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マスター:サラサ
シナリオ形態:シリーズ
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/12/30


みんなの思い出



オープニング


 監視カメラの映像編集を終了し満足げに頷く。
 そこには久遠ヶ原学園より派遣された撃退士たちによる、博物館での勇姿が克明に映し出されている。
「――……これは、良い宣伝になるぞ」
 うっしっし……と悪代官バリの笑みを浮かべた男は次の瞬間青くなった。
 ――……バシャバシャバシャ……
 盛大な雨漏りが、デリケートな機械の上に降り注ぐ。
「生徒を見せ物にするのはやめていただけますか?」
 パチッ、バチッ
 一部細い煙を上げる機器は残念ながらご臨終だろう。
「と、常盤くん! い、いや、私はヒーローたちの活躍を世間へと……」
「それは今回の依頼に含まれていませんでしたね? 契約外のことをされては困ります」
 ぎっと背もたれを傾けて常盤楓(jz0106)を振り仰いだのは、遊園地のオーナー兼先日のディアボロ占拠事件があった博物館々長だ。
 オーナーは大仰に嘆息して、わざとらしく両手を肩の位置まで上げパタパタと揺らす。
「生徒さんたちには甘いのに、どうしてこう厳しいのかねぇ」 
 楓は空っぽになったミネラルウォーターのボトルに蓋をしつつ肩を竦める。
「私は約束の価値を理解していますし、それに生徒は可愛いですから」
 貴方と違って、とくすくす笑う姿はとても愉快そうだ。
 しかし、ふと陰が落ちる。
 今回の一件にしても、運良く上手くいったというだけだ、どれほど計画を密にしていても万が一ということはあり得る。
 ヒーローたちがヒーローであるために何を賭けているのか間近で知る身としては――フクザツだ。
 楓は小さく嘆息した後、
(まあ、彼らと接していてそう悲観的な空気を感じることは殆どありませんけどね)
 と、その顔に笑みを戻して話を続ける。
「それで報酬上乗せの件ですが……」
「ああ”約束”だからね。構わないよ、存分に楽しむと良い」
 欲深な男ではあるが、出し惜しみをするよなケチなタイプではないことが救いだ。
「会場の飾り付けも終わるよ、折角だから見ていくと良い」
 にこにこと椅子から立ち上がったオーナーは、こっちこっちと楓を手招きした。


 パーティー会場は遊園地のシンボル:クリスタルキャッスル大広間。
 白と水色の美しく清楚な佇まいの城には、華美になりすぎない白色と青色の発光ダイオードの電飾が施され、夜の闇に美しく浮かび上がる。

 クリスマスリースに彩られた大扉を潜ると夢の世界。
 背の高い常緑樹は赤地に金の縁取りがなされたリボンがゆったりと弧を描き、銀と金のボールが優麗な光を放つ。
 その足下には大小さまざまプレゼントが積み上げられ、その間からテディベアが覗くが……ぎゅむ。握りしめ確認。
 大丈夫、ただのぬいぐるみだ。

 シャンデリアから降り注ぐ光の粒は優しく会場内を照らし出し、テーブルや壁に掛かる燭台に灯る蝋燭は柔らかく揺れる。
 絶えず流れる生演奏。曲は、定番のクラシックからジャズ、アレンジされたボサノヴァ調のポップスなど招待客を飽きさせることはない。
 中央はダンスフロアとして場所が確保され、テラス側にはビュッフェスタイルで料理が並ぶ。クリスマス定番のもの(ターキーやプディング)はもちろん、それ以外も目にも楽しいものになるだろう。

