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マスター:久遠 由純
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/15


みんなの思い出



オープニング

 夜10時も過ぎた頃、一人の男が夜道を歩いていた。
 ちょっと小腹が空いたので、コンビニでも行こうと思って出て来たのだが、そのコンビニに行くためには墓地のある道を通らなければいけないのだった。
 低い植え込みを隔てたすぐ向こうには大きくはないが古くからある墓地。
 街灯もぽつんと小さいのがひとつしかなく、昼間通る分には何とも思わないものの、夜道はやはり何となく怖い。
 幽霊や何やらを信じている訳ではない。自分にそんなものが見えた試しもない。だが人間の本能か、死者の眠る場所というのは理屈抜きに怖さを感じるものだ。
 男はなるべく墓地の方を見ないように、早足にその道を通ってしまおうとした。
 その時、何かがふわりと浮いたまま、墓地側から植え込みの上を越えてきた。
「なんだ?」
 男は足を止める。
 『何か』は羽のようなものを動かして浮いているようだ。
 鳥? にしては形が丸っこいし、虫? だったらかなり大きい。見たところ人の頭以上の大きさはありそうだ。
 それは男の方を向いたかと思うと、羽を羽ばたかせこちらへ向かって来た。
 男は得体の知れないものに対する恐怖から、じり、と後ずさる。
 飛んで来る『何か』が街灯の明かりに照らされ、男はその正体を見た。見てしまった。
 それは人の頭だった。端的に言えば生首。いびつで歪んだゾッとする顔貌、澱んだ眼。普通の人の頭よりも大きく、耳もそれ以上に広がっている。その耳を翼のようにして飛んでいるのだった。
「うっ、うわあああーッ!!」
 男は逃げ出そうとしたがもう遅かった。
 眼前に大きな人の頭が迫り――、口を開いた。

 ばつん!

 耳まで裂けた口で、いとも簡単に男の頭を半分ほどかじり取った。
 男はどさりと倒れ、飛ぶ生首は次の獲物を求めてか、どこかへふわふわと飛んで行くのだった。


「――というような事件が、この三日の間に五件発生している」
 久遠ヶ原学園の男性教師が、集まった生徒達に向かって言った。
「通報が遅れたのは、被害者が一人を残して全員死亡、天魔の目撃者もいなかったためだ。唯一生きて逃れた女性によって天魔事件だと発覚し、地元警察がウチへ通報してきたという訳だ。その女性も命は助かったが腕を一本と記憶の一部を失ってしまったがな……」
 教師は困惑気味に眉を寄せる。
 生徒達も酷い天魔事件に悔しさと悲しさ、怒りさえも混ざった感情を抑えた表情になった。
 男性教師はしばし黙り込んだ後、生徒にも配った資料を見ながら説明を再開した。
「事件はいずれもこの墓地周辺で、夜起こった。女性の証言から、チョンチョン型サーバントだと思われる。夜行性とみて間違いないだろう。姿は基本人の生首だが、通常の2倍ほどの大きさだ。耳はもっとでかくて、それを翼として空を飛ぶ。攻撃は噛み付きが主なものだ。あとは翼替わりの耳での攻撃だな。資料をよく読んでくれ。それから――」
 ここで教師は少し心配そうに生徒達を見てから、言葉を続ける。
「襲われた女性は自分に関する記憶を失ってしまった。自分が誰だか全く覚えていないんだ」
「そんな……!」
 生徒の一人が小さく驚きの声を上げた。そういう意味だとは思っていなかったのだ。
 さっき教師が言った『記憶の一部を失ってしまった』というのは、こういう事件によくある『恐怖のあまり一時的に事件の前後のことが思い出せなくなっている状態』なのかと思っていたが、まさか本当に記憶が失われていたなんて。
 教師は厳しい顔で
「撃退士はそこまでにはならずとも、朦朧のバッドステータスを被る場合もあるかもしれない。充分に気を付けろ」
 そして生徒全員を見回し、彼らが資料を全て読み、自分の話を全て飲み込んだか確認してから、
「サーバント退治、頼んだぞ!」
 と送り出した。


