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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:5人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/11/01


みんなの思い出



オープニング

●キャラメイク
「お疲れ。打ち上げは…」
「そんな物より早く、遊ばせるぉ。これが開発者としての特権でつ!」
 ゲームの初期稿は無事に完成。
 缶詰部屋(開発室)からフラフラ出て来た依頼人に、秋桜はワクテカした目線を送る。
 ずっと面倒な作業にいそしんで来たのだ、早く遊びたいというのは人情。
「んじゃテストプレイと行こうか。キャラメイクは自由制作と、気軽に遊べるテンプレートを造ってるよ」
「もちろん自由制作でつお。最大四人として、おや、ジェラルド氏はテンプレート?」
「バランスを見るには両方試してみないとね。まあ、さっきまで文章を入力していたし早速試したいのもありますよ☆」
 依頼人はソバカスの浮いた顔をくしゃくしゃにして笑うと、テスト用に使っている普通のパッドや銃・剣型パッドを投げた。
 秋桜はパッドでコ、ス、モ、ス…と名前や過去を入力する中、三人目にエントリーしたジェラルド&ブラックパレードは、銃型パッドを手に取り、テンプレートを眺め始める。
 そこには雷鳴の剣士、積年の復讐鬼、亡国の王女と言う感じで並ぶ名前の中から、銃神と記載されたキャラクターを選択した。
「なるほど。テンプレートは最初からスキル・装備が決まっている代わりに、ちょっとだけ合計所持金が多いんですね」
「お客が迷わない用でもあるから、名前のイメージ通りだし…ああ。カードを配布する形なら、レアキャラは特殊でも良いんだろうけど」
「初期キャラに特殊データがあったり、迷う程の選択肢があっても困りますしね。…えっと私はせっかくなので、一から造りますね」
 銃神のキャラクターが選ばれた瞬間に、固有画像と過去歴やらデータが次々と公開される。
 初期スキルや装備からするとインフィルかな?と思いつつ、水野 昂輝は構成が少し優良な事に気が付いた。
 彼が提案したキャラカードとかの配布について話している間に、四人目には礼野 真夢紀が挙手。
 ちゃっかりと初期メンバーに入り込み、剣型パッドを手にして、トモミと名前を入力する。
「折角ですし、キャラ制作に関してカードで並行で考えますか」
「あ、お手伝いしますよ。これを配ればいいんですか?」
 しまったなあ、とか言いつつ昂輝はむしろ清々した顔でカード用の印刷を開始した。
 一枚ずつ切ってカードスリーブに放り込み、それを手伝い楊 礼信がホワイトボードに張りつけて行く。
 テンプレートなので既存のアスヴァンとインフィルを全て張りつけ、残り二人分を一枚ずつペタリ。まるでカードゲームのようだ。

●テストプレイ!
「フフフ。何がテンプレート、何が優良装備。私の考えたキャラが何時だって一番に決まってるのですぉ」
「秋桜さんは天魔生徒の忍者なんですか?…なるほど、種族枠で透過を取ったんですね」
「キタイナイ、流石は天魔忍者キタイナイ。これって、あたしの考えた罠対策じゃないですかっ、先を知っている者がそう言う態度では…」
「まあまあ。どのみちそこまで行かないからさ。四人揃ったことだし、一面を始めちまうよ?」
 忍法壁抜けの術なのだぜ、ケケケ。
 秋桜が制作したのは種族枠で物質透過を選び、選択スキルで壁走りをチョイスした特殊移動型。
 壁移動は空飛ぶ能力より限定的だが、移動力向上を組み合わせることで、変幻自在の機動力を確保している。
 以前に真夢紀のお姉さんが言っていた天魔生徒の有利さを、100%活かせる仕様だろう。
 なお、『対人』地雷が山ほど埋まっているデスMAPを用意したソリテアが、思わず呆然とするレベルのえげつなさ。
「アスヴァン・忍者・インフィル・阿修羅か。悪く無い組み合わせかねえ」
「そうなんじゃないかな?ボクとしても回りが女の子ばかりで嬉しいけどね。ああそうだ…、一面を突破したら練習用のサバゲー訓練を選べるようになるから」
 映し出される会議室に、依頼人を含めた一同の構成と初期依頼が提示される。
 依頼書を開示すると二チームに別れた合計8人編成で、町で噂の大型サーバントを探し討伐する話。
 ジェラルドは『頑張って全員助けようね』と喋るヒロインの画像に、微笑み返しながら違和感が無いか確かめた。
 こうして…依頼が開始するまでの間、ノベルゲームの様に適宜な状況が流れて行くのである。

