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マスター:黒崎 律
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/06/04


みんなの思い出



オープニング


 ある強面の男子生徒が頭を抱えて悩んでいた。
 大事に鞄の中へ入れておいたはずの手紙が見つからない、それが頭を抱えている原因であった。
 服のポケットを探ってみても、鞄をひっくり返してみても、手紙の影すら見当たらない。同じような行為を何度も繰り返したあと、彼はようやく事態を理解した。
 ずっと想いを寄せていた女子生徒に渡すための手紙――つまりラブレターをなくしてしまった、と。


 強面の男子生徒は、穏やかな顔つきの友人――こちらも男子生徒―――に相談を持ちかけていた。
 彼は優しい性格であるにも関わらず、その強面のせいで誰からも恐れられていた。ただ挨拶をしただけなのに、声をかければ一目散に逃げられてしまう。
 しかし今、目の前にいる友人は彼を恐れることなく、他の生徒と同じように接してくれた。今ではすっかり親友と呼んでもおかしくないくらいの間柄になっている。
 だからこそ彼は友人を信じることができた。恋愛相談をしたとしても、この友人なら笑わず真剣に考えてくれる、と。
 その予想は当たり、友人は彼の話を聞くなり真面目な顔つきになった。
「ふんふん……君は朝、その手紙を持って登校した。放課後になって女の子に手紙を渡そうと鞄の中を開けてみたら、手紙はなかった、と。そういうことか」
「ああ。そうだ。登校した時は確かにあったはずなのに」
「うーん……。そうなると、この学園のどこかでなくしたってことか。なにか思い当たる場所は?」
 友人に言われ、彼は改めて考える。
 さっきは手紙をなくしてしまったことに焦り、冷静さを失っていた。だが、今は友人のおかげで多少なりとも冷静さを取り戻している。すっかり平常を取り戻した頭で考えてみると、なるほど。思い当たる節がある。
「そういえば、昼休み……。メシを食おうと思って、購買まで行ったんだ。あの購買、昼はすごい混むだろ? だから食いっぱぐれないように早く行かなきゃと思って、焦ってよ。財布だけ持って行く余裕がなくて、鞄ごと持って行ったんだ」
 頭の中で、昼間のシーンを回想する。購買の中は想像していた通りの人だかりだった。それはまるで通勤ラッシュの満員電車のようで、とにかく昼ご飯を調達せねばと慌てた彼は鞄の中に入った手紙のことすら忘れて突っ込んでいったのだ。
「それで、もみくちゃにされて……。無事に昼メシは買えたが、それ以外のことはよく覚えてねぇ。もしかしたらそこでなくしたかもしれん」
 彼の話を聞き、友人は眉をひそめてため息をつく。呆れた様子が見て窺える。
「それ、もしかしたら、じゃなくて絶対、だろ……。とりあえず、見に行ってみるか」


 彼と友人は購買まで購買を探しに行ったが、見つからなかった。
 購買部長に話を通せばもっと隅から隅まで探すことができたかもしれない。しかし、ものがラブレターということだけあり、シャイな彼は申し出ることができないでいた。自分がラブレターを用意して告白しようとしていることが、よく出入りする購買の所属員に知られるのは嫌だったのだ。
 なにも収穫がないまま二人は購買を出る。出たところで彼はぐるりと友人へ向き直り、友人の肩を掴んで必死の形相で訴えた。
「どうしよう! あの手紙が見つからないなんて……俺、いったいどうすれば……!」
「ま、待て。落ち着けって」
 がくがくと肩を揺らされ、目が回るような気持ちで友人は彼を制止する。
「とにかく人手不足だ。購買は人の出入りが多いから、その拍子に手紙が別の場所に飛ばされたって可能性もある。この周辺も探さなきゃならないってなると、他のやつが拾う前に俺たちだけで見つけるのはきつい。だから協力を頼もう。で、探すのはそいつらに任せればいい。そうすればお前が手紙で告白しようとしてることもバレないだろ」
「あ、そ、そうか。なるほど……」
 友人の提案を聞いて落ち着いたのか、彼は肩から手を離す。
 初めは納得いったような顔をしていたが、数秒と経たずに不安そうな顔に変わる。友人を正面からまっすぐ見つめ、再び訴えかけた。
「……でもよ。俺が告白しようしてる子、すっげえ臆病なんだ。俺から手紙渡されても、怖がって読んでくれねぇんじゃねーかな……。俺、こんな顔だし」
「……手紙の内容って、呼び出しだっけ?」
「あ、ああ。やっぱり告白は実際に会ってしてぇから……」
「じゃ、手紙も渡してもらえばいい。俺が渡してもいいんだけど……、俺がお前と仲いいのはみんな知ってることだからな。友人から預かった手紙ですなんて言ったらすぐにバレて、彼女に警戒されるかもしれないし」
「そ、そっか。そういう手もあんのか。……じゃあ、そうしよう」
 目から鱗。彼の今の表情には、その言葉がぴったりだった。