リプレイ本文

●墓地内戦闘
 皆は事件のあった墓地へとやって来た。敵が夜行性ということで、辺りはすっかり夜である。
 周辺の道はすでに通行止めになっているため、誰もいない。夜の住宅街はひっそりとしていた。
 墓地という雰囲気を盛り上げるかのように、街灯も両脇の道にひとつずつあるだけ。墓地全体を照らすのは月明かりのみだった。
 墓を荒らしたくない、ということに全員一致し、墓地入口正面の比較的広い道にチョンチョンを誘い出すことになった。
「これからこういう時期なんだろうけど、やっぱり夜の墓地は雰囲気的に好きになれないな」
 右目が青、左目が茶色という特徴的な瞳の色をしたグラルス・ガリアクルーズ(ja0505)が、墓地を目の前にして少し眉をひそめる。
「私は……お墓の雰囲気……好き……」
 フードをかぶり虹彩が三つある目を気にしながら、ノエル・シルフェ(jb5157)が静かに言った。
「そうかい?」
 意外な意見にグラルスが聞き返すと、彼女は小さく頷く。
「静かだから……。でも、魂の眠りを妨げるのは愚者の仕事……」
「そうね、墓前を騒がせるのはいけないことよ。早々に片付けてしまいたいわね」
 シュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)がノエルの意見の後半部分に賛意を示した。彼女の立ち振る舞いからは、育ちの良さがにじみ出ている。
 昼間が苦手なノエルとシュルヴィアにとっては、今の時間帯は都合が良かった。
「チョンチョン……ね。墓地を空飛ぶ生首なんて、随分と風流な話じゃないの。だけれど、それが楽しいのは怪談上の話だけね。さっさとお話にお戻り願いましょうか」
 シュルヴィアは『夜の番人』を使用した。
「被害はすでに甚大、早急に狩るべき」
 全身黒ずくめで足首まである長い黒髪の来崎 麻夜(jb0905)が阻霊符を確かめ、自分自身に対してか、こくりと一人うなずいた。

