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マスター:嶋本圭太郎
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/14


みんなの思い出



オープニング


 春。雪が融け、柔らかな風が吹き、暖かな日差しが降り注ぐ、春。
 テレビニュースでは、気象情報と共に桜前線の様子が連日伝えられている。例年、関東平野でソメイヨシノが見頃になるのは3月末から4月初め頃だが、ここ久遠ヶ原学園内でも、敷地内の桜が薄桃色の花を付け始めていた。

「よーし、プリントを配るぞー」
 今は、ホームルームの時間である。担任教師が、受け持ちの生徒達に1枚のプリントを配布した。
「全員に行き渡ったかー?」
 教師の問いかけに、生徒達からはーいと返事。頷いて、教師は説明を始めた。
「そろそろ、世間では桜が見頃になる時期だろう? お前達の中にも、花見をしたいと思っている者は多いだろう。そこで、だ――近々開催される花見関連のイベントや何かを、俺が個人的にピックアップしておいた。北海道の旭川がきな臭くなっている件はお前達も知っているだろうが、闘いばかりでは神経が磨り減ってしまうからな……息抜きは必要だし、仲間との絆を深めておくことも大切だと、俺は思う」

 一旦言葉を切り、教師は真面目な顔で生徒達の顔をゆっくりと見回した。一巡すると、ニヤッと笑う。

「…とは言ってみてもだ、お前達は撃退士――桜が満開だからといって、天魔どもが活動をやめてくれるわけじゃあないのは解るよな? 羽目を外すのもいいが、撃退士としての本分を忘れるなよ?」



「やっぱ無理だよ、こんな数字‥‥」
 男はそう言うと、机に突っ伏した。といっても、机の上はノートPCにほとんど場所を占領されているため、身体を前に倒すのではなく、腰を引くようなスタイルになる。コロつきの事務いすが、耳障りな音を立てた。
 ノートPC上には一通のメールが開かれている。そこには、男の上司からの無情の指令が書き付けられていた。

「お花見行楽弁当目標数

   久遠ヶ原支店  土日合計 200

 絶対に売りきること」

 コンビニエンスストア「ハッピーストア」は、関東を中心にそこそこの店舗数を持つフランチャイズチェーン。その人工島唯一の支店が、ここ久遠ヶ原支店である。
 男はこの店の店長だ。頬はこけ、目の下にはくまが定着していたが、それでも髪は清潔に整えられ、髭はきれいにそられている。このまじめさは彼の美点であり、弱点でもあった。
「そもそも、人が足りないんだよ‥‥」
 従業員を安定確保できないコンビニの店長ほど悲惨な職業はない、というのは狭いものの見方かもしれないが、ひとつの見解であることは確かだ。
 数万人ともいわれる学生がいるこの久遠ヶ原では、アルバイトの数自体は不足していない。しかし学生であるものはすなわち撃退士でもあるため、なにかと任務や訓練でシフトをキャンセルされる。最終的に人がいなければ結局、穴埋めするのは店長なのだ。

 キンコン♪ チャイムが鳴った。売場からの呼び出しである。

「ああもう、忙しくなんかないくせに‥‥」
 しかし防犯カメラの映像をのぞくと、レジに数名の行列ができている。お客さんの数が少ない店でも、何かのタイミングでこういうことはあるのだ。

 キンコン♪ またチャイムが鳴った。

「うー‥‥」
 起きあがろうとする店長だが、疲労にむしばまれた彼の身体はそう簡単にはいうことを聞いてくれない。

 キンコン♪ キンコキンコキコキコキコキコ!
「あーっ、わかったって!」
 容赦のない猛連打に店長は気合いを入れて起きあがると、「休憩終了」の登録をしてから控え室のドアを開け、売場にでていった。

