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マスター:小田由章
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/30


みんなの思い出



オープニング

●新たな依頼
「いらっしゃ〜って、お久しぶりですねー。わん達に何か御用事ですか?」
「おう、景気良さそうで良い塩梅じゃねえか…。お疲れさん」
 日が暮れるのも随分と遅くなった七月の夜。
 本店に男が訪れたのを、兎耳メイド姿に着替えた天海キッカが出迎えた。
「あら〜こちらどちら様?ハードボイルドに決めちゃって、憎い人ね」
「うぼあっ!俺は(男の娘以外の)男といちゃつく趣味はねぇ。真面目な話があるんだあらよ!」
「この人は店舗を仲介してくれた人なのだ。元は屋台でこの辺の警備してた撃退士」
 おっさんは竜角カチェ−シャをつけた御堂龍太の頬ずりから逃れ、距離を取って犬耳や狸耳メイド達の元へ脱出!
 フラッペ・ブルーハワイの持って来たメニュー表を受け取ると、代わりにレポートの束を二冊手渡した。
「片方はボクらの活動を記したレポート…。ふむふむ。もう片方は隣町の事件に関する物ですか」
「こないだ置いて来たのと、頼んでた向こうの話だな。近いんだしやっぱり相互に情報が回らねえと…。珈琲とつまむものでいいかい?」
「ミルクをたっぷり入れといてくれ。…こっちの町の事件が片付いたところで、頼みたい事がある。もちろん頼んだ依頼が満了したこの辺で、適当に切り上げるのもアリだから無理は言わんがね」
 広げられた一枚目のレポートをオルタ・サンシトゥが読み漁ると、現在の店舗形式と並行するワゴン車での移動範囲が書いてあった。
 もう片方にはあちらの町に出没する重戦闘型サーバントの話と、町の情報についての情報が記載されている。
 この情報交換の為に町を行き帰きしていた叶心理は、噂の浸透速度やフリーランスの行動に目を動かした。
 読み終わるのを待って口にした辺り、おっさんの用件もその辺なのであろう。
「切り上げず調査してくれるなら…。もちろん敵サーバント退治に協力してくれてもありがたいが、特に頼みたいのは背景調査だ」
「噂は噂に過ぎねえってのに、どんな敵なのか知れ渡ってるのは嘘くせえな。確かに天使側か悪魔側の関与を疑ってしかるべきか…」
「形状だけではありませんね。早い段階でフリーランスが動いて居ますし、最近の噂では場所情報まで…」
 男の話しを受けて、心理や知楽琉命がレポートをめくり上げて行く。
 町を巡回する撃退士と同じくらいに、有志のフリーランスたちがサーバントの出現位置を特定している。
 以前にゲートを開こうとしていた場所とは言え、こんなペースで見つけ出すのは少し早過ぎはしないか?
 ましてや再出現した今現在、どこでどんな外見の不審者が居るとまで噂されているのだ。
「悪魔側の動向を確認出来ませんし、自分の手下の代わりに人間を使い潰しの手駒として使っているのでしょうか?」
「ふむ〜。確かにその見方もあるのぅ。じゃが囮として天使側が別の陰謀を隠しておるやもしれぬ。察するに我輩達に頼みたいと言うのは、その辺の調査であろ?」
「…サーバント戦のメンバーにはそういう心配はかけたく無いし、裏を取るのは時間掛かるからな。誰が内の為にってのを探ってほしい」
 状況を整理する為か、琉命がまず悪魔側の陰謀と言うスタンスで主張し、合わせてハッドが天使側の陰謀と言うスタンスで発言を行う。
 仮に本命がゲートなり大規模な人狩りであれば、現状の噂その物が意図して撒かれた囮である可能性もあるのだ。
 そこまで話あった所で、男は頷いて依頼の内容を肯定した。
 意図して噂をばら撒く事などサーバントやディアボロには出来ない、町に潜む天魔が居るのは間違いないだろう。

