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マスター:扇風気 周
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/10/06


みんなの思い出



オープニング

 名無鬼は、人間である。
 撃退士の活躍で得た情報は捜査を一気に進展させた。

 撃退士たちの意見も取り入れて作成された容疑者リストに「星野七輝」の名前がある。
 被害者たちは皆、彼の写真を指差した。

 指名手配されるまで、あっという間だった。


 並行して、撃退士・東 ハガネが残した手掛かりの検証も行われていた。
 彼は、名無鬼が潜伏していた廃ビルの場所を残していた。

 鬼の姿はなく、一台のノートパソコンに音声ファイルが残っていた。


 やぁ、撃退士のみんな。

 ここに来たということは、もう正体はバレているのかな。
 それともまだかな。
 どっちでもいいけどね。
 いずれバレるし、もうバレても構わない。下準備は全部済んだからね。

 今回メッセージを残したのは、キミたちにボクを知ってほしいからだ。
 以前、ボクは撃退士に問われた。
 なんでこんなことをするんだ、って。
 人の裏側を見たい、というのがボクの答えだった。
 でも、あれには続きがある。

 ボクはね、みんなに知らせてやりたかった。
 そこいらで暴れている天魔よりも人間の方がよっぽど脅威なんだ、ってね。

 でもねぇ、たいていの人はそれを抑え込んでいるだろう?
 言いたいのに言えない。
 わかってほしいのにわかってもらえない。
 何をしても無駄だと諦めている。
 その感情の爆発が危険だとわかってから、周囲はやっと手を差し伸べる。

 だから、ボクはみんなを危機にして望みを叶えた。
 結果、彼らはキミたちに助けられたね。

 その後、彼らはどうなったのかな?

 財宝と冒険に焦がれた少年たちは、二度と安易に行動しないだろう。
 生きた人形に色情を抱いた青年は、キミたちに寂しさを埋めてもらった。
 母の愛が得られず怠惰に堕ちた少女は、本心を明かして悪夢から覚めた。
 憤怒にかられて他者を傷付けた少年は痛みと絶望の重さを知った。二度と怒りに身を任せることはないだろう。
 嫉妬に狂ったキミたちの仲間は、ボクが用意した危機を乗り越えたおかげでキミたちの元へ戻り、納得のいく最期を得た。

 みんな、前より幸せになったよね?
 危機が迫ったからこそ、みんな学んだ。素直になれた。幸せになれた。

 キミたちの功績だよ。
 でもね、きっかけは危機なんだ。

 物語では、最後に悪が倒れる。
 でも現実では、悪は甦る。
 いつでも、どこでも、隣にいる普通の人にも英雄の中にも、名前の無い鬼が潜んでいる。
 鬼になって退治された人はみんな、前よりいい形で日常に戻る。
 危機があるから日常が活きるのさ。

 もちろん、キミたち撃退士がいてこその状況だ。

 大事なのはサイクルだよ。

 日常が鬼を育てて、育ったら主がボクに力を与えて、ボクが解放する。ボクは快楽に浸る。
 キミたちが鬼と闘うときに爆発する極上の感情を、ボクの主が味わう。
 キミたちは助けたことを喜び、助けられた人は日常に戻る。以前より成長した形で、ね。

 ボクたちは共存するべきだ。キミたちが賢明であることを願う。

 ひとまず話がしたいな。
 このメッセージの最後に言う場所で待ってるよ。
 理由あって山奥の不便な場所だけど、許してほしい。

 あと、母さんに伝えてもらえるかな。
 ボクがこんなふうになれたのはあなたのおかげです、ってね。
 たぶん、どこかへ逃げてしまっていると思うけどねぇ。ふふふ。


 久遠ヶ原の斡旋所で、狩谷つむじ(jz0253)は神妙な顔で席についている。
 彼女を頼って、佐塚沙希がやってきていた。七輝の幼馴染だ。
 家に、マスコミが押し寄せて逃げてきたらしい。
 星野七輝の母親はどこかへ行方をくらませている。

「無理もないです……近所のみんな、人が変わったみたいで……本当に、あいつなんですか?」
「……残念ですが、間違いないと思います」
「そうですか……捕まったら、どうなるんです?」
「普通では済みません。先日、ついに死亡者も出ました」
「……。私の、せいなのかも」
「え?」
「……あいつが行方不明になって、それからずっと考えてました。なんで、あいつのこと気になるんだろうって……思い出したんです。私、今はお化粧もするし、おしゃれもするけど、小さいころは男の子みたいな格好して、そのせいで男女って呼ばれて、悔しかったけど『いいじゃん別に!』って怒ってました。変わったら、負けちゃうみたいで嫌で……。だから、あいつとヒーローごっこもしてたんですよ。でもあいつ、いつも悪役の方をやりたがってたんです。なんで? って訊いても教えてくれなかった。ずっと訊き続けて、やっと教えてもらったんです」

 ――そっちの方が、かっこいいと思うから。

「……私、あいつのこと笑いました。変だよ、おかしいよ、みんな、そうじゃないのに、って。あいつ、そうだね、って笑って、そのあと言ったんです」

 ――でもボク、沙希ちゃんが男の子みたいな方が、かっこいいと思うんだ。

「今ならわかります……あれ、皮肉だったんですよ……信頼して、話してくれたかもしれないのを、私……」

 その後、星野七輝は徐々に彼女から離れていった。

「私があのとき、そうだね、みんなと違ってもいいよね、って答えてたら……きっと、私の、せいで……」
「……あなたは、どうしたいですか?」
「わかんないです……でも……お母さんにも捨てられて、お父さんもいなくて、みんなと違っちゃって、私までいなくなったら、あいつ、ひとり……、それ、は、たぶん、つらい、から」

 涙が、止まらない。

「……じぶんでも、かってだとは、思うけど……ほうっておきたくない……でも、もう居場所がないなら、あいつは……しんだ方が、楽なのかなぁ……?」


 山中に撃退士が集まっている。
 ある者は潜み、ある者は姿を見せて、名無鬼が指定した場所に来ていた。

「やぁ、どうも」

 星野七輝は笑ってみせた。
 異常な状況にもかかわらず、自然な笑みだった。

「……話がしたかったけど、どうもそんな雰囲気ではないねぇ」

 まぁそれも当然か、と名無鬼は心中で呟く。
 こうして『感情渦巻くよう』に仕立てたのだから。

「これ、見覚えあるかい?」

 七輝の手の中には願いを叶える魔法のランプがあった。
 光る。


「ずっと憧れた」

 ランプから現れたのは怪獣だった。
 全長50m近い、まさに化け物である。

「最初は小さなサーバントだったんだ。長い時間、エサを与えて育てた。木や肉、ありとあらゆるモノを喰らって回復して成長する。ボクの意のままに動く原初の暴力だ」

 名無鬼は化け物の腹にいる。
 腹部は透明になっていて、撃退士たちを見下ろせるようになっていた。
 感情を露わにする撃退士の顔が見える。

「やっと……嘘偽りのないボクを見せられる」

 ――存分に感情をぶつけてくるといい。
 ――摩擦によって生まれる極上の感情を、夢を叶えてくれた主に捧げよう。

「今回のゲームに勝ち筋は用意していない。食欲、解放欲、正義の執行……互いの目的を果たすサイクルを守るため、ボクは負けない!」


 撃退士と名無鬼が激突する場面を、遥か高みから「主」が見ている。

「……人間というのは、やはりよくわからん」

 だが、七輝が捧げてくる感情が、単純に吸い上げたものよりも深い味わいがあるのは事実だ。

 ――シュトラッサーにはなりたくないんですよ。
 ――人間だからこそ、最も人間の脅威になれる。そう思いませんか?