「前のめりな前衛に後衛みたいですが…。最硬のアスヴァンに、フラグ回収が得意な移動型でサポート。ぐぬぬ…最適解チームを全滅させる手を考えねば」
「何度か挑戦される方用に、隠しステージがあると言う話でしたよ。そう言う難しいのはそこで…」
 一面は練習ステージと言う事もあり、簡単な解説の後で軽快に話が進んで行く。
 初期情報通りの雑魚敵を駆逐しつつ、怪しげな建物の前で折り返す形となる。
 進む為の『鍵』が足りてないと開か無いのだが、ソリテアの目の前でアッサリと忍者が扉を開き始めた。
 物理的にこじ開けたのではなく、移動力を活かして鍵を用意したのである。
 記載スコアは容赦なく最速で、昂輝もどうしようかなあ…とか言いつつ一応は彼女を宥めて置いた。
 誰もがこのペースだったり、どのお客もやり易いパーティでは無い。
「でもまあここまでは予定通りですね。問題はこの後で、学校に戻ってからです」
「お茶を用意しますので、せっかくだから皆で考えましょう。それに何人かにやってもらえば、全員が同じ事を考えるか判りますよ」
「賄賂には騙されませんよ。脅威の存在は盛り上がりに重要です、そりゃあタイムアタックに血道をあげる人も居ますけどね」
 昂輝はそう言うと、手書きながらお金用のカードを用意し始めた。
 このカードをやりくりしてスキル・アイテムカードを買う方を試しつつ、ランダムで数枚手に入れる方法の為に残りで山札を造る。
 その様子に礼信は笑って温かい肉饅頭をふかしながら、お茶を淹れる為に流し場へ向かった。
 そう言えばもう夜か…。ソリテアは仲間達が用意していた冬場対策にありがたいとは思いつつ、完成へ向けて何が必要なのかを追求する。

●最終調整…そして
「ヒィ〜。ヒロインが浚われてしまいましたぉ。薄い本が厚く…」
「この後で救出に行って空振りして、洗脳されたヒロインが中ボスになるから、あながち間違いじゃないけどね」
 一面を終了した段階で、サブシステムへ移行する間に物語が表示される。
 別パーティ視点から合流するまでの隙を突いて、秋桜が言う様にヒロインがボス敵に浚われてしまった。
 ジェラルドはその叫びに微笑みながら、薄い本はご容赦願いますと言い添える。
「あ、さっき言ってたサバゲーとか、オマケシナリオは全部既存の流用なんですね」
「空きスペースが判らなかったですしね。…あ、レアキャラとかこんな感じですか?」
「そうそう♪一からイラストを頼んで、こっちの圧縮画像の方も寄せて行こうか」
 スキルをさっさと決めたらしい真夢紀が、サバゲーやオマケシナリオを見ると、さっきのMAPだった。
 昂輝は容量の問題を口にしつつ、剣聖とかシリアルキラーなど癖の強いキャラカード名を張りつける。
 その内容にジェラルドは笑いながら、出来上がったゲームを感慨深く見つめた。
「明日からは発注とかで忙しくなりますね」
「なら、今夜は細部調整の為に、ぶっ通しで何パターンかやってみましょう」
「タイトルも必要だぉ〜」
 礼信の用意した肉まんに皆でかぶりつきながら、最後の行程が始まった。

 そう、自分達でクリアするのだ!

