温泉リゾート(プール付き)へやってきた一同。
入口前で砂原・ジェンティアン・竜胆(
jb7192)が震えていた。
「来る。通りすがりの荒ぶる鳥類が来るに違いない」
水場はヤツラのフィールドなのだ。
「今度こそガードするんだリーゼ!(必死」
「プールは淡水だと思うが」
「一体いつから淡水プールならペンギンはいないと錯覚していた…水族館は淡水飼育も多いんだよ(ふるえ」
敵を知らねばこの先生きのこれない。
詳しいなさすがジェンティアンくわしい。
それはさておき。
リーゼがエラを紹介。どうも、うちのばっちゃです。
「へぇ…。あ、それはそうとリーゼ、入場券買ってきて」
「分かった」
パシリかな?
横目で彼を見送り、ジェンティアンは改めてエラへ挨拶。
「初めましてレディ。リーゼの親友(←)のジェンティアンです」
言いながら、創造スキルで青紫の竜胆を1輪作り贈る。
「おやまあ、紳士だねぇ。ありがとうよ。それにしても、あの子に『親友』と言ってくれる相手が出来たのは喜ばしいじゃないか」
「リーゼがぼっちか心配してるんじゃと内心思ったから」
出てる、声に出てるよ!
「ま、嘘ではないよ。ちゃんとそう思ってる…けど本人には言ってやらない(ぎりぃ」
「素直なのか天邪鬼なのかよく分からない紳士だねぇ…。でも、変な所をこじらせてる辺りがリーゼとよく似てるさね」
どこか納得した様子で、ゆったりと笑うエラ。
そこへ佐藤 としお(
ja2489)もやって来る。
「初めまして佐藤としおです。占いがお得意だとお聞きしています。もし良かったら僕の今後のラーメンとの相性を占って頂けませんか?」
「そこそこ長く生きてきたけど、ラーメンを占ってくれと言われたのは初めてだよ」
たまげたなぁ。
「でも面白そうだ。早速視てみようかね」
そう言ってエラは荷物から取り出した水晶玉をとしおに抱えさせつつ、じーっと球体の中を覗き込む。
「津々浦々、色んなスープを啜る姿が視えるよ。でも高血圧には気を付けた方が良いねぇ。それと鼻の穴」
「鼻の穴!?」
「まあ占いなんてのは、解釈次第でどうとでも当て嵌まるように言うのが作法みたいな所があるからねぇ。起こる前からあれこれ勘繰るよりも、結果が出た後で『当たった、外れた』を楽しむ方がオススメだよ」
災厄に備えるのも大切ではあるけどね、とオマケのように付け加えつつ。
一方、そんなやり取りを後ろで眺めていた米田 一機(
jb7387)。
「いやー、なんか皆結構見知ったかのような輪に飛び込んでくこのアウェー感…半端ねぇな!!」
先日までの騒ぎについては報告書や伝聞でしか知らない自分。
「それにしても…故人がねぇ」
黄泉返り。
あり得るはずがない、あって良いはずがない
(そう考えるのは戦場に充てられすぎたからかな)
しかし、そうなると今いるのは…オリジナルじゃない。と思われる。
なら…なぜ。
「ふむ、色々と気になることもあるが…」
隣でディザイア・シーカー(
jb5989)が、顎に手を当てて考えていた。
「リーゼの育て親であるエラさんのお誘いだ、無下にも出来ん」
せっかく生き返ったのだし、それにこういう所でゆっくりした後なら聞けることもあるやもしれない。
「何より! 俺もお嬢と遊びたいので!!(キリリ」
むしろ既に遊んでいるので!!(キリリッ
いつの間にか水着に着替えて入口を潜っていたディザイア。同じく水着姿のエリスをプールに浮かべ、一緒に漂いながらデジカメのシャッター乱打。
「む、もうデータが足りなく…(もう1個」
その時、ディザイアの背後に人影が。
拳銃を持ったRehni Nam(
ja5283)。
ガウンガウンガウンガウンッ!!