●隣町に潜む影
「起きたね。ああ、この林檎かい?自分の為に剥いた物だけれど、欲しいなら何切れか食べても構わないよ」
「えー、それってお見舞いじゃないの〜?いや、食べる食べる。だからアーんしてね」
 店の奥でソーニャが林檎ウサギを作っていると、重傷で眠っていた紅鬼姫乃が目を覚ます。
 嫌なら食べなくても良いよ言われて、慌てて欲しいと言ったところで小皿をさし出された。
 食べさせてーってと甘えると、甘え返されて食べさせてくれるなら良いよと言われ、食べさせ合いっこ。
「よっ、元気になったか?血が足りないなら肉喰え肉。肉を喰っときゃ大概治るぜ」
「おやおや、目を覚まされたのなら調度良いです。依頼主のおじさんがボク達に協力をお願いしに来られたのですが、サーバントの情報を伝えるのも良いかと」
「あーおっひさしぃ。んとねー姫ちゃんが出会ったのは手品師みたいなスカした奴だったよ。燃えるトランプ投げて来たし、間違いなーイ」
 がぶっといけがぶっと!
 賄いの合体オムライスに肉を追加したハルティアが、とられないよう抱え込んでから新しいのをよこしてくれる。
 一緒になってパクついているとオルタ達が気がついたらしく、どことなく見かけた男に姫乃は手を振り返した。
「宣伝帰りってのと、形からいって噂にある『裏町のマジシャン』ってやつだな。他になにか気がついた事ありゃあ…っと痛てえなら無理はいいぞ」
「えへへおニューのリボン買ってくれたら許したげる。えっとねー追い駆けられたんで、裏町の三差路四差路をぐるぐる回り込んでやろうかと思ったらボーン!ってなったの」
「地雷型の魔法…、いえ移動砲台の下位サーバントを連れているのでしょうか?いずれにせよ、町中で戦いたい相手ではありませんね」
 相手の死角である後ろに回り込めば、逃げるも観察するもやり放題。
 慣れない者には迷路の様な裏町の構造を使ってそうしようとした時、角を曲がった所で不意に火焔に巻き込まれたのだと言う。
 姫乃の話しを聞いた琉命は、幾つかのパターンからありえる話を推測した。
「厄介じゃが攻撃回数が多いと覚悟して、一気に押し込めば困らんじゃろ〜。隠しておける移動砲台型なぞついでに倒せる程度のものよ」
「まあ初見殺しって、露見したらそんなものよね。でも…、問題なのは背後関係をどう洗うか、かしら?あ、王様にもお代りア・ゲ・ル♪」
 良きにはからえ〜。
 ハッドは抱きついて来るオカマを気にした風もなく、パン耳を挙げたお菓子をつまみながら珈琲を口にした。
 あたふたした対応を期待していた龍太は、つまらなさそうにお代りをさしだす。
「徒歩や屋台で情報収集、フリーランスへの聞き込み。調査は置いてサーバン引き受け戦闘。色々と考えられるね。もちろんボクはどれでも良いのだけど」
「戦闘が面倒なくていいけど、顔覚えられちまうよなー。これは依頼切り上げる時にすっか」
「フリーランスはこの町や向こうの町に住む有志の自警団って名刺に書いてあるのだ。周囲からそれとなくか、あるいは直接?」
 ソーニャが改めて整理すると、面倒だなーとハルティアが1つ目の意見を提出。
 話しに参加しようと、フラッペが二人とも別の可愛さなのだとか言いつつ身を乗り出してレポートに挟んだ名刺を取り出す。
 警備でショッピングセンターを経営している会社に雇われた卒業生の物らしく、聞いてみるのも良いだろう。
「屋台の方は珈琲焙煎してもらうって事で、専門店のカサブランカと適当に往復する事も出来るな。まあ1つずつ行けば何とかできそうだ」
「うんうん、わん達なら誰が相手でもなんくるないさー♪」
 面倒そうじゃあるがな…。
 心理の苦笑をキッカの笑顔が吹き流した。
 確かに苦労は多いかもしれない、だが一同ならばきっとやり遂げられるに違いない。