前回のシナリオを見る


リプレイ本文

●アルファ版の完成!
「基本的には移動キーと、決定・選択のボタンを覚えてね。残りのボタンは慣れてからで良いかな」
「いろいろと申し訳ありません」
 女の子に頼まれるなら幾らでも構わないよ♪
 まあいいじゃないかとジェラルド&ブラックパレード(ja9284)は、慣れない礼野 智美(ja3600)と稽古中。
 ぎこちなくサンプルキャラを動かす彼女を見守って、扱い易いパッドを選んであげる。
「そろそろいいですか?練習が終わり次第、最後まで通しでテストプレイ始めますよ」
「OK☆付いて来れない人は言ってね、フォローに回るから」
「どうぞどうぞ。エロ要素ないとやる気起きないんだよねぇ〜。やれる範囲でやらせてもらいますぉ」
 水野 昂輝(jb7035)が設定し直したメインシステムを立ちあげると、ジェラルドはモニターと昔懐かし手袋型パッドを追加した。
 相当に使い込んだ様子で、拳を握ったり開いたりする姿も様に成っている。
 一方、秋桜(jb4208)はエロゲ要素は導入できなかったので、周囲の熱もどこ吹く風と自分をモデルにキャラを設定した。

 天魔に脅かされたこの運命、抗いますか?
 Yes!!

『サーバントが近くの町で暴れて居るそうだ。すまんが…』
「めんどいから全部Yesでいいですぉ。ポチっとな」
 教師のオッサンが始める説明を、秋桜が素っ飛ばした。
 同時に展開する情報には、サーバントが大型の動物型であり、部下として雑魚が数体居ることを教えてくれる。
 開始ステージだけに情報も丁寧で、MAPの全図に加え詳細な敵データを記載。
「チェンジチェンジ!ジェラルド氏、早くオペ娘をはよ!」
「気持ちは判るんだけどね。シナリオが進んだ時に変更できる方が、盛り上がれるでしょ」
「お話中悪いんですが、奪われた阻霊符を取りに行きますよ」
 ぶーぶー喚く秋桜に苦笑しながら、ジェラルドはキャラカードを並べて見せた。
 そこには彼が町の絵師たちに発注した綺麗どころのオペ娘ちゃんが並んでおり、頑張って手に入れれば変更可能だ。
 オーっと目を輝かせた秋桜が巨乳美人を探そうとする前に、無情にもソリテア(ja4139)が作戦開始。

「あれ?ソリテアさんのそれって、インフィルじゃなかったんですか?ライフル持ってるからてっきり…」
「試すなら癖の強い組み合わせの方が、想定外を調べ易いですしね。結構扱い易いですし、パーティプレイならオスメでしょうか」
 開始早々、一体目の雑魚が吹き飛んだ。
 外見だけを見て確認していたらしい昂輝が覗き込むと、そのキャラは確かに阿修羅。
 インフィルの射程延長や命中補正は持たないが、攻撃スキルと移動強化を考えれば悪く無い。
 前衛を他の人に任せられる多人数プレイなら、むしろ攻撃特化の面白さがあった。
 開始ステージは練習用ともあって、相手の攻撃範囲の外から面白いように勝利をもたらす。

●テストプレイ
『くそっ、まさか囮だったとは…。急いで救出に向かわないと!』
「やっぱりカードの方が判り易いですね。ダウンロード版はともかく店に置く場合はカードを配りましょう」
 二面からは本格的な戦闘が開始され、シナリオ的には浚われたヒロインの救出劇が始まる。
 ここでの問題は、終わった人とそうでない人の差が大きかった。
 手に入れた報酬をやりくりして、アイテムやスキルを調達しながら昂輝が呟く。

