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マスター:佐紋
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/04/24


みんなの思い出



オープニング

「うむ。出来たが・・・好いた惚れたをこういう物でどうにかしようとはな」

 部長が軽いため息をつく。
 発明したのはある意味究極の薬『惚れ薬』だ。

 今回はとある女生徒の依頼があったのだ。
 好きな人が出来た。でも、勇気を出して話しをしても普通の会話になり、そこから何も進展しない。
 何かきっかけがほしい、と。

「きっかけが欲しいって、それで惚れ薬って、何か飛躍しすぎてませんか?」
「うむ。私もそう言ったのだがな。何でもその意中の男子がかなりモテるらしい。
ライバルが多すぎて、気弱な自分では負けてしまうんだとか何とか言っていたな」
「はぁ・・・そう言う物なんですか」
「そう言う物らしいな」

 部長が苦笑する。意中の人に振り向いて欲しいと言う思いは純粋で尊いものなのだろう。
 そしてそれは、人間の子孫繁栄にもつながる本能から来る欲求でもある。

「恋は戦争。とはよく言ったものだ」
「あらゆる兵器を使ってでも勝ちに行くんですね?わかります。おぉ、怖い怖い」
「馬鹿者。恋にかける思いは本物だ。でなければ、このような依頼はその本人も出すものか」
「しかし部長。あんまり納得していないのなら、何故断らなかったんです?今もあんまり乗り気じゃ無さそうだし」
「うむ。最初は私も断ろうかと思ったのだ。しかしだな、私も乙女だ。
命短し恋せよ乙女、紅き唇褪せぬ間に。と言うやつだ。応援したくなったのさ」
「あぁ〜・・・部長って乙女だったんですか?」
「阿呆。どこからどう見ても立派な乙女だろう。それ意外に何に見えると言うのだ」
「え?・・・幼女でしょ。完璧な」
「幼女言うなし!」

 部長は近くにあった物を男子生徒に投げつけた。
 近くにあった惚れ薬が入っているフラスコを男子生徒に投げつけたのだ。

 咄嗟のことに反応が遅れ

 スコーン!

 と見事に男子生徒に当たるフラスコ。薬は盛大に男子生徒にぶち撒かれている。

「あぁ!・・・お、おい。大丈夫・・・なのか?」

 男子生徒は何も言わない。顔を下に向けふるふると体を小刻みに震わせているだけだ。
 そして、ガバァ!っと顔を上げる。顔は高潮しており、目は・・・なんと言うかハートマークだった。

「部長!」
「な、なんだ?」

 じりじりと男子生徒が部長ににじり寄る。手をわきわきさせながらだ。あんまりな形相にたじろぐ部長。

「部長・・・俺が間違っていました。その愛らしい唇。ちっぱい胸。足りない身長。何もかもがステキです!
好きです部長!付き合ってください!!」
「え、えぇぇ!?ちょ、ちょっと?って、惚れ薬の成果か。効きすぎだろうこれは」

 普段の男子生徒から考えると、この有様は絶対に考えられない。

 押しに押し捲る男子生徒に、部長はとうとう教室に端まで追い詰められる。

「ふふ。もう逃げられませんよ。さぁ、観念して俺と付き合ってくださいよ!」
「いや、付き合うも何もお前は惚れ薬でそうなってるだけであって、お前の本心ではなかろう!落ち着け!」
「俺は十分に落ち着いてますよ部長。俺の今の心はすごく晴れやかなんです。一点の曇りも無いと言うか・・・。
目覚めてはいけないものに目覚めたとか、そういうものでは決して無いのです!
えぇ、無いのですったら無いのです!ガンホー!ガンホー!迷わず逝けよ、逝けばわかるさ!
部長は見た目幼女でも実年齢は20歳!合法ロリ!合法ロリ!えっちぃこともできる歳なんですよ!
俺、家族で野球チーム作りたいです!」
「誰が合法ロリかー!って、野球チームってドンだけがんばるつもりだー!!」

