそうとしたが、寸前に怯える様な声を上げて後ろへと引き下がった。
それもそのはずだった。2人の戦いに混ざろうとしたら絶対に……殺される!
「どうした、行くんだアダム!」
「無理、絶対に無理だ!」
若干泣き声でアダムはクリフの元へと逃げ出した。
こうして、Dブロック上にはユーカリとエルレーンの2人だけとなった。
「大ジャンプかーらーの、必殺コアラ殺法!」
巨大なコアラのオーラを放ちながらユーカリは高く跳び、エルレーンの背中目掛けて落下した。
そして、背後から首を締め上げ一気に気絶させ勝利を収める……はずだった。
しかしエルレーンは首を締め付けるユーカリの頭を掴み上げると、背負い投げの様にして泥へと叩き付けた。
物凄く怒りの表情に見えるが、きっと締め付けられた時に背中に自分には乏しい2つの弾力の感触があったのだろう。
「うおおおおッ、もげろおおおおッ!!」
「きゃああっ! や、やめてよぉー!」
地面に落ちたユーカリに跳びつくと共に、エルレーンはばいんばいんのおっぱいを掴みあげた。
両手から少しはみ出るばいんばいんにエルレーンの怒りは爆発した。
もみもみぐにぐに上上下下左右左右BAとユーカリの胸をエルレーンは揉んで抓って引っ張っていく。
それが痛いようでくすぐったいようで、何と言えばいいのか……そう、エルレーンが可哀想であった。
「へへんっ……ざまあーみろおー、なのッ!」
「うん、負けたよ……、後は頑張ってね……」
可哀想な者を見るような瞳でユーカリは敗北宣言し、エルレーンはVサインを作っていた。
『多少ずるっ子でしたが、勝ちは勝ち! と言う事で、最後のEブロックの勝者は誰になるでしょうか!!』
視線がEブロックに移った瞬間、みずほとシスティーナが拳を打ち付けていた。
弾かれた拳を軽く引き、直ぐに前に押し出すとみずほの拳はシスティーナの胸に減り込んだ。
対するシスティーナの拳は、みずほの頬に命中した。
「最ッ高に面白いですわ!」
「ええ、私もです。みずほさん!」
笑みを浮かべながら2人は互いの胸、腹、顔、頬を殴り合う。
そんな2人の姿はフィルターが掛かっていて、良い感じに見えた……ほんと、掛かってて良かったよフィルター。
殴り合い、汗と血が泥へと垂れ……2人は前のめりで倒れた。
一方、ギアが歌音に狙いを定めて、一直線に駆け出した。
「くらえ、破裏剣神酒茶ー!」
「うわ……っと、危ないじゃないか」
アフロ付きの角で相手を吹き飛ばし、回転したまま宙から地面にめり込ませると言う漫画で見た技をギアは行おうとしていた。
しかし歌音はチャイナドレスを翻し、ギアの両肩に手を置くと肩を軸に回転し、背後へと回った。
だが体勢が悪くなりギアの体は泥の中へと沈んだ。
……って、あれ此処に居るのは4人だけ……後1人居たような。
「あいたたた……って、ギッ、ギア恥かしくなんか無いんだからなっ! って、あれ……?」
転んだ時、自分の手に何か生暖かい感触がしたので倒れた女性のどちらかの胸に触れてしまったのだと思った。
だが違った。柔らかいが何と言うか弾力があまり無いのだ。
「それは、僕の、いなりです」
「え、う……うわぁ!?」
泥と一体化して、雅人ことラブコメ仮面が居たのだ。
その姿は何と言うか……。
「あ、新手の人界の土着呪術師!?」
「違います。さあ、大人しくしてもらいましょうか」
泥を滴らせながら、ラブコメ仮面がギアへと近づいて行く。
逃げたい思いを必死に堪えながら、ギアは再び技を繰り出す。
「う、うわぁ! 破裏剣神酒茶ー!」
一気に駆け出し、ラブコメ仮面を宙に飛ばした。
これで一安心……と思った瞬間、ギアの視界は黒く染まった。
何が起きたのかは歌音が見ていた。
ギアが吹き飛ばしたラブコメ仮面は回転をしながら泥へと真っ逆さまに落ちていこうとしていた。
しかし、彼は股間からサラシを取り出すとそれをパラシュートのようにして宙に浮き、ギアの頭をブリーフの中に閉じ込めたのだ。
「う、う……うわーーーっ!!」
某ホラー漫画家のタッチよろしくな驚愕の表情が歌音から洩れながら……あまりの変態っぷりに気絶してしまった。
こうして、準決勝に進む6人の戦士達は揃ったのであった。