「そんじゃあ私は鍵を取りに行きますぉ。戦闘は任せまつた」
「待ってください秋桜さん。単独行動は…」
 ようやくのスタート直後、ひょっこひょっこと壁際に歩き出した秋桜似のNW。
 ソリテアが止める間も有らばこそ、壁の向こうに姿を消してしまう。
「アイテムを極力使わずに持ち越すなら全員必要だと思いますけど、なんとかなりますよ」
「そうそう少しくらいは良いんじゃないかな?僕らで補える範囲だと思うよ」
 昂輝のルインズブレイドが手堅く前衛に立って、押し寄せる敵を引き寄せながら叩き潰す。
 その間、ジェラルドの阿修羅は右に左に軽快にガン・フー状態。
 銃と爪を即座に切り替えて、次々に弱めの敵を一掃し始めた。前衛と中衛が手を取ることで、人数の不足を補えると思ったのだが…。
「あ…。実は天魔対策に、幾つかトラップ入れちゃったんですよね。数が少ないので、引っかかるとは限らないんですが…」
「聞いてないお〜。てんしーん、はりきって援護に加わりますおー」
「天魔キャラは有利ですからね。少しくらいの対策は必要だと思いますけど…」
 チュドーン!
 ソリテアが頭をかいている間に、案の状というか秋桜が引っかかる。
 開発中には無かった盲点だが、気を付けて行けば滅多に喰らわないハズであった。
 現時点では智美の言う様に天魔キャラ有利なので、なんとかしたい所だ。

「いあー、これがナイトウォーカーの欠点なんよね。メンゴメンゴ。…ぐふふ、これでアーマーブレイク…」
「巻き込まないでください秋桜さん。…あと服が破れる機能はカットしましたよ、忘れたんですか?」
 無差別の範囲攻撃が咲き乱れる。
 ノリノリで味方を誤射した秋桜のテンションが、昂輝の指摘で大ピンチ。
 ショボーン。とダメージ喰らってない彼女の方が、もはや立ち上がれぬ…。とボケ始めた処で救い主が現れた。
「自キャラだけでもアバターっぽく組みあげたらどうかな?露出の多い姿の上に、中途半端な服を着るとかね」
「おお!そんな機能が…というか、どうすれば良いのですお?」
 心の朋よー!
 とジェラルドに尊敬の眼差しを投げた秋桜は、急浮上したテンションと共に視線を右往左往。
 だがどこにも怪しい仕掛けは存在せず、首を傾げて居るとチラっと携帯メモリーが見せられた。
「ダウンロード版だけでも、画像を組み合わせれないかと思いまして☆」
「うーむ。何にせよ終わってからの御愉しみですお」
「相談が終わったら援護に集中してください。御蔭でちょっとしたピンチなんですから」
 笑い合いながらジェラルドと秋桜が意気投合していると、フォロー要請が入った。
 先ほどの無差別範囲攻撃に巻き込まれた昂輝が、ギリギリで生き残っている。
「援護が間に合わなくて済みません。慣れないのもありますが、少し反応遅く感じるんですよね」
「熟練の撃退士からみれば仕方ないです。もっとも、使い易いキャラをやってみれば感想も違うと思いますけど」
 アスヴァンのテンプレを使ってる智美が駆け付けるまで、束の間のダイ・ピンチ。
 普段と違う事をするのも面白いが、やっぱり使い易いのは自分と同じタイプなのだろうか?

●心折なデザイナーと難易度選択
「やはり人間用の有利点を導入しませんか?天魔の透過能力と空中移動は有利ですし、反面撃退士って現状人間が多いですから」
「そうですねえ。マルチプレイの時くらいしか劇的では無いですし、その時は難易度を上げるつもりなので考慮します」
 僅かに残ったHPゲージを見ながら、人間だったらこんな時に不屈の意思で対処出来たかもしれない。
 それがあればなあとか思いつつ、智美は苦労しながら回復魔法を唱えさせた。
 ソリテアの方としても、天魔キャラの方を幾つかの強武器と一緒にレアカードにしたら…。とか思いつつ考え直した。
「でも、幾らデスMAPといっても、即全滅はちょっと考えものかな、と思います。地雷原で例えると、死なずに抜けられる線があるとか出来ませんか?」
「フローチャートを作って置きますから、絶対有利になる所だけ調整すれば良いと思いますよ。大会級と比較されても困ります」
「アウチっ。あたしが酷い調整するばかりと思わないでください」
 智美と昂輝の苦笑に、ソリテアが天を仰いで仰け反った。
 何と言うことだろう、まるでデス・マスター(ちょっと格好追いかも)と言わんばかりではないか。
 きちんとバランスを取った名案だって、考えているのに…。
「だってねえ」
「ソリテアさんは…」
「心折な人ですぉ」
 抗議するソリテアに、一同は笑って見守るのでしたとさ…。
 どんだけー。

