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マスター:佐嶋 ちよみ
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/04/09


みんなの思い出



オープニング

●羅刹の天使
「ラシャくん、って羅刹天と関係があるの?」
 書物を捲りながら、ぽつりと呟いたのは六角ユナ。優等生然とした大人しい外見そのままの、控えめな性格の少女だ。
「ラセツ、ええと、そうだな。たしか、そんな感じだったと思う」
 問われ、ラシャ(jz0324)……ラシャ・シファル・ラークシャサが、彼女が読んでいる紙面を覗きこんだ。金色の髪がサラリと揺れて、ユナの視界に光を弾く。
 大きく分厚い百科事典で、仏教の項目に『羅刹天』『ラークシャサ』の記述があった。
 曰く、『羅刹とは鬼神の総称』『破壊と滅亡を司る神』とも。
「シファルは、その国の言葉で『ゼロ』、だから、オレの名前はノーカウントみたいなものだ」
「……ラシャくんが、人界へ来た際の話を聞いても?」
「話すほどのコトでもないし、隠すようなコトでもない。どうして、そんなカオをする?」
 悪いことを訊ねるような、遠慮がちな少女の様子に、ラシャの方こそ首を傾げた。
 一笑し、それから指折り数えてラシャは過去を振り返る。
「諍いがあった。追われて逃げた。逃げられるならドコでも良くて、ドコでもいいと思ったらココだった」
「逃げた……」
「派閥争いといっても、オレは見たままのコドモだからな。逃げてしまえば追っ手を差し向けられることはない。戦力外。価値はゼロだ。
知り合いの知り合いの知り合いの親戚か何かの伝手でゲートを使わせてもらったはいいが、まあ…… 瀕死の大ケガで、身動きもとれない。
そこを助けてくれたのが、クオンガハラの関係者だった。幸運だった」
「それで…… そのまま、堕天してしまったの? 天界へ戻るつもりは無かったの?」
「向こうでの争いが鎮まるまで、こちらでどれ程の時間がかかるかと考えて、まぁ…… ナリユキ、だな」
 もしも自分が力ある天使で、強い意志をもって戦っていたというのなら―― そもそも逃げたりしない、か。
 人界に落ちたラシャが真っ先に目にしたのは『撃退士』だ。天魔を狩る者たち。
 天魔がニンゲンを糧とする以上は対抗組織が作られて然るべきであり、瀕死のラシャが狩られたって何も言えない状況だった。
 それでも、その場の撃退士たちはラシャを保護することを選んだ。
「スエゼン、という言葉を知っているぞ。あの時のオレだ。でも、ココのゲキタイシは、スエゼンを食わなかった」
 なぜだろう。
 人界を、人を知らぬ天使は疑問を抱いた。
 それが、はじまり。

 名を問われ、意識朦朧の天使は自身の家名を口にしようとした。
 ラークシャサ。
 けれど、それは上手く音にはならず、辛うじて聞き取った『ラシャ』が名として与えられた。
 ラシャ・シファル・ラークシャサ。
 ラークシャサの名を背負い、しかしカウントはゼロのラシャ。
 これが今の『自分』だ。


 自分は何処から来たのか。何者であるのか。
 ユナは物心ついてから悩み続けているのだということを、その後に打ち明けられた。
 人界に生まれ育った者にも、わからないことはある。
 戦う力を望まなくとも、持つが故の悩みはある。




 花見の名所で有名な公園の手伝い依頼を斡旋所でラシャが目にしたのは、それから数日後のことだった。
「はなみ、花…… さくら、か」
 少年天使が人界へ落ちたのは初夏の頃。桜を実際に目にしたことはないが、この国の代名詞ともいえるほど有名だとは聞いていた。
 公園からは、禅寺の庭園へ伸びる参道があるという。休憩時間には、そちらを見学できるわけだ。
(えっと ……ゼン、は スエゼンとはちがうやつ)
 寺に関しては宗派がどうとか開祖がどうとか難しく、把握し切れていないが。
 『禅宗』を辿ったなら、ユナとの会話にあった『羅刹天』という単語とも縁はあったはず。それが、自身の名とも繋がっている。
 ラシャには鬼神と通じるものはないが、これも『縁』だろうか。
 胸の奥が、なんだかくすぐったい。
(悪くない)
 小さく頷き、参加する旨を担当者へ伝えた。



●手を伸ばし、求めるは
 多治見の企業撃退士、夏草 風太は久遠ヶ原へ宛てたFAXを読み直し、ふむと呟く。
「どうだい、夏草くん。今年の花見は、無事に開けそうかい?」
「ああ、所長。先日の一件以来、近郊でも騒動はありませんし……今回の募集で撃退士も集ってくれたなら問題なく」
 宵闇の陰陽師は雇用者へ振り返った。うなじで結った紫紺の髪が、ひょいと揺れる。
「気がかりなのは『恒久の聖女』……。久遠ヶ原が大きく動いているようですので、花見護衛に時間を割いてもらえるか……」
 あちこちで起きている『暴動』のニュースは、多治見にも届いている。
 それを思えば、呑気な依頼だろうかと風太の表情は曇った。とはいえ、この街にも休息は必要だ。
 安心して羽を伸ばす一日が、求められていた。

 憩いの場である温泉がディアボロに襲われたのは、記憶に遠くない。
 天魔被害には慣れている土地だが、企業撃退士が赴任し、注意点や避難行動の指導などが行われるようになり、市民たちの意識も前向きになっていた時のこと。
 その時、風太は他のトラブルで街を離れていた。人手不足を痛感する一件だった。
「大丈夫だろう、という希望的観測は持たず、一か所に大勢が集まるような時には相応の人員を募集…… 頻繁にはできませんが」
 例えば、と風太は話を続ける。
「撃退士側にも街を覚えてもらえれば…… 緊急を要する事態にも、協力してもらいやすいんじゃないかと」
「それで、今回の花見というわけか」
「警備が必要だというのも本音ですよ。最低限の警戒は必要ですが、学園が非常時だとも知っています。彼らにも息抜きをしてほしい」
 そして。
「未来の、企業撃退士が生まれてくれたら心強いと思いませんか?」



●第6回美脚大会〜2015春の陣〜
「是非、協力したいと思う」
「加藤さん、何処で今回の話を そして協力とはいったい」
 加藤信吉。一見ただの小太り中年男であるが、ベテランのフリーランス撃退士。
 岐阜県を拠点として活動しているアストラルヴァンガードだ。
 全日本美脚愛好協会に所属しており、春の陽気が心を浮足立たせる季節の祭りと聞いて馳せ参じた。
「出店も良いだろう、夜桜も良いだろう、デモンストレーションの一つに、春らしく美脚大会を開催してはどうk」
「どうさね、それは」
 顔なじみ相手に、風太の口調も普段の軽いものとなる。
「久遠ヶ原の撃退士たちが集うのだろう、息抜きも兼ねているのだろう。ならば、最新春物を披露したい若者も居るはずだ。違うかね」
「あっ、そう来るか」
 最新春物ファッション。
 それは、たしかに誰かに見てもらいたいかもしれないし、見せあうのは楽しいかもしれない。
「久しぶりに、野崎さんを呼びつける じゃない、脚を出してもらう良い機会だろう?」
「本音が漏れてるさね、加藤さん。空いてるんかなぁ、風紀委員さんは。ま、声を掛けるだけでも聞いてみようか。
ともかく、桜の花を愛でながら華を眺めるってのは良い案だやね。有志がどれほどか、にもよるけれど」
 追加で募集してみようか。
 集まらなくても泣かないで下さいよ?
 そう告げて、風太は追伸を学園へと送った。





