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マスター:帯刀キナサ
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/07/23


みんなの思い出



オープニング

○ただいま準備中
「え?何をしてるの、って?」
 よいしょ、と少女―久遠ヶ原学園高等部1年、佐藤かなみはその声かけに振り向いた。
 現在地は学園内のとある教室。その教室を縦横無尽に絡まりあってるのは――竹だった。
 竹の上半分は切り取られていて、何かが流れることが出来るように空洞になっている。
 かなみは試しに竹の先端から水を流してみせる。
 流れた水は幾本の竹を巡っては、教室を回って――教室の後ろの扉付近の終着点におかれているバケツに落ちていった。
「……わかった?流しそうめんだよ」
 胸を張ったかなみが、そこに居た。

○調理室改め実験室
「…さて、そうめんの中に何を練り込むか…」
 廿楽冬樹 (jz0120)は家庭科室にて首を捻っていた。
 机の上にはワサビ、黒ゴマ、苺、唐辛子、ブルーハワイのシロップ、ゴーヤ…その他、何に使うのかよくわからないものが並んでいた。
「どれも意外に美味しそうな気がするが……」
 冬樹は怪しげな瞳と自信満々な笑みを浮かべていた。


「…何かイヤな予感がひしひしとするよ…!?助けて未来のイケメン彼氏!!」
 悪寒を感じ、助けを求め声を出したかなみ。
 廊下に出ては叫んだ。
 もちろんその話を聞いたのは君たちも含まれている。
「冬樹君にそうめんの用意頼んだの間違えだったかもしれないけど…!でも、一人で犠牲になりたくはないもん!」
 その瞳は必死であった。自分が犠牲にならないために他の人を犠牲にする。
「お願いだよー!!」 
 極彩色のそうめんが届けられるまで、あと1時間……。


リプレイ本文

●そうめん戦争序章
 夏の風物詩の一つ、そうめん。
 その涼やかな食べ物に危機が迫っていた。


「お願いだよー!!」 
 佐藤かなみの声を聞きつけてやってきたのは8人の戦士達だった。
「どうかしたんですか?」
 若杉 英斗(ja4230)がかなみの声に驚きながらも首を傾げる。
「む、何かあったんでしょうか。まさか敵襲?」
 フェリーナ・シーグラム(ja6845)も依頼斡旋所からの帰り道、悲鳴を聞きつけて駆け寄ってくる。
 残念ながら敵襲ではない。
 何事か、と集まってきたのは二人だけでは無かった。
 
 かなみはかくかくしかじか、と叫んだ理由を語る。
 曰く、
「料理の大魔神が悪趣味なそうめんを作ってるんだよ!」
 教室の中には竹で出来た見事な流しそうめんの台が出来上がっていた。
 一人で設置したらしい。
「あぁ、そういう季節になったのねぇ……しかし、いい行動力だこと……」
 燕明寺 真名(ja0697)は教室を駆け巡る竹レーンを見て関心して呟いた。
「流しそうめんか…懐かしいな。何か不穏な気配が見え隠れするが…」
 強羅 龍仁(ja8161)はその気配を感じては少しだけ身震いをした。
「そうめんを頂けると聞いたので赴いたのだけれど……」
 そっと顔を出したのは黒椿 楓(ja8601)だ。
「…これは凄いね。一人で作ったのかい?」
 ギルバート・ローウェル(ja9012)がかなみに聞けば、思わず慣れない英語でイエス!と堪える。
 同調するようにエルレーン・バルハザード(ja0889)が楽しそうに笑う。
「わあ!すごいねえ、すごいねえ!」
 英斗もうんうん、と頷いた。
「そうめんと聞いて、いろいろ持ってきたのですけれど…」
 メイドの姿をした氷雨 静(ja4221)は教室に入れば控えめに首を傾げる。

「…あれ、人が増えてるな」
 廿楽冬樹 (jz0120)が色とりどりのそうめんを持って教室へ入ってくればその人数に首を傾げる。
「どんなそうめんか興味があるんだ。よかったら自分にも食べさせてよ」
 英斗がそう言えば嬉しそうに冬樹は微笑んだ。
「うふふ、色つきは貴重って聞いたから、楽しみだな!」
 そんなエルレーンの目の前には、貴重と言われる色つきそうめんの数々。
 一部、ありえない色をしているのには突っ込んではいけない。
 そう、突っ込んではいけないのだ。
「色彩…、虹みたい… 千歳飴…?」
 楓が首を傾げる。確かにその色とりどりのそうめんは虹のように見えないこともない。
「ま、いいわ。楽しそうだし‥‥そうめんは、好きだしね」
 真名は分厚い手記に何かを書き込みながら呟いた。