 ――そして、後日。
 生徒たちの元へと一通の封筒が届いた。
 真っ白な封筒は徽章で蝋印がなされ、納められた便せんは金で箔押しされた高級仕上げ。

 もちろん中身はクリスマスパーティーへの招待状だ。
 その他に、テーマパークイベント専用フリーチケットとパーク内リゾートホテルへの宿泊券が同封されている。

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リプレイ本文

●遊園地の遊び方
 冬の空は高く。青く。
 エアスプレーで吹き付けたような白い雲がうっすらと掛かる。冷たい風は刺すようにその身に触れてくる。
 カタンカタンカタン……
 ゆっくりじわじわと、空が近づき地面が遠のく。
 その高さにごくりと生唾を飲み込み、ぐっと奥歯を噛みしめたのは誰だろう。
「人はこのようなもので飛ぶのですか?」
「そう、下るときには必ず両手を上に上げて……」
 安全バーを握りしめていた手を離しセラフィナ・ヒューリライネン(jb2576)へ真似してとばかりに英御郁(ja0510)は両手を空へと突き上げる。
「こうだよね!」
 隣にいた飯島カイリ(ja3746)は超良い笑顔で両手をぶんぶん!
 ほう……と感心した風に首肯したセラフィナに、違うよと続けようとした桜木真里(ja5827)は、背後からもなるほどと頷いた気配を感じ、ちらと見る。
 鍋島鼎(jb0949)と虎落九朗(jb0008)が顔を見合わせた後、恐る恐る手を
「離さなくて良いか、ら……!」
 ―― ガク、ン
 今、その空に手を伸ばせば届きそうな場所から一息に……下降っ!
「き、きゃぁぁぁ……!!」
「あははは」
 風を切る音が耳を塞ぎ、笑いの混じった悲鳴がどんどん後ろへと流れていく。
「っあー、このゾクゾクする感じが堪らなく楽しいんだよな!」
 確かに、と同意したところで聞こえはしないだろう。真里は流れていく景色の中で、ふと嵯峨野楓(ja8257)が視界に入る。
「嵯峨野、大丈夫?」
 風に負けないように少し声を張るが、その声は届いていないようだ。そういえば、みんなで並んでいたときも
『え、ジェットコ……? うん、行くよ? へへーきに決まってんじゃん?』
 明らかな強がりだったような気がする。

 クリスマス当日の遊園地。
 多くの笑顔があふれる場所。

「桜にぃ、いっくよーー!」
「え、ちょ、」
 ここに高速回転するコーヒーカップが一客。
 全力で遊び倒す勢いのカイリと一緒に乗ったのが運のつき。
 回る回る世界が回る。
 遠心力で五臓六腑が背もたれへと引きつけられる。そんな中でもカイリは笑顔だ。
「なるほど、これを全力で回すのですね?」
 見ていたセラフィナもこくりと頷き、中央の円卓を掴む。
「いや、これは俺でも分かる、分かります、そんなに……ひ、ひぃっ!」
 九朗の制止は聞こえなかったようだ。ぐんっ! とカップは大きく回り、立ち上がりかけた腰は堅い座席に押しつけられる。
「あぎゃ☆」
 舌を噛まないようにするのも大変。

「あ、何か楽しそうだよね!」
 カメラカメラ。絶叫系を網羅し、へろへろぽてんっとベンチに落ちていた楓だが、背後からの悲鳴、もとい、笑い声にカメラを向ける。
「ピント合わせるの難しいんじゃないっすか?」
 ほい、どーぞ。と、御郁は売店で買ってきたジュースを楓のほっぺにぺたり。
「おお。英君ありがとー」
 ギリギリと使い捨てカメラのフィルムを巻きつつ、ベンチに座り直した楓はそれを受け取る。
「ほら、鼎も」
「ありがとう、ございます」
「大丈夫か? ぼんやりしてっけど、疲れた?」
 鼎は慌てて手にしていたライターを引っ込めると、それを両手で受け取って、大丈夫ですと微笑む。
 そっか? と御郁に快活の良い笑顔を向けられると、そうでなくとも元気が出そうだ。
「それじゃ、二人とも一枚」
 ピロリン……
「あっちも序でに、一枚」
 御郁が手にしたデジカメに笑顔を向けていた楓は「あ!」と声を上げて立ち上がる。その視線の先にいるのは、遊園地には欠かせない着ぐるみスタッフ。
 ちびっ子たちと戯れつつも、こちらに気がついたのか、もふもふの手を振ってくれる。
 もっきゅもっきゅと可愛らしい足音でも聞こえてきそうな動きで着ぐるみが近づいてくると、丁度コーヒーカップも止まったようだ。
 ようやっと解放されて出てきた真里と九朗は若干酔っている風だが女性陣は
「なかなか愉快なものですね」
「だよねー、楽しいよねー」
 強かった。