リプレイ本文


 穏やかな陽気。
 公園の内外に、薄紅色の桜の花が咲き乱れている。
 行き交う人々の表情はいずれも明るく、平和な時を逃すことなく謳歌しているようだった。
「桜、いいね」
 手を伸ばせば届く位置に在る花弁へ、砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)は目を細めた。
 直近でこの街を訪れたのは、憩いの場所が襲われた騒動。その前には秋、修道院でのイベントだった。
 存外、この街は逞しい。
(『願はくは花の下にて……』って気持ちも分からなくもないけど)
 こんなうららかな日に、すぅっと目を閉じてそのまま。たしかに、幸せそうだ。
 が、そうとも行くまい。
「視覚的に警備示すっていっても、武装だと花見に野暮かな?」
「お疲れ様です、砂原先輩。桜、綺麗ですね……」
「やっほー。北條ちゃんは制服で警備なんだ」
「はい。撃退士がいる、と言うことが安心に繋がるなら、って思いまして。砂原先輩のそれは……腕章ですか?」
 私服のそれにつけられたものを、北條 茉祐子(jb9584)がヒョイと見遣る。
「ちょっとカッコイイ感じでしょ。私服でも、わかりやすいよね」
 私服・制服、それぞれの姿で、『見守っていますよ』という提示。
 召喚獣のヒリュウがホンワカ飛行していたり、花見の雰囲気はそのままに、穏やかに警備体制は敷かれていた。
「もちろん、油断はできませんし天魔以外にもトラブルはあるだろうと思うんですが……。依頼として来たはずですけれど、何だか得した気分です」
「わかるわー。警備頑張…… れたら、いいね……」
 うっかり、花見を満喫してしまいそう。
 おどける竜胆へ、茉祐子も笑いをこぼした。
 全ての人にとって楽しい一日に、なると良い。


「桜見物しつつ警備か……、悪くないな」
 鳳 静矢(ja3856)は、出店の活気や人々の笑顔の間を歩きながら警備巡回をしていた。
 『撃退士』へ依頼が回ってくるのだ、平穏なだけの土地ではない。そう思えばこそ、桜に集う姿は大切に守ってやりたい。
「っと、気を付けてな?」
 人混みを障害物になぞらえて、追いかけっこをする少年たち。
 勢い余って転びそうになったところを、静矢は片腕で受け止める。
「……げきたいし!」
 きらきらの紫の髪、紫の瞳。鍛えられた体躯。優しい眼差しを受けて、少年の一人が声を上げた。
「ありがとうげきたいし! またな!!」
 賑々しく、子供たちは走り去ってゆく。
 彼らにとって撃退士とは、ヒーローのような、憧れのような、そんな存在らしい。
 胸の奥にくすぐったさを抱えて首を巡らせると、酔っ払いに絡まれている金髪の少年が目に入った。
 その年で髪を染めるなんて親が泣いているぞ、そんなことを言われている。言われるのは―― まあ、それも撃退士だろう。
 助け舟を出さんと、静矢はそちらへ足を向けた。
「よく見て下さい、綺麗な地毛ですよ」
 少年の髪をサラリと透かす、光を弾く。染髪による痛みなんて微塵もない。
「撃退士には、アウル覚醒の際に髪や瞳の色が変わる者も少なくありません。ほら、私だって」
「兄ちゃん、撃退士か! ってぇと、このボウズも」
「さっきから言ってる。学生証だってあるのに!」
「こんな子供もなぁ」
「久遠ヶ原では、小学生から撃退士としての教育をしていますからね」
「わるかったよ、ボウズ。おじちゃん、髪が無いもんだから僻んじまった」
「飲んでも酒に飲まれない様にお願いしますよ?」
 毛根に見放された酔っぱらいは、カラリと笑って静矢の手に小銭を握らせて去っていった。
「助かった……」
「ラシャも来ていたのか。……餅つき以来だねぇ」
 絡まれていたのは、堕天使のラシャだった。
「良ければ、少し一緒に回ろうか」
「いいのか? 邪魔にならないなら!」
(……?)
 言葉の端に、静矢は引っ掛かりを覚えた。




 警備巡回として公園全体を見守るものもいれば、出店に参加することで内側から見守る影あり。
「お祭りと言えば出店、出店と言えばタコヤキは外せませんね」
 やる気十分、材料の準備に取り掛かるのは黒井 明斗(jb0525)だ。
「最近はタコも高価ですね、モルディブ産の冷凍を使うしかないですね……」
 材料費は今回の依頼主である企業側が負担してくれるとはいえ、金にものを言わせて何が出店か。
 安いなりに、味とバランスを考えて材料を吟味。
 タコの解凍方法から気を配り、明斗は慣れた手つきで下ごしらえを進めてゆく。


「また、飲み物の屋台でも出しますか」
 昨年、秋のイベントを思い起こしながら、巡回警備を終えた天宮 佳槻(jb1989)は出店の準備を始める。
「まだまだ温度は不安定だし、温かいのと冷たいのと。春らしく、ね」
 秋にはジンジャーを使ったが、今回はリンゴジュースにライムを合わせた、ホットアップルカクテル。
 冷たいものとしては、桜シロップを用いた桜カクテル。パッションフルーツシロップとパインジュースで酸味を付けつつ、炭酸で爽やかに仕上げる予定だ。
「お。やってるかい、少年」
「夏草さん。お久しぶりです」
 企業側の責任者である撃退士・夏草が、梅酒と日本酒の瓶の入ったケースを手にしてやってきた。
「はい、お届けさね。秋のホットワインも美味しかったって評判だったよ。野崎さんが言ってたさ」
「ありがとうございます。そういえば野崎さんは?」
「『美脚大会』のスタッフだから。向こう側で、キリキリ働いてる。美脚に興味があるなら、天宮くんも観においで」
「いえ、それは別に」
 淡々と答える佳槻へ、愉快そうに夏草は肩を揺らした。


 油を染み込ませた鉄板に、生地を流し込んでタコを入れて。表面に火が通ったら、くるりと回転。
 これで、表面カリッ・中身はトロッのタコヤキになる。
 音と香りが雑踏にも負けないくらい、広がり始める。
「さぁ、準備は万端だ。ヒリュウ、宣伝は頼んだよ」
 明斗はヒリュウを召喚すると、看板を持たせて周辺へと飛ばした。


「おー! お花見、桜がすごいきれいなのだよ! めいいっぱい楽しむのだよ!」
 キラッキラに瞳を輝かせるのはフィノシュトラ(jb2752)。
 巡回警備は後半にするとして、まずはお花見を満喫!
「お祭りの時じゃないとないような、屋台の食べ物を楽しむのだよ?」
 フランクフルトに綿あめに、……五平餅?
 頼むと、その場で味噌をたっぷりつけて炙り焼きしてくれる。
 なんて良い香り!
「美味しいものに、綺麗な花…… お花見は楽しいのだよ!」


