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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/07/27


みんなの思い出



オープニング

●ネゴシエイション
 採石場で起きた下級天使との戦い。
 ゲキタイジャーに訪れた言葉は、信じられない宣告だった。
「降伏だと?一応、どういうつもりか聞いていいか?」
『本当だとも。このままだと俺はあと数手先に倒され。いかに健闘したとして、二手が三手になるだけだ』
 ゲキタイブラック(真一)の言葉に、イカロス(略)と仮称された下級天使は肩をすくめた。
 そこに無駄なプライドなどなく、淡々と事実を告げている。
「冷静なこって。時間稼ぎのつもりならそのまま倒させて貰うとして、どうするよ?」
「…ん。私。が。位置に付く。それが話を聞く。最低限。の。条件」
『ではこちらも、『彼女』は下がらせてもらおう。今の戦況では、二人同時に降伏する気はないのでね』
 ブラックは相手の言葉を疑ってかかるスタンスを見せていたが、話だけならいいが…と仲間に確認する。
 それを受けて、肉を切らせて骨を断つ気でいたゲキタイイエロー(憐)は、正面から死角に移動した。
 同様に合流しようとしていたポチョと仮称される女性天使も、羽を広げてやや後退した位置に浮遊する。。

 降伏するのは男一人、『今の戦況』では。
 つまりは、決着がつく前に条件付きで降伏するという意味だ。
「無条件には降伏し無いと言う事ですか?こちらが降伏を要請する前では、無視して殺される可能性が高いですけど、構わないのですか?」
『肯定、健闘しても味方の撤退を妨げるだけだ。『条件付き』の降伏をするなら今だと判断した』
 ゆえにゲキタイパープル(京)は納得できる物と、そうでない物の両方を覚えた。
 倒されて敗北した場合は、降伏とは名ばかりの、捕虜になると言う意味だ。
 逆に戦闘力を残した者が継戦を諦めるだけなら、もう一人は撤退可能だし、交渉次第で男も死ぬわけではない(冥魔なら別だが)

 話を聞く雰囲気にはなったが、当然、ゲキタイジャーたちは油断なく武装を活性化したまま。
 戦闘態勢を維持して、少しばかりの幕間に入る。
「(そのまま話しといて。今の内に位置を確認しとく)」
「(了解。目的が効ければ、拷問の手間が省けるか?信用できれば…だが)」
 オペ娘であるラル子)は、横目で隠しておいたモニター眺めて、廃寺の下級天使たちを確認する。
 まだ偽物だと気付いた辺りだ。
 一直線に飛んで来るとしても、まだまだ余裕はあるだろう。

 マスク内に響くラル子の囁きを受けて、ゲキタイレッド(日菜子)は拷問してでも聞く予定だった内容を織り込むことにした。
 ヒーローらしく無いがな…とは思いつつ、やらねばならぬ内容だと割り切る。騙し騙されるとしても、命の取り合いよりはマシだろう。
「互いに時間は敵だからこそ、時間を売り物にする訳か。…ならば目的を教えてもらおう。でなければ判断のしようもない」
『こちらの目的自体は、人との戦闘は重要ではない。1つ目は戦力増強、ヒヒイロカネを集めたのもその一環だ。身代金代りに『俺の回収分』を渡す事も出来る』
 レッドの問いに、別に隠す事でもないからな…と告げつつ何かを活性化。
 ゆったりとしたポーズで、大きな物を放り投げた。

●エージェントの目的
 男は手に入れた一部だと告げた上で、分割して隠し場所に保管していると続ける。
 先ほどまで血で血を洗う戦いであったのが、いつのまにか言葉での戦いに変わろうとしていた。
「(おっ。あれ俺のゲキタイオーパーツじゃん。レフトアームとマスクだけってことは、他にも隠してんのかよ)」
「…降伏を受け入れれば、隠し場所に案内する…。ということは、貴様を学園移送するのは認められないと?」
『肯定。保証も無く大集団の中に放り込まれては逃げ道を失うのと同義語だ。だが、戦果の一部を捨てるくらいはなんでもない。その上で、もう1つの目的があるからな』
 特徴的なヒヒイロカネ製のパーツは、ラル子以外にも一目で判る代物だ。
 レッドはそれを見て、天使側が武器改良の為に、ヒヒイロカネを回収していると言う話を思い出す。

