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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/05/31


みんなの思い出



オープニング

●老人の願い
 死に掛けた老人が、少年の日の頃の夢を思い出していた。
『恰好いいなあ…。オレもヒーローになりたいなあ』
 ガラスケースの向こうに飾られた戦隊ヒーロー。
 少年の熱いまなざしで、死にかけた老人は昔を思い出していた。
 かつて自分が思い描いた、弱き者を守るヒーローだ。

 夢の中だと、薄ぼんやりと判っていたが…。良いじゃないか夢の中なのだし。
 そう思って、自分を誤魔化すことにした。
 だけれども、常識人の老人自身がそうは問屋を降ろさなかった。
『だめだめ。権太は勉強も運動も苦手だろ?』
『それに…権太郎くん、悪い事もして儲けたんでしょ?じゃないとそんなに大きなお店の社長さんになれないもん』
『違うよ、違うよ…。オレはただ、世の中で当たり前のことをやったんだ。別に悪い事はしてないよ!』
 昔、友達『だった』子供たちを使って、無意識下で自分を責め立てる。
 今頃は共に三途の河を渡ってる年頃だろうに、なんと馬鹿馬鹿しい事か。買収だの値切りだのを繰り返した罪悪感が、今頃になって噴き出したのかもしれない。
 だから、ヒーローになりたいだなんて夢を使って、自分で自分を裁いているのかもしれない。

「オレは、オレは……ヒーローに…なりたかったんだ」
「アウル適性がないから魔法は使えないって言われたろ?だいたい死に掛けてるのに、天魔を倒せるもんか」
「それとも天魔に魂でも売るか?運が良ければ下っ端悪魔くらいにはなれるかもよ?」
 当時の友人たちが知っているはずの無い情報を総動員して、自分を責め立てる。
 悪役は現れた、魔法も存在する。
 だけれども…自分はヒーローになる事が出来ない。
 いいや、老いた自分だけではない。未来のある青年でもアウル適性がない方が大部分なのだ…。
 そう言って自分を誤魔化してきた。

「御前…」
「御前……。御前、御無事ですか!?お気を確かに!」
「オレ…い、いやワシはまだ生きておるのか?…いや時間の問題じゃのう…」
 テーブルに突っ伏していた老人は、側近の言葉で目が覚めた。
 体力低下を誤魔化しながら使ってきた自分の体だけに、良く判った。
 順調な事業だとか、大部分の資産も、諦めるほかないだろう。
 だが…。

「そんな気の弱い事をおっしゃらないでください。まだまだ元気でいてくださらないと」
「面倒事はもう沢山じゃ。せっかく後継者がおるのじゃし、順調に譲って、残りの人生で遊び暮らすとしよう。隠居してやりたい事が出来た…。いや、思いだしたでな」
 たった一つだけ捨てれないモノがある。
 それは夢だ。置いた自分に残された、たった一つの財産。
 いや、不死鳥のように蘇って来た。昔しから秘めた思いだけは捨てきれない。

 自分に出来ない事は承知している。なら、別の方法で叶えれば良い。
 年老いた分だけ蓄えた知恵で、老人は夢へと乗り出すことにした。

●戦隊ヒーロー大募集!
「警備の依頼ですか?具体的な場所や日時はどの程度の…」
「うむ。場所は四国の郊外なんじゃが地域の巡回を兼ねて、少し広め。時間は…、天魔の出現の話が出て来たレベルなのでやや長めになるかもしれん」
「と言う事は、個人宅ではなく地域の方を代表されて…という形ですね?それならば可能な範囲ですが、学生は学業が本分ですので、完全に時間を拘束する事は無理だとお考えください」
 金持ちの老人が訪ねて来た。と言う事で、依頼を斡旋する掛りの者は、少し身構えた。
 こういう人種の中には、金を出すスポンサーなんだからと無茶を言う者も多かったからだ。
 だが老人の方も海千山千。
 まずは当たり障りない…。問題無く受け入れられる判例を調査して、最初はソレを口にしたのである。

「話は承りました。生徒の方に告知しますので、時間が開いている者が赴くでしょう。しかし…少々報酬が多くありませんか?」
「強力な天使が居るというなら、正直に話してもらわねば困りますよ?それに、そういう場合は、報酬の必要はありません。こちらで調べてから出動を…」
 泊まり込みもありえるので、宿泊用の施設が貸し出されるのは良い。
 場合によって車やバイクの持ち込みもアリだし、老人の手持ちから貸出しできると言うのも問題ないだろう。
 だが…。
 それでOKを出すには、危険ではない割りに報酬が多かったのである。
 学生を個人雇いの撃退士にされる訳にはいかないし、…実は天魔が居ると判ってるのなら放置するわけにもいかなかった。