 友人はあなたたちの目の前に立ち、穏やかな口調で今までの状況を説明した。そして、優しげな微笑を崩さぬまま頭を下げる。
「と、いうわけで……。手紙を探して、見つけた手紙は例の女子生徒に渡してほしいんだ。そうそう、内容は読まないでね。よろしく頼むよ」


リプレイ本文


 依頼を受けた撃退士たちは、購買部の入り口に立っていた。
 お昼が終わった時間帯、人の数はまばらである。
「持つべきものは友。素晴らしい友人を持って、彼は幸せですね」
 藪木広彦(ja0169)が静かな口調で言った。
「甘酸っぱい依頼もあったもんですが、男子生徒の勇気は大事にしないとね」
 続いて礎 定俊(ja1684)が少しだけ苦笑いをしながら言う。
「人々の幸せを掴むお手伝いも、ヒーローの仕事!」
 この声は雪ノ下・正太郎(ja0343)。今回はヒーローパワーを使わず、地道な作業ではあるが隅から隅まで目を通して手紙を見つけ出すつもりだ。


 まず定俊が購買の所属員に話を聞いてみると、帰ってきた答えは揃って「落し物は届いていない」であった。誰かが拾って落し物として届けているかもしれないという線は、これで消えてなくなってしまった。
「じゃあ、購買部長に頼んでここを捜索する許可をもらおうか」
 間田 竜(ja8551)の提案に全員が頷く。まさか許可もなしに商品棚をひっくり返したりするわけにもいかない。
「すみません。購買部長さんとお話をしたいんですけど……」
 後ろで控えめに立っていた或瀬院 由真(ja1687)が、隣を通りかかった所属員に呼び止めて声をかける。
(ラブレターかあ。いったいどんな感じなんだろ)
 鈴・S・ナハト(ja6041)は購買部長を呼び行く所属員の後姿を眺めながら、ぼんやりと考える。
 今まで恋愛とは無縁の生活を送ってきた彼女にとって、今回の依頼はとても興味深いものだった。

 ほどなくして所属員が購買部長を呼んでくると、早速、竜と正太郎、そして定俊が購買の中を探させてほしいと申し出た。
 すると意外にも、購買部長はすぐに頷いてくれた。
「そんなことか。どうぞ、購買部の中は自由に探してくれ。……君たちだけで大丈夫か? 手伝おうか?」
「いえ、それは大丈夫です」
 広彦が手を前に出して制し、丁重にそれを断る。
 購買部長の提案はありがたいが、手紙を書いた張本人である強面の男子生徒は自分が書いた手紙の存在をあまり周りに知られたくないらしい。
 広彦が断ると購買部長はそれ以上なにも言わず、「用事があるからあとは任せる」と言って去ってしまった。残されたのは依頼を受けた6人と、それから数人の所属員のみ。
「……これから大がかりな探し物をするんだから、人の数は少ない方がいいよな」
 がらんとした購買部を見渡し、正太郎がつぶやいた。

