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来る者拒まず、去る者は決して許さない魔の牙城『風雲! エレオノーレ城』。
一年の内、たった一夜しか存在を許されない其の魔境が、大きく口を開けて今年の挑戦者を待ち構えていた。
これは、永遠の魔王と異世界の騎士との壮絶な戦いの物語である。
第一階層、『這い寄る変態の秘宝館』。
入城した挑戦者を最初に待ち受けるのは、変態共の集大成とも評するべき桃色空間。
訪れる男性陣の心を鷲掴みにし永遠に閉じ込めんと画策する、恐ろしい階層。
女性が訪れればまず間違い無くドン引きするであろう空間にエルレーン・バルハザード(
ja0889)が、何故か縄で拘束されたラグナ・グラウシード(
ja3538)を引きずってやってきた。
「こんにちはこんにちは! へんたいさんこんにちは!」
以前、変態殲滅戦に参加し面識のあるエルレーン。
昨日の敵は今日の友か? 思いの外、ご機嫌に話しかける。
「うおおおおっ、離せ、離せこの馬鹿女ァッ!」
対してラグナは意味が解らず困惑気味である。
「あのね? 普段はうっとうしくて、きもちわるくって、地球のさんそを吸うのもおこがましいへんたいさんたちに、かつやくの場をあげるの」
絶妙な飴と鞭の黄金比で発言する天然女王様は、にこやかに非モテ騎士を指し示し、死刑宣告を下した。
「これを、かぁいい女の子にして、なの」
四馬鹿、歓喜。
今宵も嬉し恥ずかしジェットトリプルアタックが哀れな犠牲者を羞恥に染め上げる!
神速を誇る変態の魔手がラグナの服を縄の上から着せ替えるという無駄な神業を見せ、プロのスタイリストをも凌ぐ超絶ゆるかわメイクを施す。
気がつけばラグナはおにゃのこになっていた。
何を言っているのかわからねぇと思うが、ラグナも何をされたのかわからなかった。
「はっ、あっ、ええっ……これが私?!」
ただ、変態達に女装させられ、その姿にうっとりする微妙にナルシストな非モテ騎士の姿があるだけだった。
「はぅはぅ……かぁいい★」
エルレーン、狂喜乱舞の様相を呈しラグナに頬ずり。
「へんたいさんたち、今日はお礼に大サービスだよぉ★ せくしーしょっとも撮らせてあげる」
まさかの色々大盤振る舞いである。
ヲタク娘の怪しい手つきがラグナに絡み、無駄にテクニシャンな動きを見せる。
抵抗値の無いラグナ、陥落。
「あ……っ、そ、そんなところ……ダメ、だっ。やめろ、……くふぅ……っ、嫌だぁ……はぁん」
まるで女の子のような声で啼き声をあげるのだった。
薄暗い室内でフラッシュがたかれる。
その度に、雫(
ja1894)の際どい姿が写真として残されていった。
純真無垢なのをいい事に、騙して幼女写真の在庫を増やしていく変態共のなんと羨ま……、けしからん事か!
今では、撮影の度に投げかけられる変態共の言葉ですっかり意味を理解した雫が、顔を赤く染め怯えている。
そんな雫に更に追い打ちをかける四馬鹿。
とある高所に飾られている下着を指し示すと、残酷な事実を告げる。
「あれ、雫たんのでござるよ」
なるほど、確かに其れは年齢の割に少し背伸びした雫の下着で間違い無かった。
「にゃ〜っ!」
雫が必死になって背伸びしたり、ジャンプして取ろうと頑張るものの、届くはずがない。
変態達はそんな愛らしい雫の様子を、ひたすらローアングルから攻め、カメラに収めるのだった。
四馬鹿は泣いた。
人は、真に感動した時、涙する。
ゴス風味の衣装に身を包んだ鴉乃宮 歌音(
ja0427)が、縞々オーバーニーソで超絶可憐な絶対領域を惜しげも無く披露しつつ、変態達が撮影した写真の技術を褒めているのだ。
更に、ご褒美はこれで終わらない。
「私の写真撮ってみる? どうしても欲しいなら」
まさかのお誘いである。
据え膳食わぬは何とやら。
歌音は奥の部屋へと連れ去られ、変態達とたっぷりと濃い時間を過ごすのだった。
変態達は絶好調である。
神月 熾弦(
ja0358)は戦慄した。
入城して即の出落ち階層の壁に展示されていた自分の私物と言う恐ろしい罠。
取り外そうとする熾弦に、変態の魔手が迫る!
