.


マスター:OBATA
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/01/19


みんなの思い出



オープニング

「今度の土曜日、彼氏が浮気するのよ!」
 休み時間の教室で、雛菊ほのりさんは私の机をドンと叩いて怒りをあらわにしました。
「なんでそう思うんです?」
 私は少しびびりながら、ほのりさんに尋ねます。
「思うんじゃなくって、確実にそうなるの!」
「ああ、えっと……予知夢かなにかですか?」
 ほのりさんにそんな能力あったでしょうか?
「違う! たまたま覗いたのよ、彼のスケジュールを!」
 ほのりさんはスマートフォンを取り出して、言いました。
「なるほど、たまたま覗き見したんですね、彼氏さんのスケジュールを?」
「たまたま彼が放置していたスマホのロックを解除してスケジュールを覗いたのよ!」
 ああ、聞くんじゃなかったです。
「そこに、彼が浮気すると書いていたんですか?」
「そんなに露骨じゃないわ! でも私と約束してない日に、誰かとの待ち合わせ場所がメモしてあったの!」
「友達と約束があるんじゃないですかね?」
「いいえ! 彼に友達はいないわ!」
「そうなんですか。さびしい人なんですね」
 そんなさびしい人とお付き合いしてあげるとは。やはり、ほのりさんは優しい人です。
「ええ、だって私と付き合うときに私以外の交友関係ははすべて絶交させたもの!」
 なんてひどい人でしょう!
 でも美人のほのりさんの言うことなら従わないわけには行かないのです。
 ほのりさんは美しく、気高く、お金持ちで、高慢で、わがままで……私の憧れの存在です!
「なのに彼氏が浮気するのですか?」
 私には、ほのりさんの彼氏の気持ちがわかりません!
 私が彼氏ならほのりさんのために忠義を尽くし、すべてをささげてもいいというのに!
「私以外に交友を持つなんて許されないわ! 私ですら浮気なんて一度もしていないのに!」
「彼氏には確認したんですか?」
「するわけないでしょう? こわいじゃない……」
 その表情に、私はようやくほのりさんのかわいい一面を見ました。
「こわいじゃない……真実を知って、怒りに我を忘れた私が人間一人葬ってしまうなんて!」
 前言撤回です。
「ならばどうするんです?」
「現場を押さえる。そして裏切った彼とそこにきた泥棒猫を地下牢に監禁。その後、じわじわと嬲り殺すわ」
「それはいい趣味ですね」
 私も混ぜてほしいです。
「てつだってくれるかしら?」
「嬲り殺すのですね。ほのりさんがいうのなら喜んで!」
 私の武器、肉切り包丁がうなりをあげそうです。
 ほのりさん信者の私が、ほのりさんを苦しめる男性をぶちのめすのは道理でしょう?
「なにいってんの? 彼の尾行を、よ」
 ああ……リアルに勘違いしました。ちょっと残念です(いえ、かなり残念です)。
「待ち合わせ場所に乗り込むんですか?」
「そのつもりなんだけど、彼のスケジュールには四つの場所かかれていたのよ。どこが真の待ち合わせかわからないの。だから彼が住んでいる寮から出てきたところを尾行しようと思うの!」
「なるほど」
「土曜日朝11時集合よ! 絶対現場を押さえてやるんだから!」
 私は深く頷きます。