「いやいや。地域の振興にバイトを頼んだり、町ぐるみで面倒な事をいうかもしれんから報酬をはずもう。という訳じゃ。ルールをはみ出すような事はせんし、その辺は学生が判断するじゃろ?ただまあ、ちーと老人の我儘を、な」
「地域の行事レベルなら、まあ。…ですが個人契約は認められませんし、学生が断ったら強要はなさらぬように」
 うむうむと頷いて、書面にしておいた。
 老人としても、別に囲い込む気は無かったし…。彼なりに町を愛していた。天魔騒ぎで過疎化するから、楽しいイベントを催す程度だ。
 彼の夢は、そんな事の為にあるのではなかった。

 ただ…。
 老人は面接に訪れた撃退士に、こっそりこんな事を耳打ちしたのである。
「君はヒーローになってみたいと思わんか?揃いのコスチューム代は出すし、出動の時はうちの車やバイクを改造してそれっぽくして構わんぞ!ガハハ」
 そう、老人の夢は身近にヒーロー戦隊を創る。
 と言う事であった。
 それならば、自分がかつて一線を引いたヒーローだと名乗ってもおかしくはあるまい。あるいは司令官役か?
 TVやガラスケースの向こう側では無く、町を天魔と過疎化から守るヒーロー達を演出するのだ。
「まずは戦隊名と、コスチュームのデザインからじゃな。変身なんぞ、お揃いのマントでも付けて試せるワイ!」
 ヒーローを引退して、新しいヒーローの為に舞台を用意する…そんな設定で夢を実現し始めたのである。


リプレイ本文

●始動!
 屋敷に通された7人は、1組の男女に出会う。
「オペレーターのラル子です。皆さんよろしくお願いしますね。有名な某おじ様と違って敵中に突撃して、自爆したりとかしないので安心してくださいね(キャピルン♪)」
「おっ、おう。誰かと思えば…」
 老人は依頼主として、もう一人は撃退士仲間のラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 千葉 真一(ja0070)が戸惑うのも無理はあるまい。つーか、1人居なくておかしいと思ったよ。

「姿が見えないと思ったら、こんなトコで何してんのさ…」
「ごめんごめん。オペ娘志望で書類出したら、早速来てくれって言われたんだよね。サプライズ?」
 川内 日菜子(jb7813)とラファルの視線が絡み合う。
 抗議の色を瞳に灯すが、そこは惚れた弱みだ。満面の笑みを浮かべられてはかなわない(テテペロ)。
「それでは、みなさんの動機からお聞かせ願えますか?」
「知ってるくせに…。っていうか、私はこういうのがやりたくて撃退士になったのだ!」
 これ以上の理屈はない!
 ラファルは日菜子の言葉を聞いて、老人に視線を送る。

 老人はゴッツイ杖に掌を載せたまま、重大な質問をする。
「一つだけ聞きたい。…その胸は本物かの?」
「やだなー。ホンモノですよー。盛ってる訳ないじゃんかっ」
「ちょっ、なんで私に直接聞かないんだっ!聞いても答えないけど!」
 繰り出されるボケとツッコミ!
 と、まあ。こんなやり取りがあった後、昼食(カレー)を挟んで面接は続く。

「……ん。黄色は。カレー好き。なので。カレーを。もっと用意して。沢山。大盛りで」
「良かろう…。店舗を借りるとしよう」
 最上 憐(jb1522)が口にした、カレーを愛する黄色のレンジャー。
 それはお約束じゃな!
 おもむろに頷いた依頼主に、別の仲間が割って入った。
「それならキャンピングカーでお願いできますか?移動できた方が色々流用が出来ます」
「ほほう、移動司令部と言う事か。ならば好し!新品の…いや、中古の方が秘密基地にはピッタリじゃのう…」
 礼野 智美(ja3600)は紙に白紙に描きながら、椅子と小さな机でカフェ形式に出来ると示した。
 老人は即決で頷くが、値段からではなく、中古改造がロマンという辺りに…仲間たちは思わず苦笑した。
「居る所には居るもんだな(1回目)。俺らと同じつーか、年寄りの深みとやらはどこに行ったんだよ。大人買いすんな」
「ヒーローは昔から居ましたし、憧れるのに年齢は関係ないんじゃないですか?でも懐かしいなぁ、スーパー戦隊(…小さい頃妹と二人で日曜仮面ヒーローと続けて見てたっけ)」
 真一の苦笑に智美は、図案をスキャナーで取り込みながら、数年前を思い出した。

●衣装合わせ
 簡単なデザインをプリントし、さっそく衣装合わせ。
「あ、あたしが戦隊ヒーローに相応しいですって……?! そりゃ当然の流れよねっ!」
 松永 聖(ja4988)は鏡の前で、コスチュームデザインを当てながら頷いた。
 格好良くて、強くて、皆の憧れだもの、戦隊ヒーローは!
 このあたしが相応しくなきゃ、誰が相応しいって言うのよ!!