 その内容に、ある程度の筋を認めたうえで、話を促す事にした。
『もう1つは言うまでも無く冥魔対策だ。この周囲にも数匹、殆どは雑魚だがな。少し離れれば割りと大きな拠点もある。教えてもいいし…』
「自分たちの代わりに前衛を務めても良いと?どの道戦う気であったなら、何ともムシの良い話でありますな」
「…確かにムシの良い話だ。それと、時間稼ぎで無いと言うなら、俺たちは回復させてもらうが?」
 話の流れを聞きながら、ゲキタイピンク(沙弥)とゲキタイグリーン(智美)は嫌な物を覚えた。
 交渉は双方の利益をすり合わせる物だが、互いに取って都合が良すぎる。
 最初から時間を稼ぐために適当に口にしているか、さもなければ口裏を合わせる為に話をでっちあげているのかもしれない。

 グリーンはその可能性を考え、この後も戦闘が続く事を踏まえて治療を申し出た。
『構わん。疑うのももっともな事だし、裏も取ろうとしないのは逆に味気ない。…話をシンプルに言いなおすならば、こちらの目的の為なら、そちらの要望を聞く用意があると言う事だ』
「…そこまで言うなら本格的に話を聞いてみても良いかもしれんな。ただし、『本当の目的』を教えてくれるならだ」
「本当の目的…。そうだよね、もともと別の目的があって、ここまでは譲歩して良いってことか…」
 グリーンが確認した自分たちが有利になる事を、男が素直に受け入れたことで、ゲキタイホワイト(聖)にもおおよそ判って来た。
 この男は最初からこちらを信用している訳でもないのだ。
 話を聞いて交渉に入っても、聞かずに戦闘を再開してもかまわない。
 最初から『本来の目的』を遂げる為に、自分たちを犠牲にして構わないと思っているだけなのだろう…。

●エクスクラメイション!
 男は改めて聞かれた事で、無表情に初めて笑みらしきものを浮かべた。
『隠しているつもりはない。言わなかったか?連携戦闘の有効性を確認した…と。短時間なら大天使とすら確認に戦う君たちの力。ソレを見たいだけだ」
「(こいつら…命を掛けて俺達の本気を引き出す気か!参考にする為だけに!?)」
 援護する為に駆け付けるゲキタイブルー(正太郎)は、その場に居ないからこそ冷静に状況が把握できた。
 天使が高度な連携をしていると言う話を、あまり聞いたことが無い。
 仲の良い者ですら、侵攻方向をタイミングよく担当分けするくらいではなかったか?

「天使の連携でありますか?」
「(…ん。上等。本家本元。見せるだけ)」
 もしかしたら、いつか天使が数人がかりで放つ連携技と戦う事があるのかもしれない。
 そう考えると、ピンクは戦慄を覚えるのであった…。
 だが、ゲキタイジャーが背中を見せる訳には行くまい!
 姿を隠したイエローのみならず、戦慄を武者ぶるいに換えるのであった!

 戦え、ゲキタイジャー!
 負けるな、ゲキタイジャー!