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リプレイ本文

●もし無事に帰れたら…
「面白い漁?見てみたいのだ!」
「そろそろ終わるけどモイカの漁だけでも何種類かあって、おっもしれーんだ」
「いーですね♪なんだかそういうのを見ると、わん達がこの町を守ってるんだって気がします」
 そろそろ出撃するフラッペ・ブルーハワイ(ja0022)達を、オリエンタルや天海キッカ(jb5681)が見送りに参上。
 二人が見送ってると、本当に港町の住人になった気分がしてくるから不思議だ。
 費用の問題で釣り客に便乗して漁を出し、燃料を節約するなんて生々しい話が聞けるのも身内っポイ。
「この町の事件だけじゃなく、アンケートで売上げ良くする方法を調べときますね。目指せ補助金なしで自立経営!怪しい人物も売れ筋商品もバッチリ調べるっ!」
「その調子なのだ。今回の任務もそのうち終わると思うけど、それでオリエンタル達とByeByeなんて寂しいし…。あ、オリエって呼んでいいかな?」
「いーぜっつっか歓迎〜!いまのはハンニバルの御館に拾われた時の名前でさ。俺も同僚をコンチとか愛称で呼んだけど、てんで反応なくてつまんなかったんだ」
 キッカはいつも賑やかだけど、みんな妙に口数が多い。
 ウン、と言えば済む事を色々と…。
 そこまで考えた段階でフラッペも気がついた。オリエンタル…オリエもそうだけど、寂しかったり危険な任務で不安だったり。
 言わなくても判る事は多いけど、口に出して悪い事でもないよね。
「ボクらはちゃんと帰ってくるのだ。だから、無事に帰れたらみんなで一緒に見に行くのだ」
「あったぼーだぜねーちゃん。お土産頼むな、チビ達も喜ぶからさっ!」
「うんうん。フラッペさん達に任せておけば、なんくるないさー!戦闘班の人達頑張ってぇ〜〜!!」
 ブロロ…。
 心配無いよと親指あげて、フラッペはワゴンの車窓から合図を送った。
 オリエも親指あげて、キッカはウサミミ付きの麦藁帽子を振る。
 お互いの見えなくなるまでそうしていた…。
「足止めはついでで情報集めが主目的だから、そんなに死亡フラグを立てなくてもいいと思うがね」
「そんなんじゃないのだ。ただの感傷…ううん。やれる範囲でBestを尽くしただけなのだ!」
「ハッ、無理はしねー。けどやるだけはやったる!ってとこだしなー。火力ヤバイっぽいからジックリおいつめよーぜ」
 あれだよ、あれ群れの意識ってやつ?
 叶 心理(ja0625)とフラッペの話に、ハルティア・J・マルコシアス(jb2524)はそう言って割り込んだ。
 一緒に過ごした仲間でも、いつか別れる時が来る。だけどそれが不本意な形になるのは許せないし、逆に一緒の間は出来るだけ楽しく行きたいものだ。
 可能な限りの努力は惜しむまいと、地図やら接客マニュアルやら交互にながめて苦笑いを浮かべた。
「それにして、さっそく再戦の機会…ってか?ま、やられっぱなしは癪だろうしな」
「もちっなんだよ!くぅ−!姫ちゃんをいじめるなんていい度胸なのっ。全身全霊をかけて襲うの!」
 どうどうと暴れるじゃじゃ馬を宥めて、心理は苦笑した。
 復讐に燃える紅鬼 姫乃(jb3683)の気持ちは判るが、やみくもに挑んでも繰り返すだけであり、そして戦うのは手段であって倒すのが本来の目的では無い。
 近隣の町は同じ勢力である事が多い、ゆえに隣町の事件を進展させる事で裏を探るのが本命である。