 白野 小梅(jb4012)は『警備員』の文字が入った黄色いタスキを掛けて、やる気満々。
「よぉ〜し、警備しちゃうもんねぇ!」
 小柄故に、人波にもみくちゃにされて潰されてしまうだろうから、翼を広げて上空から警戒する作戦だ。
 キリリとした表情は、幼女ながら頼もしい印象を与える。
 飛行には自信あり、危うげなく公園を巡回し、出店の立ち並ぶ区域へと突入した。
「……あ、……タコヤキ……」
「おや。よろしければ、一休みしていきませんか?」
 小梅の視線に気づいた明斗が、出店から身を乗り出して手を振った。
「食べる!」
 誘われるままに地上へ降りて、6コ入り1パックをオーダー。
「今、焼き立てを詰めますからね」
 待っている間に振り向けば、
「…………ワタアメ……」
 ふわふわふわふわ、雲のように甘いソレが双眸に映る。
 タコヤキを頬張りながら、小梅の足はワタアメ屋台へ引き寄せられてゆく。
 そして、その隣には。
「……リンゴ飴」
「あら、可愛い警備員さんだね。お勤めご苦労様。ひとつサービスしてあげるよ」
「いいの!?」
 綿菓子へ顔面ダイブをしていたら、リンゴ飴屋さんからそんな言葉。
(これは『お勤め』なんだもんね……!)
 褒められて、ご褒美をもらって、小梅の心はワクワクしてくる。
「フランクフルトぉ!」
「ヤキトリぃ!」
「ベビーカステラぁ!」
 ――気づけば、屋台の味覚巡回業務と化していた。
 どのお店も美味しい、合格!


「分かり易く警備、と言ったら私達の出番ですっ! ヒリュウの可愛さアピールのついでに皆さんに安心感を……って、前半ナシで!」
「竜だ!」
「すげー、ホンモノ??」
 慌てる竜見彩華(jb4626)をよそに、ちびっこたちは召喚獣の姿に目を輝かせて近づいてくる。
 街を破壊するような荒々しいディアボロとは対極にあるヒリュウの姿に、好奇心をくすぐられているらしい。
「ホンモノですよー。とってもいい子なのよ。ね?」
 彩華はしゃがみ、子供たちと目線を合わせる。ヒリュウが、懐っこく彩華へ頬ずりを。
 和気藹々とした姿に、ホンワカとした空気が漂った。
「良かったら、あなたも触れてみて?」
 少年たちの後ろに、一回り小さな少女が怯えるように隠れている。
「……何か、あったの?」
「こいつの家、ディアボロに襲われてめちゃくちゃになって……。オレんトコもだけど」
 企業撃退士の兄ちゃんが駆けつけて、助けてくれたんだ。
 少年は、そう続ける。だから、撃退士と一緒に在るなら、ドラゴンも怖くないしカッコいい。
 しかし、幼い少女の眼には、どれも同じに見えてしまう。
「そっか……」
 彩華の故郷も、天魔の襲撃に悩まされる土地だった。『アウルの力』に対する、間違った認識も根深くて。
(だから、あたしは撃退士になったんだ)
「なーんも心配いらね。ほら」
 高いところからだと、威圧感を与えるから。
 悩殺・ヒリュウの上目づかい。
 少女の足元へ降りたヒリュウが、見上げては小首をかしげる。これに落ちない女子は居ないはず!
「カワイイッ!」
「お姉ちゃんが飛びついたらダメじゃん」
「はっ」
 少年たちがクスクス笑っている。気が付けば、少女も。

「怪しいやつぅ!」

 そこへ、ザザッと土煙を立てて小梅登場。
「さてはドラゴン、じんしんをまどわす…… えっと、怪しいやつ!」
「えええええええ?」
 予想外の展開に、彩華も目をパチクリ。
 ヒリュウを追いかけ始める小梅、逃げるよう声援を送る子供たち。
「おっとと、あまりはしゃぎすぎると危ないですよ」
 飛び上がろうとした小梅を、人の波を掻い潜って陽波 透次(ja0280)が受け止める。
 颯爽と現れた黒い影に、少年たちは大興奮。
「それに、せっかくのリンゴ飴が落ちてしまいます」
「んぐっ」
 温厚な透次の対応に、幼女天使は我に返る。
「うちの子は、怖くないよー」
 小梅が落ち着きを見せたところで、彩華がすかさずフォロー。
「えーっと、ヒリュウと撃退士のアクションショーでした! 御観覧、ありがとうございましたー!!」
 どさくさに紛れて、『そういうこと』に。
 周囲がワッと沸いて、拍手が巻き起こった。
(人が人らしく……清く在れる場所なんだな)
 透次はそう感じながら、今の騒ぎでケガ人が居ないか救急箱を手にして確認を。




「具合が悪いのですか? 救護テントへお連れいたしましょうか」
 ベンチで蹲っている老人を見つけ、茉祐子が駆け寄る。
「ああ……。気晴らしにでもなればと思って、来たんだがの」
 『まだ、いかんようだ』
 辛そうな表情は、体調によるものではないらしい。
「ここの桜は、綺麗じゃ。……どれだけ人死にがでようとも」
 茉祐子は思い出す。
 突発的に市街中心部が襲われたこと。かつてゲートが開かれた土地であること。
(この、桜は……)
 そんな街を、見守りつづけてきたのだろう。
 苦しみを抱える人々の心を支え、こうして春に咲くのだろう。


 酔っぱらって踊り出す、そこまでは良い。
 更に脱ぎ始めた青年たちに、静矢は苦笑いでストップ。
「テレビ局の生中継も回っているようだよ」
「マジで!」
 嘘だ。言葉自体は嘘だが、案外と取材班が紛れているような気はする。
「全国ネットで録画でもされたら取り返しがつかないだろう。羽目を外し過ぎない様に頼むよ」
「一気に酔い冷めたわ……」
「そういや、ホットドリンクでカクテル出してる店が無かったか? 行ってみようぜー」
 若者の立ち直りは早い。脱ぎ掛けた服を正すとバタバタと出店方面へ駆けてゆく。
「……こうして、出来るだけ警備の堅苦しさを感じさせないのも大事なんだよ」
「むう」
 唸りながら、静矢の言動をノートに書き留めている。他にも、通りがかって気が付いたことを纏めているようだった。
「先ほどから気になっていたのだけど、それは?」
「人界ノート。オレひとりじゃ気づけなかったこととか、発見とか、残すようにしているんだ」
 何の変哲もない大学ノートだが、とても大切な物らしい。
「今は色々経験して知って……この先どうして行くかは、まだゆっくり考えればいい」
 赤褐色の丸い瞳が、きょとんと静矢を見上げる。
「少々物思いにも見えたのでね……。気のせいなら、聞き流してくれればいいさ」
「いや……、ありがとう。オオトリは、なんでも知ってるんだな」
 握手を交わし、そうして二人は別れた。