 咄嗟の怪力を発揮して男子生徒の頭を手近にあった椅子で思いっきり殴りつける。
 吹っ飛ぶ男子生徒。キリモミ状態で頭から落ちる。所謂車田落ちの状態だ。
 はっ!と正気に戻り慌てて男子生徒に駆け寄る幼女。もとい部長。
 男子生徒は気を失っていたが、それだけだった。ほぅっと安堵のため息をつく。

「まったく・・・しかし、惚れ薬の効果が効きすぎるな。やはりこれは依頼を断ったほうがいいのかもしれん」
「そうは問屋が降ろしません!こんな素晴らしい発明品!有効に活用して見せます!
あ、御代はここに置いておきますねー。そっれではシーユー!」

 いつの間に居たのだ貴様!っと突っ込む間もなく、依頼人であった女生徒は教卓においてあった
 惚れ薬をひったくるように掴むと、2万久遠を置いて風のような速さで教室を出て行った。
 彼女の目はまさに獲物を狩るハンターの如き目だった。若干涎が垂れていたのかもしれない。
 依頼に来た時のあのしおらしさはどこに行った・・・。

「恋する乙女の執念は恐ろしいものがあるな・・・」

後日、依頼人の女生徒と意中の彼は中睦まじく歩いている姿が目撃される。手を握ってだ。
 
「部長、まだ頭が痛いんですけど」
「自業自得だ。馬鹿者め」
「いや、自業自得といっても最初に薬を投げつけてきたのは・・・もういいですけど。
でも、その惚れ薬って超短期しか効かないんでしたよね?3時間ぐらいの。それでよく彼女成功しましたね」
「あぁ。その通りだ。だが、その3時間が過ぎても『その相手を好きだと思っていた自分』は残るからな。
そこから先は彼女の努力が実を結んだのだろうさ」
「成る程。で、ですね部長。その惚れ薬の噂を聞きつけた多数の恋する乙女や『恋する乙女(乙男)連合』の方々がですね」
「何だその『恋する乙女(乙男)連合』と言うのは?」
「読んで字の如く、恋する乙女(乙男)が結成した倶楽部みたいですね。非公式のようですが」
「そ、そうか・・・それでその乙女がどうした」
「惚れ薬が欲しいと言う依頼が来てますよ」
「嗚呼・・・恋は戦争だな。・・・とりあえずだな」
「・・・とりあえず?」
「逃げるとするか!」
「あらほらさっさー!」


リプレイ本文

 今回の依頼で集められた精鋭は計8名。計4組のペアに別れそれぞれ目撃証言のあった箇所を探すことに決めた。
 また互いに連絡を取り合うためにアドレス交換も済ませておく。