●戦場で
「やるのは構わんが…、必要な情報は全部確認しといてくれ」
「えーと近くに居る邪魔な二体は現地の班がやるんでしょ?なら読まなくていーとして…、そーそー確かにこんな格好だったー」
 心理の要請しておいた資料が並べられた瞬間に、姫乃が一枚のレポートをひったくる。
 そこには裏町で見かけられたという、重戦闘型サーバントの奇術師めいた外見や推測スペックが記載されていたのだ。
「フレイバーンデック?知性ある敵と会話した事がないよ、何か話せると良いな」
「会話を試すんなら早めにしとけよ?俺らが先に出会えば…あれだな、仲間殴ったとなっちゃ、報復は覚悟してもらわねーとな?」
「そうそう、話してる余裕なんてないんだからぁ!」
 戦場痕に到着し、一同はワゴンを降りて軽く運動を始める。
 肉球パンチでシャドーボクシングを始める二人組を眺めながら、ソーニャ(jb2649)は画像の望遠度合いを再確認した。
 彼女の長い射程は『武器以外にも』存在する、この位置で写真を取れるなら法術はちゃんと届くだろう。
 主として格闘距離で戦う達が出会うよりも先に、接触できるはずだ。
 情報を引き出せるかは別にして、何を考えているのかに興味深々…。
「温度障害が起きる程の炎が本命として、砲台型の位置も含めてみなさんに報告しますね。戦闘データも可能な限り回収して転送いたしますので」
「潜伏・視界撹乱は厄介ですが、判って居れば対策出来ますしね。皆さんを降ろして私は引き返しますが、港町で起きている事件の背後関係の調査を行いたいと思います」
 このサーバントの最も厄介な所は、本人の火力に加えて手下も火力型であると言う事だ。
 遭遇戦では回復防御に加えて探知能力が運命を左右すると、御堂・玲獅(ja0388)と知楽 琉命(jb5410)は互いの意見を確かめあった。
 残る玲獅とワゴン車で帰還しながら探知する琉命によって、かなりの区域が露わにされて行く…。
 予め住民の避難は終わっており、誰もいないハズの領域に反応があれば敵だろう。
「そろそろだね…。路地裏になにかあるのかしら?調べてみる?」
「いや、出来るだけ裏町中心部には入らず行こう。深追いせず、探れる範囲で見落さないように…かな。出来るか?」
 そうして一同はビル陰や看板、家の影と身を潜めて侵攻を開始する。
 携帯のラインを小声に設定し、ソーニャは聞こえて来る心理の忠告と質問に同時に応えた。
 邂逅したら身を守る事が第一、でも時間稼ぎを兼ねてくらいなら…。
 暇だし遊んでやろうかって思ってくれたらいいなぁと、戯言で興味を引く為の準備を始める。
 遠目に映るビルの配置や写真を地図と比べて、どの範囲までなら大丈夫かと齟齬の修正を開始。
 何棟かを進むうち、すっかり自分の町として相対距離を把握する。
「渡したメモには、地図の写しに敵配置を書いています。最初は誘導になりますので、突出は避けてくださいね」
「判ってる♪だいじょーび、少なくとも合流までは無理しないからさっ」
「おっしゃー。狩りの始まりだぜぇ!」
 悪魔との戦場痕から、裏町に至る道筋に到着。玲獅が手にしたメモを全員に手渡して行く。
 この町で発生する四つの戦場の概略図の隣に、詳細に拡大された地図へ色を変えてマーカーが記載してあった。
 それがサーバントだと理解して、姫乃は嬉しそうに心の中で舌なめずりをした。
 戦いの予感に気合いを入れるハルティアよりも楽しく、その瞬間を待ち侘びる…。

