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マスター:小田由章
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/01/06


みんなの思い出



オープニング

●冥魔の方角から…
 連立型ゲートを包囲していた撃退士たちの班が幾つか、奇襲にあった。
 それ以上の侵攻を食い止め、隙あらば奪回に向かおうとしていたのだが…。
 思わぬ方向から襲撃を受けたのだ。
「後方より敵襲!大型サーバントが山越えルートで飛行して来ます!」
「山側は冥魔どもが様子を窺いに来てたんじゃないのか?まあいい、可能な範囲で迎撃しろ」
 敵はサーバントというのは問題ないが、やって来たのが冥魔が居たはずのルートと言う事だ。

 流石に油断して、『冥魔は漁夫の利狙いだろう』…などとは思わないが、意外といえば意外だった。
「山側の班は冥魔用の装備や魔術にしてるだろうし、無理はさせるな!…しかし冥魔が素通しさせたのか、それとも別の場所に行ったかが問題だな」
「火事場泥棒をやらかそうにも、付近の住民は避難しているはずですが…」
 山に潜む大蛇型のディアボロは厄介な毒と隠密性を持っており、類似の雑魚も含めると、早期の退治を諦めざるを得なかった相手なのだ。
 そんな連中がどこに向かったのか、あるいは隠れたままなのかは、今後に関わると思われた。
 その時は、本当にそう思っていたのだ。
「ともあれ迷いは禁物だな。サーバントを撃退したら斥候を出すとして、後退した場合は討伐依頼を出して戦闘班を援軍に要請しろっ」
「了解!今は撃退に専念します」
 その方面の数班を束ねる男は、包囲網の維持が優先として、当面の防備と警戒に当たる事にした。
 だがしかし、状況は思わぬ方向に転んでいたのである。

●閃光と共にロボがやって来る!
 PAN!…ゴパァー!!
 圧倒的な光量で閃光が弾ける。山向こうから来たモノたちは何度か見た光景だ。
『ターマにゃあ!!ニャハハ。まっ、人間達には半減も良い所だけどニャ』
「まっ、またあの光が…」
 山を『徒歩』で越えて来たのは、下級天使と人間達だった。
 エージェントのキャット、人間達からはネコ天使と呼ばれる無役の天使は、楽しそうに鼻歌を唄って行進していた。
 無理もあるまい、僅かな部隊で冥魔の集団を蹴散らし、連中がいつの間にか浚っていた戦利品…人間達を横取りしたのである。

 自分では無く強化サーバントの相性ゆえ…なのであんまり自慢は出来ないが、勝利は勝利である。
 そしてこの勝利を盤石なものに、そして自分のモノにすべく頑張ることにした。
『をい、人間たち。直ぐそこに撃退士がいるから逃げ込むと良いニャ!…あと、あっち方面に移動するから、巻き込まれないように注意するニャ』
「ほっ、本当ですか天使様!?」
「私達、助かるの?」
 人間には区別がつかないのだろうが、天使と呼ばれ、おだてに弱い猫天使は満更でも無い顔になった。
 頭は悪くてもネコ天使はネコなりに作戦を立てるし、義理もあるので少しだけ忠告してあげることにする。
『冥魔と戦うのが天使の本分で、必要以上に人間を苦しめるなと言われてるだけだニャ。撃退士を困らせない様に、数人ずつ対応できる人数で行くニャ』
「ありがとうございます天使様〜。やっぱり冥魔とは違うんですね」
 ニャハハっと猫天使は得意げになって、思わず作戦なのだと自慢したくなった。
 おおっといけない、10人程度の感情吸収しても功績が無いから、足手まといを増やすだなんて口が裂けても言ってはならないのだ。