「証明してみせるがいい、七輝。……いや、証明するのは撃退士の方か?」


リプレイ本文

 名無鬼事件は犯人の指名手配も行われた有名な事件だ。
 真犯人が人間ということもあり、報道機関も熱心に事件の動向を追っていた。

 そのうちの一つは、衛星から映像を入手していた。
 野山の奥に出現した巨大な怪獣の吠え猛る様子が映っている。

 場所を特定した彼らはヘリコプターで現場に急行した。
 しかし、彼らはある程度の距離まで近づいて接近を諦める。
 怪獣に恐れをなしての判断だった。

 結局、彼らが見ることのできたのは巨大な怪獣と、幾らかの光だけだった。

 夜闇に映える綺麗な光だった。
 箒星の尾が残す一筋の光のようだった。
 黒く塗りつぶした絵の上に蛍光色の筆を走らせたかのような光景だった。

 鬼を討つために集った、光を纏う者たちの輝きだ。

●両足
 光纏の輝き方は個々で異なる。

 目が覚めるように燃える光もあった。
 昏く、澱んだ光もあった。
 儚く、花が散っていくような光もあった。

 色彩鮮やかな光が飛び交う中、蓮城 真緋呂(jb6120)の心はどこまでも平坦だった。
 元より光纏を顕現させても大きな変化は出ない体質だ。
 瞳の色が変わり、表情や口調が淡泊になるだけ――だとしても、今の彼女は殊更に冷静だった。

「……」

 湖面を見つめるような面差しで彼女は怪獣と戦っていた。
 自分でも驚くほど彼女は静かだった。
 それを好ましく思う気持ちが彼女の中にはある。
 天使にくれてやる感情など、ひとかけらも浮かべたくなかった。

 その思考がわずかに――微かに揺らぐ。
 怪獣の腹の中にいる名無鬼の姿が目に入ったからだ。

 彼の顔に張り付いているのは嫌な笑みだった。
 報告書の中で読み解いてきた鬼と同じだ。
 あれはきっと、撃退士の心を逆撫でするのが目的なのだ。

「それが望みならば、戦いましょう」

 彼の行く先を『餌』にするわけにはいかない。
 ヒヒイロカネを大剣に変じて、蓮城は怪獣の左足へ挑む。
 撃退士たちを踏み付けようとする巨大な足へ。
 振動と土煙に怯むことなく飛び込んでいく。

 既に数名の撃退士が張り付いていた。

 ――まずは足を止めて市街地へ到達されるのを防ぐ。
 ――そのために左足を潰そう。

 作戦の提案者は佐藤 としお(ja2489)だ。

「足を潰せば腕も頭も高度が下がるはずだよ」

 彼の作戦に賛同した撃退士たちが攻撃を繰り返している。
 岸壁のような皮膚に刀身や弾丸が跳ね返されるたび、火花が散った。

 火の粉を浴びながら、雫(ja1894)は歯の根を軋ませる。

「まるで駄々っ子じゃないですか」

 高みの見物を決め込んでいる名無鬼に対して彼女は苛立ちを隠さない。
 雫は踏み付けを回避するために一時後退、同時に光纏を迸らせた。
 禍々しい紅色の紋様が全身を刻む。それが刀身まで作用した瞬間、彼女は切っ先を突き出しながら突撃した。
 神威の強化を上乗せした全力の烈風突だった。

『ムッ?』

 名無鬼の呻きに合わせて、烈風突を受けた怪獣の左足が浮いた。
 その足が地に着いた瞬間、月光が大地で瞬いた。

 腰を落とした状態の蓮城が空へ向けて、光輝く刀身を抜き払う。

「消えて」

 一閃。

 怪獣の足にわずかな裂け目が開く。
 その道を広げるために、カイン=A=アルタイル(ja8514)が跳んだ。

「天魔より怖いのは人間だって、今更わかりきってることをドヤ顔で披露するためにこんな事やってたのか、てめぇは」

 傷口に大剣を水平に突き刺し、柄をねじろうと試みる。
 地団駄するように左足が暴れた。カインは剣から手を離さない。

「いい年して厨二病を拗らせて大暴れしてるだけじゃねえか!」

 怪獣が吠える。
 かき消されてなるものかと、カインも天へ吠える。

「こんなアホ臭い事に大層な理由を付けて大暴れしやがって! 引っ張り出してひねた根性矯正してやる!!」

 頭上に向いたカインの顔に影が重なる。
 彼を叩き落とそうとする両腕の影と、もう一つ。
 魍魎と死の影をその身に宿した雫だ。

 刀身は紫焔に燃えている。
 一、二、斬! と両腕を押し返す。

 その迎撃にカインも応じる。無理やりねじ込んでいた柄を全力で押し込む。
 ブチブチブチと腱まで刃が到達した感触を手に宿したとき、カインは傷口から離れた。

 傷口に銃撃が集中する。

「みんなの言う通りだ」

 佐藤 としおが叫ぶ。

「何だかんだ言ってるけど、拗ねた子供が駄々こねてるだけだよ。そこから出て来いっ!」

 熱く猛々しく銃弾を吐き出す佐藤に次いで、ラファル A ユーティライネン(jb4620)も対天使核バズーカを放つ。
 四脚機体のリミッターを全て外し、ドーピングも施している。
 弾頭から飛び出した極小無数の刃が怪獣に着弾した瞬間、シューティングゲームのボムのように派手な轟音と閃光が発生した。

「俺は名無鬼とは因縁も縁も所縁もねーよ。でもお前は俺たちの敵になりてーんだろ」

 ――だったらお前は俺たちが倒すべき敵だ。

「人間だろうがなんだろーが、敵であるなら敵として殺してやる。それがお前の望みだってんなら、遠慮なくどぶに沈めてやるさ」

 ラファルは四脚機体の機動力を生かしたガトリングガンでの移動掃射に入る。
 その動線に一瞬だけユウ(jb5639)がクロスするように重なった。
 彼女も移動しながらの攻撃を繰り返している。

「何としても、ここで止めなくてはいけません」

 全長1メートルのスナイパーライフルを装備して、カインが開いた裂け目への狙撃を繰り返す。
 カオスレートを低下させる黒い霧を帯びた弾丸はすでに撃ち切った。
 地道に、確実に傷口を狙う。
 同じ場所に留まらないのは相手の攻撃に備えての行動だ。

「おお、近くで見るとおっきーねぇ☆ ……これは、何を表現したものなのかな♪」

 一足遅れて戦場に参加したジェラルド&ブラックパレード(ja9284)は「ひゅうっ♪」と口笛を鳴らしている。

 足元から赤紫の鈍い光纏を立ち上らせる彼が行った用意は手堅く、周到だった。
 傷ついた者を退避させる拠点と、負傷者を運ぶための補助器具を大量に持ち込んでいる。
 銃弾の予備もたんまりと揃えた。