 ●
 雪成 藤花(ja0292)とカタリナ(ja5119)は目撃者証言の一つにあった校門へと捜索に来ていた。
「まったく、今回もまたとんでもない物を作ってくたわね…」
「惚れ薬、ですか。ちょっといいなとは思うけど…」
「興味がないかと言われれば、少しはあるし…とはいえ依頼ですからね、がんばって探しましょう」
 藤花は予め部長の写真を借りて『視覚芸術』の一種として写真記憶した。
 その記憶を元に校門を行き交う生徒達を丹念に目視する。
 また微かなバラの香りを「感知」できないか鼻をひくつかせて付近を探索してみた。
「この辺は、人が多いから……見つけるは大変かもしれませんね」
「屋外ですし、香りも残っているかどうか…ともかく聞き込みをしましょう」
 カタリナは校門付近の紳士淑女から情報収集を『紳士的対応』で開始した。
「発明部の部長、見ませんでしたか?ええ、幼女のような大学部の」
 たまたま声をかけた相手はカタリナと藤花の知り合いであった。
「え?幼女。さぁ…俺は見なかったけど。カタリナさん…もしかしてそういう趣味が?」
『紳士的対応』スキルが間違った方向で作用したのかもしれない。
「幼女は愛でるもの…って!?違います!これはれっきとした依頼で純然たる人探しの一環なんですっ!」
 藤花はそう言えばと思ったことがある。情報によれば部長は『幼女』と言うキーワードに非常に敏感だと言う。
 ならば、あえてその単語を使用し、呟きながら探せばと思ったのだ。
「そういえば、東雲さんって可愛いですよね。誰かが幼女のようだと……」
「え?カタリナさんだけじゃなくて…藤花さんもそっちの気が!?」
「ち、違います!」
「冗談ですよ冗談(その割には幼女はとか言って気が)まぁ、見かけたら連絡しますよ。それじゃぁ」
 知り合いは手を振りながら去っていった。
「えぇ、頼んだわ」
 どっと疲れた二人であった。それから継続して聞き込みを行うが、一向に情報は仕入れられない。
 それならばとカタリナは自身のスキル『小天使の翼』を使い、で飛んで視界を広く持った。
 自分が目立って発見されても急に逃げた者がいればわかりやすいと考えたのだ。
 高い視点で部長を探すが、はたして。
「…見当たりませんね。トウカ、別の場所へ向かいましょうか」
「そうですね。仕方ないですが行きましょう」

 ●
「薬の是非はさておき、頼まれたら無視も出来ないよね。にしてもあの会長さん、瑞穂さんに似てるよね?」
「えぇ。なにやら親近感を抱きましたわ」
 猫野・宮子(ja0024)と桜井・L・瑞穂(ja0027)購買方面への探索を開始すべく足を向けていた。
「あ、そうだ。捜索を開始する前に…」
 宮子は着ていたコートを脱いだ。するとどこからともなくBGMが流れ始め、謎の空間に突入し宮子の戦闘服?
 である魔法少女の格好になる。見えそうで見えない脱・着衣のシーンが大きなお友達と夢見る少女達を勇気付けた!
 (実際はただの早着替えです。演出上そう見えるだけなのです)
 そしてお約束の決めポーズが炸裂する!
「そういうわけで…魔法少女マジカル♪みゃーこ参上にゃ♪恋に悩む会長さんのためにお薬を奪取するにゃ♪」
「…今の、今のは何なんですの!?」
「深く突っ込んではいけないにゃ。お約束は色んな法則も捻じ曲げる魔法少女の嗜みにゃ♪」
「そういうもの…なのかしら。コホンッ!それはともかく!さぁ!探しに行きますわよ!此の広い学園でも、
見事対象を捕らえて差し上げますわ。おーっほっほっほ♪」
 購買に来た二人は早速聞き込みを開始する。また証言であった『薔薇の香り』を部長が付けていることも重視し、
 匂いにも手がかりを求めた。
「香水の匂いにも気をつけないとにゃね♪バラの香りを辿っていければいいんだけど、
僕は犬じゃなくて猫だから無理にゃねー…」
「ですが、薔薇の香りなど学生が早々つけるものではないのですわ。良いヒントであることは間違いないでしょう」
 宮子は購買に来ていた中等部らしい生徒を呼び止めた。
「そこの君!こっちに薔薇の香りがする幼女な部長さんはこなかったかにゃ?」
「え?幼女な部長?そういう人は僕見かけませんでしたよ」
 瑞穂は購買部のレジ係りに聞き込みをした。
「あぁ、あのちっさい部長さんか。今さっきまで居たんだけどね。なにか匂い消しがないかとか聞かれたから
 消臭スプレーお勧めしておいたよ。無香タイプのね」
「な、そんな手で匂いを消そうとしてらっしゃいますの!?」
「考えてるにゃ部長さん。でも香水ってそんな簡単に消せるものでもないにゃ」
 瑞穂は各証言者に嘘はないかどうかじっと見て観察していたが、誰も嘘をついているようには見えなかった。
「そうですわね。ですが、このことは他の捜索されている方々に伝えておいたほうが宜しいでしょう」
 瑞穂はスマートフォンを取り出し、他の捜索メンバーに伝え聞いた情報を伝達する。
 宮子と共に聞き込みを続けたが、どうやら購買周辺にはもう居ないと判断し別な方面へ足を向けた。

