.


マスター:佐紋
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/05/18


みんなの思い出



オープニング

 ●合宿へ行こう! 
 それはある日のことだった。

 『春季合宿のおしらせ』

 黒板に大書した教師が向き直り、熱く語りだす。
「諸君らはいついかなる時も、天魔と戦うための修行を欠かしていないと思う。
 しかし、春になり、新しい生活が始まって、多少気が緩んでしまうことがあるだろう。
 天魔はその隙を狙ってくる!故に、春季合宿を行う!」
 背筋を伸ばす生徒達を満足そうに見まわし、教師は詳細を記したプリントを配る。

 行き先は東海地方にある温泉をメインとした複合施設。温泉の他、遊園地、花畑、プール、スイーツ製作体験…等々、豊富なアミューズメントが揃っていた。
 …というより、どう見てもアミューズメントしかない。
「あの、これって遠そ――」
「違う!合宿だ!!」
 一人が恐る恐る尋ねると、教師は断言した。教師が合宿と言うからには合宿なのだ。さすが久遠ヶ原。
 かくして、『合宿』旅行が敢行されたのである。

 ●宴会
 午後7時。移動やアウトドア体験。さらには温泉で羽を伸ばしてきた生徒達は大広間に集められた。
 合宿にはお馴染みの宴会である。

 そんな中、浴衣姿で壇上に現れたのは東雲楓。通称『部長』だ。
「えー。テステス。…おほん!皆楽しんでいるだろうか?今行われている合宿は日頃の疲れを癒し、
更なる戦いに日々に向けて英気を養って貰う為に行っている。
また、宴会の目的は普段あまり話したことの無い人達の良い交流の場でもある。
今日は無礼講だ!存分に楽しんでくれたまえ!あと、アルコール類は禁止だからな!」
 部長の挨拶が終わり、思い思いにばらけた。わいわい騒ぐものもいれば、少人数で固まっている者たちもいる。

 また、色々と出し物をする生徒達が現れた。お祭り好きの生徒達だ。これを機に技を磨いてきた猛者もいる。
 壇上にはカラオケも設置されている。のど自慢も多い。生徒達の独壇場となりそうだ。


 ●よるのがっしゅく
 楽しい宴会が終わり、それぞれ各部屋に戻っていった。
 部屋の割り当ては男性女性共にだいたい7.8人構成で分かれている。
「俺は…俺達はこれを待っていた!」
「行くぞ同士諸君!いざ、夢の園へ!」
「「「おー!」」」
 数名の男子生徒が女子生徒の部屋へこそりと入っていく。
 旅は何かを開放させる。心も沸き立ち血潮が熱くなるのだ。
「いらっしゃーい♪」
 女子生徒たちがキャイキャイと騒ぎながら男子生徒達を迎え入れる。
 普段入ることの無い女子寮。もとい女子部屋に感動する男子生徒達。
 湯上りの女生徒達を見てドキマギする男子生徒も居た。
 これから繰り広げられる楽しいひと時は、合宿ならではの一幕といえよう。
 夜はまだ始まったばかりだった。


リプレイ本文

 午後7時。移動やアウトドア体験。さらには温泉で羽を伸ばしてきた生徒達は大広間に集められた。
 合宿にはお馴染みの宴会である。

何故か場を仕切る東雲楓の挨拶の挨拶・諸注意があり、宴会が始まった。
 それぞれ思い思いのグループに別れ、ドンちゃん騒ぎを始めてるかと思えば、
 その場の空気を魚にゆったりと一人楽しんでいる者もいる。
 しばらくして、宴会場の壇上にスクリーンが設置され、カラオケ設備が設置された。
 これから生徒達の熱いステージが始まるのだ。
 のど自慢を自負する生徒が次々と壇上に上がり、持ち歌・ネタを披露する。
 カラオケには採点機能がついており、その採点内容でも会場は大いに盛り上がっていた。
 
 そんな中、一人の男が動いた。佐藤 としお(ja2489)である。
「折角、皆が一発芸やカラオケやってるのに紙吹雪一つないのか?
ここは僕がちょこちょこっと裏に行っていろいろ用意してこようか」
 ついにこの男が動いた。舞台裏を制する物は世界(宴会)を制する!とばかりに、
 色画用紙を三角に細かく切って紙吹雪、食材保管用にあったドライアイスで演出用の煙を用意。
 舞台の横にこっそりスタンバイするなど、場を盛り上げる事に余念が無い。

