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マスター:守崎 志野
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2016/06/06


みんなの思い出



オープニング


 そこは天魔や覚醒者絡みの事件や犯罪被害者の救済・支援を目的とした団体に所属する組織が運営する施設だった。
広い敷地内には家や財産を失った人の為の生活支援を行う建物の他、児童養護施設や周囲から排斥や虐待を受けている人の為のシェルター、更に小さいとはいえ診療所まで様々な設備が揃えられている。汚れ一つ無い淡いベージュの壁や月明かりに柔らかく影を落とす木々は傷付き疲れた人々を優しく守るような雰囲気を醸し出す。
 事件被害者が増え続け、一方で支援は後手に回らざるを得ない昨今では珍しい程充実した施設だ。実際ここから新しい人生を得た人も多いという。
 ただ、時折こんな声が聞こえることもある。
『あの人見かけなくなったけど、どうしたんだろうね?』
 だが、そんな声はすぐに流され忘れられていく。
 増え続ける天魔や犯罪の被害。誰もが明日被害者に名前を連ねてもおかしくない、そんな世の中で。


 高い場所にある小さな明かり取りの窓には格子がはまり、まるで牢獄……いや、倉庫と言った方が正確かもしれない。中には六、七才から十二、三才といった年齢の子供達が七人、腰縄で繋がれた状態で座り込んでいた。一様にのっぺりした白い繋ぎ服を着せられ、死んだように虚ろな目。泣き声一つあげるわけでなく、耳に開けられた小さな穴には、売買される家畜に付けるような小さなタグが付けられている。ここにいる子供達はまさに『それ』だった。
 人を家畜や資源として扱うのは何も天魔の専売特許ではない。人間の社会では古くから当たり前のように行われてきたことであり、人身売買が犯罪とされるようになった歴史はむしろ浅い。
 いなくなっても誰も気にしない存在、むしろいなくなった方が助かる存在。
 彼らは閉鎖された場所で人らしい感情や知性を暴力という形で否定され続け、ただ命令に従う物体であることのみが許される状態に置かれ続け、そして物として売られていく。
 微かな月明かりに照らされて見えるのは、全ての希望を拒絶し否定するような金属製の扉と厚い壁……
 ふと、その壁から白い物が生えた……いや。
 指から手首、そしてここにいる年嵩の子と同じくらいの少年がその場に姿を現した。栗色の髪と大きな緑の目はどちらかというと可愛い感じだが、背中に白いコウモリの羽根が生えている。壁を透過したことといい、天魔以外の何物でもない。
 だが、子供達は怖がるとか悲鳴を上げるとかいった反応を一切しない。のろのろと天魔に視線を向けたものの、それだけだ。
「こんばんは」
 天魔はまるで隣人にでも会ったような気軽さで子供達に話しかけた。
「ねえ、ここから出て行かないの?」
 だが、子供達は反応しない。
 扉は自分達では開けられない。それに、出たとしたとしてもすぐに見つかって罰を受けるだけではないか。
「全然、心配ないよ」
 腰縄に掛けられた天魔の指が少し動くと縄は簡単に切れた。
「思い出して。みんなはその気になれば、あんな奴らなんか簡単にやっつけられる事を」
 
 やがて、扉が壊れ倒れる音が辺りに響き渡った。


「きゃは、やっちゃえ!」
 制止しようとした警備員や施設職員に子供達は嬉々として飛びかかった。足を蹴りつけ、倒れたところを踏みつける。
「やだー、こいつ汚い!」
 奪った警棒を振り下ろし、首を絞めながら楽しそうに笑う子もいれば黙々と踏みつける子もいる。
 元々人を傷つけることに禁忌を持てず、それ故に要らないとされ矯正の名目で抑圧された子供達。
「ねぇ、そいつら後で良くない?」
 年嵩の女の子が言った。
「あいつが逃げちゃったら元も子もないよ」
 それもそうだねと、子供達は警備員や施設から手に入れた警棒や刃物を手に、上に君臨する存在を求めて進んでいく。
 権力者をその座から引きずり下ろし、思う存分自由に遊ぶ為に。