数多の女性を屠ってきた超高速微振動の右手、πニングフィンガー。
しかし其れを繰り出す前に、熾弦が変態を制する。
「優しく包み込むように手を添え、愛情をもってゆっくりとこねるように! 激しくするならばするで、自分を刻み込むが如くしっかり鷲掴み荒々しく!」
まさかの揉み方に対するダメ出しである。
「良いですか? ほら、このように」
そのままの勢いで変態の手を取り、自分の胸に其れをあてがう熾弦先生。
「えっ?」
「あ……」
時が止まる。
「きゃぁぁぁ!?」
そして時は動き出す。
豪快なスイングで振り抜かれた戦斧が、綺麗に変態に直撃。
ナイスホームランである。
こんなはずではなかった。
星杜 焔(
ja5378)は反芻してみたが、やはり原因は解らなかった。
変態をしばきに来たと思ったら、いつの間にか女装させられ、撮影されていたのである。
時折耳元に届く、『可愛いね』、『綺麗だよ』、『辛抱タマランチ』などの言葉が焔の心を掻き乱し、冷静な思考力を奪うのだ。
ムダ毛の濃い男達に囲まれる内に、封印されていたトラウマが想起され、怯え、泣く事しか出来ない焔の儚げな背が愛おしく、狂おしいまでの庇護欲をそそる。
しかし、この世は無常である。
楽しい事が永遠に続かないように、辛い事もまた、永劫続くはずが無いのだ。
「そこのHENTAI! 覚悟しなさい!」
デスソース界の申し子、道明寺 詩愛(
ja3388)が現れた。
「あ・な・た・た・ち・は〜まだ懲りてなかったのですか! こんな所は灰にしてあげます!」
這い寄る変態との遭遇率脅威の100%、変態クラッシャー氷雨 静(
ja4221)が現れた。
「くっくくくくっ、ねえねえ……どれがおすすめ? 一番大事なモノからぐっちゃぐちゃにしてあげるよ」
釘バット持参の女番長、染 舘羽(
ja3692)が現れた。
変態共は怯んだ。
焔はその隙に逃走した。
突如殴り込みをかけてきた女性陣は、変態達の制止を振り切り、次々と展示品を破壊していく。
「もうやめて、やめたげてよぉ!」
室内に変態達の悲痛な叫びが木霊するが、少女達の手は止まるどころか加速する。
「黙れ変態! まったく、貴方達に更正の余地はないのですか……?」
最近ドSとしてのご活躍も目覚ましい静先生、哀れみの視線を投げかけつつも、写真を剥がし、破り、燃やし、とアヴァロンの破壊に余念が無い。
「汚物は消毒だよね〜」
こちらもドSな舘羽様は、ご満悦な表情で使用感たっぷりの釘バットを振るいつつ、建物ごと破壊する勢いである。
救済なんてなかった。
涙ぐみ、地に伏せる変態達に、更なる追い打ちがかかる。
「デスソースの使者の二つ名は伊達じゃないんです……奥義! 血の雨地獄!!」
特製デスソースを両手に装備した詩愛が宙を舞い、そのまま変態達に雨の如く振りかける。
「傷つけるために手は使わない? ただの調味料だから大丈夫!」
だからってデスソースは無いじゃないですかーっ!
いつの間にやら張り巡らされたピアノ線で、変態達は現代アートの如き謎ポーズでデスソース塗れになりながら泣いていた。
鬼畜外道とは正にこの事である。
部屋を荒らすのに飽きたのか、哀れな四馬鹿に舘羽様が近づいた。
「女の子に縛ってぶたれるとかはご褒美かな? せっかく来たんだし気の済むまで遊ばせてよね……?」
良い笑顔で釘バットを撫でる。
変態達に明日は無いのだろうか?
「ふぅ、スッキリしました」
こちらも良い笑顔で破壊活動を終えた静先生、トドメとばかりに『リアジュール』を召還すると、舘羽様のお仕置きでイチャコラオーラを溜めていく。
そうして、お約束の刻が訪れた。
「ピピピ……、『リアジュウファイナルラブラブソード』ハツドウシマス……ピーッ」
全てを無に帰すリア充のピンク色な愛が解放されていく。
変態達と、彼らの理想郷、第一階層全てにあるモノを巻き込み、大爆発するのだった。
こうして、第一階層は撃退士達の手によって陥落してしまった。
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第二階層、『ぼっちーずの一打席勝負!』。
リア充になれなかった悲しい者達の成れの果て、敗北者達が集う怨嗟空間。
せめてもの青春の象徴として『野球』を題材にしている辺り、ぼっちーず達の未練を感じずにはいられない。
「……これで打ち返すの? ……折れたりしないよね〜?」
そんな壊れた夢の片隅で、冷凍紅鮭を構えたフューリ=ツヴァイル=ヴァラハ(
ja0380)が打席に立った。
たわわに実った魔乳がぷるんぷるんと震え、ぼっちーず達の視線を釘付けにする。
若干、前屈み気味になったぼっちーずが投腐体勢に入った。
「あたしの、心眼『デビルズアイ』にかかれば軌道なんて読めるんだよ〜」
迎え打とうとするフューリの眼前で、豆腐が大きくカーブする。
其れはまるで命を刈り取る死神の鎌。
だが、フューリも負けてはいない。
迎撃せんと全力で紅鮭をフルスイングし――、折れた。
「ちょ、ちょっとたんm……ごふっ」
何者にも縛られる事なき魔の豆腐が、ここぞとばかりにフューリに襲いかかる。
そうして、華麗にその胸元にINすると、真っ白な本体をぶち撒け、白く染め上げるのだった。
空気を読む豆腐先生GJである。
「……リア獣よ、お前らの気持ちもわからないでもない」
静かに燃える男、梅ヶ枝 寿(
ja2303)は何故か研究し尽くしたらしい一本足打法のフォームで鮭を構えた。
リア充を諦めない絶対の意思が鮭に宿る。
熱で溶けた鮭が、びったんびったん頬をぺちるが、気にしては負けである。
そうしてリア獣の投げる豪速の豆腐が、空を裂きど真ん中を突き進む。
狙いドンピシャ!