 その演出を伴って壇上に一人のアイドル?が現れた。彼は男の筈なのだが女の子。
 性別が迷子。女装が良く似合っているのは鴉乃宮 歌音(ja0427)だ。
 ネコ耳にメイド服を着てのご登場。彼には恥じらいは無い。
 あるのは皆を楽しませるというアイドル?としての誇りのみ。
「みんなー!盛り上がってるー?」
「「「イェー!」」」
「それじゃぁ聞いてね!『ミッドナイト☆カーニバル!』」
 深夜放送枠のアニメの主題歌である『ミッドナイト☆カーニバル!』
 大きなお友達に大ヒットしている、今期NO,1と呼び名が高いアニメの主題歌だ。
 当然認知度は高く会場大盛り上がりである。
 歌音はトーンを高くして女っぽく、かつ、悪戯っぽく可愛く歌っている彼女?に
 いつの間にか親衛隊がおた芸を繰り広げていた。

「寝かせてなんてあげないよ?私は遊び足りないもの!」

 伸びやかな歌声で曲のさびを歌う。
 そして採点。出たのは『89点』まずまずの高得点である。
 次に歌うのは『QueensKnight』ゴシックメタルの曲だ。
 服をバサリと脱ぎシャツと短パンになり、前髪かき上げトーンを落とす。
 男っぽく、格好良く歌い上げる。

「貴女の笑顔の為ならば
我等何度も立ちましょう
我等紅き剣を持ちて
貴女の純潔護りましょう」

 会場の女生徒から黄色い歓声が飛ぶ。さすがはエンターテイナーである。
 そして採点は『91点』とでた。90点台を突破してきた高得点で会場も大盛り上がりだ。

 次に壇上に立ったのは鐘田 将太郎(ja0114)
 勢いで壇上に立ってしまったが、歌う曲を決めていなかったりする。
 どれにしようか悩んでいたが、結局決まらないので、適当に数字を打ち込み入力送信。
 流れてきたのは…演歌だった。
「え、演歌だぁ!?お、この曲は…知ってる曲なのが不幸中の幸いってカンジだな」
 曲名は『俺達の漁船』
 漁村が舞台の男だけの家族を描いた古いアニメの主題歌だ。
 人情溢れるお涙頂戴の、一世を風靡したアニメで、
 オープニングでは大漁旗を掲げた漁船群と、熱い男達のむさくるしい笑顔が延々と流れる
 実にハードフルな構成となっている。
 ちなみに歌っているのは演歌の大御所『喜多嶋佐部楼』である。
「6番、鐘田将太郎、歌います!」
 将太郎はこぶしをきかせ、ノリノリで熱唱する。

「荒波乗り越えぇ
大漁めざすぅ
魚が俺らを支えてるぅ
今日もゆくゆく日本海ぃ
波の花道ぃ
いざゆかんぅん」

 教師陣に大うけである。
 唸る太鼓、捻るこぶし、舞い散る紙吹雪。ここは俺の漁場だぜ!と言わんばかりの大熱唱。
 歌い終わった後には拍手の嵐。そして採点は…まさかまさかの『99点』
 会場大フィーバーである。
「あーりがとーう!」
 間違いなく今日の主役の一人となった将太郎であった。 
 
 大いに盛り上がったカラオケ大会は次々に歌い手を変え、とうとう最終組となった。
 そう、組である。
 会場の照明が落ち、ざわついた頃にイントロが流れ出した。
 「あ…この曲」と誰かが呟く。そう、今をときめくアイドルグループの有名な曲のイントロが流れ出してきた。
 そして一気に照明がステージを照らすとそこには、カタリナ(ja5119)・権現堂 幸桜(ja3264)
 青木 凛子(ja5657)・梅ヶ枝 寿(ja2303)が立っていた。
 4人は着ていた浴衣をバッっと脱ぎ捨てると高等部女子の制服姿になる。ちなみに制服は凛子が用意したものである。
 歌う歌は『フラッグゲット』
 なんてタイムリーな歌なんだろう。会場の皆の心がひとつになる。

 4人はこの日のためにメンバー全員で練習してきた踊りを披露した。
 練習時には寿が「そんなことじゃセンター狙えねーぞ」とコーチの如く檄を飛ばす。
 また、自身の舞台芸術のスキルを生かし、皆の振りやダンスに磨きをかけた。
 カタリナは音響芸術のスキルを生かし、皆の歌のコーチングを努める。
 凛子は昔取った杵柄を生かしパフォーマンスでの心得を伝授。
 幸桜は何度もこういうステージに立たされたことがあるので、そのときの心構えなどを話すなど
 それぞれの特性や経験を生かしてこの日に望んだのだ。

