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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
形態:
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2017/08/02


みんなの思い出



オープニング


 風に流れる雲が太陽を隠す。
 中盤6イニングを終え、5対3。依然として学園生チームがリードしているものの、フリーランスチームがジワリと追撃の気配を見せている。
「今回の試合は延長ナシの9回までと決められています。この終盤戦が明暗を決めます……」
 記録ノートを胸に抱き、マネージャーの御影光(jz0024)は真剣な眼差しで選手一人ひとりと目を合わせる。
「7回からは、各種スキルの使用が解禁されます。前回までの能力上昇を目的とした内容の他に、従来のスキル効果を発揮させるものですね」
 同じスキルであっても、能力上昇へ充てるかスキル効果を採用するかは使用者次第ということだ。
「ただし――試合前にも伝えましたが『飛行』『グラウンド内への召喚およびグラウンド内へ影響を与える召喚獣の使役』『相手チームへ悪影響を及ぼすもの』は不可能です。
『飛行』は、純粋な打球を無為にしてしまうから。
『召喚獣』も同様ですね、守備妨害・走塁妨害などといった試合進行へ影響を及ぼす可能性があることから禁止とさせていただいています。
仮に身長を補う程度の飛行であったとしても、どこで何が起きるかわかりません。公平を期すため、ご理解をお願いします。
召喚獣は前回からご協力いただいてますように、ベンチへ待機させるのでしたら問題はなく、この3イニングでそれも証明されましたのでルールとして継続適用されます」
 撃退士同士だからといって、なんでもOKにしてしまうと『野球』という競技が成り立たなくなってしまう部分がある。
 何をして競技の醍醐味とするかは諸説あるだろうけれど、今回の試合は今回用意されたルールの下で展開されるというわけだ。
「それから『相手チームへ悪影響を及ぼすもの』の定義について。
『ピッチャー返しの際にボールと共に影手裏剣を放つ』『スタンエッジで走者へタッチする』『相手投手に毒バステを掛けて体力を削る』といった系統ですね。
ダメージを与える類はNG。スキルは『撃退士の能力を発揮させるもの』、ここを抑えて頂ければ大丈夫でしょう」
 そして、自分たちがそうであるように相手もまた撃退士であることを、忘れてはならない。
「このスキル運用解禁を伴って、カオスレートも各種成否の考慮材料になります。また、特殊抵抗値は互いに存在していますので精神的攻撃もそのままに通るとは考えない方が妥当だと思います」
 無防備で知性の無いディアボロ・サーバントであれば、あるいは人類を見下す天使や悪魔であれば有効な手もあるかもしれない。
 しかし、今回の相手は酸いも甘いも噛み分けたプロの撃退士たちだ。
「純粋に野球を楽しむこと。その上で勝ちに行くこと。……今までの皆さん通りで大丈夫って信じています」




 一方、GFsサイド。
「このままだと、誰かが焼き肉を奢ることになる」
「初耳なんだけど」
 声を潜める筧 鷹政 (jz0077)に対し、引きずり込まれた野崎 緋華 (jz0054)は冷ややかな眼差しを向けた。
 戦犯――投壊の場合ならピッチャーが。致命的エラーであれば、その野手が――試合後の打ち上げ焼き肉代を持つ。
 それはGFsの伝統であった。チーム内の暗黙の了解ゆえに緋華が知るわけもない。
「ッと、待って。緊急連絡だ」
 荷物からスマホの鳴動に気づいた緋華が円陣から離れる。風紀委員として、それから現在もう一つ担っている案件にて、緊急事態が生じた時用の着信音である。
「はい、野崎―― ……。……はぁああああ!? ちょ、ちょっと待って、どういうこと? 今から行くから……ああああもう!」
 イライラとスマホを後ろのポケットへ捻じ込んで、緋華が鷹政へ振り返る。
「筧くん。20分、時間を貰える?」
「いいけど、どうしたの?」
「次のピッチャー捕まえて来るわ」
「お、おう」
 その表情から鬼気迫るものを感じ、鷹政は追及を止めた。