 行列はあっという間に消化され、店内からは人気がなくなった。「にんき」ではない。「ひとけ」だ。いや、にんきもたいしてないのだが。
 店長を呼びだしたスタッフの女の子はレジをあけ、お金の定期点検を始めた。店長もそれを手伝う。
「あのさあ‥‥」
 店長は自分の前のレジの小銭をコインカウンターに積みながら、女の子に話しかける。
「今度の土日、夜まで僕と君のふたりしかいないんだけど‥‥お花見弁当二百個売れっていわれてるんだよね」
「無理です」
 女の子は即答した。
「まあ‥‥僕も自信はないけど、一応お花見スポットも近くにあるし、その気になって売ればある程度は‥‥」
「お客さんが来てくれたとしても、ふたりじゃさばけないです」
「だよねえ‥‥」
 お花見需要となれば、売れるのはなにも弁当だけではない。忙しくなったらなったで、ふたりでは商品の補充もろくにできなくなるのだ。
 しかし、追加できてくれるアルバイトはいない。全員に断られ済みだった。
「みんなして撃退士の任務だ依頼だって‥‥ん、依頼?」
 店長がはたとひらめく。
「そうか、いっそ依頼しちゃえばいいんじゃないか?」
 そうやって集めた撃退士にお店の手伝いを‥‥いっそ、弁当を売りきるためのアイデア募集もしちゃおうか?
「おお、なんだかいけそうな気がしてきたぞ。となれば、早速依頼のための草案を──」
「店長」
「ん、なにかなモブ子(愛称)」
「お金、合いました。休憩に行ってきます」
「あ‥‥そうね‥‥」
 結局店長が依頼の原稿づくりに取りかかれたのは、自分のシフトが終わった夜十時を過ぎてからだった──。


リプレイ本文

 空はすがすがしく晴れ渡っている。早朝の今はまだ空気が冷たく感じられるが、じきに気温も上昇するだろう。絶好のお花見日よりだ。
 天候はイベント販売においてはある意味最大の難関ともいえるのだが、この二日に限っては心配無用。
 肝心の桜の開花状況も多くの木はすでに七〜八分咲き。お花見スポットには多くの花見客が訪れることは間違いがないところだ。

 最大の販売目標である「お花見行楽弁当」もすでに納品された。ただしコンビニ弁当は基本半日しか販売期間がないので、本日の入荷数は八十個(振り分けは店長が決定)である。

「さぁ、いよいよ決戦ですわ。皆さん、頑張りましょう♪」
 桜井・L・瑞穂(ja0027)は「ハッピーストア久遠ヶ原支店」の店前に集まった面々を見渡すと、胸を張って号令した。

 舞台は整った。二日間にわたる戦いの幕開けである。


「よーし! 頑張って売るぞー!」
 初日は客引き・宣伝担当となった神楽 椿姫(ja2454)が気合いを入れるも、残念ながら店前には人影がない。
「頑張ろうにも、人がいないんじゃねぇ」
 同じく宣伝担当の阿久乃 唐子(ja7398)が、皮肉のこもった口調でそう言った。
 事前の研修の際、みんなで協力して手作りのPOPや配布用のフライヤー(チラシ)に、首掛けの看板まで用意したのだが、見てもらわねば意味がない。
 二人が思案していると、店内から箒とちりとりを持ったモブ子(愛称)が出てきた。
「ここ、久遠ヶ原の生活導線からはずれてるからこの時間はほとんどお客さん来ないですよ‥‥お昼になればすこしは来ますけど。あ、掃除いってきます」
 モブ子は淡々とそう告げると、道ばたに落ちている吸い殻などをちりとりに集めながら道の向こうへ去っていった。

 一方、瑞穂のほかNicolas Huit(ja2921)、高峰 彩香(ja5000)、御守 陸(ja6074)の四名は、コンビニから最寄りのお花見スポットへやってきていた。コンビニの集客力に期待ができない以上、こちらから出向いて売り込む算段だ。
 お花見スポットはなかなかの広さである。今日の陽気なら、かなりの人が集まりそうだ。ただし、誰が経営しているのか、屋台もそこかしこに設営されている。作戦が成功するかはまさにアピール次第といったところだろう。
 すでに何カ所か桜の木の下に人影が見えるが、あれは場所取り要員だろう。本格的にお花見がスタートするのはお昼頃からだろうか。
 会場での販売許可は事前に申請済みである。一行は指定された場所へ行くと、売場の設営をはじめた。入り口になっている場所のすぐそばで、なかなかいい立地だ。
 店から運んできた折り畳み式のテーブルを広げ、その上にメインの弁当のほか、飲み物類もいくつか見本で並べる。実際に販売する分はクーラーボックスに入れて保存だ。飲み物だけでなく弁当もクーラーボックスに入れておくことを提案したのは彩香。基本常温販売が可能な弁当とは言え、暖かくなれば不安に思う人もいるだろう。
 お釣り用の小銭を入れた手提げ金庫は計算が得意な陸が会計係として預かった。
「弁当二百個? その程度、見事売り切って差し上げますわ。大船に乗った心算でいて下さいな。おーほっほっほ♪」
 瑞穂がお得意のポーズで高笑いした。準備は万端である。