雷のような銃声が轟き、ディザイアはミンチになった。
水着着用で施設内を移動するエラ達。
そんな一同の様子を、柱の裏からじーっと窺う謎の影――
「オーマに会えるとは…(もじもじそわそわ」
樒 和紗(
jb6970)。青ビキニの上から、以前リーゼに選んで貰った白いパーカーを羽織っている。
遠巻きにエラをストーキンg…見つめ続けた後、意を決し、
「こ、これ良ければ貰って下さい!(スライディングスケブ贈呈」
「おやおや、元気な子だねぇ」
差し出されたスケッチブックを受け取る。
ページを捲ると、母の日と父の日、そして敬老の日の贈り物として描きためた、花々や日本の風景画の数々。
「綺麗な絵だ。自分で描いたのかい?」
「は、はい…」
もじもじ。
「オーマ…あ。そう呼んでも構いませんか?(恐る恐る」
「構わないよ」
「貴女はリーゼの父で母で、そして優しい祖母で、オーマが育ててくれたから俺はリーゼと会えました。リーゼと出逢えて俺は変われたので…ずっと感謝の気持ちを贈りたいと思っていたのです」
本来は墓に供えるつもりだったが…
「会えて嬉しいです」
そう言って、和紗は照れながら微笑んだ。
ちなみにここまでヘッドスライディングポーズのまま。
「ありがとうね」
シワだらけの頬に笑みを浮かべて、そっと和紗の手に触れるエラ。
「折角だ、一緒に温泉でもどうだい?」
「喜んで」
和紗はオーマと共に温泉エリアへと歩いていった。
ディザイアが再生している間にエリスを連れて温泉エリアへとやって来たレフニー。
水着は白地に藤柄のワンピース、パステルカラーのパレオ付き。
掛け湯をしつつ、まずは足湯から。
「温泉…命の洗濯です」
「あ。あっちに岩盤浴あるみたい」
「行ってみましょう!」
他にも砂風呂、蒸し風呂、水風呂、五右衛門風呂にジャグジーetc.
最後に露天の湯船で顎までじっくり。
「ふい〜…。さすが(リーゼさんの)ばっちゃが言ってただけあって、当たりですね! どの温泉も気持ち良いのです」
「でも大丈夫かしら。ディザイア置いてきちゃったけど」
湯煙殺人で2時間ドラマが始まっちゃう。
「エリスちゃんと混浴しようだなんて100年早いのです」
ミンチになったディザイア(見せられないよ!)が、元の形に戻ろうとプールサイドでうぞうぞと蠢k――ぶみっ
その上を通過するジョン・ドゥ(
jb9083)。
「何か踏んだ気がする」
まあいいか。
ここ最近、戦いモードばかりだった頭を休ませるのも含め、今日は温泉でゆっくり過ごすのだ。
だが視界にプールが映って、ふと思う。
「そういえば、たぶんプールは行った事が無い気がする」
海は行ったことがあるけど。
思い立ったが吉日。ジョンは温泉へ向かう前に、プールに入ってみる事に。
するとプール際に、一足先にとしおが立っていた。
「たまにはゆっくりするのも良いもんですね〜」
ビバ、リゾート。
身に着けているのは金色昇龍褌(強化済み)。
「こう、キュッと締まると気合いが入るな〜」
屈伸をして、手首を回し、足首もバタバタほぐして準備完了。
「さあ、突撃だー!(ひゃっはー」
「あの、お客様」
寸前、後ろから係員のお兄さんに呼び止められた。
「申し訳ありませんが衛生面や風紀的観点から、下着として着用する類の格好は御遠慮いただいております」
「なんと!?」
褌NG。
公共施設だからね仕方ないね。
タオルを巻かれて連行されるとしおを他所に、ジョンは人生初のプールにそっと入水。ざぶざぶ歩いて深い位置まで行く。
そして恐る恐る底から両脚を離しみると……
「今までは水中も透過+飛行でやってきてたけど泳げ…」
ぷかー(浮
「…た! 大丈夫だった!」
悪魔は浮くように出来ている。また一つ賢くなった。
ジョンは、うおおぉぉ!と獅子の雄叫びを上げて天を仰いだ。
「やかましいわねぇ。滅ぼそうかしらぁ」
言いながらビーチチェアから頭を起こしたのは、水着姿のエリー。