 GFsの監督である多治見のフリーランス・加藤 信吉は、その様子をにこやかに見守っていた。




 グラウンド整備が行なわれている間に、光は続いて相手チームの情報をまとめた。

◎…能力上昇を大きく適用したと思われる箇所
1番〜二塁手 相模 鬼道忍軍
走↑↑↑◎ 攻↑↑ 守↑
投打:右両

2番〜遊撃手 陰陽師
走↑↑↑◎ 攻↑ 守↑
投打:右右

3番〜DH 阿修羅
走 攻↑↑↑↑◎ 守
投打:右左

4番〜三塁手 ダアト
走↑ 攻↑↑↑◎ 守↑↑
投打:右左

5番〜中堅手 筧 阿修羅 得点圏打率は脅威の5割
走↑ 攻↑↑◎ 守↑↑↑
投打:右右

6番〜右翼手 ルインズ 打率は高いが長打は貴重
走↑◎ 攻↑↑ 守↑↑
投打:右右

7番〜一塁手 アスヴァン 最年長55歳
走↑↑ 攻↑↑ 守↑◎
投打:右右

8番〜左翼手 インフィル 野崎
走↑ 攻↑ 守↑↑↑◎
投打:右左

9番〜捕手 ディバ
走↑◎ 攻↑ 守↑↑↑
投打:右右

「6回までの様子から、能力上昇箇所を推察しました。ジョブは先ほど、監督同士でデータ交換を致しました」
 これを起点に、彼らはどう変化を付けてくるだろうか。
「恐らくは、これをベースとして残るスキル枠で作戦を組みこんでくるのではないかと思います」
 パッシブであれば、一度設定してしまえばずっと有効だ。わざわざ入れ替える必要はないはず。
「前回同様に、ポジション・ジョブ変更は可能です。また、スキル回数もそれに合わせリセットという対応になります」
 ただし、パッシブは一度入れ替えたら戻すことはできない(使用回数制限は、設定どおり)。
 
 制約は多いけれど、だからこそスポーツは面白いのだ。
 ルールを守るから、あるいはギリギリを攻めるから、作戦は成立する。
「そういえば選手宣誓はありませんでしたが。スポーツマンシップにのっとり、最後まで戦い抜きましょうね!」




「ストレート、シュート、フォーク。……うん、さすが飲み込み早いね」
「……これはどういうことかな」
 黒髪の投手は、右肩を大きく回しながらため息を吐く。
「野崎さんがピッチャー連れてくるって言うからさぁ。大丈夫。未経験者でもわかりやすく教えるし、後ろは任せてちょうだいなー」
 知ってか知らずか、鷹政とその相方である相模 隼人が彼の投球練習に付きあっていた。
 正しくは、投球方法を教えるところから、だが。
「策略はアンタの得意分野でしょ、適当に混ぜっ返してくれればいいさ」
「…………」
 緋華が意地の悪い表情で、その様子を眺めている。
「泣いても笑っても、これが最後なんだ。……最後だと思って、さ」
「最後、ね」

 堕天の手続きを終えて学園を去るところであった天使カラス (jz0288)は、雲が過ぎ去り再び顔を出した太陽を見上げた。


 暑い夏は、もうすぐそこにある。






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リプレイ本文


 予想外という声もあれば、予想していたという声もある終盤のGFs投手の登場。
 対する学園生チームは、バッテリーを含めポジションすべて初回から同じメンバーで貫く。
 野球初心者だったメンバーたちも、持ち前の身体能力・順応力で回を重ねるごとに良いプレイが増えていた。

「うおおおおおおお! 久遠ヶ原ァアアア!!!」
 イニング交代の間も、高らかにエールを送るは学園生チーム応援団・副団長マクセル・オールウェル(jb2672)。
 学ランの上は脱いで褐色の肌を陽にさらし、鉢巻き姿で応援を続けている。その勢いは試合開始時からなんら衰える様子はない。
 隣では、チアリーダーの矢野 胡桃(ja2617)による可憐なダンス。
 相手チームに追い上げられ始めて迎える終盤戦、応援陣も白熱するというもの。
「へいへーい、応援グッズいかァーっすかー たこ焼き、いかァーっすかー」
 自前屋台で営業中のたこ焼き仮面は、その屋台からゼロ=シュバイツァー(jb7501)であると彼を知る者にはバレバレのスタイル。
「飲み物を補充したいのだけど……。応援団の分……ある、かしら?」
「あ、へーかチアリーダーっすか? なら、オーロラビションに映さないと」
「ない、から。学園のグラウンドに、そんなもの、ない、から!」
 持ち込んでいた暑さ対策のドリンクが尽きてしまった胡桃が姿を見せると、ゼロは通常営業の返しを。
「野崎おねーさんのブロマイド……? いつの間に用意していた、の?」
「試合中に撮っては並べる簡単なお仕事ですよー。ほら、陛下もチーズ!」
 応援グッズと共に貼られている選手ブロマイドに気づき小首を傾げる胡桃へ、躊躇なくシャッターが切られた。
「レアカードっすね、安心してください高値でさばきm」
「……よく考えたら、態々チア服着る必要なかったのよ、ね。これは処分、で」
「ここ射的屋ちがいます、陛下。乱闘はグラウンド外でもあきませんからね!?」
 流れる動作で白銀のスナイパーライフルを取り出したチアリーダーへ、たこ焼き仮面は両手を挙げた。