●準決勝 ※やっぱり一部描写にフィルターがかかっております
『さぁー、一回戦が終わり準決勝が開始となります。此処で勝ち上がった選手を紹介しましょう!』
泥団子を作る者、使い終えた田んぼ上で泥遊びをする者達が居る中で司会者が紹介を始める。
ちなみに遊ぶ彼女達のフィルターは完全に取り払われて、美女ばかりが居るので当然観客の男達の視線は試合よりも遊ぶ彼女達(主に胸とか顔とか)に視線が言ってしまっていた。
『Aブロックからは偶然勝ち進んだ月乃宮選手、その豊満なまでの胸はだてに飾りじゃないぞ! そしてBブロックからは桜井選手、今回も高笑いをしている間に勝ち進むのか!?』
しかし、司会者は負けない! 頑張って紹介をするのだ。
『Cブロックからは天使の様なあどけない笑顔の奥には元気一杯のやんちゃパワーが秘められている九十九選手! Dブロックからは全ての貧乳代表、巨乳は敵だ皆殺しのバルハザード選手! そしてEブロックからは……え?』
固まったのは無理も無い、そこにはパンツを被った変態が長めのさらしをハイレグ水着のようにしてVの字で巻きつけているのだから……。
それは紛れもなく……。
『へ、変態選手です……というか警備員さーん!!』
「レスリングコスチュームにしたのですが、いけなかったでしょうか……おっと、見えそうだったのですね」
変な解釈に行ったらしく、ラブコメ仮面は肩の紐を引っ張ると股間部をきゅっとさせた。
何というか、それらを貸した本人が今にも卒倒しそうである。
「月乃宮さん、必ず貴方を守り通して見せますよ」
「……ひぃ、こっちに来ないでくださいよぉ……!」
恐怖にへたり込んでしまった恋音へと気にせずラブコメ仮面は近づいて行く。
股間がぐんぐん近づいてくる様子に耐え切れず、恋音は試合が始まる前に気を失ってしまった。
『あ!? あぁもう……仕方ない、準決勝開始でーす!』
半ばヤケクソ気味に司会者が叫ぶと共に鐘が鳴り響いた。
「おーっほっほっほ♪ 先手必勝ですわ!」
高笑いと共に瑞穂は駆け出し、遊紗へと攻撃を仕掛けようとする。
しかし、泥の中は滑る上に空気を噛むと足を捕まれたりする……結果。
「ふぐっ!?」
「お、お姉さん、大丈夫ですか? ……っぷ、泥だらけなのー♪」
目の前で大きく転んだ瑞穂へと遊紗が心配そうに声をかける。顔を上げた瑞穂が予想以上に泥まみれになっており、遊紗は面白そうに笑った。
しかも、めり込んだ泥には瑞穂の身体の跡が残っており、上の水着が張り付いていた。
「――って、え? きゃああぁっ!」
悲鳴を上げながら、瑞穂は場外へと飛び出し、更衣室へと逃げて行った。(フィルターが掛かっている為、ガチムチであるのが救いだろう)
フィルターが掛かってない遊紗は泥だらけながら目撃したモノを見ながらほわーっと驚いていた。
「すっごくおっきかったの……あ、待ってお姉さん、水着忘れてるのー!」
地面に張り付いた水着を取ると、遊紗は駆け出して場外へと出て行った。
こうして、あまり目立っていなかったエルレーンとラブコメ仮面の2人が決勝へと進出する事になった。
『はい、このまま決勝戦を行いたいと思います……っとついでに最後のスペシャルゲストを参戦させていただきますねー。はいどうぞー!』
「え、遊んでいいの? わーい★」
ゲスト席と書かれた壁をぶち破りながら、水着姿のウーネミリア(jz0114)が試合会場へと飛び出してきた。
数分後、恐怖の悲鳴が会場に響き渡った。
●最後は皆で鍋パーティー
「プロレスといったらチャンコ! 醤油に味噌に塩に豚骨にカレーにチゲにモツ鍋いっぱい作るばーい!」
大量の寸胴鍋を用意したチャンコマンは楽しそうに材料を放り込み、豪快なちゃんこ鍋を作り始めていく。
どうやら試合が全て終わり優勝者は決まったようだった。と言うか物凄く目立つような優勝者の席が用意されていた。
アンタがどろんこ(ぺたんこ)チャンピオン――そんな垂れ幕が書かれているが、どろんことチャンピオンの間に何者かがぺたんこと書き加えたようだ。
そして、チャンピオンとなったエルレーンはもう殺して……と言った風に真っ白に燃え尽きていた。
『って、あれー!? 決勝は!? 一体何がどうなってるんですかー!?』