「利用客の動線が密な場所なら、見つかるなり蹴飛ばされるなりしているはず。ということは……」
 広彦は思い当たる場所に、目を通していく。
 まずは扉の裏側。誰かが見落としているだけでそこに落ちているのではと思ったが、残念ながらなかった。次はガラス戸同士の隙間。しかしここにも手紙はなく、少しだけ肩を落とす。
 最後に出入り口に敷いてあるマットを持ち上げて裏側を見てみるが、そこにあるのは埃などのゴミだけだった。
「今、藪木さんが探したところにはなかったんですね」
 由真は購買部とその周囲を記した簡略な地図を作り、調べ終わったところにチェックとしてバツマークをつけていく。
「お金を落としたときみたいに、この下に入っていたりしないでしょうか……?」
 ちょうど、由真の目にとある商品棚が映った。
 淡い期待を抱きながらしゃがみこんで覗いてみるが、暗くてよく見えない。その時。
「はい、どうぞ」
 後ろからペンライトの光が差し込んできた。
 振り返ると、定俊が携帯していたペンライトで商品棚の下を照らしてくれている。
「ありがとうございます」
 にっこりと微笑んでお礼を言ってから、もう一度商品棚の下を覗き込む。が、ここにも手紙の影は見当たらなかった。

 由真と定俊が並んで商品棚の下を覗き込んでいたのと似た光景が、反対側にある商品棚でも繰り広げられていた。
 そこにいるのは鈴と正太郎。
「ないですねー……」
 鈴が言いながら立ち上がる。それを追いかけるようにして正太郎も立ち上がり、ため息をつく。
 すると突然、購買部の外が騒がしくなってきた。
 何事かと全員が視線をやると、今回の依頼には無関係の生徒たちが集まっている。購買部で大がかりな捜索が行われているため、野次馬たちが引き寄せられてきてしまったらしい。
「ちょ、ちょっと。聞き込みしてたらどんどん人が集まってきて、結構な人数になってるんだけど……」
 購買部の近くでたむろしている生徒たちに聞き込みをしていた竜が野次馬たちをかき分けながら戻ってきて、そう報告した。
 確かに竜の言う通り人の数は次第に増え、さっきよりも騒がしくなってきている。
「厄介ですね。ここは私に任せて下さい」
 調べていた観葉植物を元の場所に戻し、広彦が立ち上がった。
 そして購買部の入り口まで歩いて行き、先頭にいた生徒たちに睨みを利かせる。
 言葉はいらない。日本人離れしたこの顔は、日本人相手に効果てきめんだ。
 あっという間に先頭にいた生徒は去って行き、その後ろにいた生徒たちも広彦の睨みを受けた瞬間、方々へ散って行ってしまった。
「心強いね」
 その様子を遠巻きに見ていた竜が、ぽつりと言った。

「さっき、そこにいた人たちに話を聞いてみたんだけど。一人だけ購買部の中で手紙らしいものを見たって人がいたよ」
 竜の報告に耳を傾けていた一同は、最後の言葉を聞いて耳をぴくりとさせる。
「本当ですか!?」
 正太郎が嬉しそうな顔で言った。
 手紙がなかなか見つからないため、そろそろ購買部の外にまで手を出さなければだめかと思っていたのだ。この有力な情報はとても嬉しい。
「じゃあ、購買部の中を徹底的に探せばいいんですねえ」
 おっとりした定俊の言葉に頷いたのは、竜だ。
「うん。そういうこと」
 全員で由真が書き上げた地図を覗き込む。すでにほとんどの場所にはバツマークがつけられていた。


「心無い人が捨てた可能性も、無きにしもあらず。が、頑張って探してみますっ」
 捨てられた――その可能性に気づいた由真が、一番にゴミ箱の中を覗いてみる。そこには大量のゴミが捨てられていて、触るのには勇気が必要だった。
 意を決し、手をゴミ箱の中に突っ込もうとした瞬間。
「あった!」
 快活で大きい、正太郎の声が購買部の中に響き渡った。
「あった! ありましたよー!」
 続いて鈴の声も聞こえてくる。
 バタバタと複数の足音が、一斉に声のした方へと向かう。
 正太郎と鈴は購買部の一番隅に置いてある商品棚の前でしゃがみこんでいた。
 一同が二人の手の中を覗き込むと、正太郎が一通の手紙をしっかりと持っていた。