●フレイの飛び火剣
「琉命さんが運転中なのでわんが報告しますね。他の戦場では森と高架橋で戦闘開始、戦場痕はみなさんより後になります。待ってますから御気をつけて〜」
「あーい、きっちり落とし前付けてから…。みんなで戻りますね、心配不要です」
 ここが転換期だと、電話越しで戦場には居ないハズのキッカですら空気の重さを実感する。
 判明している全ての敵に接触する作戦であり、これだけ大掛かりな作戦に敵が気付かぬはずは無い。
 これ幸いと港町に侵入するなら戻ってくる琉命と一緒につきとめて見せるし、居ないなら居ないで安心も出来る。
 そんな中、返事の途中で姫乃はアウルを活性化させていった。
「ふふふ♪あのときの仕返しはたっぷりしてあげなくてはねぇ?」
「色っぽいのだ。Sexyなその姿が本当のキミなのかな?」
「あんまり見てなかったか?ってフラッペは足を活かして動きまわるんだったな。今夜も頼りにしてるぜ?」
 灯るアウルと共に意識が急速に覚醒していく。
 心のスイッチを入れた姫乃の事をフラッペはそう称し、何度か眺めた事のある心理はなるほどと納得した。
 二人は潜伏型と突撃型で、戦場で出逢わぬ事もあるのだ。
「あっちこっちから隠れて徐々に寄せて行く、アプローチを仕掛けるメンツはランデブーポイントを忘れないでいてくれ」
「突入する場合は私が先行しますので、盾代わりにでもしてくださいね」
 御堂先輩が大怪我するのは御免こうむりたいがね…。
 心理は貴重な回復役である玲獅が前衛を務める事に苦笑しつつも、その有効性に口を挟めなかった。
 敵が配置している下位サーバントの位置を把握するにはその方が都合が良いし、…何より集中攻撃を受けても大丈夫と言えるのは彼女だけだろう。
「居た居た、こっちを発見と同時にカ−ドを燃やすのも外見も話通り…っと、このまま行ったらヤバイんだっけ」
「下位サーバントは既に配置されています。先ほど見た中で一番近いのはあの辺りですが…」
 暫く進むと話に聞いた戦闘型のサーバントが姿を現した。
 思っていたよりも出会うのが随分と早かったが、懐から取り出したカードを燃やし、それが周囲に漂うのは話に聞いた通りであった。
 思わず飛び出そうとするハルティアは一度足を止め、玲獅が検知した場所へ視線を動かす。
 そこにある揺らぎを確認すると、何者かが姿を現し始めたのである。
「姿を隠そうとも無駄です…」
「なんか居たつーか、空飛ぶ魔剣だとう〜?つくづく芝居かかったヤツだ、なっ!」
「お見事!…なるほど、本体の周囲は囮というか足止め用だろうな。手下の手応えからして、親玉もタフそうにゃあ見えん」
 玲獅の瞳は審神者の如く、幻火の位置撹乱を破り怪しき姿を看破した。
 ゆらりと現れた異界の存在は、炎を纏い空飛ぶ魔剣をイメージした下位サーバント。
 周囲を警戒しながらハルティアが近寄って衝撃波を放つと、カオスレートの差もあり意外なほどサッサリと砕け散った。
 それを眺めていた心理にも、おおよその傾向が掴めて来る。
「…位置撹乱はじっくり見れば判る、こっちも撹乱に雑魚を潰しながら四方から攻撃しつつ、もう少し前に出て来たらゆっくり詰めるぞ」
「いいけど、隠れる意味はあんまりないと思うよ?アレは迷うほど頭良くないし…」
 圧倒的な大火力による殲滅、およびトラップを兼用できる火力重視の能力構成。
 そこまで見切った心理は、ソーニャの言葉に思わず顔をしかめた。
 次なる一言が、衝撃的だったからである。
「別の奴が探知と指示してるからね」
 そう、ここにはもう少し、何者かが隠れている…。

