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マスター:川崎コータロー
シナリオ形態:シリーズ
難易度:やや易
参加人数:5人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/12/03


みんなの思い出



オープニング


 過去は、記憶の闇。
 如何にしても消しがたく、死ぬまで付き纏う。
 なれば美しき思い出と溶け合い、混ざり合って灰色の混沌を生み出す。

『三班はBに回れ、挟み撃ちにする』『もう少し方の力を抜こうぜ、優等生!』『了解』『よう優等生! 今日もクソつまんなさそうな顔してんな!』『ラオ、斥候の二班が帰ってこない』『笑う必要などない』『もう二十四時間経つぞ……』『ははっ、お前は面白いねぇ』『おかしい。ロイもアダムもノルドも、ここまで何の連絡もない』『もう少し真面目にすればどうだ』『どうなっている?』『俺も、お前の事は苦手だよ』『いや――まさか』『ふざけているのか?』『やっぱお前にゃ敵わねぇよ』『だがあいつらは、隊の中でも』『教官が探している。行ったらどうだ』『ラオ! ロイが死体で見つかった!』『おーい。あの教官の授業ヒマだしフけてどっか行こうぜ』『付き合いは長いが、お前は悪趣味だな』『ロイだけじゃない……アダムとノルドも……』『そんなお堅い事言うなって。一回くらいどってことねぇよ』『何て姿だ……人間のやる事じゃない』『いい酒が手に入ったんだ。飲むか?』『いや、奴ならやる』『誰にでも理解できない事はある。人の心がその最たるものだと、俺は思ってる』『ルイジ・イワノビッチ――“拷問王”イワノビッチ!』『やっぱお前の事苦手だわ』『嫌だなぁ。襲われたら応戦する。それがあそこでの教えじゃねぇか』『戦場で転がってる死体に一発撃って何が悪い? 用心こそ安心の種だよ』『考慮する』『だがあいつらはお前の仲間だった奴らだ』『頼むよ〜。俺この試験にあのハゲチャビンの科目落とせば死ぬんだって』『馬鹿じゃねえの?! お前まだそんなもん信じてたんだ』『このクソッタレな世界に乾杯!』『だから真面目に授業には出ろって言ったのによ』『許さねぇ……俺は絶対にお前を許さねぇ……!』『おい、それは学内じゃ禁制品だぞ』『俺を許さない? お前本当の馬鹿だな』『美味いもんは美味いんだよ』『あいつらは全員、お前が殺した!』『ルールってそんなに大切か? 性悪説を採用してるもんなんざに俺は興味ないの』『お前が出した指示であいつらは俺に見つかった!』『規則こそがこの世を良いものへと導くものだ』『もっといい作戦もあっただろうに!』『もう少しユルく行こうぜ〜』『もっとあいつらに行動を任せておけば良かったのに!』『青春万歳! 嗚呼、このモラトリアムが永遠に続かん事を!』『……仲間の行動を縛って陳腐な固定概念で考えを弾き出したお前が殺したんだ』違う。『お前が殺したんだ』――違う。『お前が殺したんだ』――違う!『お前が殺したんだ』

 あの日、あの時、あの場所で。
 全てを無碍にし、踏み躙り。
 仲間を殺したのは、誰?

『お前だ』

「――違うッ!!」
 喉の奥が灼ける。そして光。汗の不快感で、春夏冬はここが現実であると思い知った。
「ここは……」
 そして蘇る、あの記憶。直後に胃液が逆流する感覚。何とか押し留め、また現実であると思い知る。
 体に異常はない。それもそうだ。自分はあの拷問を受けてはいないから。
 ただ一つ、変わりがあるとすれば。
(まだあれを覚えていたのか)
 軍服の右の太腿に巻いた二本のベルト。裏側の細い縦のベルトで連結されたあの二本のベルトが外されている。
 ただの飾りではない。あそこに仕込んでいるのは――
 考えるだけ止めにしよう。辺りを見回す。
 どこかの病室らしい。雰囲気からして、学園の病院か。
「……あいつらは」
 ここまでの事は覚えていないが、彼らに助けて貰った事はわかる。
 近くに畳まれてあった軍服を肩に掛け、這う様に病室から出る。廊下に出て理解する。ここはテッドが収容されている病院だと。
 窓の外の空は陰鬱とした曇り空で、ただでさえ重い体に錘を括り付けられたような錯覚すらする。
(あいつは……無事なのか……)
 あの光景を目の当たりにしたからこそ、同郷の仲間が無事であると、自分は仲間を助けることができたのだという証拠が欲しかった。
 個室の表札から、現在位置を特定する。正反対だが幸いにも同じ階だ。微かに震える手足を必死に動かし、そして、辿り着いた病室の扉を開く、所で。
 声が、飛び込んできた。