「ちょっと叩いたくらいじゃあ、びくともしなそうだもんね☆」

 立ち回りも両腕への牽制と前線のフォローに重きを置いている。
 自分たちが倒されなければ、きっといつか倒せる。自分たちの誰かが必ず倒す。
 そう見込んでのことだった。

「……そう、誰一人として、負けるつもりがないんだよ、お前には」

 陰影の翼で空を舞う牙撃鉄鳴(jb5667)は空っぽのスナイパーライフルの弾倉を地上へ落とした。
 代わりの弾倉を装填しながら、温度のない声色で言葉を繋ぐ。

「天魔より人間の方が脅威……全く同意だ」

 敵の射程外からスコープを覗き込む。
 狙うは怪獣の膝下だ。先の戦いで負った傷の痛みを感じるが、照準は定まっていた。

「でなければ俺は人間をもっと信用しているだろう」

 父親から虐待を受け、母親も失い、恩人からも裏切られ、果ては人体実験まで行われた牙撃は昔を思い返しながら引き金に指を掛ける。

「人間から化け物に成り下がった貴様を、俺は脅威とは感じない」

 弾丸と意志が銃口を飛び出す。
 名無鬼の言葉に共感するが故に全力で排除する――そのために。

「証明してみせよう、人間の可能性を」

 銃声が連続する。
 一発は体重を支えている右足へ、もう一発は咆哮を上げようとした頭部の口内へ。
 最後の一発は腹部の名無鬼を狙ったが、両腕に遮られた。
 腐敗の効果を伴った侵蝕弾頭だったが――

『……だめです! 効果、見られません!』

 通信機から狩谷つむじ(jz0253)の切迫した声が割れて届いた。
 その言葉に「ふふん」と笑う影が一つ。

「純粋に力でぶち抜けば問題なし! こういう敵があたいに相応しいって事よね!」

 怪獣が出た、と聞いてから雪室 チルル(ja0220)はそのつもりだった。
 尻尾の範囲攻撃を警戒して側面にいる彼女は、あるタイミングを待っていた。
 右足と左足が直線上に並ぶ瞬間を待っていた。

「具体的な事情は何一つ知らないけど、あんなでかいものを野放しにするわけにはいかない。ここから先には進ませない!」

 現在、左足は動きを止めている。
 右足の動きに注目しながら側面を周回して――

「見っけ!」

 ずざざざ! と地面を滑り減速。同時に、剣の切っ先にエネルギーを収束させている。
 圧縮し、固めたエネルギーが力場を形成した瞬間に敵の右足が左足と並ぶ。

「いっけぇぇ!」

 狭い範囲に収縮された吹雪が直線を突き進む。
 薄く舞った氷結晶はすぐに消えて、代わりに剥がれた怪獣の皮膚が降り重なった。

「今ならもっと深く刃が通りそうですね」

 黒井 明斗(jb0525)の見立てに礼野 智美(ja3600)がこくりと首肯する。
 礼野のスキル回数を回復させるため、黒井が彼女を呼び止めていたのだ。
 その間も礼野が解放した闘気を収めることはなかった。

「そんなにあの鬼が許せないんですか?」
「……いや、俺は言いたいことは何もない。今までかかわってきた人の方に言いたいことがあると思うから。ただ、耐久力が高そうだから少しでも攻撃力を上げたい。それだけだ」
「そうですか。……終わりましたよ」

 スキルの回復を終えた黒井に礼野は会釈する。
 次の瞬間にはもう、彼女は走り出していた。
 紫焔を宿らせた刀身を目にも留まらぬ速度で振るい、敵の肉を削いでいく。

 その勇姿を見た黒井はふと怪獣を見上げた。
 少し視線を下げれば腹に透明の檻がある。
 実は戦う前も同じようにこの巨体を見上げた。
 そのときも無感動に思った。今も思う。

「勝ったな」と。

 それを現実にすべく、黒井も左足の集中攻撃に再び参加し始めた。

 怪獣は立っているものの、動きを完全に止めている。


 怪獣が停止する直前、ノスト・クローバー(jb7527)は左足の攻撃に参加していた。
 閃滅の効果で全身が緑色に輝いているためにわかりにくいが、左半身では緑色の蔦がきらめいている。
 彼の光纏だ。
 高速移動しながらワイヤーを飛ばし、肉を削いで足止めに加担する一方で、彼は探し物をしていた。

 どこかに必ずあるはずだ、と。

 暗闇や怪獣の身体に目を走らせるが、成果は得られない。
 そうしている間に怪獣は動きを止めた。

 頭上では両腕が飛行班と狙撃班の対応に追われている。
 今なら腹部まで辿り着ける。

 ノストはおよそ二十メートルの距離を闇の翼で瞬時に駆け上がった。
 透明の檻に張り付く。
 名無鬼が嘲笑い、ノストは微笑んだ。

「やぁ、七輝君。君の部屋で会った以来だね」
『危ないですよ、そんなところにいたら』
「わかってるよ。だが、どうしても探しているモノがあるんだ。……ランプはどこだい?」

 名無鬼は片眉をぴくりと上げ、嘲笑を強めた。

『よく見抜きましたねぇ。ご察しの通り、ここに』

 ランプは名無鬼の手にあった。
 破壊すればこの怪獣は消滅する可能性がある。

『以前もあなたはランプを壊してましたね。でも残念、今回は勝ち筋を用意していないんですよ』
「だったら、拓けばいい」

 ノストは腕を振るい、ワイヤーで腹部を斬り付けた。

『ちょっとやそっとじゃ壊れませんよ。これがあればすぐ倒せたかもしれないのに残念でしたね!』
「必ず手に入れるよ。倒すためじゃなく、救うために」
『救う? 誰を?』
「君を」
『……はぁ?』

 名無鬼から嘲笑が消えた。

「名無鬼……いや、七輝君、君も救いを求めている側だろう?」
『ク、ハハッ、アハハっ、すごい解釈だね! さすがは英雄ってところかい!?』
「その英雄を産み出すのが貴方の望みなのでしょう?」

 空から、御堂・玲獅(ja0388)の声。
 光の翼で飛行するイリン・フーダット(jb2959)が彼女を抱えたまま檻の前に到達する。

「自分はどこまでいっても怪物で。けれど怪物でいる事で英雄を産みだせたなら自分も救われるかもしれない。それが星野七輝、貴方の本当の望み。違いますか?」
『ふふっ、間違いではないだろうねぇ。サイクルを回すためには英雄が必要だ。ボクに勝つためにキミたちが成長していけばより多くの英雄が産まれる。名の無い鬼たちが救われる。人の裏側が見たいボクの願いも叶う!」
「そんなにサイクルが大事かい?」とノスト。
『大事だとも! 憤怒の巨人を生み出したあの子は成長した――御堂さん、キミも彼に寄り添うことで英雄になれるんだろう?』

 御堂は答えなかった。代わりに唇を引き結び、檻の向こうを見据えている。

『ボクを外道だと思うかい? それもそのはずだよ。何せボクは人間だからねェ!』

 名無鬼の叫びに連動して怪獣の頭部が咆哮を放つ。
 ノストとイリンが顔をしかめ、動きを止める。

『天魔なんかよりよっぽど恐ろしいのさ!』

 両腕がしなり、飛行班を無視して腹部に向かう。
 名無鬼の目測に誘導された場所に大口を開けて、牙が、

 ガチンッッ!