「おや。あなたはたしか」
 反時計回りに公園内を巡回していたエイルズレトラ マステリオ(ja2224)は、ラシャに気づいて声を掛けた。
「一人で回っているのですか?」
「色々と見て回る、ジッセン中」
「ふむ……。僕はエイルズレトラ マステリオ、よろしければ一緒に会場を見ていきませんか? そろそろ、警備も交代の時間でしょう」
 巡回しつつ、そのまま自然な流れで自由行動へ。
 エイルズレトラが提案する。
「もうそんな時間か! オレは、ラシャ・シファル・ラークシャサ。よろしくな!」
 エイルズレトラは、長い名前だな。
 ラシャ君のフルネームも長いですよ。
 他愛もないことを言い合いながら、少年たちは並んで歩いてゆく。


 泣き叫ぶ少女の手を引いて、酒井・瑞樹(ja0375)と北条 秀一(ja4438)は祭り本部へ。
「迷子のようなのだが、自分の名前も言えないくらいパニックになってしまっていて……」
「ありがとう、場内アナウンスを掛けてみるよ。迷子も多いから、キッズコーナー状態なんだけどね」
 2歳くらいだろうか、自分で歩く楽しさを覚えたばかりといった風。
「はは、なんだか若夫婦みたいだね」
 撃退士の窓口となっている夏草がのんびりとした口調で言いながら、少女をヒョイと抱き上げる。
「なっ えっ……」
「ご苦労様、また何かあったらよろしく」
 真っ赤になる瑞樹へ空いてる手をひらりと挙げて、陰陽師は二人を見送った。
(む、む。何やら気恥ずかしいのだ……)
「ひと段落だな。出店を見て回ろうか」
「あっ、そ、そうだな」
 どぎまぎする瑞樹とは対照的に、秀一は落ち着き払っている――彼女の考えていることが、なんとなくわかるからだろうか。
「北条さんは忙しそうだから、ご一緒出来る機会は貴重なのだ……」
 勇気を振り絞り、瑞樹はそっと右を伸ばす。秀一の左手と、繋ぐ。
「嫌なら……止めるのだ」
「まさか」
 秀一が指を絡めなおし、きゅっと恋人繋ぎに。
「……ゆっくり、見て回ろう」
 こくん。無言で、瑞樹は頷きを返した。




「で、この道を抜けると…… おう、ここが禅寺庭園か」
 地図を片手に到着したのは地堂 光(jb4992)。
 警備に重点を置いた行動で、散歩と言えど道の確認を兼ねている。
「土地勘ってのは、正直馬鹿に出来ねぇからな……。初めてだからワカリマセン、じゃすまないのが俺達だぜ」
 事前情報によれば、天魔被害も頻繁な土地だという。
 祭りの日だからディアボロも気を利かせて自粛だなんて考えてはいけない。
(まあ、俺の場合は一般人の仲裁の方が苦手だけどよ……)
 力加減、頭脳戦は、得意な味方に任せたい。
「こっちは、結構静かだなー……」
 食事休憩がてらに散策をしていると、『この先、座禅体験』なる立て看板を見つける。
「…………座禅」
 足がしびれて、悶絶している己の姿が想像できた。
「よし、場所の確認完了。戻ろう!」


 随分と穏やかな気持ちで、雪ノ下・正太郎(ja0343)は禅寺庭園を散策していた。
 のんびりとした、戦士の休息。そんなところだ。
(趣があって……歴史を感じさせて……空気も美味しいし……)
 和む。
 緑の香り、柔らかな風が、生命の力強さを伝えている。
 池の鯉が、尾を返して水面に水しぶきを上げる。
「観音堂を見学したら、座禅体験に行ってみようか。新技に繋がる何かを会得出来るかもしれない」
 橋の上から庭園の敷地を見渡して位置関係を確認すると、正太郎はゆっくりと歩を進め始めた。


「すみません、こちらで座禅体験ができると伺ったのですが」
 透次が本堂を覗きこむと、衣擦れの音と共に僧侶が出迎えた。
 年季の入った木の匂いが、胸の奥に入り込んで心地いい。
(こういう、心が洗われるような場所に住めると幸せだろうな……)
 多少のドタバタはあるものの、活気あふれる祭り風景、打って変わって情緒ある庭園。
 大いに癒される。
「戦に明け暮れる、殺伐とした日々を送っているからなぁ……」
 自分で選んだ道とは言えど。
 たまに、こうして絵にかいたような静寂、平穏に身を浸すことも大切だなぁなんて思う。
(家でも修行の一環でいつもやってるけど、やはりこういう場で行う方が良い……)
 既に座禅を始めている正太郎の隣に座り、目を閉じ、気持ちを整える。
 ――池の音、風の音、葉擦れ、鳥の鳴き声、遠く人々の雑踏。 
(戦争なんて、無くなれば良いのにな……)
 皆、この静寂の中で……静かに生きて行ければ良いのに。
 争いの無い静寂は……こんなにも、素敵で、光輝いてるのにな……。




 公園内に在る、特設ステージ。
「美脚大会ですって、愉しそうじゃない?」
「あの」
 警備巡回を終えたリリアード(jb0658)は、案内板を目にしてマリア・フィオーレ(jb0726)へ呼びかけた。
「テーマは『春らしく』、ねぇ。良いんじゃないかしら、リリィ。飛び込み参加もOKみたいだし」
「あの」
 美女二人が悠然と会話を交わしている、その頭上――正しくはマリアに担がれている――青年が、頼りない声を出して助けを求める。
「ふゥ。お仕置きは終わりにしてあげるわ、ボウヤ。これに懲りたら、林の影で不埒な真似なんて」
「しない、わよネ?」
 盗撮現場の取り押さえ。宵闇を思わせる薄紫の燐光を纏うリリアードは、白い手で青年の所有物であるデジタルカメラを握りつぶし、返却した。


「美脚なら……、脚なら私にもチャンスあると思うのよね」
 程よい肉付きの太ももが、ショートパンツから伸びる。
 六道 鈴音(ja4192)は姉から借りた桜色のジャケットを羽織り、くるりと回ってみた。
 足元のスニーカーが、テイストを甘くし過ぎず快活なイメージを引きだしている。
(今日ばかりは、いつもの黒や紫は封印よ! 春っぽくいくわ)
 

 春風に乗って、少女の澄んだ歌声が響く。
 発声練習をしている、川澄文歌(jb7507)のものだ。
「たいしたものだね」
「アイドルですから!」
 準備作業に走り回る野崎も足を止め、小さな拍手を。
「ふふ。本番も楽しみにしてるよ、頑張って」