●そうめん戦争準備編
「聞いた話だとお椀にソーメンを入れて、食べると給仕さんがまた入れてを繰り返して…」
 フェリーナがきらきらとした視線を周りに向けながらそう言う。
 それはわんこそばだ、と突っ込む人は居なかった。
 
 流しそうめんと聞いて各自が持ってきたものが集まった。
 静が持ってきたのはスーパーの安売りで買ってきた食材とネットオークションで出来るだけ安く買ってきた水出し煎茶。
 龍仁が持ってきた天麩羅や掻き揚げ。
 楓が持ってきたのは牛乳やコーラ、ソーダといった飲み物。
 
 始まったのは食材を調理する作業だ。
「あ、ネギ繋がっちゃう」
 料理下手な、かなみが包丁とネギを持って呟けばくす、と微笑むのは静だった。
「ご迷惑でなければ、お手伝いさせて下さいませ」
 メイドの血が騒ぐらしい。
 真名は手伝いながらもカメラを手にしていた。
「うん、三種の神器よねぇ…」
 自分の持ってきた錦糸卵やしいたけを見て頷く。その表情は恍惚に満ちていた。

「ナガシソーメンは初挑戦なんだけど…」
 あれは本当に日本食なのかい?と首を傾げたギルバート。
 視線の先には青い色のそうめんがあった。
 明らかに自然な食物の色ではない。
「…そうね…改めてみると凄い色ね…」
 楓もそうめんを見ては頷く。
「どうやって、この色を出したのだろうか……」
 龍仁もそう言っては不思議そうに呟いた。
 エルレーンは流しそうめんを流すための台を見た。その視線はきらきらとした好奇心そのままで。
「私も、後でお手伝いするねっ」
 ノリノリである。
 英斗と冬樹がうつわを用意し終わる。
 
「…準備は出来たみたいだな。それじゃあ、始めようか」
 冬樹は極彩色のそうめんを持って頷いた。

●そうめん戦争本章 
「…うわ、ほんとこの色おかしいんだけど」
 竹レーンに配置した被害sy…撃退士達の心を代弁するように、かなみは呟いた。

「うっ、青いメンや赤いメン…どこをどうしたらこんなソーメンが!?」
 フェリーナが流れてくるそうめんを見ては青い顔をした。
 それでも果敢に立ち向かう。その先は、緑色のそうめんだ。
「緑色のメン…ワカメかな?」
 見事な緑色。わかめ、というには少々濃すぎる気もしたが……。
 フェリーナはごくん、と喉を鳴らしては緑色のそうめんをつゆにつけて口に運ぶ。
 口の中に広がるのは……。
「…え、苦い?これは野菜?あれ?」
 どこかで食べたことのある味だった。苦い、野菜の味。
 そう、それは母校の罰ゲームで飲まされた例のあれ。
「アオジル…!?」
「ふむ。よく気付いたな。それはケールだ。」
 冬樹は頷く。ケール……青汁の原料の苦い野菜だ。
 フェリーナは渋い顔をしながら緑のそうめんを啜る。
 最後は緑茶で一気に流し込んだ。
 そしてはっ、と気付いた。
「なるほど、食べた後にお茶で流しこむからナガシソーメンですか…」
 突っ込みは、不在である。

「これは…掴みにくそうだね」
 ギルバートは箸が使えなかった。フォークはある?と皆に聞いてみるもそんなものは無かった。
 仕方がない。慣れないけれど箸を使うしかなかった。その持ち方は握り箸だ。
 そして一番食べ物らしからぬ色のそうめん――青い色のそうめんを自分のうつわに移す。
 やけに鮮やかなな青い色は冬樹曰く、ブルーマロウ……ウスベニアオイと言うハーブらしい。
「…日本食らしい味だね?」
 もぐもぐと、表情にも変わりはなく普通に青い色のそうめんを食べていた。
 日本食、イコール、味が薄いと言いたいらしい。
 そしてその味に飽きたのか納豆を取り出す。投入。
「納豆は良いものだよ、なにに混ぜても美味しい」
 青い色と納豆のコラボレーション。
 それを食べる金髪碧眼の美青年。
「…絵になるけど…イメージがー!!」
 かなみが妄想と現実の狭間で叫んだ。