「あとは手紙を渡すだけですね! 問題は誰が渡すか、だけど……」
 正太郎は手に持った手紙と、一緒に手紙を探した仲間たちの顔を見比べる。
「……やっぱ、同性からの方がいいですよね?」
「そうですねえ。私も同性からの方がいいと思います」
「賛成です。私たちが渡したのでは、また妙な誤解が生まれるでしょうし」
「ボクもそれでいいと思う。二人はそれでも構わない?」
 男性たちの意見は一致。あとは女性の意見を聞くだけだが、二人は考える間もなく頷いた。
「はい。任せて下さい」
 にっこりと笑い、正太郎から手紙を受け取る由真。
「責任重大ですね。が、頑張ります」
 大きな役割を任された鈴は小さくガッツポーズを決めた。


 依頼主から女子生徒のクラスを聞き、教室まで赴いた。
 閉まっていた扉を開け、近くにいた生徒に目的の人物を呼び出してもらう。
 すぐに緊張した面持ちで女子生徒がやって来る。由真は優しい口調で声をかけた。
「こんにちは。少しばかり、お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
 それから人目につかないよう人気の少ない廊下の端に連れていき、ずっと大切に持っていた手紙を差し出した。
「これは?」
 突然、差し出された手紙に女子生徒は戸惑う。
「あなた宛の手紙です。自分たちが預かってきました」
 それに対し、まず最初に答えたのは鈴だ。続いて由真が言う。
「差出人の方は、強面ではありますが、いい人だと思いますよ」
「こ、強面? ……その人、怖い人なんですか?」
 強面と聞き、女子生徒はびくりと肩を竦めた。
 由真は「そんなことはありません」と微笑みながら、優しく言葉を続ける。
「貴方を怖がらせるかもしれないと心配したり、大事な物を無くしたら必死になって探したり。きっと、根は真面目で真っ直ぐな人なのでしょう」
「今のこのご時勢で、ラブレターで告白を行うなんて、よっぽどあなたのことがすきなんだと思います。ですから……外面ではなく、彼の中身を見て判断してあげてほしいと自分は思いますよ」
「会って、話を聞いてあげてくれませんか?不安でしたら、私も付いていきますから」
 優しく、まるで小さな子供にそうするかのようにして由真と鈴が交互に訴えかけると、遂に女子生徒はこくりと頷いた。
「わ、わかりました。この手紙……受け取ります」


 不安が拭えない女子生徒は鈴と由真についてきてもらい、手紙で指定されていた待ち合わせ場所――校舎裏へ向かった。
 距離を離して彼女を尾行しているのは、広彦、正太郎、定俊、竜の男性陣。やるべきことはそれぞれ違うが、強面男子生徒の恋を応援したいという気持ちは全員、同じだ。

「なにかあったら自分が守ってあげます!」
 そう言ってくれた鈴の言葉を信じ、女子生徒は待ち合わせ場所へ向かう。
 すると校舎裏には強面の男子生徒が一人、こちらに背を向けて佇んでいた。
「ここまで来れば大丈夫ですね」
 そう言い、由真と鈴が足を止める。
「えっ?」と女子生徒は振り向き、不安げな眼差しを二人に向けた。
「私たちが来れるのはここまでです。鈴さんの言う通り、なにかあったら助けます。……でも、ね」
「自分たちがいたら、ほら、告白もしにくいと思いますし」
「で、でも……」
 そう女子生徒が言いかけた時。強面男子生徒が三人の存在に気づき、振り返った。
「ほら、頑張って下さい。自分、応援してますから!」
 未だになにか言いたげな女子生徒にそう言い、鈴と由真は半ば強引にその場から離れる。こうでもしないと、きっと女子生徒は二人に頼りっきりになってしまうと思ったからだ。