「へーえ、美脚大会。参加してみようかなあ。男女不問だって。恋さんも一緒に」
「ええ!? あ、あたしはこういうの……」
 実は過去、第5回美脚大会にもどさくさに紛れて恋は参加していた。応援側のつもりだったのだけど、最後は楽しく踊った思い出。
 そうはいっても、やはり積極的に参加することには気が引けて……
「あら、恋さん」
 幸広 瑛理(jb7150)が地領院 恋(ja8071)に対して悪意なき誘いを掛けていると、そこへ野崎が通りかかる。
「秋のライブアートは、大盛況だったね。今回も、舞台で何かしてくれるの?」
「え、あの」
「そっちの彼も参加希望なのかい?」
「はい。楽しそうだと思って。特に準備は無いんですけど……ヘアセットくらい、した方が良いんでしょうか」
「あたしでよければ、軽くいじるよ」
「せ、先輩?」
「大丈夫。行きましょう、恋さん」
 にっこり。有無を言わせぬ瑛理の笑顔だった。


 ふわふわ、ふわふわ、桜の下を赤い影が歩く。
 怪しい人影。助けを求める声。どこかに潜んではいないだろうか。見落とさないように、注意深く。
 目を凝らし、耳を澄ませ、Robin redbreast(jb2203)は公園内を歩く。
 警備巡回、与えられた任務を忠実に。
「おや、可愛らしいお嬢ちゃんだね。きみも美脚大会に出るのかい? 年齢は不問、何事も経験だ」
 見知らぬおじさんに呼びかけられ、翡翠の瞳がきょとんと振り返る。
 見知らぬおじさんは、見知らぬお姉さんに後ろから羽交い絞めにされていた。
「加藤さん……? あんた、ついに幼女に手を」
「ぎぎぎぎぎぶ、ぎぶだよ野崎さん、私としては絞め技より、蹴り技の方が」
 腰へ強かに膝蹴りをくらい、おじさんは沈没した。
「怖い思いしなかった?」
「んーん、平気」
「美脚大会なら、こっちの会場だけど……。あなたも参加希望なのかな?」
「…………? うん、いいよ」
 誘われたのかな。
 そう受け取ったロビンは、自分の意思といったものは特になく、誘われるがままに頷いた。


「野崎先輩、お疲れ様です」
「茉祐子ちゃん」
 休憩時間を利用して、屋台で軽く食べられそうなものを見つくろい、茉祐子が差し入れを。
「準備、大変そうですね……。お手伝いします」
「いいのかい? 好意は有り難く受け取ろう。それじゃあ、向こうの瓦を――」
「瓦?」
「瓦」
 予想もしなかった単語が飛び出し、茉祐子が反芻する。しかして、やはり『瓦』だった。
(美脚大会…… 何が起こるんでしょうか)


 着々と準備が進む中。
「……また、変態の巣窟になっているのでは無いでしょうね?」
 過去に美脚大会へ参加経験のある――警備側だが――雫(ja1894)は、いやな予感を抑えながら会場を覗いた。
 花見の祭りの延長上ということで、観客たちも『普通の』一般人らしい。
 いつぞやの、過剰な熱気はなさそうだ。
「前大会が可笑しかったのですね……」
 そういえば、今回は美脚大会に関して分厚い警護要請は無かった。
「真面目な大会なら……少し参加して見ますか」




 高らかなファンファーレと共に、美脚大会が幕を開けた。
『エントリーナンバー、一番……』
 司会の紹介と共に登場したのはフィノシュトラ。
 フード付きの白いふわふわニットワンピースは、彼女のイメージそのままだ。
(うわーっ、ここからだと、桜が一段と綺麗なのだよ!)
 金色の瞳が、きらり輝きを増す。
「とっておきのフェアリーダンス、楽しんでほしいのだよ!」
 両手を広げ、くるりと回れば、Aラインに広がる裾が軽やかに翻る。 
 リズムを刻む足元は、素足にミュール。ヒールは低めで、アクティブさをアピール。
「せ、ぇの!」
 光の翼を顕現し、無邪気にジャンプ!
 きらきら、きらきら、トワイライトによるイルミネーションがフィノシュトラの動きに合わせてまたたいた。
 ステップを踏むたびにミュールのリボンが一緒に踊る。
 次第に、客席からも手拍子が送られて――

「We'll be right here あの日の言葉 春の訪れ 夢が叶ったね」

 文歌の声が、重なった。
 楽しい空気に誘われて、アイドルも登場だよ!
 持ち歌、『あけぼのweekサクラ咲く☆ Short ver.』披露しちゃいます。
「ほのぼのdays キミと会う あけぼのweek サクラ咲く☆」
 アンダースコート装備済み、桜色のアイドル衣装はスカート丈短め。
 華麗にジャンプ、キュートにターン、それでも見えそうで見えない絶妙フリル。
 おのずと太ももへ視線が集まる。
 それでもいやらしい雰囲気にさせない、アイドルスマイル。
 誤魔化しのきかないミニスカートからスラリと伸びる足を惜しみなく見せつけながら。
 昔懐かしいステージも、魅せ方一つで華麗に変わる。
「かぎろひmonth ココロ萌え」
 メロディを覚えたフィノシュトラも、文歌に合わせてステップアレンジ。

「A happy year 今年もね☆ 歩き出そう みんな一緒に♪」


 音楽が、軽やかなジャズへと変わる。
「うふふ、折角だしご一緒にいかが?」
「えっ? あたしは」
「ウォーキングなら任せて頂戴、マリアと二人でリードしてあげる」
 メイクアップを終えた野崎に腕を絡め、マリアはリリアードと共に舞台へ。
「ふふ、戦場という舞台でもしなやかに歩きたいじゃない?」
「戦場…… そうだね」
 片目を瞑るリリアードへ、野崎も気持ちを固めたらしい。
 オフホワイトのロング丈トレンチを纏うリリアード、マリアはカーキ色のライダースを羽織っている。
 野崎はブルーグレーのテーラードジャケットを手にした。ダークグリーンの細身ジーンズとアーミーブーツは、そのままで。

 マリアの足元から、光纏による赤い霧がスモークのように立ちのぼる。
 歩くたびに残像が揺れ、その様は花の散るがごとく。
「春だもの、私もそろそろ色を軽くしようかしらァ?」
 リリアードはハーフアップにした黒髪を軽く手で梳き、そのまましなやかに指先を空へ。
 マリアの、つば広ハットを軽く押し上げる仕草が合図。左右でファイアワークスの花が咲く。
 空撃ちで、もちろん機材へ被害が及ばないよう調整してある。
「花が綺麗な季節よね。もちろん、空ばかりじゃなくって」
 マリアのフレアスカートが、歩くたびにふわふわ舞う。美しいウォーキングが、膝裏からふくらはぎに掛けてのラインをより魅力的にする。
 ライダースにボーダーのカットソー、スニーカーにソックス。アクティブな印象の中、ワンポイントの女性らしさが引き立つように。
「ふふ、見ちゃだめよ?」
 ターンの際には、悪戯っぽくスカートをおさえ、ウィンクを。
 入れ替わりセンターへ出たリリアードが、流れる動きでコートを脱いだ。
 タイトスカートから伸びる美脚が陽の下に晒され、歓声が起こる。
 春らしいパステルカラーのシアータイツが彩り、シンプルなハイヒールへと視線を集める。
「細すぎず引き締まった足首も、いいものよ……ネ?」
 花二輪にエスコートされた野崎は、黒のキャップを高らかに蒼天へ放り。
 落ちるまでの数秒間。ゴツめのブーツからは想像できない、軽やかなタップダンスを披露。リズミカルにステージを鳴らす。
 右手で落ち来るキャップを受け止めて、スマートに一礼。役柄としては、令嬢のボディガードといったイメージで。
「まだまだ続くよ、お楽しみに」
 