「おーい、後でカラスとの触れ合いタイムもあるかもしれんぞー」

 そこに、グラウンドから投じられた緋打石(jb5225)の一声で二人の動作が止まる。
「え?」
「は?」
 つられてそちらを見ると……
 GFsのユニフォームに身を包み、キャッチボールをしている次の投手は……肩口ほどの長さの黒髪を一つに結び、普段から想像つきにくい姿だが……
「……え? 相手投手? 存じ上げませんね……!!」
 なんで。
 それに対する答えが全く見当たらず、胡桃は断言するとゼロから飲み物を一抱えほど受け取るとマクセルの下へ戻っていった。
「まいどおおきにー。さって、これの出番があってよかったわ」
 対するゼロは、いそいそと応援グッズに追加を。
 『カラスを半殺し(以上)にした応援用ハリセンレプリカ』。
「こいつで相手投手を半殺し(得点的な意味で)にしたろやないかー! さぁさぁ、買った買ったー!」


「野崎殿、ちょっと良いか」
 呼びかけられて野崎 緋華が振り返る。
「あら、石ちゃん。こっちまで来て、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも。助っ人投手とは、どういうことじゃ。あやつは今……」
「詳しい事情説明は別のお話として……『拘束対象』ではなくなった、てコトね。だったら、拘束していた間の管理費分くらい労働してもらってもいいかなって」
 学園の風紀委員であり天使カラス――今回のGFs側投手――の監視員を務めていた野崎は事もなげに言ってのけた。
「管理費とは」
「監視員を24時間複数名つけたり、食事の用意だったり……タダで部屋に押し込めてるわけじゃないから」
「……世知辛いのぅ」




 賑やかな応援席とは一転して、学園生チームサイド。

「ここまで来たら皆で勝ちたい」

 意を決した表情で、投手・歌音 テンペスト(jb5186)は捕手・Rehni Nam(ja5283)へ気持ちを伝えた。
「最終回まで、投げ抜く覚悟はできてるんです」
「……テンペストさん?」
 防具を身に着ける手を止め、レフニーが顔を上げる。常に明るさを失わない歌音が、今だけは不安をにじませている。
「皆さん、集合! 集合してくださいーー!!」
 さすが女房役、察したようだ。レフニーは肩慣らしのキャッチボールを始めていたチームメイトを緊急招集。
「さぁ、テンペストさん。一言どうぞですよ」
 不安は、捕手ひとりへ伝えるべき言葉ではないはず。
「あたしの力は……強くない、です。皆の『一つ』より、ずっと小さな『一つ』です」
 これまで学園生チーム有利に抑え込んでこれたのは、レフニーのリードがあったから。皆の守りがあったから。
 プレッシャーを背負い、時には失点しながら投げ続けてきた歌音に、疲労が無いわけがない。
 だけど。
「だけど……その『一つ』を皆に向けることで、皆で強くなって、皆で勝てたら……!」
 そのためなら、今日ここで死んでもいい。
 これまで積み重ねてきた『歌音 テンペスト』というアイデンティティ、キャラクター的な意味で! それは歌音にとって、魂と同じだけ重いものだ。
「もちろん、勝つよ!!」
「言うまでもない、後ろは自分らに任せよ」
「全力で行きましょう」
 不安と緊張を打ち明けた歌音の手のひらへ、六道 鈴音(ja4192)や石、ユウ(jb5639)たちが手を重ねてゆく。

「ところで、カラスが敗戦投手になったらやっぱり何か奢らされるんですかね?」

 感動の円陣Goと思わせたところへ、天宮 佳槻(jb1989)が一石を投じた。
「本人と、彼を呼んだ野崎さんは払いそうに有りませんし、筧さんか夏草さんがツケで焼肉の奢りを押しつけられるんでしょうか」
 GFsの独自ルールを耳にしている佳槻は、気の毒そうに相手チームにいる筧 鷹政へ視線をやる。
「ほう……。一人に課すのも酷じゃし、相手投手陣を戦犯にしたらおもしろいの。三等分じゃ」
「焼肉食べたい……!」
 それを聞いて、石と鈴音が目を輝かせる。
 カラスが払いそうにない? 払うように仕向けるのが面白いのではないか。今のところ案はないが。などと続け、石はカラカラと笑った。
 固い空気が、わずかにほぐれる。
 記録ノートを手に、マネージャーの御影光が状況確認を。
「えー……それでは。5対3、2点リードで迎える7回の表……。終盤戦、突入です!」

 それに背を押され、鈴音が元気よく!

「しまっていこー!」
「「おーー!!!!!」」




 7回表のマウンドへ、歌音が上がる。
(大丈夫でしょうか)
(大丈夫ですよ)
 確認する歌音へ、レフニーが頷きで応じる。
 投球フォームはオーバースローを継続だが、下手投げの経験がある故の癖や疲労が出始めていることから少し崩れ気味。
(あたしは、皆を信じる……。今は、『これ』があたしの武器……!!)
 決して綺麗ではない投球。それで相手を惑わせるんだ。
 対するバッターは2番・遊撃手の陰陽師。4回に得点のきっかけを作った相手だ。堅実なプレイヤーという印象が強い。 
「アウルって加齢によって質が落ちていくんですよねー。私たち若者は技術の吸収も早いんですよ。同じ手が通じるなんて思ってませんよねー。セーフティバント抜きで、打てると思いますー?」
 歌音へ素早くサインを出しながら、呟き戦法も継続するレフニー。効果の有無は相手次第で、効かないことも多いのだがもはや癖になっている。
 前の打席で何を打ったか。どんな球へ手を出したか。
 声にしながら思考を整理し投球を組み立てる。
(だから――)
 ボールになるカーブは見送り。
 速球をファールで飛ばし――
「これはスキルを使うまでもないのぅ」
 カットボールで芯を外させたボールは内野に転がり、石が捕球して1アウト。