 完璧なダンス、溢れる笑顔、伸びのある歌声、派手なパフォーマンスと会場大熱狂である。
 本物のアイドルを凌ぐほどの魅力溢れるグループだ。

「「「フラッグゲット
 だから誰より早く
 君の依頼のすべて僕のもの
 好きだから
 LOVE・FlaGe」」」

 もう、色々と各々の心に染み渡る曲と歌詞である。
 また、そんな4人を盛り上げているのは君田 夢野(ja0561)だ。
 彼は、今回のためにオタ芸担当を買って出たのだ。

 \レッツゴー☆さいこー☆男の娘ー☆/
 \ショート・イベシナ、全部イタダキ♪/
 \天使も悪魔もメロメロドッキュンv/
 \愛と正義のフラッグファイター!/

 入る合いの手、唸る歓声、轟く叫び。オタ芸特有の『OAD』『PPPH』『ロマンス』等を駆使し盛り上げる。
 夢野のオタ芸と効果的に入る、としおの舞台演出がさらに舞台を盛り上げ、宴会場は今やコンサートホールと化していた。
 曲が終わると、会場から大きな拍手だ。そして得点は…『95点』であった。高得点に沸く会場。そして、

「「「アンコール!アンコール!アンコール!」」」

 異例のアンコールである。
 しばらくして次の曲のイントロが流れ出してきた。これまた誰もが知っている有名曲『ヘビースパイラル』
 カタリナは会場を見渡した。そして目当ての人物を見つけると声をかける。
「東雲さんも知ってますよね?ぜひ一緒に!」
「うぇ!?私もか!??いやいやいや、それは御免こうむる!」
 脱兎の如く逃げようとした楓をカタリナは捕まえようとするがスルリと逃げられる。
「すいません、凹凸が無くて捕まえられない!」
「うがー!誰が胸が無いだとー!」
 振り向いて抗議する楓に「僕に任せてください!」と言って幸桜が飛び出し、
 見事楓を捕まえることに成功したがそこは女性耐性のない幸桜である。
「わぁ!そ、そうだった…う…うーん…」
そのまま倒れてしまう。が、すぐにカタリナに起こされ慌てて壇上に駆け上がる。
戻ってきたのを確認して、凛子がマイクを掴んで言い放った。
「さぁ!テンションあげて行くわよ!」
凛子は歌中に客席に向けてウィンク、そして「アリーナー!!」と前列を煽り手を振る。
それに応える夢野とオタ芸要員達。幸桜とカタリナは息の合ったダンスと歌を披露。
寿は女子の曲を無理に裏声で歌うため、邪魔にならないようマイクは持たずダンスパフォ担当だ。

「「「窓が開いて
ドンドン流れる流星群
MAX ハイテンション
I want star!
I need star!
I love star!
サイフの奥
ジャンジャン溢れるお星さま
ヘビースパイラル」」」

 会場の皆が滂沱の涙を流している。色々と胸に突き刺さる歌詞に思わず涙が出るのだ。
 曲が終わり会場からは歓声と万雷の拍手が降り注ぐ。
 採点結果は『98点』将太郎に次ぐ高得点だ。
 メンバーの4人とオタ芸を担当した夢野は、壇上で皆に締めの挨拶をして幕引きとなった。
 十二分に盛り上がったカラオケ大会で、皆とても満足したようだ。

「ふ〜いい仕事したぜぇ〜」 
 としおは肩をぐるぐる回しながら呟いた。実際、としおがいなければここまでカラオケ大会は盛り上がらなかったろう。
 細やかな演出が実に会場を盛り上げたのだ。影のMVPである。そんなとしおを見つけた楓が声をかけた。
「お疲れ様だな。君がいてくれたおかげでカラオケ大会は大成功だった。礼を言う」
「いえ、好きでやったことですから」
「ふむ。こんなものしか用意できないが、後は君もゆっくり楽しんでくれたまえ」
 楓がとしおにジュースを差し入れる。としおは笑顔でそれを受け取った。 

 会場の熱気冷めやらぬ中、それぞれが元の場所へ戻っていく。
 そんな中、凛子に駆け寄ってきた人物が居た。シエル(ja6560)だ。
「凛子ねーさまー!すごかったですー!素敵でしたー!」
 そのまま凛子のふくよかな胸へダイビングする。
 シエルは凛子達が歌っている間、オタ芸要員として夢野と一緒に身振り手振りで応援していた。
 そして高得点が出た際には、我が事のように大いにはしゃぎ声援を送り悶えていたのである。
「ボク、とっても興奮しましたです!凛子ねーさま、もう大好きですーっ」
 やけにハイテンションのまま凛子に抱きついたまま離れないシエルに、凛子は微笑みながらお礼を言う。
 そんな二人を回りは慈愛の目で見るのであった。