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リプレイ本文

●甘言にはご用心!
 睨み合う天使と撃退士、交わされるのは猜疑の瞳と言葉の槍。
「お前が賢いってのは良く判った…。窮地を理解してるのもな」
 千葉 真一(ja0070)は自分たちのチャンスにではなく、漢の表情を睨む。
「…が、全ては自分の掌って感じの何も諦めてないその眼だ。罠なり採算があるんだろ?」
「確かにネー。なーんか胡散臭いのよね…言ってることが。甘言にしか聞こえないわ」
 真一の言葉に松永 聖(ja4988)は頷きつつ、共に歩き出した。

 いつ敵が来ても良いよう、真一は目立つ位置に、聖は暗がりへと身を隠す。
 策があるなら、例え真実であったとしても時間を掛けるのは危険だからだ。
「騙されて困らない程度の情報交換するのはいいさ。…だが悪いが罠だと思って、ここは俺たちなりに足掻かせて貰うぜ」
『確かに信頼もへったくれもない間柄だ。…冥魔の情報を中心に手札を切るとしよう』
 真一が向かったのは、老師たちとの連絡を取る為のスペースだ。
 それに合わせてイカロスと借名された下級天使は、メモを取り出して何枚かに分けて書き始めた。
「老師、寺での概要を頼む。こっちの仕掛けを抜けるのにそれなり派手にやっただろ?」
『了解したぞい。ラル子ちゃんの方に送るが、みんなには、かいつまんでおくわい』
 真一は裏を取るというよりは、聞かなくても良いつもりで情報を確認する。
 敵からの情報を無条件に信じるつもりはなかった。

 その間に書きあげたメモをイカロスが手前に二枚、残りを手元に数枚を残す。
『最初の情報はここに置いておくぞ』
「偵察サーバントを使って集めた冥魔の情報と、お仲間一人目の情報か…。お前さん(ポチョ)は行っていいよ、俺達はこいつ(イカロス)と話があるからさ」
 メモを拾ったラファル A ユーティライネン(jb4620)は、苦笑して手をヒラヒラと振った。
 拾った二枚の内、四国に潜伏する冥魔の潜伏地の一つ二つと、戦力が記載される。
 もう一枚は、イダテンダーと借名した下級天使の情報が色々と載っていた。

 内容を信じる限り、強力な打撃や火力を底上げする技は少ないが、他人を担いで移動できるというのが癖モノであった。
 ここは確実に残り一人を倒しておくべきだろう。
「と言う訳で、まず一人逃がすわ。…情報が全部ホントーで騙されてないなら、こっちも生かして返す事を『考えても』いいんだがね」
「確かに、『俺』は、降伏する。と言うのが気になるのであります。『俺』個人は降伏するが、他は知らんとも取れるのであります」
 ラル子の言葉に、天水沙弥(jb9449)は純粋に同意した。
 悪党が命乞いのフリをして騙そうと言うなら、叩き潰すのが正義であろう!
 もっとも汚れ役を受け持つラル子としては、情報が真実でも最初から生かして返す気は無かったが。

●イカロスの最後
 とはいえ一人逃がすというのは本気だ。
『このバトルの行方、預けておきマース。合流次第、リベンジさせてもらいますネ』
 言葉のやり取りと、配置の変化を感じ取ったのか、ポチョムキンと借名された下級天使は飛び去った。

 それを見送った後、メンバーは、イカロスの周囲数歩の距離を保ち…。
 彼が残り二枚のメモを置くと同時に、一歩ずつ離れ始めた。
「騙し討ちの様で気が引けるが…」
『お互いに冥魔と同じ程度にしか見てなかったからな。相手を信用しようとしない者が、信用されないくらいは判っているさ』
 三枚目を拾った川内 日菜子(jb7813)と、合わせて翼を広げたイカロスは、共に苦笑しあった。
 最初から互いを信用していなかったのだ。
 イカロスは仲間を逃がしつつ、自分も生き延びる可能性に掛けただけ。対して日菜子たちも、多少の情報にしか期待していなかっただけ。
 信用してないから、奇襲で殺したり逃げたり出来ないのを、互いに理解できたくらいだ。

 そこから先はたいして動きは無い。
 ガンマンが撃ちあう如く、一瞬の攻防が起きる。
『翼があるからと言って、何も直接飛ぶとは限らん!』
「飛べるのはお前達だけじゃない、悪魔の血に感謝するぜ。ゲキタイウイングッ!!」
 直接飛翔するのでなく先に大跳躍でフェイントを掛け、イカロスは包囲攻撃をかわし、今度こそ飛行して逃げる前に…。
 ワザとタイミングを遅らせておいた雪ノ下・正太郎(ja0343)たちが、追いついてトドメを刺した。
 ただ包囲しただけの撃退士ならば逃げられたかもしれないが、お互いを知り合った仲間たちを出し抜けるはずもない!