「……来てくれたんだな」
 強面男子生徒が嬉しそうにつぶやきながら、一歩、また一歩と女子生徒に近づく。
 できるだけ女子生徒と怖がらせないよう、優しい笑みを浮かべて近づいた――つもりだった。
「……っ!」
 少し手を伸ばせば、触れられる。そこまで距離が近くなった時、なにかに弾き飛ばされるようにして女子生徒が身を翻し、その場から逃げ出した。
 強面男子生徒、そして近くの植え込みに隠れて見守っていた正太郎が思わず「あっ!」と声を上げる。遠くから様子を見ていた鈴と由真も同じだ。
 正太郎は「しまった」と慌てて口を塞いだが、彼の声は強面男子生徒の声にかき消されていた。
 強面男子生徒が慌てて女子生徒を追いかけようとするが、意外にも足が速い。このまま逃げられてしまうのでは? そんな不安がその場にいる全員の頭を過った時、女子生徒の前に二つの人影が現れた。
「ねーちゃん、こーんなトコでなーにやってんのぉ?」
 一人は服を着崩し、頭をボサボサにし、サングラスをかけた不良。……に、変装した定俊だ。
「オレらと一緒に遊ぼうよぉ」
 もう一人は深く麦わら帽子をかぶった、顔の見えない男。口には煙草をくわえている。不良に変装した竜である。
「ひっ!」
 へらへらと不気味な笑み――もちろん演技――を浮かべる不良二人を目の前にし、女子生徒は足を止める。ひとまず足止めは成功だ。
 定俊と竜は万が一女子生徒が逃げ出した時のために、不良のふりをして足止めする準備をしていた。
 不良に絡まれたところを助けられれば、女子生徒も心を開きやすくなるだろう。
 すぐに強面男子生徒がやってきて「おい!」と二人に脅しをかける。
「か、彼女に手をだすな! 出したらただじゃおかねーぞ!」
「な、なんだよお前」
「男つきかよ……チッ、行くぞ!」
 彼らの役目は舞台を整えること。
 役目を果たした定俊と竜はアイコンタクトをし、その場から走って逃げだした。
「舞台はちゃんと調えた。あとは気張れよ、若人諸君」
 逃げる途中、定俊が小さくつぶやく。あとは告白が成功するのを祈るのみだ。

「……大丈夫だったか?」
 改めて強面男子生徒は女子生徒に向き合い、声をかけた。
 女子生徒は体をびくりと震わせたものの、再び逃げる気配はない。どうやら助けられたことで安心したようだ。

「これが、うわさの青春の一ページとなる告白ですか……」
 強面男子生徒の告白シーンを見つつ、鈴がつぶやく。
「これもまた青春。いいものですね」
 顔を赤くしたり心配そうにしたり、ころころと表情を変える鈴の横で由真がおっとりと微笑んだ。

 ――一方、その頃。校舎裏へと続く道には、広彦が立ちはだかっていた。
「こういうシーンは、二人だけが覚えていれば十分なものです」
 あらかじめ用意しておいた安物のサングラスをかけ、ジャケットの中、左脇にデリンジャーを吊り、物々しい雰囲気を漂わせている広彦。
 なんの用があるのか、校舎裏に行こうとする生徒たちは広彦を姿を見るなり、来た道を引き返していった。
 これが今回の広彦の役目、そして彼なりの応援の仕方だ。
 そしてそのすぐ横では竜が一服しながら、空を見上げている。
(うまくいくといいなあ)
 煙草の煙が願いをのせたかのように空へと飛んでいき、ふわりと広がって消えた。

「……やった!」
 聞いている方が顔を赤くするような言葉が何度も強面男子生徒の口から告げられたあと、ようやく女子生徒が顔を赤く染めながら頷いたのを見た瞬間、鈴は声高らかに喜んだ。
 もちろん、由真も嬉しそうに微笑んでいる。
 近くの植え込みでは、正太郎も嬉しそうな顔をして二人の姿を見守っていた。が、その表情はすぐに曇ってしまう。
 考えていることはただ一つ。
(……俺って、恋愛は全然だめだなあ)
 だ。幸せそうな二人は、彼の目にまぶしく映ったのかもしれない。

 かくして6人の撃退士たちのおかげで、一つの甘い恋が実ったのであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 安心の安定感・礎 定俊(ja1684)
 撃退士・間田 竜(ja8551)
重体: −
面白かった!:4人

優しい鬼教官・
藪木広彦(ja0169)

大学部9年199組 男 インフィルトレイター
蒼き覇者リュウセイガー・
雪ノ下・正太郎(ja0343)

大学部2年1組 男 阿修羅
安心の安定感・
礎 定俊(ja1684)

大学部7年320組 男 ディバインナイト
揺るがぬ護壁・
橘 由真(ja1687)

大学部7年148組 女 ディバインナイト
撃退士・
鈴・S・ナハト(ja6041)

大学部4年115組 女 ルインズブレイド
撃退士・
間田 竜(ja8551)

大学部9年26組 男 阿修羅