●隠れ住む住人と、動き出す物語り
「なん、だと?」
「ここはとても面白いね。天魔と人、撃退士がごちゃまぜで…。天使は何かを探してる?それとも実験?悪魔への対策も必要だからね。その辺の為じゃないかな」
 何かあるとしたら、あの向こうだろうしね…。
 ガンガンと話している間もライフル撃つのを止めず、ソーニャはパーティライン越しにゆっくりと話し始めた。
 何度か意思を繋げて会話を試み、まともな返事はないが、仲間が空飛ぶ剣を発見する前と後とで反応が違ったのだ。
「だから誰かが近くで戦況に合わせて命令を与えているんだね。何かを守る為に…」
「…その様子ですと、気がつかれた様ですね。姫乃の方でも検証してみたのですが…。あの下位サーバント、人と人形の区別が出来る物と出来ない物があるのですよね。不思議な事に…」
「その周囲に指令を与えている存在ですか…。と言う事は先ほど感知した中よりも相手の背後側に居ると言う事ですね。もう少し詰めて再び探知してみます」
 ソーニャの報告に一同は唸った。
 確かに殲滅火力と罠を兼ね備えるフレイは目撃者抹殺に向いて居る。
 その話を補足するように、人形を投げ込んで見たと言う姫乃から捕捉が入った。
 玲獅は素早く位置関係を見取ると、迫りくる猛火や炎撃を弾きながらゆっくりと歩き出す。
 炎撃をほぼ弾き、あれだけの猛火ですら大幅に軽減するのは流石と言えよう。
「頼みます先輩。さてっと、仕方ねえ。みんな、雑魚を一体ずつ潰しながら本体へのチャンスがあったら狙ってみてくれ、フラッペ…やる事はわかるな?」
「判ってるのだ。少しだけ様子を見て『後ろから』突撃…。まあ誰かが止めに来るんじゃないかな」
 炎弾を発する元をじっくりと見て、心理は素早く撃ち抜いた。
 その矢が剣型を倒したのを確認して、非常階段上で視界を確保したフラッペはライフルのスコープを動かす。
 周囲から少しずつ仲間が距離を詰め、雑魚を倒しながら包囲網を狭めていく。
 もう少し、もう少し…。後少ししたら退路を断つ為に後方を駆け抜けてみよう…。
 そうすれば逃げる為か秘密を守る為か、何れにせよ何者かが姿を現すだろう。
「Rush!何が出て来るかは御立ち合い。風の行き先、そこがキミの居る場所…なのだ!」
 階段を降りると同時に加速を掛けて、フラッペは数十メートルを走り抜ける。
 駆け抜ける最中で拳銃に持ち替えた後、道中の雑魚を葬りながら後方遮断。突入の為に更に持ち替えようとした所で、邪魔する存在に気がついた。
『…させん。ここから先は通行止めだ』
 空を飛んでショートカット、待ち構えるように羽を広げる…。
 あれは下級天使か、あるいは飛行能力を持つシュトラッサー!?
『フレイバーン。こやつらを一歩も通すな、お前の命に替えてもな』
「…完全に無視した。そいつが管理者で間違いないね。天使?使徒かな?」
「覚悟しろよてめー。ボッコボコにしてやっからよーって、熱っアチチ!」
「援護する、一端戻れっ!…とは言えどうしたもんかな。足止めは果たしたし、情報の為にも追うべきだが…」
 ソーニャの呼びかけには見下すような高慢な意識のみが帰ってくる。
 追いすがろうとしたハルティアの前に、穏行を捨てて密集した魔剣が火を吹き始めた。
 追おうにも奥へ続く道を塞ぐように砲列を敷き心理は攻めあぐねる。
 あの苛烈な砲火、迂闊に飛び込めば死にかねない程だ。

「…ここは姫乃さんと隣町のチームに任せて迂回してくださいっ。奴自体は探知能力が無いので、一度隠れれば大丈夫です」
「キッカさんのおかげで悪魔の計画を看破しました。帰って来たらお伝えしますので、みなさん無茶しないでくださいね」
「天海さんと知楽さんですか?…私が記録した画像を送ります、あちらのチームへ転送を!」
 こうして、物語は大きく動き始めた。
 玲獅がデータを送った後、合戦跡地で戦っていたチームが突入してくる。
 致死量の攻撃を受けてなお進撃する黄金の獣に目が奪われた時、『彼女』はゆっくりと動き出した。
「この時を待っていました。あははっ♪まとめて薙ぎ倒すっ!」
 姫乃は纏っていた影を刃に替え、魔剣の砲列ごと切り割いた。
 新たな敵を迎撃しようと集中したタイミングで、横合いから殴りつけたのである。
 完全に不意をつかれたフレイバーンデックは、勝利と命を失う事になった。
 終焉の運び手が、その身に迫る…。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: サンドイッチ神・御堂・玲獅(ja0388)
 カリスマ猫・ソーニャ(jb2649)
 ゴーストハント・天海キッカ(jb5681)
重体: −
面白かった!:4人

蒼き疾風の銃士・
フラッペ・ブルーハワイ(ja0022)

大学部4年37組 女 阿修羅
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
不屈の魂・
叶 心理(ja0625)

大学部5年285組 男 インフィルトレイター
セーラー服探索隊・
ハルティア・J・マルコシアス(jb2524)

大学部2年16組 女 阿修羅
カリスマ猫・
ソーニャ(jb2649)

大学部3年129組 女 インフィルトレイター
おねだりウエイトレス・
紅鬼 姫乃(jb3683)

大学部3年43組 女 ナイトウォーカー
智謀の勇・
知楽 琉命(jb5410)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ゴーストハント・
天海キッカ(jb5681)

大学部4年239組 女 ナイトウォーカー