 大谷 知夏(ja0041)はひたすら口を動かしていた。カラオケで盛り上がっているときも
 声援を送りつつ、ひたすら口に料理を運ぶ。口一杯に頬張る姿は傍から見ると可愛い子リスだ。
 食べる事が出来る時に、全力でたらふく食べるのが知夏の信条なのだ。
 乙女心と言うリミッターを解除して、ひたすら料理を堪能させて貰うことを誓っていた。
「ふっふっふー♪五臓六腑に染み渡るっすよ!美味っす!最高っすよ!」
「ご飯おかわりっす!大盛りでお願いするっす♪」
「残すなんて勿体無いっすよ!?知夏にお任せ下さいっす!知夏の胃袋にお任せ下さいっすよ!」
「余興を目にしつつ、美味な料理に舌鼓を打つ、ここが地上の竜宮城っすか!」
 次々と料理を平らげる知夏。見る間に減っていく料理。されど追加される料理。
 そう、知夏の健啖ぶりに周りが反応し、どれだけ食べられるのか?と次々に皿を差し出していたのだ。
 そして、知香の周りに皿が山積みされた頃にようやく箸が止まった。
「ぐふぉお‥‥流石に食べ過ぎたっす。動けないっすよ!?どなたか、知夏を部屋まで運搬して下さいっす!」
 後先を考えない結果だったが、これはこれで青春の一ページなのだろう。
 彼女はしっかりと合宿を楽しんだようだった。
 
 楓はフラフラになりながら、宴会場の窓辺に腰掛けた。会場はまだ熱気に包まれている。
 少し体を冷やそうと思ったのだ。ぱたぱたと扇ぎながらあたりを見渡す。
 すると、少し離れた窓辺にぽつんと座っている人物がいた。マキナ・ベルヴェルク(ja0067)だ。
 楓は腰を上げるとマキナに近寄り話しかけた。
「どうした?こんな所に一人で。私同様会場の熱気に当てられての避難かね?」
「いえ…そう言うわけでは。私…歌うと言うのも、如何も苦手で。それでここに」
 マキナは夜空を見上げる。雲は影を見ず、星が瞬いている。また天上には月が昇っていた。
「それに今日は星が良く見えますから。月も煌々と。空を眺めているだけでも、結構良い物ですよ」
 マキナは喧騒が苦手だったり、男性が多少苦手(会話程度は問題なし)と言うのもあり、宴会ではずっと一人でいた。
「そうだな。今夜は良い月夜だ。あんまりここにいると体を冷やしてしまうぞ?適度な所で切り上げ戻るが良い」
「私はもう少ししてから戻ろうかと。…戻れる雰囲気でもなさそうですし」
「そうか。まぁそこの判断は任せる。どれ、私は戻るとしよう。ではな」
 去っていく楓にマキナは軽く頭を下げる。そして再び夜空を眺めるのであった。

「うふふふゥ…安酒も雰囲気次第ではなかなか呑める御酒に化けるものねェ…♪」
 上機嫌で呟くのは黒百合(ja0422)だ。見かけは小学生の黒百合が安酒とか言っているのだ。
 それを見かけた楓が声をかけた。自身もどうなのかという突っ込みは受けない。
「これこれ、アルコール類は禁止だといっただろう。君は何も聞いていなかったのかね。
それに君はどう見ても未成年だろう」
「未成年?これでも合法よォ?未成年者飲酒禁止法には一切ノータッチだわァ?
それに、これはノンアルよぉ。雰囲気だけ楽しんでるのよぉ」
「む?未成年ではない?…だと。私と同類なのか…」
「さて、どうかしらねぇ。女はミステリアスなのも魅力の一つなのよぉ」
「まぁ、飲んでいるものがノンアルであるならば何も言うまい。邪魔したな」
「うふふふぅ。おかまいなくぅ」

 会場を見回る楓。そこで少人数で固まっているグループを発見する。
 その中の一人、三神 美佳(ja1395)に声をかけた。
「楽しんでいるかね?」
「あ…はいです」
「うむ。それならば結構」
 美佳は正直自分から動くタイプではないのでお祭りの雰囲気をのんびり楽しんでいた。
 周りが楽しければ自分も楽しくなってくるのだ。知り合いの桜井・L・瑞穂(ja0027)やリネット・マリオン(ja0184)
 が視界に入った時、意識はそちらに向いたが、この場を動くことは無かった。
 身近な友達と話している方を選んだのだ。
「明日もイベントが色々ある。今夜は早く休むんだぞ」
「はいです。ありがとうございます」