『むっ!?』

 金属同士がぶつかる音が二つ鳴った。
 片方は捕食に失敗した牙同士が激突する音。
 もう片方は、檻に矢が刺さる音。

「天魔より人間が脅威だって事は言われなくても知ってるもん!」

 グラサージュ・ブリゼ(jb9587)の放った矢が名無鬼の目測を誤らせた。

『その声は……ウチに来ていた?』

 普段は短い髪が今は長く伸びている。
 陽光の翼を展開するグラサージュの姿は狐化していた。

「危機があれば成長して日常に戻る? 成長する機会を失っただけだよ」

 ――本当は皆、日常の中で行うはずの成長ではなかったのか。

「現実と理想、本能と理性のバランスが取れるようになるのが成長でしょ?」
『そうさ。だからボクが早めてあげたんだよ! 弱いみんなを追い詰め、名の無い鬼を産みだす奴らに知らせるためにねぇ!!』

 彼らの会話は通信機で撃退士に伝わっている。
 遠く、離れた場所で話を聞いていた佐藤は「違う」と歯噛みした。

「人はもっともっと、色んな事を受け入れて許せる生き物なんだ。……君が何もしなくても、必ず、っ!?」

 佐藤が口をつぐむ。
 怪獣の挙動がおかしい。

 止まっていた足が動く。尻尾がしなる。
 グルルルルルル、と頭部が唸る。
 風。

『キミたち撃退士にもわからせてやる。キミたちにこいつは殺せない』

 尻尾による全方位の範囲攻撃。
 両足に張り付いていた撃退士が薙ぎ払われる。

『集まったところをドカン、だ!』

 直撃を避けても横殴りの突風に飛ばされる。
 唸っていた頭部も口を開く。
 喉が光っている。まるで溶岩のように。光纏のように。
 佐藤たち狙撃班がいる場所を狙っている。

「っっ!!」

 ――――――――――――――――ッッッッ!!



 ……。

 …………。

 …………誰かが、叫んでいる。

 上空にいた御堂とイリンが地上に降りて回復に奔走していた。
 尻尾の直撃を避けた黒井 明斗も同じだ。
 負傷が重い者から順に回復支援を行い、前線に復帰させていく。

 礼野 智美は尻尾の直撃を受けたものの、ライトヒールで自己回復して真っ先に戦列へ戻っていた。
 雫、雪室チルルは回避を成功させて、負傷者が立ち直るまでの時間を稼いでいる。

 狙撃班も同様だ。
 ジェラルドは担架で光線に巻き込まれた負傷者を運んでいる。
 範囲外にいた撃退士の多くが、仲間のためにさっきよりも多くの弾丸を撃って撃って撃ちまくっている。

 ……からり、と。

 光線が直撃した、爆心地とでも言うべき場所で小石が動いた。

「……僕らは、諦めない」

 覆い被さっていた土を振り払い、立ち上がる。
 血がついた上着がスカーフのように風にはためいた。
 佐藤 としおが、ライフルを構える。

「諦めず、許すことができる……君の事だって……だから人を諦めるな!」

 全身を包む黄金の龍――アウルを纏い、練気と火事場の馬鹿力の効果を乗せて穿つ。
 光を纏い集った者たちと共に、鬼を撃つ。

「勝手に人の可能性を諦めるな!!!」

 狙い澄ました一撃が怪獣の左足に届く。弾頭が肉をえぐり、貫く。
 名無鬼が世界に放った怪獣は初めて撃退士たちの前で片膝をついた。

●幕間
 七輝の旧友、佐塚沙希は部屋の片隅で膝を抱えていた。

 戦闘の様子は通信によって久遠ヶ原にも届いている。
 狩谷つむじが、ジェラルドが用意した安全地帯に負傷者を誘導している。

 怪獣が態勢を崩したと一報が入ってきた。

「……」

 佐塚沙希は膝に押し当てていた額を持ち上げて、握っていたメモに視線を落とす。

「星野七輝を本当に放っておけないなら、護りますので行動して伝えなさい。安全地帯で心配するふりをするだけなら、死んだ方が楽という言葉は口にしないで下さい。たとえ、冗談でも」

 御堂・玲獅からの言葉らしい。
 出発前、イリン・フーダットが「伝言を頼まれた」と、メモを渡してきた。
 名無鬼と因縁が深い御堂はそのとき既に、怪獣出現の一報が入る前から彼の確保に向かっていた。

「佐塚さん、イリンさんからまた伝言ですよ」

 つむじに呼ばれて、佐塚は彼女の方を向く。

「来られますか? って」
「……」

 答えは、まだ出ない。

●両腕
 左足を潰された怪獣は佐藤の見立て通り、大きくバランスを崩した。
 両腕、腹部、頭部も攻撃の届きやすい位置に下がった。

 だが敵は貧食の怪獣だ。喰えば回復する。

 この突破口を逃してはいけない。

 一度弾き飛ばされたグラサージュ・ブリゼは回復を受けて復帰している。
 狐化した状態で宙を舞いながら和弓の弦を引き絞り、腹部へ放ち続けている。

『うっとうしい!』

 伸びてきた両腕の攻撃を掻い潜る。
 服の裾を噛み千切られるギリギリの回避を続けて、ストロベリーチョコ風に変化させた光纏で蔦を縛った。
 束縛の効果は――でない。

 逆にグラサージュの身体に蔦が巻き付いて拘束されてしまう。
 目の前に牙が見えた。

 喰われる。

 そう思った矢先、両腕が宙で狂ったようにうねった。
 射程外から行われた牙撃の援護射撃が両腕の口内を撃ち抜いていた。
 口内だけでなく、蔦の部分にも細かく弾痕が連なる。エイルズレトラ マステリオ(ja2224)の銃撃だ。

「いやはや、久しぶりに大怪我してしまいました。こういう時は、隅っこで大人しくしてるに限りますねえ」

 エイルズレトラは重体中のため、距離を取って仲間の回復や援護に回っていた。
 佐藤の回復を済ませた後、怪獣が片膝をついたのを機に狙撃支援に切り替えたのだ。

 援護を受けている間に拘束を逃れたグラサージュは一度退却する。
 追いすがろうとする両腕が再び口を開ける。
 刹那、ミハイル・エッカート(jb0544)がダークショットを口内に再びブチ込んだ。

「確実に潰す」

 サングラスを鈍く光らせ、口元にはニヒルな笑みが浮かぶ。

『だったら弾丸を喰えばいい!』

 ダメージの元を回復の餌にしようとした名無鬼にミハイルがますます笑った。

「だったらそれ以上に喰らわせてやるさ」

 四方から銃弾が降り注ぐ。

 他方、銃器を扱っていたはずのユウは一斉射撃に参加せず、距離を測っていた。
 敵までおよそ24m。
 武装を銃から移動力に補正のあるデビルブリンガーに変えて一息に突っ込む。
 残り4m。ダークショットから切り替えていた闇の翼を発動させる。
 ガラ空きになっている腹部に向けて飛び立ち、属性攻撃の発動後に武器を銃に戻した。
 檻の中の名無鬼と目が合う。
 雷光を放つエクレールCC9が銃弾をばら撒く。

 ガガガガガガ! と、全て跳ね返された。

「……やはり集中攻撃を浴びせないと厳しそうですね」

 檻の向こうから名無鬼の視線を察知して後退する。
 距離を取って反転したときはもう、スナイパーライフルで両腕の狙撃に参加していた。

 狙撃班が気を散らしている間に、接近戦を得意とする面々も両腕に到達しようとしていた。

 ――羽根を持たない彼らが、どうやって?