「はい。ええ、回復には時間がかかりましたが、何とか入り込めました。後は簡単でしょう。何せ騙されやすい奴がいる。わかりました。引き続き潜入捜査を続けます――世持様」

 力の加減を間違って勢い良く開いた扉の音と共に、思考が固まった。
「……テッド?」
 こいつは今、何と言った?
「今、世持って……あの、世持か?」
「ラオ――」
 そしてテッドは、顔に脂汗を浮かべながら、引きつった笑みを浮かべる。
「仕方が無かったんだよ……」
 そして無防備な春夏冬の脇をすり抜け、逃亡する。
 春夏冬は、何もする事ができなかった。

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リプレイ本文


 陰鬱な曇り空の下、若き撃退士達は街を駆ける。
(テッドさんが病院から逃亡? 一体どうして……)
 そんな疑問を抱きながら、神埼 晶(ja8085)は商店街を駆けて聞き込む。
「こんにちは。あの、見かけない外人さんがいたら、久遠ヶ原学園に連絡してくれますかー?」
 しかし、いい情報は得られない。
(夜になる前にみつけないと、暗くなったら面倒だな)
 意を決し、再び街を駆ける神埼。
 途中で駐輪場で聞き込みをしていたがこちらも情報は得られなかった水枷ユウ(ja0591)が合流してもいいかという通信が飛び込み、頷いてまた人に声を掛けた。

 駐車場では佐藤 としお(ja2489)が物陰を注意深く観察しているが、それらしい気配は感じられない。
『公園にはいないようだ。一度そちらに戻る』
 いい成果を得られないのは何も佐藤だけではない。公園側を探索している牙撃鉄鳴(jb5667)とて同じ事。
『商店街も見つかりません。私たちもそうしますね』
 次々と来る報告の後もしばらくは探索していたが、一向に見当たらない。
「俺も戻ります……」
 手負いとは言え、諜報に特化した軍人ならばやはり気配と共にいつの間にか姿をも消すことも容易なのであろうか。
 溜息一つ。そして、一度牙撃達と合流しようと病院前へと向かう。もう彼らは着いている頃だろう。
 その時、佐藤の脇を誰かがすり抜ける。気付かなかった。
 見ると、そこには見覚えのある外人――テッドの姿。どうやら、駐車場をぐるりと囲む生垣の中に身を潜めていたらしい。
 逃走されないように練りこんだアウルを打ち込みマーク。これでもう逃げられない筈なのだが、全速力で逃げている。今の時間混んでいる商店街に逃げられると厄介だ。
「テッドさん! 待ってくださいっ!」
 だが待ってくれるはずもなく、怪我人と言うのにかなりの速度だ。
「皆さん、テッドさんを発見しました! 病院の駐車場です!」
『丁度いい。任せろ』
 すぐに答えたのは牙撃であった。直後、逃げているテッドの目の前に現れ、鳩尾に蹴りを一発。物凄く加減はしているのだが、やはり訓練を受けていても一般人にはダメージが大きかったらしい。テッドは白目を剥いて卒倒した。
 靴の底を地面に擦り付けながら足元に転がっているテッドを見下す。
「連れて帰るぞ」
 すると、神崎とユウもやってきた。
「まだ傷が治ってないんだから、無理しちゃダメですよ」
 そこで気が付いたらしい。流石軍人、回復が早い。
「う、う……放せ!」
 よほど逃げたいらしく、咄嗟に神埼が組み伏せてもなお暴れようとしている。アウルに覚醒しているのとそうでないのとでは力の差は歴然なのだが。
「黙れ。逃げるなら五体満足の保障はせんぞ」
「そーだそーだ。うっかり脚とか踏み砕いちゃうかもしれないから気を付けてね」
 牙撃が冷ややかに言い放ち銃を構え、ユウはテッドの足を爪先でつつくと、一瞬にして大人しくなった。


