.


マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2014/06/16


みんなの思い出



オープニング

●製作、ゲキタイベース!
 ヒーロー戦隊を目指す撃退士たちは、町はずれの山で合宿となった。
 山には森で囲まれた場所に、いまは使われて無い石切り場があり、恰好の訓練場だったからだ。
「この石切り場、買い取ったの?あたしらの自由にしても良いって本当?」
「正しくは警備を兼ねて居候という感じですね。サーバントが隠れていましたが、町の不良たちが居付く可能性もありますから」
 松永 聖(ja4988)は白いスーツ(改造制服)のまま、石切り場で連続パンチのポーズを決めてみた。
 反対側で礼野 智美(ja3600)が拳を避ける仕草は、スーツがグリーンとあって竹がしなるようだ。
 二人は交互に演武の練習をした後、キャンピングカーを目指して行く。

「ちょっとボロいけど、好き放題に改造して良いってのは助かるね。まずは掃除だろうけど…と、別に汚れてるって訳じゃないから」
「改造用に買った中古だから…その辺は仕方ないかと。なにはともあれ食事にしましょう」
 聖と智美が戻ってくると、仲間たち6人は、既に食事を始めていた。
 車の外に折りたたみ式のテーブルを幾つか並べ、椅子に座ってカレーパーティである。
「今日は何カレーの試食がオススメ?あたしたちが巡回してる間に勝手に食べちゃったんだから、そのくらいは教えるべきだよね?」
「俺にじゃなくて、そのくらいは製作者に聞けよ…って無理か。辛口ならキーマ、甘口ならシーフド食ってろ」
 聖は委員長風に注意しようとして…止めた。似合わないし、カレーは美味しそうだからだ。
 試食だから無料って良いよねーという感じでご飯を継いでると、豪快に食べてた雪ノ下・正太郎(ja0343)がオススメを教えてくれる。
 何しろ制作者は美味しいカレーなら、なんでも浴びるように飲むので当てにならない…。

 え?浴びるように飲むとか、カレーの表現じゃないって?
「ん?どれも絶品。ご当地食材の雨霰…?」
「それはそうと、ミンチとシーフドと言う事は、今晩は食べ易い組み合わせですね。依頼人…じゃなくて老師Gもおいでで?」
 今晩の調理担当の最上 憐(jb1522)はコクリと頷き、辛口でミンチを味付けたキーマカレーを二皿盛った。
 ちなみにこの二皿は智美たちに注いだものではない。自分で飲む為の物だ。
 ごきゅごきゅ。
 辛いはずのミンチカレーが、恐るべき勢いで消えていくのを、智美は苦笑するほかなかったのである。
「おお。帰ってきたかの。キーマカレーは食べ易いし、造り易いからええのう。その点シーフードは食材を選ばんと食べにくくて叶わんわ」
「その様子ですと、食堂を兼ねる方式としては合格点ですか?それは良かった」
 時代劇から出て来たような格好の老師G…こと、依頼人は鷹揚に頷いて智美に席を勧めた。
 そこには書類に書かれた採用書類がコピーされており、撃退士たちのソックリさんの写真が載っている。
「もう一台同じモノがあって、緊急時にはお主らの代わりに彼女たちがバイトで店を営業する。向こうは基地設備がない分だけ、食材が詰まっておるがの」
「自分たちの影武者…というところでありますか?そこまで凝らなくて良いような気もするであります…」
 気にしなくて良いんじゃよー。と老師がにみせてくれた資料には、色々なプロフィールが書かれている。
 レッドが体育会系の少女とか、ブラックが皮肉屋調のお兄さんなのは良いが…。
 少し恥ずかしいのは、彼の代わりが女の子だからだ。流石に性別までは揃わなかった模様。