何時の間にか終了していた事に司会者が冷静なツッコミを打ち放つ。
その瞬間、周囲の時が止まった……というより凍り付いた。
次第に彼らはガクガク震え始め、司会者も妙な寒気を感じ始めた。
「コメディで助かりました……そうじゃなかったら、私は生きてませんでした……うう、骨が、骨が……」
虚ろな瞳でカーディスは呟く。
ラブコメ仮面は去り、チャンコを物凄い勢いで食べていた雅人は器を地面に置くと、思い出したように股間を押さえ蹲った。
「巨乳死すべし、巨乳死すべし……なのッ!」
血涙を流しながら白いエルレーンが怨恨を込めて呟く。
『あ、はい……何が起きたのかは大体予想が付きました。決勝は放送できませんねこれは』
全てを察した司会者はそう言って哀れむ様に頷いた。
「何時までも辛気臭い空気はいかんた〜い! さあ、どんどん作るからおかわりをするば〜い!」
手を叩きながら、チャンコマンは沈んだ彼らを励ます。
歌音も杏仁豆腐をはじめ、点心にスナック菓子や飲み物を提供し、チャンコ以外も楽しませる。
「えへへ、緋野君美味しいね。遊紗、塩味のあっさりが好きだよ」
「うん。美味しいね、俺はカレーのスパイシーがいいね」
遊紗と慎が楽しそうにちゃんこを食べ、笑い合う。
その近くでソフィアがスナック菓子を一袋取ると、パリパリと食べていた。
「運動したから美味しいわね」
「うー、口の中にまだ泥が残ってます……」
隣では鈴音がぐったりしながら呟く。うがいをしても泥は上手く落ちないものである。
「パーカーの中が泥でぐちょぐちょ……でも、露出なんて出来ない」
そう胡桃が愚痴る……だがその表情は楽しんで疲れ切った表情だった。
近くではジェラルドが顔に濡れタオルを当て、気絶していた。何と言うか泥中からの一撃は予想以上に良い角度だったようだ。
源一は元気なのかチャンコを食べているが、小さな足跡が顔についていた。
「うむ、美味いで御座る!」
「ふう……いっぱい動いた後のチャンコは美味しいね」
「辛くてはふはふなの……はふ」
終夜とセシルが疲れた身体を癒す様にチャンコを食べているがその姿は何と言うか周りもチャンコを食べたいと言う気分にさせるようであった。
一方で怒っているシエロを宥め様とクリフが頑張っている姿が見えた。
「しーちゃん、そろそろ機嫌を直してくれよ」
「嫌よ。まだ20発しか殴打していないわ。あと80発ぐらいは叩かないと気がすまないもの」
そうシエロが言いながら、クリフを叩く。嫌なら直ぐに着替えればいいのだろうが、未だ渡された格好で居るのは察するべきなのだろうか……?
そしてアダムはアダムで負けた事にしょんぼりとしていた。
「べ、べつにくやしくないんだからな……」
とりあえず、休んだら彼らのテンションも治ってくれる事に期待しよう。
チャンコマンに近づこうとした通だったが、転び少し汚れてしまう。
そんな彼女にチャンコマンが出来立てほかほかの味噌チャンコを差し出した。
「熱いから火傷に気をつけるた〜い」
「ありがとーです。はふはふ……あつっ、けど……おいひーです」
ハフハフしながら通はチャンコの美味しさを堪能しながら笑顔を浮かべる。
そんな彼らから離れてシスティーナとみずほの2人は静かにお茶会を開いていた。
フィルターが消え去り、普通の少女の顔となっているが所々腫れて、青タンも出来ていた。
「ふふ、酷い顔になってしまいましたわね……でも最高に楽しかったですわ」
「ええ、私もです。機会があったら是非もう一度お願いしたいです」
そう言って2人は笑い合い、硬い握手を握り交わした。
チャンコも雑炊になり、美味しさを味わっているとやっと、どろんこぺたんこチャンピオンが自分を取り戻し息を吸った。
「……巨乳なんて、巨乳なんて滅んでしまえばいいのッ! 貧乳こそ全ての原点にあるものなのッ!!」
決勝のウーネミリアのおっぱいが物凄く怒りのトラウマとなってしまったのだろうか……?
ともあれ、こうしてどろんこプロレス大会は終了を迎えたのであった。
後日、優勝者のエルレーン宅に牛乳が送られ、準優勝の雅人宅にパンティが大量に送られてきたとかいないとか……。
真相は闇の中であった。