「草食男子で何が悪い! トムソンガゼル舐めんなあぁっしゃーオラー!」
訳がわからないよ。
しかし、豆腐は鮭のほどよく撓る魚体に弾かれ、遙か彼方へと飛んでいった。
ホームランである。
リア獣はがくりと項垂れた。
0−2、楠 侑紗(
ja3231)は追い込まれていた。
しかし逆境の彼女に、地元漁協の親父さんの言葉が響く。
「(いいか、侑紗……こいつはな、塩鮭にすると美味いんだ)」
そう言って微笑んだ在りし日の親父さんの胸元には、立派な紅鮭が抱えられていた。
思い返せば、いつでも彼女の傍には紅鮭があった。
生き別れの母が応援しながら食べていた紅鮭、特訓してくれた元プロ野球選手が観客席で売り子をしていた紅鮭。
豆腐を打ち返し、この紅鮭を持って帰る為にも負ける訳にはいかない!
直球に狙い球を絞り、侑紗は鮭を振り抜いた。
だが三振した。
猛然と振り逃げを試みるが、人生そう甘くはない。
紅鮭無念である。
「彼女とかより友達ほしい!!」
気がつけば紫ノ宮 莉音(
ja6473)はぼっちだった。
鮭を構え、某一郎の如きフォームで構えてみたものの、男友達と野球なんてした事がなかった。
習い事のタップ、バレエは稽古場に男一人、水泳に至っては個人競技。
地味に痛感せざるを得ない自身の非リア充加減に、始まる前から精神的ダメージが甚大である。
そんな哀愁が、彼らに伝わらないはずがなかった。
マウンドを降り、駆け寄るリア獣。
莉音の肩をひしと抱き寄せると、共に独り身の寂しさを分かち合う。
ごわごわの毛が、妙に暖かかった。
「鮭かぁ……バットに使うんならブリの方が好みなんだけど、この際文句言ってらんないか」
歴戦の戦士としての貫禄も充分に、砥上 ゆいか(
ja0230)が打席に立つ。
野球部に籍を置く戦士の矜恃が、彼の豆腐を打ち砕けと叫ぶのだ。
ピッチャー返しの構えで捕食者の如きオーラを纏いつつ、必殺の刻を待つ。
そうして、豆腐は投げられた。
直球、そう感じ取ったゆいかの鮭が口をかぷかぷさせながら真芯を捕らえるべく唸る。
だが、時期尚早。
手前で分裂した豆腐の上半分がやや上向きに跳ね上がり、下半分は急降下し地を抉る。
まさかの空振り。
だが、此処で終わるゆいかでは無い。
返す鮭の銀腹も鮮烈に、リア獣へと放り投げる。
「手が滑ったー」
どう見ても確信犯である、本当にありがとうございました。
凍り付いた鮭の重量は、遠心力により更なる威力を増し、凶悪な一撃となりてリア獣の顔面をぶち抜いた。
哀れ、ぼっちーず、一撃KOである。
こうして無慈悲な撃退士達の蛮行により、第二階層も陥落するのだった。
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第三階層、『茶房アネモネの出張所』。
其処は、甘いお菓子と美味しい紅茶が乙女の心を虜にし、永劫繋ぎ止めるというスイーツ空間。
だが、それは表向きのコンセプトである。
真相は、百合趣味の店主がスイーツを餌に、可憐な少年少女を待ち受ける蜘蛛の巣なのだ。
そうとも知らず、ほいほいと哀れな得物達が訪れる。
犬乃 さんぽ(
ja1272)、青空・アルベール(
ja0732)、鐘田将太郎(
ja0114)、歌音の四名だ。
「セーラー服とはマニアックな! あら? タイが曲がっていましてよ? お姉様がなおして上げましょうね、えへ、えへへへ!」
「いや、ぼっ、ボク男だからっ」
「だが、其れがイイ」
先ず、さんぽが店主の毒牙にかかり、
「あのこれ、誰も得しないと思うの……」
次いで、青空が強制女装という辱めを受け、赤面する。
必死にスカートの裾を押さえ、瞳にいっぱい涙を溜めて上目遣いに抗議する姿には思わず唾を飲み込む程に扇情的であるが、本人に自覚無し。
ますます店主の行動をエスカレートさせるのみだ。
「せ、せめて着替えは自分で……!」
将太郎の願いは、あっさり却下される。
店主の本当に女性かと疑いたくなるような仕草で大胆に脱がされると、次はいよいよ嬉し恥ずかし化粧タイムだ。
「か、可愛くしてくれよ……?」
なんだかんだで乗り気になってきたようである。
数分後、エキゾチックな黒髪をふわりと揺らす長身の美人が爆誕していた。
憂いを秘めた切れ長の瞳が見る者の心を捕らえ、妙な気持ちを催さなくもない。
「これは中々自信作ね! どう、歌音ちゃん、『彼女達』は?」
「彼はこうしたほうが可愛いと思うが?」
「あら、本当ね! もう少し改造しちゃいましょう!」
何故か助手として付き従う歌音と共に、どんどん男の娘達を魔改造していくのだった。