 皆は用心しながら、墓地の入口へと歩を進める。
 山里赤薔薇(jb4090)は暗闇でも見通すことのできるナイトビジョンを装備した。
 二段しかない低い階段を登ると、月明かりの下、密集した墓石がぼんやり見えた。
 雑草だらけであまり手入れされてないお墓もある。正直、天魔だけでなく本当に何か出てもおかしくないような雰囲気だ。
「うう……夜のお墓での戦闘なんて……やっぱり怖いです……」
 桜庭 ひなみ(jb2471)は怖さを拭えず、家族の形見という黒いベレー帽を目元まで引き下ろした。
 でも……さっき来崎が言ったように被害が出ている以上、自分達が止めなければ。怖がってはいられない。
 桜庭は『夜目』を使い、サーバントを見逃さないよう集中した。
 山里が『トワイライト』で作り出した光球を、入口付近に配置する。
 天魔を逃がさないために、墓地を囲むようにそれぞれ移動した。移動を終えたところで、来崎が阻霊符を発動。黒いアウルが骨組みだけの翼となって、彼女の背中に現れた。
 墓石の影から押し出されるように、生首がその姿を見せた。
「出たな」
 グラルスの声がいくぶん緊張している。
 墓場の真ん中に、耳の巨大な、歪んだ顔が浮かんでいた。
 チョンチョンだ。
「ごめんね、あなたにとっては本能でも、私達にとっては害悪なの。だから今からあなたを倒すね」
 腕と記憶を失った気の毒な女性のためにも。
 山里は小さく天魔に謝罪し、光纏した。
「実際に生で見ると、おぞましさ倍増ね! よくぞおいでなさったわ!」
 シュルヴィアも光纏し、両手が肘あたりまで赤黒く変色していく。チョンチョンの攻撃を誘うように、ヒュドールウィップを大きく振った。
 サーバントは鞭に噛み付いてやろうというのか、口を開いて頭を乗り出した。
「好きにはさせません!」
 桜庭がチョンチョンの背後からリボルバーで援護射撃をした。天魔はくるりと上空へ逃げる。
 ノエルもオートマチックP37を撃つ。
「ここは……ダメ……!」
 チョンチョンは誰を狙うか吟味するかのように、ぐるぐると円を描きながら飛んでいたが、突然ノエルめがけて急降下した。
「危ない!」
 山里がミカエルの翼を投げた。扇子はチョンチョンの左側頭部に当たり、彼女の手元に戻る。
 今度は山里に向かってサーバントが飛んで来た。
「周りを見ないと痛い目に遭うよ!」
 来崎がツインクルセイダーを撃ちながら入口方面へと走った。
 当たらなくてもいい、ヤツの気を引ければ。
 思惑通り生首はそれにつられて方向転換、再び高く舞い上がり来崎に急降下。それをシュルヴィアの鞭が阻む。
 うっかり墓石に被害を出さないよう気を付けながら、彼らは上手く連携し、徐々に天魔を誘導した。
 着実にチョンチョンは道路の方へと追い立てられ、戻ろうとすると桜庭とノエルが牽制する。
「こっちだ!」
 グラルスは入口に立ちはだかり、詠唱した。
「貫け、電気石の矢よ――トルマリン・アロー!」
 雷を纏った結晶が、尾を引きながらチョンチョンへと飛んでゆく。雷の矢は回避しようと頭を下げたチョンチョンの右耳の縁を切り裂いた。
『おぉおお!』
 天魔は叫び、耳を激しく羽ばたかせた。猛烈な風が周囲に吹き荒れる。
「くッ!」
 来崎は風圧に巻き込まれないよう、充分な距離から一発撃って挑発した。
「悔しかったらこっちまでおいで!」
 サーバントを道路に出すまであと一歩だ。
 チョンチョンは羽ばたきを止めると、墓石に隠れるようにしながら飛び回り始めた。どこから来るのか予測が付きにくい。
「動きが変わった!? 来崎先輩、エルヴァスティ先輩、気をつけてください!」
 桜庭が二人に警告する。
 シュルヴィアは用心のため『ナイトドレス』を使用した。
「さぁ獲物が招いているのよ! せいぜい誘われて追いすがりなさいな!」
 自分が狙われるだろうことを想定し、堂々と身を晒す。猛獣使いのごとく地面をひとつ鞭打ち、道路へと飛び降りた。
 油断した訳ではない。だが、急に植え込みを突き抜けて襲ってきたチョンチョンをかわすことができなかった。
 右肩口を噛まれ、行動できなくなる。『朦朧』に掛かってしまった。
「あうッ……!!」
 両膝を付くシュルヴィア。
「大丈夫ですか!?」
 山里が彼女を助けようと駆け寄る。その山里をも狙って、チョンチョンは大口を開けたまま猛然と突っ込んでいった。
「頭が高いよ、ひれ伏せっ!」
 来崎の声が響いたかと思うと、サーバントの頭上の空間に黒い腕が出現した。山里に追いつく寸前、来崎が親指を下に向けると、それに合わせて黒い腕がチョンチョンを叩き伏せる。『Pressure of Absolute』だ。
『ぅおおぉん!』
 グラルスが『トルマリン・アロー』を再び放ち、生首の左耳の広がった耳たぶに穴を開けた。桜庭も『精密狙撃』で右耳の真ん中を撃ち抜いた。
 その隙に山里がシュルヴィアに当て身を食らわせ正気にさせる。
「あ、ありがとう……!」
 彼女が動けるようになると、すぐに二人はチョンチョンから離れた。そしてシュルヴィアの肩を応急手当する。
 シュルヴィアがダメージを受けたが、天魔を道路におびき寄せることに成功した。