 先ほどまでの傷もあり、イカロスはあっけなく倒れた。
 何人かはバツの悪そうな顔を浮かべるが…。
『気にする事は…無い。この『力』を手に入れることができれば…、本末転倒な武器に頼る事も無い、そう…思っただけ…だ』
「それは力じゃなくて、絆というんだ…」
 日菜子は笑顔とも苦笑とも付かない顔を浮かべた。
 何のことは無い、彼らは町一つを焼き払ったという試作兵器に代わるナニカを探していただけの事。
 最初からそう口にしていれば協力できたか?とは思いつつ、絆を力としか考えられない相手を信用できたとも思えなかった。

●裏方、作業
「仮にも共に闘える仲に成り得たかもしれなかった相手だ。感傷だが、別の形で会いたかったぞ…」
「あの状況なら仕方ない。それに…まともに話しあえていても、連携のコツなんて教えるわけにはいかなかったと思う」
 複雑な表情を浮かべる日菜子に、様子を見ていた礼野 智美(ja3600)はそう声をかけた。

 言いながら智美は端末を操作し、入手したメモ情報と並べて、過去例を表示していく。
「記録によると仲の良い天使・大天使でも担当分けが精々で、細かい連携とかしないらしい。今までは連中の方が圧倒的に強かったから、手を取り合う概念が殆どなかったんだ。だからこそ…」
「だからこそ、自分たちは大天使やそれ以上の天使とも戦えたのでありますな。確かに真似されるのは脅威であります!」
 智美が最初に示したのは、研究所を襲った大天使や他の地方に居る大天使たちだ。
 恐るべき『彼ら』と互角に戦う仲間を見て、沙弥は頼もしさを覚えると同時に、冷たい物を感じる。

 人間が大天使と10分以上、1分で良いならもっと上の階級とでも戦える。なら、同じ事を天使たちが覚えたら……。
 現在進行形で人間は上級天魔すら倒しつつある、自分より強い相手に天使が手抜きで戦うなどありえまい。
 そこまでの話を全員が飲み込んだのを確認して、智美は溜息をついて付けくわえた。
「あの4人だけじゃなくて記録係がいるかもしれない。周囲に気配っておいてくれないか?」
「確かに連中が記録用の魔法装置を仕掛ける心配はあるか。まかしときな…っと、コレだけ用意しとかないとな」
 智美がカメラ的な物が危険だと告げると、ラル子は振り向きもせずに答えた。

 手はそのままマネキンをシートで包み、握らないと機能しない阻霊符を、ワザとらしく何枚も張りつける。
「急いでるなら手伝いましょうか?あっ、新メンバー、ゲキタイオレンジのエイルズです。よろしくお願いします!」
「すまねえなあ。工作は適当でいいぞ?敵だって無条件に信じないだろうし、ちょっとばっかし気を引けりゃあいい」
 いつ来るか判らないともあって、増援として駆け付けたエイルズレトラ マステリオ(ja2224)も加わり、早々に作業を切りあげた。
 造ってるラル子としてもそれほど期待はしてない。
 相手が奇襲や大規模爆撃を躊躇うか、こちらが仕掛ける間の、一手でも稼げれば十分なのだ。
「生かしてるフリですか?相手が信じないなら、そこまでしなくとも良いと思いますけどね」
「裏方としちゃあ、しないで後悔するよりやって後悔する方を選ぶよ。正々堂々の活躍は、ヒーロー役に任せるさ」
 思わずエイルズも苦笑した。
 ラル子のやろうとするのは、確かにヒーローらしくない。だが、まあ判る気はするのだ。
 相手の方が強いなら、やれる努力はしておくべきには違いない。
「撃退士としては正解だとは思いますが……なんだかなあ。(僕が普段やってることとあまり変わりませんね)」
 そう言ってもう一度笑うと、エイルズはドライに割りきることにした。
 相手の策をこちらは見抜いているし、こちらの嘘を相手が信じるとは限らない。
 ならば打てる手は、全て打つのが常道であろう。