「あらぁ? 何だか見た事ある顔が居るわねぇ…?」
「…あ、エリーさん?」
そこに、皆と別れて1人でのんびり散策していた陽波 透次(
ja0280)が遭遇。
「偶然ですね」
エリーをまじまじ眺める。普段であれば女性の水着姿はどぎまぎしてしまうので苦手な透次だったが、エリーだと全く平気な模様。
ぺったんだからかな。
「今日のエリーさんはセレブですね…」
プールに浮かぶ黒うさ達をビーチチェアからゆったり見物。
「泳いだりはしないんですか?」
「もちろん泳ぐわよぉ? でも今はヒトが多すぎて億劫だから、もう少し水辺が空いてからかしらねぇ」
狙いは昼頃。ランチ目当てに他の客がフードコートへ上がるタイミングで悠々水浴び。
「今すぐ蹴散らして貸切にしてもいいけどぉ(クスクス」
「それは我慢してください」
一方、シャチボートに乗った黒うさぬいがジョンの視界を横切る。
(…水を吸って重くなったりしないのか)
たぶんシャチから落ちたら沈没不可避。
それはそれで気になるが、
「さて、そろそろ温泉に行くか」
言うほど悪さをしそうな気配も無し。ならば構う必要も無し。少し寄り道してしまったが、今日の自分の目的は温泉でゆっくり寛ぐ事。
悪魔は浮くように出来ている。次はお湯に浮かんでくるとしよう。
プールから上がって温泉エリアへ。
そこには、一足先にとしおが居た。
身に着けているのは、やはり金色昇龍褌(強化済み)。
「プールがダメなら温泉ですね!」
お風呂セット持参で準備完了。
「さあ、突撃だー!(ひあうぃーごー」
「ダメだっつてんだろボルァ!」
瞬間、係員タックル。
お祭りでも褌禁止令が出たりするからね無理もないね。
としおはバスタオルでグルグル巻きにされて連れていかれた。
それを他所に、湯船にゆっくり浸かるジョン。戦いモードだった脳もリフレッシュ。
だが思考に余裕が出来ると、ついつい別の考えが働き出すものだ。
――なぜ皆は、ああも敵方と…エリーと話をしたがるのか。
自分は戦う事しか出来ず、敵としたものは殺すことしか基本考えない、考えられない。故に、皆のように対話するという思考が理解出来ない。
という事に気付く。
(む…。この疑問はどう形容すれば良いのか…)
――何故、普通に仲良くしようと思えるのか。
だがその思いを具体的には自覚出来ぬまま、ジョンは自らの心に降りてきた疑問を無意識に追い始める。
お湯から出て、再びプールへ。
少し遠目にエリーを観察。
丁度、ジェンティアンが彼女に声を掛けている所だった。
「お嬢さん、お茶しない☆(ナンパぽく」
「それってもちろん奢りよねぇ?(たかる」
「リーゼ、こちらのレディにリゾートドリンクを」
「(こくり)」
連れ回していたバーテンダーの有効活用。
クーラーボックスから材料を取り出し、その場でシャカシャカ。カットフルーツを添えたノンアルカクテル。
「ついでに僕のもよろしく」
「(こくり)」
追加シャカシャカ。
ジェンティアンはカクテル片手に寛ぎながら、エリーに話を振る。
「エリーちゃんって、普段何してるの?(ストローぢゅぢゅー」
「寝て起きて遊ぶの繰り返しねぇ(ぢゅぢゅー」
「なにそれうらやま」
「そうでもないわよぉ? 楽しめる遊びを見つけるのって中々大変だし〜。今の所はアナタ達がいるから退屈はしてないけどぉ(クスクス」
「ふーん…。じゃあ、エリーちゃんの創造主ってどんな奴?」
「切り込むわねぇ」
「そう?」
「まあいいけどぉ。でもワタシもそれについてはあんまり分からないのよねぇ」
自分が実体化する際、創造主の中にある情報を共有してはいたのは確かだが、その時の“アレ”は記憶に致命的な混乱を来たしていたようで、“アレ”自身の出自や目的については判然としないと言う。
「なんだか『自分探し』をしてるって感じだったわねぇ」
エラと一緒に温泉に浸かりながら、和紗が尋ねる。