 再び会場を回る楓に、後ろから静かに近づいて、だん!っと抱きいてきた人物がいた。
 清良 奈緒(ja7916)だ。
「えっへへ。何してるんですかぁ?楓お姉さん」
「おっとっと。君は?」
「はい!小等部2年10組 清良 奈緒です♪」
「成る程、奈緒君か。それで私に何か用かね?」
「はい。見かけたので、ついつい抱きついちゃいました♪それでね、お菓子持ってるとボク嬉しいなぁ〜」
「む?お菓子だと?あいにく今は持ち合わせが…あったな」
 ごそごそと袖口から紅いキャンディと蒼いキャンディ取り出し、奈緒に渡す。
「いいかね?このキャンディは少し特殊でな。先に食べるのなら蒼いキャンディーから食べるのだ」
「紅いキャンディから食べるとどうなるの?」
 楓は奈緒をじっと見る。小等部2年ということは6才ということだ。
 6才の子供が赤いキャンディを食べるとなると…。
「ふむ…ろくなことにはならんな」
「えぇ〜。もしかしてこれ危ないお薬なの?」
「っふ…毒と薬は紙一重なのだ。用法をきちんと守るならば、それは素晴らしいものなのだ」
「ふ〜ん。こっちの蒼いキャンディから食べるといいんだよね?」
「うむ。そう言うことだ」
「うん。わかった。ありがとう!」
 楓は奈緒から礼を受け取ると、その場を去った。
 数分後6才の女の子が急成長を遂げ、ぼんきゅっぼんのナイスバディな大人になったりしたのだが、
 それはまた別の話なのである。
 少なくとも言えるのは、話題のあるお土産話を奈緒は作れたということは確かだった。

 宴もたけなわになり、楓から宴会終了のアナウンスが出された。
 会場の後片付けを積極的に行っているのは、カラオケのアイドル歌音だった。
 ゴミ出しや、騒ぎ疲れて寝ているものを運び出したりと大活躍である。
「済まないな歌音君。手伝ってもらって」
「いいえ、良いんですよ。好きでやってることですから」
「そう言ってくれると助かる」
 会場の片付けも無事に終わり、あとは各自部屋に戻って就寝を待つばかり。
 しかし、今日は合宿だ。そうは問屋が降ろさない。
 ある男子生徒達はこっそりと女子生徒達の集まる部屋へ移動したりと
 まさに『夜はこれから』なのである。

 佐倉 哲平(ja0650)は自販機に立ち寄った。喉が渇いため何か買おうかと思ったのだ。
 その際、ロビーで知り合いの瑞穂とリネットを見かけたので、何か持っていくかと考え
 少し多目のジュースと菓子類を買い求めた。
 そして、瑞穂たちが居る部屋をノックする。
「どなたかしら?」
「…俺だ。哲平だ。さっきロビーで見かけたんでな。少しばかり話そうかと思って寄ってみた」
「あら、哲平ですの。いいですわよ。どうぞお入りになって」
「…失礼する」
 ドアを開け、中に入った哲平が見たものは、青白柄の厚手なネグリジェを着用し、
 リネットを後ろから抱きしめる形で椅子に腰掛けて、彼女を甘えさせている瑞穂であった。
 ちなみにリネットは瑞穂のものと同デザインの色違い(赤に黒)のネグリジェだ。
「…何してるんだお前ら」
「何って見て御分かりになりませんの?リネットに甘えさせてるのですわ。
ねぇリネット。今夜は無礼講ですわ。存分にわたくしに甘えなさいな♪」
「…はい…お嬢様」
「ん〜♪リネットは抱き心地がいいですわぁ〜♪」
「…お嬢様」
「…どちらか言えば、お前がリネットに甘えているように見えるがな…」
 哲平は持ってきたジュースを二人に渡し、自身もジュースを開ける。
「ふふっ。それはそれでよろしいのですわ」
 しばらく他愛も無い雑談をしながら、哲平の持ってきたお菓子などをついばむ3人だったが、
 やがてポーカーでもしようという話になった。
 ポーカーはポーカーでもインディアンポーカーだ。
 対戦は哲平と瑞穂のみで、リネットは瑞穂に抱きしめられたまま観戦だ。
「おーっほっほっほ! 哲平、勝つのはこのわたくしですわ!」
(…桜井に心理戦は鬼門のような)
 瑞穂は顔に出るから読みやすいのだ。それだけ表情豊かで感受性が強いといえば聞こえは良いが、
 こういう賭け事には正直向いているとは言いがたい。
 しかし勝負事には情けをかけない(加えて表情が表に出にくい)ので、取り敢えず勝ちに行く哲平であった。