●血戦!
 暫くして、三人の下級天使が現れた。
 最初の予想よりは早いが、メモのデータを考えれば、少し遅いだろうか?
『来たわね。相手のデータは頭に入れた?担当は間違えない事』
『了解であります。まずは足の速い奴ををキリキリ舞させてやるのであります!』
 声を潜めながら、聖は隠れたまま沙弥に連絡を入れた。
 狙うはイダテンダーと借名した相手で、罠を踏んでから退避できる、カウンター移動の使い手だ。
『移動力に物を言わされては危険でありますから』
『べ、別に皆が戦ってる間に、そいつに翻弄されたら厄介だから…とか思ってなんか無いんだからね…っ!…ラル子が仕掛けたらチョクよ』
 ツンデレ発動に小さな笑みを浮かべながら、沙弥はギュっとバネを溜めた。
 同様に力を溜めてる聖と共に飛び出して、急ダッシュで追い詰めなければ…。

 一方その頃、真っ先に行動するハズのラル子は、予定通りの物があってウンザリしていた。
『連中の後方が少し歪んでやがる。その先に注目っと……やっぱあったか』
『記録装置の類か?偵察要員なら、こちらでも対処するが?』
 ラル子は智美の提案に、首を振った。
 アンテナっぽい反応なので、記録装置の類だろう。協力してもらうのはありがたいが、潜伏しているアドバンテージは惜しい。
 それに彼女が言うように、偵察型サーバントでないなら、万が一にも取り逃がす事は無いだろう。

 声を潜めたまま、携帯端末に数字を映して、カウントダウンを開始する。
 三、二、一!
「タリホー!お客さん、寄ってけよ!交渉が決裂した理由を聞きたいかい?」
『お題目は要らねえ。勝った方が正義だ、お互い好きなだけぶっ放そうぜ!!」
 ラル子が意識を切り替えた瞬間、ワイヤーを伝って無数の腕が現れた。
 その腕が後方にある記録装置を中心に、下級天使たちの周囲にも降り注ぐ。

 続いて降り注ぐ煙幕を盾に、仲間たちが移動を開始した!
「ゲキタイグリーン参上!レッド、一気に行くぞ」
「了解だ。ゲキタイジャー出動!私は…ゲキタレッド!!」
 走り出した智美は日菜子と共に、燃え盛る炎を切り裂いた。
 激烈な範囲火力ではあるが、ドラム缶に入れたダミーを巻き込ないようにしているので、逃げ道が無いわけでもない。
「(信じた?いや、爆薬である事を警戒しているのか?まあいい。)さっさと倒しまえば同じ事だ!」
「判ってる。全員の力を出し切って総力戦だ!(あとは相手の連携は立ち切れば勝てる)」
 智美と日菜子はラッシュを掛けた。
 モヒカンダーと借名された天使は、どんな距離でもどんな態勢でも高い攻撃力を発揮できる。
 威力は恐ろしいがそれだけだ、むしろ他人を移動可能なイダテンダーと組んで移動砲台になった方が危険だろう。
「もちろんそれはさせないけどね!ゲキタイホワイトだよっ!」
「同じく、ゲキタイピンクであります!やらせないのでありますよー」
 敵が走り込んで後ろに回ろうとした時、その一瞬をついて、聖と沙弥が駆けこんで来た。

 パワーよりも移動力を重視し、敵が進もうとすればそれを防ぎ、後退しようとすれば追いかけて邪魔する!
『しまった。連携は攻撃のみにあらず、連携の寸断にもあったか。これは迂闊!』
「そう言う事だ!アイデアは思いついた事がスタート地点としれ!」
「褒めても何も出ないけどね!」
 智美の狙い通り、敵は連携を覚え恥得たばかり。聖に蹴り飛ばされると更に引き離される!