 同じ頃。
「どういうことだ……長内の奴、天使が恐ろしいなら悪魔と手を組ばいいと言っておきながら!」
 そこは同じ建物内ながら子供達がいるのとは似ても似つかない部屋だった。一見地味だが、品のある調度品で整えられている。
 重厚な机の前で唸っている老境に差し掛かった男の身なりもそれに相応しいものだった。
「それを今更……いや、そもそもこれは!」
 机の上に積まれた書類の束が床にたたきつけられる。
 天魔被害者から財産を巻き上げ、その子供を確保することで隠蔽に協力して都合の悪い子供は闇に葬っていた施設の摘発。その事件に関する調査書。
「あの小娘が現れたというのに、おまえは何をしていた!?役立たずめ!」
「心外ですわ」
 机を挟んで立っていた若い女性は穏やかに男の言葉を遮った。
「確かにそう言ったのは長内ですが、それを選んだのはあなたご自身の筈。それに」
 女性は微笑んだ。それは清楚で控えめな、淑女の笑み……だが。
「先に契約に反したのはあの女性、そしてあなたではありませんか?」
「……!」
「最初にこう申し上げた筈ですよ。『勝手な横流しをしたりする事は許さない』と」
「だ……だが、あの子達は要らないだろう!ゲートに送っても魂など取れないし、人としても……」
「あなたがそれを決めると言うのですか?身の程知らずな」
 その瞬間、男は改めて思い出した。目の前の女は人の姿を装っているが人間ではない。悪魔だ。そのたおやかな腕は男など容易く殺す。
「何より、あの女性は使徒に始末されたのではなく、人間に摘発されたのですよ。この意味がおわかりですか?」
 と、下の階から足音と怒号、重い物が倒れるような音がした。
「来たようですね」


 悪魔が姿を消した部屋で、男は悪魔とその仲介をした人物をひとしきり罵ったが、それよりも目の前の事だ。
「生まれ損ないの餓鬼共が……」
 その言葉が、ふと男の脳裏に過去の断片をよぎらせた。
『子供一人に寄って集って、悪魔にも劣る振る舞いを』
 それはまだ天魔の実在がほとんど知られていなかった時代、男達に踏みにじられてボロ布のようになった少女を腕に抱えた天使が放った言葉。
 その姿はまさに天の御遣いそのもの。穏やかにすら見える碧玉の目は暴力に酔っていた男達すら圧倒するものがあった。
 男は恐怖に駆られてその場から逃げ出した。それから何日、いつ来るかわからない裁きの手に怯える日々があっただろうか。
 そう、男にもかつては自分の所業を怖れ、眠れぬ夜を過ごした時期もあったのだ。けれど。
「私は私なりに精一杯やってきたではないか」
 確かにここに収容した人間の一部を売ったのは法に触れるかもしれない。しかし、それらは生かしておいても価値がないどころか害になるような連中だ。それに、得た利益は生きる価値のある人間を救ってきたのだ。綺麗事を並べ立てながら底辺の被害者を見もしない奴らと自分は違う。
「悪魔さえいなければ、あんな餓鬼共など……」
 だが、警察を呼べば当然事情を追求されるだろう。子供達の口から事の次第が明らかになれば男の社会的生命が失われるかもしれない。
「ゴミは片付ければいい。人類の敵として、な」


 子供達を葬り去り、何事も無かったことになる。それが男が望む結末。
 男を葬り、自由になる。それは子供達が望む結末。
 誰が望む結末になるのか、まだ、誰も知らない。


リプレイ本文


「な、何だ?!何しに戻ってきた?!」
 扉の向こうから激しく何かを叩き付ける音が響く中、窓を透過したユウ(jb5639)を見た男の声が一際大きく響いた。
「私は撃退士です、安心してください。通報者はあなたですね?」
 落ち着かせるように穏やかな笑みを男に向けつつ、ユウはふと感じていた違和感を口にした。
「襲って来たのは本当に天魔なのですか?」
「当然だ。あれが普通の子供に出来ることか?!」
 叩き付ける音が響く度、バリケードが大きく揺れる。確かに普通の子供に出来ることでは無いが、天魔なら今頃さっさと壁を透過して目的を達し、飛び去っているのが当然だろう。ユウが透過出来たのだから阻霊符は使われていない筈だ。
「どうして物質透過を使わないのでしょうか?天魔ならそうする筈なのに」
「そんな事など知らん。とにかく撃退士ならあれを何とかしろ!」
「大丈夫です。仲間もこちらに向かっていますから」
 それに呼応するように足音が響いてきた。