逃げようと得物達が藻掻くが、そうは問屋が卸さない。
店主の心が存分に満たされるまで、其の宴は続くのだ。
それにしても、脅威の男の娘率である。
「しっかり見てやるのだ! 今回こそばれないようにしっかり見てやるのだ!」
可愛らしい猫耳をぴょっこりと覗かせ、アネモネの店主を見張るケモ耳忍者娘レナ(
ja5022)。
例の如く、今回もバレバレである。
「あら? レナちゃん、また来てくれたの? それとも、この前のお仕置きが気に入ったのかしら? うふふふふ」
店主の可愛い娘レーダーは伊達じゃない。
両手をわきわきさせながら、レナの背後を取り、よからぬ妄想をするのだった。
だが、やられてばかりでは忍者はつとまらない。
「この前とってもお世話になったのだ! だから今日はお礼参りするのだ! 店主さんにどーんなのだ!」
其のたわわに育った大きな胸を盾に、店主にダイレクトアタックを敢行。
そのままの勢いで押し倒すのだった。
だが、其れは店主へのご褒美にしかならない。
「あらあら、積極的ね! お姉さん、もう辛抱タマランチよ! さぁ、行きましょう。……お仕置きよ!」
そうして今回も、店の奥にある秘密のバックルームへと連れ去られるレナであった。
「アッサムをミルクティーで、後スコーンも。……貴女の好きそうな物を持ってきたわよ?」
優雅に挨拶をし店にやって来たのは、女子夏服を着たアーレイ・バーグ(
ja0276)だ。
渡されたちょっとアレでソレな百合本をしまいつつ、店主はブラウスの下に透けて見える其れを堪能する。
店は、いつの間にかアーレイの手によりクローズ表記へと変えられていた。
「二人きりね……」
アーレイの熱を帯びた視線が店主を見つめる。
あれ、どうしてこうなった?
「鈍いわね……、ユリだってこーゆーの好きなんでしょ?」
ブラウスのボタンを一つ外し、蒸れた胸をちらりと見せて挑発するアーレイ。
なるほど、こうなってはやる事は一つである。
「あら、若いわね……。今夜は寝かさないわよ?」
白く気高き百合の花が咲き乱れる。
嗚呼、年若き少年少女達には決して見せる事が出来ない秘密の乙女の園。
こうして少女は大人への階段を登っていくのだ。
そんな訳で急用の出来た店主は第三階層を放棄し、陥落したのだった。
第四階層、『リルティwithらみあたんのお仕置きコーナー』は既に大局が決しつつあった。
本来ならば、此処はリルティによる撃退士調教コーナーであったはずなのだが、今、組み敷かれているのはリルティである。
「はーなーせー! えぐっ、あ、あたしは、誇り高き悪魔なんだからぁー! やめなさいってばぁ! うぐっ、ぐすっ」
ザラーム・シャムス・カダル(
ja7518)の容赦無い責めに、既に涙目で戦意喪失である。
「さぁさぁ、わらわと愉しく遊ぼうぞ」
ザラーム先生、マヂ鬼畜。
嫌がる幼女悪魔に馬乗りになって超ハイテンション。
周囲のらみあたんも、何故か圧倒されて静観である。
しかしザラーム、なんとドSでありドMでもある上級者であった。
立場を入れ替え、リルティに上を譲ってやると、涙目で鞭打つロリ悪魔にご満悦である。
「ニャハハ、そうくるか……そういうプレイも滾るのぅ」
「なんで悦んでるのよ、馬鹿ぁ!」
こうして受け攻めを時折交代しつつ、楽しい調教プレイはどちらかが倒れるまで続いていった。
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第五階層、『クローディアwithアリスのボクと契約してディアボロになってよ』。
ここでは悪魔クローディアが、訪れた者の願うままの姿をしたディアボロに変化させてくれると言う。
変身願望を持つ者は意外と多い。
鷺谷 明(
ja0776)もそんな一人である。
「なるほど、君は其れを望むんだね。君の願いはアウルを凌駕したよ。さぁ、瞳を開けて征くといい。君が望む戦場は此処じゃないのだから」
クローディアの手に触れた明の身体が変質し、輝く黒き偏四角多面体へと至る。
其れは混沌を招ずる悪夢の小箱。
シャイニング☆トラペゾヘドロンである。
こうして明は旅立った。
全ての根源を絶つ為に、最凶のトリックスターとして。
「ふっ……失敗なんてせーへんさせへん。なぜなら、自分はここで新たな扉を開けるからやぁぁぁ!!」
亀山 淳紅(
ja2261)の魂の雄叫びが周囲に響いた。
「じ、自分を! 『身長185センチメートルの、かっこいい男性』にしてくださいっ!!」
スケッチブックまで準備して挑む用意周到振りである。
そんな淳紅の願いを叶えようと、クローディアの魔力が彼を貫いた。
