●10時
「合宿て言うから、スクミズ厳守だったらどうしよかと……っ」
桜色のワンピース水着の上に薄く透ける白いパレオを腰に巻き、何時もと違い髪を高く結い上げた逸宮 焔寿(
ja2900)はホッと一息を吐きながら、ビーチプールの入口に立つ。
歩く度に焔寿の足の隙間に暖かな砂が入りくすぐったく、急いで彼女はプールへと走り出した。
……と思ったら、すぐに後ろを向き元の場所に戻ってきた。
どうやら忘れ物をしていたようだ。大きなサメの浮きを。
「サーフィンやってみたかったんだぜ! 映画みたいにクールに決め、おわっ――さ、サメッ!? って、浮き輪か! 凄い顔してんな……」
「ほえ? サメさん可愛いですよー?」
サメを持って行こうとした所に、ボードを持った双城 燈真(
ja3216)が現れ、それに驚く。
しかし何で驚いたのか解らず、焔寿は首を傾げながらプールへと走り出した。
プールから人工的の波が起こり、本物の砂浜のような浅瀬で遊んだり、サーフボードに乗って楽しむ者、浮き輪に乗って波に漂う者、そんな様々な人達で溢れ返っていた。
「お、来た来た。それじゃあ早速……」
焔寿が乗ったサメが波に流され砂浜に着いた頃、紺色のハーフパンツの水着姿のグラルス・ガリアクルーズ(
ja0505)が腹這いに乗ったボードが波に揺れいていたが、何かに気づいた様に彼は手を使って奥に向かって泳ぎだした。
その近くでは、立ち上がろうとしてるが上手く立ち上がれずに……何度もプールの中へと落ちていく燈真が見えた。
「意外と難しいぜ! だがビッグウェーブに乗れば俺達は一つ上の次元に行けるんだ!」
そんな想いが通じたのか、表示板があるのかは解らないがプールの波でビッグウェーブが発生した。
ビッグウェーブに乗る為に、波を突き抜け前へと進んだグラルスはゆっくりと立ち上がった。
「こうなったらぶっつけ本番だ! 行くぜ燈真!」
同時に燈真も意気揚々と突っ込み、立ち上がる。
直後、ビッグウェーブが2人を飲み込んだ。
「――ィヤッホォォォウ!!」
が、グラルスは人工的に出来上がったビッグウェーブのリングを縫う様にして通り抜け、気持ち良さそうに叫んだ。
一方、初挑戦だった燈真のボードは波に流され、彼もボードと共に流されて行った。
「よし、腕は落ちてないな。これなら今年の夏も大丈夫そうだな、だけどもう一回……ん?」
そして、ビッグウェーブが収まると彼は再びボードに座るともう一度ビッグウェーブを待とうとしたが……。
誰も乗っていないボードが浮かんでいるのに気付いた。
良く見ると、燈真がその下で溺れて沈んでいるのが見えた。
「うわ、双城君。大丈夫かい!? 今助けるね」
驚き、グラルスは急いで彼を救助すると砂浜へと連れて行った。
だが、気絶した上に水を飲んでいると言う危険な状況だった為、止む終えないと思いながら彼は人工呼吸を行った。
一応サーフィンを嗜んでいるのだから、こういうやり方を知っていた事に感謝し息を吹き込むと咳き込むように燈真が口から水を吐き出した。
……が、男に人工呼吸をされたと知った途端。
「よくも俺のファーストキスを奪ったなーー!!」
と、叫び怒るのだった。
「おー波の出るプールだってー行ってみよー」
オレンジと黒のツートンカラーのフリルビキニの鬼燈 しきみ(
ja3040)が猫背でフラフラしながら中へと入って行った。
その後ろからは、ダークオリーブのビキニを着ているがあまりの絶壁ぶりに自分に涙した十八 九十七(
ja4233)が……黒のラッシュパーカーを着込んで歩いてきた。
それに続き、しきみが選定した黒のハイネックビキニに身を包んだギィネシアヌ(
ja5565)が2人を追い越してビーチに飛び出した。
「3人でプール行けるなんてな! わくわくして眠れなかったんだぜ!」
動きからも物凄く嬉しそうなのが判るくらいに……ギィネシアヌははしゃいでいた。
しかし、九十七は逆に落ち込んでいた。
(「しきみちゃんには……圧倒的敗北ですねぃ……」)
どうやら、しきみの胸と自分の胸を見比べていたようだ。
自分と比べて圧倒的なバスト……見た所、Eカップと見た。
そう思いながら、彼女はギィネシアヌへと視線を移した。
(「うん、ぎーちゃは同属。九十七ちゃんにも未来がある……!」)
軽く握り拳を作り、心に安堵を持たせながら彼女は再び歩き出した……が、ギィネシアヌはまだ高校一年生。おっきくなる可能性だってある。
それに気づいたら……九十七はきっと立ち直れないだろう。
3人は砂浜を歩き、膝がプールに浸かる程まで歩くと意気揚々と腕を組んだ。