 土曜日、午前11時。
 ほのりさんの彼氏が住んでいる学生寮の入り口付近で、私とほのりさんは隠れました。
 ほのりさんの目は怒りの炎でめらめらと燃えています。
 私は、怒った顔も素敵なほのりさんの横顔を見つめます。
 ほどなくして、彼氏は姿を現します。
 高い身長、筋肉質な体躯、切れ長の瞳、男らしい短い黒髪。なかなかのいい男です。
 悔しいけれど、ほのりさんと付き合う資格は十分にあります。
 彼氏は、腕時計で時間を確認すると、私たちに気づかないまま、早足で目的地に向かいます。
「よし、追うわよ!」
「ちょっと待ってください!」
 ほのりさんが物陰から出ようとした瞬間、私はほのりさんの手を引いてとめました。
「なによ!? ……えっ?」
 ほのりさんもすぐに異常に気づきました。
 ありえない状況が目の前にあったからです。
 さっき去っていったほのりさんの彼氏が、再び寮から出てきたからです。
 どう考えてもおかしいです。まるでマジックです。
 寮にいないはずの人間が寮から出てきたのですから。
「え、なんで? さっきも出てきたわよね?」
「はい、確かに」
 彼氏は再び時計を確認する動作をしたあと、先ほどの彼氏の動きを完全にトレースしてからさっきと違う方向に歩いていきました。
「??? なにこれ? 私たちが目をはなしたときに寮にもどったの?」
「いいえ、私はずっと見ていましたが、彼が一度も戻った様子はなかったです」
「じゃあいったいなにが……えっ?」
 そして、また驚くべきことが起こります。
 なんとまた寮から彼氏がでてきたのです。
 彼氏は前回、前々回と同様に時計を見て、まったく同じ動作の後、また違う方向に歩いていきます。
「なんなのこれ?」
「ほのりさん、またきますよ……」
 私はもうあきれた口調になっていました。
 四人目の彼氏が姿を現したからです。
 彼氏は、やはり時計を見てから、まったく同じ動作をしてどこかにいってしまいました。
「いったいなんなのぉ!?」
 ほのりさんは半狂乱になったようにさけびました。
 私もさっぱりわかりません。
 あまりにも理解名不能の状況で気が変になりそうです。
 ほのりさんの彼氏は分身の術でもつかったのでしょうか?
 でもそんな高度な技をつかえるような人なんて聞いたことありません。
 もしかして、流行のタイムループでしょうか?
 また、次が来るのではと、私はドキドキして待ちましたが五人目は登場しませんでした。
「……どうしますか?」
 これ以上の進展がないのを確認してから、私はほのりさんに聞きました。
「決まってるわ! 追いかけるのよ!」
「追いかけるって、どの彼氏を?」
 ほのりさんは少し考えてからスマートフォンを取り出しました。
「誰でもいいから応援をよぶのよ!
『私の彼氏が浮気をします。誰でもいいから協力して!』っと。
こうやってつぶやいておけば、どっかの暇人が応援にきてくれるでしょう!」
 ほのりさんは手早くスマホを操作してから、自信満々の表情です。
 さすがほのりさん、さすが情報化社会です。
 果たして、ほのりさんの彼氏の尾行に付き合ってくれる奇特な方はいるのでしょうか?


リプレイ本文


 彼を追って、ゲームセンターにやってきた。
「いいですか、尾行がバレないようにおとなしくしていてくださいね」
 六道 鈴音(ja4192)はほのりと友達に念を押した。
 Rehni Nam(ja5283)も同様の認識のようで、彼女の召喚獣ケセランがほのりに睨みをきかせた。
 もっとも、景品のぬいぐるみのようなケセランが睨んでも、ほのりたちはまったく気にする様子はなかったが。
 彼氏がUFOキャッチャーを始めた。
「すごく熱心ですね!彼氏さんはUFOキャッチャーが好きなんですかね。それともよっぽどほしいものなんでしょうか?」
 鈴音が、ふと彼氏のとなりの台を見ると、レフニーが熱心にUFOキャッチャーと格闘していた。
「レフニーさん!何やってるんですか!?」
「べ、別にあの亀のぬいぐるみなんてほしくないですけど、カムフラージュしているんです!」
 レフニーの目が本気なので、鈴音はそっとしておくことにした。
「あの〜すみません私UFOキャッチャーやったことがないんです。教えてもらえませんか?」
 鈴音は彼氏に笑顔で近づいていった。
 彼氏は恥ずかしくなったのか、無言のまま、UFOキャッチャーを続ける。
「あれ、顔が赤いですよ?熱でもあるんじゃありませんか?」
 鈴音は彼氏の額に手を当てる。スキル「シンパシー」を使用して彼氏を探る意図があった。
 ドッ!
 鈴音の顔を何かがかすめてから、すぐそばでそんな音が聞こえた。
「え?」
 音のした方には、UFOキャッチャーのガラスに出刃包丁が突き刺さっていた。
「ほのりさんの命令により、あなたを排除します」
 ほのりの友達が肉切り包丁を腰に構え、突進してくる!
「ちょっ!」
 鈴音は、ほのりの友達の肉切り包丁での一撃を間一髪でかわした。
 彼氏はただならぬ状況にプレイ中のUFOキャッチャーを投げ出し、逃げていった。
「死んでください!」
 再び突進する体勢をとったほのりの友達だったが、次の動作には移らなかった。
 レフニーが忍法「紙芝居」を発動し、彼女の動きを封じ込めたのだった。
「彼氏を逆ナンする行動はやめていただきたいわね!」
 ほのりは冷たい視線で鈴音に抗議した。
「私そんなつもりはなかったんですよぉ!」
 鈴音が助けを求めるようにレフニーをみたが、彼女とその相棒ケセランも首を振るのだった。