淳紅が瞳を開けた時、世界は変わっていた。
「……っおおおおおっ……?! 目線高いっ手ぇ大きいっ声低いぃぃっ!!」
歓喜する少年は知らない。
格好いい、が悪魔基準で変換されている事を。
彼が鏡で自分の顔を見て絶望するのは、もう少し後の話である。
「お相撲さんにしてください!」
丁嵐 桜(
ja6549)の願いは、年頃の娘にしては珍しいものであった。
「君は変わっているね。でも、ボクはそういうの好きだよ。さぁ、瞳を閉じるといい。君の願いはアウルを凌駕したよ」
こうして、桜はお相撲さんとなった。
「ああ……、やっと憧れのお相撲さんになれるんですね!」
瞳を開けた少女は、浮世絵に出てくる相撲取りまんまの姿になっていた。
まわし以外素っ裸だけど、相撲取りだから恥ずかしくないもん☆
後悔なんてあるわけない。
「ごっつぁんです!」
どしどしと鈍い足音を響かせ、少女は強敵との戦いへと旅立っていった。
「『刀剣の扱いが達人級』のディアボロを望む。私にはこういう道しかないしな…」
「希は『顔色がピンク色したフリフリのメイド姿』にして貰うのです」
例の如く仲良く二人でやってきた新婚ほやほや夫婦、鳳 静矢(
ja3856)と鳳 優希(
ja3762)が希望を口にした。
だが、其れは悲劇の始まりであった。
静夫は『陶芸の扱いが達人級』のディアボロに。
「つ……つぼはどこだぁぁ!」
優希は、『顔がヒクヒクしたフラフラのマーメイド』に。
「希は頭が痛いのですー」
ディアボロ夫妻の冒険はこれからだ!
「ねぇ、アリスのクロ。疲れてしまったわ、少し休みましょう」
「そうだね、ボクのアリス。あっちでお茶会にしよう」
一通り撃退士の望みを叶えたクローディア達は、二人のイチャコラタイムへと突入する。
こうして、誰もいなくなった第五階層も攻略されたのだった。
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第六階層、『アルトゥールwithあるらうねたんのサバイバル迷路』。
悪魔アルトゥールが、その趣味を最大限に活かして訪れた者を狩っていく狩猟場。
狙われた獲物が逃げ切る事は、至難の業である。
「ちょ、まっ、う、嘘だよね? そんな大きいの無理……って言うか、私初めてだから――」
神喰 朔桜(
ja2099)は狼狽えた。
あるらうねたんの蔓で四肢を捕らわれ、既に絶対絶命である。
「はッ、その内コイツが忘れられなくなっちまうぜ? じゃあ、いい声で啼けよ、雌豚ァッ!」
悪魔アルトゥールの大剣が朔桜の大事な部分に突き刺さろうと言うその時、増援が現れ蔓を引き裂いた。
「もう誰にも頼らない……と言うか、頼れませんね」
初陣で相手をしたあるらうねたんを前に、気炎を上げる銀糸の髪の少女、マキナ・ベルヴェルク(
ja0067)である。
突如沸いた邪魔者に苛立ちを露わにするアルトゥールだが、その視線に臆する事無くマキナは睨み返す。
「……後悔なんて、ある訳がありません」
その隣で、解放された朔桜も臨戦態勢に入る。
「っざけんなぁっ! 初めては番う人って決めてるんだからっ、キミみたいなチンピラ趣味じゃないんだから――!」
今、乙女の貞操を賭けて無差別級の戦いが始まろうとしていた。
「生意気言ってんじゃねぇぞ、雌豚共ッ! 纏めて相手してやっからヒィヒィ啼けやァ!」
大剣と拳、氷と黒光がぶつかり合い、剣戟の協奏を紡ぐ。
「もう何も恐くない」
「ふはははっはははは、聖杯騎士(偽)のお通りだちくしょーめ!」
ルドルフ・ストゥルルソン(
ja0051)は半分壊れていた。
この城では常識的な人間ほど、真っ先におかしくなっていく。
群がるあるらうねたんの鞭をかいくぐり、アルトゥールの叫びに怯えながらも出口を求めて彷徨う。
気分的には、もうどうにでもなーれ☆ だが、やっぱり諦めるのは嫌なのだ。
全力疾走に壁走り、三角飛びと撃退士としての力を遺憾なく発揮し逃げ惑うが、所詮は数の暴力。
最終的に捕らえられ、悪魔の前に捧げられてしまった。
ぺろりと大剣を舐め、ご満悦のアルトゥール先生。
その様子を見ながら、ルドルフは思った。
「(多分きっと大丈夫、死にはしない。俺、バイだし)」
「じゃあ、可愛い声で啼いて俺様を愉しませてくれよ、雌豚ァッ!」
容姿的に女性と勘違いしたアルトゥール先生の大剣がちょっとずれて突き刺さる。
其れは、男として、結構致命的な場所だった。
「アッー!」
「どこまで保つか試してみるか? 駄犬風情がよォ!」
アルトゥールの大剣と久遠 仁刀(