「幽霊のようなものだと言う話でしたが、オーマとはこれからもずっと一緒にいられるのでしょうか?」
制限時間…のようなものはあるのか。
つまりは寿命。
「その気なら、この先もいられるだろうねぇ」
この体には魂も備わっており、普通の人間となんら変わりは無い。
「抑々どうして体を得たのでしょう?」
「『死ぬ』って事を一括りにして『不幸』だと解釈してしまう輩は多いもんさ」
しかし本来、『死』という終着点が『不幸』だとは限らない。
命あるものはいつか終わる。それ自体に是非など無い。誰しもが同じく迎えるその最期の瞬間、その意味を左右するのは『死』という結果ではなく『生』という過程。
自ら答えを見つけ己の歩んだ道に納得した者は、『幸』を抱きながら逝くだろう。
矜持も無く己の歩む道に意味を見出せなかった者は、『不幸』に怯えながら朽ちるだろう。
「あたしを再現した“アレ”は、後者の意識に引っ張られすぎたんだろうね」
ヒトの願いを具現化する特異な存在。
『不幸』を拒絶する人々と、それに手を差し伸べる“誰か”の強い願いを見て、その解決策を実行するつもりらしい。
「でもその解釈はどうだろうねぇ」
確かに親しい者との別れは酷く寂しいものだ。
だが、これは本来の摂理から外れた『生』。件の“誰か”も、こういう『生』を追い求めてきた訳ではないはずだ。
「あたしゃ何年も前に死んでる人間だ。骨もまだ墓の下に残ったままさ」
どれだけ精巧であろうと、所詮はコピーに過ぎない。
「死んだはずのババアがいつまでも居座るってのは、あまり褒められたもんじゃないと思うけどねぇ」
故に、折を見て消えようと考えている。
どのみちこの年齢だ。残ろうと思った所で、再び天寿を全うするまでそう何年も無いだろうが。
「ま、折角生き返ったのも勿体無いから、余生のオマケと思って、もうちょっとだけ孫の成長を観察させてもらおうかね」
笑うオーマ。
その言葉を噛み締めながら、和紗はかなり遠慮がちに別の頼み事を1つ。
質問ついで、という訳ではないが…
「占い(ほぼ相談)もお願いしたいのですが…」
「今日はババアの占いが大人気だねぇ。構わないよ」
「ありがとうございます…!(犬耳幻視ぴこぴこ」
「何を占って欲しいんだい?」
「実は、前々から不整脈(のような症状)で悩んでいるのです」
心拍数上昇や体温上昇、時に胸の痛み。
リーゼと接すると偶に発生するが病気ではないと言われた。
「ならば何なのでしょう…?」
「おやおや。そうかい、リーゼにねぇ」
オーマ、にんまり。
「それは恋ってやつさね(直球」
「こ…い…?」
「魚じゃないよ?」
ボケは封じていくスタイル。
「恋……すみません、ちょっと逆上せてしまったようですのでプールで冷やしてきます…」
ヨタヨタと風呂場から出ていく和紗。
オーマは上機嫌な様子でその後姿を見送った。
透次は、先日のエリーの言葉を思い返していた。
(“こういうワタシ”を作ったのは他ならぬその“周りのヒト達”…か)
“周りのヒト達”を憎んでいる…程でもなさそうだが、噂の無責任さに憤りはあるのだろうか。
(もっと深い理由もあるのかも…)
気になる事はある。根が深い問題であるなら、心配だ。
やはり、直接聞いてみるべきだろうか。
(でも、こんな時に、あまり堅い事を言うのも楽しみに水を差すよな…)
透次は周りを見渡し、どうにか楽しい話題を探そうと――
「この前『自分は自分だもの』と言ってたよね」
――と思ったらジェンティアンがズバッと聞いていた。
「でも『“こういうワタシ”を作ったのは他ならぬその“周りのヒト達”』とも言ってた。それって人の所為にして『自分』を確立しようとしてない…とも言えない?」
(砂原さん切り込むなぁ…(感嘆)
「作られた後の自分を作るのは、エリーちゃんでしょ(微笑」
対してエリーは、
「別にワタシは“ワタシと同じ顔の誰かさん”と違って、人生に迷ったりはしてないわよぉ?」