 ぶろろー♪がバイクが音を立てて石切り場に入ってこなければ、そのまま赤面していたかもしれない。
「まあ凝るんなら、そこまで凝れって事だよな。…ほいよっと、頼まれていた資料、撮って来たぜ」
「完璧にこなしてこそよね、こーいうの。えーと、次の事件の資料かなコレ?」
 ライダースーツを脱ぎながら、最後の一人である千葉 真一(ja0070)が指先だけで敬礼。
 しゅぴっと川内 日菜子(jb7813)に投げて寄こしたのは、何枚かのサーバントらしき写真である。
 行儀悪くカレースプーンをくわえたまま、日菜子は目を通し始めた…。

●必殺技と、次なる敵!
 写真に描かれたサーバントは、木像型の巨大なナニカだ。
 望遠カメラのギリギリで撮ったようなので、少しピンボケしてるのが残念。
「この御本尊が次の敵ってわけかー。強そうだけど、私達にはちょうど良い敵だな。でも、よく場所がわかったね」
「前の戦いで偵察型が居たろ?そいつが向かった先に、この町の外があった、んだとよ」
「ん。…おかしいと思った。ので。みんなが来る前に。ちょっとだけ。冒険して見て来た。パン屋がある300mくらい?」
 日菜子の問いに、真一が身振り付きで簡単に答えた。
 指差された憐は頷いて、ガサゴソと、美味しそうなカレーパンの描かれた広告を取り出した。

 添付された簡易地図によると、少し離れた先に小さな寺があるらしい。
「そこは住職とか要らない、小さな無人の寺なんだっていう話だぜ?えーっと、もちろん〜、そっち方面の、別の建物も探してますともー♪」
「なんで、そんな話が右から左に通り抜けてるわけ?…そりゃ別に赤がリーダーって言う訳じゃないけど、仲間外れにしなくたって…」
 オペレーターである、ラファル A ユーティライネン(jb4620)が担当した時点で、なんでかは一目瞭然だった。
 日菜子のスネた顔が見たい…からではなく、単に配役からだ。
 オペ子が全体の統制、調査に向かったブラックは皮肉屋の傭兵で一匹狼。監視役であるホワイトと並んで単独行動キャラである。
「そういう訳だな。別にお前さんをのけ者にしたんじゃないし、俺の方も食事が遅くなっちまったから許してくれよ。っと、またカレーかあ?とか言ってみるぜ」
「くくく…カカカ。じゃなくて、まあ、そんな感じですねー。オペ子は戦闘では直接役に立ちませんが、こういうところで動くの♪(てへ)」
「…もう」
 真一とラル子が一緒になって日菜子を苛めてる。
 レッドは熱血漢が多いので怒っても良いのだが、戦闘以外では頭の回る彼女としては怒るに怒れない。
 スムーズに行ってるなら、別に騒動するほどではないからだ。

「まあいいや。と言う事は、異存ないなら気がつかれる前に御本尊に向かって突撃か?」
「それも良いが、先に必殺技の練習が必要だろう!戦隊物は、やっぱり合体技だよな!名前を決めねえと!!」
「ん。…ずっと。ゲキタイジャーの華麗なる一撃(仮)でも構わない」
 日菜子が戦闘計画をまとめようとすると、正太郎と憐が割って入る。
 合体マシンを操ってオペ子が登場…という理屈で、ラル子を含めた全員そろって最大火力発揮するだけなのだが…。
「別に名前なんてどうでもいいでしょ。重要なのは、合流するタイミングと合言葉を決める事なんだから、決めておくだけ!」
 聖が一応は否定してみせるのだけど…。
 やっぱり、必殺技には名前があった方が良いよね!
 