「綺麗な桜が満開ですね。でも、この公園で一番美しいのは……」
 マイクを通して少女の声。
「この私(の足)よ!」
 一拍置いて、鈴音登場!
 目指すは優☆勝! ダンス? お色気? それも良いだろう、アリだろう。しかして足の魅力とは、それのみに非ず。
 蹴り技のアクションで、堂々と登場!!
 普段のトレーニングで鍛えた太ももは、女性らしい柔らかさと力強さを兼ね備えている。
「それでは六道 鈴音、瓦をかかと落としで粉砕します!」
(何年か前の大晦日に格闘技の試合をTVで観た。問題ないわ)
 魔道の家に生まれ育った鈴音は、格闘を専門に学んだわけではない。喧嘩っ早い性格だけれど、実際の喧嘩沙汰にも強いタイプではない。
 しかし。
 それを差し引いても、天性のセンス、撃退士としての能力があれば問題などない。
(魔力を乗せて、蹴ればいいのよね)
 何も、物理攻撃ばかりが瓦割りではないじゃないですか!! やだ天才!
「とぉりゃぁー!」
 しなやかに、脚を頭上高く上げて――魔力のアウルを纏い、積まれた瓦へと垂直に叩き落とす!
 刀の様に美しい軌跡を描き、20枚の瓦をまっぷたつ!!
「美しさと強さを兼ね備えてます!」
 最後に、キメッ☆☆
 拍手喝采を受けながら、鈴音はステージを後に……

「見事だったねぇ、鈴音ちゃん! さすが!」
「野崎さん、あの、あの瓦」
「気づいた? 薄いネフィリム鋼を仕込んだ、撃退士用超強化瓦」
 テヘペロ?
「もちろん、どんな素材だって華麗に叩き割るつもりでしたけど……!」
 断面が不自然だと思ったら、なんかやたら強力なのが混ざってた!!
「お疲れ様です、差し入れに…… 来たんですが、取込み中ですか?」
 舞台裏へ佳槻が姿を見せる。
「や、天宮くん。話は夏草くんから聞いてた。ありがとう、いつも気が利くなぁ。鈴音ちゃん、飲も飲も!!」
(はぐらかされた気もするけど、結果的には瓦も割れたし客席も盛り上がったし……。いっか!)
 難しいことは放り投げ、鈴音は桜カクテルを受け取った。炭酸が喉に気持ちいい。
「静岡の時もだったけど……お祭りだと、天宮くんは出店ってイメージがある」
「最近、自分が実は裏方好きなんじゃないかと思い始めました。騒ぐより騒ぎを見てる口ですね」
「馬鹿やってる時は、ツッコミ入れてくれてもいいんだからね……?」
(天宮くんって、和を乱すことはないけど輪へ入ることも珍しい……かな?)
「表に出ても役に立たないってのもありますが」
 古い桜の木を見上げ、佳槻はそんなことを口にする。
「役に、って……」
「……撃退士にならなかったら、樹医とか目差すのもいいかも」
(それまで、生きていられたら)
 ありきたりな言葉を掛けられるのが嫌で、後半は飲み込んだ。
「撃退士にならなかったら、か……。そういう選択肢もあるよね」
 深入りすることはせず、野崎もまた小さく呟いた。
「天宮くんが作ってくれるドリンク、あたし、好きだよ」
 キャップを外し、野崎は佳槻を見上げて微笑む――表情が、右へ向いて引き攣った。
「待ってロビンちゃん! それで出るの!?」
 次の出番へ備える、ロビンの姿に全て持ってかれた。先ほどまでの、可愛らしい衣装はどうしたというのか。
「……バラクラバ、お気に入りなんだけどな。足が出ればいいんだよね?」
「うん、……いやでもそれは、避けた方が良い、かな」
 バラクラバ……いわゆる『目だし帽』、銀行強盗などが被るアレである。
「隠密行動を思うと、顔が知れ渡るのは困るかなって」
「ああー ……うーん?」
 野崎は知らないが、ロビンは暗殺組織に育てられた過去がある。
 意思を持たない人形のような雰囲気、それでいて周囲へ警戒を解かないのは、その延長線だった。


 可憐なダンス、麗しのレディ、健康美脚と続いて……
 期待に胸を膨らませる客席に、どよめきが起こった。
『続きまして―― 久遠ヶ原学園からやってきた、ゆるキャラマスコット・久遠ちゃんでーす』
 学園校章をモチーフにした着ぐるみから、タイツに包まれた少女の細い足が無防備に覗いている。
 どこかに視界を確保するための穴は開いているはずなのだが、それを気付かせぬ着ぐるみの完成度。
 そして想像以上に軽やかな足さばき。音を立てることなく、滑るようにステージ上を歩き回る。
(突貫にしては完成度高いでしょう? コスプレ関係、衣装作りは得意なの)
(コメントを求めないでください)
 匿名希望の久遠ちゃん、中の人はロビンだ。
 舞台袖で、パフォーマンスの成功を見守る野崎と、半ばあきれている佳槻と。
「成長途中の脚というのも魅力的だね。余計なものが一切ない分、引き立てられt」
 最前列で腕組みをしている加藤の額を、どこからとなく光の矢が撃ち抜いた。


(勢いで参加しましたが…… やはり、変態が皆無というわけではないようですね)
 変態を速やかに沈静化させ、雫は魔法書を閉じて嘆息する。
「まあ、何事も経験でしょうか」
 借りた衣装は、普段着ているものと似た系統。黒の膝丈ワンピースに紫がかった蒼のマント。
 どこか魔法少女っぽくなっているのは、手に魔法書を持っていても違和感が無いように、だ。
 エフェクトに見せかけて、有害な変態を排除するための。
「行きましょう、戦いの場へ」
 靴底を鳴らし、雫は颯爽とステージへ向かった。


 客席の数か所が焦げ臭い。気のせいだろう。
「さて色男、準備はいいかい?」
「うん、男前が上がった気がしますね」
 軽いノリの瑛理の背を、野崎がペチリと叩いて送り出した。

 薄桜色のシャツの柔らかさを、細身に作られた濃紫のスーツが引き締める。
 もともと上背のある瑛理だが、背筋をスッと伸ばして歩くと更にスマートに見えた。
 ステージ中央まで進み出ると、それまでの優しい笑みがスッと消える。
「それでは演武、ご覧下さい」
 ワントーン落とした声が、開幕合図。
 上段空中回し蹴りから始まる、華麗なる蹴り技の数々。
 時に鋭く、時に力強く。
 舞い、穿ち、汗が散る。
 男性ならではの躍動感に、客席からはただただため息。
「――はっ!」
 掛け声を発し、演武終了! ――と同時に、女性客へウィンクを飛ばすのが瑛理らしい。

