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マスター:水音 流
シナリオ形態:シリーズ
難易度:非常に難しい
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2017/05/08


みんなの思い出



オープニング

 ――コレハ…チガウ……

 青い瞳と赤い瞳の兄弟。力を欲する、明確な意思。
 その望みをカタチにしてみた。だが発現した力は、兄弟の肉体を歪に変容させてしまった。

 ――コレハ…同ジ……

 地下水道の白い怪物。不特定多数の、曖昧な思考。
 その飛語はハッキリと、そして半永続的にカタチにする事が出来た。

 ――少シ…差異ガ出た……

 空を翔る天使と白い竜。不特定多数の、褪せた記憶。
 カタチを得たのは飛竜のみ。比翼的に語られていたはずの天使は具現せず。

 失敗と成功。
 ヒトとケモノ。
 その差は何だったのかを考える。

「ヒト…魂……」

 ――ワカラナイ

 思念の具現化。
 意識の受肉。
 足りないものは、魂のベクトル。だがそのカタチが解らない。

 であるならば、魂を持たないヒトならばどうか。

 宙空を漂っていた光――思念の塊――は、今一度その特異な能力で人々の記憶に触れた――……


●昼下がり
 入口に準備中の札が掛けられた、オカマバー『Heaven's Horizon』の店内。

「うーん……」

 カウンター席にて両手で頬杖をつき、クリームソーダをストローでちびちびと吸うエリス。
 目の前で黙々とグラスを拭いている黒髪青眼のバーテンダーをじーっと観察。そして徐に、他に誰も居ない事を確かめた後、

「リーゼはさー…」
「?」
「『特別なヒトができる』って、どういう事だと思う?」

 例えば恋人とか。
 家族や友達という意味ではない“好き”があるとして、それが自分に向けられた時、あるいは自分が誰かに向けた時、それまでのニンゲン関係がどう変わるのか。
 仮にリーゼのケースに当てはめるとするなら、

「目の前で恋人と見ず知らずの子が同時にピンチになったとして、どっちか片方しか助けられないとしたらどうする?」

 言ってから、ちょっと意地悪な例えだったかなと思いつつ。

 するとリーゼはグラスを拭く手を止めて、相変わらずの仏頂面でしばし考え……

「とても難しい」

 同じく悩みに嵌まってしまった。
 事実、どれだけ手を伸ばそうとも助けられない命はたくさんある。それでも最近は、より多くの手を掴む事が出来るようになった。共に手を伸ばしてくれる人々に出逢えたから。
 だが共に歩む仲間がいるという事は、その仲間の危機を目の当たりにする可能性もあるという事。
 命の重さに優劣は無く、掴めない手もあるという現実を知るが故に、トリアージとはある意味で非情でなければならない。しかし心に触れるほど親しい者が秤に掛けられて尚それを徹底する事は、本当に正しい選択なのだろうか。

 その様子を眺めていたエリスは、いつぞやの事件の折に榊 栄一も似たような悩みを抱えていたのを思い出した。

「…リーゼの恋人になるなら、ピンチにならないくらい強い子じゃないとダメなのかもね」

 その点、和紗なら大丈夫そうだけど。とまでは流石に口に出さず。
 当の和紗自身もまだハッキリとは自覚していないようなので、野暮な真似はしないでおこう。

 だがそう考えると、果たして自分はどうなのだろうか。
 仮に誰かと――ぶっちゃけディザイアと――その、恋人関係になったとして、自分はどう振る舞うのが正解なのだろうか。

「うーん……」

 かくして話は振り出しに戻り、エリスは片手で頬杖をつきながらクリームソーダのアイスをストローでぷすぷすと何度も突き刺した。
 そんな時、ポケットの中で着信音。

「あ、オペ子からだ。はいもしもし?」
『オペ子はエリスさんが悪事を働くようなツインテではないと信じてます。だから自首するとよいです』

 わけがわからないよ。

「え、何、どゆこと?」
『ゴスロリ服の金髪ツインテ女子がぬいぐるみを使って市街で暴れているという通報がありました』


●現着
 集まった学園生達と共に現場へ駆けつけるエリスとリーゼ。
 以前、ルディがエリスにちょっかいを掛けてきた本土の商店街。そこから程近い場所にある街中に“彼女”はいた。