 撃退士の一班を蹴散らして帰還して来る大型サーバントを出迎えながら、にんまりと猫天使は笑った。
 ただでさえ大型なゴーレムが侍の大鎧をまとい、八枚の翼を掲げたロボットの様に厳めしい姿。
 そのサーバントには、用途を表すヴァニッシュと言う意味の単語を刻まれ、人間達の様式に合わせてON文字が追加されている。
「猫さんとデラックス撃退魔王もバイバーイ!」
『猫じゃなくて天使と呼ぶニャ〜。それにこいつはDXゲキタイオーじゃなくて、ヴァニッシュ-ONだミャ』
 手を降る事もたちに、プロパ…ガンダー!と叫びたくなる気持ちを抑えて、猫天使は新しい戦場に向かう事にした。
 あの人間達の世話でこちら方面の担当班は大変なはず…(期待)。
『こんどこそ撃退士を倒すニャ!負けるなヴァニッシュ-ON』
 増援としてやってくる、新手の撃退士を倒して今度こそ凱旋するのだ!

●倒せロボ型・サーバント!
「山側に布陣していた数班が機能しなくなった。すまんが援護に行ってくれ」
「こっち方面の元防衛班を含めて、結構な数の撃退士が居たはずですけどお?まけちゃったの?」
 依頼として張り出された告知には、緊急・危険と書かれていた。
 それも仕方あるまい、強力なサーバントと下級天使が数班の撃退士チームを蹴散らしたと言うのだ。
「危険になった班が後退した所で、冥魔が捉えていた住民を開放したらしい」
「なるほど、一人の要救助者を守るのに、二人は必要って言いますもんね」
「そこまで深刻じゃないと思うが、安全地帯まで連れてく手間を考えれば…。まあ同じか」
 救援に向かった班や、待機して後方を固めた班の居る場所へ、数人ずつの避難民がやって来たらしい。
 負傷して後退した班も含めて、即座に対応できるメンバーが居ない換算になる。

 今すぐゲートの内側から再侵攻を掛けるとは思えないが、早めに撃退しておく必要があるだろう。
「んでこいつが強力なサーバントとやらか。…なんだお馴染みの奴だが…」
「随分とロボ染みて来たな。合体マシーンって、どこの戦隊物なんだか」
「待て待て、それじゃあ俺らが秘密結社みたいだろ。そこはロボ型ゴーレムってよんどけ」
 再生する大型サーバントに、鎧型・羽型・武器型サーバントが協力体制を築いた厄介な相手だ。
 ドラゴン級と呼ばれる部類に比べれば弱いと期待したいが、ロボという段階で、量産できそうなのが嫌な所でもある。
 撃退士たちは軽口を叩きながら、時間の空いた者を中心に作戦を検討し始めた…。


リプレイ本文

●ロボ
 転移前に最終確認。頭に入れた地図と敵データを交差させる。
「戦った奴が居るんなら、頼む」
 強羅 龍仁(ja8161)は肩をほぐしながら、淡々と生の声を尋ねた。
「巨大なゴーレム型サーバントで、再生するので設計図……伝承のように神秘文字を削るのが最も早いですね」
 まずは、と何度か戦ったリアン(jb8788)が説明。
 力を抑え何十回と殴っても倒せるが、メンバー次第ではこちらの方が早い。
「再生に特化し過ぎた所を、装備型が足りない特殊能力込みで覆ってる形ですか」
「まるでロボットだな。段々と倒し難くなって来やがる」
 リアンの言葉を補足して、ロベル・ラシュルー(ja4646)が面倒くさそうな表情を浮かべた。
 紫煙の香りを匂わせながら、連中はヒーローになりたいのさ…と苦笑。
「ロボ…?まぁ…厄介そうではあるな」
 龍仁もつられたように苦笑を浮かべ、聞いた内容を脳裏で描き直す。
「ん〜ロボットって…サーバントなんコレw」
「…正確にはロボットの特性を模したサーバントの試作型。でしょうね」
 タッチパネルを操作し藤井 雪彦(jb4731)が敵の画像を呼び出すと、雫(ja1894)は表情を変えず眉だけをピンと動かした。
 攻撃型にとって消耗戦特化は相性が悪いだけだが、装備によって足りない能力を補うなら面倒になる。
 何よりも元のアイデアをより良くしていくという姿勢は、それまでの天使たちには無かったものだ。