 簡単な話だ。

『……なんだ?』

 何かが登ってくる。
 ――飛べないなら、跳べばいい。

『……っ!?』

 重傷を負わせた怪獣の左足を壁走りで駆け抜けてくる陽波 透次(ja0280)が、そこに。
 名無鬼はとっさに怪獣の左腕で彼を振り払おうとする。
 捕食目的ではない。蔦を鞭代わりにした攻撃だ。
 轟ッ、という風が姿勢を低くして走る陽波の頬を薄皮一枚削り取った。
 彼は立ち止まることなく、鎖付きの鉤爪を射出する。
 拘束が効かないのはもうわかっている。
 だから蔦に刃を食いこませて、鎖を引っ張ることで加速、跳躍する。
 最高到達点、刹那の無重力感を得て放つは、無数の影手裏剣。
 狙撃班が怪獣の両腕につけた弾痕をえぐり続けるべく、影の投刃を投げ続ける。

 無論、滞空時間には限りがある。
 左腕の蔦部分に着地した陽波を、右腕の口が狙っていた。

「止まりなさい」

 予測攻撃で動きを読んでいた蓮城が、渾身のフルスイングで打ち返す。
 彼女もまた、地道に怪獣の身体を登ってきていた。

「……ありがとうございます」

 援護を信じていた陽波は着地後、魔具に莫大なアウルを注ぎ込んでいた。
 チリッ、チリリリッ、バチッッ!!! と稲妻が走る。
 影手裏剣を叩き込み続けた傷目掛けて、彼はもう一度跳んだ。
 黒皇『雷切』が傷へ届いた瞬間、左腕の口から悲鳴が上がる。

「いいね☆」

 遠距離からの狙撃に終始していたジェラルドも今、右足に到達した。

「こっちも、ちょっと強く行くよ?☆」

 浮かべているのは笑顔だが、持っているのは斧だった。
 命を断つべく、白い長髪を振り乱して一心不乱に斬って斬って斬って斬りまくる。

「……バッドステータス効かないなら、結局それしかないか」

 戦闘開始直後から搦め手を使用し続けていた月詠 神削(ja5265)は、ため息をひとつ。

「それならそれでいいけどな」

 どんな手段でも勝てば同じだ。
 右足の機能を停止させるべく、月詠も大剣で攻撃を加えていく。
 横から雪室も突進してきた。

「あたいも混ぜろー!! かなり凄い撃退士の一撃をくらえーっ!!」

 上空では礼野が右腕を斬り付けている。
 両腕の間をジグザグに跳躍して、左腕、右腕、左腕と俊敏に攻撃を続けていた。
 彼女への反撃は左足を同時に攻撃していた縁で、雫がカバーしている。

 咆哮。
 撃退士ではなく、怪獣の頭部が放ったものだ。
 痛みに悶えていた両腕も遮二無二振り回される。

「――そんなことしても無駄です。誰も怖がりませんよ」

 両腕に突き立てた剣を支えにして雫が踏み止まっている。
 透明の檻を見る彼女の目には信ずるものが滲んでいる。

「何が本当の自分ですか。貴方が本当に嘘偽りの無い自分を曝け出したいのならサーバントは必要無い」

 足場がまだ揺れる。

「貴方は恐れただけ、自分の考えや思いを理解させずに否定される事を」

 揺れる。

「だから、力を求めた。自分を無視させない為に――でも、」

 揺れて、止まった。

「やっぱり駄々っ子じゃないですか、そんなの」

 雫が攻撃を再開する。

(……なるほど、な)

 通信機で雫の言葉を聞いたファーフナー(jb7826)は怪獣の背後で哀愁を抱く。
 両手の根元を遠距離攻撃で攻撃し続けている彼は名無鬼のことをよく知らない。
 ただ依頼をこなすために淡々と仕事をこなしていた。
 しかし、通信機から多くの言葉を拾った彼は大まかな事情を察した。

 人でありながら、人でいられなくなった人間。

(……お前は俺と同類だ)

 ファーフナーの父親は悪魔で、母親は人間だった。
 ――決して人外の血を引いていることを知られてはならない。
 そう言い残して、母は死んだ。

(異端ゆえに人を憎み……焦がれる)

 類似しているが、決定的に違う。
 決定的に違うのに、一部だけが一緒の存在。

(決して満たされない憤り……それをお前は天使に……俺は人間に利用されている。人との関わりを求めて)

 ふっ、と自嘲気味に笑みがこぼれた。

(……まるで喜劇だな)

 いずれにしろ、今のファーフナーは社会に生きる存在だ。
 与えられた立場と役割に殉ずるため、悪魔の翼を広げて悪魔の力で以って鬼を討つ撃退士だ。

 背後に位置していたファーフナーは怪獣の右側面に移動する。
 蔦全体に極小の刃をばら撒く。

「……」

 礼野が、無数の刃が蔦を切り刻むところを観察している。

「……見つけた」

 跳ぶ。
 右腕の口の裏側、――もし顔があったとすれば、人間で言うところの「うなじ」の部分。
 そこだけ深く刃が食い込んでいる。

「役に立てたようだな」

 ファーフナーが口の端から紫煙をくゆらせる。
 煙が霧散するのと同時に、礼野が右腕を斬り落とした。


 ――どうする。

 名無鬼は考える。

 左足は膝をついたままだ。
 回復させるには餌を喰わせるしかないが、残った左腕も思うように動かせない。
 右腕を落とした撃退士たちが結集すれば、左腕もまもなく落ちる。

 ――ならば、いっそのこと。


 ズン!!!! と大地が揺れた。

 右腕の落下で揺れたばかりだったので、揺れ自体に影響を受けた撃退士はいなかった。
 しかし、振動は断続的に続いた。

 怪獣の足元にいた月詠が通信機で報告する。

「右足が足踏みしてる」

 地上の前衛はもう一時退避したが、名無鬼は地面を蹴り続ける。
 そしてついに地盤を踏み抜いた。
 左腕は動かなくなった左足の肉を一噛み、食い千切った後に土を貪った。
 両足と片腕を根に変えて、怪獣が咆哮した。

●頭部
 野山に光線が飛び交う。
 養分を吸い取られた土は瞬く間に腐り、樹木が枯れ果てる。

 名無鬼の放った怪獣は野山を喰らい尽くそうとしていた。

 頭部の攻撃間隔は今までのそれよりも遥かに早い。
 足元や空中に光線をばら撒いている。

「なるほどォ……操作する場所を限定させて動きやすくなったわけねェ」

 遠くから狙撃支援を続けている黒百合(ja0422)の言う通り、それが名無鬼の作戦だった。
 普段ならば嬉々として飛び込んでいく状況だが、彼女は飛行状態のまま50m地点からライフルによる狙撃を続ける。