「大波が来たら登頂しようと思うよー」
「フフフ……蛇の眷属の血が騒ぐぜ……」
自分が選んだ水着を着た2人を見ながら、しきみはホクホクと満足そうにしている。
そうとは気づかずにちょっと背伸びした風な外見の少女は傍から見たら厨二の様な台詞を言っているが事実なのでどうしようもない。
そう思っていると、願いが通じたのか3人へと大波が勢い良く近づいてきた。
そんなシリアス顔の2人に申し訳無さそうに九十七は、恥ずかしそうに言う。
「来たか……!」
「さー登るよー」
「……今更ですが、九十七ちゃん、所謂『浮けない』系でして……」
「え”ー!?」
ギィネシアヌが驚いた直後、大津波は3人を飲み込んだ。
「おーつっくんが沈んだー」
そう言って、しきみとギィネシアヌは沈んだ九十七を助ける為に潜った。
数分後、満足そうな顔をしているしきみ、嘘っぽい口笛を吹くギィネシアヌ、胸元を押さえ頬を染める九十七が居たが……追求しないで置こう。
「ニコちゃん……俺、泳げなくて……」
「おー? カズオミ泳げないだった……しかたないな?」
【米$】の女性陣が浅瀬で水遊びをしている中、それが大好きな加倉 一臣(
ja5823)があろう事か楽園を見る事無く、Nicolas huit(
ja2921)に頭を下げていた。
どうやら、女性陣<マイエンジェルニコラといった構図なのだろう。
「さぁ……手取り足取り腰取りキャッキャウフフと俺に教えるといい……!」
どういう未来予想図を描いているのかは判らないが、一臣は両手を広げながらニコラに近づく。
そんな彼に対し、サーフパンツにパーカーを羽織ったニコラはにっこりとしながら、持ってきた浮き輪を差し出した。
「これがあると大丈夫だ! 泳げないでも安心だな!」
「あふん、手厳しい!」
「?」
そんな2人の様子を見ていたカタリナ(
ja5119)は小首を傾げた。
女子達で楽しんで少し疲れた体を伸ばす為に、デニムのタンキニ姿の栗原 ひなこ(
ja3001)はビーチマットをプールに浮かべ寝そべっていた。
外から漏れる日差しが彼女を夢の世界へと誘い、それに抗えずひなこは身を委ね始めた。
だからだろう、ひなこが気づいた瞬間、自分の体はマットから落ち、視界を水が覆っていた。
瞬間、頭がパニックを起こしたのか、ひなこは暴れるように水中でもがいた。
それを見ていたのか、青色のサーフパンツの天上院 理人(
ja3053)が全力で走り出し、溺れる彼女の腕を掴み抱き上げた。
「ひな……! もう大丈夫だ、安心しろ」
「たすっ!? あ、あれ……? り、ひと……くん?」
息が出来る事、自分の背中を撫でる理人に気づくと……、ホッと息を撫で下ろした。
「理人くんありがと〜、はぁビックリしたぁ……危うく溺れるとこだったよ……」
「大事に至らなくて良かった……が、暫く休憩するといい」
軽く咳き込みながらお礼を言うひなこの体をお姫様抱っこで抱き上げると、理人は歩き出した。
そんな対応が慣れていなかったのか、ひなこは顔を林檎のように赤く染めて何も言えなかった。
「ごめんね、これも研究費用のため……今度ご馳走するから」
ひなこの珍しい表情を遠くから望遠レンズを取り付けたカメラで撮影しながら道明寺 詩愛(
ja3388)は呟く。
青いビキニにゼブラ柄のロングパレオを腰に巻いき、パレオには『超撮影係』とかかれた腕章が縫い止められていた。
撮影係と言う名の如く、色んなシーンの撮影を行っている。
カメラの中には遊んでいる者達の様々な表情やポーズが収められていた。
勿論、ひなこのお姫様抱っこも撮影済みで後日2人に送ろうと考えている。
(「胸が貧しい方には親近感……幼女はいろいろ危ないのでスルー……リア充がイチャついてる写真も需要ないからスルー……と」)
粗方ビーチプールを取り終えた詩愛は少し考えると……。
「よし、今度は流れるプールに向かいますか、なんたって合宿ですから、記録に残さないといけないですよね!」
そう言うと、彼女はパレオを揺らしてビーチプールを去った。
ちなみに彼女の友人がそれを聞いたら、きっと……ラーメン研究費の足しに写真を売り捌く事が理解できただろう。
周囲に南国の花や木が植えられ、ゆっくりとした流れに身を任せ水に乗って流れる事を楽しむ。
そんな流れるプールをピンク色のワンピース水着を着た小日向 向日葵(jz0063)は大きな浮き輪に乗って、流れに身を任せていた。
「おぉぉっ、早いー、目指せ世界記録……っ!」
向日葵のすぐ傍を凄い勢いで水着姿の氷月 はくあ(
ja0811)が流れていく。
どうやら一番流れの速い場所を見出したのだろう。