 これではまるで…撃退士の様ではないか。
 そこまで懸念した上で、一つ解せぬモノがあった。
「以前の報告書を見る限り、判断が良過ぎるんですよね。試験運用なら近くに観測者もいるかも…」
「住人を保護した人たちの話では下級天使が居たんだよね?油断しないに越したことは無い…か」
 雫の言葉に雪彦は事前に届けられた報告を思いだした。
 指示を出している程度かもしれないが、直ぐ近くに居るのだと警戒はしておこう。

●ゴレムの死角
 いずれにせよ時間がやってきた。
 転移の準備が整い、高知県へ移動開始。
「まぁ…兵器には違いないし…後の憂いにならないためにも、しっかり破壊しておかなきゃだね☆さ〜てさっさと片つけるぞっ♪」
 雪彦はカウントダウンに載せて鼻歌を唄い始めた。
 ここまでくれば、後は戦うのみ。
「確かに。ここで倒しておかないと、ゲート戦とかで出てこられても困るしね……っと」
 転移の反動を受けて、龍崎海(ja0565)は四方を確認。
 遥か向こうに森、その手前に大型のサーバントが見えた。

 脳裏にある地図を踏まえ、敵を迎撃する場所を選定し始める。
「あの辺に戦線を作って攻撃かな。そろそろ時間だし、準備を…」
「その事なのですが、阻霊符の発動を待てますか?」
 海が翼を出した所で、同じく翼を展開したリアンが声を掛ける。
 阻霊符の発動は定石であるのだが…。
「符を使わないの?特に天使が隠れてる事もあるし、無条件には賛成できないかな」
「理由次第だと思う。本格的な戦いの前までならの条件で、折り合いがつくんじゃないの?」
「前の戦いで死角を突いた方法が効いていたので、応用しようかと思いまして」
 符を使う予定の雪彦に頷きながら、同様に使用予定の海が妥協案を提示する。
 リアンは提案に感謝して、情報を口にした。
 前回の戦いで、倒されたフリをした撃退士が、相手の隙を突いたのだ。
「(…隙を突けた。となると下級天使は目でも観測しながら、指示を出している。と言う事)」
 雫は符のやり取りを聞きながら、ゴレムの後方を眺めた。
 そこには森が広がっており…、隠密能力を活かして観測を行っているのか?
「測量に…。観測役の位置を探るのに良いかもしれませんね」
「管理者を見つけて追い返せば町場居なく勝利だし、時間限定で賛成しておくよ」
「そこまで言うなら。でも僕は使う気なのを忘れないでね。あくまで陣を敷くまで」
 雫と海が頷いたので、雪彦も妥協する事にする。
 接敵途中で陣を敷くつもりなので、どの道彼は手番が遅くなるのだ。
 それまでなら、という限定で作戦を受け入れておく。
「皆さま申し訳ありません。時間も惜しいですし、先に赴かせていただきます」
 リアンはかしこまって礼を言うと、敵から見えない位置に走った後で、地面に潜り始めた。

●彼方の敵
 撃退士が近寄り始めたことで、巨大なゴレムはゆっくりと浮遊して間を詰める。
 重量を効率的に運ぶためか、単にコスト問題かそれほど高度は無い。
 それでも地上戦が得意な者には、わずらわしい高度だ。
「わたくしの様な阿修羅には色々と大変そうですわね…でも頑張りますわ!」
「早目に撃墜してやるさ。まあ、それまでは愉しみにしてな」
 長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)が少しだけ不満げに口にすると、アサニエル(jb5431)は不敵に笑った。
 格闘戦で打ちすえるのが難しい高さであっても、中距離を得意とするアサニエルには程良い位置になる計算だ。
 速攻で攻撃魔法を叩きこんで、状況を変えるとしよう。
「あれだけ図体がでかいと、こっちも当て甲斐があるってもんさね」
「こっちも皆が翼に向かう為、封砲で道作りをするとしようかね。それまで待っといてくれよ」
「そこまでおっしゃるなら、楽しみにしてますわ」
 アサニエルの話にロベルが同意して、呼び出したショットガンを肩に担いで歩き始めた。
 みずほは少し後ろで待機して、いつでも駆け付けれるように離れておく。