確かに“ワタシ”というきっかけを作ったのは他人だ。
だが受肉して現実に存在した瞬間から、“ワタシ”は他の誰のモノでもなく、“ワタシ”自身のモノ。
「ワタシは自分の意思で“こういうワタシ”として在る事に納得してるし、ぬいぐるみで“遊ぶ”のも好きでやってるものぉ」
「あ、そうなの?」
ジェンティアンは「へぇ〜」と頷くと共に、徐にリーゼの方を振り向き、
「だってさ、リーゼ」
おうエリーを見習えよ。
誰かに願いを託されたとしても、どうしたいか考えるのは己自身だ。但し、独りで悩めという意味ではない。
「悩むなら相談しろ(おこ」
「むぅ…(小汗」
一方、透次も思いきってエリーに尋ねる。
「“周りのヒト達”に対して憤りとかは…」
「ないわねぇ」
別に憎くてぬいぐるみで暴れている訳ではない。
それが自分の在り方なだけ。
「こんな感じでねぇ♪」
瞬間、黒うさの乗ったシャチボートがプールからザパァン!とジャンプ。
ビニール製(アウルで強化コーティング済み)の歯がギラリと光り、ジェンティアンめがけて突っ込んでくる。
「待って、何で僕狙い!?」
が、寸前でリーゼがクーラーボックスでガード(ガジガジ
ジェンティアンはその隙に立ち上がり、ウォーターガンで反撃。
「こんな危ない所にはいられない…!」
高い所へ逃げるジェンティアン。丁度あそこに巨大スライダーが!
係員のお姉さんが居る頂上に避難して一安心。
かに思われたが!
「次のお客様どうぞー(背中押し」
「え」
シュパァン!とスライダーさせられるジェンティアン。
凄まじい速度で滑り落ち、あっという間にコース中腹にあるトンネルエリアが見えてくる。
だがトンネルの屋根が邪魔で、奥が見えない。
「嫌な予感…!」
突入。
しばらくして……
スライダーの出口に、ナニカに啄ばまれて無残な姿になったジェンティアンが流れてきた(ぷかー
その様子をこっそりと見ていたジョン。
「これが対話の代償か…おそろしいな」
一方、透次はエリーとお喋り続行。
「沢山のぬいぐるみが歩いてたり、泳いでたりするのを見ていると、そういうテーマパークみたいですね。ぬいぐるみの国、みたいな。小さな子供が喜びそうです」
「本当は怖い童話シリーズみたいな感じかもしれないわよぉ?(クスクス」
「そこは演出の仕方で何とか…」
赤い液体はイチゴソースと言い張る的な。
ともあれ、見た目はファンシーなぬいぐるみ達。
「エリーさんの能力は、誰かを笑顔にするのにも向いてるかもしれませんね」
すると透次は、ふと遠い目をして黒うさ達を見やる。
「僕はぬいぐるみだけが友達だった時代があります(ぼっち的な意味で」
「急に一部のヒトのトラウマを抉りそうな話になってきたわねぇ」
「友達は自作するものだと思ってました。おかげでぬいぐるみ作りの腕は中々のものだと自負があります」
昔取った杵柄(不可抗力)。
「今度、一緒に作りませんか? ぬいぐるみ」
純粋に、友達になれれば良いなと思っての申し出。
「なんなら今から作る〜?」
そう答えて、ぬいぐるみ達をおつかいに行かせるエリー。
水着売場やロビーで布を調達。あり合わせの材料で新しくぬいぐるみを縫い始めた。
そんな2人の所に、ディザイア@再生完了がやって来る。
「よぅ、奇遇だなお嬢さん」
執事風に近づき、ワッフルにフルーツや飲み物で彩りを加えてセレブ感割増しを演出。
ぬいぐるみ作りに勤しんでいる2人を見ながら、
「楽しめてるようで何よりだな…これから、どうするつもりなんだ?」
真面目な顔で先日のやり取りを回想なう。
「“そう”作られたとの事だが、そのままでいなきゃいけないなんてことはないはずだ。お嬢の様に、他の天魔達の様に」
「その話、さっき済んだ所なのよねぇ」
「なん…だと…!?」
かなしみ。
「アナタの方こそ、今日はそのお嬢を構いに行かないのかしらぁ?」
「闇雲に追うばかりが愛じゃないからな」
今回の俺は待つ男!