流れていくはくあを浮き輪の上で見ながら、向日葵はボーっとしていた。
そんな彼女に追いつくように浮き輪が一つ近づいてきた。
クリーム色のワンピース水着を着て、髪をお団子に纏めた桐村 灯子(
ja8321)が乗っていた。
「向日葵さん、良かったら一緒にお話しましょう」
「ええ、いいわよ。どんな話をしようかしら?」
向日葵が尋ねると、灯子は同じ部活に所属しているから聞きたかったのか、すぐに質問をしてきた。
「じゃあ、向日葵さんはどんなお菓子が好きなの?」
「そうね、私は……」
こうして、淡々と喋る2人は淡々としながらも話しに花を咲かせていた。
そんな時、2人の視界にハイビスカス柄の真っ赤なビキニを着た下妻ユーカリ(
ja0593)がプールサイドに立っているのが写った。
「泳げなーい。などとぶりっ子アピールする時代はもう終わった……これからの時代、女子の必須スキルは水上歩行しかないね。ってことで、向日葵ちゃん! 浮き輪を引かれなーい?」
と言って指を向日葵に向けた時、グラビアアイドルみたいな体型をしたユーカリの胸が揺れた。
アピールをしたいのか、彼女の手には紐が持たれていた。
「私も一緒にいいかしら?」
「どーんと来なさい!」
灯子が尋ねると、ユーカリは胸を張る。
「じゃあ、お願いするわ」
向日葵がそう言うと、2人に向け紐が渡され……掴んだ瞬間、暴走特急のように水上を走り出した。
ちなみに本人曰くお転婆マーメイドと呼んで差し支えないと言ってる。
凄い勢いでプールを疾走する中、浮き輪に乗ってゆったりしているアンネ・ベルセリウス(
ja8216)が見えた。
そして紐だけでコントロールを調整するには無理があったらしく……何かに激突して向日葵の浮き輪が転覆し、ユーカリは気づかずに疾走していった。
「わっ、ひひ、ひまわりさん! ……ご、ごめんなさいっ」
「平気よ、むしろ私が謝るべきだし。それより、大丈夫だったかしら?」
激突した何かは、はくあだったようで向日葵に対して必死に謝っていた。
謝るはくあを制して、向日葵が頭を下げるとはくあも困り果てる。
「は、はいっ平気ですっ、あ……あのっ、お詫びにアイスを奢りますっ」
「そう、じゃあ私もお詫びにアイスを奢るわ」
鸚鵡返しの様なその言葉に、はくあは笑うのだった。
ドームを回るように大型スライダーは設置され、大型の2人乗りの浮き輪に乗って楽しい悲鳴を上げていた。
「雫さん、楽しもうねっ」
「美佳さん、弾き飛ばされないように注意してくださいね」
思い切りはしゃぐ三神 美佳(
ja1395)とそれを心配する雫(
ja1894)、傍から見てるとまるで姉妹のようであった。
係員の呼び出しで、美佳が前に乗るとそれに続き雫が後ろに座った。
準備が出来た事を聞くと係員は合図を出し、浮き輪に乗った水色ボーダー柄水着とスクール水着の2人は滑走を開始した。
緩やかな坂を滑り降り徐々にスピードが上がり始めると、すぐにカーブが浮き輪を揺らし始める。
「コッ、コースから弾き出されるのでは〜!」
「きゃ〜、た、楽しいですぅ〜!」
普段出さないような悲鳴を上げる雫の前では、美佳が順応力を上げたのか楽しそうに手を広げている。
回転で更にスピードを上げたのか、凄い勢いで浮き輪は地上へと落ちていく。
「スピードが……おっ落ちます!」
雫が驚き悲鳴を上げるが、それは無いだろう。
そして、スライダーは出口へと辿り着くと水飛沫を上げ到着した。
「えへへぇ〜、楽しかったですぅ〜。雫さんも楽しかったですよね?」
「うっ、あ……あれは恐怖を演出する為の計算をされて作った施設で悲鳴を上げるのは、人として当然の事です」
「そうですかー、あ……雫さん大人ですぅ」
そう言い訳していたが……、目を輝かせる美佳に気づき下を見た。
雫の水着が捲れていた。……どうやら、最後の衝撃でこうなってしまったのだろう。
最初はキョトンとしていた雫だったが、すぐに顔を赤く染め……。
「うにゃ〜!」
絶叫した。
「凄い叫び声だし! お兄ちゃん、きっとこれは迫力満点なのだし〜っ」
元気良くミシェル・ギルバート(
ja0205)は、兄と呼ぶ癸乃 紫翠(
ja3832)に言う。
その実、親友に選んで貰ったブルーのフリルリボンビキニという初めての挑戦に内心ドキドキだったりした。
そんな彼女の心境を知ってか知らずか、紫翠は耳元で囁く。
「フリルとか可愛いな」
「――! は、早く乗るんだし!」
顔を真っ赤にしたミシェルは急いで浮き輪の前に乗ると、兄でありそれ以上の関係の様な瞳で優しく見つめながら紫翠は後ろへと座った。