 十字砲火するにも銃や遠距離魔術を用意していない事もあるが……、この身を縛る結界が邪魔でならない。
「まだまだですわ。あと少し、あと少し」
 みずほから見て、距離があると言うのに、敵の鎧が持つ魔眼の力で能力が制限され始めていた。
 流石に天使が作る代物である、カオスレートがマイナスの者への完成度はかなりの物だ。

 ここで焦って囮を務めるよりも、第二の矢として率先して動くべきだろう。
「焦ってはいけませんわ…タイミングを見逃さず…クリーンヒットさせるのみ」
 焦る気持ちを抑え、5m10mとジリジリと近寄る。
 戦いのタイミングとは、デートにも似ている。あるいは色恋もまた、戦いとも言えるが。
 足の速い、あるいはジっとしていられない人を捕まえるように、その時を待った。

 その時、遥か前方で、大地より出現した者が居る。
『堕ちるが良い』
「…っ!ここですわ」
 阻霊符に弾き出されたリアンがゴレムの背後から出現、態勢を持ち直した後に魔法攻撃を開始する。
 みずほはアウルの鞭が伸びたのを見て、僅か数歩で50mの距離を疾走し始めた。
 それでもまだ届かない、だが、それが良い。
 この位置ならば向こうの弓も届かないし、駆け付けた時には仲間が羽を潰しているだろう。

●天、地、仁
 タイミングを遅らせたメンバーが駆け出して行く。
 中でも直角染みた急制動を掛けるのは、ひときわ小さな少女である。
「まずは翼から…」
 雫の背後が煌めいたかと思うと、翼のように紅い光が集う。
 光の矢が放たれ、次手を放つべく地上用の技へ集約しただけでその本性を露わにし始める。
 跳梁跋扈する悪霊たちが、暴力と言う名の宴を開始しした。
「(…敵の回避機動。ううん、再生力を考えれば余計な移動は不要。伏兵相手に見易い位置に配置……かな)」
 圧倒的な暴力に満たされながら、雫は何処か覚めた目でゴレムの動きを見つめる。
 本当の意味での敵は『コレ』ではなく、操者の思惑なのだ。
 冷徹な思考の裏で、溢れかえる力は獲物を求めて大地を這い始めた。
 着地点に向けて月が地表を滑る。
「合体すれば強いってもんじゃないさね。まとめて砕くっ」
 アサニエルの放った光が降り注いだのはその時だ。
 天に無数の星がまたたき、掲げた腕の動きにリンク。

 降ろした手に従って、軌跡を描いて流星群が降り注ぐ。
「まだまだ、こんなもんじゃないよ!」
「お代りをくれてやる。たっぷり食らうがいい」
 追い討ちの呪文を唱え始めるアサニエルと入れ替わりに、龍仁の詠唱が木霊する。
 先ほどと同じ術式が展開され、流星が赤い登り龍となって四方から集い始めた。
 巨人を赤い星が天より地へ、叩き落とす。
「裂けろ大地よ!」
 そこへ海の術が迎え討った。
 力は足元に輪を広げ、波打つアウルが巨石を天へと撃ちあげる。
 撃ち降ろすゴレムの矢よりも速く、天へと駆け登った。
「唸れ風神〜ってね♪先手必勝☆彡」
「このスピードならなっ、そうそう打ち負けはしねーよ」
 それらは雪彦の仕掛けた風の守護、大いなる戦の風神の影響だ。
 ロベル達の脚力や認識速度を高め、勝利へと導く為に取り巻いていた。
 光の柱がゴレムの翼を完全に打ち砕き、大地へと縫いとめる。