 ちらりと周りに見つからないように、頭部を浮かせると、中にいるのはやはり祁答院久慈(jb1068
「にっ似合ってますよ先輩!」
 楓はかみ殺した笑いを隠せていない。
「でも、バイトは良いって」
「うん、そうなんだけど。これ着てるとみんなにこにこ寄ってきてくれるし、そういうの嬉しいし、つい楽しくなっちゃって」
 恐らく、着ぐるみの中ではにこにこしているだろう久慈。それならと、みんな微笑ましい気分になる。
「あ、写真撮りましょう写真!」
 久慈につられてほっこりして忘れるところだった。
 一般客に声を掛け全員で並んで、ぱしゃり☆思い出をまた一枚刻み込む。

「それじゃあ、ボクはもう一回!」
 メリーゴーランド♪と駆けだしたカイリを見送った。

●クリスタルキャッスル
 清浄たる空気の中に浮かび上がる城は、その名に相応しく優麗であり荘厳。
 豪奢に感じる大広間の扉にも繊細な細工と飾り付けがなされ、聖なる夜に美しさを添えた。

(キタキタ、豪華クリスマスパーティー!)
 ぐっと拳を握りしめた御郁は、ふとガラスに映った自身の姿に曖昧な笑みを浮かべる。
 そっと前髪を横へと流し付け、クロスタイを整えた。タキシードの漆黒は御郁のしなやかな体躯に、艶のある面をより美しく見せる。
「始まっていますよ?」
「お! 常盤先生今回はナイス計らいっすね!」
「ふふ、みなさんの功績ですよ」
 夜になると、いつの間にか常盤楓も合流していた。
「先生、これ大丈夫?」
 服に着られている感が半端ないんですけど。とあわあわ駆け寄ってきた九朗に常盤は微笑む。
 そして、九朗の肩と腰を順番に弾き、最後に額をくんっと押す。
「自信がなくても胸を張り、姿勢良く。はい、素敵ですよ」
 重ねて依頼参加していないにも関わらず、ご褒美を受け取ることが出来た幸運に恐縮する九朗を労った。
 ギィ……と重々しく開いた扉の先は別世界。
 シャンデリアから降り注がれる光に、溢れだした音楽たち。集まった人々の楽しげな笑い声。全てが輝いて見える。

 基本に忠実なテールコートをぴしりと着こなした久慈は、会場内を観察しているうちに
(……ここにもテディベア)
 見上げるほど、大きなツリーの足下に置いてあるプレゼントの山の中。その一つと目があった。
 ちょこんと置かれる姿は、ほんの少し寂しそうだ。先日、ある意味楽しげだった彼らを思いだし連れ出してあげたい気にもなるが
(流石にそれはマナー違反、かな)
 クマと踊る訳にもいかないだろう。
 久慈はくすくすと笑いをこぼし、腰を折ってぽすりと小さな頭を撫でる。
「……楽しんでいくんだよ」
「ええ、貴方も楽しんでください」
 掛かった声に、え……と顔を上げれば常盤からシャンパングラスを差し出された。黄金色の液体から細かな気泡がツリーの煌めきを映して輝く。
「ありがとうございます、先生」
 受け取ったグラスに向けただけの礼でないことは伝わる。
「実地での貢献は彼ら撃退士かもしれませんけど」
「貴方も……貴方もそうですよ」
 どこか客観的に口にした久慈に重ねると、確かにと緩く口角を上げ笑みを作る。そして、続けられる見守る側、待ち人側への労いの言葉に常盤の胸の内が暖かくなった。