「重体じゃなければもう少し自由に動けるのだけどねェ……残念だわァ」

 出てくるのはため息と銃弾ばかり。
 光線の撃ち終わりに合わせて口腔を狙うが、本命は攻撃が途切れたときに狙撃している眼球だ。

「柔らかくて美味しそうなところだものねェ……」

 スコープを覗く。
 光線の撃ち終わり――今。

「きゃはァ♪」

 銃器を操作してフルオートに切り替える。
 ガガガガガガガガガガガガ、と小刻みな振動が心地良い。
 重体なのがつくづく残念に思えた。

『黒百合さん! 近くに負傷者です! 北北東!!』
「りょうかぁい」

 照準を外して、つむじが示した方角に飛び去る。

「……回復、残るかしらねェ」

 後方支援に徹している彼女は気付いている。
 もしも撤退の可能性があるとすれば、ダメージレースに負けたときだろう――と。


「……大丈夫、終わらせるよ……」

 怪獣の頭上。銀色のヴェールを纏い、背中に金色のリングを背負う撃退士が飛行している。剣のオブジェクトに変化した光纏も浮遊していた。
 神々しい光を纏うSpica=Virgia=Azlight(ja8786)もまた、スナイパーライフルのスコープを覗いている。
 スコープのレンズには琥珀色の瞳が小さく、微かに反射している。

「……みんなが、手足を倒してくれた……」

 今度は頭部を牽制していた自分たちが躍動する番だ。

「大きければ、強いってのは……単純……」

 彼女の周囲を待っていた剣のオブジェクトがくるくると回転して、切っ先が怪獣の眼球に向く。
 闘気を解放して狙いを定める。

「目標、ロック……殲滅開始……」

 怪獣の左目に弾丸が飛び込む。
 片目をつむった怪獣が首を頭上に向けて、唾液を撒き散らしながら光線を吐き出した。

 所詮は直線の攻撃だ。
 不意をつかれない限り、警戒している限り、回避は難しくない。

「ふひひ、ぬるいぬるい。ってゆうか、こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」

 玉置 雪子(jb8344)は先ほどから意図的に怪獣の眼前を飛行している。
 スキル枠を回避上昇に割いていた彼女は回避が容易と悟るや、積極的に攻撃をひき付けていた。

「外し過ぎワロタ!」

 戦闘機が華麗にターンするかのように、高速を維持したまま滑らかに飛行線を描く。
 長く飛んでいるせいか、先ほどから無表情になりつつあった。
 天使の力が強く出ているときの変化だ。

「……バカな貴方に関心はないですし、ぶつける感情もありません」

 急上昇で光線を避けた後、飛行を止める。
 頭を地面に向けた状態で自由落下しながら、逆さになった世界で光纏を練り上げ、氷剣を創造する。
 それを怪獣の眼球へ掲げたまま落ちる。
 落ちる。

「ただゲームのように貴方を狩るだけです」

 突き刺さった。
 怪獣の悶える声を聞きながらくるりと前転して、再び飛行、一度離れる。

 その隙に後藤知也(jb6379)が怪獣の背中を壁走りで駆け上がる。

(鬼はどんな人間の中にも存在する。俺の中にだってもちろんな。……だが、鬼を人間に戻す術なら必ずあると信じる)

 ――お前が作って日常に戻っていった、名無鬼と同じようにな。

(やっと見えたぞ)

 彼が目指していたのは頭部。天頂部だ。
 悶えていた怪獣が再び動き出す。
 ぐらり、と足場が揺らいだが後藤は構わず疾走した。
 幼少の頃に通っていた忍術道場での修業を思い返しながら、彼は跳ぶ。
 空中で前転して、全体重と勢いを乗せた斬撃を叩き込んだ。

 が、やはりバッドステータスが通らない。
 急激に頭を振られる。

「どわっ」

 滑り落ちた彼は、登っていたときと同じように刀を怪獣に突き立てた。
 奇しくも、突き立てた場所は右目だった。
 左目にはSpicaが銃弾を撃ち込む。

 玉置も突っ込んできた。
 氷のアウルで創造した鞭で怪獣の顎を縛り、口を封じる。
 一秒と待たずに振りほどかれて、玉置は逆さの状態でまた落ちていく。

「……いや、それでいいんですよ」

 口を封じれば口を開けるはずだった。
 その瞬間を、滞空するグラサージュが弓で狙っている。

 いつもネットスラングを連発している玉置は落下しながら、無表情で呟く。

「……人は誰でも苦痛を持つものです。人間そのものより、それをつついて誑かして暴走させる貴方自身の方がよっぽど脅威ですね」

 逆さの世界で、透明の檻の中にいる名無鬼が見えた。
 extension.exe――翼を広げて、言葉をぶつける。

「サイクルに貴方は不要です、イレギュラー」

 口腔を矢で貫かれた頭部がついに沈黙する。

●腹部
 確かに、頭部の攻撃手段にはもとより多彩さがなかった。
 光線と咆哮と、せいぜい噛み付く程度か。
 だが頭部の動きに幅がなかったのにはもうひとつ理由があった。

 頭部が落ちる数ターン前のことだ。

『……諦めの悪い人だねぇ』

 名無鬼が呆れた視線を送っているのは、マキナ・ベルヴェルク(ja0067)である。
 怪獣の左足が膝をついてから、彼女はずっと透明の檻の破壊を試みていた。
 幾度か振り払われて後退したが、同じ数だけ戻ってきた。そして拳での攻撃を繰り返した。
 それは今も続いている。
 体力が消耗すれば、右腕で燃える黒焔の光纏に吸収の効果を付与して対処した。

『この檻は壊れないよ。絶対にね』
「天魔の言うことなど信用なりません」
『嘘はもうつかないよ。やっとその必要がなくなったんだ――言っただろう、この怪獣が嘘偽りのないボクの姿だって』
「嘘偽りのない貴方――そんな化物の腹に隠れて言う科白ですか」

 ガンッ!! とマキナの拳が檻を叩く。
 壁もマキナの表情も、ぴくりとも動かない。

「鬼が討たれる事が道理なら、貴方も此処で倒れるべきでしょう」
『ボクは負けないよ。ボクには名の無い鬼たちに試練と救いを与える義務がある』
「人には成長する為に超えるべき試練が必要――成程確かに。ですが快楽に浸る理由付けとしては滑稽ですね」
『正当な対価だよ。キミたちだって依頼を達成したら報酬をもらうだろう? 悪が尽きないから、キミたちも存在できる』
「――そうですね。悪は確かに尽きません。ですが、甦る悪が貴方である必要はありませんよ」
『ふふっ、まぁね。でも甦る以前にボクは負けない。キミたちではこの壁は破れない……ん?』

 名無鬼が何かに気付く。
 怪獣の頭部から玉置が落下してきている。
 視線が合った瞬間、彼女は羽根を広げて何かを呟いた。

『……あーあー、やっぱり頭部も負けたか』

 苦し紛れの策なのは初めから承知の上だった。

『まぁ、喋って気も散っていたしね。狙いはそれかい?』

 嘲笑を向けられたマキナは「いいえ」と即答する。

「貴方を終わらせるためです――次など与えません、此処で終焉(おわり)です」

 マキナの背後、仲間たちの光纏がよりいっそう光り輝く。
 腹部を目指して走り始めている。

『……ふふっ!』

 怪獣が地中に埋めていた左腕を引き抜く。
 左腕は撃退士たちの進路へ大量の土石を吐き出した。

「今さらこんなので止まるわけないでしょーがっ!」

 雪室が一番速い。
 その叫びを聞いたマキナは右腕の光纏を燃やす。
 もっと強く、と。
 祈るような心地で練り上げた全力全開の一撃――『終焉』を内包した幕引きの一撃を、透明の檻に放つ。

 ――ドンっ!!!!!!