 そこへ大地を薙ぐ月が滑り込み、同時に韋駄天スカンダと名前を同じくする少女が到来する。
「ようやくゴングが鳴ったばかり!出番の無いまま、終わらせないでくださいませ!!」
 アレクサンドラと言う名前を持つ少女は、落下したゴレムめがけて横薙ぎの一閃を放った。
 斬月と共に巨体が浮いた所に、返す刀で逆方向のフック!
 巨体がまとう大鎧に、ミシミシと亀裂を入れる。

 天、地、仁の交わりが高らかにゴングを打ち鳴らしたのである。

●迷わずブン殴れ!
 防御用とあって流石に羽型ほど脆くは無い。もっともレート的に相性の良い者が全力を発揮できないのもあるだろうが。
「ここがスタートであるなら打ち崩すだけ」
「それなら、全てを防げるわけじゃないけど、地味に後々効いてくる……と良いなぁ〜☆なんてね」
 地に堕ちたゴレムを負って、雫は三日月の後を追いかけた。
 小さな体が肉薄したのを受けて、雪彦は更に一枚結界を巡らせる。
 これで後衛・前衛に二枚看板が成立する。
「厄介な部位から破壊させて貰います」
 雫が前衛に張られた結界の中で、身体を軋ませてスイング抜きの突進。
 灼熱の太陽が、少女の手で弾ける。
 掌に生まれた光は、刃となってゴレムの『後ろ』に突き刺さった。
「やった、武器型を弾き……。くっ、駄目か。今の内に退避しておいた方が良いんじゃないかな?」
「長谷川様達は下がってください。あれは多分、報告にあった…」
 空からと言う視点もあり、挙動を察した海とリアンの忠告を受け、カオスレートがマイナスの者が後方に下がった。
「(その間に、俺は死角に回らせてもらうとしよう)」
 言葉を飲み込んでリアンは頭上を回り込み、右目側に移動する。
 狙うは勿論、次なる猛攻の下拵えだ。
 ゴレムから弾き飛ばされた槍が、奇妙な形に変わり始める。

 その間は攻撃してこないのだから、弓を引く代わりに別の行動をしているのは明白だった。
 一度下がりながら視線の魔力を再確認していると、一同の視界は一瞬膨大な光で閉ざされた。
「これが槍の力!?ダメージは!?」
「直撃したが俺はアスヴァンだしな、今まで食らった矢の方も…」
 みずほが盾役の仲間に尋ねると、龍仁は笑って矢の方を抜き取った。
 太い矢が刺さっていたのならば、抜くのはむしろ危険なはず。
「この通り雪彦の結界がまだ頑張ってくれてらあな。心配するほどじゃねえ」
「そう言う事なら…」
 ぶらぶらと手を振る龍仁は、みずほが後方から見ても軽傷に見える。
 仲間が張った結界のお陰でそれほど傷が深くないか、深かったとしても治療を施したか?
 詳細はともかく、これならば盾役として問題ない。
「行きますわよ!…守ってくださいませ!」
 みずほは再び突撃。
 全身をフル稼働させて余りあるアウル、迸る余波は蝶か花かと思うほど。
 これほどの力、人の身で使えばただでは済むまい。
「隙が出来るのは気にするな。俺らに任せとけ」
「それに道くらいは切り開いてやるさ」
 龍仁が盾を構えて横入りする様子を見せ、反対にロベルは赤い大剣に持ち変えて先手を担った。
 突き進む少女を中心に、皆で矢印、三角にと陣形を目まぐるしく変えていく。
「まずは鎧、次は本体!…なるほど、一撃で大ダメージを与えると再生するのですわね…でしたら、手数で勝負ですわ!」
 みずほの鉄拳が壊れかけた鎧を粉砕!その瞬間に身が軽くなる。
 その破片が落下する前に、次のパンチが胴体に突き刺さった。
 拳を引くと同時に傷が塞がって行くが、次々に連打を繰り出してこじ開ける。