 同様に3番バッターも打たせて取って2アウト。
 ここで3者凡退できたなら。

「あれは……」
 スキル解禁は、相手も同じ条件。
 4番打者は、打席に入るとそれまでから雰囲気が変わったようにユウは感じた。
(ここで押さえます)
 レフニーは、今イニングもベンチで応援している召喚獣・ヒリュウの大佐と『共感』することで守りへ力を注ぐ。
 投球の組み立ては緩急をつけ、タイミングをずらして空振りを――

 ――ッカン!!

 芯を外してもなお、打球は鋭くグラウンドを走る。
 二塁方向の鋭い打球、しかし4番は足がさほど――……
「ええええええ! ずるい!」
 声を上げたのは鈴音だ。
 瞬間移動さながらの超瞬足。めちゃくちゃ速かった。鈴音は捕球するも一塁の佳槻へ投げられない。
(走塁に瞬間移動って……アリなの……)
 もちろんスキル発動効果そのものではないが、今までと全く違う瞬発力に目を奪われる。
「スキル解禁って……こういうことなんだ……」


「うわぁ……」
 2死1塁。2点ビハインド。
 取れるところで点を取っておきたい大人たちの大人げなさに、塁上の佳槻は思わず声を出した。
 5番打者、筧。チャンスに強いというデータに反し、イマイチ活躍できずにいたけれど……
(血界だな)
(血界ですね)
(血界ですか……)
 一度しか使えない奥義を、ここへ持ってきた。

「出し惜しみなし。常に全力。よろしく!」

 全力過ぎる。
「あたしだって、負けるわけにはいかないわ!」
 多重召喚術でストレイシオンを喚び出した歌音は、防御効果によってチームメイトの能力を高める。
 魂を込めた、一球を――……!
 ぶつかり合う、力と力。想いと想い。
 バットと白球の接した部分から火花がほとばしったように見えた。
 そして。

 ぶつかる力が強いからこそ、弾き返す力も強くなる。
 フリーランス撃退士、渾身の一撃は綺麗な放物線を描き、同点ツーランホームランとなった。


「ツーアウトーー!!」
 外野から、元気な声が投じられる。立っているのがやっとという歌音に向けて、ユウがエールを送る。
 大丈夫。まだ同点。
 ツーアウト。あとひとつ、落ちついてアウトを取ろう。
 歌音は呼吸を整え、次のバッターに向き合う。
 しかしてソウルイーター、星の鎖といったピンポイントスキルで単打を許し、2死1・3塁という場面で8番打者。
「ごめんね、歌音ちゃん。使えるものは無駄なく行きたいのよね!!」
 専門知識に精密殺撃を載せた野崎 緋華は逆転のタイムリーツーベースを放ち、GFsが1点を追加した。

 大人たちが、すごく……大人げない本気を出し始めました。




 9番は3球3振で3アウト。
 なんとか立て直す形で7回表を終えて、7回裏。
(まずは、カラスの投球の特徴を見なければ話にならない)
 先頭打者となる佳槻は、明鏡止水を用いてバッターボックスへ。
 十中八九、あの天使に野球の経験はない。それでも勝敗の懸かった終盤マウンドへ立たせるには相手チームに勝算があるということだろう。

 1球目――速度はあるがコントロールが定まらずボール。
 2球目――すっぽ抜けたかのように見せてストライクゾーンへ落ちてきたフォークは、佳槻が反応してファールでカット。
(粘って、打ちやすい球が来るパターンを読みたい)
 これまで様々な投手と対戦してきた分、佳槻の『目』も養われてきた。
 短期間で積んだ経験を反映させる。打つべきところ、見逃すところ……
 3ボール2ストライクから、カウントが動かない。球種を全部使わせ、ファールで粘り、微調整する中で少しずつ打球をヒットへ寄せている。
「佳槻お兄ちゃん、行けぇえええーーー!!」
 義妹・胡桃の声援が飛ぶ。
 バットを振りかけた佳槻の動きが、そこでピタリと止まった。
「ボール、フォア!!」
「ありがとうございます。よく、見せて頂きました」
 バットを置いて、佳槻は一塁方向へ駆けてゆく。カラスは帽子をかぶりなおし、口の端を軽く上げるだけだった。
「ダサイぞカラスーー 勝負逃げんなーーー てめぇ何で動けんねん、左腕おいてけー!」
 他方、ゼロが陽気なヤジを飛ばしている。