「お花見行楽弁当発売中です! よろしくお願いします!」
 店から少し離れ、道行く人にチラシをアピールする椿姫。ピンクの画用紙で桜の花びらをあしらった首掛け看板も愛らしいが、反応はいまいち鈍い。だが、彼女はくじけない。
「笑顔で明るく元気よく! 私の取柄を活かさなくちゃだね‥‥!」
「へえ、これ何のチラシ?」
 そんな彼女の姿勢が光明へとつながったのか、一組の女性グループが彼女に声を掛けてきた。風貌からして、学園の大学部の生徒であろうか。
「あんなところにコンビニあったんだ」
「限定弁当だって。見に行ってみようか」
「ちょうどお花見でもしようかーって言ってたところだもんね」
 彼女たちは口々にそう言いながら椿姫からチラシを受け取ると、手を振りながら店の方へと歩いていった。
「あ、ありがとうございます!」
 椿姫はひときわ元気よくお礼を言うと、さらに気合いを入れて宣伝活動にいそしむのだった。

 店前に簡易テーブルを置き、権現堂 桜弥(ja4461)とカタリナ(ja5119)のの二人は店頭販売に挑戦中。店が用意したラジカセで桜をイメージした音楽を流しつつ、弁当を並べて来客を待つ。
 はじめてから一時間ほどはほとんど人が来なかったが、宣伝部隊の成果か徐々に来客の姿が見えはじめる。中には明らかにお花見スポットへ向かうと思われる大きな荷物を持ったグループなども見えるようになってきた。
「いよいよですね。リナ、頑張りましょう」
 桜弥の言葉に、カタリナもうなずいた。

 昼が近くなり、お花見会場には人が集まりはじめている。
 会場組は瑞穂と陸を設営した売場に残し、ニコラと彩香は直接会場へ入って売り込みをはじめていた。
「お弁当はいかがですかー? この春限定のお花見行楽弁当ですよー」
 陸の明るい声が通りすがりの女性客を呼び止めた。
「とってもおいしいですよっ。おひとつどうですか?」
 ニコニコとさわやかスマイルな中学生男子売り子の姿に、日常に疲れたアラサー女性客はあっさり堕ちた。
「い、いただくわ‥‥!」
 受け渡しの際さりげなく手を握られたような気がするが、とにもかくにも一個販売。
「お買い上げ、有り難う御座いますわ。すてきなお花見になりましてよ♪」
 瑞穂も負けてはいない。向こうが女性客ならこちらは男性客、とばかりに男性ばかり三人でやってきたグループ客に弁当を売ることに成功していた。
 部活の先輩後輩でもあるふたりだけに、なかなかのコンビネーションで少しずつではあるが売り上げを生み出してゆく。

「オベントいらないですかー! 春だけのオイシイのオベントです!」
 ニコラは持てるだけの弁当やドリンクを持ち、花見客の間を練り歩いていゆく。
「冷たいお飲物や、色取り取りのおかずで彩られたお弁当はいかがですかー♪」
 その数メートル向こうでは彩香が同様に直接販売を行っている。こちらはメガホン持参でアピール中。ところどころでお店の名前を叫んで宣伝することも忘れない。
 ただし、彩香は声でのアピールはするが、特定の相手に売り込みをするということはしなかった。
「評判にも関わってくるから、押し売りは厳禁、だね」
 彼女の気配りは短期的にはマイナスの面もある。こういったイベント時などは、多少押しが強い方がいい結果になることも多いのだ。
 一方、ニコラの方はそこまで深く考えていない。
(アルバイトは初めての事‥‥大事のオシゴトだから絶対頑張らなくてはだな!)
 とにかく売り切る、の一心で、声かけに反応しないグループにも積極的に突撃。直接会話で売り上げを伸ばそうとしていた。今も酒盛り中のおじさんグループの隣に屈み込み、にこやかに話しかけている。
「お酒美味しいなー? このオベントも一緒に食べるともっと美味しいかもだな!」
「あーん?」
 まだ昼過ぎだというのにすっかり出来上がっているおじさんが険しい顔で振り返ったが、ニコラを見るなり表情を和らげる。
「なに、弁当? ああいいよ、ちょうど米が食いてぇって思ってたとこなんだ。酒はないの? そりゃ残念」
 おじさんたちは気前よく弁当を二つ買ってくれた。
「ありがとございました!」
 嬉しそうな笑顔を浮かべるニコラだったが、
「やあ、こんなかわいい売り子さんなら歓迎だあ」
「どう、おじさんたちと一緒に花見しない?」
「!? 僕は男ですので!」
 もともと女の子と間違われるほど整った顔立ちのニコラである。酒が入ったおじさんたちに間違われるのは無理のないこと‥‥かもしれない。