「創作料理…、各国の料理がグローバル化する時代とは言うけれど…、これは食への冒涜ね…」
 楓が口に運んだのは白い色のそうめんだった。
 白い色……それは普通のそうめんの色だ。
 だが、それすらも普通では無かった。
「練乳を混ぜてみたんだ。甘くて美味いだろう?」
 にこやかに説明をする冬樹を楓は若干の涙目で睨んだ。
 それでも楓は他の色のそうめんも試食しようと、箸を持った。

 真名の口の中に広がる味。味覚の暴力に違いなかった。
「……なんで黄色だけでこんな豊富なのよ……幸せ呼び込みすぎよ」
 彼女が口にしたのは黄色いそうめん。
 それは、一種類だけじゃなかった。微妙に色が違うのを見て嫌な予感はしていた。
 そして覚悟もしていた。想像以上のものが口の中に広がる。
 卵、黄パプリカ…ゆず、マスタード、和からし、パイナップル、バナナ、レモン風味…エトセトラ。
「うぐっ…マスタードとからしは、つけあわせやつゆ次第…かしら」
 そうめんを啜りながらも呟く。小さくため息をついた。
「はぁ‥‥ま、可愛い後輩のためになら‥‥って思っとこうかしら」
 真名は遠い目をした。

「黒って、いうと…イカスミとかゴマだよね、うふ、悪くなさそう」
 エルレーンは竹の川を走る黒いそうめんを箸でつまんではつゆの中へ。
 思い切って口の中に運ぶ。
 不味くない。不味くは無いけど…
「はぅはぅ…でも、つゆとあんまりあわないかも」
 そう言っていても、完食。ごちそうさまでした。
 食べ終わったので流しそうめんを流す係を冬樹と交代する。
「…もう食べなくていいのか?」
「うん。流すのやってみたい!」
 
 エルレーンが次に流すのは赤いそうめんだ。
「影手裏剣をなげるようりょうで…えいっ!」
 竹レーンに投擲。流していない。それは投げてるのだ。
 もちろんそれに動じる撃退士達ではなかった。
「いただきますね」
 静が勢いよく投げられた赤いそうめんを箸でキャッチする。
 その箸さばきにギルバートは思わず拍手をした。
 静が持っているつゆはマヨネーズ少々、みじんぎりにしたタマネギと輪切りにしたオクラが入っている。
 お手製のオクラマヨのつゆだ。
 つゆにつけて、赤いそうめんをすする。
「イタリアンな味がしますね」
 不味くは無い。トマト味だ。
「…もう一口……っ!?」
 もぐもぐ、ごくん。
「皆さん、赤美味しいですよ! …てへ☆」
 にっこり、微笑んだ。
「あ、このつゆもまだあるのでよろしければ召し上がって下さいね」

 龍仁の横には救急箱があった。持参したらしい。
 幸運なことに倒れた人物は未だ居ない。
 今まで流れてきたそうめんも口に運んでいる。
 意外に美味しいものもあったことが意外ではあるが……。
 橙色のそうめんが新しく流れてくればそれを掴んでつゆの中へと落とした。
「初めて見る素麺の色だな……」
 躊躇しながらも口へと運んでいく。
 鼻をくすぐる柑橘系の香り。
「伊予柑、か?…美味いな」
 言いつつも表情はそのまま。
「…ところで何で、うどんが流れてくるんだ?」
 レーンの台の上で、エルレーンがにっこりと笑った。突っ込んじゃ、負けです。

(廿楽さんは味音痴らしいな。一体どんなそうめんを作ったんだろ…)
 英斗は近くで皆の様子を眺めている冬樹の様子をちらり、と見た。
 気合を入れてはショッキングピンク色のそうめんを箸で掬う。
「おーっ!これはたしかにめずらしい色のそうめんだ」  
 めんつゆにつけて、食す。
「ほぅ…。これは梅の風味だな。いや…待てよ…梅だけじゃない」
「判るか?梅意外の食物が」
 冬樹がふ、と笑う
「むぅ…この英斗を試すつもりかっ!?」
 流れてくるショッキングピンク色のそうめんをつるつると食べ続ける。
 そして気付いた。はっと顔を上げる。
「これはにんにく…。梅にんにくが練り込んである!しかも美味しいっ!」
ショッキングピンクのそうめんを食べながら英斗は友人達にもそうめんを勧める。
「ほら、おいしいですよ。フェリーナさんもエルレーンさん氷雨さんも食べてみて!」
「ウメニンニク味ですか?…どれどれ。…あ、かなみさん、緑色のそうめんは食べないほうがいいですよ」
 教えつつもフェリーナはピンクのそうめんを啜る。
 エルレーンと静も薦められればそうめんを食べた。
「あ、それではこれもいかがですか?」
 静は赤色のそうめんを皆に薦める。
 そして静はこっそりとかなみに耳打ちをした。
「…実は、これハバネロが混ざってるんです。内緒ですよ?」
 くすっと笑う静の姿は強かだった。