 ●
「……鬼ごっこ、ですね…。かくれんぼの次に、得意です…(にこ)」
「早く見つけて解決と行こうじゃん」
 糸魚 小舟(ja4477)と夜鷹 黒絵(ja6634)は食堂に来ていた。
 目撃証言の一つを頼りにきたのだ。木の葉を隠すなら森の中、人を隠すなら人が多い場所だとあたりを付けてきたのだ。
「しっかし、惚れ薬って欲しいもんか…?」
「私は…特に欲しいと…思いませんけど…使い方…間違いやすい…物だと思うし…」
「そうだよな。まぁ、依頼は依頼だからちゃんと部長さんを探して捕まえるけど。
でもま、追われれば逃げたくなるよな…部長さんには同情するぜ」
 小舟と黒絵は部長の写真を知り合いから貰い、それを頼りに探しはじめる。
 香水の匂いを頼りにしながら探すが、そもそも学食は様々な料理の匂いが立ちこめ
 匂いと言う点では厳しいものがあった。
「香水の匂いも弱まってて、かつ、この料理の美味しそうな匂い。…腹減ってきたぜ」
「確かに…お腹空きますね…あ、あれは?」
「いたのか!?」
 小舟は写真で見た部長に良く似た背格好の女生徒を発見した。後姿なので確認できたわけでは無いが
 背後から見ると酷似しており、白衣も着ている。
 黒絵は隠密を駆使し慎重に近づく。また小船はスキル『無音歩行』で移動。逃げ道を絶っておく作戦に出た。
 そして十分に距離をつめ、背後から白衣の少女に声をかけた。
「ちょっといいかな、部長さん」
 声をかけられた少女は振り向いた。後姿は完璧に似ていたのだが…顔が違った。
「部長って、この白衣を着ていた人ですよね?えっと、伝言があるんですよ。私を探しにきた人が居たら言ってくっれって。
 こほん!それでは言いますよー『捕まるものかー!』だって♪」
 黒絵は一気に脱力した。まさか、囮を使ってくるとは考えてなかったのである。小舟がこちらへ駆け寄ってきた。
「…白衣を…この子に渡して…部長さん考えましたね…」
「囮を使うぐらいだし、もう、この辺りには居ないのかもな。別の所に行くか」
 二人は白衣を着た少女と別れると、別の方面を探すべく足を向けた。

 ●
「部長を追いかけて惚れ薬を飲ませて私に惚れさせればいいんですよね!?」
「え?それってどうなんだ?なんだか依頼の目的と違ってなくないか?」
 宮本 明音(ja5435)と名芝 晴太郎(ja6469)は職員室方面に探しに来ていた。
「やだなぁ、冗談ですよ冗談!…たぶん。さぁ!行きましょう!」
 職員室の近くには放送室がある。そのことに目を付けたのだ。
 春太郎は考えた。手っ取り早く探すにはやはり相手が何かしらの反応を起こすように仕向けるべきだと。
 だとすればコンプレックスを突けば良いと結論に達したのだ。気乗りはしなかったが。
 放送で部長に対する呼びかけを行い、その反応で探しやすくしようと言う作戦だ。
 放送室には運良く放送部の部員が居た。春太郎が部員に声をかける。
「あの、ちょっとここの放送を使わせていただけないでしょうか、全校放送をしたいことがあって」
「どのような内容なんですか?」
 部員は訝しげに春太郎を見る。そこで明音が割って入った。
「どうしても探したい人がいるんです。その人を見つけないと…よよよ…ここで依頼の報酬を貰わないと病気の弟が…」
「なんだって…弟さんのご病気に治療費が…」
 明音の話に部員は涙ぐむ。春太郎は驚いた。そんな話は聞いていなかったからである。
 そのことを明音に問いただそうと声をかけようとしたとき、手をつねられた。…嘘八百らしい。
「…わかりました!そう言うことでしたらどうぞ使ってください!」
 放送部員の許可を得た二人は放送室のスタジオに入る。そしてマイクの前に座ったのは明音だ。
「部ちょ‥違った、楓ちゃぁーーんっ!幼女ぉーーっ!!」
 魂の叫びが全校放送でアナウンスされる。あまりにも大声で叫んだため『キーン』とハウリングも起こしたようだ。