「急造ピッチャーが抑えられるほど、甘い世界じゃないって教えてあげるわ!」
 佳槻が粘ってくれたおかげで、相手投手のスタイルは一通り見ることができたと思う。
 筧だって奥義を使ってきたのだ、こちらも負けてはいられない。
 六道七星陣で攻撃力を上げた鈴音は、闘志を全身にみなぎらせて打席へ。
「よろしくおねがいしまーす!」
(カラスか。幼馴染から話を聞いたことはあるけど当時は戦闘依頼ばかりだったし、役に立つのかなぁ)
 マウンド上の投手は、ポーカーフェイス。先頭打者へ四球を出してしまうことの重さを解かっているのかいないのか。
 そもそも彼に、チームの勝利へ貢献する気があるのかどうか。
「さぁ、行くわよ!」
(ストレートとフォークは腕の振りが同じでしょ。シュートは、振り方で見分けつかないかな)
 いずれも直球と見せかけて変化してくる。鈴音が狙うは直球、変化の有無をどこで見分けるか……
 大きな素振りで、打ち気を見せる。これなら、初球は外すかフォークで来るか?
「……っ!」
 ストレートと判断して振ったボールが内側へ入り込む。鈴音は詰まりそうになるところを力任せに振り抜いて、何とかファールへ持っていった。
(コントロールはよくない、けど、その分を組み立てで補う感じ……?)
 捕手のサインへ首を振ることはほとんどない。野球に対する取り組みは捕手任せという事か。
(だったら……!!)
 執念の5球目。
 打撃の基本・センター返しは外野手の頭を越えた。
「よぉーーーッし!!!」
 左中間に落ちたヒットは2ベース!


 無死2・3塁で、ユウが打席に入る。逆転を許してしまったこのイニング、なんとしても1点は欲しい。
 これまでの2打席を見る限り、変化球の見分けをしやすいのはフォーク。落差の大きさが長所であり欠点でもある。
(ここは、間違えるわけに行きませんから……!!)
 終盤戦へ入る前の、歌音が吐露した心情を思い出す。
(必ず答えます)
 ユウは、ここでバントを選ぶ。確実に、まずは1点。
「君らしくないな」
 相対するのは、随分と久しぶりだろう。にもかかわらず、カラスがマウンド上で呟いた。
「いいえ。これが私『らしさ』です」
 変化球に対しては構えを引き、そして――
 狙っていたストレート。バスターで薙ぎ払いをぶつける!!
 柔軟なスタイルで攻撃を諦めない。これが、ユウの戦う形。
 ホームベースを踏む佳槻を、応援席からマクセルが太鼓を打ち鳴らして出迎える。
 1・2塁間を狙って転がした打球によってユウはアウトになるものの、1点を返して6対6の同点へ。


「打てよー打てよー打て打てよォーーー!!!」
 マクセルより空気が割れんばかりの大声援を受け、レフニーが打席へ入る。
 1死3塁、まだまだ得点のチャンスだ。
(見ていてください、ししょー……!)
 何を隠そう、レフニーの野球の師とはマクセルである。
 強振スタイルを変えることなく、レフニーは投手と対峙した。
(転がせば、点は入る……!!)
 ボールが続く3球目、置きに来た球を地面へ打ち付ける!!
「もらったわ!」
 その瞬間に鈴音が3塁を蹴る。打球は1塁方向へ転がり――
「アウトォーーー!」
 素早い捕球からの送球、ホームアウト。
 鈴音が悔しさで地面に拳を叩きつけた。


 2死1塁、4番を背負う石の登場だ。
「覚悟しろ。前回の打順で感覚を掴み体は温まった。バットの用意はできているぞ」
「それは怖いな。お手柔らかにね」
 これまでの投手と違い、悲愴 ちがう 必死さが薄いカラスは、見慣れた微笑を浮かべるばかりだ。
(読唇術で何か読み取れぬか注目しておったが……言葉らしいものは発しておらぬようだの)
 捕手とのサインは、問題なく覚えたという事か。何がしかの企みを呟く様子もない。
 学園生チームの打者が声を掛ければ、応じる程度。
「その余裕、いつまでも続くと思うなよ」
 戦場で付けることは適わなかった、決着。
 勝ち逃げなどさせるか……!