 ユウ以外の五人は階段を駆け上がっていた。
 色々不審のある通報でもいつまで保つかわからないと言われた以上は悠長な事も言っていられない。反射的に最も早い移動手段を選んでいた。
「天魔の襲撃にしては死人が少ないな?」
 視界の隅に倒れた警備員や職員を映しながらジョン・ドゥ(jb9083)は思った。呻き声を上げたり動いているのが気にならない訳では無いが、今は優先すべきことがある。
「おかしな話だ……」
 ファーフナー(jb7826)が引っかかっているのは通報者の方だった。天魔の物質透過能力は一般にもそれなりに知られている。本当に天魔だと思っているならバリケードなど築く前に通報しそうなものだ。
 つまり、通報者が意図的に嘘をついた可能性がある。わざわざそんな嘘をつく理由が何かあるのだろうか?
「バリケードで防げてるなら、随分小者っぽいね……」
 鈴木悠司(ja0226)がどこか面倒そうに呟いた。天魔でも下級の存在なら能力を持っていても使えない事もある。
 力の誇示にも糧にもならない雑魚ならさっさと片付けるに限る。わざわざ面倒な事をつつく気にもならない。

 もう少しで目的の3階というところで上に人影が見えた。七才くらいの男の子と女の子だ。似合わない繋ぎ服を着ている以外普通の子供に見えるが、その手にはそれぞれ警棒が握られている。
「天魔……?ただのガキに見えるけど?」
 だが、振り上げた警棒は歪んで血がこびり付いていた。
「いい態度じゃん。だったらこっちもそのつもりでやってやろうじゃねーの」
 元々きな臭い依頼と思っていたこともあり、一応天魔?に話が通じるようなら自制を求めてみるつもりだった神無月茜(jc2230)だが、向こうが仕掛けてくるなら是非も無い。
「あたいは神無月茜だ。子供だからって手加減せん。覚悟しろ」
 横殴りに振った金属バットから鈍い音が響き、意外な程簡単に女の子は吹っ飛んで壁に激突した。いち早くこちらに背を向けて駆けだした男の子には悠司が剣を手に迫る。
「待て!」
 その背にファーフナーの制止が飛ぶ。一瞬引いたのか、悠司の剣は男の子の背を切り裂いたが致命傷には至っていない。
「待ちなさい!」
 今度はユウの声が響いた。階段から少し離れた位置のエレベーターの扉が閉まっていく。直前に、やはり白い繋ぎ服を着た子供達がちらりと見えた。
 彼らが何であるにせよ、ここで逃げられてしまえば誰にとっても碌な結果にならないだろう。
 ユウは壁を透過すると降りていくエレベーターの上に降り立ち、そこも透過して中に降りた。そこにいたのは同じような服を着た五人の子供達。
「逃がしませんよ」
 先程までの優しげな姿とは打って変わった悪魔が子供達を見据えた。


 皆の目が子供達に向く中、逢見仙也(jc1616)は扉とバリケードを透過して男の前に現れた。
「何だ、おまえは?あの小娘の仲間か?」
 仮にも助けに来た撃退士をあの小娘呼ばわりとは随分な態度だが、仙也はしれっと答えた。
「念には念を入れての護衛ですよ。何しろ相手は『天魔』ですからね」
 いつ壁や扉を透過して入ってくるかわからないでしょうといいながら相手の反応を見る。
 男は不満そうな表情をしたが、それきり何も言わなかった。
 通報の段階からどこか胡散臭い印象だったが、実際に来てみれば胡散臭いを通り越して裏がありそうな感じだ。撃退士を呼んだのも、単に子供達が人間離れした力を持っているからというだけではなさそうだと思える。
「おい、何をしている?!」
 机の引き出しとか棚のファイルとかを漁りだした仙也を、男は不機嫌割り増しの声で咎めた。
「天魔がどうしてここを狙ったのかわかるかと思って」
「下らんことを。天魔は人間を襲うものだろう」
 時代遅れ気味とは言え、そう言う認識の人間も未だにいるだろう。だが、そう言う割には怯えた様子もない。ユウや仙也の物質透過を見ているにも関わらずだ。
 残念ながらめぼしい資料は見つからない。『当事者』の証言を併せて検証するしかなさそうだ。