「最初の一回ぐらいは『あえて』哲平に勝ちを譲ったのですわ。次からは本気を出しますのよ。覚悟なさい!」
「ま、まぁこのぐらいの負けは私にとってはどうということはありませんわ」
「ふ…ふふふ。この負けも計算の内ですわ。ここから華麗に私のターンが!」
(…お嬢様、表情に出過ぎです。しかしそれ故にこそ素敵です…ほぅ(熱いため息))
 リネットは連敗する瑞穂の心音が徐々に上がってくるのを背中越しに感じていた。
 連敗しているせいで、軽い興奮状態になってきているのだ。
 そんな瑞穂もまた可愛い。素敵と思ってしまうリネットであった。
「ぐっぐ…哲平〜!」
 連敗に次ぐ連敗で涙目の瑞穂である。 
「…こ、こんな馬鹿な‥‥み、認めませんわぁ…うううぅ〜っ!」
「…桜井。これだけ負けが続くようなら、そろそろ罰ゲームくらい期待するんだが…」
 瑞穂は哲平に都合10連敗したのである。呆れ顔で言う哲平に瑞穂は歯噛みするが、
 罰ゲームと言う言葉を聞いて、違う意味で顔が赤くなる。
「ば、罰ゲームだなんて哲平は、ど、どんなことを考えてますの?」
「…そうだな…それについては後日連絡しよう…マリオンが既に夢の中に入っている」
「あら?…本当ですわ」
 リネットは可愛らしい寝息を立てていた。瑞穂の腕の中というのがよほど心地よかったのだろう。
 哲平はリネットをゆっくりと抱き上げると、敷かれていた布団にそっと寝かす。
 実に紳士な男である。
「…今夜はこれで」
「そうですわね。哲平、今夜は楽しかったですわ。あと、リネットを運んでくれて感謝しますわ」
「…これぐらいどういうことはない。俺も楽しかった…では、また明日」
「えぇ、また明日。おやすみなさいまし」
「…おやすみ」
 ぱたんとドアを閉める哲平。窓から外を見上げると綺麗な月夜だった。
(…フォロー替わりに明日にでもケーキでも奢るか。勿論マリオンにも…)
 そう思いながら、自分の部屋へと帰っていく。どこまでも紳士な男、佐倉哲平であった。

 場所は変わって。中等部の部屋である。
 Nicolas huit(ja2921)は宴会場でカラオケが盛り上がっていた頃から、ずっと部屋に居た。
 楽しかったことなど、今日一日のことセブに報告していたのだ。
 楽しく電話をしていると、部屋の外が騒がしくなってきた。皆が戻ってきたらしい。
 セブに携帯を切る旨を伝え、お休みを言う。それと同時に現れたのは、宴会場から戻ってきたシエルだった。
「お、シエルかー。良く戻ってきたのだなー」
「ただいまー!ニコちゃんはカラオケ行かなかったんだねー?」
「んー。行ってもよかったんだけどなー。僕、セブに電話しなくちゃいけないだから、電話していたのだ」
「そっかー。もうね、すっごく盛り上がってたんだよー!」
 シエルは凛子達のアイドルグループのことや演歌で99点を叩き出した将太郎、
 アニソンで輝いていた歌音の事を楽しそうに話した。
 ニコニコとしながらシエルの話を聞くニコラ。
 ちらっと時計を見る。時間は午後10時30分を過ぎたあたりだ。
(せっかくのガッシュクだからなー!今日ぐらいは夜更かししてもいい…はず!)
 ニコラはいつも12時には寝るのだが、今日ぐらいは遅くまで起きようと思っていた。
「そういえば、ニコちゃんは今日は早く寝るの?」
「今日の僕は夜更かしする、悪い事だけどガッシュクだから仕方無い…」
 真面目な表情でコクリと頷くニコラ。
「そっかー。じゃぁ、今日は一杯遊べるねー」
「おー!今日の僕は夜更かしするのだぞ!大事なことだから2回言ったのだ」
 それから二人はゴロゴロとしながらトランプやその他のカードゲームで遊んだ。
 シエル以外の友人も来て楽しくワイワイやっていたが…。
 時は12時半。その頃になると、いつもの習慣でまぶたが重くなるニコラ。
 周りを見渡すと、他の同級生達もほとんどが寝入っている。
「シエル…僕、まぶたが重くなってきたのだ…」
「そっか。それじゃぁ、そろそろ寝るー?」
「夜更かししなくちゃいけないのだが…だが…」
 こてんと横になり寝息を立てるニコラ。この辺りが限界だったようだ。
 シエルもそのままニコラの横でコロンと横になりそのまま寝入ってしまう。
 二人は幸せそうに寝息を立てていた。