 気負いが先行したスイングは白球を高らかに打上げ、立ち上がったキャッチャーのミットに収まった。




 8回表が幕を開ける。
 打席には、大人げない代表決定戦をやらせたらGFs屈指となるかもしれない鬼道忍軍・相模 隼人、仕事では筧の相方でもある。
(類は友を呼ぶ……とは言わないけど。相模さんの足が厄介なのは前回でわかったし、ここは確実に抑えたい)
 相模が塁に出れば、次は再び足のある陰陽師。2人にかき回されるようになってはまずい。
 ここの打線は要注意。佳槻は鳳凰を召喚し、万全を期す。
 ふっと、相模が闇色のアウルを纏った。
 歌音が放つ初球を、迷いなく打ち返す!
「!!」
 1・2塁間を抜けようとする打球へ、佳槻が飛びつく。惜しくもミットの先を掠め、勢いに精彩を欠いた球は外野へ抜けてゆく。
「くぅっ!!」
 右翼手からの返球をキャッチした鈴音は、2塁を踏んだ相模をぐっと見上げた。
「どーも。試合はこれからこれから」
 チャライ金髪は笑うばかりである。
 そして……
「来ますよねー……」
 GFsベンチにも、鳳凰が召喚された。
(わかってましたよ)
 心の中でこぼし、佳槻は改めて守備位置へつく。
 相模の大胆さからして、3塁への盗塁を狙う可能性もある。それをほのめかし、バッテリーをかき回すことだって。
(視野を広く取ろう。……うん?)
 そこへ、レフニーから野手向けのサインが発信された。
(なるほど)
(了解っ!)
(任せよ)
 それぞれが、OKのサインを返す。
 相手が全力を出して点を取りに来るというなら、それを逆手に取るまで……!

 初球、大きく外れたボールを打者は見逃し――相模が走った!!
「青薔薇の美しきを見ながら 死 ぬ が 良 い」
 対し、レフニーが3塁へ白い軌跡を描き送球する!!
 球の回転に合わせて、青いバラの花びらが美しく舞いながら……
「アウトォ――!!!!」
「ふっふっふ……伊達にキャッチャーをしているわけではありませんよ」
 タイミングを外されてしまった2番打者は、それでもシングルヒットでなんとか出塁だけは果たした。


 3番、DHの阿修羅が打席に立つ。
 血界は持ち出さないまでも、闘気解放したことは皆に伝わる。
(9回の守備で、押さえ切る為に使いたいと思っていたけど……ここで大量点を許しては元も子もない)
 佳槻は四神結界でバッテリーを援護する。
(フェンスを越えない限りは、絶対に捕りますから)
 外野では、ユウが集中力を上げていた。
 レフニーによる牽制死は、歌音の心を軽くしてくれている。
「行くわよ……もう、負けないんだから!!」
 粘られての5球目――センター前に落ちて3ベース!!
「〜〜〜ッ!」
 シーソーゲーム。ここで再び勝ち越され、6対7。
 そして4番バッターを迎えてしまう。
(よくない流れですね)
 レフニーが、タイムをとってマウンドへ。
「テンペストさん。私に策があります。……これはもちろん、野手の皆さんの協力があってこそです」
 グラブで口元を隠しながら、チームメイトは話し合う。
 1死3塁で1点リード。追加点のチャンス。向こうには、油断はないだろうけど『波に乗っている』くらいの気持ちはあるだろう。
「良い球、来てますよ。あと2イニング、がっちり行きましょう!」
 レフニーは、最後に歌音の肩を景気良く叩く。
「点は、なんとしても自分らが取り返す……今度こそじゃ」
 石も、続いて。
「勝って、美味しい焼肉食べるぞ!」
 同じく、鈴音。
「ううっ……。こ、こんなに美少女に囲まれて……あたし、もうすぐ死ぬのかな……死ぬ気でがんばらないと!!」
(あ。僕は近寄らない方が良いのかな)
 歌音がアイデンティティを取り戻したのを見て、そっとポジションへ戻る佳槻であった。


 果たして、スキル解禁後の4番打者、二度目の対決は――
 ”当たりが良すぎる”セカンドライナー。
「ホームは踏ませない!!」
 からの、鈴音・渾身の送球で飛び出していた3塁ランナーもアウト!!
 華麗なるゲッツーで、ピンチをしのいだ!!




 8回裏。
 もしかしたら、これが最後の打席になるかもしれない。
 学園生チームは、5番打者からのスタート。
 フォークボールによる三振、喰らいついてのシングルヒット、送りバントで2死2塁。
(組み立ては読めて来ただろうか)
 7番打者が打席に入るのを見て、ネクストバッターズサークルから佳槻は考えを纏めていた。
 1点差。ここは同点に追いつきたいところ。
 塁に出て――……

 ……ドッ

 その時、鈍い音がグラウンドに響いた。
 驚きのあまり、応援団も成り物を止める。
「えー。ここに来てデッドボールです。8回1点ビハインドで、2死1・2塁となりました。どう思いますか、解説の夏草さん」
「僕が解説さ!? ……えー、そうですね。投手の経験不足が出てきたと言ったところでしょうか。これまでの投手に比べ、四球が目立っていましたし」
「『カッとなってやった、後悔はしていない』ってヤツですかね」
「有り得ますねぇ」
 屋台を即席の放送席に仕立て、立ち去ったはずの夏草 風太を見かけるや引きずり込んだゼロが実況を開始している。
 脇腹へ綺麗に投球を喰らった打者は、その場に倒れ込んで動けなくなってしまった。
「……えーと……」
 これは。この状況は。