「町興しを兼ねてるってことは、御当地アイドル枠って事でしょ?ウンウン、悪くないわね。そのついでに町だって…」
「別にアイドルって訳でもねえが、まあ周知されりゃあ移動と誘導はし易いし、コッソリ調べる囮にもなるからな」
 …誰よ、似合わないって言ったのは!分かってるわよ、ガラじゃないこと位っ!!
 聖がモデルっぽい立ちポーズを取ったところで、真一が口笛を吹いた。
 悪気があったわけではないが、今どきのプリンターというヤツは侮れない。
 彼女のパーソナルカラーである白服が、鏡の前で綺麗に翻っていたのだ。
「べ…、別に、町の平和を守りたいとかなんて、思ってなんかないんだからねっ!…でも、依頼だし…」
「へいへい。そんじゃ、コレも身に付けて写真撮影な。さっそく工房で作るってよ」
「もうそこまで出来上がってるのか?魔力とか無いとはいえ、まったく夢のようだ…」
 聖と真一の漫才を聞いて、周囲からはクスクス笑いが零れる。
 そんな中で雪ノ下・正太郎(ja0343)は、少しばかりの驚きと、熱い情熱を瞳に宿した。

 彼の瞳の中に、自分や他の連中にも通じる思いを感じったのか、真一はニヤっと笑った。
 いつもはこんな感じで笑う事は少ないが、ブラックなら皮肉が多くて当たり前だ。
「なんだ…、馬鹿ばかりだな。まったく良い年こいた上級生が、ヒーローごっことはねェ。俺もてめえも救いようがねえ」
「勿論なりたいに決まってるだろう!そう思って撃退士業界に入った人って、山ほど居ると思うぜ!」
 コツン。
 拳と拳を打ち合わせ、真一と正太郎は笑い合った。
 アウルのお陰で子供のころの夢が叶ったのは良いが、中々こんな…ある種の馬鹿げた依頼は(4つや5つしか)ありはしない。

 せっかくの機会だ楽しもう…と思ってると、重大事項が!
「どうしたんだ?お前も衣装合わせに行ったはずじゃあ?」
「じっ…自分は男でありますっ!コレ…、女の子用でありますから…」
 ピンク色の装束を持って、ヒョッコリ誰かが返って来た。
 正太郎の見た所、天水沙弥(jb9449)に違和感はないが…女性用だったのだ。
 男の娘用ならば苦笑しつつも着たかもしれないが、本物の女性服はちょっと…困る。
「そういや、ピンク役は女だしな。真一もブラックっぽい演技を始めてるから、お前も…って訳にゃあいかないか」
「むっ。無理であります…。写真会で少し着るだけならまだしも…」
 思わず顔を見合わせた後、正太郎は苦笑し、沙弥は照れる。
 世の中にはその場の勢いで耐えられる事と、長時間だと無理な現実がある。再調整に決定〜。

●縫製、ブランドクロス!
 カレーの香りが漂う中…。
 一同は改造制服に身を包む。
「ん。こんな感じ?」
「ばっちりです。やっぱり腕輪をベースにして正解でしたね」
「完璧だと思う。大きい方が判り易いしな」
 憐に着つけしながら、智美が鏡に全身を映す。
 色ガラス製の装飾が散りばめられており、日菜子は少し離れて、何度も見返した。
「後は統一デザインだけど、次の会議で決めればいいか?」
「そうですね。聖獣や、虹・雷などの自然現象、武器・乗り物の擬人化を思いつきますが、この場で決められるとは思いません」
 日菜子と智美はテーブルの上に置かれたガラス細工を眺めた。
 指輪や腕輪の地金にヒヒイロカネを用いて武具や術の封入が可能で、…極めつけは組み合わせると動物などの形になるのだ。
 今は身につけているから細部が足りてないが、合体させるとガラス細工の獣が出来上がる予定である。