そして浮き輪は疾走を開始し、後ろで爽快感を楽しむ紫翠の声を聞きながら、ミシェルの頭の中は先ほどの言葉で一杯だった。
(「か、可愛いなって言われたしっ! で、でも何時も制服だから新鮮って意味なのかな、それとも……それは無いけど」)
「ああもう、わからないしっ!」
手を空に向けた直後、浮き輪は出口に到着し水切りを行っている最中だったらしく、バランスを崩し2人はプールに転覆した。
溺れそうになるミシェルを抱き上げると、紫翠はやれやれと頭を掻く。
「大丈夫か? 調子に乗って手放したりするから……」
「っけふ。びっくりしたぁ……あ」
驚きながら水を吐き出すミシェルだったが、自分の手が紫翠の傷に触れている事に気づき、顔を曇らせる。
どうやら、気にしないようにしていた傷が気になり、どれだけの痛みだったかを想像してしまったらしい。
「……あの、大丈夫?」
「誘っておいて気にするな。楽しみに来たんだろ?」
昔の傷に大切にしている目の前の少女を悲しませたくないのか、紫翠は笑みを作りミシェルの頭をわしゃわしゃと撫でた。
その温かさに身を委ね、ミシェルは最愛の人への想いを再認識するとその想いを閉じ込める様に……抱き直した。
「えへへ、アタシが気にしてちゃ、ダメだね。お兄ちゃん、売店に行こうっ一杯食べるしーっ」
「俺の財布は今日も空になるな」
そうして2人はその場を後にした。
そんな熱々の2人を眺めていた七瀬 晃(
ja2627)は近くを歩いていた黄色のパーカーの上でも判るポニーテールのビッグバンに話しかけた。
「……何、ナンパ?」
「そうそう、ナンパナンパ。一緒にお茶しね? ……じゃねえよ! お互い一人なら遊ぼうぜって言う事だよ!」
神喰 朔桜(
ja2099)の放ったボケに乗り即座に晃はツッコミを入れた。
その反応を見てか、朔桜はクスッと笑うと笑顔を作った。
「なんてね。暇だし一緒に遊ぼっか」
「じゃあ、アレやろうぜアレ! 二人乗りだって、丁度良いからやってみようぜ」
「二人乗りかぁ。うん、良いよ」
そう言ってパーカーを近くのチェアに掛け、白ビキニのビッグバンを晒した朔桜は笑顔で歩き始めた。
前を歩く朔桜を見て、巨乳派の晃は見えないようにガッツポーズをした。
そして2人の番になり、浮き輪に乗ると浮き輪は発進した。
「いーええーい!」
前に座る晃は加速していくスピードを楽しみながら叫び声を上げる。
「っきゃー! 速いはやーいっ」
「ひょえっ!?」
滑り落ちるのを楽しみながら、朔桜は落とされない様に晃の背後から抱きしめ、スライダーを楽しむ。
だが抱きつかれた晃の頭の中は……背中に押し当てられる朔桜の押し付ける胸の柔らかさ、時折感じる息に頭がおっぱいに埋め尽くされていた。
「面白かったー! 朔桜さん、ジュースでもどうだ、奢るぜ?」
水飛沫を上げ、着水した浮き輪から晃は両手を伸ばし元気に笑うと売店を指差して朔桜を誘う。
そんな晃のませている姿に大人の笑みを浮かべ、朔桜は立ち上がる。
「ええ、それじゃあ貰おうかな、ふふっ」
「くっそー、胸がでかい余裕かよー。押し当ててきたりしてたのもさー」
ませている事は否定しないようで、愚痴を呟く。が、それを聞かれていたらしく。
顔を真っ赤に染めて、手に雷撃を纏わせ……晃を殴っていた。
「おおぅ、よく似合ってるよ朔良ちゃん。……ようやく僕にも春が来たのかも……!」
黒のサーフパンツ姿の土方 勇(
ja3751)が嬉しそうにその場で回るが、ポールに手を打ち涙目となる。
「全く。一人で浮かれているからよ? 少しは落ちつきなさいな」
そんな勇に軽く呆れながら、青ビキニに翠の透けたパレオを巻いた永月 朔良(
ja6945)が痛そうな手を撫でる。
軽く背を曲げた朔良の豊満な胸が勇の目の前で谷間を作り、ジャンプしそうになるが堪える。
そう思っていると、自分達の番が来たらしく係員が呼びかけられ、勇が浮き輪の前に乗ると。
「ほら、もっとくっつかないと危ないわよ?」
「ちょ、そ、そんなくっつかれたら……!?」
クスクスと笑いながら、朔良が後ろに座って抱き抱えるようにして胸を押し当てた。
先ほど見た谷間が自分の背中によって潰されている事に興奮しながら、悶々と下へと滑っていく。
(「か、勘違いしちゃダメだ、勘違いしちゃ……かんち――むにゅむにゅ」)
が、何度も柔らかな感触が当たり理性の糸がプッツンと切れた瞬間、勇は振り返った。
同時に出口のプールを水切るようにして、浮き輪が跳ね――勇の体は朔良へと突っ込んでいった。
「うぅ、一体何が……」
衝撃でくらくらする頭を動かし、地面に手を着こうと勇は動かす。