「へーいピカ丸、今日もドジッてるー?」
「代走! 代走なんです!! ドジりませんったら!!」
 人数ギリギリだったため、急遽マネージャーである御影が代走要員に。
 そこを丁寧にイジるのがゼロの優しさである。

「……がんばろう」
 ぽそりと呟き、佳槻は打席へ。
 投手は、変わらぬポーカーフェイス。疲労も緊張も見せやしない。
 明鏡止水。心を落ち着けて、集中力を高める。
 カラスの球筋は前の打席で充分に見た。
 捕手の好む配球も、これまでの仲間たちの攻防で分析出来た。
 再び四球を出すようなら、鈴音へ任せればいい。
 今は、自分の全力を。

 ――ペースを上げてくるぞ

 そこへ、不意に石の声が響いた。意思疎通によるものだ。そういえば事前に、試してみると言っていたか。
 読唇術で、捕手側を読み取れたのかもしれない。
(……なるほど)
 配球パターンを解析する暇を与えない、ハイペースなピッチング。
「それでも、やることに変わりは有りません」
 長打は狙わない、確実に当てることを最優先としたバッティング。
「えぇぞー!! かっちゃーーーん!!!」
 ハリセンをガンガンと打ち鳴らしながらゼロも歓声を上げる。
 2死、満塁。
「……私の出番ね……」
 六道 鈴音、満を持して打席に立つ!


(このピッチャーは自滅もあるし、フォークボールに手を出さなければチャンスを狙えるわ)
 闘志を燃やし、投手と対峙する。
 ペース重視の荒れ球が続く。配球が全く読めない。
 フルカウントへ持ち込み、ファールで粘り、
(しまった、落ちる……!)
 空振りは避けたい、すくい上げるようにバットを振り抜き――
「残念!」
 フェンスギリギリまで下がっていた筧に捕られてしまった。




 ――泣いても笑っても最後。

 とはいうけれど、それならば笑って終わりたい。
 これ以上の失点は、どうやっても避けたい。
 気絶から意識を取り戻したメンバーも復帰した9回表。
 GFsの打順は、5番・筧から。


「……さっきのお返しは、しっかりさせてもらいますから!」
 闘気解放の動きを見せる筧へ、鈴音が声を出す。
 こちらは六道鬼雷刃で守備精度を上げて迎える。
「さぁ、来い!!」
「やらいでか!!」
 まるで2人の対決のようだが、その間に佳槻は四神結界を張るし、歌音はストレイシオンを召喚する。
 レフニーも、ここは許してなるかと大佐と共感し、皆が能力上げに余念がない。
(……あれは)
 遠目で守備固めをしているユウは、同じ阿修羅というジョブから気づく。体のリミットを一段階外した――荒死だ。
「任せて下さい!!」
 これまでの筧の打撃から得意な方向を先読みし、行動に移す。
 打球は7回の頃より伸びはない。
「石さん!」
「うむ!! 六道殿、受け取れぃ!」
「はい!」
 ユウはワンバウンドでフェンスに当たった球を石へ繋ぎ、石がベースカバーに入った鈴音へ送球。大きな当たりであったがシングルヒットに止めた。
「連携を甘く見ると、痛い思いしますよ!!」
 2塁上から、キャッチした白球をチラつかせて鈴音は筧へ不敵に微笑んだ。


 前の打席でホームランを放ったバッターを単打に抑え、以降はバント・内野ゴロ・外野フライでアウトを3つ、綺麗にとって最後の守りを終えた。




 6対7で迎える9回裏、最後のチャンス。

 ユウも変化を使用して能力を最大に高め、その上で漆黒によるリミッター外しで臨む。
(真っ向勝負です、カラス)
 どの球種であろうと、観察を続けてきた今なら打てる。ストライクゾーンへ入ってきたなら、全力で打ち返す!
 さすがに投手も暑さと疲労が重なっているらしく、表情こそ変わらないが額からあごにかけて一筋の汗が流れる。
 それを拭うことなく、投球モーションへ――
 ……3球目。
 フォークが変化し始めるタイミングに合わせてのフルスイング! 光の如き軌跡を描いた打球は三遊間を走る。

 無死2塁の場面で、レフニーが続く。
 この攻撃が最後なのだから、使用スキルに制限なんて考えない。
 聖なる刻印で走力を高め、錬気で攻撃力を跳ね上げる。
(捕手が全面的にリードしているのなら、私の手の内はばれているはずです……。でしたら、誘いに乗って決め球を内角か、逃げて深い内角でボールか……)
 外角は今までの布石で狙いにくいはずだ。そこまでレフニーは思考を巡らせる。
(三振だけは、しませんよ……!!)
 今も、応援席から師匠の声が聞こえてくる。最後までチームの勝利を信じ、エールを送っている。
「この試合、絶対に勝ちます……!!」
 明かなボール球であるストレートを見送っての2球目。
 わずか、内角へ入り込んでくるところを叩きつけた。
 1・2塁間を抜ける打球を背に、ユウが全力で駆ける。
「ユウさんっ、行けます行けます!!」
 ランナーコーチに入っていた歌音が大きく腕を回す。
 レフニーが2塁を落とす、その間に生還!! 同点のツーベースヒット!!!