前回のシナリオを見る


リプレイ本文

●硝子の錬装
 採石場をキャンプ地に撃退士が汗をかいていた。
「へいへい、ピッチャービビッてる〜。そんなしょぼくれたポーズだと敵の方がビビってくれないぜ」
 メガホン片手にラファル A ユーティライネン(jb4620)は怒鳴る。
 いつもは特訓中は鬼軍曹だ。
「言うのは簡単だけどな。こういうのはシンプルイズベスト、中々難しいもんなんだぜ」
「はっ、やりきる自信が無いんですか〜ああん?俺がやってみせっから見てろよ」
 雪ノ下・正太郎(ja0343)は苦笑しながら、上半身Tシャツ一枚ネクタイだけのラル子と睨み合った。
 薄い胸を張って偉そうだが、暑くて恰好もつけてもないのはどっちだ?
 そう言おうとして、ふと気がついた事がある(Tシャツの『ヒナちゃん専用』の文字ではない)。

 ラル子が下げた硝子ネックレスや腕輪が活性化する!
「ゲキタイバスターユニット転送します。トランス、なにがし〜。でぃぼばデボバっとくら〜」
「はっ。往年の破壊大帝を思わせるその動きはまさか!?」
 ラル子の腕輪が、正太郎には銃口型ガントレットへ転じた風に見える。
 同じようにベルトが弾倉にネクタイがトリガー、などなど大きな装甲板つきの部分鎧を展開。
 フル武装モードの彼女が、まるで本当に巨大銃のようだ(動か無い間だけな)!
「くっ、負けたぜ…。しかし…タイミングをずらして活性化させると星座闘士みたいだな。惑星水兵隊や侍騎兵隊とか」
「何の話をしてるんだ。でも、飾り付きの鎧が完成してたのか…。こうなると確かに、シンボルが欲しくなるな」
 アニメファンの正太郎と違い、礼野 智美(ja3600)には半分くらいネタが判らない。
 色んな意味で先輩だなあとか思いつつ、妹が興味ある話だったので、後で資料を貰おうと思う良いお姉ちゃんである。

 ともあれ、一同の視線は硝子細工へ。
「今のは必殺用の大型砲だけど。戦隊だと動物、星座、幻獣、恐竜…交代可能な電車とかかな…」
「見てみて。細工を合体させるとこんな感じ。…やっぱりイメージモチーフあった方が燃えるもんね。まあ、あたしもあんま詳しくないけど幻獣とか?」
 指を折って数える智美に、松永 聖(ja4988)が白鳥のフィギアを持ちだした。
 フィギアもガラス製で翼が腕輪になっている。
 聖が右手を掲げて活性化させると、翼を模した装甲板付きガントレットが出現!
「他にもフィギアあるけど、合わせた装甲板を鉄工所に頼んでくれるって」
「これは面白いな…。人間界守るんだし自然現象イメージで、合わせると地球も悪くないと思うけどね」
 悩むよねー。うん。と聖と智美はクスクス笑いながら、スケッチブックを取り出してデザイン画を描いていく。

「自然かー。白だと何かなー。雪の女王…いや、らしくないのは知ってるけどさ」
「雪の女王の娘なら、十分に似合うと思うよ?…雪化粧の白、安息の夜を表す黒。浄化炎の赤に、カレー…じゃなくて、太陽の黄色とか」
「炎の赤…か(赤にも赤しかできない役割があるハズ、それはなんだ?)」
 聖と智美の相談を聞きながら、ゲキタイレッド…こと川内 日菜子(jb7813)はポツリと漏らした。
 赤は戦隊の象徴で、リーダーでないことがあっても、戦隊の顔でなかったことはない。
 そう考えれば、どうあるべきか悩んでいた彼女にも見えてきた。
 オペレーターや白と黒にはそれぞれの役目があるのなら、赤には赤の役がある!
「ひとまず掛け声は暫定的に今の処は光纏と書いて、オーラチェンジだな」
 色々と悩んでいた日菜子だが、もはやソレはここまで。
 私は真っ赤に燃え盛る篝火となろう。決めるべき事は決め、意義があれば訂正し…。みんなの迷いを率先して受け止め・解決『しようとする』役割だ。
 夜道を照らし、獣を寄せ付けず、皆の不安を振り払う眩い焔に、私は…なりたい。