 同じ3階にある部屋を無断で借り、重傷を負った子供には話が出来る程度にライトヒールを施した後に撃退士達は七人の子供をそこに集めた。
 依頼内容には反するが、その依頼自体に疑惑が生じているのだ。それに。
「 依頼人だって全滅させて助けてくれとは言ったが即全滅させろ、とは言って無いからなぁ」
 現場判断の調査って奴さとジョンは言った。実際、依頼人の安全は一応確保している。透過が使えないなら窓や扉に気をつけていれば逃げられることは無いだろうし、とにかく不審な点が多すぎる。
「さあて、知ってることを喋ってもらおうか」
 茜が威圧するように金属バットをドンと床を突く。子供達は表情を消した目で黙り込んでいる。
 茜自身、脅しが必ずしも有効とは思わないが優しく聞くとか駆け引きとかは自分の柄でも役割でも無い。
「何故あの男を狙った?」
 ファーフナーは子供達の耳に付けられたタグに目をやり、しかしそれには触れず話を続ける。
「おまえ達の力……アウル覚醒者だろう?」
 その言葉に唇を噛む子もいればキョトンとする子もいる。
「大人しく話すなら悪いようにはしない」
 子供達の目に初めて惑いの色が浮かぶ。ファーフナーは優しさとは縁遠い見かけだが、茜や悠司を止めたのが彼だったことを思い、そして何を話せば良いのか迷っている表情だ。
「最初からあの男を狙ってここに来たのか?」
 その問いに、一番年嵩の少女が首を横に振った。
「違う。あたしはここに引き取られて来ただけだった……」
 子供達の境遇は、程度の差はあっても似たり寄ったりだった。
 親の責任放棄、天魔被害、謂われの無い迫害、或いは生活苦。頼れるものは覚醒した力だけ。
 どれも今の世ではありふれた、悲劇ですら無い話。
 捨てるように、或いは買い取られるように。人では無く物としてここに来た。いずれ行く先は良くてどこかの奴隷か、移植用の臓器か。
「それでも今までは諦めて大人しくしていた訳か。それが何故、今になって?」
 子供達は馬鹿ではない。かといって復讐の機会をうかがって潜伏する程強い意志を持っていたようにも見えない。
 何か、事を起こすきっかけがあったのでは無いか。
「……悪魔が」
 少女がぽつりと言った。


「何だ、これは?!話が違う?!」
 もう安全だからという仙也の言葉に言いくるめられてバリケードを解いた男は撃退士達に挟まれるようにして立っている子供達を見て怒声を上げた。
「話が違うってのはこっちの台詞だぜ」
「あの子達は人間でした。そして、あなたは以前からここに来た人の一部を売っていたと証言しています」
 呆れたようなジョンの言葉に、責めるでも哀れむでも無いユウの言葉。
「やったのか、やってないのか。はっきりしろ。あたしは頭わりぃからよ」
 駄目押しとばかりに茜がバリケードに使われていた机に拳を叩き付ける。
「人間の子供とわかって殺したのでは、撃退士の立場というものに関わるのでな」
 淡々と言うファーフナー。彼らの前に男はとりあえず高圧的に出る無駄を悟ったようだ。少なくとも馬鹿ではない。
「仕方がなかったんだ。私は悪魔に脅されていた……」
 まだこの施設が小さなものだった時に悪魔が現れ、怯える男に取引を持ちかけた。自分のいう条件を承知するなら男がやろうとしている事業を手助けする、人間からも天魔からも守ってやろうと。
 その条件がこの施設に集まる人間をいくらかずつ悪魔に、そして悪魔が指示するルートに差し出すこと。
 裏切らなければ裏切らないと悪魔は言った。
 それがどんな罪であるのかわからない訳では無い。だが、その時の男には自分と救うべき人々を守る為に承知するしか無かった。
 そして重ねた罪の重さと救い守るべき人々への責任の重さは、その事実を仕方のないものから犠牲を払ってでも秘密にしなければならないものへと変えていった。
 子供達を天魔と言ったのはそういえば撃退士は討伐するだろうと思ったからだ。仮に子供達が人間とわかったとしても、人殺しという負い目を背負わせておけば強くは出られまい。あわよくば共犯に引きずり込んでおけばこの先何かと役立つのではないかという目論みもあった。
「その悪魔というのはどんな奴だ?」
 その問いに、男はユウの方を見た。
「その娘と同じ長い黒髪の、若い女の姿をしていた」
 ただ、最近は会っていない。売買のルートがあるだけだというその言葉を確かめる術はなかった。