『っ!?』

 檻の中まで衝撃が突き抜ける。
 今まで受けた攻撃の中で最大のダメージだった。

 マキナが通信で語る。

「いま打ったところが檻の急所です」

 何度も、何十発も拳で確かめた。

「これが技です。ゲーム感覚で戦っている貴方には一生理解できないでしょうね」

 マキナが退いて、雪室が入れ代わり最前線に到達する。
 氷結晶状のアウルを極限まで集中して創り出した巨大な氷剣が大きく振り被られ、檻に叩き付けられる。

『っ、く、ははっ、あはは! 無駄だよ!』

 衝撃は伝わってくる。だが壊せるはずがない。

『この壁はボクの奥の手だ! ボクの感情で出来ている不落の壁――ボクが鬼であろうとする限り、この壁は破壊できな』「ならその壁ごとあたいが、あたいたちが吹き飛ばすっっ!!!」

 ……。
 ……なんだと?

「覚悟ォォッ!!」

 雪室はやたらめったら剣で檻を攻撃し始める。退いていたマキナも戻る。

「ぁぁぁァァああああ!」

 雄叫びを上げて、自己暗示により殺戮マシーンと化したカインも突っ込んできた。
 檻に大剣を叩き付けたかと思えばショットガンをぶっ放す。

「亀裂が一つでも入ればこじ開けてやる! そのままぶち破れェェ!!」
『無駄だと言っているだろう!』

 また別の誰か飛び込んできた。

「貴方は、過ちを犯した……」

 Spicaの光纏が武器に収束する。斧だったはずのヒヒイロカネが一撃の間だけ、報復者フラガラッハを具現化、剣に姿を変える。

「それに、気が付かない……憐れなヒト……」

 叩き込まれる。

『憐れなのは悪手を打っているのはキミたちの方だ!』

 名無鬼は檻と並ぶもう一つの奥の手を発動させる。
 怪獣の皮膚からブシュゥウウウと毒々しい紫色の煙が吐き出された。毒ガスだ。

「だったらこっちも奥の手発動させようじゃねーの!」

 距離を詰めている途中だったラファルが両腕から下を機械式砲塔に変形させる。
 広範囲に色彩鮮やかな炎をばら撒く秘密兵器が毒ガスの拡散を遅らせる。

「……仮に毒が体内に回っても誰も退かんぞ。お前を引きずり出すまではな」

 ファーフナーが檻の中を観察しながら呟く。

「人間に引きずり出されるなんて癪だろ? 出てこいよ、自分の意思で」

 誰かが通信機の音量を上げているのだろうか。
 壁を隔てているはずなのに、彼らの言葉は名無鬼の耳にも入ってくる。

『いいや――負けるのはキミたちだ。ボクの心が折れなければいずれ毒がキミたちを殺す』
「折るつもりなんてないさ」

 暗闇にノストのワイヤーがきらめき、透明の檻が悲鳴を上げた。
 ノストが作った薄い引っ掻き傷に蓮城が斬撃を重ねる。

「名無鬼……いえ、星野七輝。危機が幸せのきっかけだというのなら、貴方も幸せになりたかったんじゃないの? 今の状況、貴方が駒にした皆とどう違うのかしら」
『まだそんな見当違いなことを――そうやって揺さぶろうとしても無駄だよ』

 撃退士の攻撃は止まない。
 無敵の透明壁につけられる傷が際限なく増えていく。

「特撮の悪の華は散ってこそナンボだが、お前は華なんぞになれやしないな」

 ミハイルの弾丸が檻にめり込む。

「他人の感情を操っていい気になるのはさぞかし楽しいだろうよ。だが、そろそろ自分の感情をぶちまけたらどうだ。もっと早い段階でそうしていれば、また違った人生を歩めたかもな」
『黙れ!』

 グラサージュは名無鬼の叫びを聞いて弓を下ろす。

「七輝センパイは……センパイ自身を私達に救って貰いたいの? ……本当にそうなの?」
『違うと言っている!』
「だったらどうして壁が壊れてるの!?」

 はっ、と名無鬼は顔を上げた。

『……やめろ』

 目の前にガラスの破片が飛び散っている。
 カインが巨大なハサミをねじ込んでいた。

「入ってくるなああぁァっっ!!!」

 壁が粉々に砕け散る。

 檻の内部へ侵入されることは名無鬼にとって最大の屈辱であり、危機でもあった。
 彼の分身である怪獣は檻の修復を最優先に行動する。
 回復にはエネルギーが必要だった。

 ――踏み込まれるならば死んだ方がマシ。

 回復すること、七輝の願望を叶えること。
 二つを両立するために怪獣は一つの決断を下す。
 体内にいる七輝に喰らい、壁を戻すという選択だった。

 怪獣の肉壁から射出された消化液が、七輝の肌を焼く。

「あぐっ」

 ……いや、これでいい。

 悪は散ってこそ、悪役だ。


 目覚めると夜空が見えた。
 一面の星空だった。

 星の海の中に、柄杓型に輝く七つの星が見えた。

 ――昔の人は北斗七星を探して方角を確認していたんだ。
 ――七輝はね、誰かを正しい方へ導けるように、って父さんがつけた名前だ。

 星野七輝は父親の言葉をぼんやりと思い出している。

「気が付きましたか」

 目をしばたかせていると、声をかけられた。
 御堂とイリンが星野七輝を見つめている。他の撃退士も七輝を囲んでいる。

「……」

 思い出す。

「なぜたすけた」

 怪獣に喰われそうになったのは予想外の事態だった。
 だというのに、御堂とイリンは真っ先に飛び込んできた。

「喰えなければ一番身近な貴方を喰う。その怪物はそういう特性でしょう? 貴方が死んで終りという結果を私達は認めない」

 発言したイリンを睨み返しながら、七輝は身を起こす。
 誰かにみぞおちを殴られて気絶したはずだが、痛みはなかった。

「……殴ったのは俺だ」

 月詠が白状した。

「言いたいことがある奴は多そうだったけど、まずは拘束してからだろ」

 黙っていると、ミハイルも近寄ってきた。

「ずっと警戒してたんだよ。特撮モノの悪役に憧れてるなら、最後はパッと散るってのを考えていたんじゃないか。そうはさせないぜ。妙な真似したらすぐ止めてやる」
「……ボクの怪獣は?」
「破壊したよ。ランプを壊して、ね」