……柔らかい感触が両手に伝わってきた。
「あら、大胆ね」
地面がいきなり勇に話しかけてきた。……いや、これは地面ではなく。
クスクス笑う朔良だった、しかも勇の体勢は朔良を押し倒した上に胸を鷲掴みしていた。
それに気づいた瞬間、勇は鼻血を流し覆い被さるようにして気絶したのだった。
●12時
「ボンッ! キュッ! ボンッ! だけど好みは、ツンッ! キュンッ! ボンッ!」
奇妙な歌を歌いながら売店で買った焼きそばとコーラを持って若杉 英斗(
ja4230)は歩いていた。
どうやら体型の歌なのだろう。そんな歌を歌いながら手頃なテーブル席を見つけると英斗は座った。
そんな彼の視線の先を、黒ビキニにピンクのフリルが付いた水着を着た森浦 萌々佳(
ja0835)が椰子の実を2つ持って通り過ぎて行った。
「おっ! あの娘可愛い! 記録開始! むっ、あっちも!」
今度目をつけたのは萌々佳とは体型が反対のピンクのビキニを着た丁嵐 桜(
ja6549)だった。
桜が売店へと歩いていくと、すぐに店員に向けて色々注文を開始し始めテーブルへと座った。
「泳いだ後のゴハンっておいしいんですよねー!」
そう言いながら、テーブルに置かれていくカレー、ラーメンといった売店のメニューが置かれていき嬉々としながら食べ始めた。
ある意味凄いものを目撃した英斗は萌々佳に視線を戻すと衝撃的瞬間を目撃した。
なんと、履いていたサンダルのヒールが折れてしまい、寝そべっていたカタリナに向けて持っていた椰子の実の中身をぶちまけてしまったのだ。
「な、何ですか、この白いべとべと……」
「えへへ、ごめんね〜全身ミルク塗れだよ〜」
「うぅ、顔にまでかかってしまいました……」
白い液体(ココナッツミルク)を被った2人はべとべとになり、それを英斗は嬉しそうに眺めた。
「極楽だな!」
そう思っていると、プールサイドで座って読書をする可憐な白いパーカーを羽織った少女を見つけた。
その少女は時折プールから上がって来た者に対して、スポーツ飲料を差し出したり干しレモンのお菓子を差し出していた。
英斗の視線に気づいたのか、少女は立ち上がると彼へと歩き出し……パーカーを脱ぎ始めた。
が、脱いだ時点で気づいた、胸が無い事に……というか男だと言う事に。
「女物がよかった?」
悲痛に満ちた表情をする英斗に対し、鴉乃宮 歌音(
ja0427)は嘲笑った。
(「ああ……したい、物凄くしたい!」)
ジュウジュウと音を立てて、ソースのこげる匂いを立てる目の前の鉄板を星杜 焔(
ja5378)はジッと見つめる。
しかし見つめるだけでは収まらなかったのか、売店に近づくと店員に一言焔は言った。
「すみません、私に調理を交代させてもらえませんか?」
そう言うと、店員は勿論NOと言ったが何度もお願いすると根負けしたのか1回だけと言う約束で焔に調理を許可した。
すると焔はグレーのパーカーを脱ぎエプロンを掛け、調理を開始した。
結果、1回だけと言っていた店員は喜んで焔に調理を譲り、椅子に座って休憩を開始した。
楽しそうに調理する中、焔の視界に一臣が理人の林檎ジュースを飲んでいるのが見えた。
「ちと甘いな、やっぱアイスコーヒーがいいな」
「な……人の物を勝手に飲んだ挙句、文句まで言うとは見下げた奴め」
「これだからカズオミは……」
「もしかして……」
そんな2人のやり取りを、軽食を買いに来ていたココナッツ臭のするカタリナが見ていたのか呟く。
なにが「もしかして」かは聞かないでおこう……。
●14時
足がつかない底が深いプールに浮かびながら、緑主体のカラフルビキニを着た与那覇 アリサ(
ja0057)は息を吸い込むと底に向かって浸水を開始した。
アリサの視界に同じ様に潜る灰色のトランクスと雀色のビキニが見えたが、きっと影野 恭弥(
ja0018)と雀原 麦子(
ja1553)だろう。
「お、この辺なら少しはゆっくり出来んだろ」
静まり返った深海プールへと赤いサーフパンツに黒のロングスリーフを着た佐藤 としお(
ja2489)がボードを浮かべ、寝そべるとプールの中央へと移動させた。
「さぁて昼寝昼寝っと……」
そう言うと、すぐにとしおは眠りの世界へと落ちていった。
ある程度潜っていくと水温が低くなって来ているのか冷たさを感じ始め、体を締め付ける圧迫感が感じられ始めた。
そんな水中にコポリと水泡が出来、空に向かって上がっていった。誰かの口から漏れた酸素だろう。
恭弥がゴーグルで壁を見ると、水深20と書かれた文字が見えた。あと少しで底に着くだろう。
重くなった脚を動かし、徐々に底へ向かうと……3人の動きに反応するように砂が舞った。