「カフェに入ったよ。彼は誰かと待ち合わせでもしているのかな?」
 Robin redbreast(jb2203)は状況を電話でほのりに報告した。
「おいしそうなケーキがならんでいます!楽しみですね!」
 小鹿あけび(jc1037)はショーケースを見て興奮した様子だ。
『ケーキを食べに来たわけじゃないのよ?』
 携帯電話の向こうからほのりがツッコミを入れた。
「あけびと友達同士でケーキを選んでる風にして接近して、話しかけてもいいかな?」
 先ほどの暴走のこともあり、ロビンは依頼主に慎重に確認した。
『いいわ。彼には同年代の女子との会話を禁止しているから、もし会話するようであれば……彼を殺して!』
「了解だよ」
「ええっ!」
 ほのりの無茶な要求に即答するロビンに、あけびは大声を上げた。
「大丈夫、話しかけても答えなければ殺さないから」
 ロビンがニッコリ微笑んだのを見て、あけびは彼女が本気なのを確信した。
「おいしそう。たくさんあって、どれにしようか迷うね」
 ロビンがケーキを選ぶ彼氏に声をかけた。
「おにいさんは、ここによく来るの?おすすめのケーキはどれかな」
 彼氏と目があって、ロビンはニッコリと微笑んだ。
 彼氏は無言でショートケーキを指さした。
「そのケーキは一人で食べるの?誰かに買っていってあげるのかな」
 彼氏は何も答えない。ロビンを見つめたまま硬直した様子だ。
『彼の様子はどうかしら?』
「ええっと、会話してくれません。なんていうかロビンさんのただならぬ殺気を感じて、むしろ警戒している様子です」
 あけびは電話の向こう側のほのりに答えた。
『よかった。彼は言いつけを守ってくれているようね』
「はい、死人がでなくて本当に良かったです。あの、あたしも彼氏さんに絡んでみたいんですが、いいでしょうか?」
『彼に禁じているのは同世代の女子との会話だけだから。小学生のあけびさんなら構わないわ!』
「しょっ、小学生……あたし16歳ですけど……」
 あけびは小さな声で抗議した。
「ちっちゃくって良かったね」
 ロビンは悪意のない笑顔で言ったが、あけびはちょっと凹んだ。
「あの、すみません、そのケーキ、譲ってもらえませんか? 母の誕生日で、そのケーキを買ってあげたくて…」
 彼氏がワンホールのショートケーキを選ぼうとしたとき、あけびはそれを止めた。
「……誕生日か……」
 彼氏はひどく悩ましげな表情でつぶやいた。
「あっ、そういえば母は駅前のケーキ屋さんのケーキが好きでした!そっちで買いますね!」
 彼氏の表情を見て、あけびはすぐさま引き下がり、ロビンとともに彼氏より先に店を出た。
『なにか会話してわかったかしら?』
「いえ、会話はできませんでした。でも彼氏さんは、誰か大切な人のためにケーキを買ったんじゃないでしょうか?」
『大事な人……私以外にそんな人が?』
 ロビンとあけびは店から出た彼氏を再び追った。

 ファーフナー(jb7826は飛行スキルを使い、ショッピングセンターへ先回りした。
 向坂 玲治(ja6214)は道中の様子を伺いつつ、慎重に後をつけ、ショッピングセンターに到着する。
「花屋の店員に、彼が何の目的で誰に贈るのか、世間話がてら聞き出してほしいと伝えている」
 ファーフナーは先回りして準備した状況を報告した。
「店員さんは若い女性のようだな。うまくやってくれるといいんだが」
 玲治は物陰から様子を窺いつつ、鋭敏聴覚で店員との会話を聞く。
『ファーフナーさんちょっとお願いが』
 ほのりから連絡が入った。
「なんだ?手短に頼む」
 ファーフナーも蜃気楼で姿を消し、近くで話に聞き耳をたてる体勢に入っていた。
『もし彼氏が花屋の娘と会話したら殺して!』
「人混みに紛れて暗殺するのは容易だが、少し騒ぎになるかもしれん。いいか?」
「いいわけないだろ!」
 玲治が思い切りツッコミを入れる。
「冗談だ」
「この人が言うと冗談に聞こえないんだよなあ……」
 彼氏は花屋と接触した。
「会話はしていないようだな。唇も動いていない」
『ならばセーフね。殺さなくていいわ』
「彼は花束を買ったようだ。花の種類は詳しくないが、きれいな白い花だ」
『さすが私の彼氏ね。私が好きな色よ。その花を誰に渡すのかわからないかしら』
 ファーフナーの報告にほのりは満足気だ。
「花屋さんが当てにならなかった以上、直接聞くしかないな!」
 玲治は偶然を装って彼氏に接触を試みる。
 前が見えないほどのダンボールを抱え、彼氏とぶつかる作戦だ。
 ファーフナーが携帯で誘導して、うまく彼氏とぶつかる事ができた。
「わりぃ! 大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
 彼氏は身を挺して花束をかばったようだ
「ほんとにすまないな! その花束大事なものなんだろ? 誰かへのプレゼントか?」
「ああ、大事な人への贈り物だ」
 彼氏は男の玲治に対しては気さくに言葉を返すようだ。
「大事な人?彼女か?」
 彼氏は言葉を返さず、口の端に少し笑みを浮かべただけだった。
 彼氏は花を持って何処へ向かうか。確信を得ないまま二人は尾行を続けた。