「どうかしたんですか?」
 室内をきょろきょろと見回すユウに、神崎は問う。
「や、実はカメラ回ってたりするかもって」
 いよいよ映画の撮影に思えてきたかも知れないユウだが、カメラなどを仕掛けられていたらそれはそれで問題だ。
「でも、この病院内にスパイがいる可能性は否めませんよね。盗聴器とかないのかな……」
『それは心配ない。テッドの身の上があるし、話はつけてある』
「なるほど……後日病院の関係者を洗ってもらうのって――心配しすぎですか?」
『いや、状況が状況だ。やっておこう』
 ニコラウスが通信機の向こうで頷くのを感じた佐藤は、テッドに向き直る。
「こうなったら腰据えてゆっくり話し合いましょうよ」
 佐藤は考える。テッドは人質を取られての事かも知れない。だからこそ組織にバレない様になるべく事を荒立てずに確保したし、人質がいるのなら救出して見せるし命が狙われているなら必ず守って見せる。自分達は、ここまでやってきたのだから。
「……僕達を信じて話してください」
 しかしテッドは黙ったままだった。
「さて、と……」
 そこでユウは椅子に縛り付けたテッドの靴を脱がせ、両足の裏に電動歯ブラシの毛先を当てる。ちなみにこの電動ハブラシ、商店街で買ったものだが春夏冬のツケである。
「いろいろ聞いてくけど、話したくないならそれでいい。でも、ど――――しても話したいことがあるなら、聞いてあげなくもない。……とゆーことで、スイッチおーん」
 小さなモーター音と共に電動ハブラシが動き出し、テッドが図らずも笑い出す。
「――春夏冬さん、気分はどうですか? ルイジ・イワノビッチに連れ去られてから、一体なにがありました? 言いたくない事は言わなくてもいいけど、今後の作戦に影響ある事であれば、春夏冬さんの判断で話してほしいな」
 とりあえずテッドはユウに任せるとして、神埼は春夏冬に話しかける。
「あ、ああ……えっと、そうだな……」
 どこから話せばいいのだろうか、という風に春夏冬の憔悴しきった目が泳ぐ。
「……あの後、気付いたらあそこにいた。それで、奴らがいて――レンとアルが、奴らに……!」
 断片的な説明だが、時系列を追うごとに春夏冬の目の焦点が合わなくなってきている。宥めている神埼を尻目に、牙撃は通信機越しでニコラウスに問う。
「何故今回の件を春夏冬に任せようと思った?」
『一つは久遠ヶ原に興味を持っている軍上層部の命令というのもある。春夏冬を久遠ヶ原にやったそもそもの理由もそれだ。それに、春夏冬はルイジ・イワノビッチに最も詳しい人間だ。過去の事例を踏まえ、指揮ではなく支援に回す事で必ずや任務を遂行すると思ってね』
 そうだ、それだ。春夏冬とイワノビッチには浅からぬ因縁がある。ではその根源は一体。
「春夏冬とイワノビッチだが――何があった?」
 この場の誰もが気になっている事であった。
『ふむ、どこから話せばいいのかわからないが――イワノビッチが我々の国の出身であることは知っているかな?』
「聞いている」
『なら話は早い』
 少しの、ほんの少しの間であった。