「それにお嬢の方からこっちに近づいて来ている気がする(お嬢センサーぴこーん」
直後、
「あ。ブラックうさぬいが居るのです」
レフニーの声。
プールを挟んだ反対側で、エリスと一緒に歩いて来ていた。
「という事は、エリーちゃんがこの辺に?」
スイカ型ビーチボールを抱えながらキョロキョロ。
発見。
エリスにスイカを預けてドドド!とプールサイドを迂回してくるレフニー(※危ないのでプールサイドを走るのはやめましょう
エリーを捕まえて高々と掲げる。
「とったどー!」
「とられたどー?(クスクス」
瞬間、ディザイアの目が光る。
(チャンスだ!)
こっそりと磁力掌発動。
背中側に隠して掌チョイチョイッ。
すると、エリスのツインテがクイッと揺れた。
ツインテの根元には、水着に着替える際に渡しておいた金属付きの髪留め。
そうとは知らず、エリーを高い高いするレフニー。
「勢いでとったどーしましたが、何をしましょう。…とりあえず、一緒にきゃっきゃうふふと遊びませんか? お礼にディザイアさんに熨斗つけて差し上げますので」
言いながらディザイアの方を振り向…居ない。
エリスも。
そこにはスイカのビーチボールだけがぽつりと残されていた――
エリスを奪取して露天風呂へと辿り着いたディザイア。
「髪留め着けてくれって言うから何かと思ったら、こういう事だったのね」
磁力でみょんみょん。
これなら周りに気付かれずにお嬢に合図できるのだ。
「俺もお嬢と露天でゆっくりしたり髪洗ってあげたり髪拭いてあげたり髪梳いてあげたりしたいんだ!」
今回は待つ男だと言ったな、あれは嘘だ!
という訳でお嬢を座らせてツインテにシャンプーわっしゃわっしゃ。
「枝毛になったら大変だからな!」
「な、なんかこれは流石に恥ずかしいわね…」
ついでに風の揺り籠やダイヤモンドダスト、氷結晶で快適空間を演出。
だが次の瞬間、
「スイカクラーッシュ!!」
ゴシャーン!
レフニーのバックアタック。
首から上がキレイにスイカ(本物)にめり込むディザイア。
\おのれその声はレフニー…!/
「スイカ割りをしましょう」
お前スイカな!
湯船を囲んでいた岩を持ち上げて振り下ろしグシャア!
レフニーは動かなくなったディザイアをお湯に沈めてから、エリスを連れてプールへと戻っていった(※この後、割れたスイカはこっそり見ていたジョンが美味しく頂きました
追撃してきたペンギン群に必死に抵抗を試みていたジェンティアン。
ペンギンガード(リーゼ)は、エリー達のおもてなしに忙しくて役に立たず(シャチはガードしたけどな!
「こうなったらヒプノララバイで眠らせ…たいけど4羽が限界(真顔」
5匹目以降が水切りタックルでシュパァン!