 ノストの返答に七輝は虚無感を覚える。

「……ふふっ」

 七輝は嘲笑った。
 他人ではなく、自分を。

「死ぬなんて許しませんよ」

 御堂が手を差し伸べてくる。

「誰かの救いを求める声を拾い上げ、正しい手段で救いなさい。それが私が貴方に求める償いです。怖ければ付き添います」
「……ボクは今でも自分が正しいと思っているよ。危機とイレギュラーは絶対に必要なんだ。そういう状況になるまで成長できないひとたちがいるんだよ。……そういうのをたくさん見せてやっただろう?」

 しん、と重苦しい沈黙が流れる。

「……憐れですね」

 七輝は声がした方向を見る。雫が、悲しそうに俯いていた。

「感情の発露による対立は確かに人を成長させるのかも知れない……けどそこに力は要らない。互いが相手の想いを理解しようとする努力だけすれば良い。貴方は、それが出来なかった……」
「できなかったのはボクじゃない。母だ。……あの人は本当に救いようのないクズだ」

 言った瞬間、後藤が七輝に近づいてきた。
 目を見てきたかと思えば、無言で一発殴られた。

「……少しは霧が晴れて周囲が見えるようになったかよ。人の何気ない言葉を鵜呑みにするな。本心はそんな一言に隠れちゃいない」
「だったら母さんを連れてきて喋らせてみるといい。できないはずだ。どうせ、どこかへ行ってしまったんだろう?」

 返事はない。
 七輝は、激情と共にもう一度宣言する。

「あの人は本当に救いようのないクズだ。この世界にボクの居場所はどこにもないっっ!!!」

 ずっと押し殺してきた、嘘偽りのない自分だった。

「それでも俺たちは君を殺さないよ。ただ殺すだけでは解決しない。七輝君も救わなければいけないし、君を誘惑した奴がいるハズだ」

 ノストの発言に七輝は失笑する。

「ボクを利用した天使のことが聞きたいなら無駄だよ。ボクはあの方のことなんて何も知らないんだからね。結局キミたちはボクを救えていないし、何も情報を得ていない。キミたちの負けだよ」
「……うん、私達はセンパイを救えない」

 辛そうに眉を下げたグラサージュが歩み出る。

「……センパイ、気付いて。センパイのために泣いて居場所を作ってくれてる人のことを。そのままのセンパイを受け入れてくれる人がいることを」
「そんな人がどこにいるんだい?」

 問われたグラサージュは、七輝を包囲している撃退士たちの人垣に視線を送った。
 彼らが道を開けると、イリン・フーダットが歩いてくるのが見えた。誰かが隣にいる。

「……佐塚?」

 震えながら歩いてくる。
 一歩進むたびに苦悩が深くなっているのが見て取れる。

 近くまで来て立ち止まった彼女の隣に、牙撃も立つ。

「星野をどうしてほしい?」

 ……とんだ茶番だ、と七輝は心中で嘲笑する。

「どうするかお前が決めろ」

 彼女が答えられるはずがない。
 男勝りで気が強そうに見えるが、実はただの小心者だ。
 そんな彼女が何か言えるはずなど

「……さないで」

 えうっ、と嗚咽が漏れる。

「殺さないで……死なせないで……死なないで、おねがい……そのままで、いいから……」

 ……。
 膝から下の世界が、無くなったような心地だった。

「泣いてくれる奴がいるのに、馬鹿な奴だ」

 牙撃が佐塚の背中を軽く押す。
 促された彼女が、七輝に近づいてくる。

「――待て、何かいるぞ!」

 主の警戒をしていたファーフナーが騒ぐ。
 上空で何かが光っていた。
 撃退士たちの意識が空に逸れた瞬間、七輝と佐塚の足元に大きな穴が開いた。

「っ!?」
「きゃっ!?」

 二人が地面に飲み込まれる。
 撃退士から、遠ざかっていく。


 二人を飲み込んだのは地中を自在に進むモグラ型のサーバントだった。
 七輝が戯れに描いた、体内に睡眠ガスを充満させる人さらい用の個体だ。

「起きろ、七輝」

 目を開き、状況を思い出して飛び起きる。

 場所は山奥のままだ。隣には佐塚もいる。
 そして目の前には、見知らぬ天使が。

「……主様?」

 返事はない。
 そんなことどうでもいい、と言わんばかりだった。

「人間は、よくわからんな」

 主は七輝ではなく、佐塚を見ていた。

「お前にはこの娘が理解できるのか?」
「……。ボクに死なれたら寝覚めが悪いだけでしょう」
「それは本心か?」
「……」
「まぁいい。そんな話をしにきたのではない。今のままだとお前は捕えられ、未来を失うだろう。私はお前の能力を買っている」
「……シュトラッサーになれという話ですか?」
「そうだ。人間界に居場所がないなら、私のそばにくるといい」
「以前にも断ったはずです。ボクは人間だから人間の脅威でいられる」
「……変わらんか。だが安心したぞ。まだお前は鬼のままだ。……次はこの娘を使え」

 主は、佐塚を指差す。

「……鬼にしろと?」
「そうだ。この娘が抱く弱さ、お前に対する苦悩、十分利用価値があるのではないか?」
「……」
「どうした」
「……いえ、どう、使おう、かと」

 嘘だった。
 眩暈がして何も考えられない。
 顔を下向けて吐き気をこらえる。

「……いや、しかしそれも無粋か」

 主は、あっさりと前言を撤回した。

「やはりやめておこう」
「……そうですね」

 ふぅ――と安堵した瞬間、妙な感触があった。

「……え」

 腹の中へ、主の腕が透過していた。

「七輝……私はお前を見て学んだ。人間は追い込まれたとき、自分の願望を叶える救いを提示されると必ず飛びつく。かつてのお前には、私に利用されていることすら利用する狡猾さがあった。しかし今のお前にそれは望めない。撃退士に痛みを理解されたお前はただの人間になった」
「あっ、ぐ、あ」

 身体が熱い。
 体内に何かが植え付けられている。

「貴様はもう鬼にもシュトラッサーにもならない。用済みだ。今まで手を貸した分、最後まで絞り尽くさせてもらう」
「あ、ああぁぁぁあっっ!」

 上空の北斗七星が、黒い雲に隠れる。

「堕ちろ、星野七輝。自らの悪夢に溺れ死ね」



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
重体: −
面白かった!:14人

撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
無傷のドラゴンスレイヤー・
カイン=A=アルタイル(ja8514)

高等部1年16組 男 ルインズブレイド
さよなら、またいつか・
Spica=Virgia=Azlight(ja8786)

大学部3年5組 女 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
守護天使・
イリン・フーダット(jb2959)

卒業 男 ディバインナイト
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
魂に喰らいつく・
後藤知也(jb6379)

大学部8年207組 男 アストラルヴァンガード
【名無輝】輝風の送り手・
ノスト・クローバー(jb7527)

大学部7年299組 男 アカシックレコーダー:タイプB
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
氷結系の意地・
玉置 雪子(jb8344)

中等部1年2組 女 アカシックレコーダー:タイプB
『楽園』華茶会・
グラサージュ・ブリゼ(jb9587)

大学部2年6組 女 アカシックレコーダー:タイプB