「先輩、お疲れ様です。凄く、良かったです」
「ありがとう。緊張しちゃった。恋さんも、頑張って」
 すれ違いざま、小声を交わして。

(――よし)
 ショート丈の黒いレインコートを着こんだ恋は、大きなボードを手に歩き出す。
「おっ、あの時の!」
 秋の、修道院で行なったライブアートを覚えてくれていた人もいるようで、そんな声が掛かる。
「美脚ダンス!」
 ……第5回の、客もいたらしい。
 転びそうになるのをこらえつつ、恋は呼吸を整える。
 両手に速乾カラースプレーを持ち、リズミカルにボードを彩り始める。
 描かれてゆくのは、晴れた空と桜。
 同系統の色を微妙に変えて重ねて塗りながら、遠目から立体的に見えるよう意識して。
 レインコートから覗く足をマスキング代わりにスプレーすれば、白のカラータイツが春色に染まる。
 膝でこする、脛でぼかす、様々な形で脚を『魅せる』。
(さすが、恋さん……。とはいえ、無防備に他の男に見られるのも勿体無いんですよね)
 舞台袖で腕を組み、色男は笑顔を崩すことなく見守りながら、そんなことを考えている。
 曲が終わると同時にアートも完成、レインコートを脱げば、タイツの彩りが映えるホットパンツにブラウンのカーディガン姿。
 シンプル&マニッシュ、あくまでも脚へ重点を置くように。
 ポーズ、それから一礼を。
(……ん?)
 拍手が長い―― そう、思ったら。
「えっ ちょ、先輩 待っ」
「僕のお姫様アピール、なんてね」
 いつの間にか背後に回っていた瑛理が、恋を抱き上げる。
「いやすみません、ついつい」
「あ、あたし重いですから……っ」
「僕の腕は、見た目ほどに細くないですよ。女の子ひとりなんて、ほら」
 桜の花びら舞うように、くるりと回ってみたりなんかして。
 顔を赤らめながら、それでも恋の表情は何処か嬉しそうだった。




 そうしてこうして、美脚大会、無事終了!
「皆、お疲れ様! あとは、夜桜の時間までゆっくりしてね。これから警備当番の子は、頑張って」
 大会というからには順位があるものと息巻いていた文歌や鈴音だったが、『美しいものに優劣を付けるなど』という主旨の催しなのだそうだ。
 だったら、最初から言ってくれれば―― ……最初からわかっていたら、参加しなかっただろうか? どうだろう。
 パフォーマンスを楽しむたくさんの顔を見れたこと、それは良かったと思う。
「皆さん、美脚を堪能させていただきました……。差し入れをお持ちしました」
 そこへ、村上 友里恵(ja7260)がサンドイッチを持って登場。
「岐阜名物、アルパカサンドです♪ ジンギスカンをサンドしているんですよ」
 アルパカの形をしたサンドイッチ。アルパカならぬ羊肉をサンドとな。
 白くてもふもふ繋がり?
「友里恵ちゃん…… ……多治見の名物がアルパカになる日も近いね……」
 たしか、秋にも着ていなかっただろうか。
「野崎さんも、良ければ一緒にアルパカを着ませんか? 美人が着れば知名度うなぎ登りなのです♪」
(こうして知名度を上げ、いつか多治見にアルパカ牧場を建国するのです♪)
「そうでした。加藤さんには特製・函館産イカを挿んだイカアルパカサンドを試食して貰いたいのですが、こちらには?」
「客席の片づけをしてもらってるよ。どうしてイカなの?」
 あ、アルパカサンド意外に美味しい。頬張りながら、野崎は友里恵へ訊ねる。
「イカも美脚だと思うのです…… ぽっ」
「あっはは、泣いて喜ぶね。是非、持って行ってあげて」

「恋さん。警備を兼ねて、少し庭園を見て回りませんか?」
「そうですね、ゆっくり見て回りたいですし」
 瑛理からの誘いに、恋はコクリと頷いた。




 桜を眺めながら、竜胆は歌を口ずさみぷらぷらと巡回。
 時折、すれ違うお子様のリクエストに答えてみたり。花見を楽しみながら、無粋にならないお仕事中。
「――っと、連絡か。はいはーい」
 そこへ、同時間帯に巡回している黒百合(ja0422)から連絡が舞い込んだ。
 もしも近くに居るなら、応援を頼みたい、と。

「見た目が子供だからって、甘く考えないで欲しいわァ?」
「いでっ、いでででででっ」
「ほぅら、力づくって痛いでしょう? 本当はやりたくないのよォ?」
 ゴミはゴミ箱に。宴会で出たゴミは持ち帰りましょう。
「この看板が、目に入らないわけじゃないよな」
 力加減には細心の注意を払い、足止めを担うのは光。
「くっ、ガキ共がなんだって……」
「ん? 何か問題でも?」
 桜木ドン。
 到着した竜胆が、大人の余裕で酔っ払いを桜の木へ縫い止めた。
 スキルを使うまでもなく、一発で素面に戻す。
「よかったわァ、間に合って。酔っ払い相手だと、やりすぎちゃうのよねェ」
「……数件は手遅れだったかー」
「始めの頃は、対話で解決したんだけどなぁ」
 決まり悪く、光は頬をかく。
 爆発的な機動力を駆使して、広域警備を行なっていた黒百合。
 目についたのは、暴れる客よりゴミのポイ捨てだった。途中から、ゴミを回収することも仕事に盛り込み始めて今ココである。
 同様に警備に重点を置いていた光とは連絡が付きやすく、こうして一緒にトラブル解決をしていたわけだ。
「うふふ、夜桜見物が楽しみだわァ。素敵な揉め事でもおきないかしらねェ……♪」
「ストッパー役として、できるかぎりお供するね……?」
(……おかしい。真面目に警備してる)
 我に返りつつ、かといって放置も出来ず。
 黒百合のあとを、竜胆は光とともにのんびり歩き始めた。


 桜の木の下で、シートを広げて休んでいるのは秀一と瑞樹。
 出店で買った食べ物と、射的や輪投げなどで入手した可愛らしいぬいぐるみも広げられている。
 自分からは言い出しにくいだろうと予想を付けた秀一が、瑞樹の為に選んだことは内緒。
「こうして今年も何とか春を迎えられた……か」
「時間の流れは、あっという間なのだ」
 学生と言っても撃退士に、平穏なだけの日常は無い。
 大規模招集令が出れば、激戦へと駆り出される。
 それもまた、一つ乗り越えての春。
「……北条さん?」
 ふっと途切れた会話に、瑞樹が桜の花から隣へと視線を移動する……黒髪が鼻先をくすぐった。
 久しぶりの二人の時間で気が緩んだのか、少女の肩にもたれ、うとうとと目を閉じる青年の寝顔が間近に在った。
「……!」
「不要かもしれませんが……縁結びのアルパカサンドです…… ぽっ」
「むらかみさん……!!」
 見られた!!
 友人の、空気を読み切った登場に慌てふためきながらも身動きの取れない瑞樹であった。