(「なるほど、深海と名付けるくらいだから、砂が底にあるだけか……」)
少し落胆しながら恭弥が周囲を見ると、周囲の壁がガラスである事に気づいた。
そのガラスの奥には美しい珊瑚礁に綺麗な魚が泳いでいた。
それを見て、落胆していた恭弥だったが少し興味が戻され……軽く底の砂を払ってみると、丸いガラス壁があり覗いてみると漆黒の中に泳ぐ1匹の輝く魚が見えた。
深海魚の一種であるそれを見て、深海と名付けた意味を理解すると水面まで移動しようと……した所で、恭弥の肩が叩かれた。
振り向くと、髪を振り乱した水死体が居た……じゃなくて、麦子がからかう為に行っていたようだ。
(「なんだ、麦子か……怖いぞそれは」)
口の中で呟いていると、砂にギリギリ付く所で浮き瞑想していたアリサが2人の肩を叩くと、手信号で上がる事を告げる。
どうやらダイバーのライセンスを持っている彼女だから、2人の残り酸素と戻る時間の限界に気づいたのだろう。
頷くと、3人は焦らずゆっくりと上に上がり始め、15メートル当たりで一旦止まると再びゆっくりと上り始めた。
「ぷはぁ。あー、綺麗だったわー」
水面から顔を出し、麦子は感想を口にする。
恭弥も浮かび上がろうとしたが、何故か浮いていたボードに頭をぶつけ、誰かの忘れ物かと少し苛立ちながら蹴り飛ばすと顔を水面に出した。
その時、何か赤いサーフパンツが沈んでいくのが見えたがきっと気のせいだろう。
「少しは興味深かったと言わせてもらおうか?」
「水と一つになった感じがして楽しかったさー♪」
最後にアリサが顔を出すと、3人はプールから上がった。
「ねえ、アリサちゃん。売店でも行かない? 私お酒が飲みたくって」
「いいぞ♪ じゃあ、俺も売店メニュー制覇をするさー♪」
「俺もジュースでも飲むか」
そうして3人は深海プールから離れていき、プールからは水泡が一度だけ上がるのだった。
それから暫くして、ソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)が数度目かの挑戦を挑む為に深海プールを訪れた。
白のホルターネックビキニに包まれた小麦色の胸を揺らし、準備体操を終え水の中に入るとゴーグルをかけた。
「今度こそ最後まで潜ってみようかな、何があるのか楽しみだね」
そう言って彼女は水底へと潜って行った。
その時きっと彼女は見つけるだろう、綺麗な珊瑚礁や深海魚の入った水槽と……ぐったりしたとしおを。
「楽しい楽しい合宿ー♪ この日の為に新しい水着買っちゃったよ」
天空プールにエレベータが到着すると、我先にと淡いライム色のビキニを着た神喰 茜(
ja0200)が飛び込んだ。
水飛沫を上げ、茜プールに落ち水に浮かびながら360度の天空を味わった。
「高すぎてちょっと怖くなっちゃいそうだね」
そう呟きながら茜は楽しそうにプールと天空の境界線へと泳ぎだした。
そして天空プールにはもう一つ楽しみがあった。
それは、天空プールから流れる水路のように作られた巨大かつ急斜面のスライダー『堕天』だった。
……勿論、天空プールの人が流されないように柵が設けられ、隔たれている。
そんな柵を飛び越え、字見 与一(
ja6541)は堕天へと直行すると、流れるようにして滑り落ちていった。
「ひゃぁぁっはー!」
普段は押し隠している与一の性格が前面に押し出され、徐々に加速し叫ぶのもままならない状況にありながらも与一は歓喜の叫びを上げる。
隣のレーンでも楽しそうな、うふふと言う笑い声が聞こえるが眼鏡が無くて良く見えない。
そんな時、堕天は地上へと辿り着き、衝撃で与一の小柄な体が投げ出されお尻で水面を跳ねていった。
「ふっはー! 楽んのしー、もういっか――」
興奮も冷めぬ間にもう一度と思い与一は歩き出すが、隣のレーンの相手が水を切っていた最中だったのか正面衝突をしてしまった。
2人は揉まれる様にして水中に溺れ、与一は見るのだった。
自分の顔にぶつかっているのが、蒼波セツナ(
ja1159)のFカップを包む黒ビキニだと言う事を。
少年の見た目だが実年齢がアレな為に……与一は奇声を上げた。
そして自分の状況に気づいたセツナは……ほくそ笑んだ。
地上でそんな事が起きているのを知らない戸次 隆道(
ja0550)は拳を握りしめる。
「恐怖、それに打ち勝たなければ……乗り越えてみせる!」
そんな隆道を微妙な表情で係員はレーンに通す。
そして、何度目かの挑戦が始まった。既に前回の堕天で光が見えた、流れる水滴が見えた。
一気に来る風圧を避けるために、隆道はレーンに体を埋め目を閉じる。