 少し時間は撒き戻る。鳳 静矢(ja3856)と鳳 優希(ja3762)は宴会場から戻ってくると部屋でくつろいでいた。
 と、そこへ顔見知りがたずねてきたのである。グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)・氷雨 静(ja4221)
 Rehni Nam(ja5283)・東城 夜刀彦(ja6047)・風鳥 暦(ja1672)が次々とやってきた。
 図らずも大所帯となった鳳組である。
 はじめはワイワイと普通に談笑していたのだが、そのうち誰かが言い出した。
「そう言えば、東城さんて女装したらすごいんだって」
 え?何が凄いんだろうと首をかしげる夜刀彦だったが、だんだんと場の空気が
 自分に対して悪くなってきたのを感じた。
(あれ?何か不穏な気配…これはまずい流れですよ)
 扉開けて二秒で反転し逃亡を図るが
「あ、逃がしませんよ?」
 っと言われ、あっさり暦に捕まる夜刀彦だった。
「えっちょっ…ひっ!?やめてー!服を剥かないでー!お婿にいけなくなる!」
 服を脱がしにかかる女性陣に抵抗するも、ほぼ女性陣の成すがままにされる哀れな子羊だった。
「着付けは任せて下さい」
 どこから持ってきたのか、静は女性物の着物(時代劇のくノ一が着る様な。帯あり)を夜刀彦に着せにかかる。
 また、レフニーも着物の着付けを手伝っていた。
 そして見事に変身?し終わった夜刀彦をみて各女性陣から様々な反応があった。
「にゅ〜、思わず嫉妬したくなるのですよぅ」
 とレフにーが軽い嫉妬が混じった声を上げれば、
「綺麗ですよ〜」
「東城さん綺麗」
 暦と静は感嘆の声を上げた。

 その感嘆の声を受けて現れたのはお色気♂くノ一ヤトである。
 説明しよう!東城 夜刀彦は女装をするとお色気♂くノ一ヤトになるのである!
 この時の状態はいつもの内気気味な夜刀彦ではなく、積極的でノリの良いお色気忍者になるのであった!
 ヤトになった夜刀彦は皆に進められるがまま女形舞いを華麗に舞う。
 どこでそんなのを覚えたのかという疑問が生まれるほどそれは妖艶な舞であった。
 女性陣形無しである。一差し舞ったヤトは皆に極上の笑顔で告げる。
「お代として皆様、後で私の膝枕で耳掃除される苦難に耐えていただきますッ」

 やんややんやの大喝采で迎えられたヤトである。
「うむ。これが無いと始まらないな」
 静矢は拍手でヤトを称えた。
 そんなヤトの着物帯をむんずと掴むものがいた。
 とても良い笑顔のレフニーと優希である。
「時代劇といえばこれなのです!いくのですよー!それー!」
「希も手伝うのですよー、それーそれー!」
 あ〜れ〜といいながら回されるヤト。帯がつきると、床にびたーんっと叩きつけられる始末である。
「うぅ…これは酷い」
 しかしそこはさすがのお色気♂くノ一。はだけた着物から出る生足や、見えそうで見えない所等
 いちいち仕草や姿がエロイ。さすがお色気♂くノ一エロイ。だが男だ(

 その後、皆でカードゲームやトランプの七並べ等をし、
 ゲームに負けたメンバーが恋話を暴露 することとなった。
「私はカードゲームは強いぞぅ?」
 静矢は自信満々で勝負に挑む。
「さて、夜はここからが本番…かな?」
 グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)はカードゲームからの参加だ。
 ここで勝敗表を見てみよう。
 静矢:5勝0敗・優希:3勝2敗・レフニー:4勝1敗・ヤト:5勝0敗・静:4勝1敗
 暦:5勝0敗・グラルス:4勝1敗となった。
 結果、恋話を語るのは優希となったのだ。
「静矢さんの声が好きなのですー。耳元で囁きながらキスしてくれるのが好きでたまらなくて。
その先も…うん、好きなのー」
 と言いながら、優希はみんなの前で抱きついて激しい公開キスをせがんだ。
 あれ?いきなり場がピンク色になってきたのである。突然のピンクムードに俄然盛り上がってくるものも居れば、
 きゃーきゃーと良いながら手で顔を覆い、こっそりと指の間からのぞき見る古典的な者まで反応は様々だ。
 「むぅ…まぁ…仕方ないな」
 皆の前でキスに応じる静矢。この男、度胸が半端ない。さすがは歴戦の勇者。
 ちょっとやそっとの事では動じないのだ。ただし、さすがに皆の前なので、ディープは避けフレンチにとどめた。
 それでもやんややんやの大喝采である。
「さすがは鳳夫婦。その絆はダイヤモンドの輝きか…」
 変に感心しながらグラルスが呟く。