「おほん…。覚えゲーにしたいので、ちゃんと抜け道は用意しますよ。それと、これが一番重要なのですが…。難易度は選べます」
「ああ、それは良いですね。難しい、けどクリア出来ない事はないというレベルなら賛成です」
 容赦の無い心折設計は、あくまで最高難易度【天魔】用。
 ある程度、難易度を落とした【使徒】や、初心者用の【眷属】を用意する。と言いつつソリテアは弄られている事に気が付いて、少しだけ顔を赤くした。
 それならば。と難度のに不安だった智美も賛成し、終わり次第に調整しましょうと必死で操作を続ける。
「サンプルキャラで最後まで行けないようじゃあゲームとして問題あると思うので、悪く無いと思いますよ」
「まあ皆がみんな、高難度だからと楽しい訳じゃないしね。自分のペースで難易度を選ぶのが良いんじゃないかな」
「ジェラルド氏がそんな事を言っても、信憑性がありませんぞ〜」
 三面のボスは洗脳されたヒロインだが、これがまた強く、殺意と火力が高い。
 智美はみんなの指示を聞きながら、ガード魔法と回復魔法を交互に飛ばすが、攻撃の合間にこちらの攻撃を入れるなんて出来そうにない。
 だが、これが慣れてきたり、難易度を落とせるならなんとかなるだろうとは思う。
 そうすれば良いさとジェラルドもフォローしてくれるのだが、秋桜の言う様に彼のテクは凄かった。
 何しろその場でターンして後ろから切りつけるとか、ミサイル状の攻撃を銃弾で撃墜するのだ。
 流石にあんなのは無理ですよと…。後に自分にソックリなキャラで実演するまで智美は本気で信じて居た。

●町のゲームデザイナーさん
『大丈夫、息がある…。きっと君の祈りが彼女に届いたのだな。だが、ゆっくりしている暇は無いぞ。彼女は囮だ、敵の本命は聖槍を…』
「ソロの時に気が付いたんですが、ここの練習MAPって難易度の割りに報酬が多くないですか?繰り返して進むと、次のボーナス楽勝で取れます」
 三面をクリアし、洗脳されたヒロインを取り戻すと、次は一応の最終面。
 フローチャートを作っている昂輝が、もう一度三面を繰り返す練習MAPの報酬額にチェックを入れた。
 彼は可能な限り練習MAPや隠しシナリオを繰り返してテストしていたが、ここは報酬が高いらしい。
「あーその辺は僕も感じたねえ。カードのコンプリートを兼ねて繰り返したら、ノーミスで抜ける記録が恐ろしく伸びたよ」
「同じMAPを繰り返すなんて、私には考えられないでつ。…時にジェラルド氏、後でカードを交換してくだされ」
「私はそこまで行ってませんが、繰り返すかどうかは人に寄るんじゃないですかね?」
 スキルを入れ変えて居たジェラルド達が、思い思いに感想を口にする。
 繰り返すなら報酬は多過ぎるし、わざわざそんな苦労をしない人には差が判らないレベルなのだろう。
 秋桜と智美は首を傾げて、このゲームをノーミスでクリアしようとは酔狂だなぁと顔を見合わせた。
「なら周回できる回数を制限するか、持ち込める上限を作りますかね。難易度によって上限解除できるなら、楽しみたい人も居るでしょう」
「了解です。そこまで強くならないなら十分でしょうし、スピードクリアと択一なら悪くないかな」
「そうだね。クリア・タイムは実質的に四面までだから、その辺が妥協案で良いと思うよ」
 装備・スキルが入手し得る最高のランクで、壁役モンスターをアッサリ突破してしまう…。
 そんな現象が起きてもらっても困るし、ボーナスアイテムを守る敵はタイムアタックや選択肢を兼ねて、危険な相手のはずなのに物足りない。
 ソリテアの出した結論に昂輝とジェラルドも頷いて、まずはそれで試して調整しようと決意した。
 二人が協力しあえば微妙な調整も難しく無いだろう。