●仕切り直し
 チョンチョンも翼替わりの耳を負傷したものの、多少不安定になったくらいでまだ飛べなくなった訳ではなかった。むしろ不規則な飛び方になった分、予測がつかない。
 シュルヴィアは『トワイライト』が切れた瞬間に、『ハイドアンドシーク』で闇の中へ潜行した。
 来崎と桜庭がサーバントの耳を狙って撃っている間に、山里がすぐさま光球を配置し直す。
 グラルスは下から懐に潜り込むように攻撃してきたチョンチョンを、ギリギリで身をひねって回避し、とにかくあの翼替わりの耳を使えないようにするのが先決だと判断した。
「まずはその耳、封じさせてもらうよ。厄介な部分から潰すのは定石だからね」
 体勢を立て直しながら詠唱する。
「血玉の腕よ、彼の者を縛れ――ブラッドストーン・ハンド!」
 赤い斑点の付いた濃緑で半透明の腕が幾つも現れ、天魔を掴んだ。
 チャンスだ。
「勘違いしたわね。もう、貴方は狩人じゃない。ここでは貴方が標的なのよ。さぁ、フィンランドの狙撃術、しかと味わいなさい」
 チョンチョンの背後、スナイパーライフルを構えたシュルヴィアが、肩の傷をこらえ天魔の右耳を狙って一発放った。
 山里の脳裏に、さっき自分が襲われかかったことがよぎった。口が耳まで裂けた生首の顔がまざまざと思い出され、不意に恐怖が込み上げた。足が震える。
 でも、今自分は一人ではない。怪我をしつつも戦っているシュルヴィアや勇敢に立ち向かっている皆がいるのだ。
 山里は恐怖を押し戻し勇気を奮い起こした。
「これが今の私の切り札……フレイムシュートぉ!」
 炎の塊を飛ばす。
 シュルヴィアの弾丸は耳の上部を撃ち抜き、山里の炎は耳を必死にばたつかせた天魔の頭部をかすめた。
 だが、サーバントの逃げた先にはノエルの放った『ファイアワークス』の炎が。チョンチョンは花火のように炸裂した爆発に巻き込まれた。
『おおぉおん!』
 歪んだ顔がさらに苦悶に歪み、赤黒く、見るも恐ろしげな顔になる。
 追い討ちをかけようと、来崎が『Change Hound』を使用して距離を詰めた。スキルの影響でアウルのオーラが犬耳と尻尾の形をとった。
 チョンチョンの澱んだ目がギラリと来崎を捉え、いきなり飛び上がった次の瞬間、彼女に襲いかかった。
「!! ボクに、触れるなっ!」
 来崎は咄嗟に自分の肩を抱くように己をかばい、『Reject All』を使う。
 影の色をした鎖がチョンチョンを縛り上がるかと思われたが、鎖はひび割れ弾け飛んだ。
 天魔は耳を羽ばたかせた。周囲に強風が巻き起こり、来崎はまともにそれを受けてしまった。
「ああっ!!」
 ものすごい勢いで飛ばされ、抵抗できないまま電柱に体を打ち付ける。
「来崎先輩!」
 桜庭が彼女の所へ走り、助け起こした。
「うっ……、大丈夫……。平気だから、構えて」
 来崎は大したことない、と笑って立ち上がる。
 まだ戦いは終わっていないのだから、敵から目を離してはいけない。
 彼女の言葉を尊重し、桜庭は来崎の隣でチョンチョンを見据えてリボルバーを握り直した。
 まだサーバントは誰も近寄らせまいと強風を起こし続けていた。
「まだいける……フレイムシュート!」
「トルマリン・アロー!」
 ほぼ同時に山里が炎を、グラルスが雷の矢を放った。
 それはチョンチョンの右耳に命中、見事に貫いた。
『おおおお!!』
 右耳は半分以上ちぎれてなくなり、ほぼ使い物にならなくなった。
 風が止まり生首が地面へと傾く。
 来崎が皆に声を張り上げた。
「ボクの前から離れて!」
 来崎の周囲に闇の深淵から出てきたかのような、黒羽根の刃が無数に出現した。
「その身が失われるまで切り裂かれるが良いよ」
 光の失せた瞳でクスクスと笑うと、『Darker than Black』の黒羽根はチョンチョンへと一直線に向かってゆく。
『うぉおおん!』
 チョンチョンは左耳もズタズタに切り裂かれ、地に転がった。蜘蛛の巣に掛かった蝶のごとく懸命に耳を動かそうとしているが、もはや飛ぶほどの力は得られなかった。
 それでも天魔は撃退士を攻撃しようと、目を見開き歯を剥き出し、にじり寄ろうとする。
 暗がりからシュルヴィアが現れ、鞭を振り下ろした。
 一発、二発とチョンチョンの頭を打ち付ける。
「どう? 癖になりそうかしら。いい音で抉るでしょう? あなたを。終わりよ。話の中に帰りなさい!」
 渾身の力を込めて下ろした一撃が、チョンチョンの片目を潰した。
「朦朧になるというのを味わってみるといい。黒玉の渦よ、全てを呑み込め――ジェット・ヴォーテクス!」
 グラルスが詠唱を終えると、生首は漆黒の風の渦に取り込まれた。
「これでどうだ!」
 チョンチョンはきりもみ状態になり放り出される。何人もの人間をかじり殺した口をだらしなく開け、ノエルの前に落ちた。
 口から血とよだれを垂らし、片目は潰れ両耳はボロボロだ。サーバントは動かなかった。
 じり、とノエルが足を引くと、最後の力か天魔はガバと口を目一杯開き、彼女の足に噛み付こうとした。
「!!」
 がちん!
 すんでのところでノエルはチョンチョンの攻撃をかわした。
「まだ動けるなんて!」
 山里がミカエルの翼を投げ、後頭部に命中させた。それでもチョンチョンは倒れなかった。
 頭だけとは思えない速さと動きで、偶然でも噛み付ければ幸いと口をパクパクさせながら、逃げるノエルを追い回した。
 ノエルは後ろ向きに走りながら銃を撃つも、上手く当たらない。
「あっ……!」
 慣れない走り方をしたため、踵が突っかかり尻餅を付いてしまった。
 生首が迫り、もう少しで彼女の足に噛み付くという時――、
「サヨナラの時間、だよ」
 黒い涙を流し微笑みながら来崎が告げると、乾いた血でできたかのような拳銃から、憎悪の塊の弾を発射した。
 『Downfall Gloria』の弾丸は、チョンチョンの眉間に叩き込まれた。
『おぉうおぅぉおー……』
 残った目が白目になり、口をもごもごと動かし奇妙なうめき声を発しながら……、天魔は動きを止めた。