 変にテンションが高まった皆は『合宿といえばこれでしょう!』と枕投げに興じることとなった。
 男女に別れ枕を投げ合う。
「さあ、どんどん行きますよ〜」
 枕は投げずにふるうものと自負する暦が飛んでくる枕を次々と打ち落とす。
「優希さん援護します。静矢さん覚悟!」
 静が静矢に向かって枕を投げる。
「氷雨さん援護ありがとうなの!負けないのなのー!」
 優希も静矢に向かって次々と枕を投げつける。
 しかし、そこは歴戦の勇者である静矢だ。次々と飛んでくる枕を華麗にかわし、打ち落とし
 反撃を試みる。
「夫婦と言えど今は容赦無しじゃー!」
 静矢の放った枕が唸りをあげて優希に襲い掛かるが間一髪の所でしゃがんで回避することに成功した。
 しかし、運の悪いことに優希の後ろにはレフニーが居たのだ。
 静矢の放った枕は見事レフニーの顔面にヒットし「きゅう」といいながら布団に倒れ伏した。
 グラルスは枕投げは施設の備品を壊さないよう注意しつつ、はっちゃけすぎないように心がけながら楽しんでいた。
「ちょっと無茶しすぎじゃあ……っと!」
 暦の枕がグラルスを襲ったが何とか回避に成功する。お返しだとばかりに枕を投げると、見事にヒットした。
「む、無念」
 ぱたりと倒れる暦。そんなこんなで枕投げは20分ほど行われた。結果はやはり体力に勝る男性陣の勝利だった。
 乱れた布団などを直し、元の通りにする面々。
 気がつけばレフニーは先ほど倒れたあとそのまま夢の中に直行していたようだ。
「こういう合宿もたまには良いものだな」
「そうですね。枕投げも楽しかったし。宴会も盛り上がってましたしね」
「さぁ、そろそろ寝るなの。明日も楽しい一日が待ってるなの」
「ところで、ここで寝ても問題は無いのだろうか」
 グラルスが静矢に尋ねる。
「問題ないだろう。明日の朝、きちんと各々の部屋に戻ってさえ居ればな」
「んふ。今日は両手に華で寝られるのね。ヤト嬉しい」
「まだ、戻ってなかったのですね〜」
「じゃぁ、電気消すなのー。みんな、おやすみなさいなの」
「「「「「「おやすみなさい」」」」」」

 外は雲ひとつ無い満天の星が輝いている。
 窓から差仕込む月光が遊び疲れた面々を優しく照らしていた。
 明日は今日よりももっと良い一日になるに違いなかった。

 了


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: いつか道標に・鐘田将太郎(ja0114)
 哀の戦士・梅ヶ枝 寿(ja2303)
 ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 聖槍を使いし者・カタリナ(ja5119)
 撃退士・青木 凛子(ja5657)
 災禍祓いし常闇の明星・東城 夜刀彦(ja6047)
重体: −
面白かった!:10人

ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
癒しのウサたん・
大谷 知夏(ja0041)

大学部1年68組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
ヌメヌメ女の子・
レナトゥス(ja0184)

大学部5年190組 女 ナイトウォーカー
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
一握の祈り・
佐倉 哲平(ja0650)

大学部5年215組 男 ルインズブレイド
名参謀・
三神 美佳(ja1395)

高等部1年23組 女 ダアト
撃退士・
風鳥 暦(ja1672)

大学部6年317組 女 阿修羅
哀の戦士・
梅ヶ枝 寿(ja2303)

卒業 男 阿修羅
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
お洒落Boy・
Nicolas huit(ja2921)

大学部5年136組 男 アストラルヴァンガード
愛を配るエンジェル・
権現堂 幸桜(ja3264)

大学部4年180組 男 アストラルヴァンガード
蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
世界でただ1人の貴方へ・
氷雨 静(ja4221)

大学部4年62組 女 ダアト
聖槍を使いし者・
カタリナ(ja5119)

大学部7年95組 女 ディバインナイト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
青木 凛子(ja5657)

大学部5年290組 女 インフィルトレイター
災禍祓いし常闇の明星・
東城 夜刀彦(ja6047)

大学部4年73組 男 鬼道忍軍
恋人何それおいしいの?・
シエル(ja6560)

大学部1年153組 女 鬼道忍軍
碧い海の・
清良 奈緒(ja7916)

中等部2年1組 女 アストラルヴァンガード