囲まれてボコボコに。
「ジェンくん、君いつからペンギン以下のヒエラルキーになったの?」
そこへ通り掛かった一機@水着は黒のボクサーパンツ。
ジェンティアンは咄嗟にペンギン達に言う。
「ほら! あっち! あっちに初対面のニンゲンがいるよ!?(おう格付けしろよ」
じーっと見つめ合う一機とペンギン。
「…お手」
「(足乗せ)」
一機>ペンギン。
悔しげに浮き輪ぎりぃするジェンティアン。
「隊長だしどうせ僕より上だって知ってた」
お手のポーズがちょっとおかしいけど。
「逃げるしか(更に真顔」
ペンギンを引き連れて全速力で行進?していくジェンティアン。
それを見送りつつ、一機はリーゼを見つけて声を掛ける。
「そういやこうしてリーゼくんと話すの久しぶりな気がする…気がしない?」
「そうだろうか?」
ちょくちょく呟きで話してるしな!(メタァ
「まあいいや。良い機会だし、男子的恋バナトークとか…ってできるのかな、どうかな」
おうお前気になるヒトとかいないのかよおらぁん!
「ふむ…」
一機と一緒にプールサイドで体育座り。
「和紗が」
「お。なに、和紗が?」
「もしも和紗と俺のどちらか一方しか助からないような事態になったら、それでも2人とも助かるよう一緒に足掻こうと言っていた」
その直前には『俺の事は護らなくて良い』『リーゼは皆を優先しろ』とも。
それがずっと気になっている。
「その場合、俺は彼女を利用してしまう事にならないだろうか」
己が理想を追う為の身勝手な都合に。
「利用してるの?」
「いや」
そんなつもりは無い。
が、自分に付き合わせた結果、和紗にもしもの事があったら…と考えてしまう。本来なら和紗には関係無かったはずの危険に巻き込んでしまう可能性もある。
「んー、別に和紗は『付き合わされてる』みたいには思ってないだろうけど…」
恋バナとは。
でもこれもある意味…
「リーゼくんが和紗を意識してるって事は良くわかった。まぁ気になるなら、直接本人に言ってあげると良いよ」
納得出来ないと思ったら、和紗はハッキリそう言うだろうから。
その頃、その和紗はと言えば
「恋…これが、恋…俺が…リーゼに…(ぶくぶく」
プールの底で1人体育座りしていた。
プールにも温泉にも入れてもらえなかったとしお@バスタオル巻き。
仕方ないのでフードコートに(勝手に)ラーメン屋台を展開。
「へい、ラーメン六丁!!」
プールサイドに居るエリー、透次、一機、リーゼ、レフニー、エリスの所へ出前をお届け。
その時、プールサイドに和紗が打ち揚げられてきた。
もしかして:体育座りで溺れた。
慌ててリーゼが水から引っ張り上げる。
リーゼくん、こういう時は人工呼吸だ! by 一機
対して、黒うさが仰向け和紗のお腹をドフッとチョップ。
直後、和紗はぴゅーと水を吐いて目を覚ました。
「はっ、ここは…」
「大丈夫か」
心配して顔を覗きこむリーゼ。
「Σ!?」
瞬間、何故か再び気絶する和紗。
物陰から窺っていたジョンは、難儀そうに呟く。
「味方同士でも色々大変なんだな…」
そんな一同の元へ、湯上がりのエラが合流。
「おやおや。ロビーで休ませてあげたらどうだい」
という訳で、皆でぞろぞろ。
ソファーで占いオババ()に人生相談する一機。
恋バナ的には、リーゼの義妹となったとある女子が気になるお年頃。
でも時事的には大きな戦いの気配も近づいてきているようだし、最悪、自分にどんな事が起ころうとチームの仲間は生かして帰すつもりな訳で、その為には極力身軽でいなきゃな…なんて思っていたりもする。
なのでここは1つ、
「僕らの行く末を占ってください」
「良いともさ。と、言ってやりたい所だけどねぇ…」
それには答えられないと言うオババ。