 皆の口の中に業火の海が広がったのは言うまでも無い。

「…いっぱい、食べましたね。ギルバート先輩…」
 かなみがギルバートに言うとにこりと微笑んだ。
 彼の目の間にあるのは、納豆の空箱の山だった。 どれだけ納豆とそうめんを食べたのだろうか。
「納豆があれば何でも食べれるよ。…あぁ、皆さんも和菓子いるかい?」 
 ギルバートの胃袋は底なしらしい。かなみも和菓子を受け取った。

 英斗の目がきらりと光る。
「だれにも掬われなかったそうめん…。でも、だれにも必要とされてないわけじゃないんだぜ」
 流しそうめんの最後。掴まれなかったそうめん達はバケツの中に滑り落ちる運命だ。
 それを阻止しようと彼は立ち上がる!
「最後まであきらめるな!俺が掬ってやる!!」
 つるつる、頂きます。
「きらきら☆非モテ道を歩む者として、流れ落ちるそうめんを見殺しにはできない!」
 ふはは、ふはは、と大きな声で笑いながらそうめんを啜る。
「英斗くんは、そうゆうところを何とかしないとモテないと思う、よ」
 真顔でエルレーンは呟いた。
 そうめんを流すのに飽きたエルレーンはバケツの中にたまったそうめんを見る。そして思う。
 …色とりどりのそうめんを一気に食べたらどんな味がするのだろうか、と。
「人間、ガッツよ。忍耐があればおおよそは出来るわ」
 真名は既に食べるのを止めてカメラを手に写真を撮っていた。

●そうめん戦争最終章
「このそうめんを作ったのは…わざとではないわよね…?」
 楓がいろんな色のそうめんを食べた結果、美味しいものもあるにはあったが…相当まずいのもあった。
 口直しの紅茶を飲みながら冬樹を見た。
 冬樹はその言葉に首を傾げる。
「お疲れだ。大変だっただろう…。食べてないと思って素麺とっておいたぞ。」
「あぁ、ありがとう」
 そう、彼は味音痴だ。もちろんこれらの物は彼が美味しいだろう、と思って作ってきたものだ。
 彼には ダメージは 無いに等しい。
「うん、やっぱり美味しいな」

「ま、いい夏の思い出になったかしら。ありがとうね」
 真名は片付けをし始めたかなみと冬樹に言う。
 そして、その顔を皆にも向けて、写真を撮る。
「次は流しらーめんやろうね!なるととかちゃーしゅー、流そうね!」
 お腹いっぱい食べたエルレーンはまったり、微笑んだ。
「こんなに綺麗な子達と一緒にナガシソーメンができるなんて、私は幸せものだね」
 ギルバートも完食した和菓子の包装を片付けながらも笑った。

「…うぐっ…みんなー。ありがとねー。ダメージは、うん、それなりに受けたけど…軽いよー」
 かなみは8人に手を振る。ダメージを受けたのは最後に食べたレインボーそうめん(全色)だと言うことは追記である。
「俺からも感謝する。…皆の感想を元に、またそうめんの研究をするとしよう」

 嫌な予感 再び。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

報道員の矜持・
燕明寺 真名(ja0697)

大学部6年302組 女 ダアト
┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
世界でただ1人の貴方へ・
氷雨 静(ja4221)

大学部4年62組 女 ダアト
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
手に抱く銃は護る為・
フェリーナ・シーグラム(ja6845)

大学部6年163組 女 インフィルトレイター
撃退士・
強羅 龍仁(ja8161)

大学部7年141組 男 アストラルヴァンガード
日出国の巫女・
黒椿 楓(ja8601)

大学部6年113組 女 インフィルトレイター
甘味は(品ごとに)別腹・
ギルバート・ローウェル(ja9012)

大学部8年69組 男 ディバインナイト