●変身! 集合版と、連続版
「仮決定だから、意義があれば次の会議で申し出てくれ。やって見てから悩む方が楽しいよな」
「ん。…それで良いと思う。というか皆。どっちでもいいから。悩む」
 日菜子の言葉に最上 憐(jb1522)は頷いた。
 レッドは夜を照らす明かりであり、目印たる北極星だ。『本当に』解決するのは皆で考えればいい。
 どうしようどれでもいい。と悩む皆の前で、当たり前のことを口にし、率先して行動!
 ただ、それだけの事だ。
「こうてんと漢字を読んでから、オーラ⇒チェンジ!ってのはどうだ?」
「どこまでアニメ好きなんだよ!ってか、俺も好きだけどな。いや、待てよ。ブラックとしては、『どうでも良い』とか言うべきか〜」
 正太郎は少しだけ残念そうではあるが、反対するほどでもない。
 一方、千葉 真一(ja0070)の方は皮肉屋のノリで、斜に構えてみた。

 と言う訳で、練習再開。まずは合同版だ。
 全員が分散し、所定の位置に立つと一斉に走って集合!
「発破に気をつけな!」
「問題ないでありますっ。いつでもどうぞ!」
 ラル子の確認に一番近い天水沙弥(jb9449)が応え、石切り場に爆音が連続!
 それに合わせて全員が一点を目指す。
「行くぞ、みんな!『光纏(オーラチェンジ)』だ」
「「おう!オーラ、チェェェンジ!」」
 次いで日菜子が音頭を取った後、男性陣が力強く応えて叫ぶ。
 同時に左右へ展開、大きな煙幕を避けた後…。
『輝光戦隊、ゲキタイジャー!!』
 連続でトンボをきって交差し、それぞれの集合ポーズを決める!
 変身からの合同による見え切りを完成!
 カーット!とフィルムが止まった後で、軽く汗を拭いて休息しながらガヤガヤと雑談が零れるまでが御愛嬌。

 そして次に控えしは、連続登場版になる。
 一人増えるにつれ、雑魚兵士を模したマネキンが次々破壊されていく。
 だが、見る者が見れば、道をあけるという方向性から牽制だと気がつくだろう。
「ゲキタイグリーン、まかり越して候」
 マネキンの残りは2つ。
 今度は竹藪を突き破り、槍を振りまわした智美が木人を殴りつける。
「推参!オオトリを締めるのは、ゲキタイ、ピンクであります!」
 てやあ!!
 沙弥の放った矢が突き刺さったときには、大き目の弓を構えて…。
 7人目の所定位置に辿り着いた。
『我ら、輝光戦隊、ゲキタイジャー!!天魔にこの世を渡しはしない!!』
 デデーン!!
 全員揃ってポーズを決めて、連続集合版が完成。
 敵も反撃するだろうが、集合地点を確保できれば良いので、こんな物だろう。

●ご当地のお話
「ふーっ。なんども繰り返したけど、やっと終わったなあ。メシにしようぜ」
 正太郎がさすりながらキャンピングカーに向かおうとすると…。
「…ん。そうしたいけど、残念ながら、これから仕事」
「我らは一足先にカレー販売。売り子をするのであります。もっとも情報収集が主でありますな。例の寺の事を聞いておくのであります」」
 憐と沙弥は連れだち別の一台へ。
 カレー屋として、有名になれば色々な情報等が集まり易い。
 その事に嘘はないので、交代で売り子に行く事になっているのだ。
 着替えたら早速出勤!
「俺らはどうする?」
「せっかくだ、私たちは別の意味でお店に回ろう。お客の視点で、…たまには甘いのもいいかもしれないな」
 仕方ないですねーなんて言うラル子に代わって、日菜子は少しだけ考えた後…。
 プチデートとばかりに、二人でお店に向かう事にしましたとさ。