 エイルズレトラとラシャは、買い食いをしながら親睦を深めていた。
 あれがおいしい、これがおいしい。笑顔は絶えることなく。
「おススメは、しょうゆ味ですね。マヨが無いので、生地に利かせてるダシの味とタコの味を味わえますので」
 明斗のタコヤキ屋も繁盛中。二人は立ち止まって考え込む。ラインナップはソース・塩・しょうゆの3種だ。 
「12個入りで、一列ずつ違う味というのはできますか?」
「もちろん。お待ちくださいね」
「……頭イイな!」
「楽しむことは、心の栄養ですからね」
「エイヨウ、かー……」
 ふっとラシャの表情が曇る。
 ラシャは堕天使だ、本来の『栄養』は、人間の――
(僕はハーフ天魔ですが、生まれも育ちも人界ですし……)
 歩きながら、エイルズレトラは言葉を探す。
「……人界の食事で、満たされますか?」
 本来の属する世界と訣別した者・堕天使。天魔ハーフのエイルズレトラはどことなく親近感を抱いているけれど。
「美味い、とは思う」
 ラシャは自身の来歴を軽く話した。
 天使としての経験は非常に浅く、エネルギーは天界で家族から与えられるだけで、実際に『採る』場面には遭遇していないこと。
 けれど、それが各世界でどういったことであるかは知っていること。
 だから――悩んでしまうこと。
「帰ることはできない、けど…… 居ても良い理由も、今は、見えない」
「そうでしたか。大切なのは、人間界で生きていく意志があるのか、人間と共に生きていく意志があるのか、ということではないでしょうかね」
「共に? それで、いいのか?」
「まあ、僕の場合は『駄目だ』といわれたって、平気で居座りますけどね」
 舌を出すエイルズレトラに、ラシャは咽こんで笑った。
「面白い奴だな。……アリガト、な。エイルズレトラとトモダチになれて嬉しい」
「…………なったんですか?」
「違うのか!?」
「いえ、良いなら良いんですが。急展開で、少し驚きました」
 連絡先を交換し、二人は別れた。ラシャが、気になる人影を見つけたというのだ。


 人を避けるように、それでいて人の動向に目を光らせる男がいる。
「ファーフナー!」
 呼び止められ、ファーフナー(jb7826)はゆっくりと振り向いた。思わせぶりな態度ではなく、直前の任務で負ったケガが完治していない故の痛みからだ。
 立って歩いているだけで脂汗が出る。それを堪え、涼しい顔に押しこめて、男は警備巡回をしていた。
「仕事中か?」
「それしか、能がないからな」
「ファーフナーは、いつも仕事熱心だな。そうだ。出店でベビーカステラを買ったんだ! 警備しながらでも食べられるだろう」
 男の声に自嘲的な、焦りのような物が含まれていることなど全く気付かず、ラシャは手荷物から紙袋を取り出す。
「……どこか痛いのか?」
「少し、しくじっただけだ。雑念なんて抱くものじゃないな」
「ざつねん」
「自由時間になったら、禅寺にでも行こうと考えていた。宗教は信じちゃいないが、雑念を排除するなら座禅が良いらしいな」
「ムズカシイ言葉を使う」
 ラシャは、めいっぱい眉間にしわを寄せる。睨んでいるつもりらしい。
「ムズカシイけど、なんか良いヤツなんだよな。オレも行こうと思ってた。庭も綺麗で、心が洗われるらしい」
 予習してきたらしく、ラシャは丸写しの様だがノート書き留めてあることを読み上げては得意げに胸を張った。




「あっ、ラシャさん!」
 ファーフナーとの座禅を終えて、参道をのんびり歩いてくる少年を見つけて彩華が呼び止めた。
「ちょっと……お伺いしたい事があるんです」

 並んで歩きながら、思い詰めた表情で少女は切り出した。
「あたし……天界の天使を相手に、大見栄切っちゃったことがあるんです」
 ――人間を家畜としか思ってないならその認識変えてあげる!
 その心に迷いはない、偽りはない。
 でも、『どうやって?』と聞かれると、言葉に詰まる。
「ラシャさんは…… どう、思います?」
 どうすれば、伝わるだろう? 人間の強さを『認め』させることができるだろう?
 難しい問いだと思う。
「オレ、今日、タコヤキを食べたんだ。
でも、もしも『タコを食べるな』ってタコが反乱を起こしたとして、タコは食べない、焼きそばを食べよう。って決めて、
今度は焼きそばが反乱を起こしたら、どうするんだろう」
 自分たちの種だけが無事であれば、良いのか?
 『それだけ』ではないかもしれないが、ニンゲンというものが重要なエネルギー源である以上、家畜という表現が正しいのかはわからないが、天魔がニンゲンを狙う理由にはなり得るだろう。
 『認める』『認めない』とは、少し、違う気がする。
 という言葉を、ラシャが言ってしまって良いのだろうか。解からない。難しい。
「タツミは、その天使個人に認めさせたいのか? 天界全体へ認めさせたいのか? たぶん、ソレで答えは違う」




 月が煌々と浮かぶ。
 ライトアップされた夜桜の下、帰還の時間がやってきた。

「今日は、手伝ってくれて本当にありがとう。助かったさ」
 夏草と、雇用主である会社の責任者が学園生たちへ深々と頭を下げた。
「いざという時には、また助けに来てくれると嬉しいな。楽しいイベントは、住民にとって生きる活力だからねぇ」
 もちろん、物騒な事件が起きた時は言わずもがな。
 常駐企業撃退士が居るとはいえ、完全な平和からはまだまだ遠い街だ。


 月に桜、輝く星々。
 提灯が点り、出店を彩る。祭りの賑わいはまだまだ続く。
 ――縁があったら、またこの街へ。






依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: 闇の戦慄(自称)・六道 鈴音(ja4192)
 女子力(物理)・地領院 恋(ja8071)
 想いを背負いて・竜見彩華(jb4626)
 道を拓き、譲らぬ・地堂 光(jb4992)
重体: −
面白かった!:12人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
蒼き覇者リュウセイガー・
雪ノ下・正太郎(ja0343)

大学部2年1組 男 阿修羅
武士道邁進・
酒井・瑞樹(ja0375)

大学部3年259組 女 ルインズブレイド
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
かわいい絵を描くと噂の・
北条 秀一(ja4438)

大学部5年320組 男 ディバインナイト
春を届ける者・
村上 友里恵(ja7260)

大学部3年37組 女 アストラルヴァンガード
女子力(物理)・
地領院 恋(ja8071)

卒業 女 アストラルヴァンガード
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
魅惑の片翼・
リリアード(jb0658)

卒業 女 ナイトウォーカー
魅惑の片翼・
マリア・フィオーレ(jb0726)

卒業 女 ナイトウォーカー
陰のレイゾンデイト・
天宮 佳槻(jb1989)

大学部1年1組 男 陰陽師
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
未来祷りし青天の妖精・
フィノシュトラ(jb2752)

大学部6年173組 女 ダアト
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
想いを背負いて・
竜見彩華(jb4626)

大学部1年75組 女 バハムートテイマー
道を拓き、譲らぬ・
地堂 光(jb4992)

大学部2年4組 男 ディバインナイト
仄日に笑む・
幸広 瑛理(jb7150)

卒業 男 阿修羅
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
守り刀・
北條 茉祐子(jb9584)

高等部3年22組 女 アカシックレコーダー:タイプB