『イワノビッチは我々の国の出身で――そして、私の部下で、春夏冬の同期だった』

「……本当か?」
 牙撃は春夏冬にも問う。すると春夏冬は、ゆっくりと頷いた。
「ああ。俺とイワノビッチは……士官学校の同期だ」
 共に学び、共に鍛え合い、いつかは軍の戦力の中核を担う軍人として身を尽くそうとも話し合った。そして軍に入り、ニコラウスの下で軍人として活動を始めた。ラオはその優秀さを生かして現場の指揮をしていくつもの成果を上げ、ルイはいつしか『拷問王』と呼ばれるまでに尋問官の才能を開花させてゆく。
 ルイが手に入れた情報を基に、ラオが作戦を組み立てる。いいコンビであったと思う。
「だが、あいつはある日突如として消えた……そして戻ってきた。テロリストとして――」
 士官学校で得た知識は凶器となり、思い出は思考を鈍らせる枷となった。
「俺たち軍は躍起になった。どうしようもなく小さい国から、どうしようもない犯罪者が生まれてしまった。これは忌むべき事実であり、早急にイワノビッチを逮捕もしくは抹殺しなければならなかったんだよ」
 生かせばどんな者にも利用価値がある、とかつてある軍人は言った。それは、こちらにとって有益な情報を持っているという前提だ。国の名に泥を塗る大罪人は、存在の痕跡すら残してはならない。
『そこで数年前、我々はある情報を得て、イワノビッチを始末する作戦を決行した。その作戦は、隊員三人が惨殺されるという犠牲を以て失敗に終わった。その作戦を指揮していたのがラオ――春夏冬だ』
 ルイジ・イワノビッチの行動パターンをよく知り、かつ有能な指揮官。そして実力のある若き精鋭。この上ない人選で決行された作戦は、間違いなく国の威信を賭けたものだった。
 しかし、過程も結果も悲惨なものだった。
 まるでこちらの手の内を知っているかのような相手の行動、移動ルート。
 かつて尋問で花咲かせた狂気の知識が、かつての仲間へと牙を剥き、かつての友は敵となった。
「はは、それも仕方がないだろう……あの作戦でイワノビッチの情報をやっていたのは俺だからな……」
 その言葉に反応したユウが、思わず電動ハブラシを止める。
「だから世持と通信を――そうか、あの作戦の後にイワノビッチの追跡を志願したのはその為なのか……? お前は殺された三人が担当する付近の現場に配置されていた筈だ、その時に……」
 春夏冬には思い当たる節があるらしい。そして、世持という単語も。
「世持? 『夜明けの八咫烏』とテッドさんが繋がってるって事? つまり、敵のスパイ? それで敵拠点の襲撃作戦が筒抜けだったのかな? まぁ、言い訳があればきくけど。私達にじゃなくて、春夏冬さんへね」
「スパイ……? 何故……!」
 神埼と佐藤に問われ、自暴自棄になったらしいテッドが狂いかけながら答えた。
「仕方がなかったんだ! 俺はまだ死にたくない! 死ぬのが怖い! 仕方がなかったんだ……悪いのはイワノビッチの方だ……俺は悪くない……」
「命惜しさに裏切りか。諜報員として最低だな。それに軍人としての誇りもないのか」
「誇りが何になる! そんな犬の餌にもならないものよりも命が大切じゃないのか!」
「それじゃ、八咫烏に潜り込んでから見たこと聞いたこと知ったこと感じたこと、ぜーんぶ話してみて? 長いと眠くなるから簡潔に、ついでに重要なことからでよろしく」
 ユウは再び電動ハブラシのスイッチを切る。
「……俺は幹部級の情報なんて持っていない。しょせん俺はイワノビッチの腰巾着。都合のいい小間使いだ」
「それでも奴等について知ってる事、教えてくれないかな。本拠地や構成員の数、世持の能力とか」
 神崎の言葉にテッドは一瞬戸惑いを見せたが、ユウが電動ハブラシのスイッチを入れようとする素振りを見せると、あっさりと吐いてくれた。
「本拠地は……『神望島』って島だ。もう廃墟の島だが、そこを占拠している」
「他に幹部はいるか? 筒井や須藤と言った手の奴らだ」
「首領の世持を除けば筒井と須藤、幹部はそれで終わりだ。今はそこにイワノビッチがいるが……あくまでも立場は客人だ」
「構成員は今の所どうなっている」
「お前らが支部で派手にやってくれたから、今は拠点にメンバー全員が集結している筈だ。もうその辺りの数は知らん、恐らく大量にいる」
「適当だな……」
 溜息一つ。
「それで、どれだけ俺たちの情報を漏らした」
「そ、そこまで漏らしてはいない。精々外見と、持っている武器の特徴くらいだ」
 疑わしいが、大した情報を持っていないというのは本当らしいし、これ以上を求めるのは時間の無駄だと悟った牙撃はニコラウスに問う。
「現在、夜明けの八咫烏に潜入している諜報員は?」
『テッドと――殺された二人だ』