「ほらほら、もっと早く走らないと、そのだらしないお腹に風穴が開くわよ〜?」

 クスクスと笑いながら通行人の男性を追い立てる、ゴスロリ衣装を着た金髪ツインテールの少女。瞳も同じ緑色。その容姿は、どこから見てもエリスそのものだった。
 少女の足元を付いて回っていた“黒いうさぬい”が、濃赤色のビームを発射。伸びた粒子の束が、ひぃひぃと逃げ惑う男性の周りでアスファルトに弾痕を刻んでいく。
 一射毎に、徐々に着弾地点が男性へと迫り――

 ボフッ

 寸前、淡緑色のビームが黒いうさぬいを弾き飛ばしていた。

「あら?」

 振り返った少女の目に、エリスとうさぬいの姿が映る。

「そこまでよ! 大人しくしなさい、えーっと…私!」

 自身と瓜二つの相手を見て困惑を隠せない様子のエリス。
 対して少女は、何かを納得したように、にまりと口端を上げてエリスを観察。

「へぇ…そう。アナタがワタシの……。丁度いいわ、一緒に遊びましょ」

 ビルの壁にぶつかってぽてりと転がっていた黒いうさぬいが、むくりと身を起こす。
 直後、赤ビーム。

 咄嗟にエリスがうさぬいの緑ビームで相殺する…つもりだったがしかし!
 衝突と同時に一瞬で押し負ける緑。赤ビームが、うさぬいごとエリスにちゅどーん!と直撃。

\あばー!?/

 エリスがやられた!
 すぐさま助けに駆け寄るリーゼと学園生達。

 そして少女の視線は彼らの方へ。

「アナタ達も遊ぶ?」

 クスクスと笑みを漏らす少女。
 それに呼応するように。建物や車の陰から、わらわらと無数のぬいぐるみ達が姿を現す。

「それじゃ、パレードの始まりねぇ♪」




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リプレイ本文

「ええ、パレードの始まりです」

 瞬間、宙空に複数の射撃魔具を浮かべる樒 和紗(jb6970)。
 斉射。
 ぬいぐるみの1グループが、ボロ布と化して転がる。

 あらら、と。動かなくなった手駒を眺める悪エリス。しかし、

「まあ代わりはいくらでもあるし〜」

 余裕の態度。
 その様子を見ながらディザイア・シーカー(jb5989)は、

「まさかお嬢と同じ容姿、能力とは…。何処の誰の仕業か知らんが嫌らしい手を使いやがる」

 お嬢への風評を防ぎ隊。

 他方で、鈴代 征治(ja1305)や砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)らも軽口を投げる。

「世の中には自分に似た人が三人はいるんだとか。もう一人はどこですかね?」
「『アナタがワタシの』…生き別れの姉妹? やったねエリスちゃん! ゴスロリ双子ユニットで売り出せるよ!」
「賞味期限短そうなユニットね…」

 こうして聞き比べると声までそっくりである。

 ともあれそんな冗談を横目に、佐藤 としお(ja2489)は考える。
 自分達が駆けつけるまで間があったにも関わらず、通行人達に目立った重傷者は無し。

「やろうと思えばいくらでも出来たハズなのに……悪い子だとは思えないな」

 悪魔であるエリスがここに居られるのなら、彼女もきっと居られるはず。
 その事を鑑み、ディザイアも呼び掛ける。

「生き別れの姉妹か、偽物か…何にせよ御同行願おうか」

 もしも姉妹なら、悪意を潰し『説得』して悔い改めて貰い一緒に暮らすのも良い…せっかくの家族だ。

「私に良い考えがある!」

 唐突に声を張ったのはRehni Nam(ja5283)。

「悪エリスちゃんを捕まえて、ディザイアさんの部屋に放り込んでおきましょう!!」
「俺を監禁犯に仕立て上げてどうするつもりなんですかねえ?」
「決まってるじゃないですか(にっこり」