ja2464)の大太刀が鍔迫り合いをし、顔がくっつくほどの至近距離でにらみ合いを演じる。
体格差でやや押され気味の仁刀を救うべく擲たれた桐原 雅(
ja1822)の苦無をアルトゥールが避け、距離を取った。
しかしその表情には怯んだ様子は無く、むしろ得物を狩る事に愉悦を感じ楽しんでいるようにも思える。
じわりと滲む汗を拭いながら、仁刀は雅の身を案じ、逃げるように促す。
「まずったか……雅、ここは任せて先に行け」
だが、其れで素直に頷く雅ではない。
「残るならボクの方だよ、先輩こそ先に行って……」
また、そう言われて許容する仁刀でもない。
結局、互いに譲り合うが両方が頑固である為に、決着はつきそうもなかった。
それに、アルトゥールが何時までも待ってくれるはずがない。
五月蠅いとばかりに、氷の剣の雨が大地を抉る。
「あぁもう、分かった。こうなったら一か八かだ、一緒に戦おう」
折れた仁刀が、雅に背を預け刀を構えた。
そうは言ったものの、多勢に無勢。
既に囲まれつつあり、形成は不利であった。
「(雅を信頼していない訳ではないが、護ってやりたい。その為なら、俺がアッー! されても……)」
密かに覚悟する仁刀の心を読んだかのように、雅が囁く。
「先輩の純潔はボクが護るんだよ。先輩がダウンしちゃったら、ボクがお姫様抱っこして逃げるからそうなりたくなかったら頑張ってね」
結構毒舌である。
そうして、その予告から数分後、仁刀は麻痺った。
やれやれ、と言った動作で手のかかる先輩をお姫様抱っこする男前な後輩女子。
仁刀は恥ずかしさのあまり悶えた。
二人だけの逃避行が始まった。
「にゃ! にゃ! ……なんなのこれどうなってんのおお!」
ほんのちょっぴり、自分と名前が似てるって理由だけでやってきた青空は後悔した。
ひらひらのミニスカートの下から覗く白いふとももが扇情的である。
花粉と鞭を避けながら来たその場所は、行き止まりであった。
「悪ぃが、ここから先は通行止めでな。諦めて大人しくしろや、雌豚ァ」
壁を背に震える青空の前に、アルトゥールが立ちはだかる。
そんな悪魔に、ダメ元で言ってみる。
「お、おにーちゃんになってくれてもいいのよ? でも、まずはお友達からかな! 初対面だし!」
可愛らしい女の子の姿をした青空にそこまで言われた場合、どうなるか?
こうなる。
「よし、先ずはスキンシップからだよなァ? 俺様、ちぃーとばっか気が昂ぶっててよォ。なァ、解るだろ?」
ズキューン青空スマイル☆ に胸を貫かれたアルトゥール先生、ご乱心。
青空の肩を抱き寄せ、スタッフオンリーなバックルームへと連れ込んでいく。
あれ、どうしてこうなった?
その後、青空がどうなったかは、各員の想像にお任せする。
でも、これって浮気になるのかな?
ならないよね、てへぺろ☆
こうして、第六階層も主を失い崩壊してしまった。
●
第七階層、『もふもふエレオノーレコーナー〜絶望キッチンもあるよ〜』。
此処では小動物風の二等身ロリオノーレがもふもふとやってきて、訪れる者を癒やす。
しかしその数は半端なく多く、僅かな判断ミスが窒息もふられエンドへと直結する。
罠は其れだけでは無く秘やかに設置された自動販売機にも、即死エンドが待ち構えているのだった。
麻生 遊夜(
ja1838)が追手を確認する隣で、樋渡・沙耶(
ja0770)は悪魔の食物兵器『絶望キッチン』を購入していた。
追撃が無い事に安堵し、持ってきた飲み物を出して沙耶に渡す遊夜。
その遊夜に購入した謎の饅頭を手渡す沙耶。
絶望は繰り返される。
嗚呼、彼は知らずに饅頭を食べてしまった。
身長が縮み、精神が幼く少年の其れと同等レベルまで逆行していく。
一分と待たずにショタっ子のできあがりだ。
その様子を興味深そうに記録していく沙耶。
突然のショタ化に戸惑いつつも、恐る恐る沙耶の手を軽く握り、不安そうな表情をする遊夜。
そんな遊夜を、こうなったのは自分の責任でもあるから、と邪険にはせず、沙耶は優しく握り替えした。
普段とは逆なこの感覚が、なんだか微妙で言い表す言葉が見当たらない。
だが、これで遊夜はつけあがった。
甘える振りをして、軽めに抱きつきにかかる。
流石にこれは下心見え見えである。
彼を撫でる振りをしながら、頭を支点に器用に避け、決して許そうとしない沙耶。
遊夜はただただ涙にくれるのみであった。
しかし、彼はまだ気がついていない。
身長が縮むイコール視点が下がると言う事に。
ここから先、彼女のスカートの中をさり気なく覗くと言うワンチャンが残っているのだった。
人は何故、危険なものに手を出してしまうのだろうか?