「あー俺、俺!俺だよ、俺!ラファルちゃんだ!」
 彼氏の寮に潜入したラファル A ユーティライネン(jb4620)はほのりに連絡を入れた。
『首尾はいかがですの?その寮は女人禁制のはずだけど』
 電話の向こうからほのりの声が聞こえる。
「もちろん俺式光学迷彩で誰にも見つからずに部屋の前まで来たぜ!さてと、ほのりちゃんが鍵をもっていなかったから、俺の解錠スキル(物理)で潜入するぜ!」
『それって犯罪なんじゃ?』
「大丈夫だ!問題ない!」
 ラファルはおもいっきりドアを蹴破った!
「なんだこれ」
 四畳半の広さの部屋に、二段ベッドが二台だけがあって、他の家具は一切なかった。
 清潔さは保たれているようだがただ寝るためだけの部屋。寒々しい印象しか受けない。
「まるで刑務所だな。二段ベッドが二台ってことはこの部屋に四人で住んでいるってことだ。つまり彼氏は四人存在して、ここで暮らしている?」
『じゃあ四人は分身したわけでも、私達が見間違えたわけでもない。元々四人いたってことかしら』
「彼氏の正体を知る手がかりは何もありそうに無いな。逆になにもないのが手がかりなのかもしれないが」
『どういうことです?』
「こんな何もないところで生きられるのは人間じゃないってことさ。つまり、彼氏は……天魔だったんだよ!」
『な、なんですってー!?』
「部屋はそいつの中身を表すものだ。とすると、俺はこんな空っぽな人間を見たことないね!」
『そんなことあるはずない……』
 電話は唐突に切られた。ほのりは動揺しているようだ。
「そういえばあそこの捜索はしてなかったな。一応礼儀として改めておくか」
 ラファルが探したのはベッドの下だった。
 男が薄い本的な何かを隠す場所は決まっている。この空っぽな男にもそんな趣味があればの話だが。
「……こ、これは!」

 フェイン・ティアラ(jb3994)は陰陽の翼で飛行して、ヒリュウ朱桜とともに尾行をした。
「尾行だいさくせーん!朱桜いいー?あの人をこっそりつけるかくれんぼだよー」
 フェインと朱桜は探偵ごっこを楽しむように彼氏を追跡する。
 とはいえ、尾行は完璧で彼に悟られる様子もなく、目的地の動物園に辿り着いた。
 フェインはライオンを見に来たフリをして、彼氏に近づく。
「ライオンだー!すごーい、格好いいー!おにーさんもライオン見に来たのー?格好いいよねー!」
 彼氏はフェインを一瞥したあと、またライオンに視線を戻した。
「そうだな、カッコイイ。オレはライオンを尊敬している。気高く、孤高で、強い。オレは戦いの前に必ずここに来て、ライオンと対話する。オレはこいつとよく似た相手と向かい合わなければならない」
「ライオンみたいな相手?」
 彼氏は頷いてから何も言わなかった。
 朱桜が彼氏に甘えるように擦り寄った。
 彼氏は穏やかな表情で朱桜をなでる。
「おにーさんはライオンだけ?この後も何か見るのー?」
「オレは、今から死地に赴く」
 彼氏はフェインに軽く手を振って、動物園の出口に向かった。
 フェインは状況をほのりに報告する。
『何かわかりましたの?』
「強い相手と向かい合うって言ってたよー。戦いの前に、ライオンをみてテンションをあげてたのかなー?」
『戦い?撃退士の仕事でもはいっていたかしら?』
「おねーちゃんの彼氏ってやさしい人なんだろうなー。朱桜がなついていたよー」
『そうね、底がみえないほどにやさしいわ』
「朱桜が甘咬みして、頭から出血してたけど怒ってなかったしねー!」
『それって甘咬みなのかしら?』
「まだ移動するみたいだし、追跡を続けるねー!」