『馬鹿め、貴様らの頑張りすぎだ!世界の裁定者たちを呼び起こしてしまいおった。この腐った世界ともども滅ぶが良い』
 一応の最終面である四面を踏破し、聖槍を守った一同はエクストラ・ステージに挑む。
 封印である影の世界は、学園MAPをワイヤーフレームのみで動かす簡素なステージなのだが……。
 そこには世界の裁定者として、英霊の影である暗黒卿だとか影姫が襲って来る。
 姿形に色は付いて無い亡霊だが、明らかに何処かで見た姿だ。

「うわっ、ホワイト・ジェラルドさんマジ外道!」
「そういう君の影姫だって中々のモノだと思うけどね」
「いやー。この領域には付いていけませんお。聖なる自分とかドン引き…」
 暗いステージで、シルエットのみの敵影。
 挙句の果てに開発者たちをモデルにしたスーパーキャラが襲って来るのだ、ハッキリ言って容赦の欠片も無え!
 ジェラルドの影は超高速で襲い掛かり、ソリテアの影は至る所に見えないレーザーを放つ。
 キラキラ光る天女さまオツ!な秋桜に至っては、言うべき言葉も無かった。
「礼野さん、生きてますか?」
「駄目です。妹には刃を向けられませんでした、というかこんな悪戯を仕込んだのってもしかして…」
 ワァーもう駄目だー!!
 ついに装備が充実している昂輝でさえ、瀕死に追い込まれた。
 彼の影は次々に周囲へ強化魔法をかけ続け、元もとボス格が参加人数分現れる仕様なのに手がつけられない。
 せめて使い易いキャラなら…とか思いつつ智美は陰陽師の女の子に倒されていましたとさ…。

「やっと完成…さて、調整とバグチェックしますか」
「調整の方はお手伝いしますよ。手抜きな物を世に出したくは無いですしね」
 エクストラ・ステージはコンテニューの末になんとかクリアー。
 そんなこんなで致命的なバグもなく、阿鼻叫喚のテストプレイは終わりを告げた。
 最後まで動ききった感慨に浸る間もなく、ソリテアと昂輝は難易度調整に入る。
「ついに完成かぁ。感慨深いものが…ないか。半年掛かっとらんし。ジェラルド氏〜パーティまでにアバターの作り方教えて欲しいお」
「勿論、喜んで。…漸くというか、あっという間というか♪楽しい時間もそろそろ終わりか…☆」
 秋桜はううんと伸びをして欠伸を飲み込む。
 地元の人も喜んでくれるかなあ♪と言うジェラルドに、聖地巡礼が起きるんじゃね?と呟いた。
「んー…販売できるように完成したら…ボクのバーに導入しようかな♪」
「ダウンロード版じゃなくてカード版ですか?でもワイワイやるには良いかもですね」
 ジェラルドの言葉に目を丸くした智美だが、よくよく考えれば卸し価格で買えるのだ。
 みんなで依頼料を溜めて行けば難しい程ではないだろう。
「楽しかったよ☆またこういう機会があったら、是非一緒にやりたいな♪」
「そうですね。その時は私も声を掛けて欲しいと思います」
 パーティの前に警備に行ってきますと告げて、智美は完成したマシンにカバーを掛け直した。
 カバーには刻まれた言葉が1つ。

 ex:「Breaker −The Rebel−」
 それがゲームのタイトルである。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
撃退士・
星乃 滴(ja4139)

卒業 女 ダアト
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
エロ動画(未遂)・
秋桜(jb4208)

大学部7年105組 女 ナイトウォーカー
撃退士・
水野 昂輝(jb7035)

高等部3年29組 男 アカシックレコーダー:タイプB