 Dに汚名を重ね着させ隊。

「あの、ところで…」

 おずおずと会話に加わる陽波 透次(ja0280)。
 悪エに小さく会釈。

「初めまして、僕は陽波 透次と言います。貴女の名前を聞いても良いですか? なんと呼べば良いのかなと…」
「特に名前は無いわ」

 嘘か真か。
 対して透次は、

「では、もう1人のエリスさん…つまりエリス・オルタ。オルタちゃんと呼んで良いですか?」

 型で月的な。
 するとガヤガヤと乗っかり始める一同。

ディ「名前…黒うさぬいからクリスとかか?」
レフ「アリス(あくエリス)、ワリス(わるエリス)、イリス(イビルエリス)を推すのです」
和「では、ブラックエリス。略してブリスと俺は呼びますか(拒否権は無い真顔」
ジェ「じゃあ僕はひっくり返してスリエちゃんで(真顔」
レフ「それならシール(Eris→Sire)とかもですね」
悪「ひどすぎて草」
レフ「じゃあどんなのが良いんですか?!」

 逆ギレフニー。

「そうねぇ…じゃあもしワタシに勝てたら、好きに命名していいわよ(クスクス」

 ぬいぐるみ達が行動再開。

 リーゼに一般人の避難誘導を頼む和紗。

「まずは安全確保をお願いします」
「(こくり)」

 一方でジェンティアンも、エリスに協力要請。

「僕らと一緒にぬいぐるみの対応よろしく。まずは数減らさないと拙そうだしね」
「了解よ」

 直後、としおが先制。
 避難中の一般人を背にしない様に位置取り、自らの射程内に居た金髪ツインテに銃口を向け――

 バキューン!

\あうち!?/

 見事に命中。
 本物のエリスに。

 そっくりだからね仕方ないね!

「なにするだー!(ムキー!」
「一発程度なら誤射かmあっ待ってぶたないください!?」

 うさぬいパンチどごぉ!
 ちゃんと謝ろね。

 それを見ていた和紗は、エリスにそっとマーキングを打ち込んでおいた。

 わらわらと近づいてくるぬいぐるみ達。
 ぬいぐるみの能力は不明。下手に肉薄するのは危険と判断した透次は、物陰に増援が隠れている可能性に注意しながら、一定の距離を保って陣形を組んだ。すぐ傍にジェンティアンが控え、少し後ろに和紗、としお、エリスが続く。
 横ではなく縦を意識した布陣。前方の敵に対する弾幕は薄くなるが、その分、互いの背中をカバーし合える。

 対してぬいぐるみ側は初手で受けた和紗の範囲攻撃を警戒し、密集を避けての進軍。同時に、一部の個体は透次達を無視して、逃げていく一般人へと向かう。
 だが疎らならば各個撃破するまでと、ジェンティアンは手にした魔書で一般人狙いの個体を優先的に潰す。透次や和紗らも、双銃や弓で射抜いて阻止。

 無論、敵も待ってはくれない。透次達の武器が一般人の援護へと向いた刹那、透次達を狙って正面からビームによる攻撃。
 しかし寸前、注意まで逸れていた訳でない透次が、ぬいぐるみの体がこちらへ向いている事に気づいてその一射を躱す。

 そこへ間髪容れず別の個体が追撃。先頭の透次を狙ったその一撃を、彼は咄嗟に空蝉で回避。

 陣形が揺れた隙を突き、透次の脇をすり抜けてくる1体のぬいぐるみ。その先にはエリス。
 射程に捉え、ぬいぐるみから赤いビームが伸び――

「悪いけど通行止めだよ」

 防壁陣で割込むジェンティアン。
 被弾しつつもそのまま盾に持ち替え、ぬいぐるみを殴り飛ばして再び距離を稼ぐ。

 その時、浮遊した別のぬいぐるみが頭上からエリスを狙う。

 咄嗟にとしおがエリスを射線の外に押し出しながら、回避射撃で相殺を試みrだがしかしそこに和紗が体当たり!