「こっち、これもおいしー♪」
 肌の色に馴染むクリーム色のドレスを身に纏ったカイリは、次々に用意されている食事を取り分け口に運ぶ。
 側にいた鼎の皿が空いているのにも気がついて「おいしーよ」と無邪気な笑顔で、ぽんぽん載せた。
 礼を告げた鼎に食べて食べてと勧めると、自身もぱくり。そして、次はあっちー♪と流れていったカイリを見送って鼎は微笑む。
 テラスへと続く大きなガラス扉に写る姿。
 胸元に大きなリボンのついたワンピースタイプのドレスは、とても着慣れた感じがする。
(今は無い記憶の向こう、私はこうやってドレスを着て歩いていたことがあったのかもしれません)
 鼎はふとそんなことを思い、軽く双眸を伏せる。
 空白の時間を取り戻したら、楽しかった今日の記憶はどうなってしまうのだろう?
 記憶を取り戻す、そこには本来の自分があるのだろうけれど、それは、本当に良い事なのだろうか?
 そんな不安に苛まれ、鼎は眉根を寄せた。
 ふぅ……と、細く長い息を吐ききり瞼を持ち上げると、ガラスの中の自分と目が合う。
「あ」
 その瞬間、ぱぁっと頬が朱に染まりあわあわと、頬についていたご飯粒を拭う。誰にも見られていないことを確かめるようにきょろきょろすると、ダンスのお誘いに来ていた真里と目があった。
「あ、ぁぁあの」
 見られた?
 見られてない?!
「良かったら一曲踊ってくれないかな」
 優しい笑みに添えられた言葉。差し伸べられた手を順番に見つめて鼎は「よろしくお願いします」とその手に小さな手を重ねた。

「あ、今なんか凄く美味しいの食べた気がする、どれだっけ?」
 スイーツが並ぶ一角は全種類制覇しそうな楓の姿があった。
「セラフさんも食べてる? これ美味しかったですよ?」
 多分。の部分は飲み込んだ。
「ありがとうございます。セラフめは十分に頂戴しました。楓様がお楽しみくださいまし」
「そーですか? あ。鼎ちゃんが踊ってる。可愛いー。おー祁答院先輩も、あの美人は誰だー? ……は!」
 人混みの中に常盤の姿を発見した楓は、あっさりその場を放棄して、踊って下さいと駆け寄った。

「足踏んだらごめんなさぃ!」
「大丈夫、踏みませんよ。私がリードします。私から逃げないで下さいね?」
 案に腰を引くな姿勢良くという意味ではあるのだが
「もちろん! 離しません!」
 あれ? 楓は勢い良く、若干興奮気味に答えてしまった。うひゃあ、失敗したかなぁ? と恐る恐る見上げると、ふわりと笑みを落とされる。
「―― っ!」
(やべっ鼻血!)
 大丈夫出てません。ローズピンクのドレスを自ら赤色に塗り変えるようなことは起こってない。こくり。 

 1、2、3……ウィンナワルツのリズムは初心者でも踊りやすい。
 うとうととしていたセラフィナを一曲だけと誘い出した御郁、真里と鼎も、そつなく踊る。ドレスの裾が描く軌跡は流れるような流線を描き美しい。
 そんな中、個性的なワルツも目に付いた。食べて喋ってがメインだったカイリも、それで終わるのはもったいないと九朗がぎくしゃくしつつも恭しくその手を取る。
 しかし、身長差をカバーする役目もあるヒールも低く、元気の良いステップ。どうやらリードしているのはカイリのようだ。
「しんでれらになった気分ー!」
「お、うわっ」
 でも、楽しそうでなにより。

●シンデレラタイム
 ゴーンゴーン……
 城にある鐘突き塔から響いてくる音は12時を告げるものではない。
 10時。今宵最後のイベントの合図だ。
 これから開催される夜空に咲く花の鑑賞をと、パーティー参加者たちはまばらにテラスへと足を運ぶ。
 その人の流れから、ふと足を止めた楓は見上げた。大扉のてっぺんに飾られているのは宿り木。
 纏わる伝説は数あれど、現在巷で言われているのは
『宿り木の下に立つ女の子にはキスをしても良い』
 だろうか? もちろん実が残っていれば、だ。
(よく燃えそうだなぁ)
 楓の脳裏にそんなことがよぎったとは露程も知らず。
「嵯峨野……?」
「んー」
「良かったら、少し抜け出さない?」
 真里の声に振り返り、口にされた内容に楓は刹那何を言われたのかと逡巡する。
「……お手をどうぞ、お姫様」
 とんっと胸が高鳴り遠慮気味に差し出された手を取った。
 お互いほんのり朱色に染まった頬は、夜の闇が隠してくれるだろう。