 そして、組み上げると形が出来上がると言う事は…。
「つまり、こういう事だな。転身…輝光戦隊、ゲキタイジャー!! ちょっと違うか、青転身。ゲキタイブルー!」
「えー。まだまだ違わない?あたしなら逆にするなぁ」
 正太郎は聖たちの見てる前で、自分のガラス細工を全身に付けた後、装飾が一か所に見えるように体を縮める。
 更に全身を伸ばしながら、光纏状態して封入した改造制服やマフラーをドレスト!
 その様子を見ていた聖は、ちっちっちと人差し指を動かした。
「こうじゃない?よーく見ててなさい。チェンジ…ホワイト、あ、あれれ…!!ドア開けないでっ…」
 さっきとは逆に、聖は普通のポーズから、オーラドレスト後に装飾パーツを一か所に集めてポーズを決める。
 袖口やバックルを見せつけ、指を絡ませたり腕を交差させ…、いわゆるイケメンだけに許されたポーズをしようとした時!
 なんと言う事だろう!

 突如、扉が開き聖は慌てた。格好良いポーズは他人に見られる恥ずかしい(照)。
 強くなるカレーの刺激臭と入れ替わりに、顔が真っ赤になっていく。
「おパンツ出して何やってんだお前ら?つか、逃げんな。ジジイが呼んで…。じゃなくて、老師が呼んでますよ?さっそく情報が入りまして…」
「別に出してない! …分かってるわよ、ガラじゃないこと位っ!!会議室先行ってるから!?」
「慌ただしいなあ…。そんなに恥ずかしかったかな?…まあいいや、みんないこっか、ゲキタイジャー出動だ!」
「「おー!!」」
 ラル子が部屋に入ると同時に、顔を真っ赤にした聖が逃げ出すようにBダッシュ。
 カラカラと微笑んだ後、日菜子はみんなに号令掛け大移動。
 え、憐ちゃんですか?さっきから依頼主の隣でカレー飲んでるよ。

●今週の敵だ!
 写真を拡大し大画面へ。
 老人を含めて八名の視線が集まる。
「まずはコレを見て貰いたい…。ソレはさっき貰ったわしの秘蔵写真ではないか。隣の、隣の」
「そう、日菜子のお着替えシーンを…。美人さんでしょ?おおっと、こっちが本命でーすっ♪」
「こらっ!まじめにやれ!っていうか…何時の間に…」
 おおー!
 老人が促しラル子が用意したのは、見そうで見えない日菜子の着替えシーン。
 体格や筋肉もあって、スタイルの良さがかなり強調された…ストライクゾーンの広そうなピンナップだ。
 ラル子は恋人を自慢したいだけなので、きわどい部分は禁止事項!
「やっぱり、居る所には居るもんだな(2回目)。こういう余計な事をするジーさん。まあいいや、話を進めてくれ」
「わしの事はそう、老師Gとでも呼んでくれ。…この目が黒い内は、天魔ずれの好きにはさせんわ。ホイホイっと…」
「(くっ。不覚にもトキメキそうになっちまったぜ)。…えーと、この犬ッポイ着ぐるみが敵なのか?」
 カラカラと笑う真一をしり目に、老人は一枚の写真を選び出した。
 写真の一部を拡大し、具体的な姿が映し出されたことで、顔を背けていた正太郎が視線を前に戻す。
 そこにはシェパードを思い起こさせる奇妙な姿が、隅っこの方に佇んでいた。

「(良くあのお爺さん判ったね。わたし、あんなの見せられても判んないよ?)」
「(実はあの写真の段階で、全部本物なんだぜ。ジーさんは眼力で選んでるつもりだろうけどな。ま、いいんじゃねえの?)」
「(そういう事だろうと思いました。…ともあれ、あれが当面の課題ですね)」
 日菜子がラル子のほっぺを抓りながらコッソリ尋ねると、ざっくばらんの種明かし。
 撃退士でもない老人が判るように、智美たちが来る前に絞っておいたと言う訳である。
 肩をすくめながら、ここに居ない1人の事を智美は尋ねることにした。
「そういえば、最上さんの姿が見えませんが?厨房で試食ですか?」
「いや、あの嬢ちゃんは情報収集(食い歩き)に行っておる。町内会の買い物券を渡したら、それは喜んでのう…」
「間違いないね。このお爺さん孫に甘いタイプだよっ。っていうか、あたしのは残業代替わりで良いんだからね?別に情報収集料じゃなくても、ちゃんと名産品は買って帰るんだから…」
 智美はいつもの最上憐を想像してみた。『ん。カレーは飲み物』そういって、ゴクゴク流し込んでる姿だ。
 だがしかし、彼女の動きは素早かった。聖がうらやましくなる程の手際で、商品券を片手に飛び出していた。
 今頃はきっと、カレーショップのカウンターだ。