「危険です!」

 としおをズドゴォン!と突き飛ばし、身代わりとなってビームに飲まれた。
 ぷすぷすと焦げながらエリスに駆け寄る和紗。

「大丈夫ですか!?」

 呼び掛けつつエリスにライトヒール。

「む、むしろ大丈夫?」
「…このくらいは、平気です」

 そう言って、自身にもライトヒール。
 ちなみにとしおはビルの壁(コンクリート)に頭から真っ直ぐ突き刺さっていた。たぶん大丈夫だろう。

 透次が頭上の敵を撃ち落とす。
 一方でその様子を見ていたジェンティアンは、しかしチラリと目を向けただけで、和紗の直衛につく事はせずぬいぐるみの掃討を優先。

 敵の攻撃が多角的すぎて、“縦”を維持できない。
 ジェンティアンは作戦を切り替え、積極的に殴りに出る事にした――



 ――時間は少し巻き戻り、後方で透次達がぬいぐるみの対応を始めた頃。
 悪エと対峙する征治。

「申し訳ありませんがちょーっと、付き合ってもらえませんかね。退屈はさせませんよ」

 狙いはぬいぐるみ群との分断。
 同様に、レフニーも盾を構えて立つ。

「既に正体見破ったりです、天使もしくは悪魔アリワリイリシールちゃん!」
「もしかしなくても、それ見破れてないわよねぇ。ちなみにワタシは悪魔として作られたみたいよ?」
「随分と白状が早いな」