 四人の彼氏は、最終的に全員が人気のないの港の倉庫に集結した。
 撃退士たちも全員が集合し、倉庫の外から四人の彼氏の様子を伺った。
「四人で集まって何をするつもりかしら?」
 ほのりは心配そうな表情を見せる。
「やっぱり戦うんじゃないかなー?」
 フェインが答える。
 彼氏四人は向かい合い、今にもバトルロイヤルが始まりそうだ。
「ケーキと花束……なににつかうんでしょうか?」
 鈴音が疑問を口にする。
「そーいえばほのりさんに確認したいのですが、近々、お二人の何か記念日とか、ないのです?」
 レフニーは少し前から気になっていたことを尋ねた。
「記念日? そういえば……今日は私の誕生日だったわね?」
「たしかそうでしたね」
 ほのりと友達が顔を見合わせる。
「え?」
「クックック……今すべてのつじつまが合った!行くぞみんな!」
 ラファルは突然に彼氏の前に飛び出していった
 わけがわからないまま他のメンツも彼氏の前に姿を表す形になる。
「お前らやめるんだ!兄弟で争ってなにになるっていうんだ?」
「兄弟!?ラファルさん、どういうことですの?」
 ラファルの意外な言葉をほのりは確認する。
「こいつらは四つ子だったんだよ!」
「「「「な、なんだってーー!?」」」」
「このラファル様を出し抜こうなんて100万年早いってもんさ。こいつらのベッドの下にあったアルバム、これが証拠だ!」
 アルバムを開くとそこには四人同じ顔の子供が並んで写っている写真があった。
「お前、ついさっきまで彼氏が天魔説を声高に主張してたよな?」
 玲治がつっこむが、ラファルは気にしない。
「ほのり嬢は四つ子と知らずに付き合っていたというわけだな」
 ファーフナーも事実に気づいていた様子だった。
「四人は浮気とかじゃなくて、別々に誕生日のサプライズを準備してんだ!んで、誰が代表してプレゼントを渡すかでもめていたんだよ!」
 ラファルは得意な表情で推理を展開した。
「すまない」
「だが俺達はみな」
「ほのりのことが好きだ」
「愛している」
 四人の彼氏たちは話し始める。
「しかし俺達は、誰か一人選ばれなければならない」
「そうしなければ必ず破綻する」
「今日のほのりの誕生日に」
「誰か一人だけ選ばれなければならなかった」
 四人とも同じ深刻な表情を浮かべていた。
「選んでくれ」
「誰か一人を」
「この中から」
「頼む」
「……そんなの、無理に決まってるじゃない!私はあなたが好き。私のためだけに尽くしてくれるあなたたちが全員大好きなの!」
 ほのりは叫ぶように言った。
「「「「ほのり!」」」」
 四人の彼氏は、ほのりを抱きしめた。
「えーっと、ほのりさんは四人とも選んだってことでしょうか?」
 鈴音は引きつった笑みで確認する。
「うん、ハーレムだねー」
 フェインが無邪気に笑う。
「ちょっとうらやま……いえ、よかったですね!」
 レフニーは二人を祝福する。
「それでは誕生日パーティーをしませんか!?先ほどのカフェなんかいかがでしょうか!」
「あけびはケーキ食べれなかったことを根に持っていたんだね」
 あけびの提案にロビンはつっこんだ。

 カフェはほぼ貸し切りのような状況で、ほのりの誕生日を祝った。
「大団円って感じだな。でも一つだけ疑問があるんだよな。なぜ今までうまくやっていた四人の彼氏が急に争う事になったのか?誰かが仕組んだんじゃないかってな」
 玲治は、頭にあった疑問をほのりの友達にぶつけた。
「ゲームでハーレムエンディングってあるじゃないですか。私あれが大っ嫌いなんですよね。あれって本当にハッピーエンドなんでしょうか?」
「ふうん、ならぶち壊すか?」
「いいえ。今はやめておきます。今はほのりさんの幸せそうな顔を見れて満足です」
 ほのりの友達は口の端っこに笑みを浮かべているようだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 崩れずの光翼・向坂 玲治(ja6214)
 ペンギン帽子の・ラファル A ユーティライネン(jb4620)
 楽しい時間を奏でる・小鹿 あけび(jc1037)
重体: −
面白かった!:7人

闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
桜花の護り・
フェイン・ティアラ(jb3994)

卒業 男 バハムートテイマー
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
楽しい時間を奏でる・
小鹿 あけび(jc1037)

大学部1年158組 女 鬼道忍軍