 夕方以降お花見会場に人が増えたこともあり、会場組が好調に売り上げを伸ばした一方で、店舗はやや不振。途中からトイレを借りにくる客は増えたのだが‥‥。
 それでも、本日入荷した八十個のうち、夜八時までに七十九個が無事売れた。
「いやあ、みんなありがとう。残りの一個は僕が買って帰るから、今日は見事完売って事で」
 モブ子と二人で店内業務をこなしていた店長が、安堵の笑みを浮かべている。
「ま、一個くらいは自腹切るのも当然ですよねぇ」
 唐子がちょっと意地悪な言葉をかけると、
「朝と昼も買って食べたから三個目だけどね」
 と店長はさらりと答えた。まあコンビニ店長なんてみんなこんなものである。


 翌日、日曜日。予報通り今日もよく晴れている。
 本日販売しなければならない弁当は百二十個。昨日は夜までかかって八十個をなんとか売ったが、今日はそれより四十個多い。果たして目標達成はなるのか。

「季節限定のお花見行楽弁当販売中でーす」
「さぁさぁ、是非ともご試食なさって♪」
 今日は宣伝担当となった瑞穂と陸が、店前の道路で呼び込みを行っている。
 瑞穂は積極的に動きまわり、道行く人にチラシを手渡してゆく。その数歩後ろで、首掛け看板を掛けた陸が彼女の宣伝に調子を合わせていた。
 日曜日だからなのか、それとも昨日の宣伝効果なのか、昨日より人通りも多く感じる。チラシの減り具合に、瑞穂は手応えを感じていた。

 店頭では、ニコラと彩香の二人が弁当のほか、ドリンクなども販売中。
「ありがとございました!」
 ドリンクだけ買っていく客も多いが、ニコラはそんな客にも極上の笑顔で礼を言った。
 中性的な魅力を持つ彼の笑顔は広範な客層に受けたが、とくに女性受けがすさまじく、わざわざ彼を見学に花見会場から戻ってくる客までいたという。
 彩香のほうは商品の補充などを優先し、混雑時は販売を手伝うというスタイルだ。
「今日中に売り切っちゃわないとだから、気合入れていかないとね」
 昨日も活躍したメガホンを利用し、客寄せも忘れない。
 特別手際がいいということはないものの、暇な時間を作らず動き回る彼女は、実はコンビニに向いているのかもしれない。

 お花見会場の方も、今日は午前中からすでに花見客の姿が多い。
「季節限定商品『お花見行楽弁当』ですよ〜おいしいですよ」
 桜弥はカタリナとふたり、入り口に設営した売場で販売にいそしんでいる。
「このご飯は白米と黒米を使っています。そしておいしい鮭と鳥の唐揚まで入っています」
 見やすいように弁当をひとつ斜めに立てかけ、内容を細かく説明する。何人かの客が興味深そうにそれを覗いていた。
「ヘェ。オネエチャンたち可愛いねぇ」
「仕事何時まで? 終わったら一緒に飲もうぜ〜」
 そんななか颯爽と現れたいつの時代だよというヤンキー風男たち。
「あら‥‥残念、夜までお仕事なんです」
 だが桜弥は動じない。
「あ、お弁当を買ってくれると早くお仕事が終わるかもしれません♪」
 そしてにっこり笑顔。
「か、買っちゃうぜ〜」
「お買い上げありがとうございます♪」
 こんな調子で男性客に弁当を売りまくる。なかなかの魔性の女っぷりであった。