 問うようにごちるジョン・ドゥ(jb9083)。

「別に隠すつもりも無いし〜? でもタダで教えるのもツマラナイから、これ以上は有料にしようかしら」
「そうか」

 ジョンは短く返事をした後、

「では始めよう」

 結界展開。
 七耀城塞。周囲の空間に、レンガ造りの真紅の幻影を打ち建てた。

 直後、レフニーが仕掛ける。

「種族が冥魔側ならJCが光って唸る!」

 J(女子)C(中学生)。
 ではなく、J(ジャッジメント)C(チェーン)。審判の鎖。

「確定麻痺どん!」
「命中すればね〜」

 宙に飛び出したぬいぐるみ達がビームを斉射。張り巡らせた赤い光が一瞬の壁となって鎖を焼き切る。

 今度は征治が突っ込んだ。
 迎え撃つのは黒うさぬい。征治めがけて強烈なビーム攻撃。征治はそれを、腕に巻きつけたワイヤーで受けて耐える。

 刹那、彼の陰からジョンが飛び出す。
 自らの体をブラインド代わりにしていた征治。その勢いを引き継ぎ、ジョンは鋭利な鋼糸を悪エへと振るう。

「足の一本でも貰っていく」

 他のメンバーが彼女を生け捕りにしたがっている事は理解している。
 だから、殺す気で生け捕る。

 しかし、

「グロいのは趣味じゃないし、遠慮しておくわねぇ♪」

 千切れたのは、身代わりとなって割込んだぬいぐるみ。
 同時に、別のぬいぐるみ達がジョンへ十字砲火。だがその寸前、不意に征治が怒号を発していた。

 気合を籠めた全力の大声。
 ぬいぐるみを操っている悪エの集中力を削ごうという咄嗟の思いつきだったが、あまり効果は見込めず。

 それでも一瞬、悪エの視線は征治へと移動。
 その隙を突き、十字砲火を耐えたジョンが幻影遊戯を使用。無数の分身が実体の無い紅色の光線を乱れ撃ち、幻惑付与を試みる。

「数には数を。ビームにはビームを。……見た目だけだけどな!」
「そういう勝負も嫌いじゃないわよ(クスクス」

 だが彼女の空間認識力を上回るには至らず。
 分身と同じ数のビームに貫かれて、ジョンの幻影は次々と掻き消されていった――



 ――他方で、一般人の避難誘導に当たっていたディザイアとリーゼ。

「気が逸れてる今の内か…リーゼ、手伝ってくれ」
「エリスの直衛は良いのか」
「あの程度でどうにかなるお嬢ではない。伊達に久遠ヶ原のカオスに巻き込まれてないからな」

 それよりも、周囲に被害が出る方が悲しむだろう。

「なるほど」

 手分けして救助に当たる2人。

「今の内だ、早く離れるぞ」

 物陰でへたり込んでいた男性を助け起こしてやるディザイア。
 だがそこへ、仲間達の包囲を抜けてきたぬいぐるみが1体。

 ディザイアは逃げていく男性を背に庇い、

「お嬢と同じ遠隔操作…どこまで操れる?」

 砂嵐を発動。砂の壁の内側に自身とぬいぐるみを閉じ込めた。
 遠隔操作は視界内限定か否か。

 直後、彼めがけてビームを撃つぬいぐるみ。
 だが僅かにディザイアの肩を掠めただけで、直撃はせず。

 操作は可。しかし照準精度は著しく落ちる。
 恐らくは直前の空間図を頼りに、もしくはぬいぐるみに籠めた粒子がソナーのような役割を果たす事で、目を瞑って動かしているのと同じ状態か――



 ビル壁からボゴッと頭を抜くとしお。

「女の子はぬいぐるみが好きって言うけどさ……」

 もしかしてこれって悪エの遊び? それともエリスを誘き寄せた?
 何にせよ、まずは会話をしてお互いを理解した上で出来る限り協力していける案を考えたい。その為には……

「そうだ、皆でラーメン食べよう!」

 鍋に火が入ったままのラーメン屋台(店主不在)を発見。
 どっこいしょと着席。

「ささっ、隣へどうぞ!」

 悪エに手招き。
 すると彼女は、自身の代わりにぬいぐるみを1体、隣に着席させつつ、

「本気で言ってるのかしらぁ?」
「え、まぢっすよ?」

 腹が減ると虫の居所が悪くなるのは人も天魔も同じ(たぶん
 美味しいラーメン食べながらだったら遠慮なくお互い話あえるよね!(おそらく
 そうすればお前だって俺達の仲間になれるよ!!(きっと

「ねっ!!!(たのむ」
「また今度ね♪」

 カッ!
 ちゅどーん!

\揚げ玉!?/

 ぬいぐるみ爆弾。
 としおはラーメンになった。

 それを見たレフニーの頭に疑問が浮かぶ。

(そもそもぬいぐるみ操作はスキル的な扱いなんです?)