 ―― ……ドーン…パリパリ……ドー……ン!
 夜闇の黒と星の淡い光しか存在しなかった空が、色鮮やかに煌めく。
(日付が変わると魔法が解ける灰かぶりは、そもそも物怖じしなかったのでしょうか)
 儚く散り落ちてくる光の流線を、じっと見つめ鼎は物憂げに小さく息を吐く。
 セラフィナの白褐色のロングドレスにもその彩りは落ちて煌めき、玉響の芸術を映し出す。
「なるほど……これが地上で見る花火というものですか」
 ぽつりと感慨深げに呟いたセラフィナの前に、シャンパングラスがぬっと現れた。
「折角だ、乾杯しよーぜ」
 御郁の提案にそれぞれグラスを手にする。
「んーじゃ、まぁ、依頼の健闘と成功」
「俺参加出来てないんだけど」
「そんな細かいこと気にすることねェんじゃないっすか?」
 にやりと口角を引き上げた御郁に、九朗もそれじゃ遠慮なくとグラスを掲げた。
「じゃ、あとはクリスマスに……」
「かんぱーぃ!」
 重なる声と、心地よく響くグラスの音は花火の音にかき消され消えていく。
「――ていうか、足りなくね?」

***
 観覧車のゴンドラは静かにゆっくりと回る。
 ついさっきまで居た城も、花火も平行線上に見える高さ。
 こんな場所から花火を見る機会なんて今までなかった。
 ほわほわと花火とイルミネーションを堪能していた楓は、ふと階下に目が止まる。
(見ろ! リア充がゴミの様だ!)
 ハッと某天空人の台詞を改変し心の中で毒づきつつも
「あっ、また花火上がったよ! おー……冬の花火も乙だねー」
 感嘆の声を上げる。
 花火が上がった瞬間だけ、地上と夜空との境界線が曖昧に感じるほど視界の全てが煌めく。
(喜んでくれたみたいで良かった……)
 盗み見た楓が満足そうな笑みを浮かべていることに、真里はほっと胸をなで下ろす。
「ん?」
 その視線に気がついた楓は、微かに頬を朱に染めて
「今度は、私が誘うから」
 はにかむ笑顔に花火が落ちる。
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
 このとき真里がどんな笑顔で微笑んだのか、それは楓だけが知っている。

●夢の入り口
 花火が終わりパーティーが終演の時を迎えると、辺りは一気に夜の帳が支配する。
 ホテルの部屋は全てパーク側。昼の名残のように、ちらちらと残る電飾が物悲しげに明滅している。
 あんなににぎやかだったのが夢のようだ。
 けれど、これから参加者が落ちるのが本当の夢の中。
 楽しい時間は終わりを告げて優しい眠りが迎えにくる。

 セラフィナと鼎、楓はお迎えに忠実。
 九朗と真里、御郁は一つの部屋で男子会。依頼を振り返るなんてのは建前で、その中心は――

 ――そして
(着ぐるみは、初めてだったけどあったかいし、どこに行っても人が集まってきてくれるし)
 久慈はそんな人々の笑顔を思い出し、瞳を細め
「楽しかったな……」
 満足げに一人微笑む。

「んー」
 カイリは日記帳をぱらりと開き、書き綴る。
『今日はとっても楽しかった!
 これから悲しいこととか、つらいこととかいっぱいあると思うけど
 このパーティーを思い出して、いつも楽しくすごせたらいいなあ、と思いました』
「それから……」
 ペンの後ろで顎をぐりぐり。僅かに思案してから締めくくる。
『皆も楽しそうでよかったです、これからも仲良く出来ると良いなぁ』
 うん。と満足げに頷き日記帳を閉じた。

――……Merry Christmas!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

勿忘草を抱く手・
英 御郁(ja0510)

大学部1年60組 男 鬼道忍軍
幼心の君・
飯島 カイリ(ja3746)

大学部7年302組 女 インフィルトレイター
真ごころを君に・
桜木 真里(ja5827)

卒業 男 ダアト
怠惰なるデート・
嵯峨野 楓(ja8257)

大学部6年261組 女 陰陽師
撃退士・
虎落 九朗(jb0008)

卒業 男 アストラルヴァンガード
焔生み出すもの・
鍋島 鼎(jb0949)

大学部2年201組 女 陰陽師
Jack in the box・
祁答院 久慈(jb1068)

大学部7年158組 男 ナイトウォーカー
撃退士・
セラフィナ・ヒューリライネン(jb2576)

大学部4年268組 女 陰陽師