 ●
『部ちょ‥違った、楓ちゃぁーーんっ!幼女ぉーーっ!!』
「っぶ!あの声は明音君か!全校放送を使うとは」
「全校放送で部長が幼女と知らされてしまったわけですね。すっごい羞恥プレイだなぁ」
 逃走を続けていた部長と男子生徒が今の全校放送で足を止めた。
 あんまりの放送で思わず足が止まったのである。
 そして、その足が止まった部長を遠目から発見した者達がいた。カタリナと藤花のペアだ。
「いた!私が追います!トウカ、回り込めます?それと、各人に連絡を!」
「了解です!」
 ランニングが得意なカタリナはダッシュをかけた。また、スキル『タウント』を使用した。
 その甲斐も相まって部長の走る速度が目に見えて落ちていく。
 すぐ背後まで迫った時、両手で部長を捕まえようと試みたがカタリナだったが、何故かスルリと抜け出されてしまった。
「くっ…すいません!体に凹凸が無いのですり抜けられました!」
 カタリナの言葉に部長と一緒に逃げていた男子生徒が爆笑した。
「っぶふぅ!…凹凸が無いのでって…ひぃ〜苦しい」
 かなり壷に入ったようである。そんな男子生徒をとび蹴りし逃げるが・・・。
「捕まえたぜ!」
 藤花から連絡を受け。隠密で忍び寄っていた黒絵が部長を捕獲した。
「ぐぬぬ…HA☆NA☆SE!かくなるうえはっ!」
 部長は持っていた惚れ薬の入っている試験管を地面に叩きつけとようとした!
「おっと、そうはさせませんわよ!」
 間一髪でその試験管を奪取したのは瑞穂だった。
「む、無念…」
 がっくりと肩を落とす部長。こうして惚れ薬は見事、確保に成功したのである。

 カタリナは飛び蹴りを食らった男子生徒に手を貸すと、ゆっくりと起こした。
「惚れ薬を使った子、それからおつきあいしてるようですけど…あれから、どうなりました?」
「順調みたいです。だけど惚れ薬は相手の意思に関係なく強制的ですよね。自分の心から生まれた思いは
そう簡単には覆りませんが…」
「なるほどね。何かによって強制的に植えつけられた思いは…もろく崩れやすい…と言う事かしら?」
「俺はそう思いますけどね。でもま、崩れやすいのを必死に補強してそれを確固たる物にしようと努力する姿は
それはそれで健気だなと。恋する乙女は怖いです」
「ふふっ。貴方も気をつけなさいな」