 悪エにシールゾーンを試行。
 すると、

「あら?」

 異変に気づく悪エ。どうやらぬいぐるみの自爆技が使えなくなったようだ。
 遠隔操作そのものとビームには影響無し。

 その時、ディザイアとリーゼがエリス達に合流。

「遅れてすまん、これからは指一本触れさせん!」
「ディザイアさんばかりに、むしろディザイアさんに、良い格好はさせません!」

 負けじと悪エにコメットを放つレフニー。
 瞬間、重圧効果を警戒してか悪エが範囲外へ後退。

「へぇ。アナタ達、思ってたよりも楽しめそうね」

 戦闘開始から初めて、その足を動かす事になった悪エ。

 畳み掛けるように征治が言う。

「さて、色々と聞きたいことがあるんでおとなしくしてもらいましょうか」

 ディザイアとレフニーもそれに続く。

「色々と、本当に色々と聞きたいことがあるんでな!」
「貴女に死なれるといろいろ困るのです。貴女自身のことももっと知りたいですし」

 特にレフニー的には、最終的に愛で対象になる可能性も。
 一方で和紗は、

「出逢った頃のエリスに似ていますが…エリスの方がもっと可愛かったです」

 友バカ真顔。
 その言葉に、ジェンティアンはふと思う。

「デレる前のエリスちゃん…?」
「何故、エリスさんと瓜二つなんですか?」

 続いた声は透次のもの。
 また、和紗も問う。

「エリスとはどういう関係ですか?」
「皆の質問に答えてくれたらお菓子奢りますよ」

 諸々の疑問に対し悪エは、

「そうねぇ…遊びに付き合って貰ったし、それくらいは教えてあげようかしら。ワタシはエリスを元に作られたエリス。色んなヒトの記憶や噂で出来たエリスなのよ」

 虚像という思念が受肉した姿。

「でも勝負はアナタ達の勝ちじゃなかったから、今日のQ&Aはここまでね」

 そろそろお暇するわね、と背に翼を広げ――

「だと思ったよ。逃がすかあ!!」

 征治が星の鎖を投げた。
 同じくレフニーやディザイア、透次とジョンも阻止に動く。

 全員による同時攻撃。だがその悉くをぬいぐるみビットで封殺する悪エ。
 飛んできたビームを盾で受けながら、レフニーは改めて吃驚。

「このエリスちゃん、めちゃくちゃ強いのですよ?!」

 そうして悪エは飛び上がる直前、

「あ、そうそう。ワタシの名前の件だけど、そうねぇ……『エリー』とでもしておくわ」

 言いながら、和紗に黒うさを向けて牽制。

「マーキングはやめてちょうだいね?」
「バレていましたか」
「空間処理が特技だもの」

 構えを解く和紗。
 それとは別にジェンティアンが改めて制止。

「飛ぶ、スカート、僕は伊達眼鏡で視力悪くない…つまり分かるね?」
「あら大変」

 落し物と思しき携帯を拾い上げ、110コールするエリー。
 もしもしここに痴漢がいます。

「うんちょっと待って!?」
「それじゃあ、お先に失礼するわねぇ♪」

 飛び上がった彼女は最後に一度だけ振り返り、

「また会いましょ、エリス(クスクス」



 治療を済ませ、撤収作業に移る一同。
 その際ジェンティアンはリーゼを呼び出し、

「前に温泉で和紗を最優先に出来る僕が必要だって言ってたけど」

 この先、僕の夢を叶える為にそれは出来ない。

「だからリーゼが和紗を護ってよ。お前なら…安心して夢を追える」
「そうか」

 友が夢を見つけたというのなら是非も無い。
 だが果たして、自分にそれが本当に務まるのか…。

 すると、

「俺の事は護らなくていいです。自分で何とかしますので、リーゼは皆を優先して下さい」

 和紗が言う。

「でも俺かリーゼか、一方しか助からない時は…二人とも助かるよう一緒に足掻きましょう(微笑」
「ふむ……」

 護れ。
 護らなくて良い。
 大切な彼らの願いを前に、自分はどうすれば良いのだろうか。

 一方、その光景を見守っていたエリスにも声が掛かる。

「どうした、悩み事かね?」

 ディザイアだ。
 瞬間、エリスは、

「べ、べべ、別に…!?」

 気恥ずかしさから、思わずうさぬいパンチをどごぉ!と叩き込んでしまった。



 ちなみにこの後、ジェンティアンは駆けつけた警官に任意同行を求められた。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 護黒連翼・ディザイア・シーカー(jb5989)
 光至ル瑞獣・和紗・S・ルフトハイト(jb6970)
重体: −
面白かった!:9人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
護黒連翼・
ディザイア・シーカー(jb5989)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプA
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
大切な思い出を紡ぐ・
ジョン・ドゥ(jb9083)

卒業 男 陰陽師