超スピードが隆道を一気に落とし、体が浮き上がった瞬間……目を見開いた。
「見えた!」
叫び、隆道は沈むのだった……。
「傍から見ていると、星になりそうな勢いだな……これは」
黒いビキニにパレオを巻いた姿の天風 静流(
ja0373)は、落ちていく堕天者達を見ながら圧巻と呟く。
「それに、安全性を疑う感じもするが……そこはスルーしておこう。敢えて詮索する事も無いだろうし
そんな時、セツナが歩いているのが見え静流はジッと見る。
どうやら久遠ヶ原に来る前に水着姿が高校生に見えないと言われた事が少しトラウマになっているのだろう。
モデルみたいな体型をしているが大人っぽい高校生に見えるのだが言わないでおこう。
「あぁ……ぼ、僕にはまだ早かったんだ……」
キッズプールの中央で浮かびながら如月 統真(
ja7484)はグスグスと泣きながら落ち込んでいた。
どうやら、堕天が怖すぎて心身が疲れてしまったのだろう。
トランクスタイプの水着でなかったら少女と疑ってしまっただろう。
「うううっ。頑張らないと、もっともっと頑張らないと……!」
そう言って、彼は強くなる事を決意するのだった。
「レインさん、手つないでも、いいですか?」
「手、放さないから大丈夫。しっかり捕まえておくからね」
紫ノ宮莉音(
ja6473)のお願いに、レイン・レワール(
ja5355)が微笑んで手を繋ぐと天空プールを泳ぐ。
どうやら、高い所が怖いのだろう。それに気づいているのかレインはお姉さん、じゃなかったお兄さんの貫禄で手を繋いで遊んでいた。
ちなみに時折、【米$】の仲間達の叫び声が堕天から聞こえていて振り向くと萌々佳が蹴り飛ばして堕天へと落としていた。
だが、その萌々佳も何者かの手によって堕天へと落とされてしまった。
下を除くと、ひなこが理人の上に落下しているのが見えた。
彼の本体は行方不明だからきっと大丈夫だろう。
戦々恐々するレインの足を掴んだ一臣に気づくと……もう遅かった。
「レッツ堕天☆」
「お前は何時も何時もっ!」
頭から落下していくレインの視界は急速に変化していき、恐怖が全身を襲う。
レインの声にならない悲鳴が上がり、シャッター音を聞いた。
恐る恐る自分の後ろを見ると……麻生 遊夜(
ja1838)が防水カメラを持って撮影を行っていた。
どうやら一臣に落とされた所から逐一撮影を行い、同行していたようだ。
「――って、何を撮ってるだ、遊夜くん!」
「シッカリキッチリ撮ってるから、安心すると良い」
「安心出来るかー!」
叫びながら2人は落下した。
「気絶しそうなほど良かったかい?」
落ちた彼らを見ながら一臣は笑みを浮かべた……が、残る莉音の手によって落とされた。
ちなみにその時、フェリーナ・シーグラム(
ja6845)の白地の競泳水着の胸元を掴んで道連れにした。
「ふえぇぇぇぇーっ!?」
落ちていく2人を見ながら莉音も堕天に乗り、滑り落ちていく。
でかい水飛沫を上げ、3人は地上へと落ちていく。
「こわかったー♪」
そう言いながら凄く楽しそうに莉音は笑い、一臣は落下した際フェリーナの足を顔面に喰らい……深海プールへと吹き飛ばされていった。
「酷いですよいきなり落とすなんて……ってぎゃー!?」
そして、吹き飛ばされた時に競泳水着が千切れたフェリーナは……自称残念系のボディを周囲に晒す事となってしまった。
「綺麗だねぃ〜♪」
空に浮いてる気分を楽しみながら水色のフリルビキニの鳳 優希(
ja3762)が両手を広げ天空プールを漂う。
その水中では鳳 静矢(
ja3856)が地上の景色を眺め楽しんでいた。
(「ん〜、絶景だねぇ」)
(「素敵……空を泳いでいるみたい……」)
その近くでは黒ビキニを着た氷雨 静(
ja4221)が素潜りをし景観を楽しんでいた。
そんな中、釣り糸が見え……白パレオに釣り針が引っかかると一気に引っ張られた。
「よーっし、フィッーシュ」
「ひゃ!? 日谷さん、何してるんですか!」
「何って、リリースだが?」
釣り上げた静をプールサイドに引き寄せながら、日谷 月彦(
ja5877)はリリースする為にプールから投げようと……係員に怒られた。
その近くでは東城 夜刀彦(
ja6047)が水に入り、おっかなびっくりする義姉のエミーリア・ヴァルツァー(
ja6869)に手を伸ばす。
「お……泳げませんの……」
「怖がらなくても大丈夫だよ、俺や皆がいるから」
夜刀彦が伸ばした手に恐る恐る触れ、白地に青石をあしらったモノキニの水着を水に濡らしながらエミーリアはプールへと入っていく。