「気持ち1つで未来なんてコロコロ変わっちまうもんだからねぇ。ババアに分かるのは、ババアが識ってる事だけさね」
「ですよねー」
結局手を伸ばすのは自分なのだから。
一方でそれを聞いていたレフニーは、
「行く末…これからの在り方ですか…」
真面目な顔でエリーを見やり、
「エリスちゃんとふたごあいどるゆにっとでびぅ、してみませんか?(れふにーP」
「それ前にも言われたわねぇ。その時はエリスが『賞味期限短そう』って答えてたけどぉ(クスクス」
「そ、そんな昔のことは覚えて無いのですー」
明後日の方向を向いてひゅーひゅー(口笛失敗
「いえ、決して忘れてたとかそんな事ではなく! ゴスロリという制限を取り払えばもっといけるかなーとか、何とか…(苦しい言い訳」
ともあれ、エリーとはもっと仲良くなりたい。
例え敵でも話が出来るなら、和解を探りたいから。
「エリーちゃんはもう温泉行きました? 良ければご一緒しませんか?」
もう一度温まりに。
「そうねぇ、じゃあちょっと行ってみようかしらぁ」
連れ立って温泉へ。
「いろいろ個人情報も教えて欲しいのです」
趣味、好物、苦手な物、エリスちゃんへの感情、ツインテ以外にして見る気はあるか、住所etc.
「今日はやけに質問される日ねぇ…。趣味は遊ぶ事、かしらねぇ」
好物はリンゴ。苦手な物はグロい物。エリスへの感情は『愛おしい程にからかい甲斐がある』的な。ツインテは固定武装。住所はネカフェ――
レフニー達がロビーへ戻ってくると、和紗が目を覚ましていた。
しかし何やら、1人隅っこで体育座りしてぶつぶつ言っている。
「もしかして俺は、リーゼに、人工呼吸などという甚大な迷惑を掛けてしまったのでは…」
ましてや、万が一それが彼のファーストキスだったりしたら、もう腹を切って詫びるしか…。
「大丈夫だ」
「!!」
背後にリーゼが立っていた。
「その前に目を覚ました」
それに意味合い的にはキスの内には入らないって意見も多いしな!
まあその話は置いといて、
「和紗。背中を任せても良いだろうか」
護らなくて良いとは言われたが、それでも和紗が危機に瀕すればやはり放ってはおけない。
だが、他の命と取捨選択できる自信もない。
だから、
「死なないでくれ」
「分かりました」
頷いて、そそくさとその場を離れる和紗。
耳には届いた。
が、今の彼女はそれどころではなかった。
他の女性陣に縋るようにオロオロ。
「…これからどうしたら良いのでしょう…」
消え入りそうな声。
手近に居た黒うさを鯖折メキメキ(ぐわー
「悩むのも青春の内よねぇ(クスクス」
そんな時、としおがある物を持って現れた。
「皆さん、風呂上りと言えば腰に手を当てて豚骨スーp…ゲフンゲフン、牛乳ですよ!」
飲めば元気出ますよ!
という訳で、みんなで腰手で牛乳ぐびぐびぷはー。
としおだけドンブリで豚骨スープぐびぐbぶふぉ!(具が咽て鼻からズビッ
それと鼻の穴。 by 占いオババ
「これもまた交渉術の1つなんだろうか…」
ジョンもぐびりと牛乳を飲み干した。
●
帰り支度を始めた一同に、透次がある提案をした。
「皆で記念に集合写真を撮るのはどうでしょうか」
写真は思い出の証としてずっと残るから。
「集合写真…僕ほんとにいいんっすか!?」
遠慮がちに燥ぐ一機。
「勿論です」
他の皆もすぐさま賛同。
そしてエリーも、
「それも悪くないわねぇ」
従業員にカメラを頼み、肩を並べる。
が、ジョンの姿が見当たらない。うっかり先に帰ってしまったのだろうか。
仕方なく、今居るメンバーだけでパシャリ。
その後、一同はいつもの様にクスクスと笑いながら飛び去るエリーと別れた。
ちなみに後日、学園ですれ違ったジョンに尋ねると「人ごみと道に迷ってしまった」という事だった。