●使徒達を倒せ!
 一瞬にして五発の拳が再生よりも速くゴレムを削る中、森に目を馳せた者も居る。
「可愛い子ちゃん居た?」
「…ああ。一気に飛びかかれない位置。ほらっ、あの辺りさ」
 雪彦はアサニエルの言葉を受けて、顔は向けずに視線だけを動かした。
 森はゴレムの後ろ側だけではなく、更なる向こう側にまで続いている。
 近くの方がこんもりと茂ってい入るが…。
「術で確認したけど、流石に近くに潜みはしなかったようだね」
 アサニエルが探知魔法を使った事で、危険な位置に居ない事は判った。
 一足飛びに倒す事は出来ないが、介入される危険もないと言う事だ。
「そっか。じゃあ終わってから可能なら一撃ってとこだね。お膳立て終了したし〜あとは撃ちぬくだけだぜぃ☆ 」
 雪彦は危険が去った事にひとまずの満足を覚えると、風を操って攻撃に参加する。
 それはタフなゴレムを倒す手助けとなり…、全て終わった後に、奇襲を掛ける一撃となるかもしれない。

 いずれにせよ、追い詰めた敵を倒す方が先である。
「そっちは任せた」
「右目は…もらった!!」
 槍の長さで首元を抑えた海は、反対側から強襲するリアンに全てを任せた。
 黒き閃光と化して飛来する男は、悪魔の力を解放する。
 これまで傍若無人な攻撃に耐えて来たゴレムも、こうなっては御終いだ。
「これが、最後だっ!! …奔れ!」
「やはり居ましたか、なら…」
 雪彦の風がトドメの一撃を入れると、雫は指示された場所に走り込む。
「大人しく縛に付きなさい。悪い様にはならないと思いますが」
『そうはいかないニャッ!』
 雫の剣閃が森越しに下級天使に向かうが、警戒しておいた用で追い詰めるには至らない。
 長く伸ばした爪で受け止め、それでも防ぎ切れない力で傷を負わせたものの直撃は免れたようだ。
 何人かから攻撃魔法も飛ぶが、包囲網を築く程の余裕は無かった事もあり、脱出されてしまった。
『覚えてやがれだミャ〜』
「騒々しい奴だ。しかし天界もどうしてロボなんか作ったのか…」
「撃退士対策じゃないですの?正直、冥魔相手ならあの再生力は過剰ですわ」
 立ち去る猫天使を尻目に、龍仁とみずほは苦笑を浮かべた。
「撃退士対策ねぇ。次は先行量産型とか出してくるんじゃないかい……」
「合体だけの再生しない量産型なら嬉しいんだがね」
「脳筋であることに期待してみますか?」
 アサニエルの言葉に、ロベルとリアンは軽口を挟んだ。
 天使に匹敵する攻撃力を何度も受けて、瞬間的に五・六割は再生しているのだ。
 厄介以外の何物でもないだろう。
「量産については…、四つで一体ってことだからコストがかかることを期待してっと」
「それじゃっ。帰りますか〜」
 海がゴレムの崩壊を確認すると、雪彦は陽気に歩き始めた。
 使徒クラスのサーバントや、下級天使を退けたのだ。
 今は良しとしようじゃないか。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 歴戦の戦姫・不破 雫(ja1894)
 撃退士・強羅 龍仁(ja8161)
 天に抗する輝き・アサニエル(jb5431)
重体: −
面白かった!:6人

歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
良識ある愛煙家・
ロベル・ラシュルー(ja4646)

大学部8年190組 男 ルインズブレイド
撃退士・
強羅 龍仁(ja8161)

大学部7年141組 男 アストラルヴァンガード
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
君との消えない思い出を・
藤井 雪彦(jb4731)

卒業 男 陰陽師
天に抗する輝き・
アサニエル(jb5431)

大学部5年307組 女 アストラルヴァンガード
明けの六芒星・
リアン(jb8788)

大学部7年36組 男 アカシックレコーダー:タイプB