 7対7。無死2塁。
「ここで打たねば、4番が泣くの。……この試合に魂を賭けて共に戦った仲間たちのため、この試合絶対に勝つ!」
 読唇術で相手チームから情報を得ようとしたものの、有益な呟きは拾えなかった。その代わり、動きのクセなどは把握できた。
 ――信じておるぞ、レフニー殿
 そして。意思疎通で、はっきりした声を塁上の仲間へ届ける。相手は視線で了解を返す。
 捕手のリードによる投球。
 それは歌音とレフニーも同じであったが、彼女たちとこのバッテリーの違いは『信頼関係』だ。
 レフニーは、歌音を信じた上で配球を組み立てサインを出す。歌音はそれを信じ、ミットを目がけてボールを投げる。
 しかし……捕手が、投手を信じていなかったら?
 『急造ピッチャーが抑えられるほど』――これは、鈴音の言葉。きっと相手捕手も同じ思いのはず。
 だから……
(かき回してやるのですよー!)
 3塁を狙うレフニーの動きは、絶対に気になるはず……!
 大きくリードを取っては、捕手からの牽制で2塁に戻るを繰り返す。
 相手の苛立ちが面白いように伝わってきた。
「さぁ! 決着じゃ!!」
 ストライクゾーンはファールで粘る石が気を吐いた。
「キタァ!!!」
 ベンチで、鈴音が立ち上がる。
 フォークボールをキャッチャーが後逸し、その間にレフニーが3塁へ進む。
「これでフォークボールは投げられない、かの? その程度の絆か、おぬしらは」
 石は逆呟き作戦に出る。
 捕手の混乱を誘い……

 投じられた最高速度のストレートを、鋭さと力強さの籠ったスイングで弾き返した!!
 逆転サヨナラ2ベース!!





 8対7、試合終了。試合終了のサイレンが鳴る。グラウンドが歓声に包まれる。

(世の中この先がどうなるかなんてわからない。或いは、今までとは別の意味で酷いことになるかもしれない)
 変わりゆく世界を楽観視していない佳槻だが、それでも今日は、試合に懸けた時間は。想いは。
 不安を忘れ、熱中し――楽しい、と感じた。

「怖かったあぁ……打ち込まれて負けたらどうしようって」
 顔をくしゃくしゃにして、歌音は御影に抱きついて泣きじゃくる。
「歌音先輩、ナイスピッチでした!! カッコよかったです!」
 ぎゅーと抱き締め返して背中をポンポンして、御影は挨拶の場へ送り出す。


「「ありがとうございました!」」

 整列、挨拶、そうして激闘に幕が下りる。
「折角ですし、集合写真を撮りませんか?」
 頃合いを見て、ユウが提案した。
 程なく卒業・進級の季節がやってくる。来年も同じメンバーで野球をできるかどうかわからない。
 だから、今日という長い長い一日を記念に残したい。
「はいはーい、写真なら任せてやー!」
 応援席から、ゼロが身を乗り出してきた。
「陛下、応援団も一緒にやで。野球っちうんは選手だけで作り上げるものとちゃうからな!」
「ちょ、ま、みぎうで」
「はーっはっはっは! その通り、これは皆で掴み取った勝利よ!!」
「すみません、ごめんなさい、僕はここで」
 胡桃やマクセルにも声を掛けつつ、ゼロは立ち去ろうとしていた夏草の襟首もつかんで離さない。
「あら夏草くん。残ってたんだー」
「野崎さんは知ってるでしょ!? 獲物を見つけた目で見ないで欲しいさ!」
「当面、コレの身元引受人になるわけでしょ、多治見で。だったら同じじゃない?」
 同じく立ち去ろうとするカラスの髪を掴み、野崎が指を差しながら微笑んだ。

「「戦☆犯」」

「投手一人に責を負わせるのも酷じゃろうし、連名で負担というのが望ましいじゃろうな。保護者が居るなら尚更じゃ」
 石が腕組みして深く頷いた。



 泣いて笑って、全力で駆け抜けた9イニング。
 熱い風が、次の季節を運んでくる。





依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 前を向いて、未来へ・Rehni Nam(ja5283)
 新たなる風、巻き起こす翼・緋打石(jb5225)
重体: −
面白かった!:7人

闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
陰のレイゾンデイト・
天宮 佳槻(jb1989)

大学部1年1組 男 陰陽師
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
新たなる風、巻き起こす翼・
緋打石(jb5225)

卒業 女 鬼道忍軍
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