好奇心は撃退士をも殺す。
ソリテア(
ja4139)は二等身化シュークリームを食べ、ちんまくなった。
デフォルメ化した幼女が、可愛らしい声で驚く。
「うわわ、本当に小さくなっちゃいました!?」
そんなソリテアに、仲間と感じたロリオノーレがとことこと現れ、取り囲んだ。
「モフモフ可愛いです! お持ち帰りぃ〜!」
何を言っているんだい、君。
既に君も同レベルの大きさなのだよ。
「仲間なのじゃ〜、連れて帰るのじゃ〜」
「ちんまいのじゃ〜、妹にするのじゃ〜」
こうして、数多のロリオノーレの群れに抱えられたソリテアは、人里離れたロリオノーレの住処へと運ばれていくのだった。
「お腹も空いたし自販機で何か買っちゃおうかなぁ……」
栗原 ひなこ(
ja3001)はお金を入れようとして、寸前で思いとどまった。
「(あ、でもなんだかちょっと嫌な予感するかも)」
其れは過去、何度か味わった絶望キッチンの恐怖から得た第六感であろうか。
まさしく、動物的直感で死亡フラグを回避した。
だが、死亡フラグは其れだけでは無い。
ちんまいロリオノーレ達が、とことこと駆け寄ってくる。
「ひなこねーさまなのじゃ〜、構ってなのじゃ〜」
「えるも、撫でて欲しいのじゃ〜」
その光景は、まるで小動物に囲まれているような安らぎをすら覚える。
柔らかい銀色の毛を撫でながら、ひなこは心の底から堪能するのだった。
「うわ〜っ! エルちゃん可愛いっ!!! ちっちゃぁ〜い!」
この時に数体捕まえて逃げていれば、彼女は助かっただろう。
ドドドッ、と地鳴りが響く。
気がつけば、ロリオノーレの大群が迫ってきていた。
「なのじゃ〜のじゃ〜」
「……ってなんかいっぱいきたぁっ!? ちょ! むりむりむりむり〜っ」
しかしもう遅い。
あっと言う間に数多のロリオノーレに抱きつかれると、そのままもふられ続け、意識を飛ばすのだった。
絶望戦隊モウダメンジャー。
突然だが、彼らをご存知だろうか?
久遠ヶ原学園にその名を轟かす彼らは、今日もせっせと絶望する。
其れは、己の不運であったり、恋愛事情であったり、周りの交友関係であったり、誤爆であったり。
そんな新進気鋭の絶望界から、刺客がやってきた。
松下 忍(
ja5952)こと、絶望レッドである。
「モウダメジャーの恐ろしさ、思い知るが良いさぁ」
くわっと眼を見開き、絶望名物『松下の手作り物体エックス』を設置する。
その匂いに釣られたロリオノーレ達が食し、次々に倒れていった。
「もうだめなのじゃ〜」
「所詮エルのいげんなんてこんなものなのじゃ〜」
絶望が食べるもの全てに感染し、世界を包み込んでいく。
そうして、最後に立っているのは忍だけになった。
恐るべし、モウダメンジャー!
こうして、第七階層はモウダメンジャーに占領されてしまったのだった。
●
数々の障害を潜り抜け、漸くにして撃退士達は至った。
エレオノーレ城、最後の砦。
第八階層、『魔王エレオノーレ(jz0046)の部屋』。
エルの楽園を最後まで護り通さんとする魔王エルとその配下が待ち受ける部屋。
御暁 零斗(
ja0548)のやる気の無さそうな適当かつ面倒くささ漂う解説の元、今、最後の戦いが幕を開ける。
先手を取ったのは或瀬院 由真(
ja1687)。
彼女の祈りに応じて、ガチタンが天守閣をぶち抜き、舞い降りる。
「『神は言っている。ディバインナイトならばガチタンに乗るべきだと』」
「こんなガチタンで大丈夫なんですか?」
「『ガチタンだ、問題無い』」
ガチタン搭載のAIと軽快に連携を取りながら、鉄の要塞から攻城戦級の火力を持つ兵器がぶっ放された。
石田 神楽(
ja4485)もその後に続く。
「……ほうほう。そういう事ですか」
由真のガチタンを見習って、彼の背後に数多の重火器が顕現する。
対物ライフル、ガトリング砲、ロケットランチャー。
それらが、神楽の合図の元、一斉砲火された。
「幻想にしがみつく哀れな魔王エレオノーレ……。その野望、人の欲望で流し尽くしてあげるわ!」
追撃の手を止めてはならない、と雀原 麦子(
ja1553)も夢想する。
天高く浮遊する巨大『ビール製造所』を。
「これこそが人類の楽園、人類の悲願、人類の理想郷アワロン!! 喰らいなさい、≪無限の醸造≫!!」
滝のように大量のビールが天から降り注ぐ。
城全てをビール漬けにするかの如くに。
だが、しかし――。
それら全ての攻撃を防ぐ強力な障壁の使い手が現れた。
「……ふ。その程度の想いの強さで、わたしのバナナオレ愛に勝てるとでも?」
アブソリュート・バナナオレ・フィールドを展開したユウ(
ja0591)がエルを護ったのだ。
「……姉として、エルの夢の邪魔はさせない。……銀髪姉妹が七、『白雪』ユウ――その力、見せてあげる」
まさかの裏切りである。
銀髪姉妹が敵にまわると言うならば、とギィネシアヌ(
ja5565)が立ち上がる。
「これが俺の蛇眼の力だッ」
メデゥーサの血を引いているらしきギィネシアヌの銀の髪が、真紅の蛇に変化を遂げる。
そうして纏まっていった蛇が、地を這う大蛇となりてその口蓋からガトリング砲の如き銃弾を放出するのだった。
止まぬ鋼鉄の雨がエル達を襲うが、やはりユウのフィールドが防ぎ、有効打になり得ない。
それならば、と第七階層で更なる幼女化に至った珠真 緑(
ja2428)が、クレヨンを手にお絵かきを始める。
「みどりたんのひっしゃちゅ! お〜え〜か〜き〜」
緑のお絵かき帳から、形容し難き不定形の物体が溢れ出す。
おどろおどろしいその容姿は、伝承に聞く化物に通じる所すらあった。
撃退士が巨大召還系に走った所で、朔桜も最高の邪神を呼び寄せる。
「いあ! 顕れ出でよ、ク・リトル・リトル!」
おっと、そいつぁ危険だ!