●勝利の果てに
 こうして戦況は三つに分かれた。
 主軸を1つに、残り2つはあくまで抑えだ。
「その技はもう見せて貰った。二度は喰わないぜ!俺の名前を覚えてるか?」
『ハーイ。ブラックでしたか?』
 繰り返される攻防の中で、真一はポチョムキンの攻撃を避けきった。
 それまである程度は受けて来たのだが、その一撃だけは投げ技だったからだ。
「命中重視の攻撃後にホールドってのがエグイが、判ってりゃそうそう食らわねえよ」
 真一は揺れる谷間から目をそらしつつ、足元へ注意を向けた。
 投げと打撃、手は同じモーションで可能だが、足は流石に無理だ。下半身の動きを頼りになんとか攻撃を裁く。
『なら、見切られてもノープレブレムな技をプレゼントね♪』
「くそっ。今度はジャブか…地力の差はでけえなあ(だがまあ、抑えとしちゃあ十分だな)」
 指先で撫でられただけで、真一に痺れるような痛みが走る!
 だが、彼の役目は足止め役。時折飛来する、ラル子の援護もあって時間を稼ぐには十分だ。
 彼女との勝負は、先にどちらの仲間が勝負をつけるか…。

 そうして均等にではなく、傾斜して比重を分けた事が勝敗につながった。
「攻撃が止んだ?ならば今の内だ。俺は青い流星、ゲキタイブルー!!短い間だが、ヨロシク!」
「こちらはゲキタイオレンジです。名刺代わりにお一つどうぞ」
 先に突入した仲間が、相手の意識を数秒ほど飛ばしたのだろう。
 その隙を逃さず、正太郎とエイルズは回り込む事に成功した。
 モヒカンダーを包囲した後、正太郎は闇のアウルをまとわせて一気に勝負に出る!
「お前達の嫌いな冥魔の力だ、くらえゲキタイスラッシュ!!」
 正太郎の掲げる双剣から、炎の爪を造り上げた!
 五爪は龍王の証と言うが、龍の様に膨大なアウルを闇色に入れ替える。反撃を食らえば大変だが、かまうものか!
 範囲攻撃を受けても全員が食らう訳でもない、二撃目を食らう前に沈める!
『くそっ影か!』
「当たれば流石に痛いんでしょうけど…。まあ、残念でしたね。…あ、僕の事は治療の頭数に入れなくてもいいですよ」
 実際に意識を取り戻したモヒカンダーの大火炎が炸裂するが…。
 エイルズは巧みなステップでこれを避け、燃えた制服のお返しとばかりにカードを叩き込んでいく。
 彼はそのまま敵の正面に回って、起死回生の攻撃でもどうぞと微笑んだ。
「隠し技の一つでもありますか?なければこのまま死んでくださいな。まあ…あっても結果は同じですけどね」
 エイルズの目には、既に勝敗はついたように思えた。
 怪我人は続出しているが、重傷者は一人も居ない。ならば急転する事もないだろう。

 実際にモヒカンダーが倒れ、イダテンダーが後を追うのも時間の問題であった…。
『キー!また負けたデース?アイシャルリターン!この恨みは必ず晴らしま…アウチ!』
「やれやれ。俺たちの戦いは続く、だな」
 真一は負け惜しみを口にするポチョに弾のお土産。
 その言葉を聞いて日菜子はただ一言。
「何度でも倒すさ」
 思いを吹き払うように、そう呟いた…。


依頼結果