泳げない上に天空という状況に震える義姉に子供の頃と立場が逆になっている事を考えながら、彼は義姉を手助けするのだった。
【ハム班】が天空プールを楽しんでいると、眺めを楽しんだ静矢が優希と静と夜刀彦を呼び出した。
「なになにー、静矢さんー?」
「優希、ちょっと私の前に立って」
「え、なにー?」
静矢のお願いに優希は立つと……堕天の入口だった。
行ってらっしゃいと言う一言も無く、静矢は優希を押すと強制堕天させた。
「わああああああああ」
「え、えぇっ!? し、静矢先輩何してるんですか!?」
落ちていった優希をエミーリアと2人で覗き込み、驚きながら夜刀彦は問い詰めた。
「あ、肩にゴミが……てりゃ!」
「ちょ……」
「ひ、彦っ!」
突き落とされた夜刀彦に反射的に抱きつきエミーリアも共に堕天し落ちていく。
「ぇえええ!?」
「きゃあああ!?」
浮き輪が脱げ、2人は抱き合うようにして地上に落ちていった。
「やっぱり私やめときま……」
「さぁ、女は度胸と言うし……」
「ちょっ、待っ、きゃあぁー!」
逃げようとする静を問答無用で静矢は落とした。
そして、落とされた4人は地上で燃え尽きていた。
静は気絶し、プールに浮かび。エミーリアは頬を染め若干嬉しそうな表情で気絶し、彼女に抱きつかれた夜刀彦は周りの心配をしていた。
「顔が痛い痛いのー。氷雨さんが気絶してる、とーじょーさんまで強制堕天すかーっ」
「優希先輩、顔赤くなって……氷雨さんーっ!?」
そんな地上の様子を静矢は笑いながら見ていた。
だが、そんな彼にも天罰は下るものだ……。
「よし、お前も落ちてみるか静矢」
「うおっ! 日谷、計ったなーぁー……」
静矢の体を持ち上げ、月彦は思い切り堕天へと投げ落とした。
静矢の悲鳴はエコーを残しながら、車輪のように胴体は回転し……宙を舞った。
「あー、日谷さん……ぐっじょぶ」
優希と夜刀彦のサムズアップを見ながら、係員に2度目の注意を受けた月彦も堕天を滑り……猛スピードで滑り落ちると……静の上に乗った。
立場が逆だったらラブコメだったりするが、これは……ギャグだった。
●17時
日が傾き、彼らの合宿はそろそろ終わりを向かえ更衣室へと向かう者、もう一泳ぎする者とに別れていた。
その中には売店メニューを制覇しようとする少女、ペアストローで仲良く南国風ソーダを肩をくっ付けながら飲む夫婦、堕天に最後の挑戦に挑む漢、アイスを食べていた時に約束したスライダーを共に滑る少女2人、ここそとばかりに思い出を残す為に撮影を続ける超撮影係も居たりした。
女性更衣室では冷えた体を温める為に女性達がシャワーを使用中、そんな中シャワーを浴びながら静は思う。
(「どうしよう……凄く楽しい、でも私なんかがこんなに幸せでいいのかしら……。皆さん、とても良い人……でも私はそれを騙してる。『私』を知られたら、どうなるんだろう……怖い、凄く怖い……」)
作られた仮面を外し自身を晒したい想い、外した自分を誰も見られない恐怖、そんな思いが静の心を渦巻き、冷える体を抱き締める。
(「だったら、今はまだ……このままで」)
そして、静はシャワーを止めた。
「やっぱりあの3人はソッチの人だったんですね……」
呟きながらカタリナは堕天から落ちた際に見た重なり合う3人を思い出す。
一方、男性更衣室でもあの3人への交友関係を考えるべきかと焔は考えていたりした。
そうとも知らず、当の3人は着替えながら和気藹々と笑っていた。
「どうかしら皆。楽しんだ?」
着替え終え、プール施設の出口に立っていた向日葵がそう言う。
「食べ物も結構美味しかったし、合宿って最高だったなぁ」
感慨深く茜が言うと、周りの仲間達も思い思いに語っていく。
「楽しかったです!」
「パフェも美味しかったです」
明るく静が手を広げる。釣られて焔寿も手を上げて観想を言う。
そんな中、詩愛がカメラを掲げた。
「あ、そうだ。皆さん、今日の記念に写真とかどうでしょうか?」
「いいわね。皆はどうかしら?」
詩愛の提案に向日葵は頷き、周りに問い掛けると賛同したのか彼らは並び始めた。
三脚を立て、詩愛は仲の良い相手が並ぶように、同時に高さを調整するように指示を出し並ばせていった。
「それじゃあ、行きますねー」
そう言ってタイマーをセットすると自分も写真に写るために走り出した。
「はい、イチ足すイチは?」
「「にーっ!」」
そして、詩愛が並び周囲がポーズを取った瞬間――シャッターは切られた。
……こうして、彼らのプールでの合宿は幕を閉じた。
何時かまたこんな日の様なことが出来る事を夢見て……。
(2012年5月24日 大幅改定)