「そらそら、当店自慢の花見行楽弁当! 豪華絢爛目にも旨くて、買えば会話の花も咲くってもんだ!」
 軽妙な売り文句で好調に弁当を売り歩いているのは唐子だ。弁当やドリンクだけでなく、店から和菓子などの甘味も調達してきて売っているのだが、これがなかなか重宝されている。
 食べ物が少なくなっているグループを感知すると素早くすり寄り、
「買い出し面倒だろ? これ、おかず多めだからつまみになりますよ」
 とアピール。歩き回るのが面倒だという客にはなかなか好評を博していた。
 一方、椿姫はゴミ袋持参。弁当販売の合間をぬっては会場のゴミ集めも行っていた。
「素敵なお花見のために。売るだけが仕事ではないと思ってます!」
 当然販売の効率は落ちる上、会場ででるゴミの量全体からすれば彼女一人が処理しきれるゴミの量などたかがしれてはいる。
 こうした彼女の取り組みはすぐに売り上げに反映されるというものではないが、彼女の純粋さがお店のイメージアップにつながったことは間違いないだろう。


 午後七時過ぎ。メンバーの勤務時間も残り少ない。
「‥‥三百久遠のお返しです。ありがとうございましたー」
 モブ子の接客態度はいつも通りだが、その客はちょっと特別な客である。
 店長が晴れ晴れと腕を広げた。
「お花見行楽弁当、二百個完売でーす!」
 そう、今の客が買った弁当が、最後の一個だったのだ。
 周りから拍手がこぼれる。会場組もすでに撤収して戻ってきていた。
「まあ、当然の結果ですわね。おーほっほっほ♪」
 高笑いする瑞穂であったがその額には汗が浮かんでいる。
「やあー、これで本部に面目が立つよ。みんなのおかげだ。どうもありがとう」
 この二日に限っていえば店長も同じ仕事をこなしただけのはずだが、なぜかその疲労度合いはほかの面々よりずっとひどいように見える。
「まだ少し時間が残ってるけど、みんなはこれで上がってくれていいよ。報酬は予定通り払うからご心配なく。せっかくだから、夜桜を楽しんでから帰るといい」
「へえ、話せるじゃないの」
 唐子がニヤリとする。
「せっかくだから、お言葉に甘えましょうか」
 桜弥の隣で、カタリナも表情を緩めた。
「あと、報酬とは別にプレゼントもあるんだ」
 店長がいうと、モブ子がバックヤードから袋を持ってきた。
「休憩中に、買いに行かされました。人使い荒いですよね」
「いや、お店の売り物じゃダメだって言ったの君じゃないか‥‥」
 一人にひとつずつ、八つの包み。
「わあ、きれい!」
 椿姫が包みを解いてみると、色とりどりの和菓子の詰め合わせだった。
「学園特製の、お花見スイーツセットだ。今日の記念にどうぞ」

「えっと、アルバイトとっても楽しかったです! ありがとござました!」
 店に残る店長とモブ子に、ニコラが笑顔で礼を言った。
 ちなみに、モブ子の勤務は二十時までだが、店長はそのあと夜勤がくるまで一人勤務らしい。
「あ、あの、大丈夫、ですか‥‥? 無理しちゃだめですよ?」
 陸が店長を気遣う。
「ありがとう、君はいい子だなあ‥‥」
 感慨深そうに笑う店長。だがその笑みは諦観の微笑みであった。


 ハッピーストア久遠ヶ原支店は、人工島のはずれにひっそりと建つ場末のコンビニ。
 だが今回の出来事で少しは世間への認知度も増したかもしれない‥‥。またのご来店をお待ちしております。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
神楽 椿姫(ja2454)

大学部4年314組 女 アストラルヴァンガード
お洒落Boy・
Nicolas huit(ja2921)

大学部5年136組 男 アストラルヴァンガード
噂の『サヤ』・
権現堂 桜弥(ja4461)

大学部9年244組 女 アストラルヴァンガード
SneakAttack!・
高峰 彩香(ja5000)

大学部5年216組 女 ルインズブレイド
聖槍を使いし者・
カタリナ(ja5119)

大学部7年95組 女 ディバインナイト
冷徹に撃ち抜く・
御守 陸(ja6074)

大学部1年132組 男 インフィルトレイター
ウワサの撃退士・
阿久乃 唐子(ja7398)

大学部4年312組 女 ダアト