 時と場所は移り…。涼しげな夜の公園で移動式のカレーショップが賑わう。
 折りたたみテーブルとベンチなら、どこでも開店可能だ。
「…ん。キーマカレー超盛りお待ち。トッピングの豆腐と豆ナンはおかわり自由。…地味を覆す破壊力・インパクト増やす為。劇的に増やして見た」
「うひょーっ、この量スゴ過ぎじゃねえの?元とれんのかよ」
 カップル用の大皿を置いた後、憐は言葉少なく豆腐の小鉢をグルリと彼女たちに向けて回した。
 そこにはラル子自身が加工した、戦隊シールがプリントされている。
 協賛店からの仕入れで安いのだろう。
「あー。造ったなあ。ってことは、豆腐や豆も提携グループの地元産か。んじゃ遠慮ずに頂くとしようじゃん」
「いつの間に…。コスト管理やら後方やら、任せっぱなしですまないな」
 ボリボリ頭をかいていたラル子は、日菜子の言葉にチッチッチと、指を振って見せた。
 ソノ辺りも含めて後方勤務の役目だし…。
「商法的な流れにアイデアで補正するだけだよ。…あとは、お礼なら別の物で欲しーな、アーン」
「あまり根を詰め過ぎるな…。それとだな、…口直しには牛乳なんてどうかな?」
 ラル子がおねだりしたので、少しだけ照れながら日菜子はナンにカレーを載せた。
 そのまま口に放り込んだ後、同じく店で売っている戦隊印の牛乳を買って口元へストローを添わせてやる。
 なんというか、町ぐるみでご当地ヒーローをプッシュしている模様。

 改めてナンを千切り、日菜子がキャンピングカーに目を馳せると…。
「しかし、こっちは本格的な店用だな。同じ車両とは思えん」
「…機材に宿泊用具やら色々入れてないからな。似てる部分としては、資料のケースと食材のケースくらいか」
「いよっ、俺らもこっちで食おうと思ってな。…ま、戦隊物としてそれっぽい感じであれば、俺は何でも構わないぜ」
 日菜子が不意の言葉に驚いていると、隣の席に智美と真一が居た。
 良く見れば、死角になっている場所には、別の仲間が座っているようだ。

 皆も賄いではなく商品を食べに来た模様。
「金を払うに値するか確かめに来た。と言いたいトコだが…。まあ、なんだ新しい情報が入ったからミーティング?」
「そうなんだよねー。食事くらいゆっくり食べたいって言うのに…。あっ、ヤシの実アイスくださーい!」
 真一が話し始めると、反対の側の席に座った聖が相槌を打つ。
 注文する事で売り子さん役の仲間を呼び寄せつつ、具体的な内容にシフト。
「廃寺へ出入りしてる子供たちの話が聞けたのでありますよ」
「…ん。…スカートめくられた甲斐があった。主に天水」
 これはハイランダーキルトであります!
 沙弥が顔を赤らめながら憐に抗議するが、よーするに悪ガキ達から聞き出したらしい。
「像が運び込まれる前から、子供たちが出入りして何の変化もないそうでありますからね。奇襲攻撃1回分くらいは予想済みでありましょう」
 沙弥が話を要約すると…。
 基本的には偵察ユニットの要請で動くのであろうし、人間が近くに居るくらいでは攻撃したりしないだろう。
「敵は潜伏優先?一応…。他の店でも聞いてみる」
 その話を受けて、憐は売り子が終えたら聞き込みで補足してみると告げた。

「なるへそ。見取り図は用意してあるし、食い終わったら退治だな。しっかし、せっかく特注したおニューのロボ風大型装備は、次の戦いでお披露目か。残念だぜ」
 ポッケからラル子がしわくちゃの図面を取り出すと、廃寺の地図だ。
 彼女の言葉にみんなが一斉に頷くのだが…。
 一人だけ苦笑する男が居た。
「それフラフ・フラグ!なんで食事中や戦闘前にそんな話をすんだ。…いや、まさかな」
 正太郎には、心の中に鎧と不安がよぎる。
 はたして、おニュー装備の運命やいかに?