 専門店はないのでレストランだったが、その予想は外れてはいない。
「嬢ちゃん、良い食べっぷりだねェ」
「…ん。次は。もっと。大盛りで。豊富に。沢山の。カレーを。所望する。あと、御当地カレー。あるなら必須」
 豚バラ、牛筋、軍鶏カレー、シーフードパラダイス。
 店長のお勧めカレーを食べつくした後、憐はお代りを要求した。
 目線はジっと外に潜む、ハスキー型のナニカから離さない(犬カレーを要求ているわけではない)。

 直立歩行するハスキーは、町の裏筋からやって来たシェパード型と合流して…。
 四つ足モードにトランスなんとか!
 そのまま小学校やマンションの方へ、移動し始めた。
「ん。みんなを呼ばないと…。(飲食店なら。人が居る。情報。集め易い。間違いじゃなかった)」
 うんうん。
 憐はたまたま立ち寄った店からメールを送り、みんなが到着するまで、舌鼓を打つことにした。
 ゴッキュゴッキュ!。

●決戦!
 みんなが勢揃いして捜索を開始。
 倒されて、情報転送モードになった偽ワンコの後を追い山の森へと急ぐ。
「す、すみません。助かるであります」
「ん、少しは助けになると思うから」
 沙弥に智美の記憶を転写した後、一同は森の中に踏み込む。
 そこには閉鎖された石切り場があり、誰も近寄らないのだ。

「みんな良い?…輝光戦隊ゲキタイジャー、いざ推参だッ!ゲキタイレっ…わわっ」
「ゲキタイブ…くお!」
『ワオーン!』
 おおっと!突入するまでは良かったが…。
 日菜子と正太郎が名乗った辺りで、サーバントから攻撃されてしまった!
「ん…。名乗りと変形中に攻撃。それは最大のタブー。やり直しを要求」
 やっぱりこうなったか…。
 憐は目線でそんな事を語りながら、隠れた場所から覗き込んだ。
 名乗らなくてもよいのだが、最初くらいは名乗りたいのも確か。

 そんな時、石切り場の上から声が掛けられる!
「まったく、見ていられないわね!シンプルに決めて、色だけ同時に喋ればいいの!」
「そういうこった。…先に名乗って色をあわせっぞ!」
 ダーン!
 聖と真一が、腕を組んで高台から援護攻撃と共に飛び込んだ。
 黒と白は助っ人戦士で、途中参戦だからさ!
「おーけー。今回はそれで行きましょっ」
 みんなを代表して日菜子が頷き、ポーズを決める。
「「輝光戦隊、ゲキタイジャー!!ゲキタイ〜」」
「レッド!(ブルー!グリーン、イエロー!ピンク!ブラック!ホワイト!)』
 全員の声が唱和!
 色の名前は違えど心は一つ。勇気導く希望の光!我ら輝光戦隊、ゲキタイジャー!
 全員で掛れば、偵察型に遅れをとるはずがない。

 偵察モードでは勝てないと見たのか、敵は重攻撃態勢に移行する。
 アロローン。超巨大、グラン・デ・グノーシス!
「こういう形で巨大化か。番組ならロボ戦に移るとこだが…」
「老師、許可をお願いします!」
『使用を許可する!皆の熱いハートを一つにするのじゃ!』
 んなの?真一が振り向いた時、ラル子が乗って来たのは頑丈が売り物のサイドカー。
 勿論、依頼人は乗っておらず大型砲が鎮座しておりました。

「武器名はあるのか!?やはりここは最初のガラスか何かを当てはめて…」
「決めてる暇はありません。とりあえず、撃ってから考えましょう」
 ワクテカする正太郎を制し、智美はただの武器ですからと忠告した。
 砲台と言っても、単にラル子の火力が増えただけで、戦力がやっと100%なだけだもん。
「いっけー!あたしたちの必殺…えーと」
「ん。ゲキタイジャーのカレーなる一撃(仮)」
 聖が技名に悩んでる間に、面倒くさそうに憐が呟いた。
 ちゅどーん!
 と最後は全員そろって砲撃し、集合写真で締めましたとさ。

 さあ、デビューの次は移動基地と必殺技の特訓である!


依頼結果