●墓地は静かに
「やっぱり、怪談は怪談だけであるべきね。それで充分、好奇心は満たせるもの。過ぎたるは、決して及ばざることはないわね」
 怪談の生首よりなお不気味なチョンチョンの死骸を見下ろしながら、シュルヴィアが言った。
 墓地とその周辺は、戦う前の静寂に再び包まれている。
「お墓は、大丈夫ですよね?」
 静けさが気になったのか、桜庭がふと漏らした。
「よく見えないしちゃんと確認してないけど……、大丈夫だと思うよ?」
 グラルスが植え込みの向こうに目をやる。
 戦闘の熱も冷め落ち着いた途端、ここは墓地だということが意識された。

 『大丈夫』とはどういう意味で?

 皆は顔を見合わせる。
 さっきまで人を喰らう天魔を相手にしていたというのに、その時には感じなかった寒気を何となく感じた。
 戦闘中は強気な発言ばかりだったシュルヴィアでさえ、少しおとなしめになった気がする。
「私、ちょっとお墓にお祈りしてきますね……」
 桜庭の意見に、なぜか全員従った。
 中まで入る勇気はないので、階段の上、入口付近で立ち止まる。
 暗い中ではあるがざっと見たところ、別に墓石が倒れていたり、供えた花が荒らされていたりということはなさそうだ。
 他には何も……、見えたらいけないようなものは、見えない。
 色んな意味で良かった、と胸をなでおろす撃退士達。
 桜庭は両手を合わせ、目を閉じて祈った。
「騒がしくしてしまってすみません……おやすみなさい……」

 皆も同様に手を合わせ、ここに眠る死者が安らかなることを、そしてチョンチョンの犠牲になってしまった人達の冥福を祈るのだった――。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:4人

雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
さよなら、またいつか・
シュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)

卒業 女 ナイトウォーカー
雷蜘蛛を払いしモノ・
桜庭 ひなみ(jb2471)

高等部2年1組 女 インフィルトレイター
絶望を踏み越えしもの・
山里赤薔薇(jb4090)

高等部3年1組 女 ダアト
逃走不許・
ノエル・シルフェ(jb5157)

大学部6年257組 女 ナイトウォーカー