 薬を確保したメンバーは会長の下へと届けに行った。が、届けに行ったメンバーの他に、
 捕獲された部長の元に残った者が居る。小船と明音である。
 小舟は部長に好感を抱いていた。発明が得意なところも、自由に生きている印象がして、羨ましく感じていたのだ。
 また、同じ大学部の生徒というところも一因だ。
「あの…どうやったら…そんな快活に…」
「快活に生きられるのか?かね。それはだな、自分の思うがままに生きることだ。
取り敢えずは友誼を結ぶところから勧めるがね」
 部長がニヤリとした笑顔で小船に手を差し出す。小舟も笑顔で手を握り返した。
「それで、やっぱりあれ惚れ薬だったんですか?」
 明音が部長に尋ねた。
「あぁ、紛うこと無き本物だ。3時間という制約はあるが」
「部長も乙女な所ありますねぇ。可愛いっ。それで‥部長は誰に飲ますつもりだったんです?」
「誰に飲ませるも何も…今回はとある依頼で作ったからな。私自身の為に作ったのではわけではない」
「なーんだ。自分のために作ったんじゃないんですね。残念。残念なので抱きついちゃいます!」
 もがー!と苦しむ部長に良い笑顔で抱きつく明音、それを傍でニコニコと見つめる小舟の姿があった。

 ●
 所変わって、会長の元へを薬を届けにきたメンバーである。
「おーっほっほ!それが惚れ薬なのですわね!これであの殿方の意は私の物に!」
「こんなものなくても、きっと素敵な人は見つかります。皆さん素敵なんですから」
「そうよ。会長ったらこんなものなくてもカワイイですのに」
藤花とカタリナが代表して会長に惚れ薬を手渡した。
「あら、お二人ともありがとうございますわ。ですが、恋とは戦争ですの。
 戦争に打ち勝つためにはありとあらゆる手段が必要なのですわ!」
「俺にはよくわからんな…」
「同じく」
 春太郎の言葉に黒絵はうなずく。
 会長は惚れ薬の入っている試験管のキャップを開けた。中からは甘い香りが漂ってくる。
「あら、香りもよろしいですのね。この薬。味はどんな味がするのかしら?」
 そう言いつつ会長は、試験管に入っている薬を一息に飲み干してしまった。
「あ、ここで薬飲んだら!?ま、マジカル♪ばりあー!なんちゃって」
「宮子ぉー!?ちょ、貴女、何をわたくしを盾にしていますの!?」
 宮子は咄嗟に瑞穂の後ろに隠れた。慌てて瑞穂も何処かに隠れようとするが、
 宮子に盾にされて逃走不能の状態に陥ってしう。
 藤花は一目散に逃走し、カタリナと黒絵は春太郎の背後に隠れる。
「ちょ!えぇ!?」
 瑞穂と春太郎は見た。自分達を見つめる会長の目がハートマークになっていることを。
「ワタクシ…知ってしまいました。恋は唐突に陥るものだと…桜井様!名芝様!ワタクシ惚れてしまいましたわ!
是非お付き合いくださいませ!」
「思いっきり効いてるな!?かくなる上は戦略的撤退だ!」
「お、おなじくこちらも撤退ですわ!同姓に惚れられるとか!…ちょっと興味がないでもないのですが!
 こんな衆人環視の前ではお断りですわ!」
 二人は脱兎の如く逃げ出した。しかし!恋する乙女は執拗だった!
 会長は『恋する乙女(乙男)連合』のメンバーに招集をかけ、二人の捕獲を命じたのである。
「お待ちになってー!」
 この後、3時間に及ぶ逃走劇が繰り広げられたのである。
 こうして一連の依頼は無事?幕を下ろした。


 了


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ラッキースケベの現人神・桜井・L・瑞穂(ja0027)
 聖槍を使いし者・カタリナ(ja5119)
重体: −
面白かった!:4人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
常磐の実りに包まれて・
糸魚 小舟(ja4477)

大学部8年36組 女 鬼道忍軍
聖槍を使いし者・
カタリナ(ja5119)

大学部7年95組 女 ディバインナイト
乙女の味方・
宮本明音(ja5435)

大学部5年147組 女 ダアト
ある意味超越者・
名芝 晴太郎(ja6469)

大学部5年99組 男 阿修羅
大正浪漫女中・
夜鷹 黒絵(ja6634)

大学部6年121組 女 阿修羅