●倒せ、偽の御本尊!
 と言う訳で、被害が出ない内に突入!
「前回の例があるからな。奥の手の1つや2つは覚悟しとこうぜ。それから必殺攻撃をブッパだ」
 真一はプロレス式の戦術を考案。
 奇襲の利を捨てることになるが、焦って逃げられる方が困る。(不意打ちはヒーローらしくない…。とも言う)。
 まずは殴り合って敵の手の内・移動力を把握しつつ、確実に仕留める展開だ。
「了解した。だが遭遇戦や、強敵が出た時を考えると…。フォーメーション系の必殺技も欲しいな。幸いにもメンバーの多くが白兵戦系だ」
 智美は寺内に吸収された分社のスサノオ神に軽く頭を下げた後、境内へ赴きながら…。
 合体技(一斉射撃)1つでは技が破られた時に困る。ゆえに、強敵を踏まえて対策を申し出た。
「確かにこちらが勝てば勝つほど、相手も強大化するの道理であります。…しかし、正義の心は挫かれ無いのでありますよ!」
「そうだな。連続チャージに包囲陣、それらしく見えれば何でもありだ。暇な時に考えてみるとして…、まずは油断しないようにコイツを片付けよう」
 沙弥の可愛らしいガッツポーズを見て、日菜子は微笑んだ。
 智美の懸念ももっともだが、沙弥が言うように、くじけない限り、自分たちならばやり遂げる事が可能だろう。

 そう言って話を締めくくり、イザ、サーバントとの決戦だ!
『ゆくぞ!我ら輝光戦隊ゲキタイジャー!!』
「あんたがサーバントだってマルっと判ってるんだからね!このゲキタイホワイトに裏手は任せて!」
 集合版の名乗りを済ませた後、聖たちは突進を掛けて、後方を押さえる事にした。
 普通の依頼でアメフトみたいな連携突進は無理だろうが、共に連携訓練をこなした仲間たちである。
 タイミングを合わせるのは、そう難しくない。

 目指すは二・五・一(ラル子が入口の警戒と、狙撃態勢)の包囲網である。
 囮も兼ねて勇敢に突撃!
「隙あり!行くでありますよ!」
「…ん。さっさと。迅速に。倒して。ご飯にしよう」
 仏像の隠し腕が伸びて白黒チームを襲った時、沙弥はすかさず弓で零距離射撃。
 電光石火の攻撃の後、影に潜んだ憐が漆黒のブーメランを放つ!
「うおおお!もらった!」
「はっあああ!!」
 続けて正太郎と智美が切りこんで、完全に包囲網は完成した。
 大太刀と槍の傷がクロスに交差!
 ガッチリと前後左右を仲間たちが抑えると…。

『おん、まけい、しゅらばや、そわか!』
「やっぱり隠してやがったか…。さすがに偵察型とは違って手強いな」
「仕方あるまい、アレを使うぞ!」
 突如として仏像が怪しく光り…。
 外見と共に変化する強烈なプレッシャーを受け、打撃距離に居た真一は舌打ちを、日菜子は眉を寄せて決断した。
 号令一過、全員が腕輪やバックルを外し…。トンボを切って、集結し始める!
「ゲキタイバスター、転送完了ですよっ」
「「いっけー、ゲキタイシューットx8!!」」
 硝子のアクセサリーを合体…という建前で射撃武器を用意。
 待機していた砲戦形態のラル子ともども、一斉射撃を放った!!
 8つの心と声が一つになって、連携攻撃が回避の隙間なく覆い尽くしたという…。
 それだけの猛攻を受け、サーバントが無事でるはずもなかった。

 こうしてサーバントの脅威は去り、町から脅威はさったかに見えた…。
「あの荒れ寺ですけど、放置するのもアレですし、再建して施設とかに利用出来ませんかね老師?」
「そうじゃのう。敵が目を付け取るかもしれんし、当面は建設予定にして、そのうちアンケートしてみるかのう」
 最後に正太郎は依頼主の元を訪れ、秘密基地か何かに使えないか、提案した。
 何になるかは判らないが、平和になればきっと、賑やかな場所になるだろう。


依頼結果