「どう思う?」
 男の話に一応の筋は通っている。子供達の話とも合致する点がある。二体の悪魔がいるのは気になるが、矛盾という程でもない。だが。
 あまりにも出来すぎた話だ。男の話も子供達の話も、必ずしも嘘とは言えないが、まるで予め用意されていた脚本を読んでいるように。
「いいと思うんだよな、俺は」
 仙也は窓の外を見た。そこには他に寄る辺の無い人々が大勢生活している。
 男は多分罪に問われるだろう。だが、悪魔に脅され、それでも弱い立場の人間を守ろうとしたのなら同情の余地があると見なされるだろう。事業を引き継ごうという者や支援しようとする者も現れる筈だ。
 隠された事実があったとしても、それは施設に縋るしかない人々を路頭に迷わせてまで暴くべきものだろうか?
 それに、自分達に出来るのはここまでだ。悪魔が関わっているにせよ、直接には人間の手による犯罪である以上、警察の管轄になる。
 子供達はおそらく、然るべき更生施設に入る事になるだろう。
「どのみち、いずれは暴かれるだろうがな」
 ファーフナーはむしろそれを望んでいた。偽りの楽園の中で腐りきっていく前に。やり直すなら早い方がいい。
 そんなファーフナーをジョンは複雑な目で見ていた。
 子供達の生存を最も明確に主張したのはファーフナーだ。だが、これが子供では無く異形の姿をしていたとしたら?
 その心がどんなに人と近くても即始末をしただろうか?
 敵を選んで殺するなんて、そんなに我々は上等なのだろうか?
 その思いは言葉にならないが、もし届いたとしたらこんな答えが返ってきたかもしれない。
 上等かどうかは知らない、ただ変われるかどうか試しもせずに可能性の芽を摘みたくないのだと。

 皆から離れていた悠司にも話は聞こえてくる。彼は子供達が何であろうと全滅させれば良いと思っていた。
 別に子供達に含むところがあるわけでは無い。ただ、失ったものを取り返すことすら出来ないこの世界を、自分も含めて消し去るだけの力を手にしたい。子供達はただその為の贄だ……が。
 現実には、子供達を生かそうとする意志を押しのける力も無く。
 自分自身さえ消し去れず、力への渇仰にしがみつくことにしか存在を見いだせない。そんな自分は。
「……負け犬だな」
  呟きは誰の耳に届くことも無く、風に溶けて消えていった。


 それは誰かが望んだ結末か、或いは誰も望まなかった結末か。
 真実という名の結末は見えず、事実と思惑の断片は闇に踊る。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: されど、朝は来る・ファーフナー(jb7826)
重体: −
面白かった!:6人

撃退士・
鈴木悠司(ja0226)

大学部9年3組 男 阿修羅
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
大切な思い出を紡ぐ・
ジョン・ドゥ(jb9083)

卒業 男 陰陽師
童の一種・
逢見仙也(jc1616)

卒業 男 ディバインナイト
魔法(物理)少女★あかね・
神無月茜(jc2230)

高等部3年29組 女 阿修羅