 つまりは、もう潜入している諜報員はいないという事になる。
「しかしこれだけの事をして、世持は一体何をしたいんでしょう」
 子供を攫って売り払い、多量の薬物を運び、武器を製造し、アウル覚醒者を掻き集める。そこまでの規模を持っているのに、表立って世間を騒がせることも、公的機関を使ってこちらに圧力をかけることもない。佐藤は考える。奇妙な組織だ。
「お前らここまで戦っておいてまだわからなかったか? あそこの組織にいるのは人間だけだよ」
 テッドがおもむろに答える。
「どういう意味だ」
「あいつらは天魔をこの国から排除しようと考えているんだよ」
 牙撃は耳を疑った。こいつは寝言を言い始めたのかと。
「どういう意味だ?」
「いや、正確にはこの国を転覆してから――天魔を排除するんだってよ」
「できる筈がない」
 いくら何でも夢物語が過ぎる。
「でもそれを実現するために奴らはアウル覚醒者を片っ端から集めていたんだよ。それに見なかったか? あいつらの天魔に対する感情を」
 筒井や須藤の言動を思い出すと、そこには決まって天魔に対する恨み言があった。そして戦闘のプロらしからぬ、感情を剥き出しにした場面も多々見受けられた。
「世持はそのカリスマ性を元に人を集め上げ、指示し、組織をあそこまで大きくした。あんな厄介な奴らも飼える位にな」
 つまりは一代でここまでできる傑物という事になる。
「能力などは知っているか?」
「く、詳しくは……知らない。だが、聞いたところによると、どんな攻撃も見切って日本刀で弾き返してしまうらしい。あと、デタラメに強いとも」
「断片的だな」
「しょうがないだろ、俺だって実際に見た訳じゃないんだ」
 そもそも我が身かわいさに易々と裏切るような人間に重要な情報を教えたりはしないか。聞く相手を変えよう。
「春夏冬、イワノビッチはどういう奴だ。今後、どういった手を出してくる」
 少しの思考後、春夏冬は答える。
「あいつは物事を一歩離れた所から見るのが好きな奴だから、奴からは何も仕掛けてはこないだろう。筒井の時のように、その先で待ち構えている筈だ。その――神望島という場所で。それと戦い方だが――奴は時と場合によって、戦い方を変える。俺でも断言はできない」
 ならば、そこに行って世持もろとも組織、イワノビッチを叩くのが一番か。
『本来ならばここで止めるべきなのだろうが――ルイジ・イワノビッチの捕獲もしくは殺害および、その協力者である犯罪組織・夜明けの八咫烏の壊滅を――ここまで来た君たちに再び改めて依頼したい』
 そうだ、自分達はここまで来た。
「ならば、今後も支援は可能か?」
『勿論、全力でさせて貰おう。何せあらゆる物品を調達してくれる窓口が復活したからね。必要なものがあれば言ってくれ。情報についても心配はいらない。捕らえた構成員から得ているからね』
 ニコラウスの言う窓口とは間違いなく春夏冬だ。だが、
「春夏冬の復帰に納得はできない。俺としてはどんな因縁あるかなど知ったことではないし、またお前が暴走してもらっては困るからな。外れて欲しいところではある」
 牙撃の意見は最もであった。春夏冬も当然だという顔で受け止めている。
「……が、もう一度だけ機会をやる。まだイワノビッチを追う気はあるのか。あるなら二度と独断専行しないと誓えるのか」
 破格の条件である。
「もうしないと誓おう」
「次は死んでも知らんぞ」
「――ああ、ありがとう」
 いつの間にか空は巡り、すっかりと暗くなっていた。雲も晴れてきているらしく、春夏冬の顔もどこか整理がついた顔だった。
「……今日はこれで終わりにしましょう。これからの事があります。春夏冬さん、体調には気をつけて、今はゆっくりしてください」
 佐藤の提案の通りだ。
 最終決戦は近い。
 これから飛び込む先は、闇。深き深き闇の底。
 だから今はせめて、休息を。
 真実は既に掴んでいるのだから。

【続く】


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 総てを焼き尽くす、黒・牙撃鉄鳴(jb5667)
重体: −
面白かった!:4人

ちょっと太陽倒してくる・
水枷ユウ(ja0591)

大学部5年4組 女 ダアト
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
STRAIGHT BULLET・
神埼 晶(ja8085)

卒業 女 インフィルトレイター
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
暁光の富士・
ルーカス・クラネルト(jb6689)

大学部6年200組 男 インフィルトレイター