ぬめぬめした触手海魔が顕現し、辺り一帯に濃密な海産物の匂いが溢れる。
邪神は彼の眷属たる半漁人を呼び寄せると、一斉蜂起し、不定形の物体と共に魔王に突撃を開始した。
「知っておるかね? その邪神には弱点があるのじゃよ! 来るのじゃ、クトゥグア、ハスター!」
しかし魔王も負けてはいない。
異世界の扉をこじ開けると、これまた異次元の神格を召喚し、巨大海産物手段へとぶち当てるのだった。
クトゥグアの焔が不定形を焼き、ハスターの風が海産物を切り裂いていく。
世はまさに混沌決戦である。
「『エレオノーレちゃん!! これ以上にお痛は許さないよ!!』」
撃退士達が召還された名状し難き物体対決に苦しむ最中、魔法少女本気狩るチェリー(
ja2549)は宙を飛び、本丸へと攻め込んでいた。
きっと彼女の下にいる者達は眼福の光景が広がっている事だろう。
あえて何が、とは言わない。
チェリーは異世界の神が持つとされる神槍『グングニル』を召喚すると、思いっきりぶん投げる。
絶対命中の神器が魔王を貫いたと思われたその時、チェリーの背後に魔王が移動していたのだ。
「残念じゃが、アレは残像なのじゃ。そしてこの距離では最早槍は使えまい? さぁ、エルに逆らった罪、味わうのじゃ!」
魔王の恐ろしい攻撃がチェリーに直撃するかと思われたその時、新たな魔法少女が現れ窮地を救うのだった。
ユリウス・ヴィッテルスバッハ(
ja4941)もとい、魔法少女☆ユーリアである。
「『……そこまで。これ以上は好きにさせない』」
「『ユーリアちゃん! チェリーと一緒に戦って!』」
「『ん…分かった』」
魔法少女同士の友情が、奇跡の魔法を紡ぐ。
「『……行くよ、フラーメンシュヴェルトッ……!』」
「『いっくよ! シャイニング・レインボー☆』」
七色に煌めく光の渦と世界を焼き尽くす焔が混ざり合い、天を焦がす。
エルが避けようとするが、間に合わずその身を魔法で焼かれるのだった。
気がつけば、配下達は混沌決戦で沈み行くエレオノーレ城から撤退を始めていた。
「またね、エレオノーレ。ボクはほら、アリスとのお茶会があるから」
「あっ、いっけなーい! あたし、アルトゥールの馬鹿に仕事言いつけられてたんだったわ。またね、バカエル!」
ぼっち魔王ェ。
そうして、頼みの綱たるユウも、他の銀髪姉妹の手により、バナオレ買収され、再度裏切っていた。
魔王は常に孤独、理解されないものである。
「さぁ! 思い出して! 自分の立場を! 末娘だという事実を!」
傷ついた魔王に、権現堂 幸桜(
ja3264)の容赦無い一言が突き刺さる。
「くっ……、かくなる上は、最上級禁忌召還魔法を行使するのみじゃ! 死なばもろともなのじゃよ!」
追い詰められた魔王が呪文を唱える。
其れは、全てを破壊する禁忌。
今、千葉県産幻想世界の黒き道化の鼠が、次元の輪を曲げて其の姿を現す。
甲高い笑い声が響く。
撃退士達は戦慄した。
こんなものを喚びだして大丈夫なのか、と。
「『大丈夫じゃない、問題だ』」
天から神の声が降る。
罪深き魔王とその眷属を咎めるように雷鳴が響いた。
「『魔王よ、流石に其れは拙い。よって証拠隠滅をさせてもらおうか』」
一際大きな雷の矢が、城を貫いた。
そうして、世界は滅び行く。
傲慢な夢を抱いた魔王は、最後に神の意志によって滅ぼされた。
哀れな魔王とその居城は、一夜の夢となりて崩れ去ったのだった。